(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022017648
(43)【公開日】2022-01-26
(54)【発明の名称】ポリアミド樹脂組成物、およびポリアミド樹脂成形体
(51)【国際特許分類】
C08L 77/00 20060101AFI20220119BHJP
C08L 33/06 20060101ALI20220119BHJP
C08L 51/06 20060101ALI20220119BHJP
C08L 53/02 20060101ALI20220119BHJP
【FI】
C08L77/00
C08L33/06
C08L51/06
C08L53/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020120324
(22)【出願日】2020-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】板東 孝信
(72)【発明者】
【氏名】巻口 琢郎
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BG042
4J002BN124
4J002BP013
4J002BP023
4J002CL011
4J002CL031
4J002GC00
(57)【要約】
【課題】吸湿前後の静音化特性に優れるポリアミド樹脂組成物、およびその成形体を提供すること。
【解決手段】ポリアミド樹脂(X)と、樹脂組成物(Y)を含有するポリアミド樹脂組成物であって、前記樹脂組成物(Y)は、特定量の、エチレン-(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体(L)と、グラフト共重合体(M)と、スチレン系エラストマー(N)を含有し、前記グラフト共重合体(M)は、特定量の、エチレン-(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体(A)と、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体(b-1)、および芳香族ビニル単量体(b-2)からなる群より選ばれる1つ以上の単量体を含むモノマー成分(B)を反応して得られるグラフト共重合体であるポリアミド樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド樹脂(X)と、樹脂組成物(Y)を含有するポリアミド樹脂組成物であって、
前記樹脂組成物(Y)は、エチレン-(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体(L)と、グラフト共重合体(M)と、スチレン系エラストマー(N)を含有し、
前記樹脂組成物(Y)中、前記エチレン-(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体(L)の割合が25~60重量%であり、前記グラフト共重合体(M)の割合が0.5~30重量%であり、前記スチレン系エラストマー(N)の割合が35~70重量%であり、
前記グラフト共重合体(M)は、エチレン-(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体(A)と、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体(b-1)、および芳香族ビニル単量体(b-2)からなる群より選ばれる1つ以上の単量体を含むモノマー成分(B)を反応して得られるグラフト共重合体であり、
前記エチレン-(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体(A)と、前記モノマー成分(B)の重量比((A)/(B))が50/50~98/2であることを特徴とするポリアミド樹脂組成物。
【請求項2】
前記モノマー成分(B)が、さらに、(メタ)アクリロニトリル単量体(b-3)、および(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル単量体(b-4)からなる群より選ばれる1つ以上の単量体を含むことを特徴とする請求項1記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリアミド樹脂(X)100重量部に対して、前記樹脂組成物(Y)が1~15重量部であることを特徴とする請求項1または2記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項4】
前記スチレン系エラストマー(N)は、ポリスチレンを有する重合体ブロックと共役ジエン化合物を有する重合体ブロックを含むブロック共重合体であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物から得られることを特徴とするポリアミド樹脂成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミド樹脂組成物、およびポリアミド樹脂成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミド樹脂は、機械特性、耐熱性、耐薬品性などの特長を生かして、自動車部品、電気・電子部品、日用品の材料として使用されている。ポリアミド樹脂(成形体)は、ポリアミド樹脂の部材同士、あるいは、ポリアミド樹脂の部材と他の素材からなる部材が擦れ合うと、軋み音が発生し易い。
【0003】
ポリアミド樹脂(成形体)の静音化特性(軋み音の発生)を改善する方法として、例えば、特許文献1では、ポリアミド樹脂と、主鎖がエチレン-酢酸ビニル共重合体、側鎖がスチレン単量体と、アクリロニトリル単量体および/またはメタクリル酸グリシジル単量体由来の構成単位を含む共重合体である、グラフト共重合体を含むポリアミド樹脂組成物が開示されており、また、特許文献2では、ポリアミド樹脂と、変性超高分子量ポリエチレンを含むポリアミド樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-210882号公報
【特許文献2】特開2020-56506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようなポリアミド樹脂(成形体)をオフィスチェアの構造材料として使用する場合、シート用材料に使用されている皮革との軋み音(擦れ音)が発生しやすい問題があった。また、ポリアミド樹脂は、吸湿性が高いため、高湿度環境下で、特に軋み音が発生しやすくなるという問題があった。一方、特許文献1および2で開示されたポリアミド樹脂組成物は、当該性能に改善の余地があった。
