(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022176448
(43)【公開日】2022-11-30
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20221122BHJP
【FI】
H02M7/48 M
H02M7/48 Z
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021082890
(22)【出願日】2021-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002941
【氏名又は名称】弁理士法人ぱるも特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三宅 徹
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770BA02
5H770CA06
5H770DA03
5H770DA41
5H770EA01
5H770HA02Y
5H770HA03X
5H770HA06X
5H770HA06Z
5H770HA07Z
5H770JA10X
5H770KA01W
5H770LA04X
5H770LB09
5H770PA11
5H770PA42
(57)【要約】
【課題】半導体スイッチング素子が破壊温度に達して破壊されることを防ぎつつ、駆動の継続を実現する電力変換装置を得る。
【解決手段】半導体スイッチング素子(311、312、313、314、315、316)の温度を検出する温度センサ(7)と、温度センサ(7)が検出した温度検出値に基づいて演算した温度上昇率と予め定められた第1の閾値とを比較して、温度上昇率が第1の閾値を超えたことを判定する温度上昇率判定部(911)とを備え、温度上昇率判定部(911)により、温度上昇率が第1の閾値を超えたことが判定されたとき、電力変換部(3)の出力を抑制する保護動作を実行するように構成された電力変換装置。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体スイッチング素子により構成された電力変換部と、前記半導体スイッチング素子を冷却する冷却器と、前記半導体スイッチング素子のスイッチングを制御する制御装置と、を備えた電力変換装置であって、
前記半導体スイッチング素子の温度を検出する温度センサと、
前記温度センサが検出した温度検出値に基づいて演算した温度上昇率と、予め定められた第1の閾値とを比較し、前記温度上昇率が前記第1の閾値を超えたことを判定する温度上昇率判定部と、
を備え、
前記温度上昇率判定部により、前記温度上昇率が前記第1の閾値を超えたことが判定されたとき、前記電力変換部の出力を抑制する保護動作を実行するように構成されている、
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
前記第1の閾値は、少なくとも、前記電力変換部若しくは前記冷却器の異常時、又は前記電力変換部の過出力時に、前記温度上昇率が達する値以上の値に設定されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記第1の閾値は、前記温度上昇率が前記第1の閾値を超えてから予め定められた時間以上に、前記電力変換部が動作できるように設定されている、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記電力変換部の出力状態に基づいて、前記第1の閾値を変動させるように構成されている、
ことを特徴とする請求項1から3のうちの何れか一項に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記電力変換部の出力が比較的低いときは、前記第1の閾値の値を比較的低く設定し、前記電力変換部の出力が比較的高いときは、前記第1の閾値の値を比較的高く設定する、ように構成されている、
ことを特徴とする請求項4に記載の電力変換装置
【請求項6】
前記半導体スイッチング素子に流れる電流を測定する電流検出器と、半導体スイッチング素子に印加される電圧を測定する電圧検出器とを備え、
前記出力状態は、
前記電流検出器の検出値、前記電圧検出器の検出値、前記電力変換部の出力を指令する指令値と、の少なくとも一つ用いて演算される、
ことを特徴とする請求項4又は5に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記温度上昇率が前記第1の閾値を超えた後、前記電力変換部の出力を抑制する保護動作を実行するように構成されている、
ことを特徴とする請求項1から6のうちの何れか一項に記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記電力変換部の出力を抑制する保護動作を実行してから、前記温度上昇率が前記第1の閾値より低くなっても、前記電力変換部の出力を抑制する前記保護動作を継続するように構成されている、
ことを特徴とする請求項1から7のうちの何れか一項に記載の電力変換装置。
【請求項9】
前記制御装置は、
前記温度センサの温度検出値と予め定められた第2の閾値とを比較し、前記温度検出値が前記第2の閾値を超えたことを判定する温度上昇判定部を備え、
前記温度上昇率判定部と前記温度上昇率判定部との少なくとも一方が、前記判定をしたとき、電力変換部の出力を抑制する保護動作を実行するように構成されている、
ことを特徴とする請求項1から8のうちの何れか一項に記載の電力変換装置。
【請求項10】
前記第2の閾値は、少なくとも、前記電力変換部の異常時又は過出力時に達する前記温度検出値以上の値に設定されている、
ことを特徴とする請求項9に記載の電力変換装置。
【請求項11】
前記第1の閾値は、前記温度センサの温度検出値が前記第2の閾値を超えてから、予め定められた時間前記電力変換部が動作できる値に設定されている、
ように設定することを特徴とする
請求項9又は10に記載の電力変換装置。
【請求項12】
前記温度上昇率判定部又は前記温度上昇判定部のうちの少なくとも一方が、前記判定をした後、前記電力変換部の出力を抑制する保護動作を実行するように構成されている、
ことを特徴とする請求項9から11のうちの何れか一項に記載の電力変換装置。
【請求項13】
前記出力を抑制する保護動作を実行して後、前記温度上昇率が前記第1の閾値より低下する状態と、前記温度検出値が前記第2の閾値より低下する状態と、のうちの少なくとも一方の状態になっても、前記電力変換部の出力を抑制する保護動作を継続するように構成されている、
ことを特徴とする請求項9から12のうちの何れか一項に記載の電力変換装置。
【請求項14】
電力変換部の出力を抑制する保護動作を実行してから、予め定められた時間の後に前記電力変換部の出力を停止するように構成されている、
ことを特徴とする請求項1から13のうちの何れか一項に記載の電力変換装置。
【請求項15】
前記制御装置は、
予め定められた第3の閾値と前記温度検出値と比較し、前記出力を抑制する保護動作を実行してから、前記温度検出値が前記第3の閾値を超えたとき、前記電力変換部の出力を停止させる出力停止判定部を備えている、
することを特徴とする請求項1から14のうちの何れか一項に記載の電力変換装置。
【請求項16】
前記電力変換部の一つのアームを構成する前記半導体スイッチング素子は、複数の半導体スイッチング素子が並列に接続されて構成されており、
前記温度センサは、全ての半導体スイッチング素子の温度の平均値を検出するように構成されている、
ことを特徴とする請求項1から15のうちの何れか一項に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、電力変換装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電力の出力形態を変換する電力変換装置としては、交流電力を直流電力へ変換するAC/DCコンバータ(Alternate Current/Direct Current CONVERTER)、直流電力から交流電力へ変換するインバータ(Inverter)、入力電圧と入力電流のレベルを変化させるDC/DCコンバータ、等が一般的である。これらの電力変換装置は、半導体スイッチング素子を備えた構成であることが多い。
【0003】
半導体スイッチング素子には、一方向のみに電流を流すダイオード、大電流を扱うことに適したサイリスタ、高いスイッチング周波数で動作可能なパワー半導体スイッチング素子としてのパワートランジスタがある。半導体スイッチング素子のうち、特に、パワートランジスタは、自動車、冷蔵庫、エアーコンディショナー等の幅広い分野に用いられている。パワートランジスタの中には、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、MOS-FET(Metal-Oxide―Semiconductor Field―Effect Transistor)が属しており、これらのパワートランジスタは様々な用途により使い分けられている。
