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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022176425
(43)【公開日】2022-11-30
(54)【発明の名称】無人飛行体の回収装置
(51)【国際特許分類】
   B64F 3/00 20060101AFI20221122BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20221122BHJP
   B64C 27/08 20060101ALI20221122BHJP
   D07B 1/16 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
B64F3/00
B64C39/02
B64C27/08
D07B1/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021082855
(22)【出願日】2021-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】591012680
【氏名又は名称】柳井電機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126712
【弁理士】
【氏名又は名称】溝口 督生
(72)【発明者】
【氏名】澤田 耕二
【テーマコード(参考)】
3B153
【Fターム(参考)】
3B153AA44
3B153CC11
3B153CC51
3B153FF22
3B153GG40
(57)【要約】
【課題】GPS機能を有さない無人飛行体の回収を可能とするとともに飛行の安全性を高める無人飛行体の回収装置を提供する。
【解決手段】本発明の無人飛行体の回収装置は、ワイヤーと、前記ワイヤーの巻取り部と、前記ワイヤーを無人飛行体に接続する接続部と、を備え、前記ワイヤーにおいて、前記接続部から所定長さである特定部分は、これ以外の通常部分よりも、柔軟性が低い。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤーと、
前記ワイヤーの巻取り部と、
前記ワイヤーを無人飛行体に接続する接続部と、を備え、
前記ワイヤーにおいて、前記接続部から所定長さである特定部分は、これ以外の通常部分よりも、柔軟性が低い、無人飛行体の回収装置。
【請求項2】
前記無人飛行体は、飛行のための対となる複数のプロペラを備え、
前記無人飛行体の中心から前記一つのプロペラの外端までの長さをAとし、
前記特定部分の長さをBとすると、
B ≧ A
の関係を有する、請求項1記載の無人飛行体の回収装置。
【請求項3】
前記複数のプロペラは、前記無人飛行体の本体部の両側に対となって備わり、
前記無人飛行体の飛行を実現する、請求項2記載の無人飛行体の回収装置。
【請求項4】
前記複数のプロペラが、前記本体部の両側に対となって備わる場合には、
前記特定部分の長さBは、
B ≧ 2A
の関係を有する、請求項3記載の無人飛行体の回収装置。
【請求項5】
前記特定部分は、通常部分と異なる素材であって、通常部分の素材よりも柔軟性の低い素材で構成されている、請求項1から4のいずれか記載の無人飛行体の回収装置。
【請求項6】
前記特定部分は、硬化液体を浸透させることで、通常部分よりも柔軟性を低下させている、請求項1から5のいずれか記載の無人飛行体の回収装置。
【請求項7】
前記特定部分の柔軟性の低さは、前記プロペラの回転で生じる気流による屈曲や湾曲、風による屈曲や湾曲を、抑制可能である、請求項2から6のいずれか記載の無人飛行体の回収装置。
【請求項8】
前記巻取り部は、前記無人飛行体の飛行に合わせて、前記ワイヤーを送り出す、請求項1から7のいずれか記載の無人飛行体の回収装置。
【請求項9】
前記巻取り部から送り出されるワイヤーの重量は、前記無人飛行体の飛行能力を超えない、請求項8記載の無人飛行体の回収装置。
【請求項10】
前記巻取り部は、前記無人飛行体の飛行時に、前記ワイヤーにたるみが生じないように前記ワイヤーの送り出しに圧力を付与する、請求項1から9のいずれか記載の無人飛行体の回収装置。
【請求項11】
前記巻取り部は、前記ワイヤーの巻取り時に、前記ワイヤーにたるみが生じないように前記ワイヤーの巻取りに圧力を付与する、請求項1から10のいずれか記載の無人飛行体の回収装置。
【請求項12】