【0006】
以上のような事情に鑑み、本発明は、吸湿前後の静音化特性に優れるポリアミド樹脂組成物、およびその成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は、ポリアミド樹脂(X)と、樹脂組成物(Y)を含有するポリアミド樹脂組成物であって、前記樹脂組成物(Y)は、エチレン-(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体(L)と、グラフト共重合体(M)と、スチレン系エラストマー(N)を含有し、前記樹脂組成物(Y)中、前記エチレン-(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体(L)の割合が25~60重量%であり、前記グラフト共重合体(M)の割合が0.5~30重量%であり、前記スチレン系エラストマー(N)の割合が35~70重量%であり、前記グラフト共重合体(M)は、エチレン-(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体(A)と、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体(b-1)、および芳香族ビニル単量体(b-2)からなる群より選ばれる1つ以上の単量体を含むモノマー成分(B)を反応して得られるグラフト共重合体であり、前記エチレン-(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体(A)と、前記モノマー成分(B)の重量比((A)/(B))が50/50~98/2であるポリアミド樹脂組成物に関する。
【0008】
さらに、本発明は、前記ポリアミド樹脂組成物から得られることを特徴とするポリアミド樹脂成形体に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明のポリアミド樹脂組成物における効果の作用メカニズムの詳細は不明な部分があるが、以下のように推定される。ただし、本発明は、この作用メカニズムに限定して解釈されない。
【0010】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、ポリアミド樹脂(X)と樹脂組成物(Y)とを含有し、前記樹脂組成物(Y)は、特定量の、エチレン-(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体(L)と、特定のグラフト共重合体(M)と、スチレン系エラストマー(N)を含有する。グラフト共重合体(M)が、エチレン-(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体(L)とスチレン系エラストマー(N)とポリアミド樹脂(X)との相容性を向上させることにより、エチレン-(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体(L)とスチレン系エラストマー(N)が、ポリアミド樹脂(X)全体に良好に分散することによって、本発明のポリアミド樹脂組成物は、吸湿した場合においても、効率よく振動を吸収することができ、軋み音を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<ポリアミド樹脂組成物>
本発明のポリアミド樹脂組成物は、ポリアミド樹脂(X)と、樹脂組成物(Y)を含有する。
【0012】
<ポリアミド樹脂(X)>
前記ポリアミド樹脂(X)は、主鎖にアミド結合(-NHCO-)を有する重合体である。前記ポリアミド樹脂(X)としては、特定の種類に限定されないが、例えば、ポリカプロラクタム(ナイロン6)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリウンデカメチレンアジパミド(ナイロン116)、ポリウンデカラクタム(ナイロン11)、ポリドデカラクタム(ナイロン12)、ポリトリメチルヘキサメチレンテレフタルアミド(ナイロンTMHT)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ナイロン6I)、ポリノナンメチレンテレフタルアミド(9T)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド(6T)、ポリビス(4-アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ナイロンPACM12)、ポリビス(3-メチル-アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ナイロンジメチルPACM12)、ポリメタキシリレンアジパミド(ナイロンMXD6)、ポリウンデカメチレンヘキサヒドロテレフタルアミド(ナイロン11T(H))などが挙げられる。ポリアミド樹脂(X)は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0013】
前記ポリアミド樹脂において、市販品としては、例えば、デュポン(株)製の「Zytel 103HSL」、東レ(株)製の「アミランCM1017」などが挙げられる。
【0014】
<樹脂組成物(Y)>
本発明の樹脂組成物(Y)は、エチレン-(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体(L)と、グラフト共重合体(M)と、スチレン系エラストマー(N)を含有する。
【0015】
<エチレン-(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体(L)>
前記エチレン-(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体(L)は、エチレンと(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体から合成される共重合体である。前記エチレン-(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体(L)は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0016】
前記エチレン-(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体(L)において、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体は、分子末端にアルキル基を有する(メタ)アクリレートであれば、その種類に制限はなく使用できる。
