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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022176491
(43)【公開日】2022-11-30
(54)【発明の名称】吸音板及び吸音構造
(51)【国際特許分類】
   G10K 11/16 20060101AFI20221122BHJP
   G10K 11/162 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
G10K11/16 130
G10K11/162
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021082958
(22)【出願日】2021-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】谷川 将規
【テーマコード(参考)】
5D061
【Fターム(参考)】
5D061AA04
5D061AA23
5D061BB31
5D061BB40
(57)【要約】
【課題】施工時又は設置後であっても吸音特性を調整可能な吸音板を提供する。
【解決手段】本発明に係る吸音板11は、伸縮性を有する材質からなる板状基材20を備える。板状基材20には、複数の貫通孔22が形成されている。複数の貫通孔22の各々は、板状基材20の板面25、26に開口し、Z方向に沿って板状基材20を貫通している。複数の貫通孔22の各々の開口形状、及び複数の貫通孔22のうち板面25、26上で互いに隣り合う2つの貫通孔22の中心22C間の距離は、吸音対象の音波の周波数帯域に応じて決められている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸縮性を有する材質からなる板状基材を備え、
前記板状基材には複数の貫通孔が形成され、
前記複数の貫通孔の各々は前記板状基材の板面に開口し、厚み方向に沿って前記板状基材を貫通し、
前記複数の貫通孔の各々の開口形状、及び前記複数の貫通孔のうち前記板面上で互いに隣り合う2つの貫通孔の中心間の距離は、吸音対象の音波の周波数帯域に応じて決められている、
吸音板。
【請求項2】
前記板状基材の外周端部に接続され、前記板面に沿う方向で移動可能に構成された接続部を有する張力調整機構を備え、
前記張力調整機構は、前記接続部を前記板面の外方に向けて移動させることによって前記貫通孔を拡げると共に前記距離を長くし、前記接続部を前記板面の中心に向けて移動させることによって前記貫通孔を縮小すると共に前記距離を短くする、
請求項1に記載の吸音板。
【請求項3】
請求項2に記載の吸音板が厚み方向に複数重ねられ、
各々の吸音板の前記張力調整機構によって前記板状基材の張力が調整され、前記厚み方向に沿って見たときの前記複数の貫通孔の相対配置に応じて、吸音される音波の周波数帯域が調整可能に構成されている、
吸音構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸音板及び吸音構造に関する。
【背景技術】
【0002】
コンサートホールや室内の音楽室で残響音の調整や防音等に用いられる吸音構造の1つに、有孔板(有孔ボードとも呼ばれる、吸音板)が挙げられる。有効板は、特定の周波数帯域で優れた吸音率を発揮する。このような吸音特性は、有孔板に形成されている複数の孔の孔径、有孔板の厚み、有効板の板面の開口率等によって決まる。
【0003】
例えば、特許文献1には、波板と平板とが互いに重ね合わされた吸音パネルが開示されている。特許文献1に開示されている吸音パネルでは、平板と波板の谷の部分との間に形成される第1の空洞に連通する第1の開口部が形成されている。また、特許文献1に開示されている吸音パネルでは、平板と波板とが互いに当接する波板の各々の山の部分で、平板及び波板を貫通して波板の山の部分と既設内装面との間に形成される第2の空洞に連通する第2の開口部が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-030431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の吸音パネルをはじめとする従来の有孔板の板部材には木材や石膏等のように伸展性の低い材質が用いられ、板部材に予め複数の孔が形成された状態で設置現場にて搬入及び施工されるため、施工時又は設置後に有孔板の吸音特性を調整することは困難であった。
