(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022176444
(43)【公開日】2022-11-30
(54)【発明の名称】毛髪用組成物および毛髪処理方法
(51)【国際特許分類】
A61K 8/49 20060101AFI20221122BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20221122BHJP
A61Q 5/06 20060101ALI20221122BHJP
A61Q 5/12 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
A61K8/49
A61K8/34
A61Q5/06
A61Q5/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021082885
(22)【出願日】2021-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】592255176
【氏名又は名称】株式会社ミルボン
(72)【発明者】
【氏名】岡本 喜日出
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AC022
4C083AC072
4C083AC102
4C083AC111
4C083AC122
4C083AC172
4C083AC182
4C083AC372
4C083AC422
4C083AC432
4C083AC442
4C083AC692
4C083AC841
4C083AC842
4C083AC902
4C083AD152
4C083AD512
4C083BB01
4C083CC32
4C083CC33
4C083DD23
4C083DD28
4C083EE06
4C083EE07
4C083EE25
4C083EE28
(57)【要約】
【課題】アイロンなどの発熱体を使用する処理を行った毛髪の纏まりが優れる上、束状毛髪の発生を抑制できる毛髪用組成物及び毛髪処理方法の提供。
【解決手段】毛髪用組成物は、環状カーボネート及び多価アルコールが配合されており、塗布処理、毛髪を洗浄する洗浄処理、毛髪を乾燥させる乾燥処理、及び設定温度100℃以上の発熱体を毛髪に接触させる加熱処理を有する毛髪処理方法における塗布処理にて、毛髪に塗布されるものであり、毛髪処理方法は、環状カーボネート及び多価アルコールが配合された毛髪用組成物を毛髪に塗布する塗布処理、毛髪を洗浄する洗浄処理、毛髪を乾燥させる乾燥処理、及び設定温度100℃以上の発熱体を毛髪に接触させる加熱処理を有するものである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗布処理と、
前記塗布処理後の毛髪を洗浄する洗浄処理と、
前記洗浄処理後の毛髪を乾燥させる乾燥処理と、
前記乾燥処理後の毛髪に、設定温度100℃以上の発熱体を接触させる加熱処理と、を有する
毛髪処理方法における前記塗布処理で毛髪に塗布される毛髪用組成物であって、
環状カーボネート及び多価アルコールが配合されていることを特徴とする毛髪用組成物。
【請求項2】
前記多価アルコールの配合量が40質量%以上である請求項1に記載の毛髪用組成物。
【請求項3】
界面活性剤が配合されている請求項1又は2に記載の毛髪用組成物。
【請求項4】
高級アルコールが配合されている請求項1~3のいずれか1項に記載の毛髪用組成物。
【請求項5】
水の配合量が10質量%未満、又は、水が実質的に配合されていない請求項1~4のいずれか1項に記載の毛髪用組成物。
【請求項6】
環状カーボネート及び多価アルコールが配合された毛髪用組成物を毛髪に塗布する塗布処理と、
前記塗布処理後の毛髪を洗浄する洗浄処理と、
前記洗浄処理後の毛髪を乾燥させる乾燥処理と、
前記乾燥処理後の毛髪に、設定温度100℃以上の発熱体を接触させる加熱処理と、
を有することを特徴とする毛髪処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘアアイロンなどの発熱体を毛髪に接触させる特定の毛髪処理に使用される毛髪用組成物および当該組成物を使用する毛髪処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
