(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022176469
(43)【公開日】2022-11-30
(54)【発明の名称】屋根構造
(51)【国際特許分類】
E04B 7/16 20060101AFI20221122BHJP
E04B 1/32 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
E04B7/16 A
E04B1/32 102B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021082924
(22)【出願日】2021-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 充
(72)【発明者】
【氏名】谷口 尚範
(57)【要約】
【課題】座屈耐力を向上しつつ、ドーム架構の自重による変形抑制効果を高めることができる屋根構造を提供する。
【解決手段】屋根構造10は、球面に沿って配置され、平面視で円以外の形状をなすドーム架構1と、ドーム架構1の下方に配置され、平面視で多角形の環状に形成されたリング材2と、リング材2とドーム架構1の外周端部とを連結する複数の引張材4と、を備え、引張材4は、外周側に向かうにしたがって次第に上方に向かうように傾斜している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
球面に沿って配置され、平面視で円以外の形状をなすドーム架構と、
該ドーム架構の下方に配置され、平面視で多角形の環状に形成されたリング材と、
前記リング材と前記ドーム架構の外周端部とを連結する複数の引張材と、を備え、
前記引張材は、外周側に向かうにしたがって次第に上方に向かうように傾斜している屋根構造。
【請求項2】
前記ドーム架構は、平面視で矩形をなしている請求項1に記載の屋根構造。
【請求項3】
前記引張材は、前記ドーム架構の平面視で矩形をなす辺の中央部に連結されている請求項2に記載の屋根構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋根構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1には、ドーム状の屋根構造が提案されている。
図11及び
図12に示すように、屋根構造100は、球面に沿って配置され、平面視で円以外の形状をなすドーム架構101と、ドーム架構の下方に配置され、平面視円環状に形成されたリング材102と、を備えている。リング材102とドーム架構101の外周材101cを連結するケーブル材103に張力を導入することで、ドーム架構101の曲げ応力の抑制や自重による変形の低減が可能である構造である。
【0003】
ドーム架構101の形状が矩形の場合、ドーム架構101の角部及び角部近傍(以下「角部」と称する)a1の外周材101cが側部a2の外周材101cに比べ低い位置に配置される。角部a1のケーブル材103aは、外周側に向かうにしたがって次第に下方に向かうように傾斜している。このため、ケーブル材103aに張力を導入すると、リング材102の角部a1に位置する部分(以下、「角部リング材」と称する)102aに下向きに引っ張る力(
図12の矢印参照)が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
また、ドーム架構101を同心円部材101aと放射方向部材101bとで構成した場合、外周側になるにしたがって部材密度が低下し、ドーム架構101の局部座屈が起こりやすくなる。固定荷重を増分させると、角部リング材102aの直上に位置のドーム架構101で局部座屈が発生する。
【0006】
従来のリング形状では、局部座屈が発生する位置のリング材102をケーブル材103で下向きに引っ張る形状となっている。リング材102を配置しない場合の座屈荷重倍率λは、λ=4.37(固定荷重の4.37倍の荷重で座屈する)となる。
図13に、リング材102を配置しない場合の1次座屈固有ベクトルを示す。リング材102を配置する場合の座屈荷重倍率λは、λ=4.07となる。
図14に、リング材102を配置する場合の1次座屈固有ベクトルを示す。矢印で示すように、角部リング材102aの直上位置で、局部座屈が発生しやすくなっていることが分かる。つまり、リング材102を配置することで、座屈耐力が低下する(局部座屈が発生しやすくなっている)という問題点がある。
【0007】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、座屈耐力を向上しつつ、ドーム架構の自重による変形抑制効果を高めることができる屋根構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を採用している。