前記無人飛行体は、GPS機能を備えない、請求項1から11のいずれか記載の無人飛行体の回収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドローンなどの無人飛行体の飛行中の安全を維持する無人飛行体の回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、動画や静止画などの画像の上空からの撮影、安全監視、建築物の撮像、娯楽などの様々な点で、ドローンなどの無人飛行体が利用されている。テレビ局によるロケ動画の撮影、映画製作における動画撮影、ドキュメンタリーフィルニおける動画撮影などのプロによる無人飛行体を用いた撮影が行われる。
【0003】
あるいは、工場、屋外建設物、大型建築物などの安全監視や点検などを行なうために、これらの建物などを上空や外部から撮影するのに、無人飛行体が用いられる。橋梁などにおいては、その基礎部分などを撮影することで、劣化点検などが行われる。
【0004】
あるいは、太陽光発電パネルの管理や劣化点検などのために、太陽光発電装置の上空から、無人飛行体により撮影されることも行われる。
【0005】
また、娯楽などにおいても、ドローンなどの無人飛行体が利用される。景色の撮影や、プライベートな動画撮影などを、上空から簡易に行いたいからである。このため、仕事や業務のために無人飛行体を利用する場合や、娯楽やプライベートのために無人飛行体を利用する場合などが、様々にある。
【0006】
近年、このような要望や必要性に対応するために、ドローンなどの無人飛行体の開発や生産が進み、様々な場所や場面で利用されるようになってきている。結果として、無人飛行体の需要が高まっており、利用される数も上昇傾向にある。
【0007】
一方で、無人飛行体は、無線操縦されて上空を飛行する。いわゆる航空機とは異なり、誰でも簡単に利用できることから、危険性が指摘されている。例えば、住宅地、商業地、観光地などで上空を無人飛行体が飛んでいることは、そこにいる人たちにとっては恐怖に感じるものである。また、実際に落下や低空飛行などが起こると、歩行者などに衝突して事故につながる可能性もある。
【0008】
あるいは、空港、港湾施設、軍事施設、発電所などの、非常に高い安全管理や情報管理が求められる施設においては、その上空や近辺において無人飛行体が飛行していることや撮影行為などを行なっていることは好ましくない。
【0009】
また、無人飛行体の使用者のマナーの悪さが問題となることも多い。
【0010】
このような状況も踏まえて、安全管理、公共性、機密性の高い場所での許可のない無人飛行体の使用禁止や、住宅地や商業地などにおける許可制などが規制により導入されるようになっている。また、これら以外でも、使用できる無人飛行体の大きさや機能などについて、種々の制限が加わるようになってきている。
【0011】
もちろん、使用者のマナー向上も求められるようになってきている。
【0012】
このような安全考慮を求める環境の中で、無人飛行体の安全性能や安全機能にも、より高度なものが求められるようになってきている。例えば、無線操縦の性能に加えて、GPS機能を含むことで、自動操縦能力を向上させることが行われている。また、GPS機能を有することで、無線操縦での不具合が発生した場合でも、GPS機能により、安全な場所に戻るあるいは安全な場所に着陸するなどが行われている。
【0013】
このように、GPS機能を有する場合には、安全機能や安全性能が高まる。
【0014】
しかしながら、無人飛行体の中には、「トイドローン」と呼ばれ、軽量で小型のドローンがある。このトイドローンのような軽量で小型の無人飛行体は、その飛行高度や飛行距離が小さく、娯楽や特定施設の検査などを中心に、使用されている。
【0015】
軽量かつ飛行範囲や使用目的が限定されていることで、このような特定分類の小型無人飛行体(上記のトイドローンのような)には、GPS機能が備わっていないことが多い。また、使用における許認可も不要あるいは少ないなどの特徴がある。勿論、軽量や小型の実現のために、GPS機能を備えていないという側面もある。
【0016】
このようなGPS機能が備わっていない無人飛行体は、軽量あるいは小型であるといっても、操縦困難になった場合や強風にあおられて飛行困難になった場合に、落下などによる危険性がある。飛行区域に人がいないとしても、施設などに落下すれば、施設に被害が生じうる。
【0017】
また落下すると、場所によっては落下した無人飛行体の回収ができなくなり、環境被害などに繋がる懸念もある。勿論、所有者が修理などをして使用継続することもできなくなる問題もある。
【0018】
このような状況で、ドローンの回収を可能とするような技術が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開2020-006738号公報
【特許文献2】実用新案登録3208050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
