(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022176476
(43)【公開日】2022-11-30
(54)【発明の名称】ホットモジュール及び固体酸化物形燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04 20160101AFI20221122BHJP
H01M 8/2475 20160101ALI20221122BHJP
H01M 8/2465 20160101ALI20221122BHJP
H01M 8/12 20160101ALN20221122BHJP
【FI】
H01M8/04 Z
H01M8/2475
H01M8/2465
H01M8/12 101
H01M8/12 102A
H01M8/12 102C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021082937
(22)【出願日】2021-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】村本 知哉
(72)【発明者】
【氏名】大原 宏明
(72)【発明者】
【氏名】富樫 和沙
【テーマコード(参考)】
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H126BB06
5H127AA07
5H127AC15
5H127BA01
5H127BA02
5H127BA11
5H127BA21
5H127BA57
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB25
5H127BB37
5H127BB39
5H127EE02
5H127EE03
5H127EE29
5H127EE30
(57)【要約】
【課題】平板状の固体酸化物形燃料電池のセルスタックを用いた場合に、固体酸化物形燃料電池の温度分布を均一にすることが可能なホットモジュール及び固体酸化物形燃料電池システムを提供する。
【解決手段】ホットモジュール10は、複数の平板状の固体酸化物形燃料電池120を含む複数のスタックユニット110と、複数の固体酸化物形燃料電池120の各々の長軸方向Xにおいて、異なる位置に設けられた複数の空気導入口154を有し、複数の空気導入口154を介して空気を空気極123に供給する空気導入部150とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の平板状の固体酸化物形燃料電池を含み、前記複数の固体酸化物形燃料電池の各々は、燃料極と、前記複数の固体酸化物形燃料電池の各々における周囲の空気と接するように設けられた空気極と、前記燃料極と前記空気極との間に配置された電解質とを含み、前記複数の固体酸化物形燃料電池の各々が厚さ方向に配列した少なくとも1つのセルスタックを含む複数のスタックユニットと、
前記複数のスタックユニットを収容する筐体と、
前記筐体の内側に配置され、前記複数の固体酸化物形燃料電池の各々の前記厚さ方向に垂直な長軸方向において異なる位置に設けられた複数の空気導入口を有し、前記複数の空気導入口を介して前記筐体の外側の空気を前記空気極に供給する空気導入部と、
前記少なくとも1つのセルスタックの周囲を被覆し、前記空気極に供給される空気が通過する空気流路を形成する被覆材と、
を備える、ホットモジュール。
【請求項2】
前記複数の固体酸化物形燃料電池の各々の内部には前記燃料極に供給される燃料が通過する燃料流路が設けられ、前記空気極は前記複数の固体酸化物形燃料電池の各々の表面に露出するように配置されている、請求項1に記載のホットモジュール。
【請求項3】
前記複数のスタックユニットの各々は前記厚さ方向に垂直な前記複数の固体酸化物形燃料電池の各々の短軸方向に配列しており、
前記複数の空気導入口は隣接するセルスタックの間に配置されている、請求項1又は2に記載のホットモジュール。
【請求項4】
前記空気導入部は前記長軸方向に延びる空気導入流路を含み、
前記複数の空気導入口の各々は前記長軸方向に沿って前記空気導入流路に設けられている、請求項3に記載のホットモジュール。
【請求項5】
前記空気導入部は前記少なくとも1つのセルスタックに沿って前記厚さ方向に延びる複数の配管を含み、
前記複数の空気導入口は前記厚さ方向に沿って連続的に延びて又は断続的に前記複数の配管にそれぞれ設けられている、請求項3に記載のホットモジュール。
【請求項6】
前記筐体は、前記複数のスタックユニットが載置された基部と、前記基部を覆うカバーとを含み、
前記基部には前記空気極で空気と反応して生成されたカソードオフガスを含む排出ガスが通過するガス排出口が設けられている、請求項1~5のいずれか一項に記載のホットモジュール。
【請求項7】
前記排出ガスは前記燃料極で燃料が反応して生成されたアノードオフガス及びアノードオフガスの燃焼ガスの少なくともいずれか一方をさらに含む、請求項6に記載のホットモジュール。
【請求項8】
