(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022176443
(43)【公開日】2022-11-30
(54)【発明の名称】ロック装置、収納ボックス、及び冊子体
(51)【国際特許分類】
E05B 47/00 20060101AFI20221122BHJP
E05B 65/00 20060101ALI20221122BHJP
B42D 3/10 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
E05B47/00 G
E05B65/00 D
E05B65/00 Z
B42D3/10
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021082883
(22)【出願日】2021-05-17
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】321002248
【氏名又は名称】株式会社HNS
(74)【代理人】
【識別番号】100085316
【弁理士】
【氏名又は名称】福島 三雄
(74)【代理人】
【識別番号】100171572
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100213425
【弁理士】
【氏名又は名称】福島 正憲
(74)【代理人】
【識別番号】100221707
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 洋介
(74)【代理人】
【識別番号】100221718
【弁理士】
【氏名又は名称】藤原 誠悟
(72)【発明者】
【氏名】有本 万里子
(72)【発明者】
【氏名】有本 遥香
(72)【発明者】
【氏名】山下 哲二
(57)【要約】
【課題】 小型且つ低価格のロック装置を提供する。
【解決手段】 上記課題を解決する手段として本発明に係るロック装置10は、電圧の印加を受けて収縮する形状記憶合金ワイヤー14の収縮動作によって、被係合部25に係合するロック位置と、被係合部25との係合が解除されるアンロック位置との間を移動可能な係合部15と、形状記憶合金ワイヤー14の収縮動作を案内するガイド部材16と、を備え、ガイド部材16は、収縮動作の前後における形状記憶合金ワイヤー14の周面との間に隙間を介して、形状記憶合金ワイヤー14を囲ってなることを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電圧の印加を受けて収縮する形状記憶合金ワイヤーの収縮動作によって、被係合部に係合するロック位置と、前記被係合部との係合が解除されるアンロック位置との間を移動可能な係合部と、
前記形状記憶合金ワイヤーの収縮動作を案内するガイド部材と、を備え、
前記ガイド部材は、収縮動作の前後における前記形状記憶合金ワイヤーの周面との間に隙間を介して、前記形状記憶合金ワイヤーを囲ってなる
ことを特徴とするロック装置。
【請求項2】
前記ガイド部材は、前記形状記憶合金ワイヤーの周面との間に、前記形状記憶合金ワイヤーを収縮自在とする隙間を形成して、前記形状記憶合金ワイヤーを囲ってなる
ことを特徴とする請求項1に記載のロック装置。
【請求項3】
前記形状記憶合金ワイヤーは、略中間部において折り返され、その折り返し部分を前記収縮動作により移動する自由端部としてなり、
前記ガイド部材は、前記自由端部と前記形状記憶合金ワイヤーの一端との中間位置に配置されてなる一端側ガイド部材と、前記自由端部と前記形状記憶合金ワイヤーの他端との中間位置に配置されてなる他端側ガイド部材とにより構成されてなり、
前記一端側ガイド部材及び前記他端側ガイド部材の間において、前記自由端部は前記ガイド部材から露出されてなる
ことを特徴とする請求項1若しくは2に記載のロック装置。
【請求項4】
さらに、所定のトリガーを検出して、前記形状記憶合金ワイヤーに対して電圧を印加する電圧印加手段を備える
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載のロック装置。
【請求項5】
前記電圧の印加は、所定のトリガーの検出から所定時間継続して行われ、
前記電圧の印加が継続されている間において、前記係合部は前記アンロック位置を維持する
ことを特徴とする請求項4に記載のロック装置。
【請求項6】
請求項4若しくは5に記載のロック装置を備える収納ボックスであって、
一面が開口されてなり、前記開口の縁部に前記被係合部が配設されてなる外装体と、
前記開口から引出し可能に前記外装体に挿入されてなり、所定の物を収納する収納空間が形成されてなると共に、前記一面側の面に前記ロック装置が配設されてなるボックス本体と、を備え、
前記トリガーの検出により、前記形状記憶合金ワイヤーに対して電圧が印加されることで、前記係合部が、前記ボックス本体を前記外装体から引出すために十分な時間継続して前記アンロック位置を維持する
ことを特徴とする収納ボックス。
【請求項7】
請求項4若しくは5に記載のロック装置を備えるノート、メモ帳、手帳、若しくは書籍などの冊子体であって、
前記トリガーの検出により、前記形状記憶合金ワイヤーに対して電圧が印加されることで、前記係合部が、前記冊子体を開くために十分な時間継続して前記アンロック位置を維持する
ことを特徴とする冊子体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、形状記憶合金ワイヤーを用いたロック装置、並びにこれを備える収納ボックス及び冊子体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気式ロック装置のアクチュエータとしては、例えば一般にモーターが用いられていた。モーターは、例えば電流が流れることで、電気を回転力に変換する。このような電気式ロック装置は、装置の筐体内にモーターを収容して、モーターにより生み出される回転力によりロック部材を駆動させていた。
【0003】
しかしながら、このようなモーターを用いた電気式ロック装置においては、装置の筐体内にモーターを収容することから、筐体をモーターよりも小さくすることができず、ロック装置自体の小型化が困難であるという問題があった。また、電気式ロック装置を小型化するために小型のモーターを採用する場合には、モーターに掛かるコストが上昇し、日用品等に使用する電気式ロック装置として製品化することに困難を伴っていた。
【0004】
また、形状記憶合金アクチュエータを用いたロック装置としては、特許文献1に記載のロック装置が知られている。特許文献1では、ロック装置を駆動させるアクチュエータとして、形状記憶合金アクチュエータを使用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に係るロック装置においては、形状記憶合金アクチュエータが、その伸縮動作が行われる部分において直角に折り曲げられてなり、さらに、弛みを取り除いて筐体に対して密着して配置されてなる。
