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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022176437
(43)【公開日】2022-11-30
(54)【発明の名称】超伝導デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/32 20060101AFI20221122BHJP
   H01R 4/68 20060101ALI20221122BHJP
   H01R 33/76 20060101ALI20221122BHJP
   H05K 1/02 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
H01L23/32 A
H01R4/68
H01R33/76 505B
H05K1/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021082873
(22)【出願日】2021-05-17
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「高効率・高速処理を可能とするAIチップ・次世代コンピューティングの技術開発/次世代コンピューティング技術の開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【弁理士】
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【弁理士】
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】石原 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 秀
(72)【発明者】
【氏名】菊池 克
【テーマコード(参考)】
5E024
5E338
【Fターム(参考)】
5E024CA18
5E024CB05
5E338AA03
5E338BB04
5E338BB13
5E338BB75
5E338CC01
5E338CC04
5E338EE27
(57)【要約】
【課題】外部へ接続する端子の断線を抑制し、外部へ接続する端子を確保することができる超伝導デバイスを提供する。
【解決手段】一実施の形態に係る超伝導デバイスは、超伝導チップ10と、超伝導チップ10が実装されたインターポーザ20と、インターポーザ20に対向して配置され、可動ピン47及び可動ピン47を支持するハウジング45を含むソケット40と、ソケット40に対向して配置され、外部への入出力となるコネクタが形成されたボード50を備え、ボード50は、ビアホール52の端子の一端が可動ピン47の端子の一端と電気的に接続すると共に、ビアホール52の穴径が、ビアホールに接続する可動ピン47の先端部分の直径より小さい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超伝導チップと、
前記超伝導チップが実装されたインターポーザと、
前記インターポーザに対向して配置され、可動ピン及び前記可動ピンを支持するハウジングを含むソケットと、
前記ソケットに対向して配置され、外部への入出力となるコネクタが形成されたボードを備え、
前記ボードは、ビアホールが形成され、当該ビアホールの端子の一端が前記可動ピンの端子の一端と電気的に接続すると共に、前記ビアホールの穴径が、前記ビアホールに接続する前記可動ピンの先端部分の直径より小さい、
超伝導デバイス。
【請求項2】
前記ボードは、前記ビアホールに接続された配線層を備え、前記配線層と前記コネクタが電気的に接続された、
請求項1に記載の超伝導デバイス。
【請求項3】
前記配線層は、前記ソケットに対向した面とは反対面に配置された、請求項2に記載の超伝導デバイス。
【請求項4】
前記ボードは、複数の絶縁層及び複数の導体層を含む多層構造を有し、前記ボードの内部に前記配線層が形成された、請求項2に記載の超伝導デバイス。
【請求項5】
前記超伝導チップ、前記インターポーザ、前記ソケット、及び、前記ボードのうち、少なくともいずれかの一部は、冷却機能を有する試料台に接した、
請求項1~4のいずれか1項に記載の超伝導デバイス。
【請求項6】
前記超伝導チップは、冷却機能を有する試料台に形成された凹部の内部に配置され、
前記インターポーザの一部は、前記試料台に接した、
請求項5に記載の超伝導デバイス。
【請求項7】
前記超伝導チップは、前記インターポーザに実装された第1面と、前記第1面の反対側の第2面と、を有し、
前記第2面の少なくとも一部は、前記凹部の内面に接した、
