(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022176471
(43)【公開日】2022-11-30
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/535 20060101AFI20221122BHJP
A61F 13/534 20060101ALI20221122BHJP
A61F 13/53 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
A61F13/535 200
A61F13/535 100
A61F13/534 100
A61F13/53 100
A61F13/53 200
A61F13/53 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021082926
(22)【出願日】2021-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒沢 基成
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200AA03
3B200BA02
3B200BA04
3B200BA09
3B200BA14
3B200BB03
3B200BB17
3B200CA02
3B200CA11
3B200DA13
3B200DB01
3B200DB02
3B200DB05
3B200DB11
3B200DB12
3B200DB16
(57)【要約】
【課題】体液拡散性及び体液吸収性に優れ、体液漏れ及び液戻りが防止され、着用感の良好な比較的薄型の吸収性物品の提供。
【解決手段】液透過性のトップシート10と、液不透過性のバックシート30と、これらの間に配置される吸収体20とを備え、吸収体20は、嵩高多孔体層21と嵩高多孔体層21の内部に固着される高吸収性ポリマー12とを備え、嵩高多孔体層21はその内部を長手方向の一端から他端まで貫通する中空の流路25を有し、流路25内の肌側の面及び非肌側の面には、それぞれ、高吸収性ポリマー12が担持されている、吸収性物品50。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、これらの間に配置される吸収体と、を備える吸収性物品であって、
前記吸収体は、嵩高多孔体層と前記嵩高多孔体層の内部に固着される高吸収性ポリマーとを備え、
前記嵩高多孔体層はその内部を長手方向の一端から他端まで貫通する中空の流路を有し、
前記流路内の肌側の面及び非肌側の面には、それぞれ、前記高吸収性ポリマーが担持されている、吸収性物品。
【請求項2】
前記嵩高多孔体層の外表面を包む吸収性シートをさらに有し、
前記吸収性シートは、内側表面が複数の起毛繊維を立設した起毛面であり、外側表面が非起毛面である基体不織布と、複数の前記起毛繊維間に固着された前記高吸収性ポリマーと、を備える、請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記吸収体は、前記吸収性物品の着用者の下腹部に主に当接する前側部と、前記前側部に連設され、前記着用者の股間部に主に当接する股部と、前記股間部に連設され、前記着用者の主に臀部に当接する後側部と、に区分され、
前記股部は、股幅が相対的に狭い部分と、その前後に連接され、股幅が相対的に広い部分とを有する、請求項1又は請求項2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記吸収体の長手方向寸法が400mm以上500mm以下、前記前側部及び前記後側部の幅方向寸法がそれぞれ90mm以上110mm以下、前記股部の股幅である幅方向寸法が50mm以上70mm以下、及び前記股部の長手方向寸法が100mm以上150mm以下である、請求項3に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記嵩高多孔体層は、肌側に位置する肌側嵩高多孔体層と、非肌側に位置して前記肌側嵩高多孔体層に重ね合わされる非肌側嵩高多孔体層とを有し、
前記肌側嵩高多孔体層の前記非肌側嵩高多孔体層との重ね合わせ面、及び前記非肌側嵩高多孔体層の前記肌側嵩高多孔体層との合わせ面には、それぞれ、肌側に凹む第1の溝部及び非肌側に凹む第2の溝部が互いに対向して前記流路を形成するように配置され、
前記第1の溝部の底面及び前記第2の溝部の底面には前記高吸収性ポリマーが固着されている、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記嵩高多孔体層は、親水性の軟質ウレタンフォームを含む、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記軟質ウレタンフォームは、その内部に孔径0.1mm以上3mm以下の細孔を有し、空隙率が70体積%以上95体積%以下である、請求項6に記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記流路は、長手方向寸法が100mm以上150mm以下、幅方向寸法が3mm以上13mm以下である、請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項9】
前記流路の前記肌側の面及び前記非肌側の面に固着されている前記高吸収性ポリマーの坪量が50g/m2以上400g/m2以下である、請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項10】
前記基体不織布はエアスルー不織布であり、前記エアスルー不織布は、坪量が20g/m2以上200g/m2以下、厚さが0.3mm以上11.0mm以下であり、前記エアスルー不織布を構成する繊維の太さが1.6dtex以上14dtex以下である、請求項2乃至請求項9のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
吸収性物品は、例えば、着用者の肌側に位置する液透過性のトップシートと、着用者の非肌側に位置する液不透過性のバックシートと、これらの間に配置され、フラッフパルプ等の吸収性繊維や高吸収性ポリマーを体液吸収成分として含む吸収体(以下「フラッフ吸収体」ともいう)と、を備え、トップシートを透過してきた尿等の体液をフラッフ吸収体で吸収及び保持するように構成されている。吸収性物品には、例えば、軽失禁パッド、軽失禁ライナー、尿吸収パッド、生理用ナプキン等のパッド製品や、パンツタイプ紙おむつ、テープ止めタイプ紙おむつ等の紙おむつ製品等、用途に応じて様々な形態が存在し、成人及び乳幼児を問わず広く汎用されている。
