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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022176420
(43)【公開日】2022-11-29
(54)【発明の名称】給糸体装着装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 49/38 20060101AFI20221121BHJP
   B65H 49/14 20060101ALI20221121BHJP
   D02H 1/00 20060101ALI20221121BHJP
【FI】
B65H49/38
B65H49/14
D02H1/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021082851
(22)【出願日】2021-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】300072266
【氏名又は名称】有限会社エィブィアール
(74)【代理人】
【識別番号】100173989
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 友文
(72)【発明者】
【氏名】杉田 一夫
【テーマコード(参考)】
3F109
【Fターム(参考)】
3F109CB01
3F109CB15
3F109CC06
(57)【要約】
【課題】 従来のクリール用のローディング装置のように、給糸体をクリールの支持ペッグに装着する場合に手作業で移し替える必要がなく、かつ、多関節型ロボットアームを使用することなく、高所にある支持ペッグに対して作業員が危険を冒さずに給糸体の装着をすることができる給糸体装着装置を提供すること。
【解決手段】 給糸体受渡手段43によれば、前後移動体24に固定されている各ロードペッグ9は、上記した縦移動体25及び横移動体26が一対の縦移動ガイド26a及び一対の横移動ガイド6aを介して縦移動駆動装置28及び横移動駆動装置29の動力により各々移動されることによって、給糸体60の筒管61軸方向に直交する平面内で、各ロードペッグ9と同じ給糸体60の筒管61の内周内に挿入されている支持ペッグ53を中心とした円弧状の下降軌道を辿って下降移動することで、給糸体受渡動作を行うようになっている。
【選択図】 図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
糸を筒管に巻回してできる複数の給糸体と、その各給糸体の筒管内周より細い形態であってその筒管内周に挿入された状態でその筒管内周上面に内接して給糸体を支持する複数の支持ペッグと、その支持ペッグにより支持される給糸体の筒管内周であってその支持ペッグの下側にできる隙間空間である給糸体筒管内周隙間とを有し、各支持ペッグにより支持された各給糸体から糸を送り出すクリールに対して用いられる給糸体装着装置において、
クリールにおける給糸体既装着の支持ペッグから取り外された給糸体を、後記移送ペッグにより支持した状態で、給糸体未装着の他の支持ペッグまで移送する移送手段と、
その移送手段に設けられ、給糸体既装着の支持ペッグから給糸体を受け取って給糸体未装着の支持ペッグまで移送して受け渡すため、給糸体の筒管内周に挿入することによってその筒管内周上面に内接した状態で給糸体を支持可能であって給糸体の筒管内周より細い形態をした移送ペッグと、
その移送ペッグを給糸体筒管内周隙間内に挿入した状態で、給糸体の筒管の軸方向に直交する平面内で、その移送ペッグと支持ペッグとの間に間隔を空けた状態のまま、その移送ペッグを、支持ペッグの下側からその横側を通過してその上側まで到達する上昇軌道に沿って移動させることによって、給糸体の筒管内周で前記移送ペッグ及び支持ペッグの上下位置を入れ替えて、その支持ペッグを前記移送ペッグの下側にある給糸体筒管内周隙間に退避させて給糸体の筒管をその支持ペッグから前記移送ペッグに載せ換える動作を実行する給糸体受取手段とを備えていることを特徴とする給糸体装着装置。
【請求項2】
前記給糸体受取手段による前記上昇軌道は、前記給糸体の筒管軸方向に直交する平面内で、支持ペッグを中心とした円弧状の軌道となるものであることを特徴とする請求項1記載の給糸体装着装置。
【請求項3】
糸を筒状の筒管に巻回してできる複数の給糸体と、その各給糸体の筒管内周より細い形態であってその筒管内周に挿入された状態でその筒管内周上面に内接して給糸体を支持する複数の支持ペッグと、その支持ペッグにより支持される給糸体の筒管内周であってその支持ペッグの下側にできる隙間空間である給糸体筒管内周隙間とを有し、各支持ペッグにより支持された各給糸体から糸を送り出すクリールに対して用いられる給糸体装着装置であって、
クリールにおける給糸体既装着の支持ペッグから取り外された給糸体を、後記移送ペッグにより支持した状態で、給糸体未装着の他の支持ペッグまで移送する移送手段と、
その移送手段に設けられ、給糸体既装着の支持ペッグから給糸体を受け取って給糸体未装着の支持ペッグまで移送して受け渡すため、給糸体の筒管内周に挿入することによってその筒管内周上面に内接した状態で給糸体を支持可能であって給糸体の筒管内周より細い形態をした移送ペッグと、
その移送ペッグにより支持される給糸体の給糸体筒管内周隙間内に支持ペッグを挿入した状態で、給糸体の筒管の軸方向に直交する平面内で、その支持ペッグと前記移送ペッグとの間に間隔を空けた状態のまま、その移送ペッグを、支持ペッグの上側からその横側を通過してその下側まで到達する下降軌道に沿って移動させることによって、給糸体の筒管内周で当該移送ペッグ及び支持ペッグの上下位置を入れ替えて、その移送ペッグを支持ペッグの下側にある給糸体筒管内周隙間に退避させて給糸体の筒管を当該移送ペッグから支持ペッグに載せ換える動作を実行する給糸体受渡手段とを備えていることを特徴とする給糸体装着装置。
【請求項4】
前記給糸体受渡手段による前記下降軌道は、前記給糸体の筒管軸方向に直交する平面内で、支持ペッグを中心とした円弧状の軌道となるものであることを特徴とする請求項3記載の給糸体装着装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の給糸体を複数の支持ペッグで支持した状態で、各給糸体から糸を送り出すクリールに対して用いられる給糸体装着装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
織物に使用される経糸は、ワーパやサイザーによって整形されており、これらのワーパやサイザーには、クリールから糸が供給されるようになっている。例えば、クリールは、複数の糸パッケージなどの給糸体(チーズ、パーン、コンチーズその他の糸パッケージを含む。以下同じ。)を個別に支持する複数のペッグピンを備えており、この各ペッグピンにより支持された各給糸体から糸をそれぞれ送り出してワーパやサイザーに給糸(糸供給)するようになっている。
【0003】
具体的には、このようなクリールは、鉛直軸周りで回転に支持されている回転枠を複数有しており、一つの回転枠の片面には、その縦方向(上下方向)に等間隔で8段及びその横方向(左右方向)に等間隔で5列ずつ合計40本(=8段×5列)のペッグピンが設けられており、一つの回転枠の両面には、合計80本(=40本×2面)のペッグピンが設けられている。
【0004】
例えば、このクリールが合計12体の回転枠を有する場合、このクリールの全回転枠の片面側には合計480個(=40個×12枠)の給糸体が支持可能となり、更に、クリールの全回転枠の両面側にはその倍の合計960個の給糸体が支持可能となることとなる。
【0005】
このようにクリールには、1000本弱の給糸体が装着されるため、これらの給糸体の装着作業(仕掛け作業)が重労働となり、その作業者に過剰な負担を強いてしまう。そもそも、給糸体の重量は約10kg程度あり、クリールの回転枠において上下に隣り合ったペッグピンの高低差(一段分の高低差(高さピッチ))が約30cm程度あることから、特に、その5段目~8段目に関しては、床面から約1.5m~2.4mの高さとなり、作業者が給糸体を手作業で直接持ち上げて装着することが極めて困難であるという問題点があった。
【0006】
しかも、このような場合において、5段目以上に給糸体を装着する際は、作業者が踏み台の乗って作業をする必要があるが、踏み台の上では足下が不安定になり易いため、作業中に作業者が踏み台から転落する虞もあるという問題点があった。
【0007】
そこで、従来より、このようなクリールに給糸体を装着するためのクリール用のローディング装置が種々提案されている。例えば、クリール用のローディング装置には、複数の給糸体を予め積載しておく予備台車を備えたものがあり、この予備台車はそれに積載された給糸体をクリールに近くまで搬送移動するための走行機能を備えている。
【0008】
例えば、特開昭50-4345号公報には、クリールのパッケージ仕掛け装置というクリール用の給糸体のローディング装置が記載されているが、このローディング装置は、主に、台車と、その台車を走行可能に支持する4個の車輪と、この台車の上部に設けられ給糸体を支持するペッグピン支持装置とを備えている。
【0009】
このペッグピン支持装置には、その前後両面に2段3列に計6本ずつのペッグピンが植設されており、これらのペッグピン(以下「ロードペッグ」という。)は、その縦横の間隔がクリールのペッグピン(以下「支持ペッグ」という。)のピッチと同じにされており、ロードペッグの先端が支持ペッグの先端と相対して近接する位置に設けられている。
【0010】
また、ペッグピン支持装置は、減速モータにより正逆回転されるねじシャフトに螺合されており、このねじシャフトの正逆回転により昇降するようになっている。
【0011】
このローディング装置によれば、ペッグピン支持装置の片側にある6本のロードペッグを給糸体の筒管(紙管)内に挿入した状態にして6個の給糸体をロードペッグにより支持しておき、その状態で、台車を移動して、減速モータによりねじシャフトを回転させてペッグピン支持装置を昇降させることで、6本のロードペッグがクリールの任意の6本の支持ペッグに対向する位置となるように位置合わせしてから、台車及びペッグピン支持装置をそれぞれ停止させる。
【0012】
この状態で、作業者が手作業で、6本のロードペッグに沿って給糸体を水平方向にスライドさせて、各ロードペッグに対応するクリールの各支持ペッグに給糸体を1つずつ移し替える。この移し替えによって、クリールの6本の支持ペッグが6個の給糸体の筒管内に遊嵌された状態で挿入されて、クリールへの給糸体の装着が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開昭50-4345号公報
