IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 中外炉工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-燃焼設備の燃焼制御方法 図1
  • 特開-燃焼設備の燃焼制御方法 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022176424
(43)【公開日】2022-11-29
(54)【発明の名称】燃焼設備の燃焼制御方法
(51)【国際特許分類】
   F23N 5/00 20060101AFI20221121BHJP
【FI】
F23N5/00 S
F23N5/00 J
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【公開請求】
(21)【出願番号】P 2022137453
(22)【出願日】2022-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000211123
【氏名又は名称】中外炉工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087572
【弁理士】
【氏名又は名称】松川 克明
(72)【発明者】
【氏名】片山 智樹
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 敏規
(72)【発明者】
【氏名】有松 毅
(72)【発明者】
【氏名】作部屋 幸嗣
【テーマコード(参考)】
3K003
【Fターム(参考)】
3K003EA08
3K003FA04
3K003FB03
3K003GA02
(57)【要約】
【課題】 炉内の酸素濃度が変化した場合に、バーナーに供給する燃焼用空気と燃料ガスとの割合を速やかに調整して、安定した燃焼が行えるようにする。
【解決手段】 バーナー20に供給する燃料ガスGと燃焼用空気Airとの割合を空気比制御システム50により調整して、バーナーから炉10内に燃焼用空気と燃料ガスとを噴出させて燃焼させるにあたり、炉10内における雰囲気ガスを採取管12により酸素濃度センサー51に導き、酸素濃度センサーにより検知された酸素濃度を出力制御装置52に出力し、出力制御装置によって酸素濃度の移動平均値を求め、出力制御装置により、酸素濃度の移動平均値に基づいて空気比制御システムを制御して、バーナーに供給する燃焼用空気と燃料との割合を調整するようにした。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料供給管を通してバーナーに供給される燃料と、空気供給管を通してバーナーに供給される燃焼用空気との割合を空気比制御システムにより調整し、前記のバーナーから炉内に燃焼用空気と燃料とを噴出させて燃焼させる燃焼設備の燃焼制御方法において、炉内における雰囲気ガスを採取管により酸素濃度センサーに導き、導かれた雰囲気ガスの酸素濃度を前記の酸素濃度センサーにより検知して出力制御装置に出力し、前記の出力制御装置によって検知された酸素濃度の移動平均値を求め、前記の出力制御装置により、酸素濃度の移動平均値に基づいて前記の空気比制御システムを制御し、バーナーに供給する燃焼用空気と燃料との割合を調整することを特徴とする燃焼設備の燃焼制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載の燃焼設備の燃焼制御方法において、前記の出力制御装置により、酸素濃度の移動平均値に基づいて前記の空気比制御システムを制御するにあたり、前記の出力制御装置により、酸素濃度の移動平均値に基づいて前記の空気比制御システムを制御し、バーナーに供給する燃焼用空気と燃料との割合を所定の制御時間(tx)毎に調整することを特徴とする燃焼設備の燃焼制御方法。
【請求項3】