特許文献1は、金属製の丈夫なワイヤーを張り、ワイヤ-の直下にて、水平&垂直方向にてワイヤーとの一定距離を保ちながらドローンが正確に飛行できるよう、2個の側面用距離センサー5を三角測量の原理で使用する。そしてドローン飛行時にワイヤーの上部に位置するセフティフック1をもった金具棒をドローン上部に装着することで、ドローン落下時にはワイヤーにフック部がひっかかり、ドローンの落下を防止できる技術を開示する。
【0021】
特許文献1の技術が、GPS機能を有してないドローンに適用されると、ワイヤーによる飛行経路の制御による安全性が高まる。しかしながら、ワイヤーによって設定される飛行経路に制限されてしまい、自由自在な飛行ができなくなる。これは、娯楽として使用される場合でも、検査などの業務に用いられる場合でも好ましくない。
【0022】
また、ワイヤー設置の手間やコスト、あるいは距離センサーなどのコストなど、小型で安価なドローンに適用するにはふさわしくない問題もある。安価なドローンを、様々な目的に使用しつつも安全性や回収性を上げることには適していない問題がある。
【0023】
特許文献2は、浮力付きバルーン1と小型ドローン2をワイヤーで連結して一体化させることを特徴とするバルーン吊下げ型小型ドローンであって、遡上装置は風向計5と風速計4を用いて、プロペラ駆動装置を起動し進行を妨げる風に対して進行を補助する。着陸用下降装置は浮力付きバルーン1とドローン2本体(補機を含む)及び運搬物の重量が平衡を保つとき、プロペラ駆動装置を起動して本体を下降させる技術を開示する。
【0024】
しかしながら、特許文献2は、特許文献1と同様に、ドローンを自由に飛行させることが難しい問題を有している。浮力がある以上、操作性や機敏性にも欠点が生じる。また、風船による浮力により不時着はできるが、不時着位置を制御することができない。また、風船の浮力によって、ドローンが風にあおられてしまうなどの問題や、飛行経路制御が難しくなるなどの問題がある。
【0025】
特許文献1,2のような問題を解決するために、地上に設置されたワイヤー巻取り装置により、ドローンをワイヤー接続することも考えられる。
【0026】
しかしながら、ワイヤー接続されると、ドローンの飛行に負荷がかかることになるので、ワイヤーの重量を軽量化することが必要となる。軽量化すると、ワイヤーがドローンの本体やプロペラに巻き付くなどの懸念もある。巻き付くなどが生じると、ドローンの飛行を妨げるだけでなく、落下の危険性も高める問題がある。
【0027】
以上のように、従来技術では、GPS機能を備えない無人飛行体の飛行および不具合時の安全維持や、落下時の回収容易性などを実現できない問題があった。
【0028】
本発明は、GPS機能を有さない無人飛行体の回収を可能とするとともに飛行の安全性を高める無人飛行体の回収装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0029】
上記課題に鑑み、本発明の無人飛行体の回収装置は、ワイヤーと、
前記ワイヤーの巻取り部と、
前記ワイヤーを無人飛行体に接続する接続部と、を備え、
前記ワイヤーにおいて、前記接続部から所定長さである特定部分は、これ以外の通常部分よりも、柔軟性が低い。
【発明の効果】
【0030】
本発明の無人飛行体の回収装置は、無人飛行体とワイヤー接続している。このワイヤー接続により、無人飛行体が操縦不能となったり飛行不能となった場合でも、発見不可能な場所や落下しては困る場所に落下させたりしなくて済む。
【0031】
また、無人飛行体の回収装置は、無人飛行体と接続しているワイヤーを巻き取ることができる。この巻取りにより、無人飛行体に不測の事態が起きた場合にも、手元回収することができる。
【0032】
また、ワイヤーが無人飛行体と接続している接続点から所定長さにおいては、ワイヤーの柔軟性が低い。これにより、風などの影響があっても、ワイヤーが無人飛行体のプロペラなどに絡むことが防止できる。また、プロペラの回転(気流が生じる)によりワイヤーを巻き込むことも防止できる。これらの防止により、ワイヤー接続されている無人飛行体の飛行への影響を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の実施の形態における無人飛行体の正面図である。
図2】本発明の実施の形態における無人飛行体の実際の飛行を示す模式図である。
図3】本発明の実施の形態における無人飛行体の回収装置の模式図である。
図4】本発明の実施の形態における無人飛行体の回収装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明の第1の発明に係る無人飛行体の回収装置は、ワイヤーと、
前記ワイヤーの巻取り部と、
前記ワイヤーを無人飛行体に接続する接続部と、を備え、
前記ワイヤーにおいて、前記接続部から所定長さである特定部分は、これ以外の通常部分よりも、柔軟性が低い。
【0035】