【0003】
従来の吸収性物品では、例えば、排尿量が多い人の尿漏れを防ぐために、体液吸収成分の含有量を多くしたり、吸収体の幅を広くしたりして対応している。しかしながら、このような対応では、漏れ防止という安心感を与える一方で、体液吸収成分量が多いが故に着用者の股間部がごわついたり、吸収体の幅が着用者の股幅よりも広いが故に窮屈感を感じたり等の着用快適性が劣るという第1の課題がある。体液吸収成分量は変えず、吸収体幅を狭めた場合、股下の窮屈感は緩和されるが、横漏れがより一層生じやすくなる。
【0004】
他方、着用快適性や外観の審美性向上を謳っている下着ライクな薄型の紙おむつが市販されている。該紙おむつでは、フラッフパルプ等の吸収性繊維と高吸収性ポリマーとを含む従来のフラッフ吸収体に代えて、2枚の親水性不織布と、その間に固着担持された高吸収性ポリマーとを含む薄型の吸収性シートが用いられている。しかしながら、該紙おむつは、体液吸収成分(高吸収性ポリマー)の量が少なく、吸収体幅も狭いことから、排尿量が多い人にとっては高吸収量のパンツ型紙おむつよりも漏れやすいという第2の課題がある。さらに、体液吸収成分量は変えず、吸収体幅を狭めた場合、股下の窮屈感は緩和されるが、横漏れが生じやすいという第3の課題がある。薄型の吸収性シートを用いた吸収性物品が種々提案されている。
【0005】
特許文献1には、不織布及び高吸収性ポリマーを含む肌側吸収層と、スポンジ等の親水性多孔質材料及び高吸収性ポリマーを含む非肌側吸収層とを有し、非肌側吸収層は実質的に縦長であり、その幅方向中央部は他の部位に比して、高吸収性ポリマーの分布量が少ない吸収性物品が開示されている。特許文献1によれば、非肌側吸収層に親水性多孔質材料を用い、高吸収性ポリマーの分布を最適化することにより、液拡散性、液保持性を高く保持しつつ、厚みが薄く、吸収速度が速くすることができる、と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の吸収性物品は、吸液速度と保液力に優れ、かつ柔らかさを有する身近な製品であるスポンジ等の親水性多孔質材料を用いているものの、肌側吸収層は高吸収性ポリマーを単純に散布しているが故に、前述の課題2を解決するには至っていない。また、高吸収性ポリマーの単純散布では、ゲルブロッキングも起こしやすく、排尿後期には下層のスポンジの働きを阻害してしまう課題がある。
【0008】
本発明の目的は、体液拡散性及び体液吸収性に優れ、体液漏れ及び液戻りが防止され、着用感の良好な比較的薄型の吸収性物品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、肌側に配置される肌側シート及び非肌側に配置され、肌側シートに積層される非肌側シートとして、それぞれ、軟質ウレタンフォームシートを用い、肌側シートと非肌側シートとの各合わせ面に対向するように溝部を形成し、肌側シートの溝部の肌側底面及び非肌側シートの溝部の非肌側底面にそれぞれ高吸収性ポリマーを固着担持させて吸収体を構成し、該吸収体を、そのまま又は従来とは構造の異なる吸収性シートで包むことにより、目的に叶う吸収性物品、例えば、着用者の股間部に主に当接する股部を厚くしかつ幅を狭くしても、漏れを防止しつつ着用感が良好になる吸収体を含み、体液吸収性に優れ、複数回の体液吸収が可能な吸収性物品が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明は、下記の吸収性物品を提供する。
【0010】
(1)液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、これらの間に配置される吸収体と、を備える吸収性物品であって、
前記吸収体は、嵩高多孔体層と前記嵩高多孔体層の内部に固着される高吸収性ポリマーとを備え、
前記嵩高多孔体層はその内部を長手方向の一端から他端まで貫通する中空の流路を有し、
前記流路内の肌側の面及び非肌側の面には、それぞれ、前記高吸収性ポリマーが担持されている、吸収性物品。
(2)前記嵩高多孔体層の外表面を包む吸収性シートをさらに有し、
前記吸収性シートは、内側表面が複数の起毛繊維を立設した起毛面であり、外側表面が非起毛面である基体不織布と、複数の前記起毛繊維間に固着された前記高吸収性ポリマーと、を備える、上記(1)の吸収性物品。
(3)前記吸収体は、前記吸収性物品の着用者の下腹部に主に当接する前側部と、前記前側部に連設され、前記着用者の股間部に主に当接する股部と、前記股間部に連設され、前記着用者の主に臀部に当接する後側部と、に区分され、
前記股部は、股幅が相対的に狭い部分と、その前後に連接され、股幅が相対的に広い部分とを有する、上記(1)の又は(2)の吸収性物品。
(4)前記吸収体の長手方向寸法が400mm以上500mm以下、前記前側部及び前記後側部の幅方向寸法がそれぞれ90mm以上110mm以下、前記股部の股幅である幅方向寸法が50mm以上70mm以下、及び前記股部の長手方向寸法が100mm以上150mm以下である、上記(3)の吸収性物品。
(5)前記嵩高多孔体層は、肌側に位置する肌側嵩高多孔体層と、非肌側に位置して前記肌側嵩高多孔体層に重ね合わされる非肌側嵩高多孔体層とを有し、
前記肌側嵩高多孔体層の前記非肌側嵩高多孔体層との重ね合わせ面、及び前記非肌側嵩高多孔体層の前記肌側嵩高多孔体層との合わせ面には、それぞれ、肌側に凹む第1の溝部及び非肌側に凹む第2の溝部が互いに対向して前記流路を形成するように配置され、
前記第1の溝部の底面及び前記第2の溝部の底面には前記高吸収性ポリマーが固着されている、上記(1)乃至(4)のいずれかの吸収性物品。
(6)前記嵩高多孔体層は、親水性の軟質ウレタンフォームを含む、上記(1)乃至(5)のいずれかの吸収性物品。
(7)前記軟質ウレタンフォームは、その内部に孔径0.1mm以上3mm以下の細孔を有し、空隙率が70体積%以上95体積%以下である、上記(6)の吸収性物品。
(8)前記流路は、長手方向寸法が100mm以上150mm以下、幅方向寸法が3mm以上13mm以下である、上記(1)乃至(7)のいずれかの吸収性物品。
(9)前記流路の前記肌側の面及び前記非肌側の面に固着されている前記高吸収性ポリマーの坪量が50g/m2以上400g/m2以下である、上記(1)乃至(8)のいずれかの吸収性物品。