請求項2に記載の燃焼設備の燃焼制御方法において、酸素濃度の移動平均値に基づいて前記の空気比制御システムを制御し、バーナーに供給する燃焼用空気と燃料との割合を所定の制御時間(tx)毎に調整するにあたり、前記の制御時間(tx)が、炉内の雰囲気ガスが前記の採取管により酸素濃度センサーに導かれて酸素濃度が検知されるまでの検知経過時間(ta)以上であることを特徴とする燃焼設備の燃焼制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料供給管を通してバーナーに供給される燃料と、空気供給管を通してバーナーに供給される燃焼用空気との割合を空気比制御システムにより調整し、前記のバーナーから炉内に燃焼用空気と燃料とを噴出させて燃焼させる燃焼設備の燃焼制御方法に関するものである。特に、炉内における雰囲気ガスを採取管に吸い込んで酸素濃度センサーに導き、酸素濃度センサーにより炉内の酸素濃度を検知して、バーナーに供給される燃料と燃焼用空気の割合を調整するにあたり、炉内における酸素濃度が所定の値になるようにして、安定した燃焼が行えるようにした点に特徴を有するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、燃焼設備においては、燃料供給管を通してバーナーに供給される燃料と、空気供給管を通してバーナーに供給される燃焼用空気の割合を調整し、バーナー内における空気比が所定の値になるようにして、このバーナーから炉内に燃料と燃焼用空気とを噴出させて燃焼させるようにしている。
【0003】
ここで、バーナー内における空気比が所定の値になるようにして、このバーナーから炉内に燃料と燃焼用空気とを噴出させて燃焼させるにあたり、特許文献1においては、予め固定値として設定されたバーナーの流量係数Nと、前記バーナーの燃焼量に対して予め設定された燃料流量並びにこの燃料流量と予め設定された空気比とから求められる燃焼用空気の流量と、燃料供給系及び燃焼用空気供給系に設けた流量調整弁の一次側における流体の供給圧力P0との関係を示す所定の式(A)に前記供給圧力P0の実測値を適用して前記燃料供給系及び燃焼用空気供給系に設けた流量調整弁の流量係数Vをそれぞれ演算するとともに、予め前記流量調整弁の弁開度S’と流量係数V’との関係を実測しておき、この実測した流量係数V’と前記演算により求めた流量係数Vとを比較して偏差を求め、この偏差が零となるように弁開度を調整することで空気比を一定に保持したまま燃焼量を制御するようにしたものが示されている。
【0004】
また、特許文献2においては、少なくとも、流量係数と開度の関係が既知の燃料制御弁の開度の測定値と、流量係数と開度の関係が既知の燃焼空気制御弁の開度の測定値と、流量係数が既知のバーナーに供給される燃料の供給温度及び供給圧力の測定値と、上記バーナーに供給される燃焼空気の供給温度及び供給圧力の測定値と、炉内温度の測定値と、炉内圧力の測定値とをバーナー制御装置に入力し、上記バーナー制御装置が、上記炉内温度の測定値と設定値との偏差から上記バーナーの燃焼量を決定し、上記決定されたバーナーの燃焼量を維持する燃料流量と燃焼空気流量に対応する上記燃料制御弁及び上記燃焼空気制御弁の開度を、予め設定された燃焼空気比を維持するように複合絞り演算により演算し、上記燃料制御弁及び燃焼空気制御弁の開度の測定値が上記複合絞り演算により求めた燃料制御弁及び燃焼空気制御弁の開度の演算値と一致するよう上記各制御弁の開度を調整して燃料及び燃焼空気の流量を制御する際、上記バーナー制御装置において上記各測定値を常時最新の測定値に更新しながら所定時間分保存するとともに、上記測定値のいずれかが上記各測定項目の設定値に対する許容範囲を越えた場合、この許容範囲を越えた時点から所定時間経過したのち測定値の更新を停止し、測定値の更新を停止した時点でバーナー制御装置に保存されている上記許容範囲を越える前に測定した上記それぞれの測定値と上記許容範囲を越えた後に測定した上記それぞれの測定値とから許容範囲を越えた原因を判断し、上記燃料の供給圧力の測定値が急低下して上記許容範囲を超えたが上記炉内温度と上記炉内圧力は上記許容範囲内である場合に、上記燃料の供給圧力を測定する圧力センサーの故障が原因であると判断するようにしたものが示されている。
【0005】
また、特許文献3においては、バーナー内における空気比を適切に制御するにあたり、予混合された燃焼前のガスをサンプリングし燃焼させ、その還元率A=[CO+HO]/[CO+H]を測定し、該還元率Aを換算した空気比測定値を得、前記空気比測定値と予め設定された空気比設定値との偏差を前記予混合装置のミキシングバルブにフィードバックすることにより、前記プレミックスバーナーの燃料ガスと空気の混合比を制御するようにしたものが示されている。
【0006】