このため、特許文献1に係るロック装置は、形状記憶合金アクチュエータが短くなる際に直角な折曲部において摩擦が生じ、十分に形状記憶合金アクチュエータが短くなることができない。また、形状記憶合金アクチュエータは、短くなるように機能する温度である変態点まで到達した際にはジュール熱により高温となることから、筐体や筐体の近傍に位置する部材に対して、熱によるダメージを与える。
【0007】
本発明は、以上のような背景技術に介在する問題を解決した小型且つ安価のロック装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、上記課題を解決する手段として本発明に係るロック装置は、電圧の印加を受けて収縮する形状記憶合金ワイヤーの収縮動作によって、被係合部に係合するロック位置と、前記被係合部との係合が解除されるアンロック位置との間を移動可能な係合部と、前記形状記憶合金ワイヤーの収縮動作を案内するガイド部材と、を備え、前記ガイド部材は、収縮動作の前後における前記形状記憶合金ワイヤーの周面との間に隙間を介して、前記形状記憶合金ワイヤーを囲ってなることを特徴とする。
【0009】
また、前記ガイド部材は、前記形状記憶合金ワイヤーの周面との間に、前記形状記憶合金ワイヤーを収縮自在とする隙間を形成して、前記形状記憶合金ワイヤーを囲ってなることとしてもよい。
【0010】
また、前記形状記憶合金ワイヤーは、略中間部において折り返され、その折り返し部分を前記収縮動作により移動する自由端部としてなり、前記ガイド部材は、前記自由端部と前記形状記憶合金ワイヤーの一端との中間位置に配置されてなる一端側ガイド部材と、前記自由端部と前記形状記憶合金ワイヤーの他端との中間位置に配置されてなる他端側ガイド部材とにより構成されてなり、前記一端側ガイド部材及び前記他端側ガイド部材の間において、前記自由端部は前記ガイド部材から露出されてなることとしてもよい。
【0011】
またさらに、所定のトリガーを検出して、前記形状記憶合金ワイヤーに対して電圧を印加する電圧印加手段を備えることとしてもよい。
【0012】
また、前記電圧の印加は、所定のトリガーの検出から所定時間継続して行われ、前記電圧の印加が継続されている間において、前記係合部は前記アンロック位置を維持することとしてもよい。
【0013】
また、本発明に係る収納ボックスは、前記ロック装置を備え、一面が開口されてなり、前記開口の縁部に前記被係合部が配設されてなる外装体と、前記開口から引出し可能に前記外装体に挿入されてなり、所定の物を収納する収納空間が形成されてなると共に、前記一面側の面に前記ロック装置が配設されてなるボックス本体と、を備え、前記トリガーの検出により、前記形状記憶合金ワイヤーに対して電圧が印加されることで、前記係合部が、前記ボックス本体を前記外装体から引出すために十分な時間継続して前記アンロック位置を維持することを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る冊子体は、前記ロック装置を備え、前記トリガーの検出により、前記形状記憶合金ワイヤーに対して電圧が印加されることで、前記係合部が、前記冊子体を開くために十分な時間継続して前記アンロック位置を維持することを特徴とする。
【0015】
ここで、冊子体とは、ノート、メモ帳、手帳、若しくは書籍などの、複数の紙又はこれに類するシートの積層体であって一枚ずつめくることができるものをいう。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、形状記憶合金ワイヤーで構成するアクチュエータを用いることで、小型且つ低価格のロック装置を提供することができる。
【0017】
また、本発明によれば、収縮動作の前後における形状記憶合金ワイヤーの周面との間に隙間を介して形状記憶合金ワイヤーを囲うガイド部材を備えることから、収縮に際して余分な摩擦をガイド部材との間に生じさせない。これによって、形状記憶合金ワイヤーの収縮動作が摩擦によって阻害されることを抑制することができる。これにより、十分に形状記憶合金ワイヤーを収縮させることができ、係合部を移動させる十分な駆動力を得ることができる。
【0018】
またさらに、本発明によれば、ガイド部材が形状記憶合金ワイヤーを囲うことから、ロック装置を構成する他の部材と形状記憶合金ワイヤーとが近接若しくは接触することを防止することができる。これにより、電圧が印加されて高温になった形状記憶合金ワイヤーの熱により、ロック装置を構成する他の部材に損傷が生じることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施形態に係るロック装置10の機能・構成の概略を示すハードウェア構成図である。
【
図2】実施形態に係るロック装置10の具体的な例を示す断面図である。(a)は、係合部15がロック位置に位置する状態を、(b)は、係合部15がアンロック位置に位置する状態をそれぞれ示す。
【
図3】実施形態に係るロック装置10の形状記憶合金ワイヤー14とガイド部材16との配置及び構成の例を示す斜視図である。
【
図4】実施形態に係るロック装置10の形状記憶合金ワイヤー14とガイド部材16との配置及び構成の追加的な例を示す斜視図である。
【
図5】実施形態に係るロック装置10を備える収納ボックスを示す斜視図である。(a)がボックス本体40を、(b)が外装体30をそれぞれ示す。また、(a)に示すボックス本体40は、(b)に示す外装体30の開口31に対して図示した角度のまま挿入される。
【
図6】実施形態に係るロック装置10を備える収納ボックスのボックス本体40を示す図である。(a)は正面図である。(b)は右側面図である。(c)は(a)の正面図において、左右方向中心において切断した縦断面図である。また、ロック装置10の内部構造は省略している。なお、ボックス本体40の左側面は、(b)の右側面図から係合部41を省略した形状であって、右側面図と対称に表れる。
【
図7】実施形態に係るロック装置10を備える冊子体50を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る実施の形態を、図を参照しながら詳しく説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。また、以下で説明する内容は、いずれも本発明に係る実施の形態の一例を示したものであり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0021】
(一の実施形態に係る構成)
以下、
図1及び
図2を参照しながら、ロック装置10に係る構成を説明し、この構成により生ずる作用及び効果を説明する。
【0022】
