(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022176496
(43)【公開日】2022-11-30
(54)【発明の名称】電磁波遮蔽体形成材料および電磁波遮蔽体
(51)【国際特許分類】
H05K 9/00 20060101AFI20221122BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20221122BHJP
C08L 21/00 20060101ALI20221122BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20221122BHJP
C08K 7/06 20060101ALI20221122BHJP
C01B 32/16 20170101ALI20221122BHJP
C01B 32/174 20170101ALI20221122BHJP
【FI】
H05K9/00 M ZNM
C08L101/00
C08L21/00
C08K3/04
C08K7/06
C01B32/16
C01B32/174
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021082963
(22)【出願日】2021-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000215785
【氏名又は名称】TPR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000121
【氏名又は名称】IAT弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 勝人
(72)【発明者】
【氏名】志水 利彰
(72)【発明者】
【氏名】尾形 和樹
【テーマコード(参考)】
4G146
4J002
5E321
【Fターム(参考)】
4G146AA11
4G146AB06
4G146AC01B
4G146AC03B
4G146AC07B
4G146AC15B
4G146AC16B
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4G146DA07
4J002AA001
4J002AC001
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4J002FD116
4J002GQ00
5E321BB32
5E321BB33
5E321BB60
(57)【要約】
【課題】軽量で、成形加工性に優れた新規な電磁波遮蔽体形成材料および電磁波遮蔽体を提供する。
【解決手段】カーボンナノチューブと、樹脂、エラストマーおよびゴムから選ばれる少なくとも1種の母材と、を含む、電磁波遮蔽体形成材料であり、上記電磁波遮蔽体形成材料を射出成形またはプレス成形して厚さ2mmの成形体を形成した際に、上記成形体の26.5GHz~110GHzの周波数の電磁波の吸収率が45%以上である、電磁波遮蔽体形成材料。およびこの電磁波遮蔽体形成材料を成形して得られた電磁波遮蔽体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンナノチューブと、
樹脂、エラストマーおよびゴムから選ばれる少なくとも1種の母材と、
を含む、電磁波遮蔽体形成材料であり、
前記電磁波遮蔽体形成材料を射出成形またはプレス成形して厚さ2mmの成形体を形成した際に、前記成形体の26.5GHz~110GHzの周波数の電磁波の吸収率が45%以上である、電磁波遮蔽体形成材料。
【請求項2】
前記成形体の26.5GHz~110GHzの周波数の電磁波の反射減衰量が-2dB以下である、請求項1に記載の電磁波遮蔽体形成材料。
【請求項3】
前記成形体の26.5GHz~110GHzの周波数の電磁波の平均吸収率が50%以上である、請求項1または2に記載の電磁波遮蔽体形成材料。
【請求項4】
前記成形体の表面抵抗率が2×104Ω/sq.以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載の電磁波遮蔽体形成材料。
【請求項5】
前記電磁波遮蔽体形成材料中の前記カーボンナノチューブの平均バンドル径が0.5μm以下である請求項1~4のいずれか1項に記載の電磁波遮蔽体形成材料。
【請求項6】
前記電磁波遮蔽体形成材料の比重が2.2以下である請求項1~5のいずれか1項に記載の電磁波遮蔽体形成材料。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の電磁波遮蔽体形成材料を成形して得られた電磁波遮蔽体であり、26.5GHz~110GHzの周波数の電磁波の吸収率が45%以上である、電磁波遮蔽体。
【請求項8】
26.5GHz~110GHzの周波数の電磁波の反射減衰量が-2dB以下である、請求項7に記載の電磁波遮蔽体。
【請求項9】
26.5GHz~110GHzの周波数の電磁波の平均吸収率が50%以上である、請求項7または8に記載の電磁波遮蔽体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノチューブを含む電磁波遮蔽体形成材料およびそれを用いた電磁波遮蔽体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、通信機器やレーダー等で使用される電磁波の帯域の高周波化が加速度的に進んでいる。このような電磁環境の中、電磁波遮蔽体を用いて機器間あるいは機器内部での回路間の電磁波干渉による誤動作等を抑制することが行われている。
【0003】
従来電磁波遮蔽体には、軟磁性金属材料や炭素材料など電磁波の損失材料をゴムや樹脂などに配合し、シート状などに成型されたものが使用されてきた。