美容室で毛髪に対して行うトリートメントは、自宅で行うトリートメントよりも、毛髪の感触を実感できるとの声が多い。そのようなトリートメントとして、複数の組成物を組み合わせる多剤式トリートメントが知られている。また、特許文献1には、約1.0~40.0重量%の多価アルコール、約2.0~40.0重量%の環状カーボネートが配合され、「多価アルコールの重量/環状カーボネートの重量」が約1~40である剤を毛髪に塗布、作用させた後、毛髪を洗浄することなく、毛髪を熱処理する毛髪処理方法の具体例が開示されており、当該方法によれば、毛髪における優れた再構築効果(restructuring effect)を奏するとされている(Claim1、段落0002、段落233~034参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2019/0167548号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ヘアアイロンなどの発熱体を毛髪に接触させる毛髪処理方法においては、纏まりのある毛髪状態が期待されるが、指通りの向上のためには、束状毛髪(複数本の毛髪で束状となったもの)の発生を抑制することが望まれる。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑み、アイロンなどの発熱体を使用する処理を行った毛髪の纏まりが優れる上、束状毛髪の発生を抑制できる毛髪用組成物及び毛髪処理方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る毛髪用組成物は、塗布処理と、前記塗布処理後の毛髪を洗浄する洗浄処理と、前記洗浄処理後の毛髪を乾燥させる乾燥処理と、前記乾燥処理後の毛髪に、設定温度100℃以上の発熱体を接触させる加熱処理と、を有する毛髪処理方法における前記塗布処理で毛髪に塗布されるものであって、環状カーボネート及び多価アルコールが配合されていることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る毛髪用組成物において、前記多価アルコールの配合量が40質量%以上であると良い。この配合量であっても、本発明に係る毛髪用組成物が洗浄処理を有する毛髪処理方法に使用されるので、束状毛髪の発生が抑えられる。
【0008】
本発明に係る毛髪用組成物は、界面活性剤が配合されているものが良い。界面活性剤が配合されていると、毛髪処理後の毛髪の纏まり、柔らかさの向上に好適である。
【0009】
本発明に係る毛髪用組成物は、高級アルコールが配合されているものが良い。高級アルコールが配合されていると、滑らかさの向上に好適である。
【0010】
本発明に係る毛髪用組成物は、水の配合量が10質量%未満、又は、水が実質的に配合されていないものであっても良い。このような水分量であっても、本発明に係る毛髪用組成物が洗浄処理を有する毛髪処理方法に用いられるので、束状毛髪の発生が抑えられる。ここで「水が実質的に配合されていない」とは、水が意図的に配合されておらず、他の成分の吸湿性による水分量は該当することを意味する。
【0011】
また、本発明に係る毛髪処理方法は、環状カーボネート及び多価アルコールが配合された毛髪用組成物を毛髪に塗布する塗布処理と、前記塗布処理後の毛髪を洗浄する洗浄処理と、前記洗浄処理後の毛髪を乾燥させる乾燥処理と、前記乾燥処理後の毛髪に、設定温度100℃以上の発熱体を接触させる加熱処理と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る毛髪用組成物によれば、環状カーボネート及び多価アルコールが配合されている上で、塗布後の毛髪を洗浄した後、乾燥、設定温度100℃以上の発熱体を接触させる毛髪処理に使用されるから、毛髪の纏まりに優れ、束状毛髪の発生が抑制された毛髪を実現できる。
【0013】
また、本発明に係る毛髪処理方法によれば、塗布処理で使用する毛髪用組成物に環状カーボネート及び多価アルコールが配合され、かつ、洗浄処理で塗布された毛髪用組成物が除去された後に、毛髪を乾燥させる乾燥処理と、設定温度100℃以上の発熱体を毛髪と接触させる加熱処理とを有するから、毛髪の纏まりに優れ、束状毛髪の発生が抑制された毛髪を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施例1及び比較例1による毛髪処理後の毛髪状態の撮影画像である。
【
図2】比較例2及び実施例2aの毛髪処理後の毛髪状態、並びに未処理の毛髪状態の撮影画像である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態に基づき、本発明を以下に説明する。
本実施形態の毛髪処理方法は、所定の毛髪用組成物を毛髪に塗布する塗布処理、毛髪を洗浄する洗浄処理、毛髪を乾燥させる乾燥処理、及び設定温度100℃以上の発熱体を接触させる加熱処理を有する。本実施形態の毛髪処理方法によれば、毛髪の纏まりに優れ、束状毛髪が生じることを抑制できる。
