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  • 特開-コンクリート壁部の目地補修方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022176495
(43)【公開日】2022-11-30
(54)【発明の名称】コンクリート壁部の目地補修方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/02 20060101AFI20221122BHJP
   E04B 1/68 20060101ALI20221122BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20221122BHJP
   E01D 22/00 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
E04G23/02 B
E04B1/68 Z
C09K3/10 R
E01D22/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021082962
(22)【出願日】2021-05-17
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)2020年(令和2年)11月27日 第8回 2020年度鉄道施設技術発表会における発表により公開 (2)2021年(令和3年)2月1日発行の刊行物「日本鉄道施設協会誌2 第59巻 第2号」(第81頁~第84頁に掲載)の発行により公開 (3)2021年(令和3年)2月1日 一般社団法人日本鉄道施設協会ウェブサイト(http://www.jrcea.or.jp/index.php)内の協会誌電子版「日本鉄道施設協会誌2 第59巻 第2号」(第81頁~第84頁(https://jrcea.libra.jpn.com/-site_media/media/content/132/1/html5.html#page=85,https://jrcea.libra.jpn.com/-site_media/media/content/132/1/html5.html#page=87,https://jrcea.libra.jpn.com/-site_media/media/content/132/1/html5.html#page=89)に掲載)のウェブ公開により公開
(71)【出願人】
【識別番号】595135671
【氏名又は名称】第一建設工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】502194403
【氏名又は名称】栄光産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097065
【弁理士】
【氏名又は名称】吉井 雅栄
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 健一
(72)【発明者】
【氏名】佐川 洋亮
(72)【発明者】
【氏名】春日 秀文
(72)【発明者】
【氏名】丸山 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】村上 幸司
(72)【発明者】
【氏名】鴨井 秀男
(72)【発明者】
【氏名】岡田 浩士
(72)【発明者】
【氏名】小松 平祐
【テーマコード(参考)】
2D059
2E001
2E176
4H017
【Fターム(参考)】
2D059GG37
2D059GG39
2E001DA01
2E001EA01
2E001FA04
2E001GA07
2E001GA65
2E001HF02
2E001MA02
2E001MA08
2E001MA11
2E176AA01
2E176BB16
4H017AC06
4H017AD05
4H017AE03
(57)【要約】
【課題】湿潤状態でも施工でき、施工時間が短く膨大な補修か所でも容易にして短期に補修施工でき、しかも止水性(漏水防止性能)に優れその耐久性にも優れたコンクリート壁部の目地補修方法を提供すること。
【解決手段】内側に膨潤止水材3を付与するとともに圧縮変形させた水膨張性中空弾性止水材4を目地部2内に挿入し、さらにその外側にシーリング材5を付与して、この三層により目地部2を止水し漏水を防止するコンクリート壁部の目地補修工法。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート壁部の目地部を清掃し、この目地部内に、内側に第一層たる膨潤止水材を付与するとともに、この膨潤止水材の外側に第二層たる細長管状の水膨張性中空弾性止水材を挿入配設し、さらにこの水膨張性中空弾性止水材の外側に第三層たるシーリング材を付与して、この目地部を少なくとも前記三層により止水封止し漏水を防止するコンクリート壁部の目地補修工法であって、