また、特許文献4においては、空気供給管を通して供給される空気と、燃料供給管を通して供給される燃料ガスとを所望の割合になるように混合させて、バーナーにより燃焼させる燃焼設備において、前記の燃料供給管に均圧弁を設け、この均圧弁に前記の空気供給管から導圧管を通して空気を導くと共に、前記のバーナーにより燃焼された後の燃焼排ガス中における酸素濃度を検出する酸素センサーを設け、酸素センサーによって検出された燃焼排ガス中における酸素濃度に基づいて、空気供給管から導圧管を通して均圧弁に導かれる空気の圧力を制御する空気比制御装置を設けると共に、バーナーに空気を供給する空気供給管の途中の位置に空気の流量を制御する流量制御弁を設け、この流量制御弁の上流側の位置に設けた第1導圧管と、流量制御弁の下流側の位置に設けた第2導圧管と、均圧弁に空気を導く第3導圧管とを三方調整弁に接続させ、空気比制御装置により前記の三方調整弁を調整して、前記の第3導圧管を通して前記の均圧弁に導かれる空気の圧力を制御するようにしたものが示されている。
【0007】
しかし、実際の燃焼設備には、炉と扉との間の隙間や、炉の壁面における継ぎ目や亀裂等の隙間を通して外部から炉内に侵入する侵入空気が存在し、炉内ではそれが燃焼用空気と混合して燃料を燃焼させているため、実際に燃焼が行われている炉内における酸素濃度から換算される空気比は、バーナーで調整したバーナー内における空気比とは異なってしまっている。
【0008】
また、炉内に侵入する侵入空気の量は、炉内圧力が高くなると減少し、炉内圧力が低くなると増加する。
【0009】
また、燃焼設備の操業では炉内温度の変更や調整のため、バーナーの燃焼量を変化させたり、複数のバーナーのうちの一部を消火したり再点火したりしているが、そのときにバーナーの燃焼排ガスの量が大きく変わって炉内圧力が大きく変動し、それに伴って侵入空気の量が変動し、炉内における酸素濃度が変動してしまう。
【0010】
このように、従来の燃焼設備においては、前記のようにバーナー内における空気比を適正に調整しても、実際に燃焼している炉内においては、炉内における酸素濃度が変動して適正な範囲を外れてしまい、炉内でススが発生したり、燃焼排ガスのCOやNOxが増加したりするという問題がある。
【0011】
しかし、前記の特許文献1~4に示されているものにおいては、バーナーから炉内に燃料と燃焼用空気とを噴出させ、炉内において燃料と燃焼用空気とが、所定の空気比になるようにして燃焼させるにあたり、前記のような問題の対策がなされていない。
【0012】
さらに、従来の燃焼設備において、炉内における雰囲気ガスを採取管に吸い込んで酸素濃度センサーに導き、炉内の酸素濃度を検知するようにした場合、特許文献5に示されるように、雰囲気ガスが採取管を通して酸素濃度センサーに導かれるまでに時間を要し、酸素濃度センサーによって検知される酸素濃度は実際には調整後の炉内の酸素濃度ではないため、その時点において検知された酸素濃度だけに基づいて、バーナーにおける空気比を調整するようにしても、炉内における酸素濃度が所定の値になるように燃焼させることが困難になるという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特許第3495995号公報
【特許文献2】特許第4234309号公報
【特許文献3】特許第2741617号公報
【特許文献4】特許第7073025号公報
【特許文献5】特開昭49-77689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、燃料供給管を通してバーナーに供給される燃料と、空気供給管を通してバーナーに供給される燃焼用空気との割合を空気比制御システムにより調整し、前記のバーナーから炉内に燃焼用空気と燃料とを噴出させて燃焼させる燃焼設備における前記のような問題を解決することを課題とするものである。
【0015】
