(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022176447
(43)【公開日】2022-11-30
(54)【発明の名称】半導体モジュール
(51)【国際特許分類】
H01L 25/07 20060101AFI20221122BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20221122BHJP
【FI】
H01L25/04 C
H02M7/48 Z
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021082889
(22)【出願日】2021-05-17
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002941
【氏名又は名称】弁理士法人ぱるも特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木ノ内 伸一
(72)【発明者】
【氏名】原田 耕三
(72)【発明者】
【氏名】田屋 昌樹
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770AA21
5H770PA22
5H770QA06
5H770QA08
5H770QA27
(57)【要約】
【課題】複数の半導体トランジスタを並列で使用しつつ、不良となった半導体トランジスタの廃棄に起因する製造コストの増大を抑制した半導体モジュールを得ること。
【解決手段】ゲート電極、第一の電流通電用主電極、及び第二の電流通電用主電極を有した半導体トランジスタと、第一の電流通電用主電極に接合された金属ブロックと、ゲート電極に接合された金属小片と、第二の電流通電用主電極に接合されたヒートスプレッタと、これらを覆った絶縁樹脂材とを設けた個片半導体モジュールの複数と、ヒートスプレッタに接合された金属板を有した絶縁基板と、金属ブロックに接続されたソース制御用端子と、金属小片に接続されたゲート制御用端子と、複数の個片半導体モジュールの周囲を取り囲んだ筐体と、筐体に設けられた高電位側端子及び低電位側端子と、金属板と高電位側端子とを接続した中継金属と、金属ブロックと低電位側端子とを接続した金属リードとを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状に形成され、一方の面にゲート電極と第一の電流通電用主電極とを有し、他方の面に第二の電流通電用主電極を有した半導体トランジスタと、前記第一の電流通電用主電極に接合された金属ブロックと、前記ゲート電極に接合され金属小片と、板状に形成され、前記第二の電流通電用主電極に接合されたヒートスプレッタと、前記金属ブロック及び前記金属小片における前記半導体トランジスタとは反対側の面、及び前記ヒートスプレッタにおける前記半導体トランジスタとは反対側の面を露出させた状態で、前記半導体トランジスタ、前記金属ブロック、前記金属小片、及び前記ヒートスプレッタを覆った絶縁樹脂材と、を設けた個片半導体モジュールの複数と、
複数の前記個片半導体モジュールにおける前記ヒートスプレッタの露出面に接合された金属板と前記金属板における前記ヒートスプレッタの露出面とは反対側の面に接合された絶縁基板の本体部とを有した絶縁基板と、
複数の前記個片半導体モジュールの前記金属ブロックの露出面の一部が組に分けられ、各組の前記金属ブロックの露出面の一部と接続されたソース制御用端子と、
複数の前記個片半導体モジュールの前記金属小片の露出面が組に分けられ、各組の前記金属小片の露出面に接続されたゲート制御用端子と、
複数の前記個片半導体モジュールの周囲を取り囲んだ筐体と、
前記筐体に設けられ、外部と接続される高電位側端子と、
前記筐体に設けられ、外部と接続される低電位側端子と、
前記絶縁基板における前記金属板と前記高電位側端子とを接続した中継金属と、
複数の前記個片半導体モジュールの前記金属ブロックの露出面のうち前記ソース制御用端子と接続されていない部分と前記低電位側端子とを接続した金属リードと、を備えた半導体モジュール。
【請求項2】
前記金属ブロックは、前記第一の電流通電用主電極に接合された本体部分から、前記半導体トランジスタの一方側の面と間隔を空けた状態で、前記半導体トランジスタの一方側の面に沿って延出した突出部を有し、複数の前記個片半導体モジュールの前記金属ブロックは、互いに同じ形状を有し、
前記ソース制御用端子は、前記突出部の露出面に接続されている請求項1に記載の半導体モジュール。
【請求項3】
n個(nは2以上の偶数)の前記個片半導体モジュールを備え、
n個の前記個片半導体モジュールが2つずつの組に分けられ、
各組について、
2つの前記個片半導体モジュールは、前記金属ブロックの前記本体部分に対して前記ゲート電極が設けられた側が、互いに向かい合わせになるように配置され、
nが4以上の場合、向かい合った2つの前記個片半導体モジュールの間の境界部分が、直線上に並ぶように、複数の2つの前記個片半導体モジュールの組が並べて配置され、
向かい合った2つの前記個片半導体モジュールのそれぞれの前記突出部は、前記本体部分から互いに接近する側に延出し、隣接して配置されている請求項2に記載の半導体モジュール。
【請求項4】
向かい合った2つの前記個片半導体モジュールの前記突出部は、鏡面対称に形成され、
向かい合った2つの前記個片半導体モジュールの前記突出部は、隣接する組間で、鏡面対称に形成されている請求項3に記載の半導体モジュール。
【請求項5】
2つの前記個片半導体モジュールが互いに向かい合った側とは反対側の前記筐体の両側の部分の一方に前記高電位側端子及び前記低電位側端子の一方を備え、前記筐体の両側の部分の他方に前記高電位側端子及び前記低電位側端子の他方を備え、
隣接する組間で、前記筐体の両側の部分の一方に備えられた前記高電位側端子又は前記低電位側端子が相互に異なり、前記筐体の両側の部分の他方に備えられた前記高電位側端子又は前記低電位側端子が相互に異なる請求項3または4に記載の半導体モジュール。
【請求項6】
前記半導体トランジスタは、主たる材料がSiCからなる請求項1から5のいずれか1項に記載の半導体モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、半導体モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
パワーエレクトロニクスの分野においては、AC/DCコンバータ、DC―DCコンバータ、及びインバータなどの電力変換装置が用いられている。電力変換装置は、スイッチング素子である半導体トランジスタのスイッチング動作により電力を変換する半導体モジュールを備える。