すなわち、本発明に係る屋根構造は、球面に沿って配置され、平面視で円以外の形状をなすドーム架構と、該ドーム架構の下方に配置され、平面視で多角形の環状に形成されたリング材と、前記リング材と前記ドーム架構の外周端部とを連結する複数の引張材と、を備え、前記引張材は、外周側に向かうにしたがって次第に上方に向かうように傾斜している。
【0009】
このように構成された屋根構造では、引張材は、外周側に向かうにしたがって次第に上方に向かうように傾斜している。よって、引張材に張力を加えることによって、リング材は引張材によって引っ張り上げられ、ドーム架構の外周部分は引き絞られる。引張材は、ドーム架構の外周部分の角部には接続されていない。仮に、ドーム架構の角部とリング材とを引張材(以下、「角部引張材」と称する)で連結すると、角部引張材は外周側に向かうにしたがって次第に下方に向かうように傾斜することになる。角部引張材に張力を加えると、角部引張材によってリング材が引き下げられ、ドーム架構における角部リング材の直上部分(以下、「直上ドーム架構」と称する)では局部座屈が発生しやすくなる。しかしながら、上記の構成では、角部リング材には引張材が連結されていないため、ドーム架構の座屈耐力を向上することができる。
【0010】
また、本発明に係る屋根構造では、前記ドーム架構は、平面視で矩形状をなしていてもよい。
【0011】
このように構成された屋根構造では、平面視で矩形状をなしているドーム架構において、座屈耐力を向上しつつ、ドーム架構の自重による変形抑制効果を高めることができる。
【0012】
また、本発明に係る屋根構造では、前記引張材は、前記ドーム架構の平面視で矩形をなす辺の中央部に連結されていてもよい。
【0013】
このように構成された屋根構造では、引張材は、ドーム架構の平面視で矩形の辺の中央部に連結されている。リング材における引張材との連結位置がドーム架構の角部から離れた位置となり、引張材は外周側に向かうにしたがって次第に上方に大きく傾斜する。よって、ドーム架構の座屈耐力をより一層向上することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る屋根構造によれば、座屈耐力を向上しつつ、ドーム架構の自重による変形抑制効果を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る屋根構造を示す斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る屋根構造を示す立面図であり、
図1のA方向から見た図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る屋根構造のリング材の構成を説明する平面図である。
【
図4】本発明の効果検証のための解析モデル(リング材の形状変更前)を示す。
【
図5】本発明の一実施形態に係る屋根構造の1次座屈固有ベクトルを示す。
【
図6】リング材の無い屋根構造の場合の固定荷重時鉛直方向変位を示す。
【
図7】従来の円形の環状をなすリング材の場合の固定荷重時鉛直方向変位を示す。
【
図8】本発明の一実施形態に係る屋根構造の固定荷重時鉛直方向変位を示す。
【
図9】本発明の一実施形態の変形例1に係る屋根構造のリング材の構成を説明する平面図である。
【
図10】本発明の一実施形態の変形例2に係る屋根構造のリング材の構成を説明する平面図である。
【
図13】リング材の無い屋根構造の場合の1次座屈固有ベクトルを示す。
【
図14】従来の屋根構造(リング材有り)の場合の1次座屈固有ベクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一実施形態に係る屋根構造について、図面を用いて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る屋根構造を示す斜視図である。
図1に示すように、本実施形態に係る屋根構造10は、ドーム架構1と、張弦リング材(リング材)2と、複数の張弦リング束材3と、複数のケーブル材(引張材)4と、を備えている。屋根構造10は、例えば運動競技施設等の大空間を有する建築物の屋根構造10である。
【0017】
以下の説明において、平面視で、屋根構造10の中心をPとする。ドーム架構1は、球面に沿って配置されている。ドーム架構1は、内周リング材11と、複数の円周方向部材12と、複数の円弧材12aと、外周材(外周端部)13と、複数の放射方向部材14と、複数の斜め方向部材15と、を有している。本実施形態では、ドーム架構1は、いわゆる単層ドーム架構である。