(10)前記基体不織布はエアスルー不織布であり、前記エアスルー不織布は、坪量が20g/m2以上200g/m2以下、厚さが0.3mm以上11.0mm以下であり、前記エアスルー不織布を構成する繊維の太さが1.6dtex以上14dtex以下である、上記(2)乃至(9)のいずれかの吸収性物品。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、体液拡散性及び体液吸収性に優れ、体液漏れ及び液戻りが防止され、着用感の良好な比較的薄型の吸収性物品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係るパンツ型吸収性物品の構成を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図1に示すパンツ型吸収性物品の構成を示す模式展開図である。
【
図3】
図2に示すX
1-X
1切断線による幅方向の模式断面図である。
【
図4】吸収性シートの構成を模式的に示す斜視図である。
【
図5】吸収体の外観構成を模式的に示す斜視図である。
【
図6】
図1に示すパンツ型吸収性物品を着用したときの吸収体の変形を模式的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書において、吸収性物品50の着用とは、体液吸収の前後を問わず、着用者の身体に装着した状態をいう。吸収性物品50の、長手方向(又は縦方向)とは、吸収性物品50を着用したときに着用者の股間部を介して前後に亘る、図中Yで示す方向であり、幅方向(又は横方向)とは長手方向に対して略直交する、図中Xで示す方向であり、厚み方向とは各構成部材を積層する、図中Zで示す方向である。吸収性物品50及びその各構成部材の肌側の表面(以下「肌側の面」ともいう)とは着用者の肌に当接する表面又は該肌を臨む表面であり、非肌側の表面(以下「非肌側の面」ともいう)とは着用者の衣類に当接する表面又は衣類を臨む表面である。体液とは、尿、血液や軟便中の水分等の体内から体外に排出された液体をいう。
【0014】
<吸収性物品>
以下、図面を参照しつつ、本実施形態のパンツタイプ紙おむつに係る吸収性物品50について説明する。
図1乃至
図2は、パンツ型吸収性物品50(以下単に「吸収性物品50」ともいう)を示す。
図3は吸収部55を主に示す。
図4は、吸収性シート24を示す。
図5及び
図6は、吸収体20の効果を示す。各図は、吸収性物品50及び各構成部材の形状や、寸法の大小関係等を規定するものではない。本実施形態の吸収性物品50は、成人用のパンツタイプ紙おむつであるが、乳幼児用、成人用及び高齢者用の種々の吸収性物品としても使用でき、例えば、軽失禁パッド、軽失禁ライナー、尿吸収パッド、生理用ナプキン等のパッド製品、失禁用使い捨ておむつ、テープ止めタイプ紙おむつ、パンツタイプ紙おむつ等の紙おむつ製品等が挙げられる。
【0015】
パンツ型吸収性物品50は、着用者の股間部を前後から覆う前後方向(長手方向)に略帯状の形状を有する吸収部55と、吸収部55をその外側から支持しつつ吸収部55の周囲に延びてパンツ型吸収性物品50の外形形状を構成する外装体60と、を備える。パンツ型吸収性物品50の
図2に示す展開時の長手方向寸法は例えば600mm以上1000mm以下の範囲であり、幅方向寸法は例えば450mm以上900mm以下の範囲である。この展開時寸法を有するパンツ型吸収性物品50は、必要に応じて所定領域に弾性伸縮部材を配設した後、Sサイズ、Mサイズ、Lサイズ等の各種サイズの成人用のパンツ型吸収性物品50とすることができる。
【0016】
本実施形態によれば、例えば、次のような優れた効果が得られる。
第1に、吸収体20がフラッフパルプ等の吸収性繊維を含有していないことから、吸収性繊維を用いた吸収体を備える従来の吸収性物品よりも液戻り量が少なく、薄型化され、体液吸収による圧迫感等の不快感が大きく軽減される。
第2に、体液が排出されたときに、まず、嵩高多孔体層21が体液を保持し、次いで、高吸収性ポリマー12が嵩高多孔体層21中の体液を吸収して、嵩高多孔体層21を比較的ドライ状態に戻すというサイクルが繰り返され、体液吸収速度を低下させることなく、複数回の体液吸収を1着の吸収性物品50で円滑に実行できる。
第3に、嵩高多孔体層21の内部に体液流路として中空の流路25を設け、流路25中の肌側の面及び非肌側の面に高吸収性ポリマー12を固着させることで、嵩高多孔体層21からの体液の吸液効率が高まり、急に多量に体液が排出されても(例えば高齢者の平均排尿速度10mL/秒以上で排出された体液)、横漏れが非常に起こりにくい。
第4に、流路25中に固着された高吸収性ポリマー12が体液を吸収して膨潤しても、流路25内を超えて拡がることはなく、中空の領域が塞がることはなく、高吸収性ポリマー12未配置の部分は体液の通り道として残存するため、1度の体液排出の終期、及び1着の吸収性物品50の使用終期でも通液性が維持され、体液吸収速度が高水準に保たれる。
第5に、クッション性を有する嵩高多孔体層21の内部に高吸収性ポリマー12が存在するため、また、吸収体20を吸収性シート24で包む場合でも、吸収性シート24はクッション性を有する複数の起毛繊維11x間に高吸収性ポリマー12が固着担持されているため、体液排出前の高吸収性ポリマー12のざらつき感、高吸収性ポリマー12が体液を吸収して膨潤した直後のゼリー状の圧迫感、及び高吸収性ポリマー12が膨潤及び硬化した後のゴツゴツした凹凸感を感じにくく、体液排出後も肌触りが良好で、着用感に優れている。
第6に、前述のような優れた体液吸収性能を有することから、吸収体20の股部の股幅を狭くしても、体液の横漏れが発生しにくく、さらに股幅を狭くすることで、着用者の股下の窮屈感を低減することができ、この点でも着用感が一層向上する。
第7に、吸収性シート24をC折りして吸収体20を包み、トップシート10と吸収体20との間で、吸収性シート24の幅方向両端を対向させて、長手方向に延びるスリット状の空間22を形成すると、体液拡散性がさらに向上して、体液吸収性能が一層高まるとともに、吸収体20の股部の股幅を狭めても、横漏れ防止にも非常に有効である。
【0017】
本実施形態のパンツ型吸収性物品50の外装体60及び吸収部55は、例えば、以下の構成を有する。
【0018】
<外装体>
図1及び