この構成により、ワイヤー接続による無人飛行体の安全性確保とワイヤーの絡みつき防止とを両立させる。
【0036】
本発明の第2の発明に係る無人飛行体の回収装置では、第1の発明に加えて、前記無人飛行体は、飛行のための対となる複数のプロペラを備え、
前記無人飛行体の中心から前記一つのプロペラの外端までの長さをAとし、
前記特定部分の長さをBとすると、
B ≧ A
の関係を有する。
【0037】
この構成により、ワイヤーが無人飛行体のプロペラに絡みつくことを確実に防止できる。
【0038】
本発明の第3の発明に係る無人飛行体の回収装置では、第2の発明に加えて、前記複数のプロペラは、前記無人飛行体の本体部の両側に対となって備わり、
前記無人飛行体の飛行を実現する。
【0039】
この構成により、無人飛行体が適切かつ自由度高く飛行することができる。
【0040】
本発明の第4の発明に係る無人飛行体の回収装置では、第3の発明に加えて、前記複数のプロペラが、前記本体部の両側に対となって備わる場合には、
前記特定部分の長さBは、
B ≧ 2A
の関係を有する。
【0041】
この構成により、ワイヤーが無人飛行体のプロペラに絡みつくことを、更に確実に防止できる。
【0042】
本発明の第5の発明に係る無人飛行体の回収装置では、第1から第4のいずれかの発明に加えて、前記特定部分は、通常部分と異なる素材であって、通常部分の素材よりも柔軟性の低い素材で構成されている。
【0043】
この構成により、柔軟性の違いを確実に生み出すことができる。
【0044】
本発明の第6の発明に係る無人飛行体の回収装置では、第1から第4のいずれかの発明に加えて、前記特定部分は、硬化液体を浸透させることで、通常部分よりも柔軟性を低下させている。
【0045】
この構成により、柔軟性の違いを確実に生み出すことができる。
【0046】
本発明の第7の発明に係る無人飛行体の回収装置では、第2から第6のいずれかの発明に加えて、前記特定部分の柔軟性の低さは、前記プロペラの回転で生じる気流による屈曲や湾曲、風による屈曲や湾曲を、抑制可能である。
【0047】
この構成により、ワイヤーの絡みつきを防止できる。これにより、ワイヤー接続による安全性向上と、これに伴うワイヤー絡みつきによる不具合の抑止の両方を両立できる。
【0048】
本発明の第8の発明に係る無人飛行体の回収装置では、第1から第7のいずれかの発明に加えて、前記巻取り部は、前記無人飛行体の飛行に合わせて、前記ワイヤーを送り出す。
【0049】
この構成により、無人飛行体の自由な飛行を実現しつつ、緊急時の行方不明などを防止できる。
【0050】
本発明の第9の発明に係る無人飛行体の回収装置では、第8発明に加えて、前記巻取り部から送り出されるワイヤーの重量は、前記無人飛行体の飛行能力を超えない。
【0051】
この構成により、無人飛行体の飛行自由度は維持される。
【0052】
本発明の第10の発明に係る無人飛行体の回収装置では、第1からの第9のいずれかの発明に加えて、前記巻取り部は、前記無人飛行体の飛行時に、前記ワイヤーにたるみが生じないように前記ワイヤーの送り出しに圧力を付与する。
【0053】
この構成により、ワイヤーの絡みつきなどを防止できる確実性を高めることができる。
【0054】
本発明の第11の発明に係る無人飛行体の回収装置では、第1から第10のいずれかの発明に加えて、前記巻取り部は、前記ワイヤーの巻取り時に、前記ワイヤーにたるみが生じないように前記ワイヤーの巻取りに圧力を付与する。
【0055】
この構成により、ワイヤーの絡みつきなどを防止できる確実性を高めることができる。
【0056】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0057】
(全体概要)
図1は、本発明の実施の形態における無人飛行体の正面図である。
【0058】
無人飛行体100は、図1に示されるように、いわゆるドローンと呼ばれるような無線操縦される飛行体である。勿論、操縦者が登場しているものではなく、操縦者は、操縦装置を使って無人飛行体100を飛行させる。また、無線操縦だけではなく、予め飛行経路や飛行方法をプログラミングされたプログラムに基づいて飛行することもある。
【0059】
もちろん、プログラミングと無線操縦とのミックスでの飛行をしてもよい。
【0060】
無人飛行体100は、本体部101とプロペラ102を備えている。図1の無人飛行体100は、本体部101の両側に対となるプロペラ102を備える構成を持っている。対となるプロペラ102は、一対(つまり2つのプロペラ102)でもよいし2対(つまり4つのプロペラ102)でもよい。また、図1のように両側に備わることで、飛行姿勢が安定すると共に、操縦性が高まる。
【0061】