すなわち、本発明は、前記のような燃焼設備における燃焼を制御する燃焼設備の燃焼制御方法において、炉内における雰囲気ガスを採取管に吸い込んで酸素濃度センサーに導き、酸素濃度センサーにより炉内の酸素濃度を検知して、バーナーに供給される燃料と燃焼用空気の割合を調整するにあたり、炉内における酸素濃度が所定の値になるようにして、安定した燃焼が行えるようにすることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係る燃焼設備の燃焼制御方法においては、前記のような課題を解決するため、燃料供給管を通してバーナーに供給される燃料と、空気供給管を通してバーナーに供給される燃焼用空気との割合を空気比制御システムにより調整し、前記のバーナーから炉内に燃焼用空気と燃料とを噴出させて燃焼させる燃焼設備の燃焼制御方法において、炉内における雰囲気ガスを採取管により酸素濃度センサーに導き、導かれた雰囲気ガスの酸素濃度を前記の酸素濃度センサーにより検知して出力制御装置に出力し、前記の出力制御装置によって検知された酸素濃度の移動平均値を求め、前記の出力制御装置により、酸素濃度の移動平均値に基づいて前記の空気比制御システムを制御し、バーナーに供給する燃焼用空気と燃料との割合を調整するようにした。
【0017】
そして、本発明における燃焼設備の燃焼制御方法においては、炉内における雰囲気ガスを採取管により酸素濃度センサーに導いて、炉内の雰囲気ガスの酸素濃度を酸素濃度センサーにより検知して出力制御装置に出力し、出力制御装置によって検知された酸素濃度の移動平均値を求め、この出力制御装置により、酸素濃度の移動平均値に基づいて空気比制御システムを制御して、バーナーに供給する燃焼用空気と燃料との割合を調整するようにしたため、バーナーにおける燃焼状態の変動等によって、炉内における酸素濃度が短いタイミングで何度も変化する場合においても、これに対応して、空気比制御システムによってバーナーに供給する燃焼用空気と燃料との割合を短いタイミングで何度も調整する必要がなく、ハンチングを抑制することができる。
【0018】
また、本発明に係る燃焼設備の燃焼制御方法においては、前記の出力制御装置により、酸素濃度の移動平均値に基づいて前記の空気比制御システムを制御するにあたり、前記の出力制御装置により、酸素濃度の移動平均値に基づいて前記の空気比制御システムを制御し、バーナーに供給する燃焼用空気と燃料との割合を、所定の制御時間(tx)毎に調整することが好ましい。このようにすると、炉内における酸素濃度の変化を適当なタイミングで検知して、空気比制御システムによりバーナーに供給する燃焼用空気と燃料との割合を適切なタイミングで制御することができ、また空気比制御システムによって、バーナーに供給する燃焼用空気と燃料との割合を変更させる操作を適切なタイミングで簡単に行えるようになる。
【0019】
また、前記のように出力制御装置により、酸素濃度の移動平均値に基づいて前記の空気比制御システムを制御し、バーナーに供給する燃焼用空気と燃料との割合を所定の制御時間(tx)毎に調整するにあたり、制御時間(tx)が、炉内の雰囲気ガスが前記の採取管により酸素濃度センサーに導かれて酸素濃度が検知されるまでの検知経過時間(ta)以上になるようにすることが好ましい。このようにすると、採取管により採取された炉内の雰囲気ガスが酸素濃度センサーに導かれて酸素濃度が検知されたときの、前記の出力制御装置によって求められた酸素濃度の移動平均値に基づいて、前記の空気比制御システムにより、バーナーに供給する燃焼用空気と燃料との割合を変更させることができ、炉内における酸素濃度を適切にフィードバックさせながら、空気比制御システムにより、バーナーに供給する燃焼用空気と燃料との割合を調整することができ、特に、前記の制御時間(tx)を検知経過時間(ta)に合わせることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明における燃焼設備の燃焼制御方法においては、前記のように採取管によって導かれた炉内の雰囲気ガスの酸素濃度を酸素濃度センサーにより検知し、検知された酸素濃度の移動平均値を出力制御装置により求め、求めた酸素濃度の移動平均値に基づいて空気比制御システムを制御して、バーナーに供給する燃焼用空気と燃料との割合を調整するようにしたため、バーナーにおける燃焼状態の変動等によって、炉内における酸素濃度が短いタイミングで何度も変化する場合においても、これに対応して、空気比制御システムによってバーナーに供給する燃焼用空気と燃料との割合を短いタイミングで何度も調整する必要がなく、空気比制御システムによってバーナーに供給する燃焼用空気と燃料との割合を簡単かつ適切に調整できるようになる。
【0021】