前記被覆材は、前記筐体内の空間を、前記基部に設けられた空気供給口を介して空気が供給される第1空間と、前記排出ガスが供給される第2空間とを含む空間に区画する、請求項6又は7に記載のホットモジュール。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載のホットモジュールを備える、固体酸化物形燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ホットモジュール及び固体酸化物形燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
固体酸化物形燃料電池は、水素などの燃料を化学反応させることによって電気エネルギーを生成することができ、副生成物が水のみである。そのため、クリーンなエネルギー供給源として様々な分野で期待されている。
【0003】
特許文献1には、固体酸化物形燃料電池を配列したセルスタックを備える燃料電池モジュールが開示されている。セルスタックの近傍には、セルスタックの側面側より空気が排出されることを抑制し、固体酸化物形燃料電池間の空気の流れを促進するため、断熱部材が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
固体酸化物形燃料電池は反応によって温度が上昇するため、セルスタックに供給される空気は、固体酸化物形燃料電池の反応に用いられるだけでなく、固体酸化物形燃料電池の発電効率を向上させるため、固体酸化物形燃料電池の冷却にも用いることができる。しかしながら、従来のモジュールでは、固体酸化物形燃料電池の下端からしか空気が供給されていない。固体酸化物形燃料電池の下端から供給された空気は、固体酸化物形燃料電池によって加温されながら固体酸化物形燃料電池間を上昇していく。
【0006】
そのため、固体酸化物形燃料電池の下側は空冷されるが、上側は冷却されないために高温のままになり、固体酸化物形燃料電池の長軸方向で温度分布が生じるおそれがある。このような温度分布が生じると、固体酸化物形燃料電池の発電効率が低下するおそれがある。
【0007】
そこで、本開示は、平板状の固体酸化物形燃料電池のセルスタックを用いた場合に、固体酸化物形燃料電池の温度分布を均一にすることが可能なホットモジュール及び燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係るホットモジュールは、複数のスタックユニットと、筐体と、空気導入部と、被覆材とを備えている。複数のスタックユニットは、少なくとも1つのセルスタックを含んでいる。少なくとも1つのセルスタックは、複数の平板状の固体酸化物形燃料電池を含んでおり、複数の固体酸化物形燃料電池の各々が厚さ方向に配列している。複数の固体酸化物形燃料電池の各々は、燃料極と、複数の固体酸化物形燃料電池の各々における周囲の空気と接するように設けられた空気極と、燃料極と空気極との間に配置された電解質とを含んでいる。筐体は、複数のスタックユニットを収容している。空気導入部は、筐体の内側に配置されている。空気導入部は、複数の固体酸化物形燃料電池の各々の厚さ方向に垂直な長軸方向において異なる位置に設けられた複数の空気導入口を有し、複数の空気導入口を介して筐体の外側の空気を空気極に供給する。被覆材は、少なくとも1つのセルスタックの周囲を被覆し、空気極に供給される空気が通過する空気流路を形成している。
【0009】
複数の固体酸化物形燃料電池の各々の内部には燃料極に供給される燃料が通過する燃料流路が設けられてもよい。空気極は複数の固体酸化物形燃料電池の各々の表面に露出するように配置されてもよい。
【0010】
複数のスタックユニットの各々は厚さ方向に垂直な複数の固体酸化物形燃料電池の各々の短軸方向に配列していてもよい。複数の空気導入口は隣接するセルスタックの間に配置されていてもよい。
【0011】
空気導入部は長軸方向に延びる空気導入流路を含んでいてもよい。複数の空気導入口の各々は長軸方向に沿って空気導入流路に設けられていてもよい。
【0012】
空気導入部は少なくとも1つのセルスタックに沿って厚さ方向に延びる複数の配管を含んでいてもよい。複数の空気導入口は厚さ方向に沿って連続的に延びて又は断続的に複数の配管にそれぞれ設けられていてもよい。
【0013】
筐体は、複数のスタックユニットが載置された基部と、基部を覆うカバーとを含んでいてもよい。基部には空気極で空気と反応して生成されたカソードオフガスを含む排出ガスが通過するガス排出口が設けられていてもよい。
【0014】
上記排出ガスは燃料極で燃料が反応して生成されたアノードオフガス及びアノードオフガスの燃焼ガスの少なくともいずれか一方をさらに含んでいてもよい。
【0015】
被覆材は、筐体内の空間を、基部に設けられた空気供給口を介して空気が供給される第1空間と、上記排出ガスが供給される第2空間とを含む空間に区画してもよい。
【0016】