【0018】
ドーム架構1は、平面視で円以外の形状をしている。本実施形態では、ドーム架構1は、平面視で正方形である。
【0019】
内周リング材11及び複数の円周方向部材12は、平面視で中心Pを中心とした円形状の環状をしている。円弧材12aは、平面視で中心Pを中心として円形状の環状の一部、つまり円弧状をなしている。
【0020】
円周方向部材12は、内周リング材11よりも外側(径方向外側)に配置されている。円弧材12aは、円周方向部材12よりも外側(径方向の外側)に配置されている。内周リング材11、円周方向部材12及び円弧材12aは、同一面上(同一球面上)に配置されている。例えば、内周リング材11はH型鋼からなる部材が接続されて構成され、円周方向部材12及び円弧材12aは角管からなる部材が複数接続されて構成されている。
【0021】
外周材13は、平面視で中心Pを中心とした正方形の環状をしている。外周材13は、ドーム架構1の外形をなしている。例えば、外周材13はH型鋼からなる部材が複数接続されて構成されている。
【0022】
外周材13には、複数の斜柱16が固定されている。斜柱16は、不図示の下部構造に設置されている。
【0023】
放射方向部材14は、複数の円周方向部材12と外周材13とを連結している。放射方向部材14は、円周方向に間隔を有して複数配置されている。各放射方向部材14の延長線上には、中心Pが配置されている。換言すると、放射方向部材14は、放射線状に延びている。例えば、放射方向部材14は、角管からなる部材が複数接続されて構成されている。
【0024】
斜め方向部材15は、内周リング材11と外周材13とを連結している。斜め方向部材15は、曲線に沿って形成されている。例えば、斜め方向部材15は、角管からなる部材が複数接続されて構成されている。
【0025】
図2は、屋根構造10を示す立面図であり、
図1のA方向から見た図である。
図2に示すように、張弦リング材2は、ドーム架構1の下方に配置されている。
【0026】
図3は、張弦リング材2の構成を説明する平面図である。
図3では、張弦リング材2、ケーブル材4及び外周材13のみを示し、他の構成部材の図示を省略している。
図3に示すように、張弦リング材2は、平面視で、多角形の環状に形成されている。本実施形態では、中心Pを中心とした八角形の環状をしている。平面視で、張弦リング材2は、ドーム架構1の外周材13の内側に配置されている。
【0027】
例えば、張弦リング材2はH型鋼からなる部材が複数接続されて構成されている。張弦リング材2は、テンションリングとして機能し、ドーム架構1の外周材13が外側に広がろうとする力(スラスト力)を抗することができる。
【0028】
平面視で、正方形をなす外周材13の辺を、外周材辺13aとする。平面視で、八角形をなす張弦リング材2の短辺2aは、それぞれ対応する外周材辺13aと平行に配置されている。張弦リング材2の長辺2bは、隣り合う短辺2aどうしの接続するように配置されている。短辺2aと長辺2bとの接続点を頂点部2cとする。
【0029】
図2に示すように、張弦リング束材3は、ドーム架構1と張弦リング材2とを連結している。張弦リング束材3は、鉛直方向に延びている。張弦リング束材3の下端部は、平面視で八角形をなす張弦リング材2の頂点部2c(
図3参照)または頂点部2cの近傍に接続されている。本実施形態では、張弦リング束材3の数は、張弦リング材2の頂点部2cの数に対応して8本である。例えば、張弦リング束材3は円形鋼管で構成されている。
【0030】
図1に示すように、ケーブル材4は、ドーム架構1の外周材13と張弦リング材2とを連結している。
図3に示すように、ケーブル材4の一端部は、張弦リング材2の頂点部2cに接続されている。ケーブル材4の他端部は、外周材13の外周材辺13aの中央部に接続されている。外周材13の角部13cには、ケーブル材4は接続されていない。
【0031】
一の外周材辺13aには、2本のケーブル材4が接続されている。一の外周材辺13aに接続された2本のケーブル材4は、頂点部2cから外周材辺13aに向かうにしたがって次第に互いにわずかに離間するように配置されている。
【0032】
本実施形態では、ケーブル材4の数は、張弦リング材2の頂点部2cの数に対応して8本である。例えば、ケーブル材4は、亜鉛めっき鋼より線で構成されている。
【0033】
図2に示すように、ケーブル材4は、外周側(外周材13側)に向かうにしたがって次第に上方に向かうように傾斜している。ケーブル材4に張力を加えられると、張弦リング材2は引っ張り上げられ、外周材13は内側(中心P側)に引っ張られている。換言すると、ケーブル材4に張力を加えることによって、外周材13が引き絞られる。