【0004】
例えば、特許文献1には、軟磁性金属偏平粉末とY型六方晶フェライト粉末と樹脂を複合化する事で1GHz~10GHzの電磁波を吸収できる事が記載されている。また、特許文献2には、膨張性黒鉛とエチレン酢酸ビニル共重合体樹脂からなる吸収体が0.3~3GHz付近の電磁波吸収性が良好である事が記載されている。
【0005】
また、近年では、電磁波遮蔽体にカーボンナノチューブを用いることも検討されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012-009797号公報
【特許文献2】特開2004-022937号公報
【特許文献3】特開2017-118073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年では、従来の第4世代移動通信システム(4G)からより大容量・高速通信を実現するため第5世代移動通信システム(5G)への期待が高まっている。5Gでは主に28GHz以上での周波数帯が使用される。そのため高周波数帯領域での誤作動防止のため電波環境維持を目的とした電磁波遮蔽体のニーズがますます増加している。
【0008】
しかしながら、軟磁性金属材料を用いた電磁波遮蔽体では、5Gが使用される28GHzを超える周波数の電磁波に対し、スネークの限界則に従い電磁波吸収性が極端に低い。また、軟磁性金属材料は比重が大きい素材であるため、軟磁性金属材料を用いた電磁波遮蔽体はその重量が大きく、電磁波遮蔽体の軽量化を阻害する要因となっていた。また、軟磁性金属材料を用いて高周波数側の電磁波吸収体を作製する場合、低い吸収性故に多量の吸収材を配合する必要があり、重量が増加する上に成形加工性が劣るものであった。
【0009】
また、電磁波遮蔽体の素材として炭素材料も検討されてきたが、高周波帯域の電磁波に対する十分な吸収性能を出すに至ってはいない。
【0010】
また、特許文献3では、厚さ1000μm以下のシートの反射減衰量について例示されているが、その周波数は20GHzのみの値である。複合材料の電磁波吸収性能は吸収材の形状や分散性に強く依存しており、より高周波側でのミリ波帯での吸収性能については検証する必要がある。
【0011】
よって、本発明の目的は、軽量で、成形加工性に優れた新規な電磁波遮蔽体形成材料および電磁波遮蔽体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は以下を提供する。
【0013】
<1> カーボンナノチューブと、
樹脂、エラストマーおよびゴムから選ばれる少なくとも1種の母材と、
を含む、電磁波遮蔽体形成材料であり、
上記電磁波遮蔽体形成材料を射出成形またはプレス成形して厚さ2mmの成形体を形成した際に、上記成形体の26.5GHz~110GHzの周波数の電磁波の吸収率が45%以上である、電磁波遮蔽体形成材料。
<2> 上記成形体の26.5GHz~110GHzの周波数の電磁波の反射減衰量が-2dB以下である、<1>に記載の電磁波遮蔽体形成材料。
<3> 上記成形体の26.5GHz~110GHzの周波数の電磁波の平均吸収率が50%以上である、<1>または<2>に記載の電磁波遮蔽体形成材料。
<4> 上記成形体の表面抵抗率が2×104Ω/sq.以上である、<1>~<3>のいずれか1つに記載の電磁波遮蔽体形成材料。
<5> 上記電磁波遮蔽体形成材料中の上記カーボンナノチューブの平均バンドル径が0.5μm以下である<1>~<4>のいずれか1つに記載の電磁波遮蔽体形成材料。
<6> 上記電磁波遮蔽体形成材料の比重が2.2以下である<1>~<5>のいずれか1つに記載の電磁波遮蔽体形成材料。
<7> <1>~<6>のいずれか1つに記載の電磁波遮蔽体形成材料を成形して得られた電磁波遮蔽体であり、26.5GHz~110GHzの周波数の電磁波の吸収率が45%以上である、電磁波遮蔽体。
<8> 26.5GHz~110GHzの周波数の電磁波の反射減衰量が-2dB以下である、<7>に記載の電磁波遮蔽体。
<9> 26.5GHz~110GHzの周波数の電磁波の平均吸収率が50%以上である、<7>または<8>に記載の電磁波遮蔽体。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、軽量で、成形加工性に優れた新規な電磁波遮蔽体形成材料および電磁波遮蔽体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書において「~」という記号を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0016】
<電磁波遮蔽体形成材料>
本発明の電磁波遮蔽体形成材料は、
カーボンナノチューブと、樹脂、エラストマーおよびゴムから選ばれる少なくとも1種の母材と、を含む、電磁波遮蔽体形成材料であり、
上記電磁波遮蔽体形成材料を射出成形またはプレス成形して厚さ2mmの成形体を形成した際に、上記成形体の26.5GHz~110GHzの周波数の電磁波の吸収率が45%以上であることを特徴とする。
【0017】
本発明の電磁波遮蔽体形成材料は、軽量で、成形加工性に優れており、この電磁波遮蔽体形成材料を用いることで、高周波帯域の電磁波の吸収特性に優れた電磁波遮蔽体を製造することができる。
【0018】
上記成形体の26.5GHz~110GHzの周波数の電磁波の吸収率は、50%以上であることが好ましい。また、上記成形体の26.5GHz~110GHzの周波数の電磁波の平均吸収率は50%以上であることが好ましく、55%以上であることがより好ましく、60%以上であることが更に好ましい。
【0019】