【0003】
電力変換装置に使用される半導体モジュールにおいては、小型化、及び低コスト化のために、絶縁性を有した樹脂で半導体トランジスタを封止し、他の機器と電気的に接続される端子を樹脂から露出させて設けた樹脂モールド構造のモジュール化技術が使用されている。また、大電力用及び高電力密度用の半導体モジュールは1個の半導体トランジスタで回路を構成することが難しいため、一般に複数の半導体トランジスタをモジュール内において並列に接続して電流容量を増加させる技術が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1における半導体モジュールの構造では、複数の半導体トランジスタを樹脂で封止したモジュール内において並列に接続しているので、電流容量を増加させつつ、半導体装置を小型化することはできる。しかしながら、半導体モジュールの製造工程において製造工程のばらつき等で不良品が発生した場合、不良品となったモジュールは製品として出荷できないため廃棄する必要があり、複数の半導体トランジスタを搭載した半導体モジュールにおいては、1つの半導体トランジスタの不良の発生により不良ではない他の半導体トランジスタを同時に廃棄することになる。そのため、半導体モジュールの製造コストが増大するという課題があった。
【0006】
そこで、本願は、複数の半導体トランジスタを並列で使用しつつ、不良となった半導体トランジスタの廃棄に起因して発生する製造コストの増大を抑制した半導体モジュールを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願に開示される半導体モジュールは、板状に形成され、一方の面にゲート電極と第一の電流通電用主電極とを有し、他方の面に第二の電流通電用主電極を有した半導体トランジスタと、第一の電流通電用主電極に接合された金属ブロックと、ゲート電極に接合され金属小片と、板状に形成され、第二の電流通電用主電極に接合されたヒートスプレッタと、金属ブロック及び金属小片における半導体トランジスタとは反対側の面、及びヒートスプレッタにおける半導体トランジスタとは反対側の面を露出させた状態で、半導体トランジスタ、金属ブロック、金属小片、及びヒートスプレッタを覆った絶縁樹脂材と、を設けた個片半導体モジュールの複数と、複数の個片半導体モジュールにおけるヒートスプレッタの露出面に接合された金属板と金属板におけるヒートスプレッタの露出面とは反対側の面に接合された絶縁基板の本体部とを有した絶縁基板と、複数の個片半導体モジュールの金属ブロックの露出面の一部が組に分けられ、各組の金属ブロックの露出面の一部と接続されたソース制御用端子と、複数の個片半導体モジュールの金属小片の露出面が組に分けられ、各組の金属小片の露出面に接続されたゲート制御用端子と、複数の個片半導体モジュールの周囲を取り囲んだ筐体と、筐体に設けられ、外部と接続される高電位側端子と、筐体に設けられ、外部と接続される低電位側端子と、絶縁基板における金属板と高電位側端子とを接続した中継金属と、複数の個片半導体モジュールの金属ブロックの露出面のうちソース制御用端子と接続されていない部分と低電位側端子とを接続した金属リードと、を備えたものである。
【発明の効果】
【0008】
本願に開示される半導体モジュールによれば、ゲート電極、第一の電流通電用主電極、及び第二の電流通電用主電極を有した半導体トランジスタと、第一の電流通電用主電極に接合された金属ブロックと、ゲート電極に接合された金属小片と、第二の電流通電用主電極に接合されたヒートスプレッタと、これらを覆った絶縁樹脂材とを設けた個片半導体モジュールの複数と、ヒートスプレッタに接合された金属板を有した絶縁基板と、金属ブロックに接続されたソース制御用端子と、金属小片に接続されたゲート制御用端子と、複数の個片半導体モジュールの周囲を取り囲んだ筐体と、筐体に設けられた高電位側端子及び低電位側端子と、金属板と高電位側端子とを接続した中継金属と、金属ブロックと低電位側端子とを接続した金属リードとを備えたため、半導体モジュールの製造工程において製造工程のばらつき等で不良品が発生した場合、不良の個片半導体モジュールのみを除外すればよく、半導体トランジスタの除外する数を最小にできるので、複数の半導体トランジスタを並列で使用しつつ、不良となった半導体トランジスタの廃棄に起因して発生する製造コストの増大を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1に係る半導体モジュールの構成の概略を示す平面図である。
【
図2】実施の形態1に係る半導体モジュールの構成の概略を示す平面図である。
【
図3】
図1のA-A断面位置で切断した半導体モジュールの概略を示す断面図である。
【
図4】
図1のB-B断面位置で切断した半導体モジュールの概略を示す断面図である。
【
図5】
図2のC-C断面位置で切断した半導体モジュールの概略を示す断面図である。
【
図6】実施の形態1に係る個片半導体モジュールの構成の概略を示す図である。
【
図7】実施の形態1に係る個片半導体モジュールの半導体トランジスタの概略を示す図である。
【
図8】実施の形態1に係る個片半導体モジュールの金属ブロックの構成の概略を示す図である。
【
図9】実施の形態1に係る半導体モジュールの金属リードの構成の概略を示す図である。
【
図10】実施の形態1に係る半導体モジュールのゲート制御用端子の構成の概略を示す図である。
【
図11】実施の形態1に係る半導体モジュールのソース制御用端子の構成の概略を示す図である。
【
図12】実施の形態1に係る半導体モジュールの外部接続用端子の構成の概略を示す図である。
【
図13】実施の形態1に係る半導体モジュールの等価回路を示す図である。
【
図14】実施の形態1に係る半導体モジュールを駆動させる回路を示す図である。
【
図15】実施の形態1に係る半導体モジュールによるハーフブリッジ回路を示す図である。
【
図16】実施の形態1に係る半導体モジュールの等価回路を示す図である。
【
図17】実施の形態1に係る個片半導体モジュールの電気的特性を示す図である。
【
図18】実施の形態2に係る半導体モジュールの構成の概略を示す平面図である。
【
図19】実施の形態2に係る半導体モジュールの構成の概略を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本願の実施の形態による半導体モジュールを図に基づいて説明する。なお、各図において同一、または相当部材、部位については同一符号を付して説明する。
【0011】
実施の形態1.