【0017】
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチルなどが挙げられる。前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0018】
前記エチレン-(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体(L)は、必要に応じ、その他の単量体を用いることができる。前記その他の単量体としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニルなどの飽和カルボン酸ビニルエステルなどが挙げられる。前記その他の単量体は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0019】
前記エチレン-(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体(L)中、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位の割合(含有率)は、静音化特性を向上させる観点から、2重量%以上であることが好ましく、5重量%以上であることがより好ましく、そして、耐湿後の静音化特性を向上させる観点から、40重量%以下であることが好ましく、35重量%以下であることがより好ましい。なお、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体の含有率は、例えば、赤外線吸収スペクトルによる1039cm-1の吸光度から、予め核磁気共鳴スペクトルによって(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体の濃度が決められた標準試料を用い、上記吸光度を測定した検量線より求められる。
【0020】
前記エチレン-(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体(L)は、メルトマスフローレート(以下、MFRとも称す)が、ポリアミド樹脂組成物の製造プロセスにおける作業性を高める観点から、0.2~40(g/10min)であることが好ましく、0.4~30(g/10min)であることがより好ましい。なお、前記MFRは、JIS K6924-1(1997年版)に準拠して測定できる。
【0021】
前記エチレン-(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体(L)において、市販品としては、例えば、日本ポリエチレン(株)製の「レクスパールA6200」、「レクスパールA4250」、「レクスパールA3100」などが挙げられる。
【0022】
<グラフト共重合体(M)>
前記グラフト共重合体(M)は、エチレン-(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体(A)と、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体(b-1)、および芳香族ビニル単量体(b-2)からなる群より選ばれる1つ以上の単量体を含むモノマー成分(B)を反応して得られるグラフト共重合体である。
【0023】
前記エチレン-(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体(A)は、エチレンと(メタ)アルキルエステル単量体から合成される共重合体である。前記エチレン-(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体(A)としては、上記のエチレン-(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体(L)を用いることができる。前記エチレン-(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体(A)は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0024】
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体(b-1)としては、例えば、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基の炭素数1~18のアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。前記炭素数は、1~6であることが好ましく、1~3であることがより好ましい。前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリルなどが挙げられる。これらの中でも、耐湿後の静音化特性を向上させる観点から、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチルが好ましい。前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体(b-1)は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0025】
前記芳香族ビニル単量体(b-2)としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、о-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-t-ブチルスチレンなどが挙げられる。これらの中でも、静音化特性を向上させる観点から、スチレン、α-メチルスチレンが好ましい。前記芳香族ビニル単量体(b-2)は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0026】
前記モノマー成分(B)は、エチレン-(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体(L)の分散性を向上させる観点から、さらに、(メタ)アクリロニトリル単量体(b-3)、および(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル単量体(b-4)からなる群より選ばれる1つ以上の単量体を含んでいてもよい。
【0027】