請求項6に記載の超伝導デバイス。
【請求項8】
前記ハウジングは、前記可動ピンの一端が突出した一端面と、前記可動ピンの他端が突出した他端面と、前記一端面の周縁と前記他端面の周縁とを接続する側面と、を有し、
前記一端面、前記他端面及び前記側面のうち、少なくともいずれかの一部は、冷却機能を有する試料台に接した、
請求項1~7のいずれか1項に記載の超伝導デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超伝導デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、超伝導状態を利用した超伝導チップをインターポーザにフリップチップ実装した量子デバイス(超伝導デバイス)が記載されている。このような超伝導デバイスを超伝導状態で用いるためには、超伝導デバイスを極低温まで冷却する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2018/212041号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
超伝導チップを極低温まで冷却させた場合には、外部へ接続する端子との接点が、冷却時における体積変化を起因とした応力及び歪みによって断線する恐れがある。また、上述した超伝導デバイスにおいて、インターポーザの片面を試料台による冷却に使用した場合には、外部へ接続する端子数に限界がある。
【0005】
本開示の目的は、このような課題を解決するためになされたものであり、外部へ接続する端子の断線を抑制し、外部へ接続する端子を確保することができる超伝導デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示にかかる超伝導デバイスは、量子ビットが構成された超伝導チップと、前記超伝導チップが実装されたインターポーザと、前記インターポーザに対向して配置され、可動ピン及び前記可動ピンを支持するハウジングを含むソケットと、ソケットに対向して配置され、外部への入出力となるコネクタが形成されたボードを備え、ボードは、ビアホールが形成され、当該ビアホールの端子の一端が可動ピンの端子の一端と電気的に接続すると共に、ビアホールの穴径が、ビアホールに接続する可動ピンの先端部分の直径よりわずかに小さい。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、外部へ接続する端子の断線を抑制し、外部へ接続する端子を確保することができる超伝導デバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態1に係る超伝導デバイスを例示した断面図である。
図2】実施形態1に係る超伝導デバイスにおいて、超伝導チップ及びインターポーザを例示した分解斜視図である。
図3】実施形態1に係る超伝導デバイスにおいて、可動ピンとビアホールの接続部分を拡大した断面図である。
図4】実施形態1のビアホールの変形例を示した断面図である。
図5】実施形態2に係る超伝導デバイスを示した断面図である。
図6】実施形態2の変形例に係る超伝導デバイスを示した断面図である。
図7】実施形態3に係る超伝導デバイスを示した断面図である。
図8】実施形態3の変形例に係る超伝導デバイスを示した断面図である。
図9】実施形態3の他の変形例に係る超伝導デバイスを示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
量子コンピューティングとは量子力学的な現象(量子ビット)を用いてデータを操作する領域である。量子力学的な現象とは、複数の状態の重ね合わせ(量子変数が複数の異なる状態を同時にとる)、もつれ(複数の量子変数が空間または時間に関わらず関係する状態)などとなる。超伝導チップは、量子ビットを生成する量子回路が設けられている。説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略、及び簡略化がなされている。また、各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
(実施形態1)
実施形態1に係る超伝導デバイスを説明する。図1は、実施形態1に係る超伝導デバイスを例示した断面図である。図2は、実施形態1に係る超伝導デバイスにおいて、超伝導チップ及びインターポーザを例示した分解斜視図である。図1及び図2に示すように、超伝導デバイス1は、超伝導チップ10と、インターポーザ20と、ソケット40と、ボード50を備えている。
【0010】