【0004】
半導体スイッチング素子の材料として、近年、炭化ケイ素(SiC:Silicon Carbide)、窒化ガリウム(GaN:Gallium Nitride)が注目されている。これらの材料により形成された半導体スイッチング素子は、従来のシリコン(Si:Silicon)を用いた半導体スイッチング素子に比べ、オン状態における半導体スイッチング素子の抵抗値が低く、電力損失を低減することができる。また、電子飽和速度が高く、オンおよびオフの状態の切り替えが素早く、電力損失を低減することができる。
【0005】
シリコンと比較し、炭化ケイ素若しくは窒化ガリウムを用いた半導体スイッチング素子は、より高温の環境下で駆動することが可能である。しかしながら、半導体スイッチング素子の動作限界温度が定まっており、この動作限界温度を超えてもなお駆動し続けると、半導体スイッチング素子が破損する可能性がある。
【0006】
半導体スイッチング素子の温度は、半導体スイッチング素子における電力損失が増加する駆動、すなわち、電力変換装置が大電力を出力する場合、スイッチング周波数を高めて駆動する場合、などで上昇する。
【0007】
また、半導体スイッチング素子の温度は、電力変換装置が配置される環境にも依存する。電力変換装置は、半導体スイッチング素子等の発熱体を冷却する冷却器を備えているが、電力変換装置が配置される環境によっては、冷却器の冷却媒体の温度が高くなる。そのため、半導体スイッチング素子の温度がより一層上昇する。特に、冷却器に冷却媒体を流入する装置の故障等により、冷却媒体の流入が停止すると、冷却器から熱を放出できなくなり、半導体スイッチング素子等の温度が急激に上昇し続けることがある。
【0008】
この場合、電力変換装置を停止させることで、半導体スイッチング素子の温度、および冷却媒体の温度を冷やすことは可能である。しかしながら、例えば、自動車に搭載されている電動パワーステアリング装置に用いられている電力変換装置は、自動車の操舵をアシストするモータを制御しており、電力変換装置を自動車の運転中に停止させることができず、半導体スイッチング素子が高温状態であっても、半導体スイッチング素子を破損させずに電力変換装置を駆動させ続ける必要がある。
【0009】
以上述べたように、電力変換装置の駆動条件、配置環境、等により、半導体スイッチング素子が破損する温度(以下、動作限界温度と称する)まで上昇する可能性がある。したがって、半導体スイッチング素子が動作限界温度に達することを防ぎ、電力変換装置を駆動させ続けるためには、電力変換装置を適正な駆動条件、配置環境で駆動させる必要がある。特に、電力変換装置を構成する半導体スイッチング素子の配置環境において、冷却器に流れる冷却媒体の流入が停止した場合又は冷却媒体が消失した場合である異常状態を短時間に識別し、電力変換装置の駆動条件を変更して制御することで、半導体スイッング素子が破壊温度に達することを回避する必要がある。
【0010】
従来、電力変換装置における半導体スイッチング素子の配置環境に関連し、冷却器に流れる冷却媒体の流入が停止することで、半導体スイッチング素子等の温度が一定の温度上昇率で急激に上昇し続け、半導体スイッチング素子の動作限界温度に達する可能性がある場合に、冷却器に流れる冷却媒体の温度を監視し、その温度の異常時に電力変換装置の駆動条件を制御して半導体スイッチング素子を保護する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
前述したように、電力変換装置の駆動条件と配置環境を要因として、半導体スイッチング素子が動作限界温度に達する可能性があるが、特許文献1に開示された従来の技術は、半導体スイッチング素子の温度を測定する温度センサとは別に、冷却媒体の温度を測定する温度センサを設け、配置環境の異常を監視するものである。しかしながら、冷却媒体の温度を監視するための温度センサを別途設ける必要がある。加えて、冷却媒体を監視するための制御IC、CPUを追加若しくは増設し、冷却媒体の温度を監視するための温度センサを、制御IC、CPUに接続するための配線スペース等を確保しなければならない。
【0013】
したがって、特許文献1に開示された従来の技術は、半導体スイッチング素子の温度を測定する温度センサとは別に、冷却媒体の温度を測定する温度センサ、および冷却媒体の異常を監視するためのハードウェアを追加若しくは増設する必要があり、コストが高くなるという課題がある。
【0014】
また、半導体スイッチング素子の温度を検出する温度センサの温度検出値を監視し、半導体スイッチング素子を構成する半導体チップの温度が動作限界温度に達しないように、電力変換装置の駆動条件を操作する技術が存在する。この技術は、温度検出値が予め定められた閾値を超えた場合に、電力変換装置の駆動条件を変更するように操作し、半導体スイッチング素子の温度上昇を抑制する技術である。
【0015】
一方で、前述の閾値は、電力変換装置の駆動条件、および配置環境が正常なときに異常を誤検知しないように、温度センサの検知誤差、半導体スイッチング素子の発熱量のバラつき、冷却媒体の流入量のバラつき、等を加味して高めに設けられる。そのため、前述のバラつきがない状態で電力変換装置の駆動条件、配置環境が異常となった場合、高めに設けられた閾値に温度検出値が達するまでの時間が長くなる。すなわち、異常が発生してから検知するまで時間が長くなる。
【0016】
特に冷却媒体の流入の停止、或いは冷却媒体が消失する故障の場合、半導体スイッチング素子の温度は急激に上昇し続けるため、異常が発生してから検知するまでの時間に比例して、半導体スイッチング素子の到達温度が高くなる。この場合においても、半導体スイッチング素子の破損を防止することが必要であるため、より耐熱性の高い半導体スイッチング素子、或いは低損失の半導体スイッチング素子、等の高価な半導体スイッチング素子が必要となる。
【0017】
以上のように、温度センサの温度検出値と予め定められた閾値とを比較して、電力変換装置の駆動条件、配置環境、の異常を検知する技術は、冷却媒体の流入の停止、或いは冷却媒体が消失する等の故障時に達する半導体スイッチング素子の温度が高くなるという課題がある。
【0018】
本願は、上記のような課題を解決するための技術を開示するものであり、半導体スイッチング素子が動作限界温度に達して破壊されることを防ぎつつ、駆動の継続を実現する電力変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本願に開示される電力変換装置は、
半導体スイッチング素子により構成された電力変換部と、前記半導体スイッチング素子を冷却する冷却器と、前記半導体スイッチング素子のスイッチングを制御する制御装置と、を備えた電力変換装置であって、
前記半導体スイッチング素子の温度を検出する温度センサと、
前記温度センサが検出した温度検出値に基づいて演算した温度上昇率と、予め定められた第1の閾値とを比較し、前記温度上昇率が前記第1の閾値を超えたことを判定する温度上昇率判定部と、
を備え、
前記温度上昇率判定部により、前記温度上昇率が前記第1の閾値を超えたことが判定されたとき、前記電力変換部の出力を抑制する保護動作を実行するように構成されている、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本願に開示される電力変換装置によれば、半導体スイッチング素子が動作限界温度に達して破壊されることを防ぎつつ、駆動の継続を実現する電力変換装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】実施の形態1による電力変換装置を示す構成図である。
【
図2】実施の形態1による電力変換装置における、制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】実施の形態1による電力変換装置における、出力抑制部の構成を示すブロック図である。
【
図4】実施の形態1による電力変換装置における、半導体スイッチング素子の温度と温度検出値の推移を示す説明図である。
【
図5】従来の技術を適用した場合における、異常検知までの、半導体スイッチング素子の温度と温度検出値の推移を示す説明図である。
【
図6A】実施の形態1による電力変換装置における、異常検知までの、半導体スイッチング素子の温度と温度検出値の推移を示す説明図である。
【
図6B】実施の形態1による電力変換装置における、異常検知までの、温度検出値の温度上昇率の推移を示す説明図である。
【
図7A】実施の形態1による電力変換装置における、保護動作までの、半導体スイッチング素子の温度と温度検出値の推移を示す説明図である。