図2に示す外装体60は、着用者の腹部に主に当接する腹側領域3と、着用者の背部に主に当接する背側領域5と、腹側領域3と背側領域5との間に介在し、着用者の股間部に主に当接する股下領域4と、に区分される。股下領域4はその肌側面で吸収部55のバックシート30側の一部又は全部を支持する。また、後述するサイドシール部66を設ける領域(脚周り開口部2を形成しない領域)を腹側領域3又は背側領域5とし、サイドシール部66を設けない領域(脚周り開口部2を形成する領域)を股下領域4と区分してもよい。
【0019】
外装体60は、
図1及び
図2に示すように、股下領域4の長手方向中央で幅方向に延びる仮想中心線に対して略対称な腹側領域3と背側領域5とを有し、吸収部55も仮想中心線に対して略対称に配置されている。そして、吸収部55が内側となるように仮想中心線で二つ折りにされ、腹側領域3及び背側領域5の幅方向両側縁が一対のサイドシール部66で接合されている。サイドシール部66は、外装体60の所定領域の不織布等をヒートシール溶着、超音波溶着等の溶着方法で接合したものであり、これにより、伸縮性を有する胴周り開口部1と、左右一対の脚周り開口部2とを外装体60に形成し、パンツ型吸収性物品50を全体として着脱可能なパンツ状に構成する。
【0020】
外装体60は、2枚以上の不織布により構成されている。本実施形態の外装体60は、
図1及び
図2のように、外装不織布シート67と、外装不織布シート67の肌側に配置される内装不織布シート68と、必要に応じて配置される補助不織布シート69とを含む。補助不織布シート69は、例えば、吸収部55の端部を覆い、吸収部55の肌へのあたりを和らげる。腹側領域3の長手方向端部の幅方向一縁では、長手方向に沿って、外装不織布シート67と内装不織布シート68とを2層に積層した領域と、補助不織布シート69を含んで3層に積層した領域と、が存在してもよい。このような不織布積層構造は、図示しないが、腹側領域3の幅方向他縁、及び背側領域5の幅方向両縁でも同様である。外装体60の不織布積層構造は本実施形態に限定されず、従来から公知の種々の実施形態を特に限定なく採用できる。
【0021】
外装不織布シート67、内装不織布シート68及び補助不織布シート69には、それぞれ、サーマルボンド不織布、エアスルー不織布、スパンボンド不織布等の不織布、好ましくはスパンボンド不織布であって、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂からなる不織布を使用できる。これらの不織布を用いる場合、その坪量は、例えば、10g/m2以上40g/m2以下の範囲である。
【0022】
外装体60の所定の領域には、
図1及び
図2に示すように必要に応じて、1又は複数の弾性伸縮部材61、62、63、64、65等を配設してもよい。例えば、腹側胴周り領域3Aと背側胴周り領域5Aには幅方向に沿って複数の胴周り領域弾性伸縮部材61、62を配設し、腹側胴周り領域3Bと背側胴周り領域5Bには幅方向に沿って複数の胴周り領域弾性伸縮部材63、64を配設し、脚周り開口部2の縁辺に沿って脚周り弾性伸縮部材65を配設している。弾性伸縮部材の配設により、外装体60の表面に複数のギャザーが形成される。弾性伸縮部材61、62、63、64、65としては公知のものをいずれも使用でき、例えば、天然ゴム、合成ゴム、ポリウレタン等からなる、糸状、紐状、帯状のものが挙げられ、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0023】
<吸収部>
吸収部55は、
図2及び
図3に示すように、液透過性のトップシート10と、液不透過性のバックシート30と、トップシート10及びバックシート30の間に配置される吸収体20と、漏れ防止を目的に設けられた立体ギャザー40と、を含む。なお、本実施形態の吸収部55は、トップシート10、吸収体20、及びバックシート30を基本構成単位とするものであり、必要に応じて、前述のような立体ギャザー40の配設、トップシート10と吸収体20との間への液透過性のトランスファシート(不図示)や液透過性のセカンドシート(不図示)の配設等の、公知の様々な改変を施すことができる。以下、吸収性部55の構成部材について、トップシート10、吸収体20、バックシート30、及び立体ギャザー40の順で更に詳しく説明する。
【0024】
<トップシート>
トップシート10は、吸収体20に向けて体液を速やかに通過させて吸収体20の面方向に体液を拡散させる液透過性のシート状基材である。トップシート10は、着用者の肌に直接当接してもよいように、柔らかな感触で、肌に刺激を与えない基材が好ましい。該基材としては、例えば、親水性シート、同種又は異種の親水性シートの積層体である複合不織布、開口ポリエチレンフィルム等の開口性フィルム、ポリエチレンフォーム、ウレタンフォーム等の発泡フィルム等が挙げられる。親水性シートとしては、例えば、ポリプロピレンやポリエチレン等の合成樹脂からなる合成繊維、レーヨン等の再生繊維、綿等の天然繊維等を用いて作製された、エアスルー不織布、サーマルボンド不織布、スパンレース不織布、スパンボンド不織布等が挙げられる。これらの中でも各不織布が好ましい。
【0025】
トップシート10には、液透過性を向上させる観点から、エンボス加工や穿孔加工を表面に施してもよい。トップシート10は、肌への刺激を低減させる観点から、ローション、酸化防止剤、抗炎症成分、pH調整剤、抗菌剤、保湿剤等の1種又は2種以上を含有してもよい。トップシート10の坪量は、強度、加工性及び液戻り量の観点から、例えば、15g/m2)以上40g/m2以下の範囲である。トップシート10の形状は特に制限されず、漏れがないように体液を吸収体20に誘導するために必要とされる、吸収体20の一部又は全部を覆う形状であればよい。
【0026】
<吸収体>
吸収体20は、例えば、トップシート10とバックシート30との間に配置され、トップシート10を透過してきた体液を吸収及び保持する。吸収体20は、例えば、着用者の下腹部に主に当接する前側部55aと、長手方向において前側部55aの一端に連設され、着用者の股間部に主に当接する股部55bと、長手方向において股部55bの前側部55aとは反対側の端部に連設され、着用者の主に臀部に当接する後側部55cと、に区分される。好ましい実施形態では、股部55aは、股幅が相対的に狭い部分と、その前後(長手方向の両側)に連接され、股幅が相対的に広い部分とを有している。この実施形態によれば、着用者の股間部の窮屈感が十分に解消され、着用者の両脚の動きが円滑になって、歩行し易くなるとともに、前述した優れた吸収性能により、横漏れが防止される。