超伝導チップ10は、チップ基板15と、配線層16とを含んでいる。チップ基板15は、例えば、シリコン(Si)を含んでいる。なお、チップ基板15は、超伝導チップ10が量子ビットを構成することができれば、シリコンを含むものに限らず、サファイアや化合物半導体材料(IV族、III-V族、II-VI族)等の他の電子材料を含んでもよい。また、単結晶である方が望ましいが、多結晶やアモルファスでも構わない。
【0011】
チップ基板15の形状は、例えば、板状であり、一方の板面及び一方の板面の反対側の他方の板面を有している。一方の板面を第1面11と呼び、他方の板面を第2面12と呼ぶ。したがって、超伝導チップ10及びチップ基板15は、第1面11と、第2面12とを有している。例えば、第1面11及び第2面12は、矩形である。超伝導デバイス1において、第1面11は、インターポーザ20側に向いている。第1面11は、インターポーザ20にバンプBPによって実装されている。
【0012】
配線層16は、チップ基板15の第1面11側に設けられている。配線層16は、例えば、ニオブ(Nb)等の超伝導材料を含んでいる。なお、配線層16に用いられる超伝導材料は、例えば、ニオブ(Nb)に限らず、ニオブ窒化物、アルミニウム(Al)、インジウム(In)、鉛(Pb)、錫(Sn)、レニウム(Re)、パラジウム(Pd)、チタン(Ti)、及び、これらのうちの少なくともいずれかを含む合金でもよい。
【0013】
配線層16は、量子回路17を含む。量子回路17には、超伝導材料がジョセフソン接合17aによって環状に接続されたループ回路17bを有する共振器17cが形成されている。ジョセフソン接合に用いる材料は、Alが好ましいが、他の超伝導材料でもよい。量子回路17は、超伝導における量子状態において、共振器17cを用いた処理を行う。このように、超伝導チップ10は、量子回路17を含み、量子状態を用いた処理を行う。
【0014】
配線層16は、バンプBPを介して、インターポーザ20に実装されている。よって、超伝導チップ10は、インターポーザ20にフリップチップ実装されている。
【0015】
バンプBPは、上述した超伝導材料を含んでもよい。バンプBPは、配線層16と同じ超伝導材料を含んでもよいし、配線層16と異なる超伝導材料を含んでもよい。また、バンプBPが複数の金属層を含む場合には、少なくとも1層は、超伝導材料を含むことが好ましい。バンプBPは、Nb(超伝導チップ10の配線表面)/In(Sn、Pb及びこれらのうちの少なくともいずれかを含む合金)/Ti/Nb(インターポーザ20の配線表面)/Cuを含む層状でもよいし、Nb(超伝導チップ10の配線表面)/Nb(インターポーザ20の配線表面)/Cuを含む層状でもよいし、Nb(超伝導チップ10の配線表面)/In(Sn、Pb及びこれらのうちの少なくともいずれかを含む合金)/Ta(インターポーザ20の配線表面)/Cuを含む層状でもよい。また、Al及びInを含むバンプBPの場合には、AlとInとの間の合金化を防ぐために、TiNをバリア層に用いてもよい。その場合には、バンプBPは、Al(超伝導チップ10の配線表面)/Ti/TiN/In(Sn、Pb及びこれらのうちの少なくともいずれかを含む合金)/TiN/Ti/Al(インターポーザ20の配線表面)/Cuを含む層状でもよい。ここで、Tiは密着層である。好ましいフリップチップ接続は、Nb(超伝導チップ10の配線)/In/Ti/Nb(インターポーザ20の配線表面)/Cu、または、Nb(超伝導チップ10の配線)/Nb(インターポーザ20の配線表面)/Cuである。Cuの厚みを、インターポーザ配線層23の2μm厚に、2~10μmの範囲で追加してφ100μmのバンプを設けることが好ましい。
【0016】
インターポーザ20は、インターポーザ配線層23及び24と、インターポーザ基板25と、貫通ビア(Though Via、以下、TV26と呼ぶ)を含んでいる。なお、図1では、図が煩雑にならないように、TV26を省略している。
【0017】
インターポーザ基板25は、例えば、板状である。インターポーザ基板25は、例えば、シリコン(Si)を含んでいる。なお、インターポーザ基板25は、超伝導チップ10を実装することができれば、シリコンを含むものに限らず、サファイアや化合物半導体材料(IV族、III-V族、II-VI族)、ガラス、セラミック等の他の電子材料を含んでもよい。インターポーザ基板25の表面は、シリコン酸化膜(SiO、TEOS膜等)で覆われていることが好ましい。インターポーザ基板25及びインターポーザ20は、超伝導チップ10が実装された実装面21と、実装面21の反対側の反対面22と、を有している。
【0018】
ここで、超伝導デバイス1の説明の便宜のため、XYZ直交座標軸を導入している。インターポーザ20の反対面22に平行な面をXY平面とし、反対面22に直交する方向をZ軸方向とする。+Z軸方向を上方とし、-Z軸方向を下方とする。なお、上方及び下方は、説明の便宜のためであり、実際の超伝導デバイス1を使用する際の配置される方向を示すものではない。
