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  • 特開-近視抑制用点眼剤 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022176427
(43)【公開日】2022-11-30
(54)【発明の名称】近視抑制用点眼剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/551 20060101AFI20221122BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20221122BHJP
   A61P 27/10 20060101ALI20221122BHJP
   C07D 239/95 20060101ALN20221122BHJP
【FI】
A61K31/551
A61K9/08
A61P27/10
C07D239/95
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021082858
(22)【出願日】2021-05-17
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-08-11
(71)【出願人】
【識別番号】513077162
【氏名又は名称】株式会社坪田ラボ
(74)【代理人】
【識別番号】100117226
【弁理士】
【氏名又は名称】吉村 俊一
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ホヌク
(72)【発明者】
【氏名】栗原 俊英
(72)【発明者】
【氏名】坪田 一男
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076BB24
4C076CC10
4C076FF11
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC54
4C086GA07
4C086GA12
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA17
4C086MA58
4C086NA14
4C086ZA33
(57)【要約】
【課題】新しい近視抑制用点眼剤を提供する。
【解決手段】ブナゾシンを含む点眼剤を近視抑制用点眼剤として上記課題を解決した。この近視抑制用点眼剤は、近視抑制用として効果がある。
【選択図】図3


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブナゾシンを含む点眼剤である、ことを特徴とする近視抑制用点眼剤。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近視抑制用点眼剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近視は特にアジア人、中でも日本人に多く、-5D以上の強度近視の割合も高い。また近年、近視は世界的に増加の一途をたどっており、日本でも裸眼視力1.0未満の児童の割合が年々増加している。また近視は7歳から12歳の学童期に急激に進行することも知られている(非特許文献1を参照)。
【0003】
近視はその発症機序により屈折性近視、調節性近視(仮性近視)及び軸性近視に分類されるが、学童期における近視進行は主として軸性近視である。人間の眼は、誕生直後は遠視であり、成長期の眼軸伸展により遠視の程度が小さくなり、学童期に入ると正視化する。この正視化現象後の眼軸伸展はそのまま近視化に繋がり、そして一度伸展した眼軸長をもとに戻すことはできない。したがって、成長期から学童期に渡る期間の眼軸伸展の抑制が近視予防又は処置のために有効であると考えられている(非特許文献2を参照)。また、成長期だけでなく成人においても眼軸は伸展し、成人の眼軸伸展は様々な眼疾患のリスクファクターであると言われている。
【0004】
近視を予防するための治療剤が提案されており、例えば、Rhoキナーゼ阻害剤(特許文献1参照)、ブラジキニン(特許文献2)、クロセチン(特許文献3)等が提案されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】医学のあゆみ、Vol.253、No.2、2015年.
【非特許文献2】眼科、第58巻6号、635-641、2016年.
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO2010/010702
【特許文献2】特開2011-144111号公報
【特許文献3】WO2018/212152
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、新しい近視抑制用点眼剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る近視抑制用点眼剤は、ブナゾシンを含む点眼剤である、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、近視抑制を実証した新しい近視抑制用点眼剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】近視誘導実験に使用したマウス(右眼に-30Dレンズ、左眼に0Dを装着)の写真である。
図2】ブナゾシンによる屈折率の変化を示す結果である。
図3】ブナゾシンによる眼軸長の変化を示す結果である。
図4】ウノプロストンによる屈折率の変化を示す結果である。