【0016】
なお、本実施形態の毛髪処理方法による処理前及び/又は処理後には、アニオン界面活性剤などの界面活性剤が配合されたシャンプー用組成物を使用するシャンプー処理、カチオン界面活性剤やシリコーンなどが配合されたトリートメント用組成物を使用するトリートメント処理、毛髪のメラニン色素を脱色するためのブリーチ用組成物を使用するブリーチ処理、毛髪を染色するための染毛用組成物を使用する染毛処理などの公知の毛髪処理を適宜行っても良い。
【0017】
また、本実施形態の毛髪処理方法を使用する過程においては、本発明の効果を損なわない限り、追加の処理を行っても良い。例えば、塗布処理の後、洗浄処理の前に、カチオン界面活性剤、高級アルコールなどが配合された公知の洗い流すトリートメント用組成物を塗布しても良い。
【0018】
塗布処理
本実施形態の塗布処理では、毛髪に所定の毛髪用組成物を塗布する。当該毛髪用組成物による効果を発揮させるため、塗布する前の毛髪は、シャンプー処理後の水分を含むものが良い。
【0019】
本塗布処理で使用される本実施形態の毛髪用組成物は、環状カーボネート及び多価アルコールが配合されたものである。また、本実施形態の毛髪用組成物には、公知の毛髪用組成物に配合されている成分を、任意成分として配合しても良い。
【0020】
上記環状カーボネートは、毛髪の柔らかさ、纏まり、滑らかさを向上させる。当該環状カーボネートは、公知の環状カーボネートであると良く、例えば、下記一般式(I)で表されるものが挙げられ、具体例としては、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ブチレン、炭酸グリセロールが挙げられる。
【0021】
【0022】
上記一般式(I)において、nは0、1、又は2の整数であり、R1、R2、R3、及びR4は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1以上6以下のアルキル基、炭素数1以上6以下のヒドロキシアルキル基、又はヒドロキシ基を表す。
【0023】
本実施形態の毛髪用組成物には一種又は二種以上の環状カーボネートが配合され、当該毛髪用組成物における環状カーボネートの配合量は、2質量%以上20質量%以下が良く、5質量%以上15質量%以下が好ましく、8質量%以上13質量%以下がより好ましい。
2質量%以上であると、毛髪の纏まり、柔らかさ、滑らかさの向上に好適であり、20質量%以下であると、低コスト化の観点から好適である。
【0024】
上記多価アルコールの配合は、毛髪の柔らかさ、纏まりを向上させる。当該多価アルコールは、炭素数6以下の2価、3価、又は4価の公知の多価アルコールであり、多価アルコールの具体例としては、グリセリン、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,3-ブチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジグリセリン、トリエチレングリコールが挙げられる。
【0025】
本実施形態の毛髪用組成物には一種又は二種以上の多価アルコールが配合され、当該毛髪用組成物における多価アルコールの配合量は、使用前に環状カーボネートの加水分解を抑える観点から、40質量%以上が良く、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上が更に好ましく、75質量%以上がより更に好ましい。一方、多価アルコールの配合量の上限は、環状カーボネートの配合量を確保するため、95質量%であると良い。
【0026】
上記の通り任意成分を本実施形態の毛髪用組成物に配合しても良く、この任意成分としては、界面活性剤、高級アルコール、低級アルコール、シリコーン、油脂、エステル油、ロウ、炭化水素、高分子化合物、アミノ酸、動植物抽出物、香料などが挙げられる。
【0027】
界面活性剤を本実施形態の毛髪用組成物に配合すると、毛髪の柔らかさ、纏まりの向上に好適である。界面活性剤としては、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤が挙げられ、一種又は二種以上の界面活性剤を配合すると良い。
【0028】