【特許文献2】特開平6-184883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、上記したクリール用のローディング装置のように種々提案がなされているが、近年の給糸体は、糸を筒管に巻き付ける量を増すため、筒管が外径が小さくなっており、結果、筒管の内径も小さくなっていることから、例えば、従来ならば筒管内径が100mmであったものが、近年では筒管内径が50mmのものも出現しており、ロードペッグの先端と支持ペッグの先端とを対向させて近づけた状態で給糸体をロードペッグからクリールの支持ペッグへスライド移動させて移し替える場合に、給糸体の筒管内周が狭まったため、かかる筒管内周に支持ペッグを挿入させにくくなり、給糸体のクリールへの装着が手作業では行い難くなるという問題点がある。
【0015】
また、上記ローディング装置は、ロードペッグから支持ペッグへ手作業で給糸体をスライド移動させるため、クリールの上側半分の支持ペッグに給糸体を装着させる場合には、作業者が踏み台に乗って高所で給糸体をスライド移動させて移し替え作業を行わなければならず、作業者にとって給糸体の仕掛け作業が依然として煩雑でありかつ危険を伴うものであるという問題点があった。
【0016】
かかる問題点に対し、特開平6-184883号公報には、給糸体移載ロボットシステムというクリール用の給糸体ローディングシステムが記載されている。このローディングシステムは、給糸体をストックしたパレット上からクリールへと多関節型ロボットアームにより自動的に給糸体を捕捉移載して仕掛ける基本的構成を備えたものであるところ、この多関節型ロボットアームによってパレット上にある給糸体を捕捉(保持)してこれをクリールの支持ペッグに移載(装着)するので、作業者が手作業で給糸体をロードペッグから支持ペッグへ手作業で行う必要がなく、高所にある支持ペッグに給糸体を移載する際に作業者が踏み台に乗って作業をする必要がない。
【0017】
しかしながら、上記したクリールにおいては、その給糸体の装着列数が、12個ある回転枠に各々5列ずつあることから、クリール全体で60列となり、各列間のピッチが30cmとすれば、クリールの全長は17.7mとなり、1台の多関節型ロボットアームの最大稼働範囲を越えるものとなる。
【0018】
このため、クリール全体に給糸体を装着するには、ロボットアームを複数台設置したり、1台のロボットアームをクリールの全長方向に移動可能にする設備を別途備えたりする必要があるので、大規模の繊維工場であるならまだしも、中小規模の繊維工場では、このようなロボットアームを用いた大型のローディング装置を導入することは技術面でもコスト面でも困難な状況にあるという問題点があった。
【0019】
また、上記したように給糸体の筒管内径が小さくなってきていることから、かかる給糸体をロボットアームでハンドリングして、クリールの支持ペッグが給糸体の筒管内周に挿入するように給糸体を支持ペッグに装着するためのロボットアームの動作制御の精度を向上させなければならないという問題点もあった。
【0020】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、上記した従来のクリール用のローディング装置のように、給糸体をクリールの支持ペッグに装着する場合に手作業で移し替える必要がなく、かつ、多関節型ロボットアームを使用することなく、高所にある支持ペッグに対して作業員が危険を冒さずに給糸体の装着をすることができる給糸体装着装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0021】
この目的を達成するために、第1発明の給糸体装着装置は、糸を筒状の筒管に巻回してできる複数の給糸体と、その各給糸体の筒管内周より細い形態であってその筒管内周に挿入された状態でその筒管内周上面に内接して給糸体を支持する複数の支持ペッグと、その支持ペッグにより支持される給糸体の筒管内周であってその支持ペッグの下側にできる隙間空間である給糸体筒管内周隙間とを有し、各支持ペッグにより支持された各給糸体から糸を送り出すクリールに対して用いられるものであり、クリールにおける給糸体既装着(給糸体が装着済みの状態をいう。以下この欄で同じ。)の支持ペッグから取り外された給糸体を、後記移送ペッグにより支持した状態で、給糸体未装着(給糸体が未装着の状態をいう。以下この欄で同じ。)の他の支持ペッグまで移送する移送手段と、その移送手段に設けられ、給糸体既装着の支持ペッグから給糸体を受け取って給糸体未装着の支持ペッグまで移送して受け渡すため、給糸体の筒管内周に挿入することによってその筒管内周上面に内接した状態で給糸体を支持可能であって給糸体の筒管内周より細い形態をした移送ペッグと、その移送ペッグを給糸体筒管内周隙間内に挿入した状態で、給糸体の筒管の軸方向に直交する平面内で、その移送ペッグと支持ペッグとの間に間隔を空けた状態のまま、その移送ペッグを、支持ペッグの下側からその横側を通過してその上側まで到達する上昇軌道に沿って移動させることによって、給糸体の筒管内周で前記移送ペッグ及び支持ペッグの上下位置を入れ替えて、その支持ペッグを前記移送ペッグの下側にある給糸体筒管内周隙間に退避させて給糸体の筒管をその支持ペッグから前記移送ペッグに載せ換える動作を実行する給糸体受取手段とを備えている。
【0022】
ここで、給糸体は、筒状の筒管に糸を巻回(巻き付け)してできる糸のパッケージであり、クリールは、複数の給糸体の筒管内周にそれぞれ挿入されて複数の給糸体をそれぞれ個別に支持する複数の支持ペッグと、その支持ペッグにより支持される給糸体の筒管内周であってその支持ペッグの下側にできる隙間空間である給糸体筒管内周隙間とを有しており、複数の給糸体を複数本の支持ペッグで支持した状態で各給糸体から糸を送り出すものである。
【0023】
この第1発明の給糸体装着装置によれば、クリールの支持ペッグに対して給糸体を装着するために用いられるものであって、特に、給糸体既装着の一又は二以上の支持ペッグから一又は二以上の給糸体を取り外して給糸体未装着の他の一又は二以上の支持ペッグに装着するものである。
【0024】
具体的には、この給糸体装着装置は、給糸体既装着の支持ペッグから給糸体を移送ペッグによって受け取って、その移送ペッグによって給糸体を支持した状態で、給糸体未装着の支持ペッグまで移送し、その給糸体未装着の支持ペッグに移送ペッグにより給糸体を受け渡すものであるところ、給糸体既装着の支持ペッグから給糸体を移送ペッグによって受け取るため、この移送ペッグが給糸体の筒管の外から筒管内周の給糸体筒管内周隙間内へ挿入されるように移動される。
【0025】
なお、このようにして移送ペッグが挿入状態となるのは、給糸体の筒管内周上面に内接した状態でこの給糸体を支持する支持ペッグが存在してはいるものの、この支持ペッグ及び移送ペッグの双方が筒管内周より細い形態であり、かつ、この支持ペッグの下側に当該支持ペッグとの間に間隔を空けた状態で移送ペッグを挿入可能な大きさを有した給糸体筒管内周隙間ができるからである。つまり、給糸体の筒管内周が、支持ペッグ及び移送ペッグの双方が互いに間隔を隔てた状態で同時に挿入できる大きさとなっているからである。
【0026】
上記した移送ペッグを支持ペッグの下側にある給糸体筒管内周隙間内に挿入した状態において、この移送ペッグは、給糸体受取手段によって、給糸体の筒管の軸方向に直交する平面内にて、その移送ペッグと支持ペッグとの間に間隔を空けた状態のままで、支持ペッグの下側からその横側を通過してその上側まで到達する上昇軌道に沿って移動される。
【0027】
この給糸体受取手段による移送ペッグの移動によって、給糸体の筒管内周で移送ペッグ及び支持ペッグの上下位置が入れ替えられて、結果、この支持ペッグが移送ペッグの下側にある給糸体筒管内周隙間に退避させられて、給糸体の筒管が支持ペッグから移送ペッグに載せ換えられて、移送ペッグにより給糸体が支持された状態となる。
【0028】
この給糸体受取手段による給糸体の載せ換え後、移送ペッグを移動し、その移送ペッグにより支持された給糸体の給糸体筒管内周隙間内から支持ペッグを抜き出してから、移送手段によって、移送先となる給糸体未装着の支持ペッグへ向けて給糸体ごと移送ペッグを移動することで、給糸体を移送先となる給糸体未装着の他の支持ペッグへ向けて移送するのである。
【0029】
第2発明の給糸体装着装置は、第1給糸体装着装置において、前記給糸体受取手段による前記上昇軌道は、前記給糸体の筒管軸方向に直交する平面内で、支持ペッグを中心とした円弧状の軌道となるものである。
【0030】
この第2発明の給糸体装着装置によれば、第1発明の給糸体装着装置と同様の作用及び効果を奏するうえ、移送ペッグが給糸体筒管内周隙間内に挿入された状態で、この移送ペッグは、給糸体受取手段によって、給糸体の筒管の軸方向に直交する平面内にて、その移送ペッグと支持ペッグとの間に間隔を空けた状態のままで、支持ペッグの下側からその横を通過してその上側まで到達する上昇軌道に沿って移動される。
【0031】
このとき、移送ペッグが移動する上昇軌道は、給糸体の筒管軸方向に直交する平面内で、支持ペッグを中心とした円弧状の軌道となるので、支持ペッグから移送ペッグへの給糸体の載せ換えを円滑に行うことができる。
【0032】
第3発明の給糸体装着装置は、糸を筒状の筒管に巻回してできる複数の給糸体と、その各給糸体の筒管内周より細い形態であってその筒管内周に挿入された状態でその筒管内周上面に内接して給糸体を支持する複数の支持ペッグと、その支持ペッグにより支持される給糸体の筒管内周であってその支持ペッグの下側にできる隙間空間である給糸体筒管内周隙間とを有し、各支持ペッグにより支持された各給糸体から糸を送り出すクリールに対して用いられるものであり、クリールにおける給糸体既装着の支持ペッグから取り外された給糸体を、後記移送ペッグにより支持した状態で、給糸体未装着の他の支持ペッグまで移送する移送手段と、その移送手段に設けられ、給糸体既装着の支持ペッグから給糸体を受け取って給糸体未装着の支持ペッグまで移送して受け渡すため、給糸体の筒管内周に挿入することによってその筒管内周上面に内接した状態で給糸体を支持可能であって給糸体の筒管内周より細い形態をした移送ペッグと、その移送ペッグにより支持される給糸体の給糸体筒管内周隙間内に支持ペッグを挿入した状態で、給糸体の筒管の軸方向に直交する平面内で、その支持ペッグと前記移送ペッグとの間に間隔を空けた状態のまま、その移送ペッグを、支持ペッグの上側からその横側を通過してその下側まで到達する下降軌道に沿って移動させることによって、給糸体の筒管内周で当該移送ペッグ及び支持ペッグの上下位置を入れ替えて、その移送ペッグを支持ペッグの下側にある給糸体筒管内周隙間に退避させて給糸体の筒管を当該移送ペッグから支持ペッグに載せ換える動作を実行する給糸体受渡手段とを備えている。
【0033】