前記(メタ)アクリロニトリル単量体(b-3)としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが挙げられる。これらの中でも、静音化特性を向上させる観点から、アクリロニトリルが好ましい。前記(メタ)アクリロニトリル単量体(b-3)は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0028】
前記(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル単量体(b-4)としては、例えば、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸2-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2,3-ジヒドロキシプロピル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸4-ヒドロキシブチル、メタクリル酸ヒドロキシベンジルなどが挙げられる。これらの中でも、静音化特性を向上させる観点から、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸2-ヒドロキシプロピルが好ましい。前記(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル単量体(b-4)は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0029】
前記モノマー成分(B)は、上記の単量体以外のその他の単量体を使用することができる。前記その他の単量体としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミドなどのアミド基含有単量体;(メタ)アクリル酸などのカルボキシル基含有単量体;グリシジル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基含有単量体;ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートなどのグリコール系単量体などが挙げられる。前記その他の単量体は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0030】
前記モノマー成分(B)中、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体、および前記芳香族ビニル単量体からなる群より選ばれる1つ以上の単量体の割合は、50重量%以上であることが好ましく、60重量%以上であることがより好ましい。
【0031】
また、前記モノマー成分(B)として、前記(メタ)アクリロニトリル単量体、および前記(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル単量体からなる群より選ばれる1つ以上の単量体を使用する場合、前記モノマー成分(B)中、前記(メタ)アクリロニトリル単量体、および前記(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル単量体からなる群より選ばれる1つ以上の単量体の割合は、50重量%以下であることが好ましく、40重量%以下であることがより好ましい。
【0032】
前記モノマー成分(B)中、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体、および前記芳香族ビニル単量体からなる群より選ばれる1つ以上の単量体と、前記(メタ)アクリロニトリル単量体、および前記(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル単量体からなる群より選ばれる1つ以上の単量体の合計の割合は、70重量%以上であることが好ましく、80重量%以上であることがより好ましく、90重量%以上であることがさらに好ましく、95重量%以上であることがよりさらに好ましい。
【0033】
前記モノマー成分(B)としては、前記単量体の組み合わせが、アクリル酸ブチルとメタクリル酸メチル、スチレンと(メタ)アクリロニトリル、またはアクリル酸ブチルとスチレンとメタクリル酸2-ヒドロキシプロピルであることがより好ましい。この場合、アクリル酸ブチルとメタクリル酸メチルとの重量比(アクリル酸ブチル/メタクリル酸メチル)、またはスチレンと(メタ)アクリロニトリルとの重量比(スチレン/(メタ)アクリロニトリル)は、耐湿後の静音化特性を向上させる観点から、50/50~90/10であることが好ましく、60/40~80/20であることがより好ましい。また、上記のアクリル酸ブチルとスチレンとメタクリル酸2-ヒドロキシプロピルの組み合わせにおいては、アクリル酸ブチルとスチレンとメタクリル酸2-ヒドロキシプロピルの合計中、アクリル酸ブチルが10~40重量%であることが好ましく、スチレンが10~40重量%であることが好ましく、メタクリル酸2-ヒドロキシプロピルが10~40重量%であることが好ましい。
【0034】
前記エチレン-(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体(A)と前記モノマー成分(B)の重量比((A)/(B))は、50/50~98/2である。前記重量比((A)/(B))は、静音化特性を向上させる観点から、60/40~95/5であることが好ましく、70/30~90/10であることがより好ましい。
【0035】
<グラフト共重合体(M)の製造方法>
前記グラフト共重合体(M)の製造方法は、特に制限はなく、懸濁重合法、乳化重合法、溶液重合法、塊状重合法などの公知の重合法を使用することができる。これらの中でも、懸濁重合法が好ましい。また、グラフト化する方法としては、特に制限はなく、ラジカル重合法、カチオン重合法、アニオンリビング重合法、カチオンリビング重合法などの公知のグラフト化方法を採用することができる。これらの中でも、ラジカル重合法が好ましく、とくに、グラフト共重合体を工業的に大量かつ効率的に製造できる観点から、過酸化結合を有するビニル単量体(ラジカル重合性有機過酸化物)を用いたラジカル重合法がより好ましい。
【0036】
前記過酸化結合を有するビニル単量体は、(ラジカル重合性有機過酸化物)は、分子内にペルオキシ基およびエチレン性不飽和基を有する単量体であれば、その種類に特に制限はなく使用でき、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。前記過酸化結合を有するビニル系単量体としては、例えば、t-ブチルペルオキシ(メタ)アクリロイルオキシエチルカーボネート、t-アミルペルオキシ(メタ)アクリロイルオキシエチルカーボネート、t-ヘキシルペルオキシ(メタ)アクリロイルオキシエチルカーボネート、t-ブチルペルオキシ(メタ)アクリロイルオキシエトキシエチルカーボネート、t-ヘキシルペルオキシ(メタ)アクリロイルオキシエトキシエチルカーボネート、t-ブチルペルオキシ(メタ)アリルカーボネート、t-アミルペルオキシ(メタ)アリルカーボネート、t-ヘキシルペルオキシ(メタ)アリルカーボネートなどが挙げられ、これらの中でも、t-ブチルペルオキシメタクリロイルオキシエチルカーボネートが好ましい。