この結果、本発明における燃焼設備の燃焼制御方法においては、バーナーにおける燃焼状態の変動等によって、炉内における酸素濃度が短いタイミングで何度も変化する場合においても、前記の空気比制御システムによってバーナーに供給する燃焼用空気と燃料との割合を簡単かつ適切に調整して、炉内における酸素濃度が所定の値になるようにして、安定した燃焼が行えるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態に係る燃焼設備の燃焼制御方法に使用する燃焼設備の状態を示した概略説明図である。
図2】前記の実施形態に係る燃焼設備の燃焼制御方法において、炉内における実際の酸素濃度の変化と、酸素濃度センサーによって検知された酸素濃度の変化と、出力制御装置によって求められた酸素濃度の移動平均値の変化と、空気比制御システムにより制御されたバーナー内における空気比の変化とを示したタイミング図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態に係る燃焼設備の燃焼制御方法を添付図面に基づいて具体的に説明する。なお、本発明に係る燃焼設備の燃焼制御方法は、下記の実施形態に示したものに限定されず、発明の要旨を変更しない範囲において、適宜変更して実施できるものである。
【0024】
この実施形態に係る燃焼設備の燃焼制御方法においては、図1に示すように、炉10にバーナー20を設け、前記のバーナー20に、燃料供給管30を通して燃料である都市ガス等の燃料ガスGを供給すると共に、空気供給管40を通して燃焼用空気Airを供給し、このバーナー20から燃焼用空気Airと燃料ガスGとを炉10内に噴出させて燃焼させるようにしている。
【0025】
そして、この実施形態においては、前記のようにバーナー20に、燃料供給管30を通して燃料ガスGを供給すると共に、空気供給管40を通して燃焼用空気Airを供給するにあたり、前記の燃料供給管30に設けた流量調整弁31と空気供給管40に設けた流量調整弁41とを空気比制御システム50により調整して、バーナー20に供給する燃料ガスGと燃焼用空気Airとの割合を制御し、バーナー20における燃焼量とバーナー20内における空気比μを所定の値に調整して、バーナー20から燃料ガスGと燃焼用空気Airとを炉10内に噴出させて燃焼させるようにしている。(なお、扉や煙道などの図示は省略する。)
【0026】
また、この実施形態においては、炉10内における雰囲気ガスを吸引口11から採取管12を通して酸素濃度センサー51に導き、導かれた雰囲気ガスの酸素濃度を前記の酸素濃度センサー51によって検知するようにしている。
【0027】
ここで、炉10内における雰囲気ガスを吸引口11から採取管12を通して酸素濃度センサー51に導くにあたり、酸素濃度センサー51は熱に弱く、炉10による熱や、採取管12を通して導かれる炉10内に雰囲気ガスの熱によって酸素濃度センサー51が故障しないようにするため、図1に示すように、前記の採取管12の長さを長くして、酸素濃度センサー51を炉10から離れた位置に設けている。このため、炉10内の雰囲気ガスが採取管12を通して酸素濃度センサー51に導かれて酸素濃度が検知されるまでの経過時間、検知経過時間taが必要になる。
【0028】
そして、この実施形態においては、前記のように酸素濃度センサー51によって導かれた雰囲気ガスの酸素濃度を検知し、このように検知された酸素濃度を酸素濃度センサー51から出力制御装置52に出力し、この出力制御装置52によって検知された酸素濃度の移動平均値を求めるようにしている。
【0029】
ここで、出力制御装置52により、酸素濃度センサー51によって検知された酸素濃度の移動平均値を求めるにあたり、移動平均値を算出する算出時間は特に限定されないが、その算出時間が短いと、炉内における酸素濃度の変化に基づく変化が多くなる一方、算出時間が長くなりすぎると、炉内における酸素濃度の変化を十分に検知することが困難になる。例えば、前記のバーナー20が燃焼と蓄熱とを交互に繰り返して行う対になったリジェネバーナーである場合には、燃焼・蓄熱のサイクル動作を行うサイクル時間を算出時間として移動平均値を算出させることができ、通常のバーナー20の場合には、リジェネバーナーの場合に比べて、一般に算出時間が短くなるようにする。なお、算出時間は、実験や過去のデータに基づいて決定してもよい。
【0030】