このような特徴を持つプロペラ102が備わることで、無人飛行体100は、飛行における自在性も高まる。操縦者は、例えば建設物や施設などの監視や検査などの必要性であれば、これらの建築物や施設の周囲を、満遍なく飛行できる必要がある。あるいは、娯楽に用いられる場合には、操縦者が楽しめるように、飛行の自由度が高いことが好ましい。
【0062】
このため、無人飛行体100は、図1のような構成を有して、高い自由度で飛行できる。
【0063】
図2は、本発明の実施の形態における無人飛行体の実際の飛行を示す模式図である。例えば、図2のような橋梁200の周囲を無人飛行体100が飛行する。橋梁の検査や監視のためであったり、風景動画を撮影するためであったりする。勿論、単なる娯楽目的であってもよい。
【0064】
娯楽やその他の目的の場合には、橋梁から渓谷を動画撮影するなどがありえる。個人の楽しみのためであったり、映像番組のために撮影したりすることもある。
【0065】
ここで、無人飛行体100は、GPS機能を有さない簡易なものである。小型であり軽量である。より安価である。このような特徴を備えることで、より自由自在な飛行を行わせることができる。また、種々の規制に縛られることを少なくして、初心者や娯楽を優先する人にも楽しんでもらうことができる。
【0066】
当然ながら、監視や検査などの業務目的でも使用可能である。この場合でも、種々の規制が少ないことや、導入コスト(無人飛行体100そのもののコストに加えて、操縦を覚えるための人的育成のコスト)が低いことのメリットがある。これにより、娯楽目的、業務目的などの様々な目的で使用が可能となる。
【0067】
また、GPS機能を有さないことで、軽量化・小型化・低価格化が実現できる。
【0068】
一方で、従来技術でも説明した通り、GPS機能を有さないことで、無線操縦が不能となったり、風にあおられたりすると、無線操縦により立てなおしたり戻したりすることが困難となる。場合によっては落下したり、遠方に飛んで行ったりしてしまう懸念もある。
【0069】
このようなことが起こると、折角の無人飛行体100を失うことになってしまう。勿論、落下による危険性もある。また、落下した無人飛行体100を回収できないと、コスト的な損失だけでなく、環境負荷となってしまう問題もある。自然界への汚染懸念もある。
【0070】
このような問題に対応するために、図3のような無人飛行体の回収装置1が、本発明である。図3は、本発明の実施の形態における無人飛行体の回収装置の模式図である。模式図であるので、実際の大きさなどの相関関係と一致していない部分もある。構成や特徴を示すようにしている。
【0071】
無人飛行体の回収装置1(以下、必要に応じて「回収装置」と略す)は、ワイヤー3と、巻き取り部2と、接続部4とを備える。ワイヤー3は、接続部4により、無人飛行体100に接続される。すなわち、接続部4は、ワイヤー3を無人飛行体100に接続する。図3では、本体部101の底部に、ワイヤー3が接続されている。本体部101の底部にワイヤー3が接続されることで、無人飛行体100への負荷を軽減できる。
【0072】
この結果、無人飛行体100は、ワイヤー3により巻取り部2に接続される。すなわち、無人飛行体100は、巻取り部2とワイヤー3でつながった状態で飛行する。無人飛行体100は、手放し状態ではなく、ワイヤー3でつながった状態を維持できる。
【0073】
巻取り部2は、ワイヤー3を巻き取ったり送り出したりできる。いわゆる糸のボビンやロープの回収機のように、無人飛行体100の飛行に併せてワイヤー3を送り出したり、必要に応じてワイヤー3を巻き取ったりできる。
【0074】
巻取り部2がワイヤー3を巻き取ることができることで、例えば、無人飛行体100が着陸するときにはワイヤー3の巻取りも同時に行われてもよい。これにより、巻取り部2のある(すなわち、回収装置1のある)場所に戻って着陸させることができる。
【0075】
あるいは、着陸場所が巻取り部2とは異なる場所であっても、無人飛行体100が着陸した場所を、ワイヤー3をたどって見つけることができる。草むらなどに無人飛行体100が着陸した場合でも、ワイヤー3を辿ることで、容易に見つけることができる。
【0076】
また、無人飛行体100に何らかの不具合が生じて飛行制御ができなくなることもあり得る。無線操縦の無線到達範囲を超えてしまったり、動力やプロペラ102に不具合が生じたりすることによる。勿論、電池切れやコントロール装置に不具合が生じることでも、飛行制御が困難となることがある。
【0077】
あるいは、強風などにあおられたり、上空で鳥から攻撃を受けたりして飛行困難となることもある。例えば、飛行姿勢が狂ってしまい、飛行継続が困難となることもある。勿論、飛行制御が困難となれば、飛行が継続できない。
【0078】
このような場合には、最悪の場合として無人飛行体100が落下や墜落してしまうことがある。しかし、回収装置1が備わっていることで、落下や墜落しても、ワイヤー3を辿ることで、落下位置や墜落位置に到達して、無人飛行体100を回収できる。