【0034】
従来の特開2021-21232号公報の屋根構造では、リング材が円形の環状をしていたのに対して、本実施形態では、リング材(張弦リング材2)は八角形の環状に変更している。そこで、
図4に示す四角形ドームモデルを用いて、解析によりリング材の形状変更による座屈耐力の向上及び自重による変形の低減効果を確認する。
【0035】
図4の四角形ドームモデルの構成部材の断面リストを下記の表(1)に示す。
【0036】
【0037】
図5に示すように、リング材の形状変更後(本実施形態の八角形の環状の張弦リング材2の場合)の座屈荷重係数はλ=4.50となっている。本実施形態の八角形の環状の張弦リング材2を採用することで、
図13に示すリング材が無い場合の座屈荷重倍率λ=4.37に比べ座屈耐力が向上していることが分かる。
【0038】
図6に示すように、リング材が無い場合のドーム架構頂部の固定荷重時の鉛直方向変位δ=94.7mmとなる。
図7に示すようにリング材の形状変更前(円形の環状のリング材の場合)のドーム架構頂部の固定荷重時の鉛直方向変位δ=82.1mmとリング材が無い場合(
図6)に比べ減少しているが、角部のケーブルの引き下げにより角部のリング直上位置において最大変形δ=103mmが生じている。
【0039】
一方、
図8に示すように、リング材の形状変更後(本実施形態の八角形の環状の張弦リング材2の場合)のドーム架構頂部の固定荷重時の鉛直方向変位δ=89.0mmとなり、ケーブル本数が減少したためリング材の形状変更前(
図7)に比べると鉛直方向変位は増加しているが、リング材がない場合(
図6)に比べると変位が減少しており、角部の引き下げも発生していない。
【0040】
このように構成された屋根構造10では、ケーブル材4は、外周側に向かうにしたがって次第に上方に向かうように傾斜している。よって、ケーブル材4に張力を加えることによって、張弦リング材2はケーブル材4によって引っ張り上げられ、ドーム架構1の外周材13は引き絞られる。ケーブル材4は、ドーム架構1の外周材13の角部13cには接続されていない。仮に、ドーム架構1の角部13cと張弦リング材2とをケーブル材4(「角部引張材」と称する)で連結すると、角部引張材は外周側に向かうにしたがって次第に下方に向かうように傾斜することになる。角部引張材に張力を加えると、角部引張材によってリング材が引き下げられ、ドーム架構における角部リング材102a(
図11参照)の直上部分(以下、「直上ドーム架構」と称する)では局部座屈が発生しやすくなる。しかしながら、本実施形態では、角部リング材にはケーブル材4が連結されていないため、ドーム架構1の座屈耐力を向上することができる。
【0041】
また、平面視で正方形状をなしているドーム架構1において、座屈耐力を向上しつつ、ドーム架構1の自重による変形抑制効果を高めることができる。
【0042】
また、ケーブル材4は、ドーム架構1の外周材13の外周材辺13aの中央部に連結されている。張弦リング材2におけるケーブル材4との連結位置がドーム架構1の角部13cから離れた位置となり、ケーブル材4は外周側に向かうにしたがって次第に上方に大きく傾斜する。よって、ドーム架構1の座屈耐力をより一層向上することができる。
【0043】
(変形例1)
次に、上記に示す実施形態の変形例1に係る屋根構造について、主に
図9を用いて説明する。
以下の変形例において、前述した実施形態で用いた部材と同一の部材には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0044】
図9に示すように、本変形例に係る屋根構造10Aは、ドーム架構1Aと、張弦リング材(リング材)2Aと、複数の張弦リング束材(不図示)と、複数のケーブル材(引張材)4Aと、を備えている。
【0045】
ドーム架構1Aは、平面視で中心Pを中心とした正八角形である。外周材13Aは、平面視で中心Pを中心とした正八角形の環状をしている。
【0046】
張弦リング材2Aは、平面視で、中心Pを中心とした正八角形の環状をしている。
【0047】
ケーブル材4Aは、ドーム架構1Aの外周材13Aと張弦リング材2Aとを連結している。ケーブル材4Aの一端部は、張弦リング材2Aの頂点部2dに接続されている。ケーブル材4Aの他端部は、外周材13Aの外周材辺13dの中央に接続されている。外周材13Aの角部13eには、ケーブル材4Aは接続されていない。ケーブル材4Aは、中心P及び頂点部2dを通る直線上に配置されている。
【0048】