図1は実施の形態1に係る半導体モジュール1の構成の概略を示す平面図、
図2は
図1から金属リード43を取り除いた半導体モジュール1の構成の概略を示す平面図、
図3は
図1のA-A断面位置で切断した半導体モジュール1の概略を示す断面図、
図4は
図1のB-B断面位置で切断した半導体モジュール1の概略を示す断面図、
図5は
図2のC-C断面位置で切断した半導体モジュール1の概略を示す断面図、
図6は個片半導体モジュール27の構成の概略を示す図、
図7は個片半導体モジュール27の半導体トランジスタ32の概略を示す図、
図8は個片半導体モジュール27の金属ブロック28の構成の概略を示す図、
図9は半導体モジュール1の金属リード43の構成の概略を示す図、
図10は半導体モジュール1のゲート制御用端子10の構成の概略を示す図、
図11は半導体モジュール1のソース制御用端子12の構成の概略を示す図、
図12は半導体モジュール1の外部接続用端子11の構成の概略を示す図である。半導体モジュール1は、所望の電力を直流ないしは交流電圧に変換する電力変換装置に搭載される。半導体モジュール1は、複数の個片半導体モジュール27を備える。複数の個片半導体モジュール27のそれぞれは半導体トランジスタ32を有し、半導体トランジスタ32のスイッチング動作にて半導体モジュール1は電力を変換する。
【0012】
<個片半導体モジュール27>
個片半導体モジュール27の構造を、
図6を用いて説明する。
図6(a)は個片半導体モジュール27の構成の概略を示す平面図、
図6(b)は
図6(a)のD-D断面位置で切断した個片半導体モジュール27の概略を示す断面図、
図6(c)は個片半導体モジュール27の等価回路を示す図である。個片半導体モジュール27は、半導体トランジスタ32、金属ブロック28、金属小片30、ヒートスプレッタ35、及びこれらを覆う絶縁樹脂材31を備える。
図6(a)において、半導体トランジスタ32の外形及び電極を破線で示す。個片半導体モジュール27の構成要素を順に説明する。
【0013】
スイッチング素子である半導体トランジスタ32には、MOSトランジスタ(Metal Oxide Semiconductor Transistor)が用いられる。半導体トランジスタ32はMOSトランジスタに限るものではなく、IGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ、Insulated Gate Bipolar Transistor)などの他のスイッチング素子でも構わない。板状に形成された半導体トランジスタ32の概略を示す
図7において、
図7(a)は半導体トランジスタ32の一方の面、
図7(b)は半導体トランジスタ32の他方の面、
図7(c)は半導体トランジスタ32の回路記号を示す図である。半導体トランジスタ32は、一方の面にゲート電極38と第一の電流通電用主電極であるソース電極39とを有し、他方の面に第二の電流通電用主電極であるドレイン電極40を有する。これらの電極の表面には、他の金属導体と接合するためのNiメッキ膜が設けられる。
図7(c)において、ゲート電極38は記号G、ソース電極39は記号S、ドレイン電極40は記号Dに対応する。半導体トランジスタ32は、ソース電極39とゲート電極38との間に加わる電圧により、ドレイン電極40とソース電極39との間に流れる電流が制御される。
【0014】
半導体トランジスタ32はケイ素(Si)、炭化ケイ素(SiC)、もしくは窒化ガリウム(GaN)などの半導体材料からなる半導体基板に形成され、半導体トランジスタ32にはバンドギャップがケイ素よりも広いワイドバンドギャップ半導体を用いることができる。本実施形態における半導体トランジスタ32の主たる材料は、炭化ケイ素(SiC)である。SiCからなる半導体トランジスタ32は、その材料物性に起因して、電力変換装置に使用されるデバイスとして優れている(例えば、「半導体SiC技術と応用」松波弘之、他編著、第2版、11~12ページ、表4.2.1、日刊工業新聞社、2011年)。
【0015】
電力変換装置に使用される半導体トランジスタ32の厚さは、凡そ100マイクロメータから500マイクロメータである。このように電力変換装置に使用される半導体トランジスタ32は薄く、またSiCのヌープ硬度は2400~3000と硬い(例えば、「半導体SiC技術と応用」松波弘之、他編著、第2版、110ページ、表4.2.1、日刊工業新聞社、2011年)。そのため、半導体トランジスタ32をモジュール化する製造工程における工程のばらつき等により、半導体トランジスタ32が壊れることがある。
図6(b)に示すように、半導体トランジスタ32を絶縁樹脂材31で覆う構造とすることで、半導体モジュール1を製造する工程において半導体トランジスタ32の損傷を防ぐことができる。
【0016】
金属ブロック28は、
図6(b)に示すように、半導体トランジスタ32のソース電極39にはんだ33により接合される。複数の個片半導体モジュール27の金属ブロック28は、互いに同じ形状を有する。金属ブロック28は、例えば、電気伝導度が高い銅から作製される。金属ブロック28の概略を示す
図8において、
図8(a)は金属ブロック28の平面図、
図8(b)は金属ブロック28の側面図である。
図8(b)において、金属ブロック28の下側の面はソース電極39に接合されるソース電極接合面28aである。金属ブロック28の上側の面は、絶縁樹脂材31から露出する露出面28bである。
【0017】
金属ブロック28は、ソース電極39に接合された本体部分から、半導体トランジスタ32の一方側の面と間隔を空けた状態で、半導体トランジスタ32の一方側の面に沿って延出した突出部29を有する。突出部29は露出面28bを有する。突出部29の露出面28bは、後述するソース制御用端子12に接続される部分である。突出部29を設けることで、金属ブロック28の大型化を抑制しつつ、ソース制御用端子12と金属ブロック28の本体部分との間のインピーダンスを容易に等しく構成することができる。本実施の形態では