【0079】
あるいは、飛行困難となった場合に、巻取り部2がワイヤー3を巻取りすることもよい。巻取りすることで、ワイヤー3に接続されている無人飛行体100を、操縦者の手元に回収することができる。
【0080】
状況に応じては、無人飛行体100は、プログラミングされた状態で操縦者による操縦がなく飛行していることもある。あるいは、管理者が回収装置1から離れた場所に居て、無人飛行体100が飛行していることもある。
【0081】
このような場合でも、無人飛行体100が、ワイヤー3の巻取りにより回収装置1の近くに戻ってくることができる。これにより、飛行不能や落下などの事象が生じても、無人飛行体100が行方不明となることを防止できる。回収可能であり回収容易にすることができる。
【0082】
ここで、ワイヤー3は、接続部4から所定長さである特定部分31と、これ以外の通常部分32とを有する。特定部分31の柔軟性は、通常部分32の柔軟性よりも低い。すなわち、特定部分31は通常部分32よりも変形しにくいような状態にある。
【0083】
ワイヤー3は、巻取り部2により巻取りされるので、当然に変形可能な柔軟性を有している。これは、一般的なワイヤーなどと同様である。
【0084】
特に、ワイヤー3が接続部4において無人飛行体100に接続されている。このため、無人飛行体100は、ワイヤー3をぶら下げた状態で飛行することになり、重量負荷を受けている。無人飛行体100は、この重量負荷を受けつつ飛行する必要がある。この点から、ワイヤー3は可能な限り軽いことが求められる。
【0085】
一方で、ワイヤー3が軽量であると、気流、風などにより、その柔軟性による変形が簡単に生じうる。場合によっては、ワイヤー3がプロペラ102に絡まったりする。プロペラ102に絡まってしまうと、プロペラ102が回転不能となったり、重量バランスが崩れたりする。これにより、無人飛行体100の飛行継続が困難となりえる。
【0086】
このような解析から、特定部分31における柔軟性を通常部分32よりも低くしている。柔軟性が低いことで、気流、対流、風などにより変形することが抑制される。この抑制により、変形したワイヤー3が、プロペラ102などに絡みつくことが防止できる。勿論、本体部101に絡みつくことも防止できる。
【0087】
無人飛行体100は、プロペラ102の回転により飛行する。このため。プロペラ102の下と上とで気圧差が生じる。この気圧差により、プロペラ102は、ワイヤー3を巻き込みやすい状態にある。このような状況でも、無人飛行体100側の特定部分31の柔軟性が、相対的に低いことで、このような巻き込みやすい状態にも対応できる。すなわち、絡みつきを防止できる。
【0088】
一方で、柔軟性を低くすることは、ワイヤー3の重量を増加させる方向に繋がる懸念もある。このため、プロペラ102を始めとして無人飛行体100に絡まりやすい特定部分31以外の通常部分32については、相対的に柔軟性を低くしている。このため、重量増加を最小限に抑えることができる。
【0089】
例えば、特定部分31については、ワイヤー3に硬化剤を浸透させるなどの処理が行われる(柔軟性を低下させるため)。このような処理は、特定部分31のワイヤー3の重量を増加させる。しかし、特定部分31以外の通常部分では、このような処理が無いので、全体としてのトータルの重量増加は最小限である。
【0090】
このように、無人飛行体100の飛行への影響を最小限にするためのワイヤー3のトータル重量増加の最小化と、無人飛行体100へのワイヤー3の絡みつきを防止することとの、バランスを実現できる。
【0091】
このバランスの実現により、次のような効果が奏される。
【0092】
(1)ワイヤー3で接続されていることで、落下やその他の場合に、無人飛行体100の回収や捜索が容易である。
【0093】
(2)ワイヤー3で接続されていることで、非常時に落下や墜落する前に、強制的に無人飛行体100を回収できる(巻取り部2によるワイヤー3の巻取りにより)。
【0094】
(3)ワイヤー3のトータル重量を抑制して、無人飛行体100の自由な飛行への影響を最小化できる。
【0095】
(4)特定部分31の相対的な柔軟性が低いことで、ワイヤー3の無人飛行体100への絡みつきを防止できる。特に、絡みつきやすい無人飛行体100の近くを特定部分31とすることで、重量とのバランスをもって効果的に絡みつき防止を実現できる。
【0096】
このように、ワイヤー3での接続によるメリット・デメリットのバランスを最適に取った状態で、無人飛行体の回収を可能とできる。
【0097】
(各部の詳細やバリエーション)
次に、各部の詳細やバリエーションについて説明する。
【0098】
(特定部分の長さ)