ロック装置10は、係合部15、形状記憶合金ワイヤー14、及びガイド部材16を含む。ロック装置10は、係合部15が、形状記憶合金ワイヤー14の収縮動作によって、被係合部25に係合するロック位置と、被係合部25との係合が解除されるアンロック位置との間を移動することで、ロック及びアンロック動作を可能とするものである。
なお、形状記憶合金ワイヤー14とは、形状記憶合金により構成されてなるワイヤーをいう。
【0023】
ロック装置10は、電圧の印加を受けて収縮する形状記憶合金ワイヤー14の収縮動作によって、被係合部25に係合するロック位置と、被係合部25との係合が解除されるアンロック位置との間を移動可能な係合部15と、形状記憶合金ワイヤー14の収縮動作を案内するガイド部材16と、を備え、ガイド部材16は、収縮動作の前後における形状記憶合金ワイヤー14の周面との間に隙間を介して、形状記憶合金ワイヤー14を囲ってなる。
さらに、
図1に示すように、本実施形態においては一例として、ロック装置10は制御部11、検出部12、及び電源13が筐体18に収容されてなる。なお、筐体18は、中空の箱体に構成されてなり、係合部15が出入りする位置において、係合部15の移動を可能とする開口部181が形成されてなる。
【0024】
一般に、形状記憶合金は、変態点以上の温度になると変形を受けても元の形状に戻る性質を持つ。この性質により、形状記憶合金ワイヤー14は、変態点以上の温度となったときに、その長さが収縮する。このため、形状記憶合金ワイヤー14に対して電圧を印加した場合には、形状記憶合金ワイヤー14自身が有する電気抵抗により、形状記憶合金ワイヤー14にジュール熱が生じて変態点以上の温度となる。この場合、形状記憶合金ワイヤー14は電圧の印加を受けて収縮する。
形状記憶合金ワイヤー14は、長さを有する紐状のワイヤーに構成される。形状記憶合金ワイヤー14は、その素材に応じて、電圧の印加を受けていない平常時と電圧の印加を受けて収縮する収縮時との間の長さの収縮率が決定される。例えば、形状記憶合金ワイヤー14がチタン―ニッケル(Ti-Ni)系の合金により構成されてなる場合には、収縮率は長さの4%となる。
【0025】
形状記憶合金ワイヤー14は、電圧の印加を受けて収縮するように構成されてなる。形状記憶合金ワイヤー14は、Ti-Ni系合金により構成されてなる。形状記憶合金ワイヤー14は、電圧の印加を受けた際に、平常時の長さから4%収縮するように構成されてなる。形状記憶合金ワイヤー14は、長さが100mmに構成されてなる。形状記憶合金ワイヤー14は、電圧の印加を受けて4mm以上収縮するように構成されてなる。形状記憶合金ワイヤー14は、太さが0.05mm~0.15mmに構成されてなる。
形状記憶合金ワイヤー14は、電源13に接続されてなる。形状記憶合金ワイヤー14は、一端14aが正電極13aに接続されてなることで、正電極13aを介して電源13に接続されてなる。また、形状記憶合金ワイヤー14は、他端14bが負電極13bに接続されてなることで、負電極13bを介して電源13に接続されてなる。また、形状記憶合金ワイヤー14は、一端14aが正電極13aに他端14bが負電極13bにそれぞれ接続されてなることで、電源13を有する閉回路を構成してなる。また、形状記憶合金ワイヤー14は、一端14a及び他端14bがそれぞれ筐体18と相対的に固定された固定端に構成されてなる。
形状記憶合金ワイヤー14は、後述するガイド部材16によりその収縮動作が案内される。形状記憶合金ワイヤー14は、ガイド部材16によりワイヤー外周の周囲が囲まれてなる。形状記憶合金ワイヤー14は、収縮動作の前後においてガイド部材16との間に隙間が形成される。形状記憶合金ワイヤー14は、形状記憶合金ワイヤー14の収縮動作が自在となるように、ガイド部材16との間に隙間が形成されている。
形状記憶合金ワイヤー14は、中間部において折り返され、その折り返し部分を収縮動作により移動する自由端部17として構成されてなる。形状記憶合金ワイヤー14は、中間部を自由端部17として、略U字状に折り返されてなる。形状記憶合金ワイヤー14は、自由端部17と一端14aとの中間位置が一端側ガイド部材16aにより囲まれてなる。形状記憶合金ワイヤー14は、自由端部17と他端14bとの中間位置が他端側ガイド部材16bにより囲まれてなる。形状記憶合金ワイヤー14は、一端側ガイド部材16aの自由端部17に近接する端部と、他端側ガイド部材16bの自由端部17に近接する端部との間が、これらのガイド部材16から露出されてなる。また、形状記憶合金ワイヤー14の自由端部17は、係合部15と接続されてなる。形状記憶合金ワイヤー14の自由端部17は、係合部15の基端部に形成されてなる挿通孔151に挿通されることで、係合部15と接続されてなる。
形状記憶合金ワイヤー14は、電圧の印加を受けて収縮する時点において収縮する部分(本実施形態においては、一端14a及び他端14bと自由端部17との中間部分)が折れ曲がらずに構成されてなる。また、このような当該伸縮する部分は、わずかに弛ませて構成することが好ましい。
このような形状記憶合金ワイヤー14は、
図3若しくは
図4のいずれかに示すように、種々の構成をとることができる。このような具体的な構成例については、後述することとする。
【0026】
係合部15は、被係合部25に係合するロック位置と、被係合部25との係合が解除されるアンロック位置との間を移動することができる。係合部15は、形状記憶合金ワイヤー14の自由端部17に接続されてなることにより、形状記憶合金ワイヤー14の収縮動作によってロック位置とアンロック位置との間を移動することができる。一例として、
図2(a)は係合部15がロック位置に位置する状態を、
図2(b)は、係合部15がアンロック位置に位置する状態を表している。また、係合部15の基端部には、U字状の挿通孔151が形成されてなる。係合部15の挿通孔151には、形状記憶合金ワイヤー14の自由端部17が挿通されてなる。係合部15の形状記憶合金ワイヤー14との接続部分(挿通孔151)は、形状記憶合金ワイヤー14の変態点の温度に対する耐熱性を有することが好ましい。このような構成は、形状記憶合金ワイヤー14の変態点に応じて、種々の材質から係合部15を構成する素材を適宜選択することにより実現することができる。
係合部15は、直方体形状のブロック体に構成されてなる。係合部15は、アンロック位置において先端が筐体18の開口部181よりも内側に収容される。また係合部15は、ロック位置において、筐体18の開口部181から先端が突出する。したがって、係合部15は、筐体18の開口部181を出入り可能に配設されてなる。係合部15は、ロック位置において、被係合部25と係合することでロックをするように構成されてなる。このようなロックには、ロック位置において係合部15が開口部181から2mm以上、好ましくは4mm以上突出することが好ましい。
【0027】
被係合部25は、ロック装置10とは別体に構成されてなる。被係合部25は、係合部15と係合可能に構成されてなる。被係合部25は、ブロック体に構成されてなる係合部15の先端部を受け入れることで、係合部15と係合する。すなわち、係合部15のロック位置において、係合部15の先端が被係合部25と係合する。