【
図7B】実施の形態1による電力変換装置における、保護動作までの、温度検出値の温度上昇率の推移を示す説明図である。
【
図8】実施の形態3による電力変換装置における、出力抑制部の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、実施の形態1から3による電力変換装置について説明する。なお、各図において、同一部分または相当部分には同一符号を付している。また、各実施の形態では、交流電動機を駆動させるU相、V相およびW相を有した三相インバータに対して適用した電力変換装置を例示している。
【0023】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1による電力変換装置を示す構成図である。
図1において、電力変換装置100は、電源部2と、電力変換部3と、冷却器4と、回転角センサ5と、電動機温度センサ6と、半導体スイッチング素子温度センサ7と、指令発生器8と、制御装置9とを備える。電動機1は、電力変換装置100の負荷装置であるが、負荷装置は、電動機1に限るものではなく、電動機以外であってよい。
【0024】
電動機1は、PWM(Pulse Width Modulation)方式により制御される。電動機1は、例えば、車載用の電動機である。なお、ここで、車載用の電動機とは、具体的には、車両を駆動するための駆動用電動機、電動ファン、オイルポンプ、ウォーターポンプ、および車両のステアリング操作をアシストするための電動パワーステアリング装置等に用いられるものである。また、電動機1は、車載用の電動機に限らず、車載用以外の電動機であってもよい。
【0025】
以下、電動機1がロータおよびステータを有する三相ブラシレスモータであるものとして説明する。ロータ(図示せず)は、円板状の部材であり、その表面に固定された永久磁石からなる界磁磁極を有している。ステータは、内部にロータを相対回転可能に収容している。ステータは、径方向に予め設定された角度ごとに放射状に突出する複数の突出部を有し、この突出部にU相コイル11、V相コイル12、およびW相コイル13が巻回されている。
【0026】
電源部2は、電動機1の駆動用電源であり、直流電力を電力変換部3に出力する。電源部2の具体的な構成例として、電源部2は、直流電力を出力する直流電源の一例であるバッテリ21と、平滑コンデンサ22と、チョークコイル23とを有する。
【0027】
平滑コンデンサ22およびチョークコイル23は、バッテリ21と後述するインバータ部31との間に配置され、パワーフィルタを構成している。このように構成することで、バッテリ21を共有する他の装置からインバータ部31側へ伝わるノイズを低減するとともに、インバータ部31側からバッテリ21を共有する他の装置へ伝わるノイズを低減することができる。平滑コンデンサ22は、電荷を蓄えることで、半導体スイッチング素子311、312、313、314、315、316への電力供給を補助し、さらに、サージ電流等のノイズ成分を抑制する。また、バッテリ21の電圧と、平滑コンデンサ22の電圧は、制御装置9により取得される。
【0028】
電力変換部3は、電源部2から供給された直流電力を交流電力に変換し、変換後の交流電力を電動機1に出力する。電力変換部3の具体的な構成例として、電力変換部3は、インバータ部31、電流検出器32、増幅回路33および駆動回路34を有する。
【0029】
インバータ部31は、上アームおよび下アームのそれぞれに半導体スイッチング素子を有する複数のハーフブリッジ回路が並列に接続され、半導体スイッチング素子311、312、313、314、315、316が、PWM信号にしたがってオンおよびオフに切り替え制御され、電源部2から出力された直流電力を交流電力に変換し、変換後の交流電力を電動機1に出力する。
【0030】
図1では、インバータ部31は、3つのハーフブリッジ回路によって構成される場合が例示されている。インバータ部31は、半導体スイッチング素子311、312、313、314、315、316を含む三相インバータであり、U相コイル11、V相コイル12、およびW相コイル13のそれぞれへの通電を切り替えるべく、6つの半導体スイッチング素子311、312、313、314、315、316がブリッジ接続されている。半導体スイッチング素子311、312、313、314、315、316としては、電界効果トランジスタの一種であるMOSFETを用いればよく、或いは、MOSFETとは異なるその他のトランジスタ又はIGBT等を用いてもよい。
【0031】
3つの半導体スイッチング素子311、312、313のドレインは、バッテリ21の正極側に接続されている。半導体スイッチング素子311、312、313のソースは、それぞれ半導体スイッチング素子314、315、316のドレインに接続されている。他の3つの半導体スイッチング素子314、315、316のソースは、バッテリ21の負極側に接続されている。
【0032】
一対の半導体スイッチング素子311および半導体スイッチング素子314を接続する接続点は、電動機1のU相コイル11の一端に接続されている。また、一対の半導体スイッチング素子312および半導体スイッチング素子315を接続する接続点は、電動機1のV相コイル12の一端に接続されている。さらに、一対の半導体スイッチング素子313および半導体スイッチング素子316を接続する接続点は、電動機1のW相コイル13の一端に接続されている。
【0033】
インバータ部31の高電位側に配置される3つの半導体スイッチング素子311、313、313は、それぞれ、U相上アーム、V相上アーム、W相上アームの半導体スイッチング素子を構成し、インバータ部31の低電位側に配置されている3つの半導体スイッチング素子314、315、316は、それぞれ、U相下アーム、V相下アーム、W相下アームの半導体スイッチング素子を構成している。また、実施の形態1では、説明を分かりやすくするために、低電位側の電位を0[V]とする。
【0034】
電流検出器32は、U相電流検出部321、V相電流検出部322およびW相電流検出部323により構成されている。U相電流検出部321、V相電流検出部322およびW相電流検出部323は、例えば、シャント抵抗を用いて構成される。U相電流検出部321は、U相コイル11に流れるU相電流Iuに対応するU相電流検出値を出力する。V相電流検出部322は、V相コイル12に流れるV相電流Ivに対応するV相電流検出値を出力する。W相電流検出部323は、W相コイル13に流れるW相電流Iwに対応するW相電流検出値を出力する。なお、以下の説明では、U相電流検出値、V相電流検出値、W相電流検出値を総称して電流検出値と称することがある。
【0035】
なお、図示していないが、電流検出器32に代えて、又は電流検出器32とともに、半導体スイッチング素子311、312、313、314、315、316に印加される電圧を検出する電圧検出器を設けてもよい。この場合、電力変換部3の出力状態は、電流検出器32の検出値と、電圧検出器の検出値と、電力変換装置の出力を指令する指令値と、のうちの少なくとも一つに基づいて演算される。
【0036】
U相電流検出部321、V相電流検出部322およびW相電流検出部323からそれぞれ出力されたU相電流検出値、V相電流検出値、W相電流検出値は、増幅回路33を経由して、制御装置9へ入力される。増幅回路33は、U相電流検出値、V相電流検出値、W相電流検出値を、制御装置9内で処理可能な適正値として取り込めるようにするためのものである。
【0037】
駆動回路34は、制御装置9から入力されるPWM信号に基づいて、それぞれの半導体スイッチング素子311、312、313、314、315、316のオンおよびオフを切り替える機能を有している。
【0038】
冷却器4は、平滑コンデンサ22、チョークコイル23および電力変換部3を冷却する。冷却器4は、例えば、水冷式冷却器である。具体的には、水冷式冷却器とウォーターポンプ等の電動機とをホースで接続する構成であり、電動機1から水冷式冷却器に対し、水、オイル、若しくはLLC(Long Life Coolant)等の冷却媒体を流入させる。なお、冷却器4は、水冷式冷却器に限らず、空冷式冷却器等であってもよい。
【0039】
回転角センサ5は、電動機1に取り付けられており、電動機1のロータ位置を表す位置情報、具体的にはロータの回転角θmを検出する。回転角センサ5は、例えば、レゾルバを用いて構成される。回転角センサ5は、検出した回転角θmを、電動機1の永久磁石の極対数を基に電気角θeに換算するように構成されている。回転角θmおよび電気角θeは、制御装置9に入力される。
【0040】
電動機温度センサ6は、電動機1の温度を検出する。電動機温度センサ6は、例えば、U相コイル11、V相コイル12およびW相コイル13に取り付けられたサーミスタ等の温度センサによって構成される。電動機1の温度は、制御装置9に入力される。