【0037】
前記過酸化結合を有するビニル単量体を用いた重合法は、前記エチレン-(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体(A)を、水を主成分とする媒体に懸濁した溶液(エチレン-(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体(A)濃度:10~30重量部)に、前記モノマー成分(B)と、前記過酸化結合を有するビニル単量体と、重合開始剤を加え、前記エチレン-(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体(A)(エチレン-(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体(A)の粒子)中に、前記モノマー成分(B)と前記過酸化結合を有するビニル単量体と前記重合開始剤を含浸重合して前駆体を得る工程と、前記前駆体を溶融混練して、グラフト共重合体(M)を製造する工程を含む方法である。なお、前記前駆体を得る工程で、必要に応じ懸濁剤(例えば、ポリビニルアルコール)を前記エチレン-(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体(A)100重量部に対して、0.1~1重量部程度使用してもよい。また、上記の含浸の際、前記エチレン-(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体(A)中に前記モノマー成分(B)、前記過酸化結合を有するビニル単量体、前記重合開始剤などを十分に含浸させるため、加温(例えば、60~80℃程度)しながら、攪拌してもよい。
【0038】
前記重合開始剤は、熱によりラジカルを発生するものであれば、特に限定されず、例えば、有機過酸化物、アゾ系重合開始剤などが挙げられる。重合開始剤は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0039】
前記重合開始剤は、重合開始剤の急激な分解を抑制し、重合開始剤や前記単量体の残存を抑制する観点から、10時間半減期温度(以下、T10とも称す)が、40℃以上であることが好ましく、50℃以上であることがより好ましく、そして、130℃以下であることが好ましく、100℃以下であることがより好ましく、80℃以下であることがさらに好ましい。なお、前記10時間半減期温度(T10)は、前記重合開始剤を、例えば、0.05から0.1モル/リットルになるようにベンゼンに溶解させた溶液を熱分解させた際に、当該重合開始剤が10時間で半減期を迎える温度のことを意味する。
【0040】
前記重合開始剤としては、例えば、t-ブチルパーオキシネオヘプタノエート(T10=51℃)、t-ヘキシルパーオキシピバレート(T10=53℃)、t-ブチルパーオキシピバレート(T10=55℃)、ジ(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド(T10=59℃)、ジラウロイルパーオキサイド(T10=62℃)、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(T10=65℃)、2,5-ジメチル-2,5-ジ(2-エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン(T10=66℃)、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキシルヘキサノエート(T10=70℃)、ジ(4-メチルベンゾイル)パーオキサイド(T10=71℃)、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(T10=72℃)、ベンゾイルパーオキサイド(T10=74℃)、t-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート(T10=95℃)、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート(T10=97℃)、t-ブチルパーオキシラウレート(T10=98℃)、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート(T10=99℃)、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート(T10=99℃)、t-ヘキシルパーオキシベンゾエート(T10=99℃)、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン(T10=100℃)、t-ブチルパーオキシアセテート(T10=102℃)、2,2-ジ(t-ブチルパーオキシ)ブタン(T10=103℃)、t-ブチルパーオキシベンゾエート(T10=104℃)、n-ブチル-4,4-ジ(t-ブチルパーオキシ)バレレート(T10=105℃)、ジ(2-t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン(T10=119℃)、ジクミルパーオキサイド(T10=116℃)、ジ-t-ヘキシルパーオキサイド(T10=116℃)、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン(T10=118℃)、t-ブチルクミルパーオキサイド(T10=120℃)、ジ-t-ブチルパーオキサイド(T10=124℃)などの有機過酸化物;2,2-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(T10=51℃)、2,2-アゾビス(イソブチロニトリル)(T10=65℃)、2,2-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)(T10=67℃)などのアゾ系重合開始剤などが挙げられる。
【0041】