被係合部25は、係合部15が挿入される受け穴251が形成されてなる。
【0028】
ガイド部材16は、形状記憶合金ワイヤー14の収縮動作を案内する。ガイド部材16は、収縮動作の前後における形状記憶合金ワイヤー14の周面との間に隙間を介して、形状記憶合金ワイヤー14を囲ってなる。ガイド部材16は、形状記憶合金ワイヤー14の周面との間に、形状記憶合金ワイヤー14を収縮自在とする隙間を形成してなる。
ガイド部材16は、形状記憶合金ワイヤー14の自由端部17と一端14aとの中間位置に配置されてなる一端側ガイド部材16aと、形状記憶合金ワイヤー14の自由端部17と他端14bとの中間位置に配置されてなる他端側ガイド部材16bとにより構成されてなる。一端側ガイド部材16a及び他端側ガイド部材16bは、それぞれ筐体18の壁面に対して固定的に設置されてなる。一端側ガイド部材16a及び他端側ガイド部材16bは、それぞれ平行に固設されてなる。一端側ガイド部材16aは、形状記憶合金ワイヤー14の自由端部17から一端14aまでの中間部分を隙間を介して囲ってなり、他端側ガイド部材16bは、形状記憶合金ワイヤー14の自由端部17から他端14bまでの中間部分を隙間を介して囲ってなる。一端側ガイド部材16a及び他端側ガイド部材16bは、それぞれ、形状記憶合金ワイヤー14の伸縮によって自由端部17が一端14a及び他端14bの方向に向かって近接する移動を案内する。一端側ガイド部材16a及び他端側ガイド部材16bは、形状記憶合金ワイヤー14の自由端部17が一端14a及び他端14bに近接する方向に向かって直線状に移動するように案内する。
ガイド部材16は、形状記憶合金ワイヤー14が収縮して係合部15が筐体18の内側に移動する動作を妨げないように構成されてなる。ガイド部材16の係合部15に近接する側の端は、形状記憶合金ワイヤー14が最大量収縮した時点における位置よりも形状記憶合金ワイヤー14の固定端側に配置されてなる。ガイド部材16は、形状記憶合金ワイヤー14の収縮方向の長さから形状記憶合金ワイヤー14の収縮量を減じた長さよりも短く構成されてなる。
一端側ガイド部材16aは、形状記憶合金ワイヤー14の一端14a側の端から自由端部17側の端まで連続したチューブ状に構成されてなる。一端側ガイド部材16aのチューブの軸心には、一端14a側の端から自由端部17側の端まで連通する一端側ワイヤー挿入孔161aが形成されてなる。一端側ワイヤー挿入孔161aは、形状記憶合金ワイヤー14の一端14aから自由端部17までの中間において、形状記憶合金ワイヤー14との間に隙間を介して、形状記憶合金ワイヤー14を囲ってなる。同様に、他端側ガイド部材16bは、形状記憶合金ワイヤー14の他端14b側の端から自由端部17側の端まで連続したチューブ状に構成されてなる。他端側ガイド部材16bのチューブの軸心には、他端14b側の端から自由端部17側の端まで連通する他端側ワイヤー挿入孔161bが形成されてなる。他端側ワイヤー挿入孔161bは、形状記憶合金ワイヤー14の他端14bから自由端部17までの中間において、形状記憶合金ワイヤー14との間に隙間を介して、形状記憶合金ワイヤー14を囲ってなる。また、一端側ガイド部材16aの自由端部17側の端及び他端側ガイド部材16bの自由端部17側の端は、形状記憶合金ワイヤー14の収縮時における係合部15の基端よりも、それぞれ一端14a側若しくは他端14b側に位置する。
また、一端側ガイド部材16a及び他端側ガイド部材16bはそれぞれ、略40mmの長さに構成されてなる。一端側ワイヤー挿入孔161a及び他端側ワイヤー挿入孔161bはそれぞれ、孔の直径が形状記憶合金ワイヤー14の直径よりも大きい。具体的には、一端側ワイヤー挿入孔161a及び他端側ワイヤー挿入孔161bのそれぞれの直径は、形状記憶合金ワイヤー14の直径の1.1倍以上であり、1.3倍以上であることが好ましい。
また、ガイド部材16は、形状記憶合金ワイヤー14の変態点以上の耐熱性を有する素材により構成されることが好ましい。ガイド部材16は、形状記憶合金ワイヤー14の変態点以上の耐熱性を有する樹脂により構成されることが好ましい。
【0029】
制御部11は、電源13及び検出部12の制御を行う。制御部11は、例えばコード等により電源13及び検出部12と接続されてなる。制御部11は、電源13が所定の時間形状記憶合金ワイヤー14に対して電圧の印加を行うように電源13を制御する。また、制御部11は、検出部12が所定のトリガーを検出することにより、電源13に対して電圧の印加指示を行う。
【0030】
検出部12は、指紋を認証する指紋認証部に構成されてなる。検出部12は、指紋の認証により、ロック装置10をアンロックしてよいか否かを判断する。検出部12は、例えばコード等により制御部11と接続されてなる。検出部12は、指紋認証の結果を制御部11に対して出力する。
【0031】
電源13は、例えば制御部11及び検出部12と協働して電圧印加手段を構成する。電源13は、正電極13a及び負電極13bを含む。電源13は、例えばコード等により制御部11と接続されてなる。電源13は、正電極13aが形状記憶合金ワイヤー14の一端14aに、負電極13bが形状記憶合金ワイヤー14の他端14bにそれぞれ接続されてなる。また、電源13と形状記憶合金ワイヤー14の一端14a及び他端14bとは、それぞれ筐体18の内部において固定的に設置されてなる。また、電源13は、形状記憶合金ワイヤー14が継続して収縮状態を維持する必要がある場合には、継続的に電圧の印加を行うことができるように構成されてなる。この場合、継続的に電圧の印加を受ける形状記憶合金ワイヤー14は、電圧印加が継続している間ジュール熱の発生が継続し、収縮状態を維持することで係合部15のアンロック位置を維持する。
また、電源13はおおよそ3.6ボルトの電圧を形状記憶合金ワイヤー14に印加するように構成されてなる。
【0032】
また、ここで述べた制御部11、検出部12及び電源13の一体的な動作として、以下の動作を実現する。
検出部12が、ロック装置10をアンロックするトリガーである指紋認証を行う。検出部12が、その指紋認証の結果を制御部11に対して送信する。なおこのような送信の態様としては、例えばコードを用いた信号の送信を行うことができる。
制御部11が、アンロックのためのトリガーの発生を認識して、電源13に対して電圧の印加指示を行う。ここで、制御部11は、ロック装置10の使用態様に合わせてアンロック状態を維持する適切な時間継続して、電源13に対して電圧の印加を行うように指示する。具体的には、ロック装置10が取り付けられる箱、棚、書類ケースなどの取付対象物を開くために十分な時間継続して、電源13に対して電圧の印加をさせることができる。また、このような電圧の印加時間は、取付対象物に対して任意に決定することができるが、概ね10秒程度が好ましい。