前記第一層の前記膨潤止水材は、水との反応により膨張する塗布自在または充填自在な液状またはジェル状の膨潤止水材とし、
前記第二層の前記細長管状の水膨張性中空弾性止水材は、前記膨潤止水材が内側に付与されることで止水性が高められるとともに、屈曲変形自在および圧縮変形自在な細長管状で水との接触により膨張することによりおよび圧縮戻り弾性変形により止水性が高められる水膨張性中空弾性管材とし、
内側に前記膨潤止水材を付与するとともに圧縮変形させた前記水膨張性中空弾性止水材を前記目地部内に挿入し、さらにその外側に前記シーリング材を付与して、このシーリング材が硬化するまでの漏水も前記第一層の前記膨潤止水材および前記第二層の前記水膨張性止水材により防止することを特徴とするコンクリート壁部の目地補修工法。
【請求項2】
前記目地部内に、前記第一層たる前記膨潤止水材を塗布または充填するとともに、この膨潤止水材の外側に前記第二層たる細長管状の前記水膨張性中空弾性止水材を挿入配設する際、中空内部を吸引して細長圧縮潰れ形状に変形して挿入配設することを特徴とする請求項1記載のコンクリート壁部の目地補修方法。
【請求項3】
前記目地部の前記清掃は、この目地部の入り口または内部を、工具で切削または不要物を工具で切削除去する切削除去清掃であることを特徴とする請求項1、2のいずれか1項に記載のコンクリート壁部の目地補修方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば、新幹線高架橋の側壁部(防音壁)の絶縁目地などのコンクリート壁部の目地部を補修するコンクリート壁部の目地補修方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
たとえば、経年劣化や様々変状が生じて高架橋の接合工や現場打ち高欄の絶縁目地から漏水が生じ場合がある。この接合工や絶縁目地からの漏水は、特に冬季には融雪散水などもあって顕著となりこれがつららとなるおそれもある。
このつららは、落下するおそれがあるためこれを除去する作業をしなければならなく、またこのようなつららを生じさせないようにその漏水のおそれがある目地部を、伸縮性シートで閉塞するシート貼り補修などの目地補修作業をしなければならなかった。
【0003】
たとえば、このシート貼りによる目地補修は、接着剤が湿潤面には付かないため天候に左右され、またこのシート接着の前にプライマーを塗布するために逐次この乾燥を待ってからシートの接着貼作業をしなければならないなど、1か所の補修施工にかなりの時間を要し、特に新幹線高架橋の絶縁目地の補修か所は膨大な数のため相当な作業時間を要することとなるなどの問題があった。
【0004】
さらに、目地部の変状は様々で、単にシート貼りやシーリング材を充填しただけでは、止水は十分でなく、その止水耐久性も十分ではなかった。そのため施工時間が短くたとえ膨大な補修か所でも容易にして短期に補修施工できるとともに、止水性が高くその止水耐久性にも優れた目地補修方法の開発・実現が求められているのが、現状である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような現状に鑑み、前記問題を解決したもので、湿潤状態でも施工でき、施工時間が短く膨大な補修か所でも容易にして短期に補修施工でき、しかも止水性(漏水防止性能)に優れその耐久性にも優れたコンクリート壁部の目地補修方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0007】
コンクリート壁部1の目地部2を清掃し、この目地部2内に、内側に第一層たる膨潤止水材3を付与するとともに、この膨潤止水材3の外側に第二層たる細長管状の水膨張性中空弾性止水材4を挿入配設し、さらにこの水膨張性中空弾性止水材4の外側に第三層たるシーリング材5を付与して、この目地部2を少なくとも前記三層により止水封止し漏水を防止するコンクリート壁部の目地補修工法であって、前記第一層の前記膨潤止水材3は、水との反応により膨張する塗布自在または充填自在な液状またはジェル状の膨潤止水材とし、前記第二層の前記細長管状の水膨張性中空弾性止水材4は、前記膨潤止水材3が内側に付与されることで止水性が高められるとともに、屈曲変形自在および圧縮変形自在な細長管状で水との接触により膨張することによりおよび圧縮戻り弾性変形により止水性が高められる水膨張性中空弾性管材とし、内側に前記膨潤止水材3を付与するとともに圧縮変形させた前記水膨張性中空弾性止水材4を前記目地部2内に挿入し、さらにその外側に前記シーリング材5を付与して、このシーリング材5が硬化するまでの漏水も前記第一層の前記膨潤止水材3および前記第二層の前記水膨張性止水材4により防止することを特徴とするコンクリート壁部の目地補修工法に係るものである。