【0027】
前述のように区分される吸収体20において、その長手方向寸法は、例えば、400mm以上500mm以下の範囲であり、前側部55a及び後側部55cの幅方向寸法は、例えば、それぞれ90mm以上110mm以下の範囲であり、股部の股幅である幅方向寸法は、例えば、50mm以上70mm以下の範囲であり、及び股部55bの長手方向寸法は例えば100mm以上150mm以下の範囲である。吸収体20の各寸法を前述の範囲とすることで、着用者の股間部が窮屈になることや、横漏れの発生等を防止しつつ、吸収速度、吸収量等の吸収性能を高め、複数回(例えば4回以上)の体液吸収を実行し得る吸収体20とすることができる。吸収体20の平面視形状は、股部の幅方向寸法が前述の範囲内であれば特に限定されず、例えば、砂時計型、Iの字型、長方形、4角が丸まった角丸四角形、長円等が挙げられる。
【0028】
本実施形態の吸収体20は嵩高多孔体層21を備え、嵩高多孔体層21は、吸収性シート24により包まれているが、本実施形態に限定されず、嵩高多孔体層21は、吸収性シート24に包まれていなくてもよい。
【0029】
(第1実施形態の嵩高多孔体層)
嵩高多孔体層21は、発泡体分野でスポンジと呼ばれる樹脂発泡体を含んで構成される。樹脂発泡体としては、内部に多数の細孔を有しかつ空隙率が高い液透過性のスポンジ材質を有し、かつ親水性を有するもの(親水化処理をしたものも含む)を特に限定なく使用できる。本実施形態では、例えば、細孔径0.1mm以上3mm以下、空隙率70vol%以上95vol%以下の範囲であり、親水性を有する樹脂発泡体を好ましく使用できる。その一例を挙げれば、軟質ウレタンフォームである。細孔径0.1mm未満であるか及び/又は空隙率70vol%未満であると、嵩高多孔体層21の液透過性及び体液拡散性が低下し、横漏れ等の体液漏れが発生し易くなる傾向がある。細孔径が3mmを超えるか及び/又は空隙率95vol%を超えると、嵩高多孔体層21の一時的な体液貯留性が低下し、液戻り等が発生し易くなる傾向がある。嵩高多孔体層21は、その内部に多くの細孔を有しかつ空隙率が高く、弾力性に富むことから、例えば、吸収性物品50の着用者が体液を排出したときに、高吸収性ポリマー12に吸収される前に、一時的に体液を保持し、液戻りの発生を著しく低減させるとともに、吸収性物品50の着用感を向上させる。
【0030】
嵩高多孔体層21は、その内部を長手方向の一端から他端まで貫通する複数の中空の流路25を有する。複数の流路25は、
図3に示すように、幅方向に所定の間隔(例えばほぼ等間隔)を空けてほぼ平行に配列されている。流路25は、例えば、体液の通り道になり、嵩高多孔体層21の体液拡散性を向上させ、吸収性物品50の使用初期から使用終期まで、体液拡散性を高水準に保持する。なお、嵩高多孔体層21の寸法は、前述した吸収体20の寸法と同じである。
【0031】
流路25は、その内部に肌側の面及び非肌側の面を有し、各面には高吸収性ポリマー12が固着されている。各面への高吸収性ポリマー12の担持には、ホットメルト接着剤等が用いられる。ここで用いられる高吸収性ポリマー12の種類や形状は特に問わないが、通液速度が0.3psiで20mL/min以上が好ましい。肌側の面及び非肌側の面における高吸収性ポリマー12の坪量は、例えば、50g/m2以上400g/m2以下の範囲である。坪量を前述の範囲とすることで、高吸収性ポリマー12が体液を吸収して膨潤しても、吸収性物品50の使用終期まで中空の流路25が塞がれることがなく、流路25の側面の液透過性も維持されるので、優れた体液拡散性が保持される。
【0032】
流路25の長手方向寸法は、嵩高多孔体層21の長手方向全長にわたって備えられ、例えば、100mm以上150mm以下の範囲であり、幅方向寸法は3mm以上13mm以上の範囲、又は3mm以上10mm以上の範囲であり、厚さ方向寸法は2mm以上5mm以下の範囲である。幅方向寸法が3mm未満では、体液拡散性が低減する傾向があり、幅方向寸法が13mmを超えると、流路25の幅が大きくなりすぎて流路25の数が少なくなり、嵩高多孔体層21全体としての高吸収性ポリマー12の量が減り、また、流路25内に固着された高吸収性ポリマー12が流路25から脱落し易くなり、横漏れが生じ易くなる傾向がある。
【0033】
図5には、長手方向の全長にわたって4本の流路25が形成された本実施形態の吸収体20(嵩高多孔体層21)示しているが、流路25の数は本実施形態に限定されず、1又は2以上の任意の数とすることができるが、例えば、2本以上6本以下の範囲、又は3本以上5本以下の範囲である。流路25、特に複数本の流路25を形成すると、
図6に示すように、吸収体20が幅内側方向へ屈曲し易くなり、着用者の股間部(吸収体20の股部)での着用不快感が軽減される。
【0034】
(第2実施形態の嵩高多孔体層)
図3に示すように、第2実施形態の嵩高多孔体層21は、肌側に位置する肌側嵩高多孔体層21aと、非肌側に位置して肌側嵩高多孔体層21aに重ね合わされる非肌側嵩高多孔体層21bとを有し、肌側嵩高多孔体層21aの非肌側嵩高多孔体層21bとの重ね合わせ面、及び非肌側嵩高多孔体層21bの肌側嵩高多孔体層21aとの合わせ面には、それぞれ、肌側に凹む第1の溝部及び非肌側に凹む第2の溝部が互いに対向して流路25を形成するように配置され、第1の溝部の底面(肌側の面)及び第2の溝部の底面(非肌側の面)には高吸収性ポリマー12が固着されている。第2実施形態の嵩高多孔体層21は、第1実施形態の嵩高多孔体層21を厚さ方向に2分割している以外は、同じ構成を有している。好ましい実施形態では、肌側嵩高多孔体層21aと、非肌側嵩高多孔体層21bとは、吸収性物品50の着用者が体を動かすこと等に伴って、第1の溝部と第2の溝部との位置ずれ等が生じないように、ホットメルト接着剤等で接着する。接着面は通液性が低下するものの、第1、第2の溝部と各側面が体液を透過するため、第2実施形態の嵩高多孔体層21の体液吸収性は実用上問題のない程度である。
【0035】
(吸収性シート)
吸収性シート24は、
図3及び
図4に示すように、一方の表面が複数の起毛繊維11xが立設された起毛面11aであり、他方の面が非起毛面11bである基体不織布11と、基体不織布11の起毛面11aの複数の起毛繊維11x間に固着担持された高吸収性ポリマー12と、を含む。高吸収性ポリマー12は、例えば、ホットメルト接着剤により起毛繊維11x間に固着担持される。高吸収性ポリマー12としては、嵩高多孔体層21中に固着されるものと同じものを特に限定なく使用できる。吸収性シート24における高吸収性ポリマー12の坪量は、例えば、200g/m