【0041】
半導体スイッチング素子温度センサ7は、半導体スイッチング素子311、312、313、314、315、316の温度を検出する。具体的には、例えば、半導体スイッチング素子温度センサ7は、それぞれの半導体スイッチング素子311、312、313、314、315、316の近傍に設置されており、半導体スイッチング素子311、312、313、314、315、316の各温度Tjを間接的に測定している。なお、半導体スイッチング素子温度センサ7は、半導体スイッチング素子311、312、313、314、315、316の温度Tjを直接検出するものであってもよい。
【0042】
半導体スイッチング素子温度センサ7が出力する温度検出値Tj_sensは、半導体スイッチング素子311、312、313、314、315、316の近傍の温度に基づくものである場合、半導体スイッチング素子311、312、313、314、315、316の近傍の温度は、半導体スイッチング素子311、312、313、314、315、316の温度Tjに対応するものであり、したがって、半導体スイッチング素子温度センサ7が出力する温度検出値Tj_sensは、半導体スイッチング素子311、312、313、314、315、316の温度Tjに対応している。半導体スイッチング素子温度センサ7の温度検出値Tj_sensは、制御装置9に入力される。
【0043】
指令発生器8は、電動機1を制御するための制御指令を発生し、その制御指令を制御装置9に出力する機器である。具体的には、例えば、電動機1が電気自動車等の車両の駆動源として用いられている場合、指令発生器8は、車両の運転手によって操作されるアクセルペダルの踏込み角度に対応した制御指令に換算して出力する。指令発生器8により発生された制御指令は、通信により制御装置9へ周期的に送信される。
【0044】
なお、電動機1を制御するための制御指令としては、例えば、トルク指令、電流指令、電圧指令、等が挙げられる。実施の形態1では、制御指令としてトルク指令Trq*を採用する場合を例示する。
【0045】
制御装置9は、電動機駆動システム全体の制御を実施するものであり、例えば、メモリに記憶されたプログラムを実行するように構成されたマイコン等により実現される。
【0046】
次に、制御装置9の構成について、
図2を参照しながらさらに説明する。
図2は、実施の形態1による電力変換装置における、制御装置の構成を示すブロック図である。
図2において、制御装置9は、出力抑制部91と、回転数演算部92と、トルク・電流指令変換部93と、三相・二相変換部94と、電圧指令生成部95と、二相・三相変換部96と、デューティ変換部97と、PWM信号生成部98とを有する。
【0047】
出力抑制部91は、半導体スイッチング素子311、312、313、314、315、316の温度Tjが動作限界温度に達しないように、トルク指令Trq*と、半導体スイッチング素子温度センサ7の温度検出値Tj_sensとより、トルク指令Trq*_ctlの演算と、出力停止信号Sig_stopを生成する。なお、出力抑制部91のより詳細な構成については、後述する。また、実施の形態1では、トルク指令Trq*を抑制する手段により、電力変換装置100の出力電力を抑制するが、トルク指令の抑制に限らず、電動機1の回転数、電流、電圧等の指令を抑制するようにしてもよい。
【0048】
回転数演算部92は、回転角センサ5から取得した回転角θmを積分して電動機1の回転数Nに換算する。回転数演算部92は、その演算した回転数Nを、トルク・電流指令変換部93に出力する。
【0049】
トルク・電流指令変換部93は、回転数演算部92から取得した電動機1の回転数Nと、出力抑制部91から取得したトルク指令Trq*_ctlとから、d軸電流指令Id*およびq軸電流指令Iq*を演算する。具体的には、例えば、トルク・電流指令変換部93は、電動機1の回転数Nとトルク指令Trq*_ctlとを軸としたトルク・電流指令変換テーブルを用いることで、これらの値をd軸電流指令Id*およびq軸電流指令Iq*に換算するように構成される。なお、トルク・電流指令変換部93は、トルク・電流指令変換テーブルを用いずに、d軸電流指令Id*およびq軸電流指令Iq*を演算するように構成されていてもよい。
【0050】
三相・二相変換部94は、電流検出器32の電流検出値と、回転角センサ5が検出した電気角θeに対応する角度検出値とから、d軸電流検出値Idおよびq軸電流検出値Iqを算出する。ここで、電流検出器32の電流検出値は、U相電流検出部321が検出したU相電流Iuに対応するU相電流検出値と、V相電流検出部322が検出したV相電流Ivに対応するV相電流検出値と、W相電流検出部323が検出したW相電流Iwに対応するW相電流検出値とにより構成されている。
【0051】
電圧指令生成部95は、d軸電流指令Id*およびq軸電流指令Iq*と、d軸電流検出値Idおよびq軸電流検出値Iqとから、電流フィードバック演算を行うことで、d軸電圧指令Vd*およびq軸電圧指令Vq*を算出する。具体的には、例えば、電圧指令生成部95は、d軸電流指令Id*とd軸電流検出値Idとの偏差である電流偏差ΔIdと、q軸電流指令Iq*とq軸電流検出値Iqとの偏差である電流偏差ΔIqとがそれぞれ「0」に収束するように、d軸電圧指令Vd*およびq軸電圧指令Vq*を算出するように構成されている。
【0052】
二相・三相変換部96は、電圧指令生成部95から取得したd軸電圧指令Vd*およびq軸電圧指令Vq*と、回転角センサ5から取得した電気角θeとから、三相電圧指令Vu*,Vv*,Vw*を算出する。なお、三相電圧指令Vu*,Vv*,Vw*は、インバータ部31に入力される直流電源電圧、すなわち、平滑コンデンサ22の電圧Vcon以下となるように設定されることが好ましい。
【0053】
デューティ変換部97は、二相・三相変換部96から取得した三相電圧指令Vu*,Vv*,Vw*と、平滑コンデンサ22の電圧Vconとから、三相の各相のデューティ指令Du、Dv、Dwを生成する。デューティ変換部97は、最適補正制御指令に対応したデューティ指令Du、Dv、Dwを生成して出力する。
【0054】
PWM信号生成部98は、出力抑制部91から取得した出力停止信号Sig_stopと、デューティ変換部97から取得した各相のデューティ指令Du、Dv、Dwとから、半導体スイッチング素子311、312、313、314、315、316のそれぞれをオンおよびオフに切り替え制御するためのPWM信号を生成する。
【0055】
具体的には、例えば、PWM信号生成部98は、出力停止信号Sig_stopの状態が出力許可を示す場合、各相のデューティ指令Du、Dv、Dwと、搬送波を比較することで、PWM信号を生成する。出力停止信号Sig_stopの状態が出力禁止の場合、半導体スイッチング素子311、312、313、314、315、316の全てがオフとなるようにPWM信号を生成する。PWM信号生成部98は、例えば、上昇速度と下降速度とが互いに等しい2等辺三角形の形状を有する三角波をキャリアとする三角波比較方式、鋸波比較方式等を採用してPWM信号を生成するように構成されている。
【0056】
なお、
図2では、PWM信号生成部98により生成されたPWM信号として、U相上アームの半導体スイッチング素子311に与えるPWM信号UH_SW、V相上アームの半導体スイッチング素子312に与えるPWM信号VH_SW、W相上アームの半導体スイッチング素子313に与えるPWM信号WH_SW、U相下アームの半導体スイッチング素子314に与えるPWM信号UL_SW、V相下アームの半導体スイッチング素子315に与えるPWM信号VL_SW、W相下アームの半導体スイッチング素子316に与えるPWM信号WL_SW、をそれぞれ示している。
【0057】
次に、出力抑制部91の詳細について、
図3を参照しながら説明する。
図3は、実施の形態1による電力変換装置における、出力抑制部の構成を示すブロック図である。
図3において、出力抑制部91は、温度上昇率判定部911と、トルク指令抑制部912と、出力停止判定部913とにより構成されている。
【0058】
温度上昇率判定部911は、半導体スイッチング素子温度センサ7の温度検出値Tj_sensから、半導体スイッチング素子311、311、312、313、314、315、316の異常発熱、冷却器4の異常状態、等を検出し、その判定結果をトルク指令抑制部912と出力停止判定部913に出力する。
【0059】