【0019】
例えば、インターポーザ20の-Z軸方向側に超伝導チップ10が配置されている。超伝導チップ10の+X軸方向側に配置された配線層16と、インターポーザ20の-Z軸方向側に配置された実装面21とはバンプBPを介して接続されている。
【0020】
インターポーザ配線層23は、インターポーザ20の実装面21側、すなわち、インターポーザ20の-Z軸方向側に形成されている。インターポーザ配線層23は、上述した超伝導材料を含んでいる。インターポーザ配線層23は、配線層16と同じ超伝導材料を含んでもよいし、配線層16と異なる超伝導材料を含んでもよい。例えば、インターポーザ配線層23は、表面からインターポーザ基板25まで順に、Nb(0.1μm厚)、Cu(2μm厚)、Tiを含むことが好ましい。例えば、インターポーザ基板25がシリコンを含む場合には、インターポーザ20の実装面21側は、Nb/Cu/Ti/SiO/Si(インターポーザ基板25)という構成が好ましい。インターポーザ配線層23は、バンプBPを介して、超伝導チップ10の配線層16に接続されている。
【0021】
インターポーザ配線層23は、単層でも多層でもよい。インターポーザ配線層23は、磁場印加回路23a及び読み出し部23bを含んでもよい。磁場印加回路23aは、ループ回路17bに印加する磁場を生成する。ループ回路17bに磁場を印加することにより、量子回路17を発信器として機能させることができる。読み出し部23bは、量子回路17から情報を読み出す。
【0022】
インターポーザ配線層24は、インターポーザ基板25の反対面22側、すなわち、インターポーザ20の+Z軸方向側に形成されている。インターポーザ配線層24は、上述した超伝導材料を含んでもよい。インターポーザ配線層24は、配線層16及びインターポーザ配線層23と同じ超伝導材料を含んでもよいし、配線層16及びインターポーザ配線層23と異なる超伝導材料を含んでもよい。また、インターポーザ配線層24は、常伝導材料を含んでもよい。常伝導材料は、例えば、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、及び、これらのうちの少なくともいずれかを含む合金である。例えば、インターポーザ配線層24は、表面からインターポーザ基板25まで順に、Cu、Tiを含むことが好ましい。例えば、インターポーザ基板25がシリコンを含む場合には、インターポーザ20の反対面22側は、Cu/Ti/SiO/Si(インターポーザ基板25)という構成が好ましい。
【0023】
インターポーザ配線層24は、単層でも多層でもよい。インターポーザ配線層24は、超伝導チップ10からTV26を介して情報を取り出すための端子24aを含んでいる。図2では、1つの端子24aのみ示しているが、複数の端子24aが形成されてもよい。本実施形態の超伝導デバイス1では、反対面22を、情報を取り出すための端子24aに最大限に活用することができる。
【0024】
TV26は、インターポーザ基板25の実装面21側から反対面22側まで貫通する。インターポーザ配線層23とインターポーザ配線層24とは、TV26によって接続されている。
【0025】
TV26は、上述した超伝導材料を含んでもよい。TV26は、配線層16等と同じ超伝導材料を含んでもよいし、配線層16等と異なる超伝導材料を含んでもよい。また、TV26は、上述した常伝導材料を含んでもよい。TV26は、インターポーザ配線層24と同じ常伝導材料を含んでもよいし、インターポーザ配線層24と異なる常伝導材料を含んでもよい。例えば、TV26は、φ50μmの貫通孔の側壁にSiO(例えば、熱酸化膜)を形成し、Tiを密着層としてCuを充填されたものである。
【0026】
ソケット40は、インターポーザ20に対向して配置されている。例えば、本実施形態では、ソケット40は、インターポーザ20の反対面22に対向して配置されている。ソケット40は、ハウジング45及び可動ピン47を含んでいる。なお、図1では、図が煩雑にならないように、いくつかの符号を省略している。
【0027】
ハウジング45は、一端面41及び一端面41の反対側の他端面42を有している。また、ハウジング45は、一端面41の周縁と他端面42の周縁とを接続する側面43を有している。一端面41は、例えば、インターポーザ20側を向いて下方に面し、他端面42は、上方を向いている。ハウジング45は、可動ピン47を保持する。ハウジング45は、複数の可動ピン47を保持してもよい。
【0028】