この第3発明の給糸体装着装置によれば、クリールの支持ペッグに対して給糸体を装着するために用いられるものであって、給糸体既装着の一又は二以上の支持ペッグから一又は二以上の給糸体を取り外して給糸体未装着の他の一又は二以上の支持ペッグに装着するものである。
【0034】
具体的には、この給糸体装着装置は、給糸体既装着の支持ペッグから給糸体を移送ペッグによって受け取って、その移送ペッグによって給糸体を支持した状態で、給糸体未装着の支持ペッグまで移送し、その給糸体未装着の支持ペッグに移送ペッグにより給糸体を受け渡すものであるところ、給糸体を移送ペッグによって給糸体未装着の支持ペッグに受け渡すため、この移送ペッグにより支持された給糸体の給糸体筒管内周隙間内へ給糸体未装着の支持ペッグが挿入されるように、移送ペッグを移動させる。
【0035】
なお、このようにして移送ペッグが挿入状態となるのは、給糸体の筒管内周上面に内接した状態でこの給糸体を支持する移送ペッグが存在しているが、この移送ペッグ及び支持ペッグの双方が筒管内周より細い形態であり、かつ、この移送ペッグの下側に当該移送ペッグとの間に間隔を空けた状態で給糸体未装着の支持ペッグを挿入可能な大きさを有した給糸体筒管内周隙間ができるからである。つまり、給糸体の筒管内周が、支持ペッグ及び移送ペッグの双方が互いに間隔を隔てた状態で同時に挿入できる大きさとなっているからである。
【0036】
上記した支持ペッグを移送ペッグの下側にある給糸体筒管内周隙間内に挿入した状態において、この移送ペッグは、給糸体受渡手段によって、給糸体の筒管の軸方向に直交する平面内にて、その移送ペッグと支持ペッグとの間に間隔を空けた状態のままで、支持ペッグの上側からその横側を通過してその下側まで到達する下降軌道に沿って移動される。
【0037】
この給糸体受渡手段による移送ペッグの移動によって、給糸体の筒管内周で移送ペッグ及び支持ペッグの上下位置が入れ替えられて、結果、この移送ペッグが支持ペッグの下側にある給糸体筒管内周隙間に退避させられて、給糸体の筒管が移送ペッグから支持ペッグに載せ換えられて、支持ペッグにより給糸体が支持された状態となる。
【0038】
この給糸体受渡手段による給糸体の載せ換え後、移送手段によって移送ペッグを移動し、その移送ペッグを給糸体の給糸体筒管内周隙間から抜き出すことで、移送元から移送されてきた給糸体を移送先となる支持ペッグに装着するのである。
【0039】
第4発明の給糸体装着装置は、第3発明の給糸体装着装置において、前記給糸体受渡手段による前記下降軌道は、前記給糸体の筒管軸方向に直交する平面内で、支持ペッグを中心とした円弧状の軌道となるものである。
【0040】
この第4発明の給糸体装着装置によれば、第3発明の給糸体装着装置と同様の作用及び効果を奏するうえ、支持ペッグが給糸体筒管内周隙間内に挿入された状態で、移送ペッグは、給糸体受渡手段によって、給糸体の筒管の軸方向に直交する平面内にて、支持ペッグとの間に間隔を空けた状態のままで、支持ペッグの上側からその横を通過してその下側まで到達する下降軌道に沿って移動される。
【0041】
このとき、移送ペッグが移動する下降軌道は、給糸体の筒管軸方向に直交する平面内で、支持ペッグを中心とした円弧状の軌道となるので、移送ペッグから支持ペッグへの給糸体の載せ換えを円滑に行うことができる。
【発明の効果】
【0042】
本発明の給糸体装着装置によれば、従来のクリール用のローディング装置のように、給糸体をクリールの支持ペッグに装着する場合に手作業で移し替える必要がなく、かつ、多関節型ロボットアームを使用することなく、高所にある支持ペッグに対して作業員が危険を冒さずに給糸体の装着をすることができるとい効果がある。
【0043】
しかも、例えば、予め手作業で下段側にある支持ペッグに給糸体を装着しておき、その給糸体を下段側にある支持ペッグから上段側にある支持ペッグへ移送することができるので、給糸体の重量が重くて手作業では装着することが難しい上段側にある支持ペッグにも、移送ペッグによって下段側にある支持ペッグから給糸体を取り外して移送して容易に装着することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】本発明の給糸体装着装置に関する実施形態の一例であるクリールローダ1の正面図である。
図2】(a)は、給糸体60が装着されているクリール50の正面図であり、(b)は、(a)に示したクリール50の一部を拡大視した拡大正面図である。
図3】クリールローダ1及びクリール50の部分的な拡大側面図であって、特に、クリールローダ1の移送装置5及びペッグ駆動装置10を拡大側面視した図である。
図4】クリールローダ1の部分的な拡大正面図であって、特に、クリールローダ1のペッグ駆動装置10を拡大正面視した図である。
図5】(a)は、クリールローダ1の電気的構成を示したブロック図であり、(b)は、給糸体受取動作中における、ロードペッグ9の上昇軌道及びその移動軌跡、給糸体60(の筒管61)の移動軌跡、及び、支持ペッグ53の位置を正面視した説明図であり、(c)は、給糸体受渡動作中における、ロードペッグ9の下降軌道及びその移動軌跡、給糸体60(の筒管61)の移動軌跡、及び、支持ペッグ53の位置を正面視した説明図である。
図6】制御プログラム37aが演算処理部36により実行されることによって制御装置16を一部として実現される各処理部を示したブロック図である。
図7】クリールローダ1のロードペッグ9の一連の動作を説明するための図である。
図8】クリールローダ1のロードペッグ9の一連の動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態の一例について説明する。
【0046】
<クリール50の支持ペッグ53の段数>
ここで、クリール50(図2参照。)については、その上下方向にN段(本)の支持ペッグ53を備えたものであり、このクリール50の最下段にある支持ペッグ53を第1段目として第1支持ペッグ53といい、この第1支持ペッグ53から上方に向かって順番に、第2段目を第2支持ペッグ53、第3段目を第3支持ペッグ53、・・・、最上段にあたるN段目を第N支持ペッグ53というものとする。また、本実施形態では、クリール50の一例として、その支持ペッグ53の段数がN=8のもを用いて以下説明する。
【0047】
<クリールローダ1のロードペッグ9の段数>
また、本実施形態のクリールローダ1は、クリール50の段数N(=8)の半数に相当する段数N/2(=8/2=4)、即ち、4段(本)のロードペッグ9を備えたものを一例に説明している。なお、クリールローダ1のロードペッグ9も、クリール50の支持ペッグ53と同様に、その最下段にあるロードペッグ9を第1段目として第1ロードペッグ9といい、この第1ロードペッグ9から上方に向かって順番に、第2段目を第2ロードペッグ9、第3段目を第3ロードペッグ9、最上段にあたるN/2段目、即ち、4段目を第4ロードペッグ9というものとする。
【0048】
<クリールローダ1>
<台車2>
図1は、本発明の給糸体装着装置に関する実施形態の一例であるクリールローダ1の正面図である。図1に示すように、クリールローダ1は、4輪の車輪3が回転可能に軸着された台車2を備えている。この台車2は、その進行方向(図1の前後方向)における前後に2輪ずつ計4輪の車輪3が回転可能に軸着された走行体であり、4輪の車輪3が2本の軌道レール4上に転動可能に接地している。
【0049】
ここで、図1では、台車2の4輪の車輪3と、2本の軌道レール4とのうち、図1の紙面に対する垂直方向手前側に表れる前後2輪の車輪3と、これらの前後2輪の車輪3が接地する1本の軌道レール4のみを図示している。なお、図1に表れていない残る前後2輪の車輪3は、図1に図示した各車輪3の背後(図1の紙面に対する垂直方向奥側)にあり、図1に表れていない残る1本の軌道レール4は、図1に図示した軌道レール4の背後(図1の紙面に対する垂直方向奥側)にある。
【0050】
<軌道レール4>
2本の軌道レール4は、クリール50の全長方向(図1の左右方向)と同一方向に向かって連続して敷設されており、図1の紙面に対する垂直方向においてクリール50から一定の距離を隔てた状態で、かかるクリール50に対して平行に敷設されている。このため、クリールローダ1の台車2は、クリール50から常時一定の距離を保ちつつクリール50の全長方向へ移動可能となっている。
【0051】
<移送装置5>
移送装置5は、クリール50における任意の縦1列の下側半分にある第1から第4支持ペッグ53に装着されていた4個の給糸体60を、その同列の上側半分にある第5から第8支持ペッグ53まで移送する装置である。この移送装置5は、主に、移送移動体6と、移送ガイド7と、移送駆動装置8とを備えている。
【0052】
<移送移動体6>
移送移動体6は、その正面部に複数本(本実施形態では4本)のロードペッグ9及びペッグ駆動装置10を搭載したものであり、これらを介して給糸体60をクリール50の移送元の支持ペッグ53から移送先の支持ペッグ53まで移送するため、上下方向に昇降移動する部材である。なお、ペッグ駆動装置10の詳細については後述する(図3及び図4参照。)。
【0053】
<ロードペッグ9>
複数本のロードペッグ9は、移送移動体6の上下方向(鉛直方向)に一列かつ等間隔で設けられており、各ロードペッグ9は、いずれも同一の形状及びサイズに形成されている。各ロードペッグ9は、移送移動体6に搭載される前後移動体24の正面部から水平方向(図1の紙面に対する垂直方向手前側)へ向けて突出されている(図3参照。)。
【0054】
この複数本のロードペッグ9は、クリール50に設けられる複数本の支持ペッグ53から給糸体60を同時に受け取って取り外すとともに、クリール50に設けられる複数本の支持ペッグ53に給糸体60を同時に受け渡して装着するためのクリールローダ用のペッグピンである。
【0055】
<移送ガイド7>
移送ガイド7は、台車2の上面中央から鉛直上方に向かって延びる長方形状の枠体であり、この移送ガイド7の枠内には、移送移動体6が上下方向にスライド移動自在に填め込まれている。この移送ガイド7は、低位置にある移送元の支持ペッグ53と高位置にある移送先の支持ペッグ53との間を移送移動体6が昇降移動する場合に、この移送移動体6が常時一定の昇降移動経路を移動するようにガイド(誘導)するものである。
【0056】
<移送駆動装置8>
移送駆動装置8は、移送移動体6を移送ガイド7に沿って昇降移動させる動力を伝達付与するための装置であり、主に、移送動力伝達機構11と、電動モータ12とを備えている。また、移送動力伝達機構11は、昇降チェーン11aと、スプロケット11bとを備えている。
【0057】
移送動力伝達機構11の昇降チェーン11aは、その下端部が移送移動体6の上端部に固定的に接続されており、移送ガイド7の上端部分に回転自在に軸支されているスプロケット11bの外周に歯合されている。スプロケット11bは、その回転軸に電動モータ12の回転軸が連結されている。この電動モータ12の回転駆動によってスプロケット11b及び昇降チェーン11aを介して、移送移動体6は、上下方向に昇降移動するようになっている。