具体的には、温度上昇率判定部911は、半導体スイッチング素子温度センサ7の温度検出値Tj_sensの単位時間当たりの上昇量である温度上昇率Tj_sens_ratとし、温度検出値Tj_sensの単位時間当たりの上昇量である温度上昇率Tj_sens_ratと、予め定められた第1の閾値Th1と、を比較する。その比較の結果、温度検出値Tj_sensの単位時間当たりの上昇量である温度上昇率が第1の閾値Th1を超えたとき、温度上昇率判定部911は、半導体スイッチング素子311、312、313、314、315、316の異常発熱、冷却器4の異常状態等であると判定し、異常状態を示す内容のエラー信号Sig_errを生成して、トルク指令抑制部912と出力停止判定部913に入力する。なお、以下の説明において、温度検出値Tj_sensの単位時間当たりの上昇量を、単に、温度上昇率、と称することがある。
【0060】
温度検出値Tj_sensの温度上昇率Tj_sens_ratを計測する単位時間は、半導体スイッチング素子温度センサ7の時定数より十分短く、半導体スイッチング素子311、312、313、314、315、316のスイッチングノイズの影響を受けない程度の時間に設定される。
【0061】
また、第1の閾値Th1は、三相インバータとしてのインバータ部31の出力が正常かつ冷却器4が正常なときに、温度検出値Tj_sensの温度上昇率Tj_sens_ratが到達しない値に設定される。さらに、第1の閾値Th1は、少なくとも半導体スイッチング素子311、312、313、314、315、316の損失ばらつき、冷却器4の性能ばらつき、半導体スイッチング素子温度センサ7の検出誤差、等を加味し、温度検出値Tj_sensの単位時間当たりの上昇量が高い値側にばらついたとしても到達しない値に設定される。エラー信号Sig_errは、温度検出値Tj_sensの単位時間当たりの上昇量が予め定められた第1の閾値Th1を一度でも超えるとエラー状態を継続する。
【0062】
トルク指令抑制部912は、トルク指令Trq*と、エラー信号Sig_errの状態と、に基づいて変換されたトルク指令Trq*_ctlを生成する。具体的には、例えば、トルク指令抑制部912は、エラー信号Sig_errがエラー状態を示しているときは、トルク指令Trq*に対して予め定められた割合を掛けることで、トルク指令Trq*より低い値のトルク指令Trq*_ctlとして生成して出力する。
【0063】
一方、トルク指令抑制部912は、エラー信号Sig_errが正常状態を示しているときは、トルク指令Trq*をそのままをトルク指令Trq*_ctlとして出力する。なお、エラー信号Sig_errがエラー状態を示しているときは、前述のようにトルク指令Trq*_ctlは、トルク指令Trq*に対し、予め定められた割合を掛けることで生成しているが、これに限らず、半導体スイッチング素子温度センサ7の温度検出値Tj_sensからリアルタイムに割合を演算する等して生成してもよい。
【0064】
出力停止判定部913は、半導体スイッチング素子温度センサ7の温度検出値Tj_sensとエラー信号Sig_errの状態とから、インバータ部31の出力を禁止させる内容の出力停止信号Sig_stopを出力する。具体的には、例えば、出力停止判定部913は、エラー信号Sig_errがエラー状態で予め定められた時間継続すると、出力停止信号Sig_stopを駆動禁止を内容とする信号として出力する。
【0065】
すなわち、出力抑制部91、すなわち制御装置9は、予め定められた第3の閾値Th3と温度検出値Tj_sensと比較し、電力変換部3の出力を抑制する保護動作を実行してから、温度検出値Tj_sensが第3の閾値Th3を超えたとき、電力変換部3の出力を停止させる出力停止判定部913を備えている、
【0066】
ここで、予め定められた時間とは、例えば、駆動源が電動機である電気自動車、ハイブリッド自動車等の車両である場合、半導体スイッチング素子311、312、313、314、315、316の異常発熱、或いは冷却器4の異常状態、であっても、車両が自走して支障のない場所に停車できるまでの時間を指す。同時に、エラー信号Sig_errの内容がエラー状態を示すとき、半導体スイッチング素子311、312、313、314、315、316の温度Tjが動作限界温度である破壊温度に達しないように、出力停止判定部913は、半導体スイッチング素子温度センサ7の温度検出値Tj_sensと予め定められた第1の閾値Th1とを比較して、温度検出値Tj_sensが第1の閾値Th1を超えた場合に、駆動禁止を内容とする出力停止信号Sig_stopを出力する。
【0067】
すなわち、出力停止判定部913は、エラー信号Sig_errの内容がエラー状態を示していて予め定められた時間継続した場合と、半導体スイッチング素子温度センサ7の温度検出値Tj_sensが予め定められた第1の閾値Th1を超えた場合と、のうちの少なくとも何れか一方が成立した場合に、駆動禁止を内容とする出力停止信号Sig_stopが入力される。
【0068】
図4は、実施の形態1による電力変換装置における、半導体スイッチング素子の温度と温度検出値の推移を示す説明図であって、縦軸は温度、横軸は時間を示している。より具体的には、
図4は、インバータ部31の出力を「0」から一定の出力の値に変化させ、その状態で十分に時間が経過した後に、冷却器4の冷却媒体が消失したときの、半導体スイッチング素子311の温度Tjと、半導体スイッチング素子温度センサ7の温度検出値Tj_sensと、の温度推移を示す。
【0069】
なお、
図4に示している半導体スイッチング素子の温度Tjと温度検出値Tj_sensは、例えば半導体スイッチング素子311を対象としているが、半導体スイッチング素子311に限らず、他の半導体スイッチング素子312、313、314、315、316のうちの一つであっても同様な温度推移を示す。
【0070】
図4において、時刻t1にて電力変換部3が出力「0」の状態から一定の出力の値に変化し、その状態で十分に時間が経過した後の時刻t2にて冷却器4の冷却媒体が消失したことを示している。
図4に示すように、冷却器4の冷却媒体が消失する時刻t2に至る前は、半導体スイッチング素子の温度Tjと、半導体スイッチング素子温度センサ7の温度検出値Tj_sensとは、半導体スイッチング素子311の損失と冷却器4の性能とに基づいて定まる十分な時間が経過すると、ほぼ一定温度に整定する。半導体スイッチング素子温度センサ7の温度検出値Tj_sensは、半導体スイッチング素子311の温度Tjを間接的に測定していることため、半導体スイッチング素子311の温度Tjよりも時定数が長く、整定温度が低くなる。
【0071】
時刻t2で冷却器4の冷却媒体が消失すると、半導体スイッチング素子311の発熱により、冷却器4の温度が急峻に上昇し、冷却器4の温度上昇と同様に、半導体スイッチング素子311の温度Tjと、半導体スイッチング素子温度センサ7の温度検出値Tj_sensとが上昇する。
【0072】
図5は、従来の技術を適用した場合における、異常検知までの、半導体スイッチング素子の温度と温度検出値の推移を示す説明図であって、縦軸は温度、横軸は時間である。
図5では、温度検出値Tj_sensと比較して異常を検知するための閾値Th0と、異常検知X1のタイミングt3を、
図4に対して追加している。
【0073】
図5において、閾値Th0は、前述したとおり、電力変換部3の駆動条件、半導体スイッチング素子311、312、313、314、315、316の配置環境等が正常なときに異常を誤検知しないように、半導体スイッチング素子温度センサ7の検知誤差、半導体スイッチング素子311、312、313、314、315、316の発熱量のバラつき、冷却器4の冷却媒体の流入量のバラつき、等を加味して高めに設定されている。
【0074】
そのため、例えば、
図5に示しているようなバラつきがない状態で、時刻t2で冷却器4の冷却媒体が消失した場合、温度検出値Tj_sensが閾値Th0に達して異常検知X1までの時間[t3-t2]が長くなる。すなわち、従来の技術を適用した場合は、異常検知X1までの時間が長くなり、半導体スイッチング素子311の温度がTj_X1となり、高くなってしまう。
【0075】
図6Aは、実施の形態1による電力変換装置における、異常検知までの、半導体スイッチング素子の温度と温度検出値の推移を示す説明図であって、縦軸は温度、横軸は時間を示す。
図6Bは、実施の形態1による電力変換装置における、異常検知までの、温度検出値の温度上昇率の推移を示す説明図であって、縦軸は温度上昇率、横軸は時間を示す。
図6A、
図6Bにおいて、冷却器4の冷却媒体が消失する時刻t2より前の温度検出値Tj_sensの温度上昇率Tj_sens_ratは、時刻t1でインバータ部31の出力が「0」から上昇する変化に伴い、急劇に上昇し、時刻t1の直後の時刻t11で正常時における最大値に達する。
【0076】
その後、温度上昇率Tj_sens_ratは緩やかに減少し、時刻t11から十分な時間が経過した時刻t12に達すると、温度検出値Tj_sensが整定するため、温度上昇率Tj_sens_ratは「0」となる。
【0077】