前記前駆体を製造する工程において、重合温度は、原料(特に、前記重合開始剤の10時間半減期温度)などによって異なるので一概には決定できないが、通常、65℃以上であることが好ましく、70℃以上であることがより好ましく、そして、90℃以下であることが好ましく、85℃以下であることがより好ましい。また、重合時間は、原料や反応温度などによって異なるので一概には決定できないが、収率を高める観点から、1.5時間以上であることが好ましく、2時間以上であることがより好ましく、そして、6時間以下であることが好ましく、5時間以下であることがより好ましい。
【0042】
前記前駆体を製造する工程において、前記過酸化結合を有するビニル単量体は、前記モノマー成分(B)100重量部に対し、0.5重量部以上であることが好ましく、1重量部以上であることがより好ましく、3重量部以上であることがさらに好ましく、そして、10重量部以下であることが好ましく、8重量部以下であることがより好ましく、6重量部以下であることがさらに好ましい。
【0043】
前記前駆体を製造する工程において、前記重合開始剤は、前記モノマー成分(B)100重量部に対し、0.3重量部以上であることが好ましく、0.5重量部以上であることがより好ましく、そして、3重量部以下であることが好ましく、2重量部以下であることがより好ましい。
【0044】
前記溶融混練としては、例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、混練押出機、二軸押出機、ロールなどの混練機を用いて、前記前駆体を溶融して混練する方法が挙げられる。混練する回数は、1回または複数回であってもよい。混練する時間は、使用する混練機の大きさなどによって異なるが、通常、3~10分程度とすればよい。また、混練機の排出温度は、130~350℃とすることが好ましく、150~250℃とすることがより好ましい。
【0045】
<スチレン系エラストマー(N)>
前記スチレン系エラストマー(N)は、ポリスチレンを主体とする重合体ブロックDと共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックEを含むブロック共重合体である。前記スチレン系エラストマー(N)は、例えば、D-E、D-E-D、E-D-E-D、およびD-E-D-E-Dなどの構造を有するブロック共重合体が挙げられる。前記スチレン系エラストマー(N)は、成形加工性の観点から、分子中の重合体ブロックDが2個以上であることが好ましい。また、前記重合体ブロックEにおいて、共役ジエン化合物と共役ジエン化合物との結合様式は、特に制限されず、任意である。分子中に、重合体ブロックEが2個以上ある場合、これらは同一構造であってもよく、異なる構造であってもよい。前記スチレン系エラストマー(N)は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0046】
前記スチレン系エラストマー(N)は、ポリスチレンに由来する構造単位の割合が、静音化特性を向上させる観点から、5~65重量%であることが好ましく、10~60重量%であることがより好ましい。
【0047】
前記スチレン系エラストマー(N)は、水素添加率(ポリスチレンと水素添加前共役ジエン化合物とのブロック共重合体中の炭素と炭素の二重結合の数に対する、水素添加により炭素と炭素の単結合となった結合の数の割合)が、特に制限されないが、通常、50モル%以上であり、70モル%以上であることが好ましく、90モル%以上であることが好ましい。
【0048】
前記スチレン系エラストマー(N)としては、例えば、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン-エチレン-ブテンブロック共重合体(SEB)、スチレン-エチレン-プロピレンブロック共重合体(SEP)、スチレン-エチレン-ブテン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレン共重合体ブロック(SEPS)、スチレン-エチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEEPS)、スチレン-ビニル(エチレン-プロピレン)-スチレン共重合体(V-SEPS)などが挙げられる。これらの中でも、静音化特性を向上させる観点から、スチレン-エチレン-ブテン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン-エチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEEPS)が好ましい。
【0049】
前記樹脂組成物(Y)中、前記エチレン-(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体(L)の含有割合は、静音化特性を向上させる観点から、25~60重量%であり、30重量%以上であることが好ましく、35重量%以上であることよりが好ましく、そして、55重量%以下であることが好ましい。
【0050】
前記樹脂組成物(Y)中、前記グラフト共重合体(M)の含有割合は、吸湿後の静音化特性を向上させる観点から、0.5~30重量%であり、1重量%以上であることが好ましく、3重量%以上であることがより好ましく、そして、20重量%以下であることが好ましい。
【0051】
前記樹脂組成物(Y)中、前記スチレン系エラストマー(N)の含有割合は、静音化特性を向上させる観点から、35~70重量%であり、40重量%以上であることが好ましく、そして、65重量%以下であることが好ましい。
【0052】
前記樹脂組成物(Y)は、前記ポリアミド樹脂(X)100重量部に対して、1~15重量部であることが好ましい。前記樹脂組成物(Y)は、樹脂成形体の静音化特性を向上させる観点から、前記ポリアミド樹脂(X)100重量部に対して、2重量部以上であることがより好ましく、5重量部以上であることがさらに好ましく、そして、12重量部以下であることがより好ましい。
【0053】
なお、本発明のポリアミド樹脂組成物は、各種配合剤を用いることができる。配合剤としては、例えば、セラミックファイバー(CF)、ガラス繊維、アラミド繊維、チタン酸カリウム繊維、鉱物破砕繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、石コウ繊維、水酸化マグネシウム繊維、炭化ケイ素繊維、ジルコニア繊維などの繊維強化材;球状シリカ、マイカ、ウォラストナイト、炭酸カルシウム、カオリン、クレー、ベントナイト、セリサイト、ガラスビーズ、ガラスフレーク、アルミナ、硅酸カルシウム、炭酸マグネシウム、タルク、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化鉄、グラファイト、カーボンブラック、二硫化モリブデン、超高密度ポリエチレンなどの各形状の有機または無機の充填剤;鉱油、炭化水素、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、アルコール、金属石けん、天然ワックス、シリコーンなどの滑剤;PTFE系、アクリル系などの加工助剤;水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの無機の難燃剤;ハロゲン系、リン系などの有機の難燃剤;酸化防止剤、紫外線防止剤、光安定剤、着色剤、帯電防止剤、架橋剤、分散剤、カップリング剤、発泡剤、着色剤などが挙げられる。