【0058】
<制御ボックス13>
制御ボックス13は、台車2の進行方向後方側(図1右側)に移送ガイド7に隣接して設けられている。制御ボックス13の上面には、クリールローダ1の各種の電気的構成部分を稼働させるために操作される操作パネル14が設けられており、この操作パネル14には、各種操作を行うためのタッチパネル機能を有するLCD(以下「タッチパネル表示器15」という。)が設けられている。
【0059】
この制御ボックス13には、後述する制御装置16と、画像処理装置17と、電動モータ12,30~32を駆動するためのサーボアンプ回路18~21とが内蔵されている。画像処理装置17は、撮影カメラ22により撮影された撮影画像に画像処理を施すものであり、制御装置16は、クリールローダ1に搭載されている電気的構成部分の駆動制御を行うためのものである。なお、本実施形態で用いる電動モータ12,30~32はいずれもサーボモータが用いられている。
【0060】
<撮影カメラ22>
撮影カメラ22は、クリールローダ1の台車2の進行方向前方側(図1左側)に、固定用ブラケットを介して支持固定されている。この撮影カメラ22は、クリールローダ1のロードペッグ9と、クリール50の支持ペッグ53と、その支持ペッグ53に装着される給糸体60との位置関係を検出するためのセンサ用のカメラである。
【0061】
この撮影カメラ22は、その撮影範囲(撮影フレーム)内に、クリール50の第4支持ペッグ53と、この第4支持ペッグ53に装着される給糸体60の筒管61(図2(b)参照。)と、初期待機位置(図7(a)及び図7(b)に示す位置)にある第4ロードペッグ9とが同時にフレームインするように、設置されている。
【0062】
ここで、移送移動体6の初期待機位置とは、この移送移動体6の第1~第4ロードペッグ9がクリール50の第1から第4支持ペッグ53により支持される4個の給糸体60の筒管61の内周の筒内隙間62の各々に正対する位置(図7(a)参照。)であって、各ロードペッグ9の先端が各支持ペッグ53の先端まで所定距離W1だけ水平方向に離間した位置(図7(b)参照。)、即ち、各ロードペッグ4が各筒内隙間62内へ挿入可能な適正位置をいう(図3図7(a)及び図7(b)参照。)。
【0063】
具体的には、撮影カメラ22の設置高さは、当該台車2の車輪3を軌道レール4上に載せた状態において、クリール50の第4支持ペッグ53の高さ位置、及び、この第4支持ペッグ53により支持される給糸体60の筒管61の筒内隙間62の高さ位置、のそれぞれ略等しい高さ位置となっている。なお、本実施形態において、その説明に用いる高さ位置の基準位置(ゼロレベル)は、クリール50の設置場所の設置面である。
【0064】
ところで、第4ロードペッグ9が第4支持ペッグ53に支持される給糸体60の筒内隙間62に対して正対位置にある場合、撮影カメラ22は、第4ロードペッグ9に対して台車2の前進方向前側(図1左側)に位置するため、これら第4支持ペッグ53により支持される給糸体60(以下「第4段目給糸体60」という。)を斜め前方から斜視するとともに第4ロードペッグ9を斜め後方から斜視した状態で画像(以下「検出斜視画像」という。)を撮影することとなる。このため、画像処理装置17は、この検出斜視画像に正対補正処理を施して、第4ロードペッグ9と同一位置から第4支持ペッグ及びこれにより支持される給糸体60を撮影カメラ22で撮影したら写るであろう画像(以下「正対補正画像」という。)を生成し、この正対補正画像をタッチパネル表示器15に表示するようにする。
【0065】
また、タッチパネル表示器15には、この正対処理画像と一緒に、第4ロードペッグ9の位置を表すポインタが表示される。さすれば、タッチパネル表示器15を作業者が見ながら、このポインタを正対補正画像中の第4段目給糸体60の筒内隙間62に一致させるように台車2を前後に位置調節することで、第1から第4ロードペッグ9の位置を第1から第4支持ペッグ53に支持される給糸体60の筒内隙間62に位置合わせすることができる。
【0066】
<ロック装置23>
ロック装置23は、クリールローダ1の台車2を、軌道レール4上における任意の位置で移動不能に固定するための装置である。クリールローダ1により任意の1列にある給糸体60を移送する場合、台車2を移動させて任意の1列にある給糸体60に対して複数のロードペッグ9を位置合わせした後、ロック装置23によってクリールローダ1の台車2を軌道レール4上で移動不能に固定状態にしてから、ロードペッグ9による給糸体60の移送を行うのである。
【0067】
さらに、クリールローダ1により別の1列にある給糸体60を移送する場合は、ロック装置23による台車2の軌道レール4上での固定を解除して台車2を移動可能な状態にしてから、台車2を移動させて別の1列にある給糸体60に対して複数のロードペッグ9を位置合わせした後、ロック装置23によってクリールローダ1の台車2を軌道レール4上で移動不能に固定状態にして、この別の1列の給糸体60を移送するのである。
【0068】
<クリール50の構造>
図2(a)は、給糸体60が装着されているクリール50の部分的な正面図であり、図2(b)は、図2(a)に示したクリール50の一部を拡大視した拡大正面図である。図2(a)に示すように、クリール50は、複数の給糸体60が装着されている。クリール50は、本体スタンド51と、複数の回転枠52と、複数の支持ペッグ53とを備えている。
【0069】
<本体スタンド51>
本体スタンド51は、その横方向(全長方向)(図2(a)の左右方向)、即ち、クリールローダ1の軌道レール4と同一方向に向かって延設されている。この本体スタンド51には、その上部及び下部に上梁部51aと下梁部51bとが横方向(図2の左右方向)に水平に設けられており、この上梁部51a及び下梁部51bの間に、複数の回転枠52が、本体スタンド51の横方向に等間隔で一列状に配設されている。なお、図2(a)には、2つの回転枠52のみを図示している。
【0070】
<回転枠52>
複数の回転枠52は、どれも同一形状かつ同一サイズに形成されており、どれも横方向中央の上下が本体スタンド51の上梁部51a及び下梁部51bに対して回転自在に軸支されており、本体スタンド51に対して鉛直軸周りで回転可能に支持されている。
【0071】
各回転枠52は、その横方向に等間隔で5列設けられる桁部材52aと、この5本の桁部材52aの上端及び下端に連設され横方向に水平に延設される上下2本の桟部材52bとを備えており、これらの桁部材52a及び桟部材52bによって枠状に形成されている。また、各回転枠52の各桁部材52aには、その上下方向に等間隔で8本の支持ペッグ53が設けられている。
【0072】
<複数の支持ペッグ53>
複数の支持ペッグ53は、各回転枠52の横方向及び縦方向に等間隔に合計40本設けられている。複数の支持ペッグ53は、各桁部材52aから水平方向(図2の紙面に対する垂直方向手前側、図3の右方向)に突出された丸棒状体で形成されており、その外径が給糸体60の筒管61(内周の)内径よりも細い形態となっており、給糸体60の筒管61の内周に挿入された状態で給糸体60を支持するようになっている。なお、各支持ペッグ53は、どれも回転枠52の桁部材52aからの突出長さが等しくなっている。
【0073】
<給糸体60>
給糸体60は、筒状に形成された筒管61外周に糸が巻回されて形成された糸パッケージである。給糸体60の筒管61は、その軸方向が支持ペッグ53の突出方向(図2(a)の紙面に対する垂直方向、図3の右方向)と同一方向を向いている。給糸体60は、その筒管61の軸方向両端が開口(以下「筒端開口」という。)となっており、この筒端開口(筒管61の内周の端部開口)の内径はクリール50の支持ペッグ53及びクリールローダ1のロードペッグ9が互いに一定の間隔W2(図5(b)及び図5(c)参照。)を隔てて一緒に挿入可能な大きさとなっている。なお、例えば、給糸体60の筒管61の内径は50mmである。
【0074】
クリール50に装着された給糸体60は、その給糸体60の筒管61の内周上面61a(内周面における天井面)に支持ペッグ53が内接した状態で、かかる支持ペッグ53によって支持されており、この筒管61の内周における支持ペッグ53の下側には、ロードペッグ9を挿入可能な大きさの隙間空間である筒内隙間62が設けられている。
【0075】
<ロードペッグ9>
図3は、クリールローダ1及びクリール50の部分的な拡大側面図であって、特に、クリールローダ1の移送移動体6及びペッグ駆動装置10を拡大側面視した図である。図3に示すように、4本のロードペッグ9と、ペッグ駆動装置10とは、移送移動体6に搭載されている。4本のロードペッグは、クリール50の支持ペッグ53から給糸体60を受け取り、かかる給糸体60を別の支持ペッグ53に受け渡すための部材である。
【0076】
4本のロードペッグ9は、移送移動体6の正面から水平方向(図3の左方向)に突出された丸棒状体で形成されており、その外径が給糸体60の筒管61(内周の)内径よりも細い形態となっており、給糸体60の筒管61の内周に挿入された状態で給糸体60を支持するようになっている。なお、各ロードペッグ9は、どれも同一形状及び同一サイズに形成されており、移送移動体6からの突出長さが等しくなっている。
【0077】
これら4本のロードペッグ9は、ペッグ駆動装置10によって、各ロードペッグ9の軸方向(給糸体60の筒管61軸方向と一致する方向)と同一方向に前進移動及び後退移動(図3の左右方向)され、かつ、各ロードペッグ9の軸方向に直交する平面内で縦横(上下左右)(図3の上下方向及び図3の紙面に対する垂直方向、図4の上下左右方向)方向に移動される。
【0078】
なお、上記した台車2の前後移動方向(前進方向及び後退方向をいう。)とは、図3の紙面に対する垂直方向(図1の左右方向)をいう一方、ロードペッグ9の前後移動方向(前進方向及び後退方向をいう。)とは、図3の左右方向(図1の紙面に対する垂直方向)をいう。
【0079】
<ペッグ駆動装置10>
ペッグ駆動装置10は、移送移動体6の正面部に配設されており、主に、前後移動体24と、縦移動体25と、横移動体26と、これら3つの移動体24~26を移動させる動力を付与する前後移動駆動装置27、縦移動駆動装置28及び横移動駆動装置29とを備えている。また、このペッグ駆動装置10においては、前後移動体24が縦移動体25に、縦移動体25が横移動体26に、横移動体26が移送移動体6に、それぞれ搭載されている。
【0080】
<前後移動体24>
前後移動体24は、4本のロードペッグ9を支持する平板状をした移動体であり、この前後移動体24の正面には、各ロードペッグ9の基端部が固定されている。