そして時刻t2で冷却器4の冷却媒体が消失すると、温度検出値Tj_sensの温度上昇率Tj_sens_ratは、電力変換部3の駆動条件、配置環境が正常なときに達することない値に上昇し、時刻t21で第1の閾値Th1に達し、直ちに異常検知X2に至る。ここで、第1の閾値Th1は、電力変換部3の駆動条件、半導体スイッチング素子311、312、313、314、315、316の配置環境等が正常なときに異常を誤検知しないように、半導体スイッチング素子温度センサ7の検知誤差、半導体スイッチング素子311、312、313、314、315、316の発熱量のバラつき、冷却器4の冷却媒体の流入量のバラつき、等を加味して高めに設定されている。
【0078】
すなわち、異常検知X2までの時間が短く、このときの半導体スイッチング素子311の温度は、Tj_X2となり、
図5の従来技術の場合の半導体スイッチング素子311の温度Tj_X1よりも低くなる。なお、温度上昇率Tj_sens_ratは、ノイズの影響を回避するために単位時間当たりを長くし、ランプ関数で図示しているが、必ずしもその限りではなく、単位時間をより短くしてもよい。その場合、異常発生の時刻t2から異常検知X2の時刻t21までの時間をより短くすることができ、半導体スイッチング素子311の温度上昇を抑えるのに、より効果的となる。
【0079】
図7Aは、実施の形態1による電力変換装置における、保護動作までの、半導体スイッチング素子の温度と温度検出値の推移を示す説明図であって、縦軸は温度、横軸は時間を示す。
図7Bは、実施の形態1による電力変換装置における、保護動作までの、温度検出値の温度上昇率の推移を示す説明図であって、縦軸は温度上昇率、横軸は時間を示す。
図7A、
図7Bにおいて、時刻t21での異常検知X2の後は、
図3に示す温度上昇率判定部911のエラー信号Sig_errがエラー状態を示すこととなり、トルク指令抑制部912により、トルク指令Trq*に対して予め定められた割合を掛けることで、トルク指令Trq*より低い、トルク指令Trq*_ctlがトルク指令抑制部912から出力される。
【0080】
トルク指令Trq*_ctlは、トルク指令Trq*より低い値であるため、インバータ部31の出力は低下し、半導体スイッチング素子温度センサ7による温度検出値Tj_sensの温度上昇率Tj_sens_ratは低下する。このとき、温度上昇率Tj_sens_ratは、第1の閾値Th1を下回るが、エラー信号Sig_errは、エラー状態を継続して示す。異常検知X2から予め定められた時間[t22―t21]の経過後である時刻t22では、
図3に示す出力停止判定部913から出力される出力停止信号Sig_stopは駆動禁止を示すこととなり、インバータ部31の出力は「0」となる。したがって、
図7Aに示す時刻t22での半導体スイッチング素子の温度Tj_sens_X2は、半導体スイッチング素子311の動作限界温度に達することはない。
【0081】
以上述べたように、実施の形態1による電力変換装置100は、半導体スイッチング素子311、312、313、314、315、316が設置されている周辺部の温度を検出する半導体スイッチング素子温度センサ7の温度検出値から、その温度上昇率を監視することで、冷却器4に流れる冷却媒体の流入が停止又は消失したことを、より短時間で検知することができ、半導体スイッチング素子の最大到達温度を低くすることができ、電力変換装置100の駆動条件を工夫して最適な制御として、半導体スイッチング素子311、312、313、314、315、316が高温により破損することを防ぎつつ、電力変換装置100を駆動し続けることができる。
【0082】
なお、インバータ部31の半導体スイッチング素子311、312、313、314、315、316は、どのような半導体素子を用いて構成してもよいが、例えば、ワイドバンドギャップ半導体(Wide Gap Semiconductor)を用いて構成することができる。ワイドバンドギャップ半導体の材料としては、SiC、GaN等が挙げられる。
【0083】
例えば、ワイドバンドギャップ半導体を用いて構成された半導体スイッチング素子311、312、313、314、315、316を備えたインバータ部31は、従来のSiを用いて構成された半導体スイッチング素子を備えたインバータ部と比較して、高耐熱、低損失であり、高周波駆動が可能であるという特徴がある。したがって、インバータ部31の半導体スイッチング素子311、312、313、314、315、316を、ワイドバンドギャップ半導体を用いて構成することで、低損失で発熱をより抑え、高耐熱であることから、破損する可能性が低い電力変換装置を実現することができる。
【0084】
また、前述のように、インバータ部31の1つのアームを1つの半導体スイッチング素子で構成してもよいが、1つの半導体スイッチング素子当たりに流れる電流を減らすために、1つのアームを、複数の半導体スイッチング素子を並列接続して構成してもよい。この場合、1つの半導体スイッチング素子に対し、1つの温度センサを実装すると、温度センサの個数が膨大となるため、高コスト、温度取得回路が大規模化する。これを回避するために、1つのアームに対し、1つの温度センサを設置し、全ての半導体スイッチング素子の温度を俯瞰的に取得するようにすればよい。実施の形態1では、半導体スイッチング素子の発熱量のバラつきを加味して高めに第1の閾値Th1が設定されているため、1つの半導体スイッチング素子が過大に発熱しても、平均的に温度が取得できる位置に温度センサを配置することで、取得温度のバラつきが小さくすることができ、より高い効果を得られる。
【0085】
実施の形態2.
つぎに、実施の形態2による電力変換装置について説明する。実施の形態2では、実施の形態1による電力変換装置の構成に対して、温度上昇率判定部911の第1の閾値Th1を動的に変化させるようにしたものである。なお、実施の形態2では、実施の形態1と同一又は相当する部分の説明は省略し、実施の形態1と異なる点を中心に説明する。
【0086】
実施の形態1では、温度上昇率Tj_sens_ratと予め定められた第1の閾値Th1とを比較することにより、異常状態を判定するようにしているが、例えば、冷却器4の冷却媒体が消失したとしても、インバータ部31の出力が低い場合は、温度上昇率Tj_sens_ratが第1の閾値Th1に達しない可能性がある。そこで実施の形態2では、より高度な判定により、これらの課題を解決するものである。
【0087】
インバータ部31が定格出力で動作している場合は、温度検出値Tj_sensの温度上昇率Tj_sens_ratが、第1の閾値Th1を超えないように、第1の閾値Th1が予め定められるが、実施の形態2では、インバータ部31の出力状態に合わせて第1の閾値Th1を動的に変化させる。具体的には、インバータ部31の出力が大きいほど第1の閾値Th1を高く設定し、インバータ部31の出力が小さいほど第1の閾値Th1を小さく設定する。その結果、冷却器4が異常状態であっても、インバータ部31の出力が低い場合においても、温度上昇率Tj_sens_ratが第1の閾値Th1に達しないという課題は解消される。
【0088】
ここで、インバータ部31の出力が低いと、半導体スイッチング素子311、312、313、314、315、316に流れる電流が小さくなるため、初期温度から到達温度までの幅(以下、温度上昇量と称する)は小さくなる。一方で、冷却器4の性能、或いは半導体スイッチング素子311、312、313、314、315、316の構造により、一定の発熱をした際の温度の時定数は変化しない。そのため、温度上昇量が小さくなることで、相対的に温度上昇率Tj_sens_ratは小さくなる。
【0089】
すなわち、温度上昇率Tj_sens_ratと比較する第1の閾値Th1は、半導体スイッチング素子311、312、313、314、315、316での電力損失に比例するように設定するのが好ましい。具体的には、インバータ部31が定格出力で動作しているとき、すなわち、損失最大時には第1の閾値Th1を最大値に設定し、損失の低下に合わせて第1の閾値Th1を低下させるよう設定する。
【0090】
インバータ部31の出力状態は、電流検出器32の測定結果、電動機1の回転数及び実トルク、指令発生器8のトルク指令或いは電流指令、等を用いてリアルタイムに演算する。また、制御IC、及びCPUの処理負荷を軽減するために、予めインバータ部31の出力と半導体スイッチング素子311、312、313、314、315、316の電力損失の相間関係を制御IC、CPU等にマップとして記憶させ、そのマップを用いて演算するようにしてもよい。
【0091】
以上述べた実施の形態2による電力変換装置によれば、実施の形態1の構成に対して、温度上昇率判定部911で用いる第1の閾値Th1を、インバータ部31の出力に応じて動的に変化させるようにしているので、インバータ部31の出力が低い場合であっても冷却器4の異常を検知することができる。
【0092】
実施の形態3.