【0054】
本発明の樹脂組成物(Y)は、前記ポリアミド樹脂(X)、前記エチレン-(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体(L)と、グラフト共重合体(M)と、スチレン系エラストマー(N)とを、溶融混練することによって得ることができる。前記溶融混練としては、例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、混練押出機、二軸押出機、ロールなどの混練機を用いて、前記前駆体を溶融して混練する方法が挙げられる。混練する回数は、1回または複数回であってもよい。混練する時間は、使用する混練機の大きさなどによって異なるが、通常、3~10分程度とすればよい。また、混練機の排出温度は、130~350℃とすることが好ましく、150~250℃とすることがより好ましい。
【0055】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、前記ポリアミド樹脂(X)、前記樹脂組成物(Y)、任意の前記各種配合剤を混合することによって得られる。混合の方法は、とくに制限はなく、例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、混練押出機、二軸押出機、ロールなどの混練機を用いて、溶融して混練する方法などが挙げられる。また、上記の各成分を、任意の順序で添加し混練してもよく、同時に添加して混練してもよい。混練する回数は、1回または複数回であってもよい。混練する時間は、使用する混練機の大きさなどによって異なるが、通常、3~10分程度とすればよい。また、混練機の排出(押出)温度は、150~350℃とすることが好ましく、180~250℃とすることがより好ましい。
【0056】
本発明のポリアミド樹脂成形体は、前記ポリアミド樹脂組成物を所定の形状に成形することにより得られる。成形方法としては、何ら限定されるものではないが、例えば、射出成形、押出成形などが挙げられ、成形の加熱温度、圧力、時間などは適宜設定できる。当該ポリアミド樹脂成形体は、吸湿前後の静音化特性に優れるため、電気部品、電子部品、機械部品、自動車部品、日用品などの材料に利用でき、とくに、当該樹脂と皮革とが接する材料として好適である。
【実施例0057】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0058】
<グラフト共重合体(M1)の製造>
内容積5Lのステンレス製オートクレーブに、純水2500gを入れ、更に懸濁剤としてポリビニルアルコール2.5gを溶解させた。この中に、エチレン-(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体(A)として、エチレン-アクリル酸エチル共重合体(A1)(商品名「レクスパールA3100」、日本ポリエチレン(株)製)800gを入れ、攪拌して分散させた。
【0059】
さらに、重合開始剤として、ジ(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド(日油(株)製、商品名「パーロイル355」、10時間半減期温度=59℃)5.1gと、過酸化結合を有するビニル単量体として、t-ブチルペルオキシメタクリロイルオキシエチルカーボネート(以下、MECとも称す)17.2gを、(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体(b-1)として、アクリル酸ブチル(以下、BAとも称す)240gとメタクリル酸メチル(以下、MMAとも称す)103gからなるモノマー成分(B)に溶解させた溶液を調製し、この溶液を上記のオートクレーブ中に投入し攪拌した。
【0060】
次いで、上記のオートクレーブを60~65℃に昇温し、3時間攪拌することによって、ラジカル重合開始剤、t-ブチルペルオキシメタクリロイルオキシエチルカーボネート、およびモノマー成分(B)をエチレン-(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体(A)中に含浸させた。続いて、上記のオートクレーブを80~85℃に昇温し、当該温度で7時間保持して重合させ、前駆体として共重合体(ポリ(BA/MMA/MEC)が含浸したエチレン-(メタ)アクリル酸エチル共重合体組成物)を得た。得られた前駆体を、ラボプラストミル一軸押出機((株)東洋精機製作所製)を用いて、230℃にて溶融混練し、グラフト化反応させた。次いで、ストランド状の樹脂組成物を得た後、これをカッティングしてペレット状にすることでグラフト共重合体(M1)を製造した。
【0061】
<グラフト共重合体(M2~M4、M´1~M´3)の製造>
各原料の種類とその配合量(重量%)を表1に示すように変えたこと以外は、グラフト共重合体(M1)と同様の方法により、グラフト共重合体(M2~M4、M´1~M´3)を製造した。
【0062】
【0063】
表1中、
A1は、エチレン-アクリル酸エチル共重合体(日本ポリエチレン(株)製、商品名「レクスパールA3100」、アクリル酸エチルに由来する構成単位の割合が10重量%、MFRが3(g/10min));
A2は、エチレン-アクリル酸エチル共重合体(日本ポリエチレン(株)製、商品名「レクスパールA4200」、アクリル酸エチルに由来する構成単位の割合が20重量%、MFRが5(g/10min));
PEは、低密度ポリエチレン(住友化学株式会社製、商品名「スミカセンG401」、MFRが4(g/10min));
BAは、アクリル酸ブチル;
MMAは、メタクリル酸メチル;
Stは、スチレン;
ANは、アクリロニトリル;
HPMAは、メタクリル酸2-ヒドロキシプロピル;を示す。
【0064】
<樹脂組成物(Y1)の製造>