2以上1200g/m
2以下の範囲である。
【0036】
本実施形態の吸収性シート24は、起毛面11aの起毛繊維11x間に高吸収性ポリマー12が固着担持された体液吸収層が嵩高多孔体層21と対面し、かつ高吸収性ポリマー12の幅方向両端が嵩高多孔体層21とトップシート10との間で幅方向に離隔して対向し、スリット状空間22を形成するように、嵩高多孔体層21を包む。吸収性シート24による嵩高多孔体層21の包み方は、C折りとも呼ばれる。
【0037】
吸収性シート24による嵩高多孔体層21のC折りは、より具体的には、吸収性シート24の起毛面11a(体液吸収層)の幅方向中央部付近に嵩高多孔体層21の非肌側面が下になるように載置し、必要に応じて体液吸収層表面と嵩高多孔体層21の非肌側面とを例えばホットメルト接着剤で接着する第1工程と、吸収性シート24の幅方向両側を嵩高多孔体層21に向けて折り返して嵩高多孔体層21幅方向の両側面を覆う第2工程と、吸収性シート24の幅方向両端を嵩高多孔体層21の肌側面の幅方向両端部を覆うように折り返す第3工程と、をこの順で実施することにより行なわれ、嵩高多孔体層21とトップシート10との間にスリット状空間22を有する、吸収体20(嵩高多孔体層21)のC折り体が得られる。
【0038】
嵩高多孔体層21を吸収性シート24で包むことで、嵩高多孔体層21が体液を吸収しつつ、嵩高多孔体層21の幅方向に位置する吸収性シート24の体液吸収層により横漏れが防止され、複数回、例えば4回又はそれ以上の体液吸収が可能になる。また、吸収性シート24の起毛繊維11xがクッション性を示すので、吸収性物品50全体としてのフィット性、着用感も向上する。なお、本実施形態に限定されず、例えば、トップシート10と嵩高多孔体層21との間で、吸収性シート24の幅方向両端部が重なり合うように構成してもよい。重なり合う部分はホットメルト接着剤等で接着してもよい。
【0039】
(スリット状空間)
スリット状空間22は、
図3に示すように、トップシート10と嵩高多孔体層21との間で、吸収性シート24の幅方向両端が離隔して対向する空間領域であり、長手方向に延びている。スリット状空間22は、吸収体20の長手方向一端から長手方向他端まで延びていてもよいが、吸収体20全体としての機械的強度及び体液保持能力等の観点から、長手方向寸法は例えば100mm以上150mmの範囲であり、幅方向寸法は5mm以上20mm以下の範囲、又は7mm以上15mm以下の範囲である。長手方向寸法及び幅方向寸法を前述の範囲とすることで、例えば、吸収体20の機械的強度及び体液保持能力を高水準に維持した状態で、体液拡散性を向上させることができる。なお、スリット状空間22の幅方向寸法が5mm未満では、体液拡散性の向上効果が不十分になる傾向があり、20mmを超えると、吸収性シート24の幅方向寸法が短くなって吸収体20全体としての高吸収性ポリマー12の量が減少し、また、吸収体20の機械的強度が低下し、漏れにつながる傾向がある。
以下、嵩高多孔体層21及び吸収性シート24の構成に使われる各材料について説明する。
【0040】
(軟質ウレタンフォーム)
嵩高多孔体層21に用いられる樹脂発泡体の一種である軟質ウレタンフォームは、ウレタン樹脂の発泡体であり、前述のような細孔径及び空隙率の各範囲を満たすものであり、体液拡散性及び柔軟性に優れている。軟質ウレタンフォームは、例えば、ポリオール、ポリイソシアネート等の原料化合物、発泡剤、整泡剤、触媒等の添加剤等を混合し、得られた混合物を加熱して発泡させることにより得ることができる。また、原料化合物を加熱下に反応させつつ、気体系の発泡剤を注入してもよい。原料化合物の種類、添加剤の種類と添加量、発泡時の加熱温度、発泡時間、発泡時の加圧力といった反応条件を適宜選択することにより、軟質ウレタンフォームの発泡倍率その他の特性を適宜調整できる。
【0041】
軟質ウレタンフォームの坪量及び見かけ密度は、体液拡散性や柔軟性、液戻りや体液漏れの防止性、通気性や蒸れ等の観点から、それぞれ、坪量が例えば30g/m2以上300g/m2以下の範囲、又は50g/m2以上250g/m2以下の範囲から選択され、見かけ密度は、吸収体20全体としての機械的強度、体液吸収後の吸収体20のずり落ち防止、柔軟性等の観点から、100kg/m3以上200kg/m3以下の範囲、又は120g/m3以上180g/m3以下の範囲からから選択される。
【0042】
軟質ウレタンフォームの骨格表面は親水性でも疎水性でもよいが、体液の濡れ易さ等の観点から、好ましい実施形態では骨格表面は親水性である。なお、親水性を有する骨格としては、ポリオールとポリアルキレンオキシドポリオールとを含有するものが挙げられる。また、疎水性骨格に界面活性剤やエチレンオキシド等に由来する親水性基を導入して親水化したものでもよい。骨格表面が親水性であるか否かは、まず、軟質ウレタンフォームから幅10mm以上、長さ10mm以上の寸法で切り出した試料を撓みがないように平面上に静置し、次に、試料にイオン交換水の水滴(0.05mL)を10滴たらし、試料に吸収されるまでの時間を測定し、この時間が5秒以内である場合、又は8滴以上の水滴が吸収された場合を親水性であると判断する。
【0043】
(基体不織布)
吸収性シート24に用いられる基体不織布11としては、親水性不織布が用いられる。基体不織布11の厚さは特に限定されないが、着用感及び吸収性能のバランスの観点から、0.3mm以上11.0mm以下の範囲、0.5mm以上5.0mm以下の範囲又は0.5mm以上2.0mm以下の範囲である。基体不織布11を構成する繊維の太さは例えば1.6dtex以上14dtex以下の範囲、1.8dtex以上9.0dtex以下の範囲又は2.0dtex以上6.0dtex以下の範囲である。また、基体不織布11の坪量は、例えば35g/m2以上120g/m2以下の範囲である。このような親水性不織布の中でも、エアスルー不織布が好ましい。
【0044】