図8(a)に示すように、突出部29は、露出面28bに垂直な方向に見て対称となる位置に2つ配置される。隣接した他の個片半導体モジュール27の突出部29との接続が容易であるように、2つの突出部29は金属ブロック28の両側の対称な位置にL字状に設けられる。金属ブロック28は生産性を向上させるために同じ形状で作製しているが、他の個片半導体モジュール27が隣接しない場合などは突出部29が一つであっても構わない。
【0018】
金属小片30は、
図6(b)に示すように、半導体トランジスタ32のゲート電極38にはんだ36により接合される。複数の個片半導体モジュール27の金属小片30は、互いに同じ形状を有する。金属小片30の形状は、例えば直方体であるが、円柱など他の形状でも構わない。金属小片30は、例えば、電気伝導度が高い銅から作製される。金属小片30における半導体トランジスタ32とは反対側の面は、絶縁樹脂材31から露出する露出面30aである。
【0019】
ヒートスプレッタ35は、板状に形成され、半導体トランジスタ32のドレイン電極40にはんだ34により接合される。複数の個片半導体モジュール27のヒートスプレッタ35は、互いに同じ形状を有する。ヒートスプレッタ35の形状は、例えば矩形であるが、他の形状でも構わない。ヒートスプレッタ35は、例えば、電気伝導度が高い銅から作製される。ヒートスプレッタ35における半導体トランジスタ32とは反対側の面は、絶縁樹脂材31から露出する露出面35aである。
【0020】
絶縁樹脂材31は、金属ブロック28及び金属小片30における半導体トランジスタ32とは反対側の面、及びヒートスプレッタ35における半導体トランジスタ32とは反対側の面を露出させた状態で、半導体トランジスタ32、金属ブロック28、金属小片30、及びヒートスプレッタ35を覆う。個片半導体モジュール27は絶縁樹脂材31によって覆われているため、取り扱いが容易である。個片半導体モジュール27の寸法は、例えば、縦と横が10mm、高さが4mm程度であるがこの寸法に限るものではない。
【0021】
本実施形態では、半導体トランジスタ32にSiCからなるトランジスタを使用している。SiCからなる半導体トランジスタは薄く、硬度が高いためモジュール化する製造工程において製造工程のばらつき等の影響を受けやすい。個片半導体モジュール27において半導体トランジスタ32を絶縁樹脂材31で覆う構造とすれば、半導体モジュール1を製造する工程において半導体トランジスタ32の損傷を容易に防ぐことができる。
【0022】
図6(c)に示した等価回路は、
図7(c)に示した半導体トランジスタ32の回路記号と対応させている。
図7(c)のソース電極Sは半導体トランジスタ32のソース電極39に接合された金属ブロック28、ドレイン電極Dはドレイン電極40に接合されたヒートスプレッタ35、ゲート電極Gはゲート電極38に接合された金属小片30が対応する。金属ブロック28、金属小片30、及びヒートスプレッタ35は電気伝導度が高い銅材からなり、かつ半導体トランジスタ32とはんだにより接合されるため、個片半導体モジュール27の電気的な機能は半導体トランジスタ32と同一である。
【0023】
<半導体モジュール1>
半導体モジュール1は、複数の個片半導体モジュール27、絶縁基板13、ゲート制御用端子10、ソース制御用端子12、外部接続用端子11、中継金属である中継銅板81、金属リード43、及び複数の個片半導体モジュール27の周囲を取り囲み、絶縁基板13と接合された筐体23を備える。筐体23は樹脂材で作製される。本実施の形態では、
図2に示すように、半導体モジュール1は4つの個片半導体モジュール27(第1の個片半導体モジュール2、第2の個片半導体モジュール3、第3の個片半導体モジュール4、第4の個片半導体モジュール5)を備える。4つの個片半導体モジュール27は、互いに同じ形状を有する。個片半導体モジュール27の数は4つに限るものではない。
【0024】
個片半導体モジュール27の配置について説明する。半導体モジュール1は、n個(nは2以上の偶数)の個片半導体モジュール27を備える。n個の個片半導体モジュール27が2つずつの組に分けられる。各組について、2つの個片半導体モジュール27は、金属ブロック28の本体部分に対してゲート電極38が設けられた側が互いに向かい合わせになるように配置される。nが4以上の場合、向かい合った2つの個片半導体モジュール27の間の境界部分が、直線上に並ぶように、複数の2つの個片半導体モジュール27の組が並べて配置される。向かい合った2つの個片半導体モジュール27のそれぞれの突出部29は、本体部分から互いに接近する側に延出し、隣接して配置されている。
【0025】
図2を用いて、nが4の場合の個片半導体モジュール27の配置について説明する。個片半導体モジュール27は、2つの組に分けられる。2つの組とは、第1の個片半導体モジュール2と第4の個片半導体モジュール5の組、第2の個片半導体モジュール3と第3の個片半導体モジュール4の組である。第1の個片半導体モジュール2と第4の個片半導体モジュール5のそれぞれのゲート電極38が設けられた側が互いに向かい合わせになるように配置され、第2の個片半導体モジュール3と第3の個片半導体モジュール4のそれぞれのゲート電極38が設けられた側が互いに向かい合わせになるように配置される。向かい合った2つの個片半導体モジュール27の間の境界部分は、第1の鏡面対称面24になる。この境界部分が直線上に並ぶように、個片半導体モジュール27の2つの組が並べて配置される。第1の個片半導体モジュール2と第2の個片半導体モジュール3は、第1の鏡面対称面24に対して第3の個片半導体モジュール4と第4の個片半導体モジュール5と対称に配置される。また、nが4であるため、第1の個片半導体モジュール2と第4の個片半導体モジュール5は、第2の鏡面対称面25に対して第2の個片半導体モジュール3と第3の個片半導体モジュール4と対称に配置される。
【0026】
このように構成することで、複数の個片半導体モジュール27を設けた場合でもそれぞれの突出部29の長さを大きく伸長させることなく、突出部29を互いに隣接させて配置できるので、ソース制御用端子12と金属ブロック28の本体部分との間のインピーダンスを容易に等しく低インピーダンスで構成することができる。なおnが6の場合、