無人飛行体100は、図1のように飛行のための対となる複数のプロペラ102を備える。図1などでは、両側に対となるプロペラ102を備えている。1対であれば2つのプロペラ102,2対であれば4つのプロペラ102を備える。
【0099】
ここで、図4のような関係を、特定部分31は有することも好適である。図4は、本発明の実施の形態における無人飛行体の回収装置の模式図である。
【0100】
無人飛行体100の中心から一つのプロペラ102の外端までの長さを、図4に示すように「A」とする。また、特定部分31の長さを「B」とする。このとき、
B ≧ A
の関係を有することも好適である。すなわち、この関係により、特定部分31の長さを規定することも好適である。このような長さを有することで、無人飛行体100の中心からプロペラ102の外端にかかる範囲でのワイヤー3の柔軟性が低い(特定部分31になる)。柔軟性が低い特定部分31は、接続部4からプロペラ102の外端までの長さになる。この範囲の柔軟性が低いことが担保されていると、ワイヤー3が気流や風などで変形しても、特定部分31は、変形しにくい。
【0101】
この変形部分31の長さが上記関係であることで、プロペラ102に絡みつく可能性のあるワイヤー3の位置では変形が生じにくい。このため、ワイヤー3に変形が生じても特定部分31の下の通常部分32である。プロペラ102の外端までの距離を担保した長さより下の部分だけの変形となるので、ワイヤー3に変形が生じても、ワイヤー3がプロペラ102に絡みつく可能性を極めて減少させることができる。
【0102】
特に、複数のプロペラ102は、無人飛行体102の両側に対となって備わり無人飛行体100の飛行を実現する要素である。ここに、ワイヤー3が絡みつかないことで、飛行の安全性、機能維持が実現される。結果として、強風や気流の変化などの事態が発生しても、無人飛行体100の落下などが生じることを防止できる。
【0103】
あるいは、特定部分31の長さ「B」は、次の関係を有することもよい。
B ≧ 2A
【0104】
このように、一対のプロペラ102全体をカバーする範囲を特定部分31とすることで、柔軟性の低い部分が、これら全体をカバーする範囲となる。これにより、強風や気流変化などの原因でワイヤー3が変形しても、プロペラ102に絡みつくことを、更に確実に防止できる。
【0105】
このような特定部分31の長さを最適化することで、強風、突風、気流変化、無人飛行体100の姿勢変化、その他の事象によってワイヤー3が変形する場合でも、プロペラ102(ひいては無人飛行体100)に、ワイヤー3が絡みつくことを防止できる。
【0106】
特に、ワイヤー3が変形した際に、プロペラ102の回転で生じている気流に吸い込まれるようにしてワイヤー3がプロペラ102に絡みつくことを、発明者は解析した。この解析結果に基づき、上記のような長さ関係を有する特定部分31により、ワイヤー3のプロペラ102への絡みつきを防止できることに至った。
【0107】
また、特定部分31を、上記のような関係式での長さに特定することで、重量を増やしてしまう柔軟性を低下させた特定部分31を最小化できる。結果として、ワイヤー3全体の重量を低下させることができる。これにより、無人飛行体100の飛行への影響を最小化できる。
【0108】
(特定部分の柔軟性低下)
特定部分31は、通常部分32に比較して柔軟性が低い。
【0109】
この柔軟性の低さを実現するために、次のような処理が行われればよい。
【0110】
その1:素材の相違
ワイヤー3において、特定部分31の素材を、通常部分32とは異なる素材であって、通常部分32の素材よりも柔軟性の低い素材で構成されている。素材としての柔軟性が異なることで、特定部分31の相対的な柔軟性を低くできる。例えば、ワイヤー3が金属性である場合には、特定部分31については金属密度や編み込み密度が高いことで、柔軟性を低くすることが考えられる。
【0111】
あるいは、通常部分32は繊維製のものであり特定部分31は、金属製であるなどにすることで、異なる素材とすることができる。このような素材の違いにより、特定部分31の柔軟性を相対的に下げることもよい。
【0112】
素材そのものの違い、素材の基本は同じであるが素材の形状や構造の違いによる違い、など、種々の方法で、特定部分31と通常部分32との素材を相違させることができる。この素材の相違により、特定部分31の柔軟性を通常部分32より低下させることができる。
【0113】
その2:硬化液体の浸漬
【0114】
ワイヤー3が金属、繊維、その他の素材で構成されており、特定部分31および通常部分32のいずれでも素材や素材構造が同じ場合もありえる。この場合には、特定部分31に硬化液体を浸漬させること(浸透させること)で、特定部分31の柔軟性を相対的に低下させることもよい。
【0115】