上記成形体の26.5GHz~110GHzの周波数の電磁波の反射減衰量は-2dB以下であることが好ましく、-3dB以下であることがより好ましく、-4dB以下であることが更に好ましい。反射減衰量の値が小さいほど成形体の反射係数が小さいことを意味する。反射減衰量の下限は特に限定はないが、-12dB以上とすることができる。
【0020】
上記成形体の26.5GHz~110GHzの周波数の電磁波の透過減衰量は-3dB以下であることが好ましく、-4dB以下であることがより好ましく、-5dB以下であることが更に好ましい。透過減衰量の値が小さいほど成形体の電磁波の遮蔽性が高い事を意味する。
【0021】
上記成形体の表面抵抗率は2×104Ω/sq.以上であることが好ましく、1×105Ω/sq.以上であることがより好ましく、高周波帯域の電磁波のより吸収率を高め、かつ、反射減衰量をより低減できるという理由から、1×106Ω/sq.以上であることが更に好ましく、2×106Ω/sq.以上であることが特に好ましい。
【0022】
上記成形体の電磁波の吸収率、反射減衰量、透過減衰量および表面抵抗率の値は、大気中、25℃の温度条件下で測定した値である。
【0023】
なお、本発明の電磁波遮蔽体形成材料が射出成形およびプレス成形のいずれか一方の方法でしか成形体を製造できない、あるいは、いずれか一方の方法では成形体の製造が困難な場合には、上記電磁波の吸収率等は、成形可能な方法で成形した成形体を用いて測定した値を用いる。例えば、母材としてゴムを用いた電磁波遮蔽体形成材料は、射出成形での成形体の製造が困難な場合が多いので、母材としてゴムを用いた電磁波遮蔽体形成材料については、上記電磁波の吸収率等は、プレス成形によって得られた成形体を用いて測定した値を用いる。また、本発明の電磁波遮蔽体形成材料が射出成形およびプレス成形のいずれの方法でも成形体を製造できるものである場合には、上記電磁波の吸収率等は、射出成形によって得られた成形体を用いて測定した値を用いる。例えば、母材として樹脂やエラストマーを用いた場合には、射出成形およびプレス成形のいずれの方法でも成形体を製造することができる場合が多いので、このような場合には、上記電磁波の吸収率等は、射出成形によって得られた成形体を用いて測定した値を用いる。
【0024】
本発明の電磁波遮蔽体形成材料の比重は2.2以下であることが好ましく、2.0以下であることがより好ましく、1.8以下であることが更に好ましい。
【0025】
(カーボンナノチューブ)
本発明の電磁波遮蔽体形成材料は、カーボンナノチューブを含む。ここで、カーボンナノチューブとは、グラフェンシートが単層あるいは多層の管状になった物質である。本明細書におけるカーボンナノチューブには、カーボンナノホーンとよばれるホーン形状の素材も含まれる。
【0026】
カーボンナノチューブは、単層のカーボンナノチューブであってもよく、多層のカーボンナノチューブであってもよい。カーボンナノチューブは、機械的特性、導電性、伝熱性等の各種性能や材料コスト等の観点からは単層から20層までのカーボンナノチューブであることが好ましく、単層から15層までのカーボンナノチューブであることがより好ましく、単層から10層までのカーボンナノチューブであることが更に好ましい。また、カーボンナノチューブの両端は、開口していてもよく、いずれか一方または両方が閉口していてもよい。
【0027】
カーボンナノチューブの平均直径は0.03~200nmであることが好ましい。平均直径の下限は、1nm以上であることが好ましく、3nm以上であることがより好ましく、5nm以上であることが更に好ましい。平均直径の上限は、150nm以下であることが好ましく、100nm以下であることがより好ましく、50nm以下であることが更に好ましい。
【0028】
カーボンナノチューブの平均長さは、0.0005~5mmであることが好ましい。平均長さの下限は、0.0006mm以上であることが好ましく、0.0008mm以上であることがより好ましく、0.001mm以上であることが更に好ましい。上限は、4mm以下であることが好ましく、3mm以下であることがより好ましく、2mm以下であることが更に好ましい。
【0029】
カーボンナノチューブの平均アスペクト比は、50~500,000であることが好ましい。カーボンナノチューブの平均アスペクト比が上記範囲であれば、高周波帯域の電磁波の吸収特性に優れた電磁波遮蔽体を製造することができる。このような効果が得られる詳細な理由は不明であるが以下によるものであると推測される。すなわち、高いアスペクト比を持つカーボンナノチューブを電磁波遮蔽体に含有させることで、電磁波遮蔽体にカーボンナノチューブによる3次元ネットワーク構造を形成することができると推測される。このような3次元ネットワーク構造が形成されることで、電磁波遮蔽体中に入射した電磁波がカーボンナノチューブと衝突する確率が高くなることによる導電損失と、更に分散されたカーボンナノチューブ同士のキャパシタンスによる誘電損失により効率よく電磁波を吸収する事ができたためであると推測される。平均アスペクト比の下限は、100以上であることが好ましく、150以上であることがより好ましく、200以上であることが更に好ましく、1,000以上であることがより一層好ましく、10,000以上であることが特に好ましい。平均アスペクト比の上限は、450,000以下であることが好ましく、400,000以下であることがより好ましく、300,000以下であることが更に好ましい。なお、本明細書においてカーボンナノチューブの平均アスペクト比とは、カーボンナノチューブの平均長さと平均直径の比(平均長さ/平均直径)のことである。
【0030】
本明細書において、カーボンナノチューブの平均直径は、走査型電子顕微鏡または透過型電子顕微鏡を用いて無作為に選択したカーボンナノチューブ30本の直径(外径)を測定し、それらの平均値を求めて算出した値である。また、カーボンナノチューブの平均長さは、走査型電子顕微鏡または透過型電子顕微鏡を用いて無作為に選択したカーボンナノチューブ30本の長さを測定し、それらの平均値を求めて算出した値である。