図2において、第1の個片半導体モジュール2と第4の個片半導体モジュール5の組の上側、もしくは第2の個片半導体モジュール3と第3の個片半導体モジュール4の下側にもう1組の個片半導体モジュール27が配置される。
【0027】
個片半導体モジュール27以外の半導体モジュール1の構成要素を順に説明する。絶縁基板13は、複数の個片半導体モジュール27におけるヒートスプレッタ35の露出面35aに接合された金属板14と、金属板14におけるヒートスプレッタ35の露出面35aとは反対側の面に接合された絶縁基板13の本体部とを有する。金属板14は例えば銅板であり、絶縁基板13の本体部は例えばセラミック絶縁基板である。この場合、絶縁基板13は銅貼り絶縁基板である。金属板14は、絶縁基板13の本体部の両側の面に設けても構わない。金属板14とヒートスプレッタ35の露出面35aとははんだにより接続される。複数の個片半導体モジュール27が1枚の絶縁基板13に配置されるため、複数の個片半導体モジュール27は同一平面上に並べて配置される。
【0028】
ゲート制御用端子10は、単数の場合と複数設けられる場合がある。ゲート制御用端子10の概略を示す
図10において、
図10(a)はゲート制御用端子10の平面図、
図10(b)はゲート制御用端子10の側面図である。複数の個片半導体モジュール27の金属小片30の露出面30aが組に分けられ、ゲート制御用端子10は各組の金属小片30の露出面30aに接続される。ゲート制御用端子10は、円柱部10a及び板状部10bを備える。円柱部10aは、外部の制御回路と接続される部分である。板状部10bは、底部の接続部10cにおいて個片半導体モジュール27の金属小片30の露出面30aとはんだにより接続される。ゲート制御用端子10は、例えば、電気伝導度が高い銅から作製される。本実施の形態では、ゲート制御用端子10は2つ設けられる。一方のゲート制御用端子10は、第1の個片半導体モジュール2の金属小片30及び第4の個片半導体モジュール5の金属小片30と接続される。他方のゲート制御用端子10は、第2の個片半導体モジュール3の金属小片30及び第3の個片半導体モジュール4の金属小片30と接続される。
【0029】
ソース制御用端子12は、単数の場合と複数設けられる場合がある。ソース制御用端子12の概略を示す
図11において、
図11(a)はソース制御用端子12の平面図、
図11(b)はソース制御用端子12の側面図である。複数の個片半導体モジュール27の金属ブロック28の露出面28bの一部が組に分けられ、ソース制御用端子12は各組の金属ブロック28の露出面28bの一部に接続される。本実施の形態では、金属ブロック28は突出部29を有するため、ソース制御用端子12が接続される露出面28bの部分は突出部29である。ソース制御用端子12は、円柱部12a及び板状部12bを備える。円柱部12aは、外部の制御回路と接続される部分である。板状部12bは、底部の接続部12cにおいて金属ブロック28の突出部29の露出面28bとはんだにより接続される。ソース制御用端子12は、例えば、電気伝導度が高い銅から作製される。
【0030】
本実施の形態では、ソース制御用端子12は1つ設けられる。ソース制御用端子12は、第1の個片半導体モジュール2の金属ブロック6の突出部29、第2の個片半導体モジュール3の金属ブロック7の突出部29、第3の個片半導体モジュール4の金属ブロック8の突出部29、及び第4の個片半導体モジュール5の金属ブロック9の突出部29と接続される。さらに個片半導体モジュール27の組が配置された場合、複数のソース制御用端子12が設けられる。
【0031】
本実施の形態では、向かい合った2つの個片半導体モジュール27の突出部29は鏡面対称に形成され、向かい合った2つの個片半導体モジュール27の突出部29は隣接する組間でも鏡面対称に形成されている。ソース制御用端子12に接続される4つの突出部29は、第1の鏡面対称面24に対して鏡面対称であり、第2の鏡面対称面25に対して鏡面対称である。また、突出部29は、ソース制御用端子12と接続される部分において最近接する構造になっている。ソース制御用端子12を中心に、4つの個片半導体モジュール27は高い対称性を有している。このように構成することで、ソース制御用端子12と金属ブロック28の本体部分との間のインピーダンスをさらに容易に等しく低インピーダンスで構成することができる。また、ソース制御用端子12の数を減らすことができるので、半導体モジュール1の生産性を向上させることができる。
【0032】
外部接続用端子11は2つ設けられ、2つの外部接続用端子11はP端子17とN端子15である。P端子17とN端子15は同じ形状である。P端子17は、筐体23に埋め込まれて設けられ、外部と接続される高電位側端子である。N端子15は、筐体23に埋め込まれて設けられ、外部と接続される低電位側端子である。外部接続用端子11の概略を示す
図12において、
図12(a)は外部接続用端子11の側面図、
図12(b)は外部接続用端子11の別の側面図である。
図12においてハッチングされた部分は、筐体23に埋め込まれる封止部11aである。外部接続用端子11の外部接続部11bは、外部と接続される部分である。外部接続用端子11の内部接続部11cは半導体モジュール1の構成要素と接続される部分である。P端子17の内部接続部11cは中継銅板81とはんだにより接続され、N端子15の内部接続部11cは金属リード43とはんだにより接続される。外部接続用端子11は、例えば、電気伝導度が高い銅から作製される。
【0033】
中継銅板81は、
図4に示すように、絶縁基板13における金属板14とP端子17とを接続する。中継銅板81と金属板14とは、はんだにより接続される。中継銅板81とP端子17の内部接続部11cとの接続ははんだによらず、レーザ溶接による接続でも構わない。中継銅板81は、例えば、電気伝導度が高い銅から作製される。
図4に示した中継銅板81は銅板から作製されているが、中継銅板81はハーネス状であっても構わない。
【0034】