本開示に係る固体酸化物形燃料電池システムはホットモジュールを備えていてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、平板状の固体酸化物形燃料電池のセルスタックを用いた場合に、固体酸化物形燃料電池の温度分布を均一にすることが可能なホットモジュール及び固体酸化物形燃料電池システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】一実施形態に係る固体酸化物形燃料電池システムを示す模式図である。
【
図2】一実施形態に係るホットモジュールを示す断面図である。
【
図3】
図2のホットモジュールをIII-III線で切断した断面図である。
【
図4】
図3のホットモジュールをIV-IV線で切断した断面図である。
【
図5】
図3のホットモジュールをV-V線で切断した断面図である。
【
図6】一実施形態に係るスタックユニットを模式的に示す斜視図である。
【
図7】一実施形態に係るスタックユニットを模式的に示す拡大平面図である。
【
図8】一実施形態に係るホットモジュールを示す断面図である。
【
図9】
図8のホットモジュールをIX-IX線で切断した断面図である。
【
図10】
図9のホットモジュールをX-X線で切断した断面図である。
【
図11】
図9のホットモジュールをXI-XI線で切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、いくつかの例示的な実施形態について、図面を参照して説明する。なお、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0020】
また、以下の実施形態では、平板状の固体酸化物形燃料電池の厚さ方向を厚さ方向Zとして説明する。厚さ方向Zに直交し、平板状の固体酸化物形燃料電池の平面方向における長軸が延在する方向を長軸方向Xとして説明する。長軸方向X及び厚さ方向Zに直交し、平板状の固体酸化物形燃料電池の平面方向における長軸より短い短軸が延在する方向を短軸方向Yとして説明する。そして、長軸方向Xにおいて、固体酸化物形燃料電池に対して基部側を長軸方向Xの下側、基部とは反対側を長軸方向Xの上側として説明する。
【0021】
[第1実施形態]
まず、第1実施形態に係る固体酸化物形燃料電池システム1(SOFCシステム1)及びホットモジュール10について
図1~
図7を用いて説明する。
【0022】
図1に示すように、本実施形態に係るSOFCシステム1は、ホットモジュール10を備えている。また、SOFCシステム1は、燃料供給部20と、空気供給部30と、排出ガス燃焼部40とを備えている。ホットモジュール10には、燃料供給部20と、空気供給部30と、排出ガス燃焼部40とが接続されている。
【0023】
燃料供給部20は、燃料をホットモジュール10内に供給する。燃料供給部20は、燃料供給管21と、アンモニア供給源22と、流量調整機構23と、第1水素生成部24とを含んでいる。燃料供給管21は、アンモニア供給源22と、ホットモジュール10とを接続している。燃料供給管21には、アンモニア供給源22と、流量調整機構23と、第1水素生成部24とが設けられている。アンモニア供給源22は、例えば、アンモニアを貯留するボンベなどの圧力容器である。流量調整機構23は、燃料供給管21内を流れるアンモニアの流量を調整する。流量調整機構23は、マスフローコントローラ、又はダイヤフラムポンプ若しくは回転翼式ポンプのようなポンプであってもよい。第1水素生成部24は、アンモニアを加熱することによってアンモニアから水素を生成する。
【0024】
なお、本実施形態では、アンモニアを原料として水素を生成したが、炭化水素のような有機化合物を原料として水素を生成してもよい。また、アンモニアを貯留するボンベを使用したが、アンモニアでなく、水素を貯留するボンベを使用し、水素をホットモジュール10に供給してもよい。また、第1水素生成部24でアンモニアから水素を生成したが、アンモニアをホットモジュール10に直接供給してもよい。
【0025】
空気供給部30は、ホットモジュール10に酸素を含む空気を供給する。空気供給部30は、空気供給管31と、フィルタ32と、ブロワ33と、流量調整弁34と、熱交換器35とを含んでいる。空気供給管31は、一端がホットモジュール10に接続されている。空気供給管31には、フィルタ32、ブロワ33、流量調整弁34及び熱交換器35が設けられている。フィルタ32は、空気供給管31内に導入される空気を除塵する。ブロワ33は、空気供給管31におけるフィルタ32の下流側に設けられ、例えば10kPaG以上の圧力で空気をホットモジュール10に供給する。流量調整弁34は、ホットモジュール10に供給される空気の流量を調整する。熱交換器35は、空気供給管31を通過する空気が有する熱と、排気管41を通過する排出ガスが有する熱とを熱交換し、ホットモジュール10に供給される空気を加熱するとともにホットモジュール10から排出される排出ガスを冷却する。
【0026】