【0081】
<縦移動体25>
縦移動体25は、前後移動体24を保持する側面視コ字状をした移動体であり、横移動体26に対して上下方向にスライド移動可能に係合保持される縦移動基部25aと、この縦移動基部25aの上端部及び下端部に一体的に連設されロードペッグ9の突設方向と同一方向に突設される上下一対の前後移動ガイド部25bとを備えている。
【0082】
上下一対の前後移動ガイド部25bのうち、上側にある前後移動ガイド部25bには前後移動体24の上端部が、下側にある前後移動ガイド部25bには前後移動体24の下端部が、それぞれ前後方向にスライド移動可能に係合されている。結果、縦移動体25は、前後移動体24を当該縦移動体25に対して前後方向(図3の左右方向)にスライド移動可能に係合保持している。なお、前後移動体24を縦移動体25に対してスライド移動可能に係合保持する構造は便宜上図示を省略している。
【0083】
<横移動体26>
図4は、クリールローダ1の部分的な拡大正面図であって、特に、クリールローダ1の移送移動体6に配設されるペッグ駆動装置10を拡大正面視した図である。図4に示すように、横移動体26は、縦移動体25を保持する正面視矩形枠状(図4参照。)の移動体であり、その横幅方向両側に左右一対の縦移動ガイド部26aを備えている。
【0084】
左右一対の縦移動ガイド部26aのうち、左側にある縦移動ガイド部26aには縦移動体25の左端の縁辺部が、右側にある縦移動ガイド部26aには縦移動体25の右端の縁辺部が、それぞれ上下方向にスライド移動可能に係合されている。結果、横移動体26は、縦移動体25を当該横移動体26に対して上下方向(縦方向)(図4の上下方向)にスライド移動可能に係合保持している。なお、縦移動体25を横移動体26に対してスライド移動可能に係合保持する構造は便宜上図示を省略している。
【0085】
<移送移動体6>
移送移動体6は、その上部及び下部に上下一対の横移動ガイド部6aを備えている。この上下一対の横移動ガイド部6aのうち、上側にある横移動ガイド部6aには横移動体26の上端の縁辺部が、下側にある横移動ガイド部6aには横移動体26の下端の縁辺部が、それぞれ横方向(左右方向)にスライド移動可能に係合されている。結果、移送移動体6は、横移動体26を移送移動体6に対して左右方向(横方向)(図4の左右方向)にスライド移動可能に保持している。なお、横移動体26を移送移動体6に対してスライド移動可能に係合保持する構造は便宜上図示を省略している。
【0086】
図3に示すように、前後移動駆動装置27、縦移動駆動装置28及び横移動駆動装置29は、主に、電動モータ30~32と、この電動モータ30~32にそれぞれ連結されるねじ軸とこれらねじ軸にそれぞれ螺合される可動ナットとを有するボールねじ機構33~35とを、それぞれ備えている。これらの前後移動駆動装置27、縦移動駆動装置28及び横移動駆動装置29によれば、ボールねじ機構33~35の可動ナットが前後移動体24、縦移動体25、及び、横移動体26に固定されており、この可動ナットのねじ穴を通じてねじ軸が前後移動体24、縦移動体25、及び、横移動体26をこれらの移動方向に向けて貫通しており、電動モータ30~32が正転又は逆転することでねじ軸が正転又は逆転されて、このねじ軸の正転又は逆転により可動ナットを介して前後移動体24、縦移動体25、及び、横移動体26をそれぞれの移動方向へ往復移動させる。
【0087】
<前後移動駆動装置27>
図3に示すように、前後移動駆動装置27は、その電動モータ30が縦移動体25に固定されており、そのボールねじ機構33の可動ナットが前後移動体24に固定されており、その電動モータ30の回転軸に連結されているボールねじ機構33のねじ軸が可動ナットのねじ穴に螺合されており、このねじ穴を通じてねじ軸が前後移動体24を前後方向に貫通しており、電動モータ30が正転又は逆転することによって、そのねじ軸の軸方向に可動ナットが相対的に前進移動又は後退移動して、前後移動体24を前進移動又は後退移動(図3の右方への移動又は左方への移動)させる。
【0088】
<縦移動駆動装置28>
縦移動駆動装置28は、その電動モータ31が横移動体26に固定されており、そのボールねじ機構34の可動ナットが縦移動体25に固定されており、その電動モータ31の回転軸に連結されているボールねじ機構34のねじ軸が可動ナットのねじ穴に螺合されており、このねじ穴を通じてねじ軸が縦移動体25を上下方向に貫通しており、電動モータ31が正転又は逆転することによって、そのねじ軸の軸方向に可動ナットが相対的に上昇移動又は下降移動して、縦移動体25を上下方向(縦方向)に上昇移動又は下降移動(縦移動)(図3の上方への移動又は下方への移動)させる。
【0089】
<横移動駆動装置29>
図4に示すように、横移動駆動装置29は、その電動モータ32が移送移動体6に固定されており、そのボールねじ機構35の可動ナットが横移動体26に固定されており、その電動モータ32の回転軸に連結されているボールねじ機構35のねじ軸が可動ナットのねじ穴に螺合されており、このねじ穴を通じてねじ軸が横移動体26の左右方向(横方向)に貫通しており、電動モータ32が正転又は逆転することによって、そのねじ軸の軸方向に可動ナットが相対的に左右方向に移動して、横移動体26を右移動又は左移動(横移動)(図4の右方への移動又は左方への移動)させる。
【0090】
上記したように、4本のロードペッグ9が前後移動体24の正面部に固定されるので、この前後移動体24を前後移動駆動装置27により前後方向にスライド移動させることによって、4本のロードペッグ9の全てを一緒に前後方向に移動させることができる。よって、4本のロードペッグ9の全てを同時に、クリール50の4本の支持ペッグ53に支持されている4個の給糸体60の筒内隙間62に挿入することができ、かつ、これら4個の給糸体60の筒内隙間62から抜脱することができる。
【0091】
また、4本のロードペッグ9が前後移動体24に固定されることに加え、この前後移動体24が縦移動体25に搭載され、この縦移動体25が横移動体26に搭載されるので、縦移動駆動装置28により縦移動体25を縦方向にスライド移動させ、かつ、横移動駆動装置29により横移動体26を横方向にスライド移動させることによって、4本のロードペッグ9の全ては、給糸体60の筒管61の軸方向に直交する平面(図1及び図4の紙面と同一又は平行な平面をいう。以下同じ。)内の縦方向にもその横方向にも移動することができる。よって、4本のロードペッグ9の全てを同時に動作させて、クリール50の4本の支持ペッグ53から同時に4個の給糸体60の全てを受け取ることができ、かつ、これら4個の給糸体60の全てを同時にクリール50の4本の支持ペッグ53に受け渡すことができる。
【0092】
<クリールローダ1の電気的構成>
図5(a)は、クリールローダ1の電気的構成を示したブロック図であり、図5(b)は、給糸体受取動作中における、ロードペッグ9の上昇軌道及びその移動軌跡、給糸体60(の筒管61)の移動軌跡、及び、支持ペッグ53の位置を正面視した説明図であり、図5(c)は、給糸体受渡動作中における、ロードペッグ9の下降軌道及びその移動軌跡、給糸体60(の筒管61)の移動軌跡、及び、支持ペッグ53の位置を正面視した説明図である。
【0093】
図5(a)に示すように、クリールローダ1は、主に、タッチパネル表示器15と、撮影カメラ22と、画像処理装置17と、制御装置16と、上記した移送駆動装置8並びにペッグ駆動装置10の前後移動駆動装置27、縦移動駆動装置28及び横移動駆動装置29の各電動モータ12,30~32と、これら各電動モータ電動モータ12,30~32用のサーボアンプ回路18~21とを備えている。
【0094】
<制御装置16>
制御装置16は、クリールローダ1が備えている各種の電気的機器と電気的に接続されており、かかるクリールローダ1の動作を制御するための機器である。
【0095】
この制御装置16は、制御用のコンピュータであり、各種処理の実行に必要となる演算処理を行う演算装置である演算処理部36と、制御プログラム37aや各種データを記憶する各種メモリなどの記憶装置である記憶部37と、上記した各種電気的機器がそれぞれ接続されてこれら各種電気機器との間で各種データや各種信号の入出力を行うインターフェイス装置である入出力部38とを備えている。なお、本実施形態において、制御装置16は、プログラマブルコントローラ(PLC(Programmable-Logic-Controllerの略称をいう。))が用いられている。
【0096】
制御装置16の入出力部38には、上記したタッチパネル表示器15と、画像処理装置17と、電動モータ用のサーボアンプ回路18~21とが、それぞれ電気的に接続されている。また、画像処理装置17には撮影カメラ22が、サーボアンプ回路18~21には電動モータ12,30~32が、それぞれ電気的に接続されている。
【0097】
制御装置16の記憶部37には、その演算処理部36により実行される制御プログラム37aが記憶されている。この制御プログラム37aが演算処理部36によって実行されることで、制御装置16は、図6に示している各処理部として機能するものとなる。また、この記憶部37には、下記する移送手段39、ロードペッグ前進手段40、ロードペッグ後退手段41、給糸体受取手段42、給糸体受渡手段43、及び、初期待機復帰手段44により実行される各種動作に関するデータ、例えば、後述する初期待機位置、受取準備位置、受取既済位置、受取後待機位置、上昇後待機位置、受渡準備位置、受渡既済位置、及び、受渡後待機位置に関する位置座標データ、並びに、給糸体受取動作中のロードペッグ9の上昇軌道の位置座標データ及び、給糸体受渡動作中のロードペッグ9の下降軌道の位置座標データも併せて記憶している。
【0098】
なお、移送手段39、ロードペッグ前進手段40、ロードペッグ後退手段41、給糸体受取手段42、給糸体受渡手段43、及び、初期待機復帰手段44の一部として機能する電動モータ12,30~32は、いずれもサーボモータであって、電動モータ12,30~32の回転軸の回転量検出のためにパルスエンコーダが搭載されている。このことから、制御装置16は、このパルスエンコーダによる検出回転量に基づいて、移送移動体6、前後移動体24、縦移動体25、及び、横移動体26の位置検出を行い、この位置検出データ及び上記各位置座標データに基づいて、各移動体の位置制御を行うことができる。
【0099】
<画像処理装置17>
画像処理装置17は、撮影カメラ22により撮影され検出斜視画像が入力されて、この検出斜視画像に正対補正を施して正対補正画像を生成して、タッチパネル表示器15へ出力する装置である。
【0100】
<サーボアンプ回路18~21>