【0006】
本発明は、施工時又は設置後であっても吸音特性を調整可能な吸音板及び吸音構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る吸音板は、伸縮性を有する材質からなる板状基材を備え、前記板状基材には複数の貫通孔が形成され、前記複数の貫通孔の各々は前記板状基材の板面に開口し、厚み方向に沿って前記板状基材を貫通し、前記複数の貫通孔の各々の開口形状、及び前記複数の貫通孔のうち前記板面上で互いに隣り合う2つの貫通孔の中心間の距離は、吸音対象の音波の周波数帯域に応じて決められている。
【0008】
上述の吸音板では、伸縮性を有する板状基材にかかる張力が変化することによって複数の貫通孔の各々の開口形状、及び貫通孔の中心間の距離が変化し、吸音率の高い周波数帯域が変わる。即ち、上述の吸音板では、板状基材にかかる張力を変化させることができ、それによって複数の貫通孔の各々の開口形状、及び貫通孔の中心間の距離が変化するため、吸音率の高い周波数帯域を調整することができる。したがって、上述の吸音板によれば、施工時又は設置後であっても板状基材にかかる張力を変化させることによって吸音特性を調整することができる。
【0009】
上述の吸音板では、前記板状基材の外周端部に接続され、前記板面に沿う方向で移動可能に構成された接続部を有する張力調整機構を備え、前記張力調整機構は、前記接続部を前記板面の外方に向けて移動させることによって前記貫通孔を拡げると共に前記距離を長くし、前記接続部を前記板面の中心に向けて移動させることによって前記貫通孔を縮小すると共に前記距離を短くしてもよい。
【0010】
上述の吸音板によれば、張力調整機構によって板状基材の外周端部を把持し、板状基材の張力を変化させることによって複数の貫通孔の各々の開口形状、及び貫通孔の中心間の距離が精度良く調整される。このことによって、張力調整機構を備えない場合に比べて吸音率の高い周波数帯域が高精度に調整される。
【0011】
本発明に係る吸音構造は、上述の吸音板が厚み方向に複数重ねられ、各々の吸音板の前記張力調整機構によって前記板状基材の張力が調整され、前記厚み方向に沿って見たときの前記複数の貫通孔の相対配置に応じて、吸音される音波の周波数帯域が調整可能に構成されている。
【0012】
上述の吸音構造によれば、上述のように伸縮性を有する板状基材を備えた吸音板が厚み方向に積層され、各々の板状基材に複数の貫通孔が形成されているので、厚み方向に沿って見たときの複数の吸音板同士の複数の貫通孔の相対配置が各々の吸音板の板状基材の張力を変えることによって変化する。複数の貫通孔の相対配置が変化することによって、板面に沿う方向で互いに重なる貫通孔の開口領域の形状や開口領域の略中心同士の間隔が変化し、吸音率の高い周波数帯域も変化する。即ち、上述の吸音構造によれば、厚み方向に積層された複数の吸音板の各々の板状基材の張力を制御することによって、板面に沿う方向において互いに重なる貫通孔の開口領域の形状や開口領域の略中心同士の間隔が調整され、吸音される音波の周波数帯域が調整される。したがって、上述の吸音構造によれば、施工時又は設置後であっても厚み方向に積層された複数の吸音板の各々の板状基材にかかる張力を変化させることによって吸音特性を調整することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、施工時又は設置後であっても吸音特性を調整可能な吸音板及び吸音構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明を適用した一実施形態の吸音板の正面図である。
図2図1に示すA1-A1線で矢視した吸音板の断面図である。
図3図1に示す吸音板の板状基材の張力を変えて吸音特性を調整する方法を説明するための正面図である。
図4】本発明を適用した一実施形態の吸音構造の正面図である。
図5図4に示すA2-A2線で矢視した吸音構造の断面図である。
図6図4に示す吸音構造の各々の吸音板の板状基材の張力を変えて吸音特性を調整する方法を説明するための正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を適用した一実施形態の吸音板及び吸音構造について、図面を参照して説明する。