上記カチオン界面活性剤としては、例えば、長鎖アルキルトリメチル4級アンモニウム塩、ジ長鎖アルキルジメチル4級アンモニウム塩が挙げられ、長鎖アルキルトリメチル4級アンモニウム塩を構成する4級アンモニウムとしては、ラウリルトリメチルアンモニウム、ミリスチルトリメチルアンモニウム、セチルトリメチルアンモニウム、ステアリルトリメチルアンモニウム、ベヘニルトリメチルアンモニウムが挙げられ、ジ長鎖アルキルジメチル4級アンモニウム塩を構成する4級アンモニウムとしては、ジラウリルジメチルアンモニウム、ジミリスチルジメチルアンモニウム、ジセチルジメチルアンモニウム、ジステアリルジメチルアンモニウム、ジベヘニルジメチルアンモニウムが挙げられる。本実施形態の毛髪用組成物には一種又は二種以上のカチオン界面活性剤が配合され、カチオン界面活性剤を配合する場合の配合量は、適宜設定されるべきであるが、0.5質量%以上8質量%以下が良い。0.5質量%以上であると、毛髪の纏まり、柔らかさの向上に好適であり、8質量%以下であると、毛髪の滑らかさの観点から好適である。
【0029】
上記アニオン界面活性剤としては、例えば、N-アシルアミノ酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩、アルカンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、N-アシルメチルタウリン塩、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、モノアルキルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩が挙げられる。本実施形態の毛髪用組成物には一種又は二種以上のアニオン界面活性剤が配合され、アニオン界面活性剤を配合する場合の配合量は、適宜設定されるべきであるが、0.5質量%以上8質量%以下が良い。0.5質量%以上であると、毛髪の纏まり、柔らかさの向上に好適であり、8質量%以下であると、毛髪の滑らかさの観点から好適である。
【0030】
上記両性界面活性剤としては、例えば、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルジヒドロキシエチルアミノ酢酸ベタイン、N-アルキル-N,N-ジメチルアンモニウム-N-プロピルスルホン酸塩、N-アルキル-N,N-ジメチルアンモニウム-N-(2-ヒドロキシプロピル)スルホン酸塩、N-脂肪酸アミドプロピル-N,N-ジメチルアンモニウム-N-(2-ヒドロキシプロピル)スルホン酸塩、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインが挙げられる。本実施形態の毛髪用組成物には一種又は二種以上の両性界面活性剤が配合され、両性界面活性剤を配合する場合の配合量は、適宜設定されるべきであるが、0.5質量%以上8質量%以下が良い。0.5質量%以上であると、毛髪の纏まり、柔らかさの向上に好適であり、8質量%以下であると、毛髪の滑らかさの観点から好適である。
【0031】
上記ノニオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビトールテトラ脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、アルキルグルコシド、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルアルカノールアミドが挙げられる。本実施形態の毛髪用組成物には一種又は二種以上のノニオン界面活性剤が配合され、ノニオン界面活性剤を配合する場合の配合量は、適宜設定されるべきであるが、0.5質量%以上8質量%以下が良い。0.5質量%以上であると、毛髪の纏まり、柔らかさの向上に好適であり、8質量%以下であると、毛髪の滑らかさの観点から好適である。
【0032】
高級アルコールを本実施形態の毛髪用組成物に配合すると、毛髪の滑らかさの向上に好適である。当該高級アルコールは、炭素数6以上の一価アルコールであり、炭素数が16以上22以下の飽和アルコールであると良く、例えば、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、アラキルアルコール、ベヘニルアルコールなどの直鎖状飽和アルコール;オレイルアルコールなどの直鎖状不飽和アルコール;ヘキシルデカノール、オクチルドデカノール、イソセチルアルコール、ドデシルヘキサデカノール、イソステアリルアルコール、テトラデシルオクタデカノールなどの分岐状飽和アルコールが挙げられる。本実施形態の毛髪用組成物には一種又は二種以上の高級アルコールが配合される。高級アルコールを配合する場合の配合量は、例えば2質量%以上8質量%以下である。
【0033】
本実施形態の毛髪用組成物に水を配合する場合、環状カーボネートの加水分解を抑制する観点から、水の配合量は、10質量%未満が良く、7質量%未満が好ましく、5質量%未満がより好ましく、3質量%未満が更に好ましく、1質量%未満がより更に好ましい。なお、上記の加水分解の抑制の虞を解消するには、水を実質的に配合しないことが好適である。