【0031】
カーボンナノチューブの比表面積は、100~800m2/gであることが好ましい。比表面積の下限は、150m2/g以上であることが好ましく、200m2/g以上であることがより好ましい。比表面積の上限は、550m2/g以下であることが好ましく、500m2/g以上であることがより好ましい。本明細書において、カーボンナノチューブの比表面積は、JIS Z8830(ISO 9277)に基づき、ガス吸着法(多点法)により測定したBET比表面積での値である。
【0032】
カーボンナノチューブは、アーク法、レーザーアブレーション法、化学的気相成長法(CVD法)等の公知の方法にて製造することができる。また、特開2020-180251号公報の段落0029~0038に記載された方法により製造することもできる。
【0033】
カーボンナノチューブは、酸化処理または多糖類で修飾して表面に酸性基が導入されていてもよい。酸性基としては、カルボキシ基等が挙げられる。
【0034】
酸化処理されたカーボンナノチューブとしては、特に限定されず、例えば、空気での加熱による気相酸化方法、電気化学的処理による酸化方法、酸化剤を用いた酸化方法等の方法で酸化処理されたカーボンナノチューブ等が挙げられる。酸化剤としては、オゾン;過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩;次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム等の次亜ハロゲン酸塩;過硫酸、硝酸、硫酸、次亜塩素酸等の酸;過酸化水素等が挙げられる。酸化剤としてのオゾンは、ガス状オゾン、液体状オゾン、または、水等の水性溶媒中に溶解されているオゾンの形態で供給することができる。オゾン含有ガスは、任意選択的に、酸素、空気、窒素、希ガス及びそれらの混合物等のガスで希釈することができる。従来から利用できる、又は市販のオゾン発生器を、オゾン又はオゾン含有ガスを発生させるために使用することができる。オゾン又はオゾン含有ガスを生成するために、オゾン発生器に、空気又は純酸素等のガスを供給することができる。
【0035】
また、カーボンナノチューブを酸素含有雰囲気中で加熱することにより、酸化処理されたカーボンナノチューブを得ることができる。また、カーボンナノチューブをアルカリ金属水酸化物と混合して酸素含有雰囲気中で加熱し、水洗等によりアルカリ金属を除去することにより、酸化処理されたカーボンナノチューブを得ることができる。また、カーボンナノチューブをプラズマ処理、コロナ放電処理、グロー放電処理、または水中での酸素バブリング処理により、酸化処理されたカーボンナノチューブを得ることができる。
【0036】
酸化処理されたカーボンナノチューブ上の酸性基含有量は、例えば、ベーム法(H.P.Boehm、E.Diehl、W.HeckおよびR.Sappok,”Surface Oxides of Carbon” Angew.Chem.inlernat.Edit.Vol.3(1964)No.10,pp.669-677)により測定することができる。ベーム法とは、測定試料に各種のアルカリを加えて反応させ、反応後のアルカリの濃度を酸で逆滴定することで測定試料表面に存在する酸性官能基量を定量する方法である。
【0037】
カーボンナノチューブの表面修飾に用いられる多糖類は、酸性多糖類であることが好ましい。酸性多糖類としては、カルボキシメチルセルロース、カラギナン、ペクチン、アラビアガム、キサンタンガム、ジェランガム、寒天およびトラガントガム等が挙げられ、分散液中でのカーボンナノチューブの分散性をより向上できるという理由からカルボキシメチルセルロースであることが好ましい。
【0038】
本発明の電磁波遮蔽体形成材料において、カーボンナノチューブは担体高分子材料に担持されたマスターバッチの形態で含まれていることが好ましい。カーボンナノチューブは、嵩高く、凝集し易い素材であるが、カーボンナノチューブを、担体高分子材料に担持されたマスターバッチの形態で使用することで、電磁波遮蔽体形成材料の製造時におけるカーボンナノチューブの凝集を抑制でき、カーボンナノチューブの分散性に優れた電磁波遮蔽体形成材料とすることができる。また、電磁波遮蔽体形成材料の製造時において、過度の分散処理などを行わなくても、カーボンナノチューブの分散性に優れた電磁波遮蔽体形成材料を得ることができるので、機械的剪断によるカーボンナノチューブの切断を抑制でき、カーボンナノチューブの高いアスペクト比を維持させることができる。また、電磁波遮蔽体形成材料中でのカーボンナノチューブの分散性を高めることができるので、高周波数帯での誘電損失が大きくなり、高周波数帯の吸収特性に優れた電磁波遮蔽体を製造する事ができる。
【0039】
マスターバッチ中におけるカーボンナノチューブの含有量は、0.05~30質量%であることが好ましく、0.1~25質量%であることがより好ましく、0.5~20質量%であることが更に好ましい。
【0040】
マスターバッチは、
カーボンナノチューブと溶媒とを含むカーボンナノチューブ分散液と、担体高分子材料と溶媒とを含む担体高分子材料含有溶液とを混合して混合液を調製する工程(混合液調製工程)と、
前述の混合液を凝固させてカーボンナノチューブと担体高分子材料とを含む凝固物を作製する工程(凝固工程)と、
を経て製造することができる。以下、各工程について説明する。
【0041】
混合液調製工程では、カーボンナノチューブ分散液と、担体高分子材料含有溶液とを混合して混合液を調製する。
【0042】