【0016】
<吸音板>
本実施形態の吸音板11は、例えば音響の調整や防音・消音対策が求められる室内の壁面、仕切材の板面等に設置されるものである。図1及び図2に示すように、吸音板11は、伸縮性を有する材質からなる板状基材20と、張力調整機構40と、を備える。板状基材20の材質は、例えば合成ゴム、厚手の布等であるが、伸縮性を有すると共に自然状態(即ち、外力が加わっていない状態)で形状保持性を有するものであれば特に限定されない。板状基材20は、所定の厚みを有する。なお、板状基材20の厚みは、吸音対象である音の中心周波数又はピーク周波数、及び板状基材20の変形し易さに依存する。板状基材20の厚みが大きくなる程、吸収対象の音の中心周波数又はピーク周波数が低くなる。言い換えると、板状基材20の変形し易さが一定であれば、吸音対象の音の中心周波数又はピーク周波数が低い程、板状基材20の好適な厚みは大きい。
【0017】
以下、板状基材20の板面25、26に沿う方向のうち第1の方向(図1の横方向)をX方向とし、所定の位置からX方向に沿って一方の側を+X側又は+X方向とし、X方向に沿って他方の側を-X側又は-X方向とする。同様に、板状基材20の板面25、26に沿う方向のうち第1の方向に直交する第2の方向(図1の縦方向)をY方向とし、所定の位置からY方向に沿って一方の側を+Y側又は+Y方向とし、Y方向に沿って他方の側を-Y側又は-Y方向とする。また、板状基材20の厚み方向に沿う第3の方向(図1の紙面に直交する方向)をZ方向とし、所定の位置からZ方向に沿って一方の側を+Z側又は+Z方向とし、Z方向に沿って他方の側を-Z側又は-Z方向とする。
【0018】
板状基材20には、複数の貫通孔22が形成されている。各々の貫通孔22は、板状基材20の板面25、26に開口し、Z方向に沿って板状基材20を貫通している。貫通孔22の開口形状は、例えば円形である。なお、貫通孔22の開口形状は、必要に応じて矩形や星形等に適宜変更されてもよい。本実施形態では、複数の貫通孔22は、互いに同じ真円形且つ同じ大きさの開口で形成され、X方向及びY方向で等間隔に形成されている。複数の貫通孔22の各々の開口形状、X方向の大きさ22x、Y方向の大きさ22y、複数の貫通孔22のうち板面25(又は板面26)上で互いに隣り合う2つの貫通孔22の中心22C間のX方向の距離23x及びY方向の距離23yは、吸音板11の吸音対象の音波(図示略)の周波数帯域に対応している。
【0019】
張力調整機構40は、板状基材20の外周端部28のうち-X側の端部28-1及び+X側の端部28-2に接続された接続部41及び接続部42を有する。接続部41、42のY方向の大きさは、少なくとも板状基材20で複数の貫通孔22が形成されているY方向の領域よりも大きい。このことによって、後述するように接続部41、42をX方向で動かした際に、板状基材20の張力の変化がY方向で略均等になり、貫通孔22の開口形状の変化及び貫通孔22の中心22C間の距離の変化がY方向で略均一に生じる。即ち、接続部41、42をX方向で動かした際に、所望の吸音特性の変化を得やすい。接続部41、42は、少なくともX方向(板面に沿う方向)に移動可能に構成されている。張力調整機構40は接続部41、42の駆動部等をさらに備えるが、図1以降の各図面では接続部41、42以外の張力調整機構40の構成の図示は省略されている。
【0020】
図3に示すように、張力調整機構40が作動し、接続部41が図1に示す相対位置よりも-X側に移動すると共に、接続部42が図1に示す相対位置よりも+X側に移動すると、板状基材20はX方向に伸びる。板状基材20のX方向での延伸に伴い、貫通孔22の開口形状は、真円形から長軸がX方向に平行な楕円形に変形する。貫通孔22のX方向の大きさ22xは、大きさ22x´に増大する。X方向で互いに隣り合う貫通孔22の中心22C同士の距離23xは、距離23x´に増大する。一方、板状基材20のX方向での延伸に伴い、板状基材20はY方向で僅かに縮み、貫通孔22のY方向の大きさ22yは、大きさ22y´に僅かに減少する。Y方向で互いに隣り合う貫通孔22の中心22C同士の距離23yは、距離23y´に増大する。
【0021】