【0034】
本実施形態の毛髪用組成物の剤型は、特に限定されず、例えば、液状、クリーム状が挙げられる。B型粘度計を使用して25℃で計測した60秒後の粘度が10,000mPa.s以上60,000mPa.s以下のクリーム状であれば、ハンドリング上好ましい。
【0035】
本実施形態の塗布処理において、毛髪用組成物を毛髪に塗布してから一定時間放置すると良い。この放置時間は、例えば1分以上15分以下である。放置中は、公知の方法により、塗布後毛髪の加温を行っても良い。
【0036】
洗浄処理
本実施形態の洗浄処理では、上記塗布処理において塗布された毛髪用組成物を毛髪から水洗除去する。この洗浄処理が無い場合、本実施形態の毛髪処理方法による処理後、束状毛髪が生じ易い。
【0037】
乾燥処理
本実施形態における乾燥処理では、上記洗浄処理後の毛髪に残る水分の一部又は全部を乾燥させる。この乾燥処理を行わずに次の加熱処理を行った場合、毛髪内の水分が急激に蒸発して、毛髪を損傷させる場合がある。本実施形態の乾燥処理によれば、その急激な水分蒸発による損傷を抑制できる。乾燥処理では、例えば、ドライヤーによる温風で毛髪を乾燥させる。また、濡れた毛髪をロッドに巻き取った後に乾燥させることも例示できる。
【0038】
加熱処理
本実施形態における加熱処理では、乾燥処理で乾燥させた毛髪に発熱体を接触させる。加熱処理後の毛髪は、纏まり、柔らかさ、滑らかさに優れる。
【0039】
毛髪と接触させる上記発熱体の設定温度は、100℃以上である。その接触は、毛髪を伸ばして毛髪形状を略直線状に変形させるための公知のヘアアイロン、毛髪形状をウェーブ状にするためのロッド、毛髪形状をカール状やウェーブ状にするためのカーリングアイロンを使用して行うと良い。
【0040】
毛髪形状を略直線状に変形させるためのヘアアイロンは、ハッコー社製「ADST Premium DS」、小泉成器社製「VSI-1009/PJ」などとして公知である。このヘアアイロンにおいて、対向する一対の金属製板状体が発熱体として備わっている。そして、ヘアアイロンを使用する際には、毛髪を対向する発熱体間に挟み、その後に、毛髪を挟んだ状態を維持しながらヘアアイロンを移動させ、挟まっている毛髪を滑らせる。上記ヘアアイロンの発熱体の設定温度は、毛髪の形状を効率良く変形させるために、100℃以上であり、120℃以上が良く、140℃以上が好ましく、160℃以上がより好ましく、170℃以上が更に好ましい。一方、上記発熱体の設定温度は、毛髪の損傷を抑えるためには、230℃以下が良く、210℃以下が好ましく、200℃以下がより好ましく、190℃以下が更に好ましい。
【0041】
毛髪形状をウェーブ状にするためのロッドは、公知の装置に備わっており、その装置は、大広製作所社製「ODIS EX」などである。上記ロッドの設定温度は、毛髪の形状を効率良く変形させるために、100℃以上である。
【0042】
毛髪形状をカール状やウェーブ状にするためのカーリングアイロンは、ハッコー社製「Digital Perming」などとして公知である。このカーリングアイロンは、発熱体の温度を例えば140℃以上190℃以下に設定して使用される。
【実施例0043】
以下、実施例に基づき本発明を詳述するが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるものではない。
【0044】
下記の通り、実施例1、比較例1~2、実施例2a~2d、実施例3a~3eの毛髪用組成物を製造し、実施例1、比較例1~2、実施例2a~2d、実施例3a~3eの毛髪処理方法による毛髪処理を行った。以上の毛髪用組成物、毛髪処理方法、評価の詳細は、次の通りである。
【0045】
(毛髪用組成物)
実施例1、比較例1~2、実施例2a~2d、実施例3a~3eのクリーム状毛髪用組成物を製造した。配合した成分は、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、1,2-プロパンジオール、1,3-ブチレングリコール、グリセリン、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、ポリオキシエチレンセチルエーテルリン酸ナトリウム(5E.O.)、ポリオキシエチレンオレイルエーテル(2E.O.)、ポリオキシエチレンセチルエーテル(30E.O.)、モノステアリン酸グリセリル、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット(60E.O.)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(100E.O.)、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、イソプロパノール、メチルポリシロキサン(10cs)、高重合メチルポリシロキサン、ジメチルシロキサン・メチルステアロキシシロキサン共重合体、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジイソブチル、ラノリン、流動パラフィン、フェノキシエタノール、香料から選定したものとし、その配合量は、下記表1~3の通りとした。