電源13が、制御部11から電圧の印加指示を受けて、形状記憶合金ワイヤー14に対して所定時間継続して電圧の印加を行う。
なお、以上の一体的な動作により、形状記憶合金ワイヤー14は、トリガーの検出から所定時間継続する電圧の印加を受けることとなる。これにより、形状記憶合金ワイヤー14がジュール熱により変態点以上の温度となって収縮し、所定時間係合部15のアンロック位置を維持することとなる。
【0033】
(一の実施形態に係る作用効果)
以下、前述した一の実施形態に係る構成から生ずる作用及び効果について説明する。
【0034】
ロック装置10は、小型モーターを具備するものではなく、モーターの代わりに形状記憶合金ワイヤー14を駆動力として係合部15をロック位置とアンロック位置との間で移動させるものである。このため、ロック装置10を小型に構成する場合においても、小型のモーターを採用することによる部品コストの上昇を回避することができる。またさらに、形状記憶合金ワイヤー14を駆動力とした場合には、ロック装置10を小型とする場合には形状記憶合金ワイヤー14の使用量が減少し、より低コストでロック装置10を製造することが可能となる。これによって、小型且つ低コストのロック装置10を提供することができる。
【0035】
また、ロック装置10は小型かつ低コストで提供することができることから、オフィス等において、個人情報の管理を簡易的に行うために好適に利用することができる。ロック装置10を用いた収納容器、収納ボックス、書類ボックス、冊子体、収納棚などに個人情報やプライバシー情報が記載若しくは記録された所定物を収納し、本ロック装置10によりロックした場合には、小型且つ低コストで個人情報の保護及び管理、又はプライバシー権の侵害の防止が可能となる。
【0036】
また、ロック装置10は、収縮動作の前後における形状記憶合金ワイヤー14の周面との間に隙間を介して形状記憶合金ワイヤー14を囲うガイド部材16を備えることから、収縮に際して余分な摩擦をガイド部材16と形状記憶合金ワイヤー14との間に生じない。これにより、ロック装置10は、形状記憶合金ワイヤー14の収縮動作が摩擦によって阻害されることを抑制することができる。これによって、ロック装置10は、形状記憶合金ワイヤー14の収縮を最大量実現し、係合部15がロック位置とアンロック位置との間を十分に移動する駆動力を得ることができる。
【0037】
また、ロック装置10は、ガイド部材16が形状記憶合金ワイヤー14を隙間を介して囲うことから、ロック装置10を構成する他の部材と形状記憶合金ワイヤー14とが近接若しくは接触することを防止することができる。これにより、電圧が印加されて高温になった形状記憶合金ワイヤー14の熱により、ロック装置10を構成する他の部材に損傷が生じることを抑制することができる。
また、ロック装置10は、ガイド部材16が形状記憶合金ワイヤー14を隙間を介して囲うことから、形状記憶合金ワイヤー14から発せられる熱の影響を低減することができ、筐体18内部において部品の配置に係る設計の自由度を拡大させることができる。すなわち、例えばロック装置10によれば、ガイド部材16に隙間を介して囲われた形状記憶合金ワイヤー14の近傍に制御部11等の精密な部材を配設することが可能となる。
【0038】
また、形状記憶合金ワイヤー14は、電圧の印加を受けて収縮する時点において伸縮する部分(すなわち、略U字状に曲がった自由端部17を除く部分)が折れ曲がらずに構成されてなる。これにより、固定された固定端と自由端部17とが近接するように形状記憶合金ワイヤー14が収縮する際に、折れ曲がりにより収縮が阻害されることを抑制し、十分な収縮量を得ることができる。
すなわち、仮に角状に折れ曲がる部分が存在する場合には、固定端から折れ曲がり部分までの形状記憶合金ワイヤー14が延在する方向と、折れ曲がり部分から自由端部17までの形状記憶合金ワイヤー14が延在する方向とが異なる方向となる。この場合には、このような方向の相違から形状記憶合金ワイヤー14の収縮が阻害されて、十分にワイヤーの収縮量を得ることができない。
【0039】
また、このような形状記憶合金ワイヤー14の伸縮する部分は、わずかに弛ませて構成することが好ましい。形状記憶合金ワイヤー14は温度が高くなることに応じて収縮することから、ロック装置10が設置される環境の温度に応じて僅かにその長さが変化することとなる。このため、形状記憶合金ワイヤー14の伸縮する部分が僅かに弛ませて構成されてなる場合には、ロック装置10が比較的高温な場所に設置されたことで形状記憶合金ワイヤー14が僅かに収縮しても、当該長さの変化による形状記憶合金ワイヤー14への負荷の増加を防止することができる。
【0040】
また、形状記憶合金ワイヤー14の自由端部17と係合部15とは、係合部15に形成された挿通孔151に形状記憶合金ワイヤー14の自由端部17が挿通されることにより接続されてなる。これにより、形状記憶合金ワイヤー14と係合部15とが接続用部材を用いることなく接続することができ、ロック装置10の製造コストを低減することができる。
また、係合部15の挿通孔151は、形状記憶合金ワイヤー14の変態点よりも高い温度の耐熱性を有することが好ましい。この場合は、形状記憶合金ワイヤー14がジュール熱により高温となっても、係合部15が当該熱により破損することを防止することができる。
【0041】
また、ガイド部材16は、形状記憶合金ワイヤー14が収縮して係合部15が筐体18の内側に移動する動作を妨げないように構成されてなる。これにより、形状記憶合金ワイヤー14が最大量収縮した場合にあっても、ガイド部材16が係合部15の基端と接触して、係合部15が筐体18の内側に収縮するのを阻害することを防止することができる。またさらに、ガイド部材16の係合部15側の端が係合部15の基端と接触しないことから、形状記憶合金ワイヤー14の収縮がガイド部材16と係合部15との接触により無理やり規制されることによって形状記憶合金ワイヤー14が負荷を受けることを防止することができる。
【0042】
また、ガイド部材16は、形状記憶合金ワイヤー14の変態点以上の耐熱性を有する素材により構成されることが好ましい。この場合、形状記憶合金ワイヤー14とガイド部材16とが接触しても、ガイド部材16が形状記憶合金ワイヤー14の変態点以上の耐熱性を有することから、形状記憶合金ワイヤー14の熱によりガイド部材16が劣化することを抑制することができる。
また、特に、ガイド部材16は、形状記憶合金ワイヤー14の変態点以上の耐熱性を有する樹脂により構成されることが好ましい。この場合には、ガイド部材16が変態点以上の耐熱性を有すると共に、熱伝導率が比較的低い樹脂によって構成されることから形状記憶合金ワイヤー14の熱がガイド部材16から外方に放出されることを抑制することができる。これにより、ガイド部材16の劣化を防止しつつ、形状記憶合金ワイヤー14の熱によるロック装置10を構成する他の部材への影響を防止することができる。
【0043】