上述のように各々の大きさや距離が増減することによって、吸音板11で他の周波数帯域よりも高い吸音率を有する周波数帯域、即ち吸音特性が変化する。即ち、板状基材20が自然状態にある吸音板11で高い吸音率を有する変更前の周波数帯域を変更後の周波数帯域に変えるために、貫通孔22のX方向の大きさ22x´及びY方向の大きさ22y´と隣り合う貫通孔22の中心22C同士のX方向の距離23x´及びY方向の距離23y´とが変更後の周波数帯域に合うように接続部41、42を移動させることができる。
【0022】
上述説明した本実施形態の吸音板11は、伸縮性を有する材質からなる板状基材20を備える。板状基材20には、複数の貫通孔22が形成されている。複数の貫通孔22の各々は、板状基材20の板面25、26に開口し、Z方向に沿って板状基材20を貫通している。複数の貫通孔22の各々の開口形状、及び複数の貫通孔22のうち板面25、26上で互いに隣り合う2つの貫通孔22の中心22C間の距離は、吸音対象の音波の周波数帯域に応じて決められている。
【0023】
本実施形態の吸音板11では、伸縮性を有する板状基材20にかかる張力が変化することによって複数の貫通孔22の各々の開口形状、開口の大きさ22x、22y及び貫通孔22の中心22C間の距離23x、23yが変化し、吸音率の高い周波数帯域が変わる。即ち、本実施形態の吸音板11では、板状基材20が伸縮性を有するので、板状基材20にかかる張力を変化させることができる。このことによって複数の貫通孔22の各々の開口形状、開口の大きさ22x、22y及び貫通孔22の中心22C間の距離23x、23yを変化させ、吸音率の高い周波数帯域を調整することができる。したがって、本実施形態の吸音板11によれば、施工時又は設置後であっても板状基材20にかかる張力を変化させることによって吸音特性を調整することができる。
【0024】
本実施形態の吸音板11は、板状基材20の端部28-1、28-2に接続され、板面25、26に沿うX方向で移動可能に構成された接続部41、42を有する張力調整機構40を備える。張力調整機構40は、接続部41を-X方向(板面の外方)に、且つ接続部42を+X方向(板面の外方)に向けて移動させることによって貫通孔22をX方向で拡げると共に中心22C間の距離23xを距離23x´に長くすることができる。図示していないが、接続部41、42を図3とは逆に移動させる、即ち接続部41を+X方向(板面の中心)に、且つ接続部42を-X方向(板面の中心)に向けて移動させることによって貫通孔22を縮小すると共にX方向で中心22C距離を短くすることができる。
【0025】
本実施形態の吸音板11によれば、張力調整機構40によって板状基材20の例えばX方向で外周端部28を把持し、板状基材20を歪に変形させること等なく、板状基材20の張力を変化させることによって、接続部41、42を用いない場合に比べて複数の貫通孔22の各々の開口形状、及び貫通孔22の中心22C間の距離を高精度に調整することができる。このことによって、張力調整機構40を備えない場合に比べて吸音率の高い周波数帯域、即ち吸音特性を高精度に調整することができる。
【0026】
<吸音構造>
図4及び図5に示すように、本実施形態の吸音構造12では、上述の吸音板11がZ方向(厚み方向)に複数重ねられている。本実施形態では、2枚の吸音板11-1、11-2がZ方向に重ねられ、吸音構造12は、吸音板11-1、11-2を備える。吸音板11-1、11-2の各々は、上述の吸音板11と同様の構成を備える。但し、吸音板11-2は、吸音板11-1に対して板面25、26の中心を回転中心として90°回転させた状態で吸音板11-1とZ方向で重ねられている。そのため、吸音板11-2が備える張力調整機構40の接続部43、44は、板状基材20の外周端部28のうち+Y側の端部28-3及び-Y側の端部28-4に接続されている。接続部43、44のX方向の大きさは、少なくとも吸音板11-2の板状基材20で複数の貫通孔22が形成されているX方向の領域よりも大きい。このことによって、接続部43、44をY方向で動かした際に、板状基材20の張力の変化がX方向で略均等になり、貫通孔22の開口形状の変化及び貫通孔22の中心22C間の距離の変化がX方向で略均一に生じる。
【0027】