まず、カーボンナノチューブ分散液について説明する。カーボンナノチューブ分散液に含まれるカーボンナノチューブとしては上述したものが挙げられる。
【0043】
カーボンナノチューブ分散液に含まれる溶媒としては、水、メタノール、エタノール、ノルマルプロパノール、イソプロパノール、tert-ブチルアルコール、テトラヒドロフラン、アセトン、アセトニトリル等が挙げられ、水であることが好ましい。水は比誘電率が高く、溶媒として水を用いることで分散液中でのカーボンナノチューブの分散性も良好である。
【0044】
カーボンナノチューブ分散液は、アニオン性分散剤を含むことが好ましい。アニオン性基としては、カルボキシ基、スルホ基、ホスホ基、及びこれらの塩が挙げられる。なお、カルボキシ基、スルホ基およびホスホ基は、水素原子が解離していてもよい。塩を構成する原子または原子団としては、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、アンモニウムイオン、有機アミンのオニウムイオン、銅イオン、銀イオン、アルミニウムイオン、スズイオン等の金属イオン等が挙げられる。アニオン性分散剤の具体例としては、カルボキシメチルセルロース、カラギナン、ペクチン、アラビアガム、キサンタンガム、ジェランガム、寒天、トラガントガムおよびそれらの塩;アニオン変性ポリビニルアルコール;アニオン変性ポリアクリルアミド等が挙げられる。アニオン性分散剤はカルボキシメチルセルロースおよびその塩であることが好ましい。アニオン性分散剤の重量平均分子量は、1,000~20,000,000であることが好ましい。重量平均分子量の上限は、15,000,000以下であることが好ましく、10,000,000以下であることがより好ましい。重量平均分子量の下限は10,000以上であることが好ましく、50,000以上であることがより好ましく、100,000以上であることが更に好ましい。
【0045】
カーボンナノチューブ分散液は、更に、界面活性剤やフィラー(カーボンブラック、グラフェン、シリカ、タルク、ナノクレー等)を含んでいてもよい。
【0046】
カーボンナノチューブ分散液のpHは6~11であることが好ましく、7~11であることがより好ましい。カーボンナノチューブ分散液のpHが上記範囲であれば、カーボンナノチューブの分散性が良好である。なお、本明細書においてpHの値は25℃での値である。
【0047】
カーボンナノチューブ分散液の固形分濃度は0.01~15質量%であることが好ましく、0.05~10質量%であることがより好ましく、0.08~8質量%であることが更に好ましい。カーボンナノチューブ分散液の固形分濃度が上記範囲であれば、凝固体をより効率よく得ることができる。更には、カーボンナノチューブ分散液中におけるカーボンナノチューブの分散性も良好である。また、カーボンナノチューブ分散液中のカーボンナノチューブの含有量は0.01~10質量%であることが好ましく、0.05~8質量%であることがより好ましく、0.1~5質量%であることが更に好ましい。
【0048】
次に、担体高分子材料含有溶液について説明する。担体高分子材料含有溶液に含まれる担体高分子材料としては、特に限定はなく、樹脂、エラストマーおよびゴム等が挙げられる。樹脂は、熱可塑性樹脂であってもよく、熱硬化性樹脂であってもよい。樹脂としては、公知の材料が挙げられ、例えば、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリオレフィン樹脂(ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂など)、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリケトン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルニトリル樹脂、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂、フッ素樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、フラン樹脂、キシレン樹脂等が挙げられる。エラストマーとしては、公知の材料が挙げられ、例えば、ポリスチレンエラストマー、ポリオレフィンエラストマー、ポリウレタンエラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマー、ポリブタジエンエラストマー、ポリイソプレンエラストマー、フッ素系エラストマー、シリコーンエラストマー等が挙げられる。ゴムとしては、公知の材料が挙げられ、例えば、天然ゴム(NR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、ニトリルゴム、水素化ニトリルゴム、ポリイソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、ブチルゴム(IIR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリルゴム(ACM)、フッ素ゴム(FKM、PTFE)等が挙げられる。担体高分子材料の重量平均分子量は5,000~15,000,000であることが好ましく、8,000~13,000,000であることがより好ましく、10,000~10,000,000であることが更に好ましい。なお、本明細書において、担体高分子材料の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量のことを意味する。
【0049】
担体高分子材料含有溶液としては、ラテックス、エマルション、樹脂粒子分散液等が挙げられる。
【0050】