(形状記憶合金ワイヤー14とガイド部材16との配置及び構成に係る変形例)
次に、以下では、
図3及び
図4に基づき、形状記憶合金ワイヤー14とガイド部材16との配置及び構成に係る変形可能な例を説明する。
【0044】
図3(a)に示すように、形状記憶合金ワイヤー14及びガイド部材16は、互いに一直線に構成されてもよい。ガイド部材16は、一直線に延びた一本のチューブ状体により構成されてもよい。
また、形状記憶合金ワイヤー14の一端部は正電極13aに、他端部が負電極13bに接続されてなり、他端において係合部15と接続されてなる。また、形状記憶合金ワイヤー14の一端部は筐体18に対して固定されてなり、他端部は移動自在な自由端部に構成されてなる。この場合において、形状記憶合金ワイヤー14が電圧の印加を受けると、形状記憶合金ワイヤー14の他端部が一端部に近接するように、形状記憶合金ワイヤー14が収縮する。これによって、形状記憶合金ワイヤー14の他端に接続された係合部15が形状記憶合金ワイヤー14の一端部に近接する方向に移動する。これにより、係合部15は、形状記憶合金ワイヤー14の収縮動作によって、ロック位置とアンロック位置とを移動することができる。この場合においても、ガイド部材16は、収縮動作の前後における形状記憶合金ワイヤー14の周面との間に隙間を介して、形状記憶合金ワイヤー14を囲ってなる。また、形状記憶合金ワイヤー14とガイド部材16との間には、形状記憶合金ワイヤー14を収縮自在とする隙間が形成されてなる。このような構成及び動作は、以下で説明する
図3(c)及び(e)、並びに
図4(a)、(c)、及び(e)に示す例においても同様である。
【0045】
また、
図3(b)に示すように、形状記憶合金ワイヤー14が、一端部と他端部との中間位置において略U字状に折り返して構成されてなり、ガイド部材16a,16bが、形状記憶合金ワイヤー14の中間位置から一端部との間を囲う一端側ガイド部材16aと、形状記憶合金ワイヤー14の中間位置から他端部との間を囲う他端側ガイド部材16bとにより構成されてなることとしてもよい。このような構成は、既に上で説明した実施形態と同様であるため、より詳細な説明は省略する。
【0046】
また、
図3(c)に示すように、形状記憶合金ワイヤー14及びガイド部材16は、互いに一直線に構成されてなり、ガイド部材16は、列状に並べられた複数のアーチ状体に構成されてもよい。ガイド部材16は、アーチ状のコ字形状に構成されてなるが、例えばU字形状など種々のアーチ状に構成することができる。ここで、アーチ状体に構成されたガイド部材16は、アーチの内側において形状記憶合金ワイヤー14を囲ってなる。
【0047】
また、
図3(d)に示すように、形状記憶合金ワイヤー14は、一端部と他端部との中間位置において略U字状に折り返して構成されてなる。またガイド部材16は、形状記憶合金ワイヤーの中間位置から一端部の間を囲う一端側ガイド部材16aを構成する複数のアーチ状体と、形状記憶合金ワイヤーの中間位置から他端部の間を囲う他端側ガイド部材16bを構成する複数のアーチ状体とにより構成されることとしてもよい。
また、形状記憶合金ワイヤー14の一端部は正電極13aに、他端部が負電極13bに接続されてなり、一端部と他端部との中間位置において係合部15と接続されてなる。また、形状記憶合金ワイヤー14の一端部及び他端部は筐体に対して固定されてなり、一端部及び他端部の中間位置は移動自在な自由端部17に構成されてなる。この場合において、形状記憶合金ワイヤー14が電圧の印加を受けると、形状記憶合金ワイヤー14の中間位置が一端部及び他端部に近接するように、形状記憶合金ワイヤー14が収縮する。これによって、形状記憶合金ワイヤー14の中間位置に接続された係合部15が形状記憶合金ワイヤー14の一端部及び他端部に近接する方向に移動する。これにより、係合部15は、形状記憶合金ワイヤー14の収縮動作によって、ロック位置とアンロック位置とを移動することができる。この場合においても、ガイド部材16は、収縮動作の前後における形状記憶合金ワイヤー14の周面との間に隙間を介して、形状記憶合金ワイヤー14を囲ってなる。また、形状記憶合金ワイヤー14とガイド部材16との間には、形状記憶合金ワイヤー14を収縮自在とする隙間が形成されてなる。このような構成及び動作は、既に説明した
図3(b)並びに、以下で説明する
図4(b)、及び(d)に示す例においても同様である。
【0048】
また、
図3(e)に示すように、ガイド部材16は、貫通孔が形成されてなり、中実に構成されてなる中実部材によって構成されてもよい。この場合、形状記憶合金ワイヤー14は、中実部材の貫通孔に対して挿通される。
【0049】
また、
図4(a)に示すように、形状記憶合金ワイヤー14及びガイド部材16は、互いに一致する波状に湾曲しながら一端部から他端部に向かって延びて構成されてもよい。ガイド部材16は、波状に緩やかに湾曲するチューブ状体に構成されてもよい。このような湾曲する波形状については、形状記憶合金ワイヤー14の長さに応じて、適宜波の数を変更することができる。
【0050】
また、
図4(b)に示すように、形状記憶合金ワイヤー14は、一端部と他端部との中間位置において略U字状に折り返して構成されてなり、中間位置から一端部までの間及び中間位置から他端部までの間が、波状に緩やかに湾曲してなることとしてもよい。またガイド部材16a,16bは、形状記憶合金ワイヤー14の中間位置から一端部の間を囲うチューブ状の一端側ガイド部材16aと、形状記憶合金ワイヤー14の中間位置から他端部の間を囲うチューブ状の他端側ガイド部材16bとにより構成され、一端側ガイド部材16a及び他端側ガイド部材16bが、形状記憶合金ワイヤー14の湾曲と一致するように波状に湾曲して構成されることとしてもよい。
【0051】
また、
図4(c)に示すように、波状に湾曲された形状記憶合金ワイヤー14に対しても、形状記憶合金ワイヤー14と一致して波状の列状に並べられた複数のアーチ状体に構成されたガイド部材16を用いることができる。
【0052】
また、
図4(d)に示すように、中間位置において略U字状に折り返して構成されてなり、波状に湾曲されてなる形状記憶合金ワイヤー14に対しても、形状記憶合金ワイヤー14と一致して波状の列状に並べられた複数のアーチ状体に構成されたガイド部材16を用いることができる。
【0053】
また、
図4(e)に示すように、波状に湾曲された形状記憶合金ワイヤー14に対しても、貫通孔が形成された中実部材により構成されるガイド部材16を用いることができる。ここで、中実部材は、貫通孔に加えてその外形も波状に湾曲されてなる例を示したが、中実部材は貫通孔が波状に湾曲されていれば、その外形が波状に湾曲されてなることを要するものではない。
【0054】