一の外周材辺13dには、1本のケーブル材4Aが接続されている。ケーブル材4Aは、外周側(外周材13A側)に向かうにしたがって次第に上方に向かうように傾斜している。ケーブル材4Aに張力を加えられると、張弦リング材2Aは引っ張り上げられ、外周材13Aは内側(中心P側)に引っ張られている。換言すると、ケーブル材4Aに張力を加えることによって、外周材13Aが引き絞られる。
【0049】
このように構成された屋根構造10Aでは、ケーブル材4Aは、外周側に向かうにしたがって次第に上方に向かうように傾斜している。よって、ケーブル材4Aに張力を加えることによって、張弦リング材2Aはケーブル材4Aによって引っ張り上げられ、ドーム架構1Aの外周材13Aは引き絞られる。ケーブル材4Aは、ドーム架構1Aの外周材13Aの角部13eには接続されていない。仮に、ドーム架構1Aの角部13eと張弦リング材2Aとをケーブル材4A(「角部引張材」と称する)で連結すると、角部引張材は外周側に向かうにしたがって次第に下方に向かうように傾斜することになる。角部引張材に張力を加えると、角部引張材によってリング材が引き下げられ、ドーム架構における角部リング材の直上部分(以下、「直上ドーム架構」と称する)では局部座屈が発生しやすくなる。しかしながら、本実施形態では、角部リング材にはケーブル材4Aが連結されていないため、ドーム架構1Aの座屈耐力を向上することができる。
【0050】
(変形例2)
次に、上記に示す実施形態の変形例2に係る屋根構造について、主に
図10を用いて説明する。
【0051】
図10に示すように、本変形例に係る屋根構造10Bは、ドーム架構1Bと、張弦リング材(リング材)2Bと、複数の張弦リング束材(不図示)と、複数のケーブル材(引張材)4Bと、を備えている。
【0052】
ドーム架構1Bは、平面視で中心Pを中心とした正三角形である。外周材13Bは、平面視で中心Pを中心とした正三角形の環状をしている。
【0053】
張弦リング材2Bは、平面視で、中心Pを中心とした正六角形の環状をしている。
【0054】
ケーブル材4Bは、ドーム架構1Bの外周材13Bと張弦リング材2Bとを連結している。ケーブル材4の一端部は、張弦リング材2Bの頂点部2eに接続されている。ケーブル材4Bの他端部は、外周材13Bの外周材辺13fの中央部に接続されている。外周材13Bの角部13gには、ケーブル材4Bは接続されていない。ケーブル材4Bは、中心P及び頂点部2eを通る直線上に配置されている。
【0055】
一の外周材辺13fには、2本のケーブル材4Bが接続されている。一の外周材辺13fに接続された2本のケーブル材4Bは、頂点部2eから外周材辺13fに向かうにしたがって次第に互いにわずかに離間するように配置されている。ケーブル材4Bは、外周側(外周材13B側)に向かうにしたがって次第に上方に向かうように傾斜している。ケーブル材4Bに張力を加えられると、張弦リング材2Bは引っ張り上げられ、外周材13Bは内側(中心P側)に引っ張られている。換言すると、ケーブル材4Bに張力を加えることによって、外周材13Bが引き絞られる。
【0056】
このように構成された屋根構造10Bでは、ケーブル材4Bは、外周側に向かうにしたがって次第に上方に向かうように傾斜している。よって、ケーブル材4Bに張力を加えることによって、張弦リング材2Bはケーブル材4Bによって引っ張り上げられ、ドーム架構1Bの外周材13Bは引き絞られる。ケーブル材4Bは、ドーム架構1Bの外周材13Bの角部13gには接続されていない。仮に、ドーム架構1Bの角部13gと張弦リング材2Bとをケーブル材4B(「角部引張材」と称する)で連結すると、角部引張材は外周側に向かうにしたがって次第に下方に向かうように傾斜することになる。角部引張材に張力を加えると、角部引張材によってリング材が引き下げられ、ドーム架構における角部リング材の直上部分(以下、「直上ドーム架構」と称する)では局部座屈が発生しやすくなる。しかしながら、本実施形態では、角部リング材にはケーブル材4Bが連結されていないため、ドーム架構1Bの座屈耐力を向上することができる。
【0057】
なお、上述した実施の形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0058】
例えば、上記に示す実施形態では、ドーム架構1は平面視で正方形をなしているが、本発明はこれに限られない。ドーム架構1は平面視で円形状以外の形状をなしていればよく、三角形、四角形、多角形、楕円形等であってもよい。
【0059】
また、上記に示す実施形態では、張弦リング材2は平面視で八角形の環状をしているが、本発明はこれに限られない。張弦リング材2は平面視で多角の環状をしていればよく、三角形、四角形、五角形等であってもよい。
【符号の説明】
【0060】
1…ドーム架構
2…張弦リング材(リング材)
4…ケーブル材(引張材)
10…屋根構造