サーボアンプ回路18~21は、制御装置16から入力されたそれぞれの目標値に基づいて、電動モータ12,30~32の駆動電力を調節して電動モータ12,30~32へそれぞれ出力する。この電動モータ12,30~32の回転量はパルスエンコーダによりそれぞれ検出されており、この検出された回転量と目標値との差分がゼロとなるようにサーボアンプ回路18~21が電動モータ12,30~32の駆動電力を調節して電動モータ12,30~32へと入力するのである。これによって、移送駆動装置8並びにペッグ駆動装置10の前後移動駆動装置27、縦移動駆動装置28及び横移動駆動装置29の各電動モータ12,30~32の動作を制御して、移送移動体6、前後移動体24、縦移動体25及び横移動体26の位置制御を行うのである。
【0101】
<クリールローダ1の制御装置16の各種機能手段>
図6は、制御プログラム37aが演算処理部36により実行されることで制御装置16の一部として実現される各処理部を示したブロック図である。図6に示すように、制御装置16は、その演算処理部36により制御プログラム37aが実行されることによって、移送手段39、ロードペッグ前進手段40、ロードペッグ後退手段41、給糸体受取手段42、給糸体受渡手段43、及び、初期待機復帰手段44のそれぞれの制御処理部として機能する。
【0102】
<移送手段39>
移送手段39は、後述する受取後待機位置(図7(j)に示す位置)にあるロードペッグ9を、上昇後待機位置(図8(b)に示す位置)へと鉛直上方へ上昇移動させて、その上昇後待機位置で停止させる一連の動作(以下「上昇移送動作」という。)を実行する処理部であって、この上昇移送動作を用いて、クリール50における給糸体60の既装着状態の支持ペッグ53から取り外された給糸体60を、ロードペッグ9により支持した状態で、クリール50における給糸体60の未装着状態の他の支持ペッグ53まで移送する処理部である。なお、ここで、給糸体60の「既装着」状態とは、支持ペッグ53に既に給糸体60が装着されている状態(装着済みの状態)をいい、給糸体60の「未装着」状態とは、支持ペッグ53に未だ給糸体60が装着されていない状態をいう。
【0103】
特に、この移送手段39は、移送移動体6を移送装置5の移送駆動装置8の動力により移送ガイド7に沿って鉛直上方へ上昇移動させることによって、この移送移動体6に固定されている各ロードペッグ9を鉛直上方へ上昇移動させるようになっており、かかる上昇移動を用いて、4本の第1乃至第4ロードペッグ9により受け取られた4個の給糸体60を、クリール50の任意の1列にある移送元となる4本の第1乃至第4支持ペッグ53からその同一列にある移送先となる4本の第5乃至第8支持ペッグ53へと移送する処理である。この結果、作業者の手が届かないクリール50の高位置にある支持ペッグ53に給糸体60を容易に装着することができるようになる。
【0104】
<ロードペッグ前進手段40>
ロードペッグ前進手段40は、後述する初期待機位置(図7(a)及び図7(b)に示す位置)又は上昇後待機位置(図8(a)及び図8(b)に示す位置)にあるロードペッグ9を、受取準備位置(図7(c)及び図7(d)に示す位置)又は受渡準備位置(図8(c)及び図8(d)に示す位置)へと水平方向に前進移動させて、その受取準備位置又は受渡準備位置で停止させるという一連の動作(以下「前進移動動作」という。)を実行する処理部である。
【0105】
特に、このロードペッグ前進手段40によれば、上記した前後移動体24が一対の前後移動ガイド25bを介して前後移動駆動装置27の動力により水平方向へ前進移動されることによって、前後移動体24に固定されている各ロードペッグ9を水平方向へ前進移動させるようになっている。
【0106】
<ロードペッグ後退手段41>
ロードペッグ後退手段41は、後述する受取既済位置(図7(g)及び図7(h)に示す位置)又は受渡既済位置(図8(g)及び図8(h)に示す位置)にあるロードペッグ9を、受取後待機位置(図7(i)及び図7(j)に示す位置)又は受渡後待機位置(図8(i)及び図8(j)に示す位置)へと水平方向へ後退移動させて、その受取後待機位置又は受渡後待機位置で停止させる一連の動作(以下「後退移動動作」という。)を実行する処理部である。
【0107】
特に、このロードペッグ前進手段40によれば、上記した前後移動体24が一対の前後移動ガイド25bを介して前後移動駆動装置27の動力により水平方向へ後退移動されることによって、前後移動体24に固定されている各ロードペッグ9を水平方向へ後退移動させるようになっている。
【0108】
<給糸体受取手段42>
給糸体受取手段42は、クリールローダ1の4本のロードペッグ9を、クリール50の任意の1列にある4本の支持ペッグ53により支持されている4個の給糸体60の筒内隙間62内に挿入した状態で、その各給糸体60の筒管61の軸方向に直交する平面(図7(c)、図7(e)及び図7(g)紙面と同一又は平行な平面をいう。以下同じ。)内で、同じ給糸体60の筒内隙間62内に同時に挿入状態にあるロードペッグ9と支持ペッグ53との間に間隔W2(図5(b)参照。)を空けた状態のまま、その給糸体60の筒管61の内周内で、支持ペッグ53の下側の受取準備位置(図5(b)の実線位置、図7(c)及び図7(d)に示す位置)からその横側位置(図5(b)の1点鎖線位置、図7(e)及び図7(f)に示す位置)を通過してその上側の受取既済位置(図5(b)の2点鎖線位置、図7(g)及び図7(h)に示す位置)まで到達する上昇軌道(図5(b)に図示する1点鎖線の矢印で示す軌道をいう。以下同じ。)に沿って、ロードペッグ9を支持ペッグ53を中心として円弧状に上昇移動させることによって、各給糸体60の筒管61の内周でロードペッグ9及び支持ペッグ53の上下位置を入れ替えて、その支持ペッグ53をロードペッグ9の下側にある給糸体60の筒内隙間62に退避させる一方、給糸体60の筒管61をその支持ペッグ53からロードペッグ9に載せ換える一連の動作(図5(b)及び図7(c)から図7(h)に示す一連の過程を有する動作をいう。以下「給糸体受取動作」ともいう。)を実行する処理部である。
【0109】
特に、この給糸体受取手段42によれば、前後移動体24に固定されている各ロードペッグ9は、上記した縦移動体25及び横移動体26が一対の縦移動ガイド26a及び一対の横移動ガイド6aを介して縦移動駆動装置28及び横移動駆動装置29の動力により各々移動されることによって、給糸体60の筒管61軸方向に直交する平面内で、各ロードペッグ9と同じ給糸体60の筒管61の内周内に挿入されている支持ペッグ53を中心とした円弧状の上昇軌道を辿って上昇移動して、給糸体受取動作を行うようになっている。
【0110】
なお、上記した給糸体受取動作における円弧状の上昇軌道は、例えば、その半径が25mmの半円状の軌道であり、この上昇軌道に沿って移動する過程で、ロードペッグ9は、横方向に最大25mm、上方向に最大50mm、移動することとなる。
【0111】
<給糸体受渡手段43>
給糸体受渡手段43は、クリールローダ1の4本のロードペッグ9により支持されている4個の給糸体60の筒内隙間62内に支持ペッグ53を挿入した状態で、その各給糸体60の筒管61の軸方向に直交する平面(図8(c)、図8(e)及び図8(g)の紙面と同一又は平行な平面をいう。以下同じ。)内で、同じ給糸体60の筒内隙間62内に同時に挿入状態にあるロードペッグ9と支持ペッグ53との間に間隔W2(図5(b)参照。)を空けた状態のまま、支持ペッグ53の上側の受渡準備位置(図5(c)の実線位置、図8(c)及び図8(d)に示す位置)からその横側位置(図5(c)の1点鎖線位置、図8(e)及び図8(f)に示す位置)を通過してその下側の受渡既済位置(図5(c)の2点鎖線位置、図8(g)及び図8(h)に示す位置)まで到達する下降軌道(図5(c)に図示する1点鎖線の矢印で示す軌道をいう。以下同じ。)に沿って、ロードペッグ9を支持ペッグ53を中心として円弧状に下降移動させることによって、各給糸体60の筒管61の内周でロードペッグ9及び支持ペッグ53の上下位置を入れ替えて、そのロードペッグ9を支持ペッグ53の下側にある給糸体60の筒内隙間62に退避させる一方、給糸体60の筒管61をそのロードペッグ9から支持ペッグ53に載せ換える一連の動作(図5(c)及び図8(c)から図8(h)に示す一連の過程を有する動作をいう。以下「給糸体受渡動作」ともいう。)を実行する処理部である。
【0112】
特に、この給糸体受渡手段43によれば、前後移動体24に固定されている各ロードペッグ9は、上記した縦移動体25及び横移動体26が一対の縦移動ガイド26a及び一対の横移動ガイド6aを介して縦移動駆動装置28及び横移動駆動装置29の動力により各々移動されることによって、給糸体60の筒管61軸方向に直交する平面内で、各ロードペッグ9と同じ給糸体60の筒管61の内周内に挿入されている支持ペッグ53を中心とした円弧状の下降軌道を辿って下降移動することで、給糸体受渡動作を行うようになっている。
【0113】
なお、上記した給糸体受渡動作における円弧状の下降軌道は、例えば、その半径が25mmの半円状の軌道であり、この下降軌道に沿って移動する過程で、ロードペッグ9は、横方向に最大25mm、下方向に最大50mm、移動することとなる。
【0114】
<初期待機復帰手段44>
初期待機復帰手段44は、後述する受渡後待機位置(図8(i)及び図8(j)に示す位置)にあるロードペッグ9を、初期待機位置(図7(a)及び図7(b)に示す位置)へと鉛直下方へ下降移動させて、その初期待機位置で停止させる下降動作を実行する処理部であって、この下降動作を用いて、クリール50の高位置にある支持ペッグ53に給糸体60を受け渡し終えたロードペッグ9を初期待機位置に返送して復帰させる一連の動作(以下「初期位置復帰動作」という。)を実行させる処理部である。
【0115】
特に、この初期待機復帰手段44は、移送移動体6を移送装置5の移送駆動装置8の動力により移送ガイド7に沿って鉛直下方へ下降移動させることによって、この移送移動体6に固定されている各ロードペッグ9を鉛直下方へ下降移動させるようになっている。
【0116】
<クリールローダ1の一連する各種動作>
次に、図7及び図8を参照して、上記したロードペッグ9の一連する各種動作、即ち、前進移動動作、給糸体受取動作、後退移動動作、上昇移移送動作、前進移動動作、給糸体受渡動作、後退移動動作、及び、初期位置復帰動作からなる一連の動作について説明する。
【0117】
図7及び図8は、クリールローダ1のロードペッグ9の一連の動作を説明するための図である。
【0118】