起毛面11aに立設された複数の起毛繊維11xは、基体不織布11の表面に毛羽立ち加工等の起毛加工を施すことにより、形成される。基体不織布11の複数の起毛繊維11xにより、不織布本来の嵩高さに加えて、高吸収性シート24に適度な厚さとやわらかさが付与され、良好なクッション性が発生し、着用時のフィット性や着用感が向上する。また、基体不織布11を起毛させると、起毛繊維11x間に高吸収性ポリマー12を分散させて固着担持させることができる。基体不織布11の片側表面11aを起毛させる方法としては、回転ノコ刃、ニードルパンチ等を用いる方法が挙げられ、インラインでの生産性やコストの観点から回転ノコ刃を用いる方法が好ましい。
【0045】
基体不織布11における起毛の程度は特に限定されず、目視で起毛を確認できればよいが、例えば、起毛の程度としての起毛率が5%以上90%以下の範囲、又は8%以上80%以下の範囲である。起毛率とは、起毛加工による基体不織布11の厚さの増加率を意味する。起毛前の基体不織布11の厚さをT1、起毛後の基体不織布11の厚さをT2としたとき、起毛率(%)=[(T2―T1)/T1]×100である。厚さT1、T2は、ハイトゲージ((株)ミツトヨ製)を用いて無荷重下で測定される。また、基体不織布11の非起毛面11bでも、繊維を起毛させてもよい。
【0046】
高吸収性ポリマー12を基体不織布11の起毛面11aに立設された複数の起毛繊維11x間に固着担持するには、例えば、ホットメルト接着剤が用いられる。ホットメルト接着剤としては、融点が100℃以上180℃以下のものを特に限定なく使用でき、例えば、スチレン-ブタジエン-スチレン系共重合体、スチレン-イソプレン-スチレン系共重合体等の合成ゴム系ホットメルト接着剤、エチレン-酢酸ビニル共重合体等のオレフィン系ホットメルト接着剤等が挙げられる。ホットメルト接着剤の塗布方法としては、ノズルから溶融状態のホットメルト接着剤を非接触式で塗布するカーテンコート法やスパイラル法、接触式で塗布するスロット法等、公知の方法が利用できる。ホットメルト接着剤の含有量は、高吸収性ポリマーの吸収性及び装着時の肌触りを損なわない観点から、例えば10g/m2以下の範囲である。
【0047】
(高吸収性ポリマー)
嵩高多孔体層21及び吸収性シート24に用いられる高吸収性ポリマー12としては、体液を吸収し、かつ、逆流を防止できるものであれば特に制限はなく、ポリアクリル酸塩、ポリアスパラギン酸塩、(デンプン-アクリル酸)グラフト共重合体、(アクリル酸-ビニルアルコール)共重合体、(イソブチレン-無水マレイン酸)共重合体及びそのケン化物等が挙げられる。これらの中でも、重量当たりの吸収量の観点から、ポリアクリル酸塩が好ましく、ポリアクリル酸アルカリ金属塩がより好ましく、ポリアクリル酸ナトリウムが更に好ましい。高吸収性ポリマーは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0048】
高吸収性ポリマー12は、例えば、粒子状、繊維状等の形態で用いられるが、取扱い易さ等の観点から好ましくは粒子状で用いられる。このとき、粉体としての流動性が悪い微粉末の高吸収性ポリマー12の使用を避け、中位粒子径を有する高吸収性ポリマーを用いることにより、吸収に関する基本性能を高め、かつ、フラッフ吸収体21が硬くなることにより発生するごつごつとした触感を低減することができる。高吸収性ポリマー12の中位粒子径は、例えば、50μm以上600μm以下の範囲又は100μm以上500μm以下の範囲である。
【0049】
<キャリアシート>
本実施形態では、吸収性シート24で包まれる前の吸収体20(嵩高多孔体層21)全体をキャリアシート(不図示)で包んでもよい。キャリアシートとしては、この分野で常用される親水性シートをいずれも使用でき、例えば、サーマルボンド不織布、スパンボンド不織布、エアレイド不織布、エアスルー不織布、パルプ含有不織布等の親水性不織布、ティシュペーパー、吸収紙等が挙げられる。親水性不織布の中でも、サーマルボンド不織布、スパンボンド不織布、エアスルー不織布、パルプ含有不織布等の親水性不織布がより好ましく、エアスルー不織布、パルプ含有不織布、スパンボンド不織布等がさらに好ましい。また、キャリアシートの厚さは例えば0.10mm以上0.25mm以下の範囲、坪量は例えば5g/m2以上40g/m2以下の範囲である。
【0050】
<バックシート>
バックシート30は、吸収体20が保持する体液が衣類を濡らさないような液不透過性を備えた通気性又は非通気性の基材を用いて形成されればよく、該基材としては、例えば、樹脂フィルム、樹脂フィルムと不織布との積層体である複合シート等が挙げられる。複合シートに用いられる不織布としては、製法を特に限定せず、例えば、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布等の単層不織布、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布積層体、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布/スパンボンド不織布積層体等の複合不織布、これらの複合材料等が挙げられる。また、樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンとポリプロピレンの複合フィルム等が挙げられる。
【0051】
バックシート30の坪量は、強度及び加工性の点から、例えば15g/m2以上60g/m2以下の範囲、又は15g/m2以上40g/m2以下の範囲である。また、着用時の蒸れを防止するため、バックシート30には、通気性を持たせることが好ましい。バックシート30に通気性を備えさせるためには、例えば、基材の樹脂フィルムにフィラーを配合したり、バックシート30にエンボス加工を施したりすればよい。なお、フィラーとしては炭酸カルシウムを挙げることができ、その配合方法は、公知の方法を制限なく実施できる。
【0052】
<立体ギャザー>
立体ギャザー40は、例えば、吸収性物品50の着用者が排泄した体液の横漏れを防止するために、吸収部55の幅方向両端付近で吸収部55の長さ方向に沿ってトップシート10の肌側面に固定される。立体ギャザー40は、弾性伸縮部材40aと、撥水性及び/又は防水性のシート部材40bと、を含む。
【0053】
弾性伸縮部材40aは、シート部材40bの自由端(他端)付近に長さ方向に沿って配設され、該自由端に起立性を付与し、シート部材40bの自由端及びその近傍領域を着用者の体型に合わせて変形可能にする。シート部材40bは、本実施形態では幅方向一端(固定端)がバックシート30の肌側面の幅方向両端付近に固定され、幅方向途中部がトップシート10の肌側面の幅方向両端付近に固定され、幅方向他端が起立性を有する自由端である。シート部材40bの固定端(幅方向一端)の固定位置は、本実施形態に限定されず、例えば、バックシート30の非肌側面、内部に吸収体20を収納したトップシート10とバックシート30との各縁辺の全部又は一部接合体の肌側面又は非肌側面の幅方向両端付近、トップシート10の肌側面の幅方向両端付近等が挙げられる。