ハウジング45は、絶縁性の材料を含むことが好ましい。ハウジング45は、少なくとも可動ピン47と接する部分は、絶縁性の材料を含んでいる。また、ハウジング45は、非磁性の材料を含むことが好ましい。さらに、ハウジング45は、インターポーザ20の熱膨張係数と同等の材料を含むことが好ましい。
【0029】
ハウジング45は、酸化アルミニウム(Al、アルミナとも呼ぶ。)、マイカ系マシナブルセラミック、窒化アルミニウム(AlN)、ジルコニア(ZrO)、マコール系マシナブルセラミック、ガラス、樹脂及びフィラー等を含んだ低熱膨張の複合材料を含んでもよいし、可動ピン47との絶縁が取れるのであれば、超伝導材料を含んでもよい。
【0030】
可動ピン47は、ハウジング45に保持されている。可動ピン47は、一端及び一端の反対側の他端を有する。可動ピン47は、Z軸方向に延び、一端は、下方に向き、他端は、上方を向いている。よって、可動ピン47の一端は、ハウジング45の一端面41から突出している。可動ピン47の一端は、例えば、インターポーザ20の端子24aに電気的に接する。可動ピン47の他端は、他端面42から突出し、ボード50の端子に電気的に接する。このように、ハウジング45は、可動ピン47の一端が突出した一端面41と、可動ピン47の他端が突出した他端面42と、を有する。図1では、ハウジング45の一端面41とインターポーザ20との間に空間が形成されているが、可動ピン47の一端が端子24aに接することができれば、空間は形成されなくてもよい。同様に、ハウジング45の他端面42とボード50との間に空間が形成されているが、可動ピン47の他端がボード50の端子に接することができれば、空間は形成されなくてもよい。
【0031】
可動ピン47の一端及び他端は、コイルバネ、板バネ等の弾性手段を挟んで導通状態で接続されている。可動ピン47は、超伝導材料を含んでもよいし、常伝導材料を含んでもよい。可動ピン47は、配線層16等と同じ超伝導材料を含んでもよいし、配線層16等と異なる超伝導材料を含んでもよい。また、可動ピン47は、インターポーザ配線層24と同じ常伝導材料を含んでもよいし、インターポーザ配線層24と異なる常伝導材料を含んでもよい。可動ピン47は、非磁性材料であることが好ましい。可動ピン47は、例えば、パラジウム合金、金合金、ベリリウム銅(BeCu)、リン青銅、金(メッキ仕上げ)、ニオブ(Nb)、ニオブチタン(Nb-Ti)、チタン(Ti)を含むことが好ましい。
【0032】
ソケット40は、位置決めピン48を有してもよい。位置決めピン48は、ソケット40の配置位置を決めるピンである。位置決めピン48は、ハウジング45に保持されている。位置決めピン48は、例えば、一端面41から突出した一端を有している。位置決めピン48は、インターポーザ20の反対面22の所定の位置に一端を接続させることにより、ソケット40の配置位置を決める。なお、インターポーザ20の反対面22に穴を形成し、位置決めピン48を穴に挿入することにより、ソケット40の配置位置を決めてもよい。これにより、ソケット40の位置ずれを抑制することができる。
【0033】
ボード50は、ソケット40の他端面42に対向して配置されている。ボード50は、コネクタ51と、ビアホール52と、ボード基板55と、端子とを含んでいる。ボード基板55は、例えば、板状であり、上面及び下面を有している。ボード基板55は、単層構造でも多層構造でも構わない。ボード基板55の下面は、ソケット40に対向している。ボード基板55の下面には端子が設けられている。ボード基板55の上面には外部への入出力となるコネクタ51が形成されている。ボード50のコネクタ51は、ボード50の端子と接続されている。可動ピン47の他端は、ボード50の端子に電気的に接している。なお、ボード50の下面に形成された複数の端子が相互に接続されてもよい。この場合には、インターポーザ20の実装面21に形成された端子から、可動ピン47の一端、可動ピン47の他端、ボード50の下面に形成された端子、ボード50の上面に形成された端子の順に経由して、ボード50のコネクタ51に接続する。なお、ボード50の下面に形成された端子とボード50の上面(コネクタ51側)に形成された端子は、電気的に接している。
【0034】
図3は、可動ピン47とビアホール52との接続部分を拡大した断面図である。図3に示すように、ボード基板55の内部には、ビアホール52が形成されている。また、ビアホール52の内壁は、めっきにより銅又は金のめっき層53が形成されている。めっき層53の厚みは、例えば、0.01~0.02mm(10~20um)である。本実施形態において、ビアホール52の穴径Rは、ビアホール自体の穴径からめっき層53の厚みを除いた部分を指す。図3に示すように、可動ピン47の先端部分がビアホール52の端子の外縁と接触し、ビアホール52のソケット40側の端子が可動ピン47の他端側の端子と電気的に接続している。ビアホール52の穴径Rは、可動ピン47の他端の先端部分の直径Lよりわずかに小さく、例えば、Φ0.1mm以下である。具体的には、ビアホール52の穴径Rは、可動ピン47の他端の先端部分の直径Lに対して、10~50%小さい。また、図3に示すように、ハウジング45の貫通穴は、可動ピン47の直径よりもわずかに大きく、可動ピン47の周りにわずかに隙間(ソケット40と可動ピン47の間)がある。