排出ガス燃焼部40は、ホットモジュール10内から排気されたアノードオフガスとカソードオフガスとを含む排出ガスを燃焼する。これにより、排出ガスに残存する未反応の水素を燃焼させることができる。排出ガス燃焼部40は、排気管41と、排出ガス燃焼器42と、熱回収器43と、気液分離部44とを含んでいる。排気管41は、一端がホットモジュール10に接続されている。排出ガス燃焼器42は電気式ヒータ又はガスバーナーなどの加熱器を含んでおり、排出ガスを加熱によって燃焼させる。熱回収器43は、水冷式又は空冷式のラジエータであり、排出ガス燃焼器42から排出される排気ガスの熱を回収し、排気ガスを冷却する。気液分離部44は、熱回収器43で冷却されて得られたガスと水とを分離する。
【0027】
ホットモジュール10は、
図2~
図5に示すように、複数のスタックユニット110と、第2水素生成部113と、筐体130と、被覆材140と、空気導入部150とを備えている。筐体130は、複数のスタックユニット110及び被覆材140を収容している。筐体130は、基部131と、基部131を覆うカバー132とを含んでいる。そして、基部131とカバー132とによって、筐体130内に複数のスタックユニット110を収容する空間が形成されている。
【0028】
基部131には、6つのスタックユニット110が載置されている。3つのスタックユニット110が短軸方向Yに配列しており、2つのスタックユニット110が厚さ方向Zに配列している。ただし、短軸方向Yには2つ又は4つ以上の複数のスタックユニット110の各々が配列していてもよい。また、厚さ方向Zには1つだけのスタックユニット110が配置されていてもよく、3つ以上の複数のスタックユニット110が配列していてもよい。
【0029】
基部131には、空気供給口133とガス排出口134とが設けられている。空気供給口133は基部131を貫通する開口部であり、空気供給部30によって供給された筐体130の外側の空気は、空気供給口133を通過して固体酸化物形燃料電池120(SOFC120)の空気極123に供給される。ガス排出口134は基部131を貫通する開口部であり、空気極123で空気と反応して生成されたカソードオフガスを含む排出ガスは、ガス排出口134を通過して筐体130の外側に排出される。排出ガスは燃料極122で燃料が反応して生成されたアノードオフガス及びアノードオフガスの燃焼ガスの少なくともいずれか一方を含んでいる。ガス排出口134を通過したオフガスは、排出ガス燃焼部40で燃焼される。
【0030】
基部131は、基材135と、基材135の表面に設けられた断熱材136とを含んでいてもよい。そして、複数のスタックユニット110は、断熱材136に載置されてもよい。これにより、SOFC120の反応によって生成された熱が基材135に直接伝わるのを抑制することができる。基材135は、金属によって形成されていてもよい。断熱材136は、セラミックスを含んでいてもよく、多孔質であってもよい。
【0031】
カバー132は、基材137と、基材137の内側に配置された断熱材138とを含んでいてもよい。これにより、筐体130内の空間の熱が筐体130の外側に逃げるのを抑制することができる。基材137は、金属によって形成されていてもよい。断熱材138は、セラミックスを含んでいてもよく、多孔質であってもよい。
【0032】
基部131の剛性はカバー132の剛性よりも高くてもよい。これにより、基部131で複数のスタックユニット110を強固に支持すると共に、カバー132の重量を低減することができる。基材135は、基材137の剛性よりも高くてもよい。なお、本明細書において、剛性は、室温(約20℃)におけるヤング率と断面二次モーメントとの積で表される曲げ剛性を意味する。
【0033】
図2~
図6に示すように、複数のスタックユニット110の各々は、2つのセルスタック111と、燃料マニホールド112とを含んでいる。燃料マニホールド112には2つのセルスタック111が設けられており、燃料マニホールド112は基部131上に載置されている。
【0034】
第2水素生成部113は、燃料供給部20によって供給されたアンモニアなどの燃料から水素を生成する。第2水素生成部113は燃料マニホールド112に接続されており、第2水素生成部113で生成された水素が燃料マニホールド112を介してセルスタック111に供給される。第2水素生成部113は、長軸方向Xにおいて、SOFC120とカバー132との間に配置されている。具体的には、第2水素生成部113は、長軸方向Xにおいて、セルスタック111の燃料マニホールド112とは反対側に空間を空けて配置されている。なお、アンモニア及び水素などの燃料は、第2水素生成部113を介さずに燃料供給部20からセルスタック111に直接供給されてもよい。
【0035】
スタックユニット110における2つのセルスタック111の各々は、短軸方向Yに配列している。なお、スタックユニット110は、少なくとも1つのセルスタック111を含んでいればよい。そのため、スタックユニット110は、1つだけのセルスタック111を含んでいてもよく、3つ以上の複数のセルスタック111を含んでいてもよい。
【0036】
複数のセルスタック111の各々は、複数のSOFC120を含んでいる。複数のSOFC120の各々は、厚さ方向Zに配列している。