金属リード43は、複数の個片半導体モジュール27の金属ブロック28の露出面28bのうちソース制御用端子12と接続されていない部分、及びN端子15の内部接続部11cと接続される。本実施の形態における金属リード43は、第1の個片半導体モジュール2の金属ブロック6、第2の個片半導体モジュール3の金属ブロック7、第3の個片半導体モジュール4の金属ブロック8、及び第4の個片半導体モジュール5の金属ブロック9のそれぞれの露出面28bとはんだにより接続される。N端子15の内部接続部11cとは、金属リード43の延出部43aにおいてはんだにより接続される。金属リード43は、
図9に示すように、1つの貫通孔43bと2つの貫通孔43cとを有する。貫通孔43bは、ソース制御用端子12が貫通して、ソース制御用端子12を外部の制御回路と接続するために使用される。貫通孔43cは、ゲート制御用端子10が貫通して、ゲート制御用端子10を外部の制御回路と接続するために使用される。
【0035】
半導体モジュール1は、例えば
図3に示すように、筐体23と内部の構成要素との間に隙間部分を有する。半導体モジュール1は、この隙間部分に充填する絶縁性のゲルを備える構成としても構わない。絶縁性のゲルを備えることで、筐体23の内部に露出した金属導体間の絶縁性を高めることができる。
【0036】
このように半導体モジュール1を複数の個片半導体モジュール27から構成することで、半導体モジュールの製造工程において製造工程のばらつき等で不良品が発生した場合、不良の個片半導体モジュール27のみを除外すればよく、半導体モジュール1の作製に使用する半導体トランジスタ32の除外する数を最小にすることができるので、複数の半導体トランジスタ32を並列で使用しつつ、不良となった半導体トランジスタ32の廃棄に起因して発生する製造コストの増大を抑制することができる。また、絶縁樹脂材31で覆われた個片半導体モジュール27は取り扱いが容易であるため、個片半導体モジュール27を使用して半導体モジュール1を組み立てる工程における不良品の発生は少ないので、半導体モジュール1の製造コストの増大を抑制することができる。
【0037】
<半導体モジュール1の等価回路>
半導体モジュール1の等価回路について説明する。
図13は実施の形態1に係る半導体モジュール1の等価回路を示す図、
図14は半導体モジュール1を駆動させる回路を示す図、
図15は半導体モジュール1によるハーフブリッジ回路を示す図、
図16は半導体モジュール1の等価回路を示す別の図で、
図13にソース側の回路の寄生インピーダンスを追加した図、
図17は個片半導体モジュール27の電気的特性を示す図である。
図13には、半導体モジュール1の構成要素の符号も付している。
【0038】
第1の個片半導体モジュール2、第4の個片半導体モジュール5、第2の個片半導体モジュール3、及び第3の個片半導体モジュール4のドレイン側は、絶縁基板13の金属板14により並列に接続される。金属板14は中継銅板81を介してP端子17に接続される。第1の個片半導体モジュール2、第4の個片半導体モジュール5、第2の個片半導体モジュール3、及び第3の個片半導体モジュール4のソース側は、金属リード43によって並列に接続される。金属リード43はN端子15に接続される。第1の個片半導体モジュール2及び第4の個片半導体モジュール5のゲートは金属小片30を介してゲート制御用端子10で並列に接続され、第2の個片半導体モジュール3と第3の個片半導体モジュール4のゲートは金属小片30を介してもう一つのゲート制御用端子10で並列に接続される。第1の個片半導体モジュール2の金属ブロック6、第2の個片半導体モジュール3の金属ブロック7、第3の個片半導体モジュール4の金属ブロック8、及び第4の個片半導体モジュール5の金属ブロック9のそれぞれの突出部29は、ソース制御用端子12によって並列に接続される。
【0039】
図13に示した半導体モジュール1の等価回路の構成では、4つの個片半導体モジュールのそれぞれが備えた半導体トランジスタ32を1つの半導体スイッチング素子として機能するものと見做すことができる。例えば、
図14に示すように、模式的に示した外部制御装置90と、ゲート制御用端子10及びソース制御用端子12とを接続して半導体モジュール1を駆動すれば、単独の半導体トランジスタと同様な動作を半導体モジュール1にさせることができる。さらに
図15に示すように、本実施の形態の半導体モジュール1と同じ構造をなす半導体モジュール1aのP端子17aと半導体モジュール1のN端子15とを電気的に接続すれば、出力端子91とするハーフブリッジ回路を作製できる。半導体モジュール1aは半導体モジュール1と同様に、ゲート制御用端子10d、ソース制御用端子12d、及びN端子15aを有する。ハーフブリッジ回路は電力変換装置の基本回路であり、本実施形態の半導体モジュール1を使用すれば、電力変換装置の基本回路を容易に形成することができる。
【0040】
本実施の形態では、ソース制御用端子12を中心に個片半導体モジュール27のそれぞれは高い対称性を有し、金属ブロック28の突出部29が最近接する構造となっている。そのため、制御用電気接続配線のインピーダンスが等価になるため、個片半導体モジュール27のそれぞれに流れる電流を均一化できる。この理由を、
図16、
図17を用いて説明する。
図16の等価回路には、個片半導体モジュール27の半導体トランジスタ32のソース電極から半導体モジュール1のソース制御用端子12までの寄生インピーダンスを示している。
【0041】
図17は、個片半導体モジュール27が備えた半導体トランジスタ32のゲートとソース間の電圧VGSとドレインとソース間を流れるドレイン電流IDの電気的特性を示す図である。
図17の電気的特性は、一般的に半導体トランジスタの伝達特性と呼ばれる。電圧VGSが閾値電圧VTHを超えて大きくなると、急激にドレイン電流IDが増大する。例えば、ID=gm・(VGS-VTH)
2となり、IDがVGSの2次関数として増大することが知られている(「半導体デバイスの基礎 中」B.L.アンダーソン、他著、514ページ、式(7.39)、シュプリンガー・ジャパン、2008年)。ここでgmはVGSに依存しない係数である。
【0042】