図8は、実施の形態3による電力変換装置における、出力抑制部の構成を示すブロック図である。実施の形態3による電力変換装置では、実施の形態1による電力変換装置の構成に対して、温度上昇率判定部911の出力先の変更、および出力抑制部91に温度上昇判定部914と異常判定部915とを追加したものである。なお、実施の形態3では、実施の形態1と同様である点の説明を省略し、実施の形態1と異なる点を中心に説明する。
【0093】
図8において、温度上昇率判定部911の出力は、異常判定部915に入力される。温度上昇判定部914は、温度上昇率判定部911の機能と並列に設けられた機能であり、具体的には、例えば、温度検出値Tj_sensと予め定められた第2の閾値Th2(図示せず)とを比較することで、半導体スイッチング素子311、312、313、314、315、316の異常発熱、冷却器4の異常状態、等を検出し、その結果を異常判定部915に入力する。
【0094】
第2の閾値Th2は、例えば、冷却器4の冷却媒体が消失したとしても、温度上昇率判定部911で異常を検知できない、すなわち、インバータ部31が低出力時のみ動作するように高めに設定される。異常状態を検出した後、温度検出値Tj_sensが下がり第2の閾値Th2を下回った場合でも、温度上昇判定部914による異常状態の判定は継続する。
【0095】
異常判定部915は、温度上昇率判定部911と温度上昇判定部914との出力結果を監視し、温度上昇率判定部911と温度上昇判定部914とのうちの少なくとも何れか一方が異常と判定したとき、エラー信号Sig_errの内容を異常状態にして出力する。
【0096】
ここで、従来技術と実施の形態3とを比較する。従来技術と実施の形態3とは、ともに温度検出値Tj_sensと予め定められた閾値とを比較し、温度検出値Tj_sensが閾値を超えた時刻で、保護動作を開始する機能は同じである。一方で、従来技術ではインバータ部31の全ての出力領域で同じ閾値を設けているのに対し、実施の形態3は、インバータ部31の高出力領域では温度上昇率判定部911で第1の閾値Th1に基づいて異常を検知し、低出力領域では温度上昇判定部914で第2の閾値Th2に基づいて異常を検知する点で異なる。
【0097】
前述したとおり、半導体スイッチング素子311、312、313、314、315、316の最大到達温度が高くなることが課題であり、従来技術と実施の形態3のように、温度検出値Tj_sensと予め定められた第2の閾値Th2とを比較する方式であれば、半導体スイッチング素子311、312、313、314、315、316最大到達温度は、半導体スイッチング素子311、312、313、314、315、316の温度Tjと温度検出値Tj_sensとの差分と、第2の閾値Th2と、の和となる。
【0098】
第2の閾値Th2は、電力変換装置100が正常に動作するときには到達しない温度であるため、低くすることはできない。一方で、インバータ部31の低出力時には、高出力時の半導体スイッチング素子の温度Tjと第2の閾値Th2とを比較するようにすると、半導体スイッチング素子の温度Tjと温度検出値Tj_sensとの差分は小さくなる。そのため、インバータ部31の低出力時のみで動作する第2の閾値Th2を設ければ、従来技術と比較して、半導体スイッチング素子の温度Tjと温度検出値Tj_sensとの差分は小さくなり、半導体スイッチング素子の最大到達温度を低くすることができる。
【0099】
実施の形態3による電力変換装置による制御装置9は、半導体スイッチング素子温度センサ7の温度検出値Tj_sensと予め定められた第2の閾値Th2とを比較し、温度検出値Tj_sensが第2の閾値Th2を超えたことを判定する温度上昇判定部914と、前述の温度上昇率判定部911とを備え、温度上昇率判定部911と温度上昇判定部914とのうちの少なくとも一方が、対応する前述の閾値を超えたと判定したとき、電力変換部3の出力を抑制する保護動作を実行するように構成されている。
【0100】
第2の閾値Th2は、少なくとも、電力変換部3の異常時又は過出力時に達する温度検出値Tj_sens以上の値に設定されている。
【0101】
また、第1の閾値Th1は、半導体スイッチング素子温度センサ7の温度検出値Tj_sensが第2の閾値Th2を超えてから、予め定められた時間、電力変換部3が動作できる値に設定されている。
【0102】
さらに、制御装置9は、温度上昇率判定部911と温度上昇判定部914とのうちの少なくとも一方が、異常判定をした後、電力変換部3の出力を抑制する保護動作を実行するように構成されている。
【0103】
また、電力変換部3の出力を抑制する保護動作を実行して後、温度上昇率Tj_sens_ratが第1の閾値Th1より低下する状態と、温度検出値Tj_sensが第2の閾値Th2より低下する状態と、のうちの少なくとも一方の状態になっても、電力変換部3の出力を抑制する保護動作を継続するように構成されている。
【0104】
さらに、電力変換部3の出力を抑制する保護動作を実行してから、予め定められた時間の後に電力変換部3の出力を停止させるように構成されている。
【0105】
また、制御装置9は、電力変換部3の出力を抑制する保護動作を実行してから、予め定められた第3の閾値と温度検出値Tj_sensとを比較し、温度検出値Tj_sensが第3の閾値を超えたとき、電力変換部3の出力を停止させる出力停止判定部913を備えていてもよい。
【0106】
さらに、電力変換部3の一つのアームを構成するそれぞれの半導体スイッチング素子311、312、313、314、315、316は、複数の半導体スイッチング素子が並列に接続されて構成されており、半導体スイッチング素子温度センサ7は、全ての半導体スイッチング素子の温度の平均値を検出するように構成されていてもよい。
【0107】
以上述べた実施の形態3による電力変換装置によれば、インバータ部の出力が高い場合は温度上昇率で冷却器の異常を判定し、インバータ部の出力が低い場合は、温度検出値に基づいて冷却器の異常を検知することができる、
【0108】
本願は、実施の形態1から3について記載しているが、1つ、又は複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、及び機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。したがって、例示されていない無数の変形例が、本願に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
【符号の説明】
【0109】
100 電力変換装置、1 電動機、2 電源部、3 電力変換部、4 冷却器、
5 回転角センサ、6 電動機温度センサ、7 半導体スイッチング素子温度センサ、
8 指令発生器、9 制御装置、11 U相コイル、12 V相コイル、
13 W相コイル、21 バッテリ、22 平滑コンデンサ、23 チョークコイル、
311、312、313、314、315、316 半導体スイッチング素子、
31 インバータ部、32 電流検出器、321 U相電流検出部、
322 V相電流検出部、323 W相電流検出部、33 増幅回路、34 駆動回路、91 出力抑制部、92 回転数演算部、93 トルク・電流指令変換部、
94 三相・二相変換部、95 電圧指令生成部、96 二相・三相変換部、
97 デューティ変換部、98 PWM信号生成部、911 温度上昇率判定部、
912 トルク指令抑制部、913 出力停止判定部、914 温度上昇判定部、
915 異常判定部
【手続補正書】
【提出日】2022-06-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体スイッチング素子により構成された電力変換部と、
前記半導体スイッチング素子を冷却する冷却器と、
前記半導体スイッチング素子のスイッチングを制御する制御装置と、
前記半導体スイッチング素子の温度を検出する温度センサと、
を備えた電力変換装置であって、
前記制御装置は、
前記温度センサが検出した温度検出値に基づいて演算した温度上昇率と、予め定められた第1の閾値とを比較し、前記温度上昇率が前記第1の閾値を超えたことを判定する温度上昇率判定部を備え、前記温度上昇率判定部により、前記温度上昇率が前記第1の閾値を超えたことが判定されたとき、前記電力変換部の出力を抑制する保護動作を実行するように構成され、
前記第1の閾値は、
少なくとも、前記電力変換部若しくは前記冷却器の正常時、又は前記電力変換部の過出力時、に前記温度上昇率が達する値以上の値に設定されるとともに、前記温度上昇率が前記第1の閾値を超えてから予め定められた時間、前記電力変換部が動作できる値に設定されている、