【0054】
シート部材40bは撥水性及び/又は防水性を有するシートであり、例えば不織布から構成される。第1シート部材用不織布としては、疎水性繊維にて形成された撥水性及び/又は防水性(液不透過性)の不織布を特に限定なく使用でき、例えば、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布/スパンボンド不織布積層体である複合不織布(SMS不織布)等が挙げられる。シート部材40bの目付は、例えば、13g/m2以上20g/m2以下の範囲である。弾性伸縮部材40aとしては、例えば、天然ゴム、合成ゴム、ポリウレタン等からなる、糸状、紐状、帯状のものを適宜使用することができる。
【0055】
<吸収性物品の製造方法>
吸収性物品50は、公知の製造方法により製造でき、例えば、吸収体20又は吸収性シート24でC折りした吸収体20をトップシート10とバックシート30との間に配置する工程と、トップシート10とバックシート30とを一部又は全周に亘ってホットメルト接着剤やヒートエンボス、超音波エンボス、高周波エンボス等を用いて固定する工程と、バックシート30及びトップシート10の所定位置に立体ギャザー40を設置して吸収部55を得る工程と、不織布等を用いて
図2に示すような所定形状の外装体60を作製する工程と、吸収部55を外装体60の所定位置に取り付ける工程と、吸収部55を取り付けた外装体60をパンツ型の外観形状にする工程と、を含む製造方法が挙げられる。そして、吸収性物品50を所定の折り線に沿って折り畳んで包装体に個別包装することで、製品が得られる。また、吸収部55には、レッグギャザー、ウエストギャザー、サイドフラップ等を必要に応じて設けることができる。
【0056】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態や実施例に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【実施例0057】
以下に実施例及び比較例を挙げ、本実施形態を更に具体的に説明する。
【0058】
(実施例1~6及び比較例1~3)
吸収性物品として、使い捨てパンツ型おむつを作製した。
軟質ウレタンフォーム(骨格表面が親水性、坪量80g/m2、厚さ2.0mm、見かけ密度140kg/m3)を用い、表1に示す嵩高多孔体層2枚を用い、これらを各溝部が対向して中空の流路を形成するように合わせてホットメルト接着剤で接着し、実施例1~6の吸収体を作製した。また、高吸収性ポリマー16gからなる吸収体を作製し、比較例1~3の吸収体とした。
次に、エアスルー不織布(坪量60g/m2、厚さ0.96mm、繊維太さ2.0dtex)の片面に回転ノコ刃を用いて起毛処理を施し、起毛後厚さ1.2mm、起毛率25%の基体不織布を作製した。この基体不織布の起毛面に高吸収性ポリマーを280g/m2の坪量で散布しで、ホットメルト接着剤で固着担持し、固着担持層を形成し、吸収性シートを作製した。
【0059】
トップシートとして坪量30g/m2のエアスルー不織布、バックシートとして坪量32g/m2の通気性ポリエチレンフィルムを用い、トップシートとバックシートとの間に、上記で得られた各吸収体を配置し、外装体として2枚のポリプロピレン製スパンボンド不織布(坪量20g/m2)の積層体を用い、実施例1~6及び比較例1~3の使い捨てパンツ型紙おむつを作製した。
【0060】
上記で得られた実施例1~6及び比較例1~3の使い捨てパンツ型紙おむつについて、下記の評価試験を実施した。結果を表1に示す。
<吸収速度3回法>
底面積16.8cm2の円柱の中央に内径19mmの穴が開いており、重さを755.6gとした測定冶具を、パンツ型吸収性物品の長手方向、かつ幅方向の中央部の上に置き、上部の穴から生理食塩水それぞれ150mlを投下し、生理食塩水がパンツ型吸収性物品に接触した時点から治具中央円内の円周に液体が完全に吸い込まれるところを終点として時間を計測した(1回目)。そして3分経過後に同様の時間を計測し(2回目)、同様に3回目を計測した。
<液戻り量>
トップシートを上に向けた状態で、生理食塩水500mlを吸収体の中心部に向かって注水し、10分間放置した後、生理食塩水の吸収部位に、あらかじめ重量を測定したろ紙(ADVANTEC社製、No.2ろ紙、直径55mm)を置き、その上に35kgf/cm2の錘を乗せ、60秒経過後、ろ紙の重量を測り、ろ紙の重量差を液戻り量とした。
<着用感:吸収前の柔らかさ>
20名のパネラーにより、吸収前の柔らかさについて、「柔らかい」又は「硬い」の選
択で調査を行い、以下の基準により評価を行った。結果を表1に示した。
◎:「柔らかい」が16人以上20人以下のとき
○:「柔らかい」が11人以上15人以下のとき
△:「柔らかい」が6人以上10人以下のとき
×:「柔らかい」がいないか、1人以上5人以下のとき
<着用感:吸収後の厚みの変化に起因する違和感のなさ>
20名のパネラーにより、吸収後の厚みの変化による違和感のなさについて、「違和感
がある」又は「違和感がない」の選択で調査を行い、以下の基準により評価を行った。2
0名のパネラーで着用評価を実施して評価した。結果を表1に示した。
◎:「違和感がない」が16人以上20人以下のとき
○:「違和感がない」が11人以上15人以下のとき
△:「違和感がない」が6人以上10人以下のとき
<体液漏れ>
実施例1~6及び比較例1~3の各使い捨てパンツ型紙おむつを着用してもらい、20名のパネラーが漏れの有無を判定し、以下の基準により評価した。
◎:「漏れがない」が16人以上20人以下のとき
○:「漏れがない」が11人以上15人以下のとき
△:「漏れがない」が6人以上10人以下のとき
×:「漏れがない」がいないか、1人以上5人以下のとき
【0061】
【0062】
表1から、嵩高多孔体からなる吸収体をそのまま又は、基体不織布の一方の表面の複数の起毛繊維間に高吸収性ポリマーを固着担持した吸収性シートでC折りして被って用いることにより、複数回の吸収後でも吸収速度が高水準に維持され、液戻りがほぼ防止され、フィット感や着用感が良好で、体液漏れが防止されたパンツ型吸収性物品が得られることが分かる。