そして、前記のように出力制御装置52において算出した酸素濃度の移動平均値に基づいて、出力制御装置52により前記の空気比制御システム50を制御するようにし、前記の空気比制御システム50により燃料供給管30に設けた流量調整弁31と空気供給管40に設けた流量調整弁41とを調整し、バーナー20に供給する燃料ガスGと燃焼用空気Airとの割合を制御して、バーナー20内における空気比μを調整するようにしている。
【0031】
ここで、前記のように出力制御装置52において算出した酸素濃度の移動平均値に基づいて、空気比制御システム50を制御するにあたっては、前記の出力制御装置52により、酸素濃度の移動平均値に基づいて前記の空気比制御システム50を制御し、バーナー20に供給する燃焼用空気Airと燃料ガスGとの割合を所定の制御時間tx毎に調整して、バーナー20内における空気比μを制御時間tx毎に制御するようにしている。
【0032】
このようにすると、炉10内における酸素濃度の変化を適当なタイミングで検知して、前記の空気比制御システム50により、バーナー20に供給する燃焼用空気Airと燃料ガスGとの割合を適切なタイミングで制御することができ、バーナー20に供給する燃焼用空気Airと燃料ガスGとの割合を変更させて、バーナー20内における空気比μを調整する操作が簡単に行えるようになる。
【0033】
また、出力制御装置52により、酸素濃度の移動平均値に基づいて、前記の空気比制御システム50を制御して、バーナー20に供給する燃焼用空気Airと燃料ガスGとの割合を所定の制御時間tx毎に調整するにあたっては、制御時間txが、炉10内の雰囲気ガスが採取管12により酸素濃度センサー51に導かれて酸素濃度が検知されるまでの検知経過時間ta以上になるようにし、炉10内における酸素濃度を適切にフィードバックさせながら、空気比制御システム50により、バーナー20に供給する燃焼用空気Airと燃料ガスGとの割合を調整できるようにしている。
【0034】
このようにすると、バーナー20に供給する燃焼用空気Airと燃料ガスGとの割合を変更させたことによって炉10内における酸素濃度が変化した結果に基づいた制御が可能になり、本来のフィードバック制御の姿となる。
【0035】
ここで、検知経過時間taは、実測や計算などによって求めることができる。
【0036】
次に、この実施形態に係る燃焼設備の燃焼制御方法により、炉10内における雰囲気ガスを採取管12により酸素濃度センサー51に導いて酸素濃度を検知し、出力制御装置52により検知された酸素濃度の移動平均値を算出し、算出された酸素濃度の移動平均値に基づいて前記の空気比制御システム50を制御し、バーナー20に供給する燃焼用空気Airと燃料ガスGとの割合を調整して、バーナー20内における空気比μを制御する例を、図2に基づいて説明する。
【0037】
ここで、図2においては、炉10内における実際の酸素濃度の変化と、酸素濃度センサー51によって検知された酸素濃度の変化と、出力制御装置52によって求められた酸素濃度の移動平均値の変化と、空気比制御システム50により制御されたバーナー内における空気比の変化とのタイミングを示しており、酸素濃度の移動平均値が所定の範囲に入るように制御することを目的としている。
【0038】
そして、図2に示すように、炉10内における酸素濃度の変化に対して、酸素濃度センサー51によって検知された酸素濃度の変化は、炉10内の雰囲気ガスが採取管12により酸素濃度センサー51に導かれて酸素濃度が検知されるまでの検知経過時間taだけずれて変化している。なお、この例においては、前記の検知経過時間taが10秒になっている。
【0039】
次いで、このように酸素濃度センサー51によって検知された酸素濃度の変化に基づいて、出力制御装置52によって酸素濃度の移動平均値の変化を算出し、算出した所定の制御時間tx毎における酸素濃度の移動平均値に基づいて、出力制御装置52により前記の空気比制御システム50を制御し、空気比制御システム50により、バーナー20に供給する燃焼用空気Airと燃料ガスGとの割合を前記の制御時間tx毎に調整するようにしている。
【0040】
このように移動平均値とすることにより、酸素濃度センサー51によって検知された酸素濃度の振れ幅を小さくし、制御しやすくできる。
【0041】