担体高分子材料含有溶液として用いられるラテックスまたはエマルションは、例えば、乳化剤の存在下、乳化重合法によって樹脂、エラストマーおよびゴム等の担体高分子材料を合成した反応液をそのままで、あるいは適宜希釈したり、乳化剤を追加して調製することができる。また溶液重合法によって樹脂、エラストマーおよびゴム等の担体高分子材料を合成した反応液を乳化剤の存在下で水系に転相してラテックスまたはエマルションを調製してもよい。
【0051】
担体高分子材料含有溶液として用いられる樹脂粒子分散液は、樹脂粒子を界面活性剤や分散剤の存在下で、溶媒中で分散して調製することができる。
【0052】
担体高分子材料含有溶液に含まれる溶媒としては、水、メタノール、エタノール、ノルマルプロパノール、イソプロパノール、tert-ブチルアルコール、テトラヒドロフラン、アセトン、アセトニトリル等が挙げられ、水であることが好ましい。
【0053】
担体高分子材料含有溶液は、更に、界面活性剤やフィラー(カーボンブラック、グラフェン、シリカ、タルク、ナノクレー等)を含んでいてもよい。
【0054】
担体高分子材料含有溶液のpHは6~11であることが好ましく、7~11であることが更に好ましい。
【0055】
担体高分子材料含有溶液の固形分濃度は0.5~70質量%であることが好ましく、1~65質量%であることがより好ましく、2~60質量%であることが更に好ましい。担体高分子材料含有溶液の固形分濃度が上記範囲であれば、凝固体をより効率よく得ることができる。また、担体高分子材料含有溶液中の担体高分子材料の含有量は0.5~60質量%であることが好ましく、1~50質量%であることが更に好ましい。
【0056】
混合液調製工程で得られる混合液のpHは6~11であることが好ましく、7~11であることが更に好ましい。
【0057】
混合液調製工程で得られる混合液の固形分濃度は0.5~15質量%であることが好ましく、1~10質量%であることがより好ましく、2~8質量%であることが更に好ましい。また、混合液中のカーボンナノチューブと、担体高分子材料との割合は、カーボンナノチューブ100質量部に対して担体高分子材料が200~9900質量部であることが好ましく、250~9800質量部であることがより好ましく、300~9700質量部であることが更に好ましい。
【0058】
凝固工程では、混合液調製工程で得られた混合液に、酸または塩を添加して行うことができる。
【0059】
酸としては、例えば、ギ酸、硫酸、塩酸、酢酸等が挙げられる。塩としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、硝酸カルシウム、塩化カルシウム等のカルシウム塩等の1~3価の金属塩が挙げられる。中でも、塩化カルシウムが好ましい。
【0060】
凝固工程では、上記混合液に酸または塩を添加した後、上記混合液に上記カチオンポリマーを添加するか、または、上記混合液に上記カチオンポリマーを添加したのち、上記混合液に酸または塩を添加することが好ましい。なかでも、上記混合液にカチオンポリマーを添加したのち、上記混合液に酸または塩を添加することがより好ましい。カチオンポリマーにより、カーボンナノチューブと担体高分子材料を連結してから酸または塩を添加することで、より効率よく凝固体を得ることができる。
【0061】
カチオンポリマーとしては、カチオン性基を有するポリマーが挙げられる。カチオン性基としては、アミノ基、アンモニウム基、イミノ基及びこれらの塩等が挙げられる。塩を構成する原子または原子団としては、水酸化物イオン、ハロゲンイオン、カルボン酸イオン、スルホン酸イオン、フッ素イオン、シアン化物イオン、ケイ酸イオン、ホウ酸イオン、縮合リン酸イオン等が挙げられる。なお、カチオン性基の例として挙げたアミノ基は、-NH2に限定されず、置換アミノ基および環状アミノ基も含まれる。置換アミノ基としては、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、モノアリールアミノ基、ジアリールアミノ基、アルキルアリールアミノ基等が挙げられる。環状アミノ基としては、ピロリジン基、ピペリジン基、ピペラジン基、モルホリン基、ピロール基、ピラゾール基、イミダゾール基、ピリジン基、ピリダジン基、ピリミジン基、ピラジン基、オキサゾール基、イソオキサゾール基、チアゾール基、イソチアゾール基、ピロリドン基、ピペリドン基、3-モルホリノン基、モルホリンジオン基等が挙げられる。
【0062】
カチオンポリマーはブロックポリマーであってもよく、ランダムポリマーであってもよい。例えば、ポリアリルアミン等のアリルアミン由来の繰り返し単位を有するポリマー、アンモニア及びアミン化合物から選ばれる少なくとも1種とエピクロロヒドリンとの縮合系ポリマー、ポリアクリルアミドをホフマン変性して得られるホフマン変性ポリアクリルアミド、カチオン変性ポリビニルアルコール等が挙げられ、アリルアミン由来の繰り返し単位を有するポリマー、アンモニア及びアミン化合物から選ばれる少なくとも1種とエピクロロヒドリンとの縮合系ポリマーであることが好ましい。
【0063】
カチオンポリマーとして、オキサゾリン基を有するポリマーを用いることも好ましい。この態様によれば、カーボンナノチューブと担体高分子材料とが強固に結合したマスターバッチを製造することができる。
【0064】
オキサゾリン基を有するポリマーとしては、2-オキサゾリン系モノマー由来の繰り返し単位と含窒素複素環系モノマー由来の繰り返し単位を有するポリマーが挙げられる。オキサゾリン基を有するポリマー中における、2-オキサゾリン系モノマー由来の繰り返し単位の含有量は1~90モル%で、含窒素複素環系モノマー由来の繰り返し単位の含有量は10~99モル%であることが好ましい。
【0065】