【0035】
外部からの入力及び外部への出力となるコネクタ51が形成されたボード50は、ソケット40及びインターポーザ20を介して、超伝導チップ10との間で、電源及び信号等の入出力を行う。
【0036】
次に、本実施形態の効果を説明する。本実施形態の超伝導デバイス1において、ボード基板55に形成されたビアホール52の穴径Rは、可動ピン47の他端の先端部分の直径Lよりわずかに小さいため、可動ピン47の他端がビアホール52の窪みにおさまっている。これにより、超伝導デバイス1を極低温へ冷却する際に生じるボード基板55とソケット40の熱膨張係数の違いに基づく体積変化に伴い可動ピン47が動いても、可動ピン47の他端がビアホール52の窪みにおさまった状態を保てるため、ビアホール52の端子への接続を維持することができる。よって、断線をより効果的に防ぐことができる。また、ビアホール52の穴径Rは、可動ピン47の他端の先端部分の直径Lよりわずかだけ小さいと、可動ピン47がビアホール52に落ち込まず、可動ピン47の先端部分とビアホール52の端子との電気的に良好な接続状態を保つことができる。また、ハウジング45の貫通穴は、可動ピン47の直径よりもわずかに大きく、可動ピン47の周りにわずかに隙間がある。これにより、ビアホール52の窪みにはまった可動ピン47が、熱収縮差にも対応して追従できることが可能である。
【0037】
また、位置決めピン48を設けることにより、ソケット40の配置位置を容易に決めることができる。また、位置決めピン48を反対面22の穴に挿入することにより、ソケット40の位置ずれを抑制することができる。
【0038】
次に、実施形態1の変形例を説明する。図4は、実施形態1のビアホールの変形例を示した断面図である。図4に示すように、ボード基板55は、多層構造となっている。本発明のビアホールは、可動ピン47の他端がビアホール52の窪みにおさまるような形状であれば、実施形態1で示したビアホールに限られない。実施形態1で説明したビアホールは、図4のビアホール52のように、ビアホールの内壁面に銅又は金のめっき層53が形成されていたが、ビアホール52aでは、ビアホール内部が銅又は金の金属によって充填されている。また、ビアホール52bでは、層間においてめっき層が水平方向に延設され、ボード基板55の上面と下面においてビアホールの位置が異なっている。また、ビアホール内部が金属により充填されている。なお、図4に示したビアホールの変形例は、本発明のビアホールの一例を示したものであり、本発明のビアホールはこれらに限られない。例えば、ボード基板55表面に窪み等があり凹んでいれば、内部が金属で充填されていても充填されていなくてもよい。
(実施形態2)
次に、実施形態2に係る超伝導デバイスを説明する。図5は、実施形態2に係る超伝導デバイスを例示した断面図である。図5に示すように、ボード基板55の上面(ソケット40に対向している面とは反対の面)にビアホール52と電気的に接続されたボード配線層54を備えている。
【0039】
ボード50は、前述の実施形態と同様に、ソケット40の他端面42に対向して配置されている。そして、ボード基板55の上面にビアホール52のめっき層53と電気的に接続されたボード配線層54を備えている。ボード配線層54は、コネクタ51と電気的に接続されている。ボード配線層54は、非磁性の材料を含むことが好ましく、例えば、銅や金である。この場合、インターポーザ20の実装面21に形成された端子から、可動ピン47aの一端、可動ピン47aの他端、ビアホール52のめっき層53、ボード配線層54を経由してコネクタ51に接続される。よって、コネクタ51は、ボード50、ソケット40及びインターポーザ20を介して、超伝導チップ10との間で、電源及び信号等の入出力を行う。
【0040】
次に、本実施形態の効果を説明する。本実施形態の超伝導デバイス2では、ボード基板55の上面にビアホール52と電気的に接続されたボード配線層54を備えている。この構成によると、ボード基板55の上面が空間となっているため、インピーダンスを整合しやすい。よって、ボード基板55の下面(ソケット40側)に配線する場合と比較して、インピーダンス不整合による伝送損失を抑制することができる。また、ボード基板55の上面にボード配線層54を備えることにより、後述する試料台30とボード50の下面との接触面積を広くとることができる。