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記温度上昇率が前記第1の閾値を超えた後、前記電力変換部の出力を抑制する保護動作を実行するように構成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記電力変換部の出力に基づいて、前記第1の閾値を変動させるように構成されている、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記電力変換部の前記出力が比較的低いときは、前記第1の閾値の値を比較的低く設定し、前記電力変換部の前記出力が比較的高いときは、前記第1の閾値の値を比較的高く設定する、ように構成されている、
ことを特徴とする請求項3に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記電力変換部の出力を抑制する保護動作を実行してから、前記温度上昇率が前記第1の閾値よりも低くなっても、前記電力変換部の出力を抑制する前記保護動作を継続するように構成されている、
ことを特徴とする請求項1から4のうちの何れか一項に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記制御装置は、
前記温度センサの温度検出値と予め定められた第2の閾値とを比較し、前記温度検出値が前記第2の閾値を超えたことを判定する温度上昇判定部を備え、
前記温度上昇率判定部と前記温度上昇判定部との少なくとも一方が、前記判定をしたとき、電力変換部の出力を抑制する保護動作を実行するように構成されている、
ことを特徴とする請求項1から5のうちの何れか一項に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記第2の閾値は、少なくとも、前記電力変換部若しくは前記冷却器の正常時に前記温度センサが検出する温度検出値が達する値以上の値に設定されている、
ことを特徴とする請求項6に記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記第2の閾値は、前記温度センサの温度検出値が前記第2の閾値を超えてから、予め定められた時間、前記電力変換部が動作できる値に設定されている、
ように設定する、
ことを特徴とする請求項7に記載の電力変換装置。
【請求項9】
前記制御装置は、
予め定められた第3の閾値と前記温度検出値と比較し、前記出力を抑制する保護動作を実行してから、前記温度検出値が前記第3の閾値を超えたとき、前記電力変換部の出力を停止させる出力停止判定部を備えている、
することを特徴とする請求項6から8のうちの何れか一項に記載の電力変換装置。
【請求項10】
前記温度上昇率判定部と前記温度上昇判定部のうちの少なくとも一方が、前記判定をした後、前記電力変換部の出力を抑制する保護動作を実行するように構成されている、
ことを特徴とする請求項6から9のうちの何れか一項に記載の電力変換装置。
【請求項11】
前記出力を抑制する保護動作を実行して後、前記温度上昇率が前記第1の閾値より低下する状態と、前記温度検出値が前記第2の閾値より低下する状態と、のうちの少なくとも一方の状態になっても、前記電力変換部の出力を抑制する保護動作を継続するように構成されている、
ことを特徴とする請求項6から10のうちの何れか一項に記載の電力変換装置。
【請求項12】
電力変換部の出力を抑制する保護動作を実行してから、予め定められた時間の後に前記電力変換部の出力を停止するように構成されている、
ことを特徴とする請求項1から11のうちの何れか一項に記載の電力変換装置。
【請求項13】
前記電力変換部の一つのアームを構成する前記半導体スイッチング素子は、複数の半導体スイッチング素子が並列に接続されて構成されており、
前記温度センサは、全ての半導体スイッチング素子の温度の平均値を検出するように構成されている、
ことを特徴とする請求項1から12のうちの何れか一項に記載の電力変換装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0019
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0019】
本願に開示される電力変換装置は、
半導体スイッチング素子により構成された電力変換部と、
前記半導体スイッチング素子を冷却する冷却器と、
前記半導体スイッチング素子のスイッチングを制御する制御装置と、
前記半導体スイッチング素子の温度を検出する温度センサと、
を備えた電力変換装置であって、
前記制御装置は、
前記温度センサが検出した温度検出値に基づいて演算した温度上昇率と、予め定められた第1の閾値とを比較し、前記温度上昇率が前記第1の閾値を超えたことを判定する温度上昇率判定部を備え、前記温度上昇率判定部により、前記温度上昇率が前記第1の閾値を超えたことが判定されたとき、前記電力変換部の出力を抑制する保護動作を実行するように構成され、
前記第1の閾値は、
少なくとも、前記電力変換部若しくは前記冷却器の正常時、又は前記電力変換部の過出力時、に前記温度上昇率が達する値以上の値に設定されるとともに、前記温度上昇率が前記第1の閾値を超えてから予め定められた時間、前記電力変換部が動作できる値に設定されている、
ことを特徴とする。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0065
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0065】
すなわち、出力抑制部91、すなわち制御装置9は、予め定められた第3の閾値Th3と温度検出値Tj_sensと比較し、電力変換部3の出力を抑制する保護動作を実行してから、温度検出値Tj_sensが第3の閾値Th3を超えたとき、電力変換部3の出力を停止させる出力停止判定部913を備えている。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0066
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0066】
ここで、予め定められた時間とは、例えば、駆動源が電動機である電気自動車、ハイブリッド自動車等の車両である場合、半導体スイッチング素子311、312、313、314、315、316の異常発熱、或いは冷却器4の異常状態、であっても、車両が自走して支障のない場所に停車できるまでの時間を指す。同時に、エラー信号Sig_errの内容がエラー状態を示すとき、半導体スイッチング素子311、312、313、314、315、316の温度Tjが動作限界温度である破壊温度に達しないように、出力停止判定部913は、半導体スイッチング素子温度センサ7の温度検出値Tj_sensと予め定められた第3の閾値Th3とを比較して、温度検出値Tj_sensが第3の閾値Th3を超えた場合に、駆動禁止を内容とする出力停止信号Sig_stopを出力する。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0067
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0067】
すなわち、出力停止判定部913は、エラー信号Sig_errの内容がエラー状態を示していて予め定められた時間継続した場合と、半導体スイッチング素子温度センサ7の温度検出値Tj_sensが予め定められた第3の閾値Th3を超えた場合と、のうちの少なくとも何れか一方が成立した場合に、駆動禁止を内容とする出力停止信号Sig_stopが入力される。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0100
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0100】
第2の閾値Th2は、少なくとも、電力変換部3の正常時に達する温度検出値Tj_sens以上の値に設定されている。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0101
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0101】
また、第2の閾値Th2は、半導体スイッチング素子温度センサ7の温度検出値Tj_sensが第2の閾値Th2を超えてから、予め定められた時間、電力変換部3が動作できる値に設定されている。