図7に示すように、複数のSOFC120のうち隣接するSOFC120間には空気が通過可能な空気流路141が設けられている。複数のSOFC120の各々は、一端が燃料マニホールド112と接続されており、もう一端が自由端となっている。これにより、SOFC120が温度変動によって膨張収縮した場合であっても、内部応力が高くなるのを抑制することができる。
【0037】
図7に示すように、SOFC120は平板状をしている。これにより、略真円状の円筒型SOFCと比較してセルスタック111の出力密度を高くすることができる。SOFC120は、具体的には、円筒平板型固体酸化物形燃料電池であり、扁平した円筒形状をしている。複数のSOFC120の各々は、支持部121と、燃料極122と、空気極123と、電解質124と、インターコネクタ125とを含んでいる。複数のSOFC120の各々の内部には燃料極122に供給される燃料が通過する燃料流路126が設けられている。
【0038】
支持部121には、複数の燃料流路126が設けられている。複数の燃料流路126の各々は短軸方向Yに配列しており、長軸方向Xに沿って延在している。燃料流路126の一端は燃料マニホールド112と接続されている。燃料流路126の燃料マニホールド112とは反対側の一端は開放されており、燃料が排出される出口となっている。
【0039】
支持部121は、扁平した円筒形状をしている。支持部121の表面には燃料極122が配置されている。支持部121は、燃料流路126を流れる燃料が燃料極122に透過可能な多孔質体を含んでいる。支持部121の外表面は、燃料流路126を通過した燃料が漏洩しないように、燃料極122及びインターコネクタ125によって囲われている。そして、支持部121、燃料極122及びインターコネクタ125はSOFC120の燃料マニホールド112に固定された固定端から自由端に向かって延在している。なお、本実施形態では、支持部121と燃料極122とを異なる部材としているが、燃料極122が支持部121を含んでいてもよい。すなわち、燃料極122と支持部121とが同じであり、燃料極122の内部に燃料流路126が設けられていてもよい。
【0040】
空気極123は複数のSOFC120の各々における周囲の空気と接するように設けられている。具体的には、空気極123は複数のSOFC120の各々の表面に露出するように配置されている。電解質124は、燃料極122と空気極123との間に配置されている。
【0041】
燃料極122では、以下の反応式(1)に示されるように、水素が酸化され、水及び未反応の燃料を含むアノードオフガスが生成される。
H2+O2-→2H2O+2e- (1)
【0042】
空気極123では、下記反応式(2)に示されるように、酸素が還元され、未反応の酸素を含むカソードオフガスが生成される。
1/2O2+2e-→O2- (2)
【0043】
電解質124では、上記反応式(2)で生成された酸素イオン(O2-)が空気極123から燃料極122へ移動する。上記反応式(1)で生成された電子(e-)は、インターコネクタ125及び空気流路141内に設けられた図示しない導電部材を介して集電される。
【0044】
支持部121は、導電性を有している。支持部121は、ニッケル及びニッケル化合物の少なくともいずれか一方を含んでいてもよい。ニッケル化合物は、ニッケルオキサイド(NiO)を含んでいてもよい。また、支持部121は、希土類酸化物を含んでいてもよい。希土類としては、イットリウムなどが挙げられる。
【0045】
燃料極122は、ニッケル及びニッケル化合物の少なくともいずれか一方を含んでいてもよい。ニッケル化合物は、ニッケルオキサイド(NiO)を含んでいてもよい。燃料極122は、イットリア安定化ジルコニアなどの酸化物イオン伝導性を有する固体酸化物をさらに含んでいてもよい。
【0046】
空気極123は、LSM((La,Sr)MnO3)、LSC((La,Sr)CoO3)、又は、LSCF((La,Sr)(Co,Fe)O3)などの電子伝導性を示す酸化物を含んでいてもよい。
【0047】
電解質124は、イットリア安定化ジルコニアなどの酸化物イオン伝導性を有する固体酸化物を含んでいてもよい。
【0048】
アノードオフガスには、通常、未反応の水素も含まれる。この未反応の燃料は、SOFC120の自由端から排出される。SOFCシステム1の運転時にはホットモジュール10内は高温になるため、未反応の水素が燃焼する。この燃焼熱によってセルスタック111の上方に配置された第2水素生成部113が加熱される。
【0049】
被覆材140は、複数のスタックユニット110の各々におけるセルスタック111の周囲を被覆している。そして、被覆材140には、空気極123に供給される空気が通過する空気流路141が形成されている。空気流路141は、厚さ方向Zにおいて隣接するSOFC120間に設けられている。そのため、空気流路141はSOFC120と被覆材140によって囲われて形成されている。SOFC120は厚さ方向Zに配列しており、セルスタック111内におけるSOFC120間の隙間は狭くなっている。しかしながら、本実施形態では、セルスタック111の周囲を被覆材140で被覆しているため、空気の流れが規制される。そのため、隣接するSOFC120間に設けられた狭い空気流路141に空気を強制的に送り込むことができる。