【0041】
(変形例)
次に、実施形態2に係る超伝導デバイスの変形例を説明する。実施形態2の変形例に係る超伝導デバイス2aでは、ボード基板55は、複数の絶縁層と複数の導体層を含む多層構造を有しており、ボード基板55の内部に配線層が形成されている。詳細には、ボード配線層54は、ボード基板55における可動ピン47と対向した面を除いた複数の導体層のうち、少なくともいずれかの一部に形成される。例えば、図6に示すように、ボード基板55の内部にボード配線層54を備えている。ボード配線層54は、多層構造のボード基板55内の層間に配置され、ビアホール52が延在する方向(Z軸方向)と直交する方向(Y軸方向)に延設されている。ボード配線層54の両端は、ボード50のコネクタ51にそれぞれ接続されている。この場合、インターポーザ20の実装面21に形成された端子から、可動ピン47の一端、可動ピン47の他端、ボード50の下面に形成された端子、ボード配線層54の順に経由して、ボード50のコネクタ51に接続する。
【0042】
超伝導デバイス2aでは、ボード基板55の内部にボード配線層54を備えている。これにより、ソケット40の設置状態によらず、ボード基板55のみで配線設計を行うことが可能となり、より容易にインピーダンスの整合を取ることが可能となる。
(実施形態3)
次に、実施形態3に係る超伝導デバイスを説明する。図7は、実施形態3に係る超伝導デバイスの変形例の断面図である。図7に示すように、実施形態3に係るインターポーザ20の少なくとも一部及びボード50の少なくとも一部は、それぞれ冷却機能を有する試料台30に接している。また、超伝導デバイス3において、ハウジング45の側面43は、冷却機能を有する試料台30との間に空間を介して配置されている。
【0043】
試料台30は、冷却機能を有する。例えば、試料台30は、冷凍機によって、10[mK]程度の極低温に冷却可能なコールドステージである。試料台30は、例えば、Cu、Cu合金、Al等の金属を含むことが好ましい。Alを含む試料台30の場合には、アルマイト処理による絶縁化を施してもよい。本実施形態の超伝導デバイス2は、例えば、超伝導チップ10の超伝導材料として、Nbを含む場合には9.2[K]以下、Alを含む場合には、1.2[K]以下の極低温における超伝導現象を用いる。このため、このような極低温に冷却可能な試料台30を用いる。
【0044】
試料台30には、凹部31が形成されている。超伝導チップ10は、上方からインターポーザ20を透過させて見ると、凹部31よりも小さい。一方、インターポーザ20は、上方から見ると、凹部31よりも大きい。超伝導チップ10は、冷却機能を有する試料台30に形成された凹部31の内部に配置されており、超伝導チップ10の第2面12は、試料台30に接触していない。また、インターポーザ20の超伝導チップ10が実装された実装面21の一部は、試料台30の上面に接しており、インターポーザ20の反対面22は試料台30に接していない。
【0045】
インターポーザ20の実装面21の試料台30に接した部分は、インターポーザ配線層23が形成されていなくてもよい。また、実装面21の試料台30に接した部分に、試料台30との電気的導通を防ぐために、絶縁膜が形成されていれば、インターポーザ配線層23が形成されていてもよい。超伝導チップ周囲の温度変化を低減する断熱性を向上させるため、超伝導チップ10の周囲を真空状態または減圧雰囲気にすることが好ましい。
【0046】
次に、本実施形態の効果を説明する。本実施形態の超伝導デバイス2では、インターポーザ20の少なくとも一部及びボード50の少なくとも一部を試料台30に接触させている。これにより、インターポーザ20及びボード50を熱流路として用いることで、超伝導チップ10における量子回路17を極低温に冷却し、超伝導現象を利用することができる。
【0047】
また、インターポーザ20の反対面22は試料台30に接していないので、インターポーザ20の反対面22を、超伝導チップ10から情報を取り出すための端子24aに最大限用いることができる。よって、情報取り出し端子数を増加させることができる。
【0048】
また、超伝導チップ10は、冷却機能を有する試料台30の内部に配置されており、試料台30に接触していない。すなわち、超伝導チップ10の第2面12は、試料台30の凹部31の内面との間に空間を介して配置されている。このような構成とすることにより、極低温への温度変化によって生じる超伝導チップ10及び試料台30の収縮差による応力及びひずみを抑制することができる。これ以外の構成及び効果は、実施形態1及び2の記載に含まれている。
(変形例1)