第1の個片半導体モジュール2が有した第1の半導体トランジスタ44のソース電極からソース制御用端子12の制御回路との接続部までのインピーダンスは、金属ブロック6の本体部分のインピーダンス48と金属ブロック6の本体部分から突出部29を介して接続部に至るインピーダンス49の和となる。第4の個片半導体モジュール5が有した第4の半導体トランジスタ45のソース電極からソース制御用端子12の制御回路との接続部までのインピーダンスは、金属ブロック9の本体部分のインピーダンス50と金属ブロック9の本体部分から突出部29を介して接続部に至るインピーダンス51の和となる。第2の個片半導体モジュール3が有した第2の半導体トランジスタ46のソース電極からソース制御用端子12の制御回路との接続部までのインピーダンスは、金属ブロック7の本体部分のインピーダンス52と金属ブロック7の本体部分から突出部29を介して接続部に至るインピーダンス53の和となる。第3の個片半導体モジュール4が有した第3の半導体トランジスタ47のソース電極からソース制御用端子12の制御回路との接続部までのインピーダンスは、金属ブロック8の本体部分のインピーダンス54と金属ブロック8の本体部分から突出部29を介して接続部に至るインピーダンス55の和となる。
【0043】
図17に示したように、半導体トランジスタの伝達特性はゲートとソース間の電圧VGSに大きく依存する。半導体トランジスタを駆動する制御回路は、制御回路と接続されたソース制御用端子12の接続部を基準電位として駆動するため、各半導体トランジスタのソース電極から制御回路とのソース制御用端子12の接続部までの電流経路においてインピーダンスに差があると、各半導体トランジスタのドレイン電流IDに不均一になる。
【0044】
本実施の形態の半導体モジュール1において、個片半導体モジュール27の金属ブロック28は同一の構造を有しているため、金属ブロック28のそれぞれの本体部分のインピーダンス48、50、52、54は等しい。また、金属ブロック28の突出部29は同一の構造で、突出部29はそれぞれ互いに向き合った鏡面対称で最近接配置される構造を有し、それぞれの突出部29を1つのソース制御用端子12で接続する構造を備えているため、それぞれの金属ブロック28の本体部分から突出部29を介して接続部に至るインピーダンス49、51、53、55は等しくなる。そのため、上述したそれぞれのインピーダンスの和も等しくなる。よって、本実施の形態の半導体モジュール1においては、制御用電気接続配線のインピーダンスが等価となり、各半導体トランジスタに流れる電流を均一化できる。
【0045】
以上のように、実施の形態1による半導体モジュール1において、ゲート電極38、ソース電極39、及びドレイン電極40を有した半導体トランジスタ32と、ソース電極39に接合された金属ブロック28と、ゲート電極38に接合された金属小片30と、ドレイン電極40に接合されたヒートスプレッタ35と、これらを覆った絶縁樹脂材31とを設けた個片半導体モジュール27の複数と、ヒートスプレッタ35に接合された金属板14を有した絶縁基板13と、金属ブロック28に接続されたソース制御用端子12と、金属小片30に接続されたゲート制御用端子10と、複数の個片半導体モジュール27の周囲を取り囲んだ筐体23と、筐体23に設けられたP端子17及びN端子15と、金属板14とP端子17とを接続した中継銅板81と、金属ブロック28とN端子15とを接続した金属リード43とを備えたため、半導体モジュールの製造工程において製造工程のばらつき等で不良品が発生した場合、不良の個片半導体モジュール27のみを除外すればよく、半導体トランジスタ32の除外する数を最小にできるので、複数の半導体トランジスタ32を並列で使用しつつ、不良となった半導体トランジスタ32の廃棄に起因して発生する製造コストの増大を抑制することができる。また、絶縁樹脂材31で覆われた個片半導体モジュール27は取り扱いが容易であるため、個片半導体モジュール27を使用して半導体モジュール1を組み立てる工程における不良品の発生は少ないので、半導体モジュール1の製造コストの増大を抑制することができる。
【0046】
金属ブロック28は、半導体トランジスタ32のソース電極39に接合された本体部分から、半導体トランジスタ32の一方側の面と間隔を空けた状態で、半導体トランジスタ32の一方側の面に沿って延出した突出部29を有し、複数の個片半導体モジュール27の金属ブロック28は互いに同じ形状を有し、ソース制御用端子12は突出部29の露出面28bに接続されている場合、金属ブロック28の大型化を抑制しつつ、ソース制御用端子12と金属ブロック28の本体部分との間のインピーダンスを容易に等しく構成することができる。また、ソース制御用端子12に近接して突出部29を配置することができる。
【0047】
n個(nは2以上の偶数)の個片半導体モジュール27を備え、n個の個片半導体モジュール27が2つずつの組に分けられ、各組について、2つの個片半導体モジュール27は、金属ブロック28の本体部分に対してゲート電極38が設けられた側が互いに向かい合わせになるように配置され、nが4以上の場合、向かい合った2つの個片半導体モジュール27の間の境界部分が、直線上に並ぶように、複数の2つの個片半導体モジュール27の組が並べて配置され、向かい合った2つの個片半導体モジュール27のそれぞれの突出部29は、本体部分から互いに接近する側に延出し、隣接して配置されている場合、複数の個片半導体モジュール27を設けた場合でも突出部29の長さを大きく伸長させることなく、突出部29を互いに隣接させて配置できるので、ソース制御用端子12と金属ブロック28の本体部分との間のインピーダンスを容易に等しく低インピーダンスで構成することができる。
【0048】
向かい合った2つの個片半導体モジュール27の突出部29は鏡面対称に形成され、向かい合った2つの個片半導体モジュール27の突出部29は隣接する組間で鏡面対称に形成されている場合、突出部29がソース制御用端子12と接続される部分において最近接する構造なので、ソース制御用端子12と金属ブロック28との間のインピーダンスをさらに容易に等しく低インピーダンスで構成することができる。また、半導体トランジスタ32の主たる材料がSiCからなる場合、半導体モジュール1の電気的特性を容易に向上させることができる。
【0049】
実施の形態2.