【0050】
被覆材140は筐体130内の空間を第1空間142と、第2空間143とを含む空間に区画している。第1空間142には空気供給口133を介して空気が供給される。第2空間143には排出ガスが供給される。これにより、空気供給口133を介して供給された空気が、空気流路141内を上昇して空気極123で反応する。そして、空気極123で生成されたアノードオフガス及びアノードオフガスの燃焼ガスの少なくともいずれか一方を含む排出ガスが、ガス排出口134を介してホットモジュール10の外側へ排出される。したがって、被覆材140によって供給ガス及び排出ガスの流路を形成することができるため、ホットモジュール10の構成を簡素にすることができる。
【0051】
第1空間142内には空気導入部150が配置されている。具体的には、第1空間142内には空気導入部150の空気導入口154が配置されており、空気導入部150によって第1空間142内に空気供給口133を介して空気が供給される。第1空間142は、被覆材140により、長軸方向Xにおいて複数の空間に分割されている。具体的には、第1空間142は、被覆材140によって空間142aと空間142bとに区画されている。空間142aは基部131及び被覆材140によって囲われて形成されている。空間142aは基部131と被覆材140とカバー132とによって囲われて形成されていてもよい。空間142bは空間142aと第2空間143との間に配置されており、被覆材140によって囲われて形成されている。
【0052】
第2空間143はガス排出口134と連通しており、第2空間143に供給された排出ガスは、ガス排出口134を介して排出ガス燃焼部40へ供給される。第2空間143内には第2水素生成部113が配置されていてもよい。第2空間143は基部131とカバー132と被覆材140とによって囲われて形成されている。
【0053】
被覆材140は、耐熱性を有していることが好ましい。そのため、被覆材140は、セラミックスを含んでいてもよい。また、被覆材140は断熱性を有していることが好ましい。被覆材140が断熱性を有していることにより、SOFC120から熱が放散されるのを抑制することができる。被覆材140は、多孔質であってもよい。
【0054】
空気導入部150は、筐体130の内側に配置され、筐体130の外側の空気を空気極123に供給する。空気導入部150は長軸方向Xにおいて異なる位置に設けられた複数の空気導入口154を有しており、複数の空気導入口154を介して筐体130の外側の空気を空気極123に供給する。これにより、空気極123に空気中の酸素を供給し続け、SOFC120の反応を継続させることができる。
【0055】
空気導入部150は空気導入流路155である配管151を含んでおり、配管151は空気供給口133に接続されている。また、空気導入部150は第1空間142内に配置されている。筐体130の外側から空気極123に供給される空気は、空気供給口133を通過し、空気導入部150は空気供給口133を通過した空気を空気極123に導く。
【0056】
配管151は、主配管152と、分岐配管153とを含んでいる。主配管152及び分岐配管153は、空間142a及び空間142b内に配置されている。主配管152は、空気供給口133に接続されている。主配管152は、筐体130内で分岐し、空間142a及び空間142b内で延在している。主配管152は、空間142a及び空間142b内において、厚さ方向Zにおいて隣接するスタックユニット110の間に配置され、短軸方向Yに延在している。
【0057】
複数の分岐配管153の各々は、主配管152から分岐し、複数のセルスタック111の各々に沿って厚さ方向Zに延びている。分岐配管153は、短軸方向Yにおいて、複数のスタックユニット110の両側であって、スタックユニット110とカバー132との間に配置されている。また、分岐配管153は、短軸方向Yにおいて、隣接するスタックユニット110間に配置されている。ただし、分岐配管153は、短軸方向Yにおいて、隣接するスタックユニット110間、及び、スタックユニット110内における隣接するセルスタック111間の少なくともいずれか一方に配置されていてもよい。複数の分岐配管153の各々には、少なくとも1つの空気導入口154が設けられている。
【0058】
複数の空気導入口154は隣接するセルスタック111の間に配置されている。そのため、空気供給口133を通過した空気は少なくとも1つの空気導入口154から筐体130内に供給される。空気導入口154は、短軸方向Yにおいて、隣接するスタックユニット110間、及び、スタックユニット110内における隣接するセルスタック111間の少なくともいずれか一方に配置されていてもよい。
【0059】