ここで、この例においては、前記の制御時間txは前記の検知経過時間taと同じ10秒にし、炉10内の雰囲気ガスが酸素濃度センサー51に導かれて酸素濃度が検知されるまでの検知経過時間ta毎にフィードバックさせながら、空気比制御システム50により、バーナー20に供給する燃焼用空気Airと燃料ガスGとの割合を調整するようにしている。なお、制御時間txは検知経過時間taよりも長ければ、酸素濃度が変化した結果に基づいた制御になるので、制御時間txは検知経過時間taよりも長ければよい。(上の例では10秒以上であってもよい。)
【0042】
そして、前記のように制御時間tx毎における酸素濃度の移動平均値に基づいて、空気比制御システム50によりバーナー20に供給する燃焼用空気Airと燃料ガスGとの割合を制御時間tx毎に調整すると、バーナー20内における空気比μが、制御時間tx毎における酸素濃度の移動平均値の変化に基づいて、制御時間tx毎に段階的に変化されるようになり、制御時間txにおける酸素濃度の移動平均値の変化が少ない場合には、バーナー20内における空気比μは一定に保たれる一方、制御時間txにおける酸素濃度の移動平均値の変化が大きい場合には、酸素濃度の移動平均値の変化に合わせてバーナー20内における空気比μを段階的に変化させ、酸素濃度の移動平均値の変化の大きさに合わせて、バーナー20内における空気比μを変化させる段階を調整している。
【0043】
すなわち、酸素濃度の移動平均値の所定範囲からの外れ具合が大きいほど空気比を大きく変化させ、早く所定範囲に戻すことを試みている。
【0044】
具体的な一例として、図2に示す例においては、酸素濃度の移動平均値が1.8~2.2%を所定範囲とし、バーナー20内における空気比μを、同図に示すような状態に保持させるようにしている。
【0045】
そして、酸素濃度の移動平均値が2.2~2.4%まで増加した場合には、バーナー20内における空気比μを1段階(0.02)減らして所定範囲に戻すようにし、酸素濃度の移動平均値が2.4%以上に増加した場合には、バーナー20内における空気比μを2段階(0.04)減らして所定範囲に早く戻すようにする。
【0046】
また、酸素濃度の移動平均値が1.6~1.8%まで減少した場合には、バーナー20内における空気比μを1段階(0.02)増やして所定範囲に戻すようにし、酸素濃度の移動平均値が1.6%以下に減少した場合には、バーナー20内における空気比μを2段階(0.04)増やして所定範囲に早く戻すようにする。なお、この段階の数や変化量は、適宜決定する。
【0047】
このようにすると、バーナー20における燃焼状態の変動等によって、炉10内における酸素濃度が短いタイミングで何度も変化する場合や、炉10内における酸素濃度が大きく変化する場合においても、これに対応して、空気比制御システム50によってバーナー20に供給する燃焼用空気Airと燃料ガスGとの割合を短いタイミングで何度も調整する必要がなく、空気比制御システム50により、バーナー20に供給する燃焼用空気Airと燃料ガスGとの割合を、制御時間tx毎に酸素濃度の変化に対応する段階に調整して、炉10内における酸素濃度が適切な値になるように、バーナー20内における空気比μを簡単かつ適切に調整できるようになる。
【符号の説明】
【0048】
10 :炉
11 :吸引口
12 :採取管
20 :バーナー
30 :燃料供給管
31 :流量調整弁
40 :空気供給管
41 :流量調整弁
50 :空気比制御システム
51 :酸素濃度センサー
52 :出力制御装置
Air :燃焼用空気
G :燃料ガス
ta :検知経過時間
tx :制御時間
μ :空気比
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2022-11-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料供給管を通してバーナーに供給される燃料と、空気供給管を通してバーナーに供給される燃焼用空気との割合を空気比制御システムにより調整し、前記のバーナーから炉内に燃焼用空気と燃料とを噴出させて燃焼させる燃焼設備の燃焼制御方法において、炉内における雰囲気ガスを採取管により酸素濃度センサーに導き、導かれた雰囲気ガスの酸素濃度を前記の酸素濃度センサーにより検知して出力制御装置に出力し、前記の出力制御装置によって検知された酸素濃度の移動平均値を求め、前記の出力制御装置により、酸素濃度の移動平均値に基づいて前記の空気比制御システムを制御し、