以上で示したいずれの変形例においても、既に説明したように、ガイド部材16は、収縮動作の前後における形状記憶合金ワイヤー14の周面との間に隙間を介して形状記憶合金ワイヤー14を囲ってなる。これによって、収縮に際して余分な摩擦をガイド部材16と形状記憶合金ワイヤー14との間に生じない。これにより、ロック装置10は、形状記憶合金ワイヤー14の収縮動作が摩擦によって阻害されることを抑制することができる。これによって、ロック装置10は、形状記憶合金ワイヤー14の収縮を最大量実現し、係合部15がロック位置とアンロック位置との間を十分に移動する駆動力を得ることができる。また、以上で示した変形例においても、既に説明した実施形態の例と同様の種々の効果が奏される。
【0055】
また、
図4における変形例で示した通り、形状記憶合金ワイヤー14が波状に湾曲してなり、該湾曲と一致する波状にガイド部材16が設けられてなる場合には、以上で説明した通り、ロック装置10が形状記憶合金ワイヤー14の収縮を最大量実現し、かつ、直線状に形状記憶合金ワイヤー14が配設されてなる場合と比べて収縮方向の長さが短くなり、ロック装置10の小型化に寄与することができる。
【0056】
(追加的な変形例)
また、上で説明したロック装置10は、以下のようにその構成を変更することができる。
【0057】
本実施形態で説明したように、形状記憶合金ワイヤー14は、Ti-Ni系の合金により構成することが好ましい。このほか、形状記憶合金ワイヤー14は、鉄―マンガン―ケイ素(Fe-Mn-Si)合金などの鉄系形状記憶合金その他の形状記憶合金により構成することとしてもよい。すなわち、電圧の印加を受けることにより収縮するものであれば、種々のワイヤーを採用することができる。
【0058】
また例えば、形状記憶合金ワイヤー14は、その素材の収縮率に応じて、2mm以上収縮することが好ましい。また、形状記憶合金ワイヤー14は4mm以上収縮する場合には、係合部15を十分に移動させることができることからさらに好ましい。一例を挙げると、形状記憶合金ワイヤー14がTi-Ni系合金により構成されてなる場合には、形状記憶合金ワイヤー14を50mm以上の長さに構成することで、これに4%の収縮率を乗じて2mm以上の収縮量を得ることができる。
なお、このような形状記憶合金ワイヤー14の収縮量は、一応の好ましい収縮量を示したものであり、本発明の範囲はこのような収縮量に限定されるものではない。また、形状記憶合金ワイヤー14の収縮量が小さい場合であっても、例えばリンク機構など、公知の機械要素を用いることにより、少ない形状記憶合金ワイヤー14の収縮量から十分な係合部15の移動量を得ることが可能である。
【0059】
また、本実施形態においては、形状記憶合金ワイヤー14の自由端部17が収縮により移動する方向と同じ方向に、収縮に連動して係合部15が移動する例を示した。しかしながら、レバーなどの変向機構を採用することにより、係合部15の移動する方向を適宜変更することとしてもよい。
また例えば、係合部15の移動する方向を形状記憶合金ワイヤー14の自由端部17が移動する方向と逆方向とした場合には、電圧の印加により係合部15を筐体18から突出させることができる。このような構成によれば、ロック装置10を採用したパドロック(南京錠)を実現することができる。すなわち、パドロックは一般に筐体の上面に略U字状のシャックルが設けられてなる。パドロックは、このシャックルが筐体から上方に向かって突出することで、ロックが解除され、シャックルが筐体に近接する下方に移動することでロックが行われるものである。このような場合には、ロック装置10の変向機構を用いて、係合部15の移動する方向を形状記憶合金ワイヤー14の自由端部17が移動する方向と逆方向とすることで、ロック装置10を採用したパドロックを実現することができる。
【0060】
また、本実施形態においては、係合部15は直方体形状のブロック体に構成されることとした。しかしながら、係合部15は形状記憶合金ワイヤー14の収縮動作によりロック位置とアンロック位置とを移動可能であれば、種々の形状・材質により構成することができる。
例えば、係合部15をフック状に構成し、係合部15と形状記憶合金ワイヤー14との接続機構として、形状記憶合金ワイヤー14の直線運動を回転運動に変換する変換機構を採用することで、フックを回転により引っ掛けるロック装置10を構成することができる。
また、例えば、係合部15はバネ等の弾性部材により、ロック位置に付勢されてなることとしてもよい。この場合には、弾性部材の付勢力により係合部15がアンロック位置に付勢さら、ロック装置10のロック動作をより確実に行うことが可能となる。
【0061】
また、筐体18は、例えば3Dプリンター等の立体造形手段を用いて製造することが好ましい。この場合には、ロック装置10を適用する物品に応じて金型を製造することを要さず、設計の自由度を高めることができる。
また、3Dプリンターを用いて筐体18を製造する場合には、例えば、ロック装置10は、筐体18の内壁に対してガイド部材16を一体に成形してもよい。この場合、ガイド部材16を筐体18の内壁に対して固定する製造ステップを省略することができることから、ロック装置10を容易に製造することができる。このように、筐体18と一体にガイド部材16が成形された場合においても、ロック装置10は、上で述べた種々の効果を奏することができる。
【0062】
また、本実施形態においては、検出部12として指紋認証を用いる例を示したが、認証手段はこれに限定されるものではなく、例えばRFID(radio frequency identifier)などの近接通信、顔認証、鍵による認証など、種々の認証手段を採用することができる。
【0063】
(収納ボックスに係る実施形態)
次に、
図5及び
図6に基づき、前述した任意のロック装置10を有する収納ボックスについて説明する。
【0064】
収納ボックスは、外装体30と、外装体30に挿入されるボックス本体40とを含んでなる。
収納ボックスは、ロック装置10を備えており、さらに、一面(正面)が開口されてなり、開口31の縁部32に被係合部33が配設されてなる外装体30と、開口31から引出し可能に外装体30に挿入されてなり、所定の物を収納する収納空間が形成されてなると共に、一面側の面(正面)にロック装置10が配設されてなるボックス本体40と、を備え、トリガーの検出により、形状記憶合金ワイヤー14に対して電圧が印加されることで、係合部41が、ボックス本体40を外装体30から引出すために十分な時間継続してアンロック位置を維持する。
【0065】
外装体30は、一面が開口されてなり、開口31の縁部32に被係合部33が配設されてなる。外装体30の開口31には、ボックス本体40が挿入される。外装体30は、縦長直方体形状の箱体に形成されてなる。外装体30の一面は、ボックス本体40が挿入される開口31となっている。
外装体30の開口31の縁部32には、ボックス本体40に設けられた係合部41と係合する被係合部33が配設されてなる。被係合部33は、外装体30の開口31を形成する立直側辺の縁部32の内側に配設されてなる。被係合部33は、立直側辺の上下方向中間位置よりわずかに下方の内側に配設されてなる。被係合部33は、開口31の縁部32において、外装体30の内側に向かって突設されてなる。被係合部33は、上下方向を高さ方向とする略三角柱形状に構成されてなり、外装体30の一面側である端部に向かう先細りテーパー状に構成されてなる。