複数の空気導入口154は、厚さ方向Zに沿って連続的に延びて複数の分岐配管153にそれぞれ設けられている。ただし、分岐配管153に設けられる空気導入口154の位置、大きさ及び形状などは特に限定されない。複数の空気導入口154は、厚さ方向Zに沿って断続的に複数の分岐配管153にそれぞれ設けられていてもよい。
【0060】
本実施形態においては、空間142a及び空間142b内に主配管152及び分岐配管153を含む配管151が配置されている。そのため、複数の空気導入口154の各々は、長軸方向Xにおいて異なる位置に設けられている。これにより、長軸方向Xにおいて、SOFC120の複数個所に空気導入口154から空気を供給することができる。そのため、SOFC120に反応原料としての空気を供給するだけでなく、SOFC120の温度分布を均一にすることができる。
【0061】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係るSOFCシステム1及びホットモジュール10について
図8~
図11を用いて説明する。なお、第2実施形態に係るホットモジュール10では、空気導入部150の形態を変更している。これ以外の点については、特段の記載がなければ第1実施形態に係るSOFCシステム1及びホットモジュール10と同様であるため、説明を省略する。
【0062】
空気導入部150は複数の空気導入流路155を含んでいる。複数の空気導入流路155の各々は、一端が筐体130のカバー132と接続されている。空気導入流路155は、短軸方向Yにおいて、複数のスタックユニット110の両側であって、スタックユニット110とカバー132との間に配置されている。ただし、空気導入流路155は、隣接するスタックユニット110間、及び、スタックユニット110内における隣接するセルスタック111間の少なくともいずれか一方に配置されていてもよい。
【0063】
空気導入流路155は内部に空気が通過するための空間を有する矩形状の箱体である。空気導入流路155は、セルスタック111の側面に沿うように、長軸方向X及び厚さ方向Zに延びて広がっている。空気導入流路155は、筐体130の天井から被覆材140を貫通して設けられており、第1空間142及び第2空間143に配置されている。空気導入流路155には複数の空気導入口154が設けられている。
【0064】
空気導入口154は、第1空間142に配置されている。具体的には、空気導入口154は、空間142a及び空間142bに配置されており、複数の空気導入口154の各々は、長軸方向Xに沿って断続的に空気導入流路155に設けられている。また、複数の空気導入口154の各々は、厚さ方向Zに沿って連続的に延びて空気導入流路155に設けられている。ただし、複数の空気導入口154は断続的に空気導入流路155にそれぞれ設けられていてもよい。
【0065】
空気供給部30によって空気導入部150に供給された空気は、筐体130の天井から空気導入口154に向かって流れ、空気導入口154を介して筐体130の内部に導入される。筐体130の内部に導入された空気は、空気流路141を通って空気極123に供給される。
【0066】
なお、筐体130のカバー132が外壁と内壁とを含んでおり、空気導入部150はカバー132の内壁に設けられていてもよい。そして、筐体130の外側の空気が外壁と内壁との間の空間である流路を通って空気導入部150の空気導入流路155に供給されてもよい。
【0067】
本実施形態に係るホットモジュール10によっても、上記実施形態に係るホットモジュール10と同様に、SOFC120の温度分布を均一にすることができる。
【0068】
以上説明した通り、本実施形態に係るホットモジュール10は、複数のスタックユニット110と、筐体130と、空気導入部150と、被覆材140とを備えている。複数のスタックユニット110は、少なくとも1つのセルスタック111を含んでいる。少なくとも1つのセルスタック111は、複数の平板状の固体酸化物形燃料電池120を含んでおり、複数の固体酸化物形燃料電池120の各々が厚さ方向Zに配列している。複数の固体酸化物形燃料電池120の各々は、燃料極122と、複数の固体酸化物形燃料電池120の各々における周囲の空気と接するように設けられた空気極123と、燃料極122と空気極123との間に配置された電解質124とを含んでいる。筐体130は、複数のスタックユニット110を収容している。空気導入部150は、筐体130の内側に配置されている。空気導入部150は、複数の固体酸化物形燃料電池120の各々の厚さ方向Zに垂直な長軸方向Xにおいて異なる位置に設けられた複数の空気導入口154を有し、複数の空気導入口154を介して筐体130の外側の空気を空気極123に供給する。被覆材140は、少なくとも1つのセルスタック111の周囲を被覆し、空気極123に供給される空気が通過する空気流路141を形成している。
【0069】