【0046】
(実施例1の毛髪処理方法)
塗布処理、洗浄処理、乾燥処理、及び加熱処理を下記の通り行い、実施例1の毛髪処理方法による毛髪処理を行った。
【0047】
事前に市販のシャンプー用組成物(ミルボン社製「ノイドゥーエ ウィローリュクスシャンプー」)を使用して洗浄した濡れた被処理毛髪(日本人女性から採取した酸化染毛処理履歴がある長さ20cm程度、質量2gの毛髪)に、実施例1の毛髪用組成物4g程度を塗布して10分間放置することで塗布処理を行った。塗布処理後の被処理毛髪を温水で十分に水洗して洗浄処理を行い、間もなく、乾燥処理としてドライヤー温風による毛髪からの水分除去を行った。そして、ヘアアイロン(株式会社ハッコー製「ADST Premium DS プロ用ストレートヘアアイロン ADST Premium DS(FDS-25)」)における一対の発熱体の温度を180℃に設定し、その発熱体の間に被処理毛髪を挟んでから、被処理毛髪を伸ばしつつ滑らせることを3回行うことで、加熱処理を行った。以上により、実施例1の毛髪処理方法による毛髪処理を行った。
【0048】
(比較例1)
洗浄処理を省略した以外は実施例1の毛髪処理方法と同様の方法を、比較例1の毛髪処理方法とした。
【0049】
(比較例2、実施例2a~2d、実施例3a~3eの毛髪処理方法)
実施例1の毛髪用組成物を、比較例2、実施例2a~2d及び実施例3a~3eの毛髪用組成物に置き換えた以外は実施例1の毛髪処理方法と同様の方法を、比較例2、実施例2a~2d及び実施例3a~3en毛髪処理方法とした。
【0050】
(評価:実施例1、比較例1)
実施例1及び比較例1の毛髪処理方法による毛髪処理を行った被処理毛髪について、櫛通しを行い、目視観察した。
【0051】
(評価:比較例2、実施例2a~2d、実施例3a~3e)
比較例2、実施例2a~2d、及び実施例3a~3eによる毛髪処理を行った被処理毛髪について、市販のシャンプー用組成物(ミルボン社製「ノイドゥーエ ウィローリュクスシャンプー」)を使用しての洗浄、市販のトリートメント用組成物(ミルボン社製「ノイドゥーエ ウィローリュクストリートメント」)を使用してのトリートメント処理、ドライヤー温風による毛髪からの水分除去を行った。その後の被処理毛髪について、纏まり(目視したときの被処理毛髪の毛羽立ちが抑えられている状態)、柔らかさ(触ったときに感じる柔らかな感触)、滑らかさ(触ったときに感じる表面の滑らかさ)の評価を行った。ここでの評価は、4名の評価者により行った。また、評価は、実施例2aを基準とした場合の比較例2及び実施例2a~実施例2dの比較、実施例3aを基準とした場合の実施例3a~3eの比較を行い、各比較の中で、基準よりも良い評価であった点数を「3」、基準と同等の評価であった点数を「2」、基準よりも悪い評価であった点数を「1」とした。そして、評価点数を合計し、評価を行った。
【0052】
下記表1は、実施例1及び比較例2の毛髪用組成物の成分、配合量を示す表であり(表1における「質量部」は成分の質量比率を意味する。以下、同じ。)、
図1は、目視した実施例1及び比較例1の被処理毛髪の撮影画像である。
図1によれば、実施例1は、洗浄処理を省略した比較例1に比べて、束状毛髪の発生が明らかに抑制されていた。
【0053】
【0054】
下記表2~3は、比較例2、実施例2a~2d、実施例3a~3eの毛髪用組成物の成分、配合量と共に、「纏まり」、「柔らかさ」、「滑らかさ」の各評価結果を示す表である。また、
図2は、比較例2及び実施例2aの被処理毛髪、並びに未処理毛髪(塗布処理前の乾燥させた毛髪)の撮影画像である。
【0055】
下記表2の比較例2と実施例2a~2dとの対比において、環状カーボネートの配合により全ての評価が向上したことを確認できる(参考:
図2)。また、実施例2aと実施例2b~2dの対比において、界面活性剤の配合により「纏まり」及び「柔らかさ」の評価が向上したことを確認できる。
【0056】
【0057】
下記表3の実施例3aと実施例3cとの対比、及び実施例3dと実施例3eとの対比において、高級アルコールの配合により「滑らかさ」の評価が向上したことを確認できる。
【0058】