図5】ウノプロストンによる眼軸長の変化を示す結果である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る近視抑制用点眼剤について説明する。本発明は、以下の実施形態及び実施例の内容に限定されず、本発明の要旨を包含する範囲で種々の変形例や応用例を含む。
【0012】
[近視抑制用点眼剤]
本発明者らは、緑内障の点眼薬には近視進行抑制に効果的であるものがあることに着目し、既存の緑内障点眼薬から近視進行抑制効果を見つける試みを行った。本願では、緑内障点眼薬をマウス近視モデルに点眼し、眼軸長と屈折率を測定し、軸性近視の進行抑制効果があるか否かを評価した。
【0013】
後述の実験結果に示すように、緑内障点眼薬の主成分を含む点眼液について評価したところ、ブナゾシンを含有する点眼液(実験1参照)では近視抑制効果が見られたが、ウノプロストンを含有する点眼液(実験2を参照)では近視抑制効果が見られなかった。緑内障の点眼薬には、眼房水の排泄を促進させることで眼圧を下げるとともに血流を改善する薬効をもつことが知られており、血管平滑筋を弛緩して血管拡張を生じさせるαブロッカー(α阻害薬)に効果があると言われている。ブナゾシンもウノプロストンもαブロッカーであるが、近視抑制効果については、αブロッカーであるからということのみで期待できないことがわかった。
【0014】
本発明では、ブナゾシンを含む点眼剤が近視抑制用点眼剤として効果があることを見出した。
【0015】
ブナゾシンを含む点眼剤の種類は特に限定されないが、水性点眼剤であることが好ましい。点眼剤には、ブナゾシンに加えて、その他の有効成分(薬理活性成分、生理活性成分等)を配合してもよい。点眼剤には、さらに本発明の効果を損なわない範囲で、その用途や形態に応じて、常法に従い、様々な成分や添加物を適宜選択し、一種又はそれ以上を併用して含有させることができる。それらの成分又は添加物としては、例えば、香料又は清涼化剤、防腐剤、殺菌剤又は抗菌剤、pH調節剤、キレート剤、安定化剤、等張化剤、緩衝剤等の各種添加剤を挙げることができる。
【0016】
ブナゾシンの含有量は、現実的な配合量が設定され、後述の実験例では、デタントール0.01%点眼液1mL中にブナゾシン塩酸塩が0.1mg含まれているが、同程度の含有量とされることが好ましく、本発明の効果を阻害しない範囲内で配合することができる。点眼剤の用法・用量は、患者の症状、年齢等により変動するが、通常、1日約1~6回、1回約1~2滴を点眼すればよい。
【実施例0017】
以下、実験例により本発明をさらに詳しく説明する。
【0018】
[実験1]
図1に示すように、生後3週齢のマウス(C57BL6/J,日本クレア株式会社)に、左眼0D(「D」はDiopterの略で、レンズの屈折力の単位である。)及び右眼-30Dのレンズを装着し、近視を誘導した。点眼は3週間継続し、PBS(Phosphate Buffered Saline)点眼を対照群とし、ブナゾシン点眼を試験群とした。ブナゾシンはデタントール点眼液の主成分であり、ブナゾシンの点眼はデタントール0.01%点眼液(参天製薬株式会社製、1mL中にブナゾシン塩酸塩が0.1mg含まれる)を用いて行った。点眼回数については、1日1回2滴の場合と1日2回(朝、夕各2滴)の場合とした。3週間後のマウス眼球の屈折率及び眼軸長を測定し、その変化量を計算した。なお、図中、*はp<0.05、**はp<0.01であることを示す(本願の図において同じ。)。
【0019】
(屈折率と眼軸長の測定)
屈折値の測定は、マウス用赤外線フォトリフレクター(Infrared photorefractor for mice、Tubingen大学Schaeffel教授作製)を用いた。眼軸長の測定は、スペクトラルドメイン光コヒーレンストモグラフィー(Envisu R4310、Leica社製)を用いた。
【0020】
(結果)
図2は屈折率の結果である。屈折率は負数になるほど近視になる。対照群の屈折率の変化では、-30Dレンズの眼は近視となり、0Dの眼と有為差がみられた。一方、点眼群では、-30Dレンズの眼と0Dの眼との有為差はなく、近視抑制に効果があることがわかった。なお、1回点眼の方が2回点眼より近視抑制効果が見られた。
【0021】
図3は眼軸長の結果である。眼軸長は値が大きいほど近視になる。対照群の眼軸長の変化では、-30Dレンズの眼の眼軸長が伸び、0Dの眼の眼軸長と有為差がみられた。一方、点眼群では、両眼の眼軸長の差がほぼなく、近視抑制効果が見られた。なお、1回点眼と2回点眼の差は見られなかった。
【0022】
以上の結果より、ブナゾシンを含む点眼液が近視抑制効果を示すことがわかった。
【0023】
[実験2]
実験1と同様のマウスを使用し、近視を誘導した。点眼は3週間継続し、PBS点眼を対照群とし、ウノプロストン点眼を試験群とした。ウノプロストンはレスキュラ点眼液の主成分であり、ウノプロストンの点眼はレスキュラ点眼液0.12%(日東メディック株式会社、1mL中にイソプロピルウノプロストンが1.2mg含まれる)の点眼(両目、1日1回2滴)で行った。3週間後のマウス眼球の屈折率及び眼軸長を測定し、その変化量を計算した。屈折率測定と眼軸長測定は実験1と同じである。
【0024】
(結果)
図4は屈折率の結果である。対照群の屈折率の変化では、-30Dレンズの眼は近視となり、0Dの眼と有為差がみられた。一方、点眼群では、両目が近視となり、点眼での近視抑制効果は見られなかった。
【0025】
図5は眼軸長の結果である。対照群の眼軸長の変化では、-30Dレンズの眼の眼軸長が伸び、0Dの眼の眼軸長と有為差がみられた。一方、点眼群では両目の眼軸長に有為差が見られなかった。
【0026】
以上の結果より、ウノプロストンを含む点眼液が近視抑制効果を示さないことがわかった。

図1
図2
図3
図4
図5