このように、長軸方向Xにおいて異なる位置に設けられた複数の空気導入口154を介して筐体130の外側の空気が空気極123に供給される。これにより、筐体130の外側の空気が、長軸方向XにおいてSOFC120の異なる位置に供給される。そのため、固体酸化物形燃料電池120の温度分布を均一にすることができる。
【0070】
複数の固体酸化物形燃料電池120の各々の内部には燃料極122に供給される燃料が通過する燃料流路126が設けられてもよい。空気極123は複数の固体酸化物形燃料電池120の各々の表面に露出するように配置されてもよい。
【0071】
これにより、複数の固体酸化物形燃料電池120の各々の表面を空気導入部150によって効果的に冷却することができる。
【0072】
複数のスタックユニット110の各々は厚さ方向Zに垂直な複数の固体酸化物形燃料電池120の各々の短軸方向Yに配列していてもよい。複数の空気導入口154は隣接するセルスタック111の間に配置されていてもよい。
【0073】
これにより、セルスタック111の側面に空気導入口154を介して空気が供給される。そのため、セルスタック111の固体酸化物形燃料電池120を効率的に冷却することができる。
【0074】
空気導入部150は長軸方向Xに延びる空気導入流路155を含んでいてもよい。複数の空気導入口154の各々は長軸方向Xに沿って空気導入流路155に設けられていてもよい。
【0075】
これにより、筐体130の外側の空気を、長軸方向XにおいてSOFC120の異なる位置に簡易に供給することができる。
【0076】
空気導入部150は少なくとも1つのセルスタック111に沿って厚さ方向Zに延びる複数の配管151を含んでいてもよい。複数の空気導入口154は厚さ方向Zに沿って連続的に延びて又は断続的に複数の配管151にそれぞれ設けられていてもよい。
【0077】
これにより、筐体130の外側の空気を、セルスタック111に簡易に供給することができる。
【0078】
筐体130は、複数のスタックユニット110が載置された基部131と、基部131を覆うカバー132とを含んでいてもよい。基部131には空気極123で空気と反応して生成されたカソードオフガスを含む排出ガスが通過するガス排出口134が設けられていてもよい。
【0079】
ガス排出口134がカバー132でなく、基部131に設けられており、カバー132にかかる負荷を低減することができるため、ホットモジュール10の構成を簡素にすることができる。
【0080】
上記排出ガスは燃料極122で燃料が反応して生成されたアノードオフガス及びアノードオフガスの燃焼ガスの少なくともいずれか一方をさらに含んでいてもよい。
【0081】
これにより、カソードオフガスとアノードオフガスとを専用の配管を用いて排出する必要がなくなるため、ホットモジュール10の構成を簡素にすることができる。
【0082】
被覆材140は、筐体130内の空間を、基部131に設けられた空気供給口133を介して空気が供給される第1空間142と、上記排出ガスが供給される第2空間143とを含む空間に区画してもよい。
【0083】
これにより、空気供給口133を介して供給された空気が、空気極123で反応し、生成されたアノードオフガス及びアノードオフガスの燃焼ガスの少なくともいずれか一方を含む排出ガスが、ガス排出口134を介してホットモジュール10の外側へ排出される。したがって、被覆材140によって供給ガス及び排出ガスの流路を形成することができるため、ホットモジュール10の構成を簡素にすることができる。
【0084】
固体酸化物形燃料電池システム1はホットモジュール10を備えていてもよい。
【0085】
ホットモジュール10は、上述したように、固体酸化物形燃料電池120の温度分布を均一にすることができる。そのため、ホットモジュール10を備える固体酸化物形燃料電池システム1も、固体酸化物形燃料電池120の温度分布を均一にすることができる。
【0086】
いくつかの実施形態を説明したが、上記開示内容に基づいて実施形態の修正または変形をすることが可能である。上記実施形態のすべての構成要素、及び請求の範囲に記載されたすべての特徴は、それらが互いに矛盾しない限り、個々に抜き出して組み合わせてもよい。
【0087】
本開示は、例えば、国際連合が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標7『すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する』に貢献することができる。
【符号の説明】
【0088】
1 固体酸化物形燃料電池システム(SOFCシステム)
10 ホットモジュール
110 スタックユニット
111 セルスタック
120 固体酸化物形燃料電池(SOFC)
122 燃料極
123 空気極
124 電解質
126 燃料流路
130 筐体
131 基部
132 カバー
133 空気供給口
134 ガス排出口
140 被覆材
141 空気流路
142 第1空間
143 第2空間
150 空気導入部
151 配管
152 主配管(配管)
153 分岐配管(配管)
154 空気導入口
155 空気導入流路
X 長軸方向
Y 短軸方向
Z 厚さ方向