図6に示すように、吸音板11-1の張力調整機構40が作動し、接続部41が図4に示す相対位置よりも-X側に移動すると共に、接続部42が図4に示す相対位置よりも+X側に移動すると、前述で吸音板11について説明したように、吸音板11-1の板状基材20はX方向に伸びる。吸音板11-1の板状基材20のX方向での延伸に伴い、吸音板11-1の貫通孔22の開口形状は、真円形から長軸がX方向に平行な楕円形に変形する。同時に、吸音板11-2の張力調整機構40が作動し、接続部43が図4に示す相対位置よりも+Y側に移動すると共に、接続部44が図4に示す相対位置よりも-Y側に移動すると、吸音板11-2の板状基材20はY方向に伸びる。吸音板11-2の板状基材20のY方向での延伸に伴い、吸音板11-2の貫通孔22の開口形状は、真円形から長軸がY方向に平行な楕円形に変形する。さらに、Z方向(厚み方向)に沿って見たときの複数の吸音板11-1、11-2の各々の複数の貫通孔の相対配置が変わる。
【0028】
上述のように各々の大きさや距離が増減することによって、吸音板11-1、11-2の板面25、26に沿う方向で互いに重なる貫通孔22の重なり領域30が形成される。吸音構造12で吸音率が高い周波数帯域、即ち吸音特性は、重なり領域30の各々の形状、X方向での重なり領域30の中心30C間の距離31x、及びY方向での重なり領域30の中心30C間の距離31yによって決まる。即ち、吸音構造12で高い吸音率を有する変更前の周波数帯域を変更後の周波数帯域に変えるために、重なり領域30の各々のX方向の大きさ30x及びY方向の大きさ30yと隣り合う重なり領域30の中心30C同士のX方向の距離31x及びY方向の距離31yとが変更後の周波数帯域に合うように接続部41、42、43、44を移動させることができる。
【0029】
上述説明した本実施形態の吸音構造12は、吸音板11-1、11-2がZ方向に重ねられ、吸音板11-1、11-2の張力調整機構40の接続部41、42、43、44によって板状基材20の張力が調整され、Z方向に沿って見たときの複数の貫通孔22の相対配置に応じて、吸音される音波の周波数帯域、即ち吸音特性が調整可能に構成されている。
【0030】
本実施形態の吸音構造12によれば、伸縮性を有する板状基材20を備えた吸音板11-1、11-2がZ方向に積層され、各々の板状基材20に複数の貫通孔22が形成されている。Z方向に沿って見たときの吸音板11-1、11-2同士の複数の貫通孔22の相対配置、及び吸音構造12としての有効孔の形状及び間隔は、吸音板11-1、11-2の各々の張力調整機構40を用いて板状基材20の張力を変えることによって変化する。複数の貫通孔22の相対配置が変化することによって、板面25、26に沿う方向で互いに重なる貫通孔22の重なり領域(開口領域)30の形状、X方向の大きさ30x及びY方向の大きさ30y、重なり領域30の中心30C同士のX方向の距離(間隔)31x及びY方向の距離(間隔)31yが変化し、本実施形態の吸音構造12において吸音率の高い周波数帯域も変化する。即ち、本実施形態の吸音構造12によれば、Z方向に積層された2枚の吸音板11-1、11-2の各々の板状基材20の張力を制御することによって、板面25、26に沿う方向において互いに重なる貫通孔22の重なり領域30の形状や重なり領域30の中心30C同士の距離31x、31yを調整し、吸音される音波の周波数帯域を調整することができる。したがって、本実施形態の吸音構造12によれば、施工時又は設置後であっても吸音板11-1、11-2の各々の板状基材20にかかる張力を変化させることによって吸音特性を容易に調整することができる。
【0031】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は特定の実施形態に限定されない。本発明は、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、変更可能である。
【0032】
なお、上述の実施形態の吸音構造12では、2枚の吸音板11-1、11-2を重ねているが、3枚以上の吸音板が重ねられてもよい。
【0033】
また、上述の実施形態の吸音構造12のように複数枚の吸音板を厚み方向で重ねる場合、吸音板の開口の大きさ、形状、開口率及び材質は、複数枚の吸音板同士で互いに異なってもよい。
【符号の説明】
【0034】
11、11-1、11-2…吸音板
20…板状基材
22…貫通孔
40…張力調整機構
41、42、43、44…接続部
図1
図2
図3
図4
図5
図6