例えば、硬化樹脂や硬化組成液などを、特定部分31に浸漬・浸透させる。これにより、特定部分31の硬度が高まって、柔軟性が低くなる。このような硬化液体の浸漬などによって、特定部分31の柔軟性を低下させることもよい。
【0116】
また、その1,その2以外の方法で、特定部分31の柔軟性を低下させることもよい。これにより、上述したように、ワイヤー3がプロペラ102や本体部101に絡みつくことを防止できる。
【0117】
特定部分31の柔軟性の低さは、プロペラ102の回転で生じる気流による屈曲や湾曲、風による屈曲や湾曲を抑制可能である。このように抑制可能であることで、ワイヤー3のプロペラ102や本体部101などへの絡みつきを防止できる。
【0118】
(巻取り部とワイヤー)
巻取り部2は、ワイヤー3を送り出したり巻き取ったりする。無人飛行体100が飛行する際には、この飛行に併せて、巻取り部2は、ワイヤー3を送り出す。飛行範囲に併せた長さのワイヤー3を送り出す。
【0119】
巻取り部2は、モーターなどを備えており、無人飛行体100の飛行に併せてモーターがワイヤー3を送り出してもよい。あるいは、巻取り部2は、送り出しにおいては無人飛行体100に引っ張られるのに合わせた自由な送り出しを可能とすることでもよい。
【0120】
ワイヤー3が送り出されることで、無人飛行体100は、ワイヤー接続されているメリットを有しながら、自由な飛行を行える。
【0121】
このとき、送り出されるワイヤー3の重量は、無人飛行体100の飛行能力を超えない。これにより、無人飛行体100の飛行を阻害しない。
【0122】
また、巻取り部2は、ワイヤー3を必要に応じて巻き取る。例えば、無人飛行体100の着陸に併せて次第にワイヤー3を巻き取ることもよい。着陸位置が、巻取り部2の近くであれば、ワイヤー3を巻き取ることで、無人飛行体100の着陸位置を適切にすることを補助できる。
【0123】
また、墜落や落下などの発生時には、強制的にワイヤー3を巻き取ることで、無人飛行体100の紛失や行方不明の可能性を低下させることもよい。また、落下後の捜索手間を削減することにもなる。
【0124】
巻取り部2は、モーターを備えていることで、ワイヤー3を巻き取る。無人飛行体100の飛行操縦と連動した制御部を備えて、ワイヤー3が巻き取られればよい。また、非常事態においては、操縦者がその指示を出すことで、巻取り部2にワイヤー3の緊急的な巻取りを行わせることもよい。
【0125】
(ワイヤーのテンション)
巻取り部2は、無人飛行体100の飛行時に、ワイヤー3にたるみが生じないように、ワイヤー3の送り出しに圧力を付与することも好適である。すなわち、送り出されるワイヤー3にテンションを掛けて、たるみを生じさせないようにする。
【0126】
たるみが生じないことで、(1)無人飛行体100の自由な飛行への影響を低減できる、(2)無人飛行体100へのワイヤー3の重量負荷を最小化できる、(3)ワイヤー3の変形を抑制し、ワイヤー3が無人飛行体100に絡みつくことを更に軽減できる、といった効果が生じる。
【0127】
もちろん、送り出しでの圧力付与は、無人飛行体100の飛行能力を超えないように調整されればよい。
【0128】
また、巻取り部2は、ワイヤー3の巻取り時に、ワイヤー3にたるみが生じないように、ワイヤー3の巻取りに圧力を付与することも好適である。上記(1)~(3)と同様の効果が生じるからである。
【0129】
巻取り部2によるワイヤー3の送り出しや巻取りは、究極的には無人飛行体100の飛行によるワイヤー3の送り出される量の調節である。この送り出される量のワイヤー3のたるみが生じにくい圧力付与がなされることが好適である。
【0130】
このような巻取り部2の工夫により、無人飛行体100の飛行自由度が向上し、ワイヤー3の絡みつきの防止レベルも上げることができる。
【0131】
以上のように、GPS機能を有さない小型で安価な無人飛行体100であっても、回収装置1によって、紛失や落下での破壊の減少を実現することができる。また、飛行における周囲への不安を減少させることもできる。この結果、従来は簡易な無人飛行体100の使用が難しいと思われていた場所や用途でも、これらを使用できる。
【0132】
この結果、小型で安価な無人飛行体100を、様々な場面で使用できるようになり、様々な活動でのコストを低減することができる。
【0133】
なお、実施の形態で説明された無人飛行体の回収装置は、本発明の趣旨を説明する一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲での変形や改造を含む。
【符号の説明】
【0134】
1 無人飛行体の回収装置
2 巻取り部
3 ワイヤー
31 特定部分
32 通常部分
4 接続部
100 無人飛行体
101 本体部
102 プロペラ
図1
図2
図3
図4