実施の形態2に係る半導体モジュール1について説明する。
図18は実施の形態2に係る半導体モジュール1の構成の概略を示す平面図、
図19は半導体モジュール1の構成の概略を示す平面図で、2つの半導体モジュール1a、1bの接続例を示す図ある。実施の形態2に係る半導体モジュール1は、外部接続用端子11の数と配置が実施の形態1とは異なる構成になっている。
【0050】
2つの個片半導体モジュール27が互いに向かい合った側とは反対側の筐体23の両側の部分の一方にP端子17及びN端子15の一方を備え、筐体23の両側の部分の他方にP端子17及びN端子15の他方を備える。隣接する組間で、筐体23の両側の部分の一方に備えられたP端子17又はN端子15が相互に異なり、筐体23の両側の部分の他方に備えられたP端子17又はN端子15が相互に異なる。
【0051】
図18に示した半導体モジュール1の例について説明する。半導体モジュール1は、4つの個片半導体モジュール27を備える。
図14において上側の2つの個片半導体モジュール27が互いに向かい合った側とは反対側の筐体23の両側の部分の一方にN端子15を備え、筐体23の両側の部分の他方にP端子17を備える。隣接する下側の2つの個片半導体モジュール27の組では、筐体23の両側の部分の一方にN端子15とは異なるP端子17を備え、筐体23の両側の部分の他方にP端子17とは異なるN端子15を備える。金属リード43は、4つの個片半導体モジュール27の金属ブロック28のそれぞれの露出面28bとはんだにより接続される。金属リード43は2つの延出部43aを有し、2つの延出部43aのそれぞれは筐体23の両側に配置されたN端子15とはんだにより接続される。P端子17及びN端子15が筐体23の両側の部分に設けられているため、筐体23の何れの側にP端子17及びN端子15と接続される外部の機器が配置された場合でも、P端子17及びN端子15と外部の機器とを容易に接続することができる。
【0052】
図19では、
図18に示した半導体モジュール1を2つ並べて配置している。一方の半導体モジュール1を半導体モジュール1a、他方を半導体モジュール1bとする。隣接する半導体モジュール1aのP端子17と、半導体モジュール1bのN端子15とを接続導体バー67で接続することができる。接続導体バー67は、例えば、電気伝導度が高い銅から板状に作製される。接続導体バー67で接続することで、半導体モジュール1aと半導体モジュール1bとから容易にハーフブリッジ回路を形成することができる。
【0053】
以上のように、実施の形態2による半導体モジュール1において、2つの個片半導体モジュール27が互いに向かい合った側とは反対側の筐体23の両側の部分の一方にP端子17及びN端子15の一方を備え、筐体23の両側の部分の他方にP端子17及びN端子15の他方を備え、隣接する組間で筐体23の両側の部分の一方に備えられたP端子17又はN端子15が相互に異なり、筐体23の両側の部分の他方に備えられたP端子17又はN端子15が相互に異なるため、筐体23のどちら側にP端子17及びN端子15と接続される外部の機器が配置されてもP端子17及びN端子15と外部の機器とを容易に接続することができる。また、半導体モジュール1を2つ並べて配置した場合、2つの半導体モジュール1から容易にハーフブリッジ回路を形成することができる。
【0054】
また本願は、様々な例示的な実施の形態及び実施例が記載されているが、1つ、または複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、及び機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。
従って、例示されていない無数の変形例が、本願明細書に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
【符号の説明】
【0055】
1 半導体モジュール、2 第1の個片半導体モジュール、3 第2の個片半導体モジュール、4 第3の個片半導体モジュール、5 第4の個片半導体モジュール、10 ゲート制御用端子、10a 円柱部、10b 板状部、10c 接続部、11 外部接続用端子、11a 封止部、11b 外部接続部、11c 内部接続部、12 ソース制御用端子、12a 円柱部、12b 板状部、12c 接続部、13 絶縁基板、14 金属板、15 N端子、17 P端子、23 筐体、24 第1の鏡面対称面、25 第2の鏡面対称面、27 個片半導体モジュール、28 金属ブロック、28a ソース電極接合面、28b 露出面、29 突出部、30 金属小片、30a 露出面、31 絶縁樹脂材、32 半導体トランジスタ、33 はんだ、34 はんだ、35 ヒートスプレッタ、35a 露出面、36 はんだ、38 ゲート電極、39 ソース電極、40 ドレイン電極、43 金属リード、43a 延出部、43b 貫通孔、43c 貫通孔、67 接続導体バー、81 中継銅板、90 外部制御装置、91 出力端子