バーナーに供給する燃焼用空気と燃料との割合を調整するにあたり、バーナーに供給する燃焼用空気と燃料との割合を、所定の制御時間(tx)毎に段階的に調整することを特徴とする燃焼設備の燃焼制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載の燃焼設備の燃焼制御方法において、酸素濃度の移動平均値に基づいて前記の空気比制御システムを制御し、バーナーに供給する燃焼用空気と燃料との割合を所定の制御時間(tx)毎に調整するにあたり、前記の制御時間(tx)が、炉内の雰囲気ガスが前記の採取管により酸素濃度センサーに導かれて酸素濃度が検知されるまでの検知経過時間(ta)以上であることを特徴とする燃焼設備の燃焼制御方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の燃焼設備の燃焼制御方法において、前記の出力制御装置によって検知された酸素濃度の移動平均値の変化が、所定範囲から変化する大きさに合わせて、バーナーに供給する燃焼用空気と燃料との割合を変化させる段階を調整し、酸素濃度の移動平均値の変化が所定範囲から大きく変化する場合には、バーナーに供給する燃焼用空気と燃料との割合を変化させる段階を大きくすることを特徴とする燃焼設備の燃焼制御方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0016】
本発明に係る燃焼設備の燃焼制御方法においては、前記のような課題を解決するため、燃料供給管を通してバーナーに供給される燃料と、空気供給管を通してバーナーに供給される燃焼用空気との割合を空気比制御システムにより調整し、前記のバーナーから炉内に燃焼用空気と燃料とを噴出させて燃焼させる燃焼設備の燃焼制御方法において、炉内における雰囲気ガスを採取管により酸素濃度センサーに導き、導かれた雰囲気ガスの酸素濃度を前記の酸素濃度センサーにより検知して出力制御装置に出力し、前記の出力制御装置によって検知された酸素濃度の移動平均値を求め、前記の出力制御装置により、酸素濃度の移動平均値に基づいて前記の空気比制御システムを制御し、バーナーに供給する燃焼用空気と燃料との割合を調整するにあたり、バーナーに供給する燃焼用空気と燃料との割合を、所定の制御時間(tx)毎に段階的に調整するようにした。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0018】
また、本発明に係る燃焼設備の燃焼制御方法においては、前記の出力制御装置により、酸素濃度の移動平均値に基づいて前記の空気比制御システムを制御するにあたり、前記の出力制御装置により、酸素濃度の移動平均値に基づいて前記の空気比制御システムを制御し、バーナーに供給する燃焼用空気と燃料との割合を、所定の制御時間(tx)毎に段階的に調整するようにしている。このようにすると、炉内における酸素濃度の変化を適当なタイミングで検知して、空気比制御システムによりバーナーに供給する燃焼用空気と燃料との割合を適切なタイミングで適切な割合になるように制御することができ、また空気比制御システムによって、バーナーに供給する燃焼用空気と燃料との割合を変更させる操作を適切なタイミングで簡単に行えるようになる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0020
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0020】
本発明における燃焼設備の燃焼制御方法においては、前記のように採取管によって導かれた炉内の雰囲気ガスの酸素濃度を酸素濃度センサーにより検知し、検知された酸素濃度の移動平均値を出力制御装置により求め、求めた酸素濃度の移動平均値に基づいて空気比制御システムを制御して、バーナーに供給する燃焼用空気と燃料との割合を、所定の制御時間(tx)毎に段階的に調整するようにしたため、バーナーにおける燃焼状態の変動等によって、炉内における酸素濃度が短いタイミングで何度も変化する場合においても、これに対応して、空気比制御システムによってバーナーに供給する燃焼用空気と燃料との割合を短いタイミングで何度も調整する必要がなく、空気比制御システムによってバーナーに供給する燃焼用空気と燃料との割合を適切なタイミングで適切な割合になるようにして簡単に調整できるようになる。