図7(a)は、クリール50の支持ペッグ53及びこれにより支持された給糸体60の正面図であり、初期待機位置にあるロードペッグ9を仮想線(2点鎖線)で図示している。図7(b)は、初期待機位置にあるロードペッグ9と給糸体60を支持した移送元の支持ペッグ53との側面図であり、給糸体60を縦断面視している。図7(c)は、給糸体60及びそれを支持した移送元の支持ペッグ53の正面図であり、受取準備位置にあるロードペッグ9を図7(d)のC-C線で横断面視している。図7(d)は、受取準備位置にあるロードペッグ9と給糸体60を支持した移送元の支持ペッグ53との側面図であり、給糸体60を縦断面視している。図7(e)は、給糸体60及び移送元の支持ペッグ53の正面図であり、給糸体受取手段42によって支持ペッグ53の横側へ移動したロードペッグ9を図7(f)のE-E線で横断面視している。図7(f)は、給糸体受取手段42によって支持ペッグ53の横側へ移動したロードペッグ9と移送元の支持ペッグ53との側面図であり、給糸体60を縦断面視している。図7(g)は、給糸体60及び支持ペッグ53の正面図であり、受取既済位置にあるロードペッグ9を図7(h)のG-G線で横断面視している。図7(h)は、受取既済位置にあるロードペッグ9及び給糸体60と給糸体60の筒内隙間62内にある支持ペッグ53との側面図であり、給糸体60を縦断面視している。図7(i)は、給糸体60が取り外された移送元の支持ペッグ53の正面図であり、受取後待機位置にあるロードペッグ9及び給糸体60を仮想線(2点鎖線)で図示している。図7(j)は、受取後待機位置にあるロードペッグ9及び給糸体60と移送元の支持ペッグ53及び移送先の支持ペッグ53との側面図であり、給糸体60を縦断面視しており、上昇後待機位置へと移動した後のロードペッグ9及び給糸体60を仮想線(2点鎖線)で図示している。
【0119】
図8(a)は、クリール50における給糸体60の移送先の支持ペッグ53の正面図であり、上昇後待機位置にあるロードペッグ9及び給糸体60を仮想線(2点鎖線)で図示している。図8(b)は、上昇後待機位置にあるロードペッグ9及び給糸体60と移送先の支持ペッグ53との側面図であり、給糸体60を縦断面視している。図8(c)は、給糸体60及びその移送先の支持ペッグ53の正面図であり、受渡準備位置にあるロードペッグ9を図8(d)のC-C線で横断面視している。図8(d)は、受渡準備位置にあるロードペッグ9及び給糸体60と移送先の支持ペッグ53との側面図であり、給糸体60を縦断面視している。図8(e)は、給糸体60及び支持ペッグ53の正面図であり、給糸体受渡手段43によって支持ペッグ53の横側へ移動したロードペッグ9を図8(f)のE-E線で横断面視している。図8(f)は、給糸体受渡手段43によって支持ペッグ53の横側へ移動したロードペッグ9と移送先の支持ペッグ53との側面図であり、給糸体60を縦断面視している。図8(g)は、給糸体60及び支持ペッグ53の正面図であり、受渡既済位置にあるロードペッグ9を図8(h)のG-G線で横断面視している。図8(h)は、受渡既済位置にあるロードペッグ9と給糸体60を支持した移送先の支持ペッグ53との側面図であり、給糸体60を縦断面視している。図8(i)は、給糸体60及びそれを支持した移送先の支持ペッグ53の正面図であり、受渡後待機位置にあるロードペッグ9を仮想線(2点鎖線)で図示している。図8(j)は、受渡後待機位置にあるロードペッグ9と給糸体60を支持した移送先の支持ペッグ53及び移送元の支持ペッグ53との側面図であり、給糸体60を縦断面視しており、初期待機位置に復帰した後のロードペッグ9を仮想線(2点鎖線)で図示している。
【0120】
本実施形態のクリールローダ1は、クリール50の支持ペッグ53に対して給糸体60を装着するために用いられるものであって、例えば、クリール50における給糸体60が装着済みの4本の支持ペッグ53から4個の給糸体60を取り外して、そのクリール50における給糸体60が未装着の他の4本の支持ペッグ53に、その4個の給糸体60を装着するものである。
【0121】
特に、クリール50の任意の1列における下側4段の支持ペッグ53に手作業で事前に装着しておいた4個の給糸体60を、クリールローダ1によってこれら下側4段の支持ペッグ53から取り外して、移送手段39によって移送して持ち上げて、それと同列の上側4段の支持ペッグ53に再装着することで、クリール50上段にある支持ペッグ53への給糸体60の装着を低い労力で行おうとするものである。
【0122】
なお、以下の説明では、図7(a)から図8(j)に示すように、クリールローダ1にある4本のロードペッグ9が一緒に同じ動作を行うことから、1本のロードペッグ9について各種動作を説明するが、残る3本のロードペッグ9についても同じ動作を行うものであるので、その説明を省略している。
【0123】
本実施形態のクリールローダ1によれば、まず、作業者が台車2(図1参照。)を手で押して、タッチパネル表示器15に表示されている給糸体60の正対処理画像(図示せず。)を見ながら、その正対処理画像中の給糸体60の筒内隙間62に対して、第4ロードペッグ9のポインタが一致するように台車2の進行方向(図1の左右方向)における前後位置を調節する。
【0124】
この台車2の前後位置の調節によって、第4ロードペッグ9のポインタが正対処理画像に撮影されている給糸体60の筒内隙間62に一致したものと作業者が判断すると、この作業者は、ロック装置23を操作して台車2を軌道レール4に対して固定する。この台車2の固定によって、図7(a)に示すように、ロードペッグ9の位置は、クリール50の支持ペッグ53に支持されている給糸体60の筒内隙間62に対して正対した位置に固定される。
【0125】
<給糸体受取動作前の前進移動動作>
このように作業者が台車2をロック装置23により固定した後、作業者が操作パネル14のスタートボタン(図示せず。)を押下すると、まず、ロードペッグ前進手段40によって、前進移動動作を実行する。このロードペッグ前進手段40は、前後移動体24をクリール50に対する近接方向(図7(b)の左方向)へ水平前進移動させることで、この前後移動体24に固定されるロードペッグ9をクリール50に対する近接方向(図7(b)の左方向)へ水平前進移動させる。
【0126】
このとき、ロードペッグ前進手段40によれば、ロードペッグ9を、初期待機位置(図7(b)に示した位置)から、クリール50に対する近接方向(図7(b)の左方向)へ向かって、前後移動距離L2(=W1+L1)だけ前進移動させて、受取準備位置(図7(d)に示した位置)で停止させる。ここで、「初期待機位置」とは、ロードペッグ9の先端がクリール50に装着された給糸体60の筒管61の軸方向端面から所定距離W1だけ離れた位置をいい、「前後移動距離L2」とは、その所定距離W1に給糸体60の筒管61軸長L1を加えた距離をいう。
【0127】
この結果、図7(d)に示すように、ロードペッグ9は、支持ペッグ53に支持されている給糸体60の筒内隙間62内に、その給糸体60の筒管61軸方向略全体に渡って挿入された状態となり、図7(c)に示すように、給糸体60の筒管61の内周において、支持ペッグ53は、この筒管61の内周上面61aに内接した状態で給糸体60を支持する一方、ロードペッグ9は、支持ペッグ53との間に所定間隔W2(例えば20mm)を空けた位置であって、この支持ペッグ53の真下に挿入された状態となる。
【0128】
<給糸体受取動作>
このようにしてロードペッグ9を給糸体60の筒内隙間62へ挿入した後、制御装置16は、給糸体受取手段42によって、給糸体受取動作を行う。この給糸体受取手段42は、縦移動体25及びこれを搭載した横移動体26をそれぞれ縦方向(図4の上方向)及び横方向(図4の左右方向)に移動させることで、その縦移動体25に搭載された前後移動体24及びこれに固定されるロードペッグ9を縦方向及び横方向に移動させる。
【0129】
このとき、給糸体受取手段42によれば、図7(c)及び図7(d)に示した受取準備位置にあるロードペッグ9及び前後移動体24を、給糸体60の筒管61の軸方向に直交する平面(図7(c)の紙面と同一又は平行な平面)内にて、そのロードペッグ9と支持ペッグ53との間に間隔W2(図5(b)参照。)を空けた状態のままで、支持ペッグ53を中心として、この支持ペッグ53の下側にあたる受取準備位置からその横側位置(図7(e)及び図7(f)に示した位置)を通過してその上側にあたる受取既済位置(図7(g)及び図7(h)に示した位置)まで到達する円弧状の上昇軌道に沿って移動させてから、その受取既済位置で停止する。
【0130】
この給糸体受取手段42による円弧状の上昇軌道を辿る給糸体受取動作をしたロードペッグ9が受取既済位置で停止すると、給糸体60の筒管61の内周でロードペッグ9及び支持ペッグ53の上下位置が入れ替わり、結果、その支持ペッグ53がロードペッグ9の下側にある筒内隙間62に退避する一方で、給糸体60の筒管61が支持ペッグ53からロードペッグ9に載せ換えられて、ロードペッグ9により給糸体60が支持された状態となる。
【0131】
<給糸体受取動作後の後退移動動作>
このようにして給糸体受取手段42による給糸体受取動作を用いて給糸体60をロードペッグ9に載せ換えた後、ロードペッグ後退手段41によって、後退移動動作を実行する。このロードペッグ後退手段41は、前後移動体24をクリール50に対する反近接方向(図7(h)の右方向)へ水平前進移動させることで、この前後移動体24に固定されるロードペッグ9をクリール50に対する反近接方向(図7(h)の右方向)へ水平前進移動させる。
【0132】
このとき、ロードペッグ後退手段41によれば、給糸体60を支持しているロードペッグ9及び前後移動体24は、受取既済位置(図7(h)に示した位置)から、クリール50に対する反近接方向(図7(h)の右方向)へ向かって、上記した前後移動距離L2を後退移動し、受取後待機位置(図7(j)に示した位置)で停止する。この結果、図7(j)に示すように、ロードペッグ9により支持されている各給糸体60の筒内隙間62内から支持ペッグ53が抜き出された状態となる。
【0133】
<上昇移送動作>
このようにしてロードペッグ後退手段41を実行した後、移送手段39によって、上昇移送動作を実行する。この移送手段39は、移送移動体6を、給糸体60が未装着である移送先の支持ペッグ53(図7(j)の2点鎖線部分)へ向けて鉛直方向(図7(j)の上方向)へ上昇移動させることで、移送移動体6に搭載されたロードペッグ9によって支持されている給糸体60を、移送先の支持ペッグ53へ向けて鉛直上方へ上昇移動させる。
【0134】
このとき、本実施形態の移送手段39によれば、給糸体60が装着されていた支持ペッグ53からその給糸体60がそれと同じ列の4段上にある支持ペッグ53へと移送される。つまり、この移送手段39によれば、同一列にある下側4段の支持ペッグ53から上側4段の支持ペッグ53へと、4個の給糸体60が移送される(図3参照。)。
【0135】
つまり、移送手段39による上昇移送動作によれば、移送移動体6を、上下隣り合う支持ペッグ53の間隔(ピッチ)P(例えば300mm。図2参照。)の4倍分に相当する移送高さH=4P(例えばH=4×300=1200mm)だけ、鉛直方向に上昇移動させてから、移送駆動装置8を停止して、ロードペッグ9を図7(j)に示した受取後待機位置(図7(j)中の実線位置)から図8(b)に示した位置(図7(j)中の2点鎖線位置)である上昇後待機位置まで移動させて、その上昇後待機位置で移送移動体6を停止させる。