次に、実施形態3に係る超伝導デバイスの変形例を説明する。図8は、実施形態3の変形例に係る超伝導デバイスの断面図である。図8に示すように、超伝導デバイス3aにおいて、ボード50の下面の一部は、冷却機能を有する試料台30に接している。また、超伝導デバイス3aにおいて、ハウジング45の側面43は、冷却機能を有する試料台30に接している。試料台30は、例えば、板状の部分30aを含んでいる。板状の部分30aは、ハウジング45の側面43を挟んでいる。なお、超伝導デバイス2において、ハウジング45の側面43に限らず、ハウジング45の一端面41の一部が試料台30に接してもよいし、ハウジング45の他端面42の一部が試料台30に接してもよい。
【0049】
本実施形態の超伝導デバイス3aでは、ボード50の下面の少なくとも一部及びハウジング45の側面43を試料台30に接触させている。これにより、ボード50を熱流路として用いることで、超伝導チップ10における量子回路17を極低温に冷却し、超伝導現象を利用することができる。
(変形例2)
次に、実施形態3に係る超伝導デバイスの他の変形例を説明する。実施形態3の他の変形例に係る超伝導デバイス3bは、超伝導チップ10の少なくとも一部、インターポーザ20の少なくとも一部、ソケット40の少なくともの一部、及び、ボード50の少なくとも一部は、それぞれ冷却機能を有する試料台30に接している。図9は、実施形態3の他の変形例に係る超伝導デバイスの断面図である。
【0050】
図9に示すように、超伝導デバイス3bにおいて、超伝導チップ10の少なくとも一部、インターポーザ20の少なくとも一部、ソケット40の少なくともの一部、及び、ボード50の少なくとも一部は、試料台30に接している。具体的には、例えば、超伝導チップ10、インターポーザ20及びソケット40は、試料台30の凹部31の内部に配置されている。そして、超伝導チップ10の第2面12、インターポーザ20の側面、及び、ソケット40の側面43は、試料台30の凹部31の内面に接しており、ボード50の下面は、試料台30の板状の部分30aに接している。なお、さらに、インターポーザ20の実装面21及び反対面22の一部、ソケット40の一端面41及び他端面42の一部のうち、少なくともいずれかを接するようにしてもよい。
【0051】
超伝導チップ10は、上方からインターポーザ20を透過させて見ると、凹部31よりも小さい。一方、インターポーザ20は、上方から見ると、凹部31よりも大きい。超伝導チップ10は、冷却機能を有する試料台30に形成された凹部31の内部に配置されている。一方、インターポーザ20の超伝導チップ10が実装された実装面21の一部は、試料台30の上面に接している。
【0052】
超伝導デバイス3bでは、超伝導チップ10、インターポーザ20、ソケット40及び、ボード50の各一部が、試料台30に接しているので、超伝導デバイス3の冷却性能を向上させることができる。
【0053】
また、超伝導チップ10は、冷却機能を有する試料台30の内部に配置されている。また、超伝導チップ10の第2面12は、試料台30の凹部31の内面に接している。なお、第2面12の少なくとも一部が、凹部31の内面に接してもよい。このような構成とすることにより、超伝導チップ10を第2面12側から試料台30の熱伝導によって冷却することができ、冷却性能を向上させることができる。よって、超伝導チップ10における量子回路17を安定動作させることができる。
【0054】
以上、実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、複数の超伝導チップ10がインターポーザ20に接続されたもの、複数のインターポーザ20がソケット40に接続されたものも、本実施形態の技術的思想の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0055】
1、2、2a、3、3a、3b 超伝導デバイス
10 超伝導チップ
11 第1面
12 第2面
15 チップ基板
16 配線層
17 量子回路
17a ジョセフソン接合
17b ループ回路
17c 共振器
20 インターポーザ
21 実装面
22 反対面
23 インターポーザ配線層
23a 磁場印加回路
23b 読み出し部
24 インターポーザ配線層
24a 端子
25 インターポーザ基板
26 TV
30 試料台
30a 板状の部分
31 凹部
40 ソケット
41 一端面
42 他端面
43 側面
45 ハウジング
47 可動ピン
48 位置決めピン
50 ボード
51 コネクタ
52 ビアホール
53 めっき層
54 ボード配線層
55 ボード基板
BP バンプ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9