【0066】
ボックス本体40は、外装体30の開口31から外装体30の内部に挿入される。ボックス本体40は、開口31から引出し可能に外装体30に挿入されてなり、所定の物を収納する収納空間が形成されてなると共に、一面側の面にロック装置10が配設されてなる。
ボックス本体40は、天面が開放された箱体に構成されてなり、箱体の後端側において、斜めに切り欠かれた形状に構成されてなる。ボックス本体40は、内部が書類等の所定の物が収納される収納空間に形成されてなる。ボックス本体40の側面であって一端側の縁部32には、外装体30の被係合部33と対応する位置において、係合部41が配設されてなる。係合部41は、ロック位置においてボックス本体40の側面から外側に向かって突出し、アンロック位置においてボックス本体40の側面から内側に没入する。係合部41は、ロック装置10に収容されている形状記憶合金ワイヤー14の収縮動作に連動して、ボックス本体40の内側に没入する。
ボックス本体40の一面の内側面には、上下方向中間位置よりもわずかに下方において、ロック装置10が配設されてなる。ロック装置10の近傍には、一面側に向かって開口され、電源ケーブルが接続される充電コネクタ43が配設されてなる。
【0067】
ボックス本体40の一面の外側面には、ロック装置10の検出部12である指紋認証部42が露出されてなる。指紋認証部42は、所定の登録済みの指紋を受け付けることで、ロック装置10の制御部にトリガーの検出を通知する。トリガーの検出があった場合、電源13が形状記憶合金ワイヤー14に対して電圧を印加する。また、これにより、係合部41は、ボックス本体40を外装体30から引き出すために十分な時間継続してアンロック位置を維持する。このような制御構成としては、例えば、電源13が5秒から15秒程度の間形状記憶合金ワイヤー14に対して電圧を印加することで、5秒から15秒程度係合部41のアンロック位置を維持させることが好ましい。
また、指紋認証部42の下方には、外装体30からボックス本体40を引き出す際に指が引っ掛けられる貫通孔である指掛部44が形成されてなる。
【0068】
外装体30の被係合部33が一端側に向かう先細りテーパー状に形成されてなる。このため、係合部41がロック位置に位置する場合でも、ボックス本体40を外装体30に対して押し入れることで、係合部41が被係合部33を乗り越えて、係合部41と被係合部33とが係合した状態とすることができる。
また、この際には、係合部41が被係合部33のテーパー状の傾斜に合わせて、わずかにボックス本体40の内側に入り込むこととなる。この場合においても、形状記憶合金ワイヤー14とガイド部材16との間に隙間が形成されてなることから、形状記憶合金ワイヤー14が、その隙間において径方向に湾曲することができる。このため、形状記憶合金ワイヤー14に対して負担を掛けることなく、係合部41が容易に被係合部33の傾斜を乗り越えることができる。
【0069】
また、収納ボックスは、指掛部44が指紋認証部42の下方に位置する。さらに、指掛部44は、指紋認証部42の下方において、おおよそ5cmから10cmの位置に形成されることが好ましい。
この場合には、手のひらが上方に向いた状態で指掛部44に人差し指を掛けると同時に、指紋認証部42と親指とを当接させることができる。これにより、指紋認証とボックス本体40の係合部41からの引き出しとを一つの動作により行うことができる。これにより、収納ボックスの使用性を特に向上させることができる。
また、このような指紋認証と指掛部44に対して指を掛ける動作を同時に行う構成としては、指掛部44が指紋認証部42と5cmから10cm離間した上方に位置することとしてもよい。この場合においても、手のひらを下方に向けて人差し指を指掛部44に掛けると同時に、指紋認証部42と親指とを当接させることができる。
すなわち、指紋認証部42と指掛部44とは、互いに親指を当接させ、人差し指を掛け得る位置関係にあればよい。なお、指紋認証部42において指紋の認証を受ける指は、親指に限定されるものではなく、その他の指により認証を行うこととしてもよい。また、検出部12としては指紋認証部42に限られず、その他のRFIDなどの近接通信等、種々の認証手段を採用することができる。
【0070】
(冊子体に係る実施形態)
次に、
図7に基づき、前述した任意のロック装置10を有する冊子体50について説明する。
【0071】
冊子体50は、ロック装置10を備えるノート、メモ帳、手帳、若しくは書籍などの冊子体であり、トリガーの検出により、形状記憶合金ワイヤー14に対して電圧が印加されることで、係合部15が、冊子体50を開くために十分な時間継続してアンロック位置を維持する。
【0072】
ロック装置10は、例えば、冊子体50に設けられた冊子体50の開閉を規制するベロ51に対して設けられることが好ましい。この場合、ロック装置10は、冊子体50の表紙に設けられた係合部15若しくは被係合部25と、冊子体50のベロ51に設けられた被係合部25若しくは係合部15とにより、冊子体50の開閉をロックする。このようなロック装置10としても、前述の任意のロック装置10を採用することができる。なお、このようなベロ51に係合部15若しくは被係合部25を設けた場合にあっては、係合部15を回動するフック状体に構成することが好ましい。
【0073】
この場合において、ロック装置10の制御としては、冊子体50を開くために十分な時間、例えば5秒から15秒程度、形状記憶合金ワイヤー14に対して電圧が継続して印加されることが好ましい。
【0074】
ロック装置10を備える冊子体50にあっては、特に、冊子体50に記載された個人情報やプライバシーに関する情報が、ロック装置10のアンロックが可能な者以外の者により閲覧されることを防止することができる。
このため、会社その他の事業所における個人情報の管理体制の強化や、個人のプライバシーが侵害されることの防止が可能となる。
【0075】
以上で説明した実施形態は、いずれも本発明に係る例示的な実施形態であり、本発明の技術的範囲はこれらに限定されるものではない。また、本実施形態においては、収納ボックス及び冊子体50について特に具体的なロック装置10の適用例を説明したが、ロック装置10の適用が可能な物品はこれらに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0076】
10 ロック装置
11 制御部
12 検出部
13 電源
14 形状記憶合金ワイヤー
15 係合部
16 ガイド部材
17 自由端部
18 筐体
25 被係合部
30 外装体
40 ボックス本体
41 係合部
42 指紋認証部
43 充電コネクタ
44 指掛部
50 冊子体
51 ベロ