エチレン-(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体(L)として、エチレン-アクリル酸エチル共重合体(L1)(商品名「レクスパールA3100」、日本ポリエチレン(株)製)45gと、前記グラフト共重合体(M1)を10gと、スチレン系エラストマー(N)として、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン(SEBS)ブロック共重合体(商品名「Kraton G1652」、クレイトンポリマー(株)製)45gをドライブレンドした。その後、二軸押出機(PCM-30:池貝製)を用いて、溶融混練(押出温度:140~160℃)した。次いで、ストランド状の樹脂組成物を得た後、これをカッティングしてペレット状にすることで樹脂組成物(Y1)を得た。
【0065】
<樹脂組成物(Y2~Y6,Y´1~Y´6)の製造>
各原料の種類とその配合量(重量部)を表2に示すように変えたこと以外は、樹脂組成物(Y1)と同様の方法により製造した。
【0066】
【0067】
表2中、
L1は、エチレン-アクリル酸エチル共重合体(日本ポリエチレン(株)製、商品名「レクスパールA3100」、アクリル酸エチルに由来する構成単位の割合が10重量%、MFRが3(g/10min));
L2は、エチレン-アクリル酸エチル共重合体(日本ポリエチレン(株)製、商品名「レクスパールA4200」、アクリル酸エチルに由来する構成単位の割合が20重量%、MFRが5(g/10min));
N1は、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン(SEBS)ブロック共重合体(クレイトンポリマー(株)製、商品名「Kraton G1651」);
N2は、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレン(SEPS)ブロック共重合体(クラレ(株)製、商品名「セプトン 2006」);
N3は、);スチレン-エチレン-エチレン-プロピレン-スチレン(SEEPS)ブロック共重合体(クラレ(株)製、商品名「セプトン 4045」);
N4は、スチレン-エチレン-プロピレン(SEP)ブロック共重合体(クラレ(株)製、商品名「セプトン 1001」);を示す。
【0068】
<実施例1>
<ポリアミド樹脂組成物の製造>
ポリアミド樹脂(X)として、ナイロン66(X1)(商品名「Zytel 103HSL」、デュポン株式会社製)100gと、上記の樹脂組成物(Y1)を10g、二軸押出機(PCM-30:池貝製)を用いて、溶融混練(押出温度:180~200℃)した。次いで、ストランド状のポリアミド樹脂組成物を得た後、これをカッティングしてペレット状のポリアミド樹脂組成物を得た。
【0069】
<静音化特性の評価>
上記で得られたペレットを射出成形(バレル温度:275℃、金型温度:80℃)し、評価用試験片(長さ:60mm×幅:100mm×厚み:2mm)を作製した。次いで、当該試験片(評価材)を、静音化特性の試験用のプレート(55mm×80mm×2mm)に切り出してバリ取りを行った後、温度25℃、湿度50%RHで12時間放置した。また、相手材はポリ塩化ビニル(PVC)皮革(シンコー(株)製、「PVCメリヤス生地 巾1250mm オールマイティ生地カット出し」)を使用した。次いで、上記の静音化特性の試験用のプレートと、相手材用の同材プレートをZiegler社のスティックスリップ測定装置SSP-04に固定し、荷重=40N、速度=1mm/sの条件でそれぞれ擦り合わせた時の軋み音リスク値を測定し、以下の判断基準で評価した。
軋み音リスク値1~3:軋み音発生のリスクが低い。
軋み音リスク値4~5:軋み音発生のリスクがやや高い。
軋み音リスク値6~10:軋み音発生のリスクが高い。
【0070】
本発明のポリアミド樹脂成形体は、上記の静音化特性の評価において、軋み音リスク値が3以下を良好とした。
【0071】
<吸湿後の静音化特性の評価>
上記の静音化特性の試験用のプレートを、恒温高湿槽を用いて、温度50℃、湿度95%RHの条件で300時間静置した。続いて、温度25℃、湿度50%RH恒温槽に24時間放置した後、上記の相手材を用いて、軋み音リスク値を測定した。なお、軋み音リスク値の判断基準は、上記と同様である。
【0072】
<実施例2~9、比較例1~7>
<ポリアミド樹脂組成物の製造>
各原料の種類とその配合量(重量部)を表3、表4に示すように変えたこと以外は、実施例1と同様の方法によりポリアミド樹脂組成物を製造した。
【0073】
上記で得られた各実施例および比較例のポリアミド樹脂組成物を用い、上記の評価方法により評価した結果を表3および4に示す。
【0074】
【0075】
【0076】
表3および4中、
X1は、ポリアミド樹脂であるナイロン66(デュポン(株)製、商品名「Zytel 103HSL」);
X2は、ポリアミド樹脂であるナイロン6(東レ(株)製、商品名「アミランCM1017A」);
X3は、ポリアミド樹脂であるナイロンMXD6(三菱ガス化学(株)製、商品名「MXナイロンS6001」);を示す。
【0077】
実施例1~9のポリアミド樹脂組成物では、初期、吸湿後の静音化特性について目標値を満たす評価結果が得られた。
【0078】
比較例1は、グラフト共重合体(M)の、エチレン-(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体(A)と共重合体(B)の重量比((A)/(B))が、40/60であるため、吸湿後の静音化特性が劣っていた。
【0079】
比較例2は、グラフト共重合体(M)の、エチレン-(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体(A)と共重合体(B)の重量比((A)/(B))が、100/0であるため、初期、吸湿後の静音化特性が劣っていた。
【0080】
比較例3は、グラフト共重合体(M)の、エチレン-(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体(A)の代わりに、低密度ポリエチレンを使用したため、初期、吸湿後の静音化特性が劣っていた。
【0081】
比較例4は、樹脂組成物(Y)中の、エチレン-(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体(L)の含有量が10重量%であるため、初期、吸湿後の静音化特性が劣っていた。
【0082】
比較例5は、樹脂組成物(Y)中の、グラフト共重合体(M)の含有量が40重量%であるため、初期、吸湿後の静音化特性が劣っていた。
【0083】
比較例6は、樹脂組成物(Y)中の、スチレン系エラストマー(N)の含有量が80重量%であるため、初期、吸湿後の静音化特性が劣っていた。
【0084】
比較例7は、樹脂組成物(Y)を含まないため、初期、吸湿後の静音化特性が劣っていた。