【0136】
この移送手段39による上昇移送動作によって、移送移動体6が上昇後待機位置に到達して停止すると、ロードペッグ9により支持されている給糸体60の筒内隙間62が、クリール50の移送元の支持ペッグ53から4段上にある移送先の支持ペッグ53に対して正対した位置となる。つまり、第1から第4ロードペッグ9が上昇後待機位置に到達して停止すると、第1から第4ロードペッグ9により支持される4個の給糸体60の筒内隙間62が第5から第8支持ペッグ53に正対した状態となる。
【0137】
<給糸体受渡動作前の前進移動動作>
このようにして移送手段39によって上昇移動した移送移動体6が上昇後待機位置で停止した後は、もう一度、上記したロードペッグ前進手段40によって、前後移動動作を実行する。
【0138】
このとき、ロードペッグ前進手段40は、給糸体60を支持しているロードペッグ9を、上昇待後機位置(図7(j)中の2点鎖線位置、図8(b)に示した位置)から、クリール50に対する近接方向(図8(b)の左方向)へ向かって、上記した前後移動距離L2を前進移動させて、受渡準備位置(図8(d)に示した位置)で停止させる。
【0139】
この結果、図8(d)に示すように、ロードペッグ9により支持されている給糸体60の筒内隙間62内には、その給糸体60の筒管61の軸方向略全体に渡って支持ペッグ53が挿入された状態となり、図8(c)に示すように、給糸体60の筒管61の内周において、ロードペッグ9は、この筒管61の内周上面61aに内接した状態で給糸体60を支持する一方、支持ペッグ53は、ロードペッグ9との間に上記した所定間隔W2(例えば20mm)を空けた位置であって、このロードペッグ9の真下に挿入された状態となる。
【0140】
<給糸体受渡動作>
このようにしてロードペッグ前進手段40による前進移動動作を実行した後、給糸体受渡手段43によって、給糸体受渡動作を実行する。この給糸体受渡手段43は、縦移動体25及びこれを搭載した横移動体26をそれぞれ縦方向(図4の下方向)及び横方向(図4の左右方向)に移動させることで、その縦移動体25に搭載された前後移動体24及びこれに固定されるロードペッグ9を縦方向及び横方向に移動させる。
【0141】
このとき、給糸体受渡手段43によれば、図8(c)及び図8(d)に示した受渡準備位置にあるロードペッグ9及び前後移動体24を、給糸体60の筒管61の軸方向に直交する平面(図8(c)の紙面と同一又は平行な平面)内にて、そのロードペッグ9と支持ペッグ53との間に間隔W2(図5(c)参照。)を空けた状態のままで、支持ペッグ53を中心として、この支持ペッグ53の上側にあたる受渡準備位置からその横側位置(図8(e)及び図8(f)に示した位置)を通過してその下側にあたる受渡既済位置(図8(g)及び図8(h)に示した位置)まで到達する円弧状の下降軌道に沿って移動させてから、その受渡既済位置で停止する。
【0142】
この給糸体受渡手段43による円弧状の下降軌道を辿る給糸体受渡動作をしたロードペッグ9が受渡既済位置で停止すると、給糸体60の筒管61の内周でロードペッグ9及び支持ペッグ53の上下位置が入れ替わり、結果、このロードペッグ9が支持ペッグ53の下側にある筒内隙間62に退避する一方で、給糸体60の筒管61がロードペッグ9から支持ペッグ53に載せ換えられて、支持ペッグ53により給糸体60が支持された状態となる。
【0143】
<給糸体受渡動作後の後退移動動作>
このようにして給糸体受渡手段43による給糸体受渡動作によって給糸体60が載せ換えられた後、ロードペッグ後退手段41によって、後退移動動作を実行する。このロードペッグ後退手段41は、前後移動体24をクリール50に対する反近接方向(図8(h)の右方向)へ水平前進移動させることで、この前後移動体24に固定されるロードペッグ9をクリール50に対する反近接方向(図8(h)の右方向)へ水平前進移動させる。
【0144】
このとき、ロードペッグ後退手段41によれば、ロードペッグ9を、受渡既済位置(図8(h)に示した位置)から、クリール50に対する反近接方向(図8(h)の右方向)へ向かって、上記した前後移動距離L2だけ後退移動し、受渡後待機位置(図8(j)に示した位置)で停止する。この結果、図8(j)に示すように、支持ペッグ53により支持されている各給糸体60の筒内隙間62内からロードペッグ9が抜き出された状態となる。
【0145】
<初期位置復帰動作>
このようにしてロードペッグ後退手段41を実行した後、初期待機復帰手段44によって、初期位置復帰動作を実行する。この初期待機復帰手段44は、移送移動体6を受渡後待機位置(図8(j)の実線位置)から初期待機位置(図8(j)の2点鎖線位置)まで鉛直方向に下降移動させて、その初期待機位置で停止する。この結果、ロードペッグ9は、上記した初期待機位置(図7(a)及び図7(b)参照。)に復帰することなる。
【0146】
初期待機復帰手段44の実行後は、作業者がロック装置23を解除して、台車2を軌道レール4上で移動可能な状態にしてから、クリール50の次の列の下側4段の支持ペッグ53に装着されている給糸体60へ向けて、台車2を軌道レール4上で移動させて、上記した図7(a)から図8(j)を参照して説明した一連の給糸体60の装着処理を繰り返し行うのである。
【0147】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は、上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0148】
例えば、上記した本実施形態では、クリールローダ1のロードペッグ9の本数が4本であったが、かかるロードペッグの本数は必ずしもこれに限定されるものではなく、例えば、1本又は2本以上の複数本であっても良い。また、ロードペッグ9の本数は、クリール50に備わる支持ペッグ53の段数の半数に限定されるものでもなく、クリールローダ1及びクリール50の各種仕様に応じて適宜変更しても良く、1本又はクリール50の支持ペッグ53の段数の約数と同数本であれば良い。例えば、支持ペッグ53の段数が8段の場合、ロードペッグ9の本数は1本、2本又は4本であっても良く、その段数が6段の場合、ロードペッグの本数は、1本、2本又は3本であっても良い。
【0149】
また、本実施例では、クリール50の段数として8段を例に説明したが、かかるクリールの段数は必ずしも8段限定されるものではなく、8段以下又は8段以上であっても良い。
【0150】
また、本実施形態によれば、クリールローダ1の台車2は、クリールローダ1の機能の簡易化を図るため、作業者により手押しされる手押し式台車2であったが、例えば、台車2の車輪3を電動モータにより回転駆動させて自走する自走式台車としたり、或いは、台車2の車輪3の回転駆動を電動モータにより補助する電動アシスト式台車としても良い。
【0151】
また、本実施形態によれば、前後移動駆動装置27、縦移動駆動装置28及び横移動駆動装置29の動力源として電動モータであるサーボモータを用いて説明しているが、かかる動力源は必ずしもサーボモータに限定されるものではなく、ステッピングモータその他の電動モータや、電動モータを用いた電動シリンダなどの電動アクチュエータや、空気圧シリンダなどの流体アクチュエータなどであっても良い。
【0152】
また、本実施形態によれば、給糸体受取手段42により移動するロードペッグ9の上昇軌道及び給糸体受渡手段43により移動するロードペッグ9の下降軌道について、これらが給糸体60の筒管61の軸方向に直交する平面内で描かれる円弧状の軌道(軌跡)であるものとして説明したが、かかる上昇軌道及び下降軌道は、必ずしも円弧状(半円状)の軌道に限定されるものではなく、例えば、給糸体60の筒管61の軸方向に直交する平面内で、楕円弧状の軌道その他の曲線状の軌道や、多角形の外周線その他の多角線に一致する折れ線状の軌道であっても良い。
【符号の説明】
【0153】
1 クリールローダ(給糸体装着装置)
2 台車
3 車輪
4 軌道レール
5 移送装置(移送手段の一部)
6 移送移動体(移送手段の一部)
6a 上下一対の横移動ガイド部(給糸体受取手段の一部、給糸体受渡手段の一部)
7 移送ガイド(移送手段の一部)
8 移送駆動装置(移送手段の一部)
9 ロードペッグ(移送ペッグ)
10 ペッグ駆動装置(給糸体受取手段の一部、給糸体受渡手段の一部)
11 移送動力伝達機構(移送手段の一部)
11a 昇降チェーン(移送手段の一部)
11b スプロケット(移送手段の一部)
12 電動モータ(移送手段の一部)
13 制御ボックス
14 操作パネル
15 タッチパネル表示器
16 制御装置
17 画像処理装置
18 サーボアンプ回路(移送手段の一部)
19 サーボアンプ回路(ロードペッグ前進手段の一部、ロードペッグ後退手段の一部)
20,21 サーボアンプ回路(給糸体受取手段の一部、給糸体受渡手段の一部)
22 撮影カメラ
23 ロック装置
24 前後移動体(ロードペッグ前進手段の一部、ロードペッグ後退手段の一部)
25 縦移動体(給糸体受取手段の一部、給糸体受渡手段の一部)
25a 縦移動基部(給糸体受取手段の一部、給糸体受渡手段の一部)
25b 上下一対の前後移動ガイド部(ロードペッグ前進手段の一部、ロードペッグ後退手段の一部)
26 横移動体(給糸体受取手段の一部、給糸体受渡手段の一部)
26a 左右一対の縦移動ガイド部(給糸体受取手段の一部、給糸体受渡手段の一部)
27 前後移動駆動装置(ロードペッグ前進手段の一部、ロードペッグ後退手段の一部)
28 縦移動駆動装置(給糸体受取手段の一部、給糸体受渡手段の一部)
29 横移動駆動装置(給糸体受取手段の一部、給糸体受渡手段の一部)
30 電動モータ(ロードペッグ前進手段の一部、ロードペッグ後退手段の一部)
31,32 電動モータ(給糸体受取手段の一部、給糸体受渡手段の一部)
33 ボールねじ機構(ロードペッグ前進手段の一部、ロードペッグ後退手段の一部)
34,35 ボールねじ機構(給糸体受取手段の一部、給糸体受渡手段の一部)
36 演算処理部
37 記憶部
37a 制御プログラム
38 入出力部
39 移送手段
40 ロードペッグ前進手段
41 ロードペッグ後退手段
42 給糸体受取手段
43 給糸体受渡手段
44 初期待機復帰手段
50 クリール
51 本体スタンド
51a 上梁部
51b 下梁部
52 回転枠
52a 桁部材
52b 桟部材
53 支持ペッグ
60 給糸体
61 筒管
62 筒内隙間(給糸体筒管内周隙間)
W2 間隔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8