2-オキサゾリン系モノマーとしては、2-ビニル-2-オキサゾリン、4-メチル-2-ビニル-2-オキサゾリン、5-メチル-2-ビニル-2-オキサゾリン、4-エチル-2-ビニル-2-オキサゾリン、5-エチル-2-ビニル-2-オキサゾリン、4,4-ジメチル-2-ビニル-2-オキサゾリン、4,4-ジエチル-2-ビニル-2-オキサゾリン、4,5-ジメチル-2-ビニル-2-オキサゾリン、4,5-ジエチル-2-ビニル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-2-オキサゾリン、4-メチル-2-イソプロペニル-2-オキサゾリン、5-メチル-2-イソプロペニル-2-オキサゾリン、4-エチル-2-イソプロペニル-2-オキサゾリン、5-エチル-2-イソプロペニル-2-オキサゾリン、4,4-ジメチル-2-イソプロペニル-2-オキサゾリン、4,4-ジエチル-2-イソプロペニル-2-オキサゾリン、4,5-ジメチル-2-イソプロペニル-2-オキサゾリンおよび4,5-ジエチル-2-イソプロペニル-2-オキサゾリン等が挙げられる。含窒素複素環系モノマーとしては、N-ビニルピロリドン、N-メチルビニルピロリドン、N-ビニルピリジン、N-ビニルピペリドン、N-ビニルピリミジン、N-ビニルピペラジン、N-ビニルピラジン、N-ビニルピロール、N-ビニルイミダゾール、N-ビニルオキサゾール、N-(メタ)アクリロイルピロリドン、N-(メタ)アクリロイルピペリジン、N-(メタ)アクリロイルピロリジン、N-(メタ)アクリロイルモルホリン、N-ビニルモルホリン、N-ビニルピペリドン、N-ビニル-3-モルホリノン、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニル-1,3-オキサジン-2-オン、N-ビニル-3,5-モルホリンジオン、N-ビニルピラゾール、N-ビニルイソオキサゾール、N-ビニルチアゾール、N-ビニルイソチアゾールおよびN-ビニルピリダジン等が挙げられる。
【0066】
オキサゾリン基を有するポリマーは、更に、炭素数1~12のアルキル基を有する(メタ)アクリレート、炭素数1~12のアルキル基を有するN-アルキル(メタ)アクリルアミド、同じ又は異なる二つの炭素数1~12のアルキル基を有するN,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド、芳香族置換基を有する(メタ)アクリレート又は(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシアルキル(C1~12)(メタ)アクリレート又は(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸等のビニル系モノマー由来の繰り返し単位を含んでいてもよい。
【0067】
カチオンポリマーの重量平均分子量は500~2,500,000であることが好ましく、600~2,000,000であることがより好ましく、700~1,500,000であることが更に好ましい。
【0068】
また、カチオンポリマーの好ましい一態様として、重量平均分子量が500~10,000のカチオンポリマーcp1および重量平均分子量が500,000~2,500,000のカチオンポリマーcp2から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。なかでも、カチオンポリマーにより生成される凝集粒子の粒径がより小さくなるという理由からカチオンポリマーcp1を用いることがより好ましい。また、カチオンポリマーcp1とカチオンポリマーcp2とを併用することも好ましい。カチオンポリマーcp1とカチオンポリマーcp2とを併用した場合には、凝集粒子径の大きさと凝集速度の制御が容易になるという効果が得られる。カチオンポリマーcp1とカチオンポリマーcp2とを併用する場合、その割合はカチオンポリマーcp1の100質量部に対してカチオンポリマーcp2が0.5~15質量部であることが好ましく、1~10質量部であることがより好ましい。
【0069】
カチオンポリマーcp1の重量平均分子量は500~9,000であることが好ましく、600~8,500であることがより好ましく、700~8,000であることが更に好ましい。
【0070】
カチオンポリマーcp2の重量平均分子量は550,000~2,500,000であることが好ましく、600,000~2,000,000であることがより好ましく、700,000~1,500,000であることが更に好ましい。
【0071】
なお、本明細書においてカチオンポリマーの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリエチレングリコール換算の重量平均分子量のことを意味する。
【0072】
カチオンポリマーの市販品としては、ニットボーメディカル株式会社から市販されているPAAシリーズ(ポリアリルアミン)、センカ株式会社から市販されているユニセンスシリーズ(例えば、ユニセンスFCA1000L、ユニセンスFCA1001L、ユニセンスFCA5000L(以上、アクリルアミドとジアリルジメチルアンモニウムクロライドの共重合物の水溶液);ユニセンスFPA100L、ユニセンスFPA101L、ユニセンスFPA102L、ユニセンスFPA1000L、ユニセンスFPA1001L、ユニセンスFPA1002L(以上、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)の水溶液);ユニセンスKHF10P(ジシアンジアミド-ホルマリン縮合物);ユニセンスKHP10L、ユニセンスKHP10P(以上、ジシアンジアミド-ジエチレントリアミン縮合物);ユニセンスKHE100L、ユニセンスKHE101L、ユニセンスKHE102L、ユニセンスKHE105L、ユニセンスKHE1000L、ユニセンスKHE1001L(以上、ジメチルアミンとアンモニアとエピクロロヒドリンとの縮合物の水溶液);ユニセンスKHE104L(ジメチルアミンとエピクロロヒドリンとの縮合物の水溶液);ユニセンスFPV1000L(ポリ(メタクリル酸トリメチルアミノエチル・メチル硫酸塩)の水溶液);ユニセンスZCA100L(アクリル酸塩-アクリルアミド-ジアリルアミン塩酸塩共重合物の水溶液)等)、三菱ケミカル株式会社から市販されている、ダイヤキャッチシリーズ、日本触媒株式会社から市販されているエポクロスWS-300(オキサゾリン基含有ポリマー)等が挙げられる。