【0008】
また前記目地部2内に、前記第一層たる前記膨潤止水材3を塗布または充填するとともに、この膨潤止水材3の外側に前記第二層たる細長管状の前記水膨張性中空弾性止水材4を挿入配設する際、中空内部を吸引して細長圧縮潰れ形状に変形して挿入配設することを特徴とする請求項1記載のコンクリート壁部の目地補修方法に係るものである。
【0009】
また前記目地部2の前記清掃は、この目地部2の入り口または内部を、工具で切削または不要物を工具で切削除去する切削除去清掃であることを特徴とする請求項1、2のいずれか1項に記載のコンクリート壁部の目地補修方法に係るものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明は上述のように構成したから、湿潤状態でも施工でき、施工時間が短く膨大な補修か所でも容易にして短期に補修施工でき、しかも止水性(漏水防止性能)に優れその耐久性にも優れたコンクリート壁部の目地補修方法となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施例の補修か所(目地部)の補修の一例を示す(新幹線高架橋の目地部の補修例を示す)説明斜視図である。
図2】本実施例の補修か所(目地部)の補修施工後の説明断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の最適な実施形態を図面に基づいて本発明の作用を示し簡単に説明する。
【0013】
コンクリート壁部1の目地部2を清掃後、この目地部2内に、内側に第一層たる膨潤止水材3を付与するとともに、この膨潤止水材3の外側に第二層たる細長管状の水膨張性中空弾性止水材4を挿入配設し、さらにこの水膨張性中空弾性止水材4をバックアップ材としてこの外側に第三層たるシーリング材5(コーキング材)を付与して、この目地部2を少なくとも前記三層により止水封止し漏水を防止するようにして補修する。
【0014】
この目地部2内に塗布または充填した前記第一層の膨潤止水材3が、前記バックアップ材たる第二層の細長管状の水膨張性中空弾性止水材4の内側に付与されているため、たとえ目地部2が曲がっていたりして目地部2内面と前記水膨張性中空弾性止水材4とに隙間が生じるおそれがあってもその隙間も埋まり止水されるため止水性(漏水防止能力)が高められるとともに、この水膨張性中空弾性止水材4は、屈曲変形自在および圧縮変形自在な細長管状で水との接触により膨張することおよび圧縮戻り弾性変形により弾性圧接することにより止水性がさらに高められることとなる。
【0015】
したがって、内側に前記膨潤止水材3を付与し、圧縮変形させた前記水膨張性中空弾性止水材4を前記目地部2内にバックアップ材として挿入し、さらにその外側に前記シーリング材5を付与するため、少なくとも前記三層により目地部2が止水封止され確実に漏水を防止できることとなり、また湿潤面でも施工が可能で乾燥を待つことなく容易にして短時間で施工できる。
【0016】
またこのシーリング材5が硬化するまでの間も、前記第一層の膨潤止水材3および前記第二層の水膨張性中空弾性止水材4により隙間なく内部からの漏水も止水されているため、目地部2の入り口を塞ぐシーリング材5の硬化も早く、またその止水性は高くなり、この止水性の維持も長期にわたる優れた補修方法となる。
【実施例0017】
本発明の具体的な実施例1について図面に基づいて説明する。
【0018】
本実施例では、コンクリート壁部1の補修か所の目地部2をまず清掃するが、この目地部2の清掃は、この目地部2の入り口およびその内部を、工具で表面切削および不要物を切削除去する切削除去清掃することにより行う。
【0019】
具体的には、ディスクグラインダー用研磨ディスクで表面切削清掃などを行うが、目地部2は狭く内部深くまでは清掃できない場合があるため、専用工具を開発しこれを用いるのがよく、たとえばダイヤモンドチップを電着し目地部2内(隙間)に差し入れることができる切削刃を開発してこれを用い、内部をも切削し不陸も整正するようにしてもよい。これにより狭い目地部2内に漏れ出ているモルタルも切削除去清掃でき、補修に必要な数センチ深さまで切削除去清掃ができることとなる。なお、この清掃手法や工具などは適宜選択あるいは開発されるもので、前記手法に限られない。
【0020】
また本実施例では、このようにして目地部2の入り口の面取り部表面および目地部2内の所定深さまで切削除去清掃した後に、内側に第一層たる膨潤止水材3を刷毛で塗布またはコーキングガンで充填して付与するとともに、この膨潤止水材3の外側に第二層たる細長管状の水膨張性中空弾性止水材4をバックアップ材として挿入配設し、そしてさらにこの水膨張性中空弾性止水材4の外側に第三層たるシーリング材5(たとえば湿潤面でも接着可能なシーリング材)を充填付与して、この目地部2を前記三層により止水封止し漏水を防止する目地補修方法としている。
【0021】
具体的には、老朽化した新幹線高架橋のコンクリート壁部(防音壁)の外面下方の絶縁目地での漏水を防止するために補修するもので、湿潤面でも容易にして短時間で補修施工でき、膨大な補修か所(目地部2)を短期に補修施工できるコンクリート壁部の目地補修方法を実現したものである。
【0022】
本実施例の前記第一層の膨潤止水材3は、水との反応により膨張する塗布自在または充填自在な液状またはジェル状の膨潤止水材としている。
【0023】
具体的には、目地部2内に充填し放置しておくと、短時間で空気中の水分や残存する水を吸収・反応してゴム状の硬化塗膜となり、また短時間で数倍に膨潤し隙間を確実に埋めて止水する止水材で、たとえば無溶剤型の市販の(たとえば矢板のジョイント部の止水に用いられている)膨潤止水材を用いている。またさらに硬化促進剤を添加しておくことで、さらに膨潤後短時間で硬化し施工時間が短縮できることとなる。
【0024】
また本実施例の前記第二層の細長管状の水膨張性中空弾性止水材4は、前記膨潤止水材3が内側に付与されていることで止水性がさらに高められるとともに、屈曲変形自在および圧縮変形自在な弾性を有する細長管状で、水との接触により膨張することおよび圧縮戻り弾性変形することにより目地部2内に弾性圧接し止水性が高められる水膨張性中空弾性管材としている。
【0025】
具体的には、この水膨張機能とゴム弾性とを有する中空部を有して屈曲機能および伸縮機能を備えた細長管状(チューブ状)の中空弾性止水材で、さらに止水性を高めるため表面に凹凸部や凹凸条が設けられていて、外側は水膨張性ゴム管部で内側は非膨張性ゴム管部の二重構造の中空弾性管状止水材を用いている。
【0026】
本実施例では、この細長管状の水膨張性中空弾性止水材4の端部をクリップしコンプレッサーで中空部を吸引する(真空引きする)ことで、細長圧縮潰れ形状(管内の空気が吸い出され細った潰れ形状)に変形させて、これをこの狭い目地部2内に挿入するように構成している。
【0027】
また本実施例の前記第三層のシーリング材5は、たとえば湿潤面でも接着性能を有し施工可能なエポキシ変成シリコン系のシーリング材を用いている。
【0028】
さらに説明すると、目地部2内に、前記第一層たる膨潤止水材3を塗布または充填しながら、たとえば目地部2内に所定量充填させたり前記第二層たる細長管状の水膨張性中空弾性止水材4の内側となる半面に刷毛で予め塗布したりして目地部2内に付与しながら、この膨潤止水材3の外側に前記第二層たる細長管状の水膨張性中空弾性止水材4を挿入配設する。この際、前述のようにこの細長管状の水膨張性中空弾性止水材4の端部をクリップしコンプレッサーで中空部を吸引する(真空引きする)ことで、細長圧縮形状(管内の空気が吸い出され細った潰れ形状)に変形させ、これをこの狭い目地部2内に挿入する。
【0029】
そのため細い目地部2でも容易に深くまで挿入配設でき、また挿入後この水膨張性能による圧接と戻り変形による弾性圧接により止水できるとともに、たとえ目地部2が曲がっている個所などがあり漏水のおそれがある個所があっても、この圧接とさらにこの隙間に前記第一層の膨潤止水材3が充填されていることとによりこの隙間も埋められ確実に止水されることとなる。
【0030】
そして、さらに本実施例では、このように内側に前記膨潤止水材3を付与するとともに圧縮変形させた前記水膨張性中空弾性止水材4をバックアップ材として前記目地部2内に挿入し、その外側に練り混ぜて充填するシーリング材5を充填付与して目地部2の入り口を閉塞するため、簡易な施工で確実に止水できるとともに、このシーリング材5が硬化するまでの漏水も、前記第一層の前記膨潤止水材3および前記第二層の前記水膨張性止水材4により防止できるため、シーリング材5の硬化も早まりその止水性も止水耐久性も優れることとなる。
【0031】
したがって、湿潤状態でもまた施工途中で乾燥を待つことも要せずに前記補修施工を行うことができることも含めて、この目地部2の止水のための補修施工の施工時間を極めて短縮でき、この止水性も極めて優れ、漏水を容易に防止でき、しかも入り口を塞ぐ三層目のシーリング材5が硬化するまでの間も、その内側で隙間なく前記第一層の膨潤止水材3および前記第二層の水膨張性止水材4が止水しているため、その間の漏水をも防止できることとなるから、シーリング材5の硬化も早くまたその止水性は極めて高くなり、また止水性の維持も長期にわたり止水耐久性も優れたコンクリート壁部の目地補修方法となるものである。
【0032】
尚、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【符号の説明】
【0033】
1 コンクリート壁部
2 目地部
3 膨潤止水材
4 水膨張性中空弾性止水材
5 シーリング材
図1
図2