【0073】
カチオンポリマーの添加量は、カーボンナノチューブ分散液と担体高分子材料含有溶液とを含む混合液中の固形分100質量部に対して、0.01~10質量部であることが好ましく、0.05~8質量部であることがより好ましく、0.1~5質量部であることが更に好ましい。カチオンポリマーの添加量が上記範囲であれば、凝固体を効率よく得ることができる。
【0074】
上記凝固工程の後で、生成した塊状の凝固物を分離して水洗、脱水し、80~110℃程度で乾燥することでマスターバッチを得ることができる。乾燥の方法としては、例えば、単軸押出機、オーブン、真空乾燥機、エアードライヤー等の各種乾燥装置を使用することができる。乾燥は、常圧下で行ってもよいが、減圧下(10~1000Pa程度)で行うことが好ましい。乾燥する時間は、使用する乾燥機の大きさ等によって異なるが、減圧下、通常、30~180分程度とすればよい。また、乾燥する温度は、通常、50~150℃程度とすればよい。
【0075】
電磁波遮蔽体形成材料中において、カーボンナノチューブはバンドルと呼ばれる束の状態で存在している。電磁波遮蔽体形成材料中のカーボンナノチューブの平均バンドル径は、1.5μm以下であることが好ましく、1.0μm以下であることがより好ましく、0.5μm以下であることが更に好ましく、0.3μm以下であることがより一層好ましく、0.1μm以下であることが特に好ましい。なお、カーボンナノチューブのバンドル径とは、カーボンナノチューブのバンドル(束)の直径のことである。また、本明細書において、電磁波遮蔽体形成材料中のカーボンナノチューブの平均バンドル径は、電磁波遮蔽体形成材料を用いて厚さ1mmの成形体をプレス成形により作製し、この成形体を切断して得られた断面を走査型電子顕微鏡を用いて無作為に選択したカーボンナノチューブ50本の直径(外径)を測定し、それらの平均値を求めて算出した値である。
【0076】
電磁波遮蔽体形成材料中におけるカーボンナノチューブの含有量は0.1~1.5質量%であることが好ましい。下限は、0.2質量%以上であることが好ましく、0.4質量%以上であることがより好ましい。上限は、1.4質量%以下であることが好ましく、1.2質量%以下であることがより好ましい。カーボンナノチューブ含有量が多すぎる場合には、電磁波遮蔽体に入射された電磁波が、電磁波遮蔽体の表面付近で反射し易くなり、電磁波を電磁波遮蔽体中に取り込みにくい傾向にある。カーボンナノチューブ含有量が上記範囲であれば、電磁波遮蔽体中にカーボンナノチューブによる3次元ネットワーク構造を形成させやすい。電磁波遮蔽体中にこのような3次元ネットワーク構造が形成されることにより、電磁波遮蔽体中に入射した電磁波がカーボンナノチューブと衝突する確率が高くなることによる導電損失と、カーボンナノチューブ同士のキャパシタンスによる誘電損失により、効率よく電磁波を吸収する事ができ、高周波帯域の電磁波の吸収特性に優れた電磁波遮蔽体とすることができる。
【0077】
(母材)
本発明の電磁波遮蔽体形成材料は、樹脂、エラストマーおよびゴムから選ばれる少なくとも1種の母材を含む。樹脂は、熱可塑性樹脂であってもよく、熱硬化性樹脂であってもよい。樹脂としては、公知の材料が挙げられ、例えば、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリオレフィン樹脂(ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂など)、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリケトン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルニトリル樹脂、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂、フッ素樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、フラン樹脂、キシレン樹脂等が挙げられる。エラストマーとしては、公知の材料が挙げられ、例えば、ポリスチレンエラストマー、ポリオレフィンエラストマー、ポリウレタンエラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマー、ポリブタジエンエラストマー、ポリイソプレンエラストマー、フッ素系エラストマー、シリコーンエラストマー等が挙げられる。ゴムとしては、公知の材料が挙げられ、例えば、天然ゴム(NR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、ニトリルゴム、水素化ニトリルゴム、ポリイソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、ブチルゴム(IIR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリルゴム(ACM)、フッ素ゴム(FKM、PTFE)等が挙げられる。
【0078】
母材は、樹脂であることが好ましい。また、樹脂はポリオレフィン樹脂であることが好ましく、ポリプロピレン樹脂であることがより好ましい。この態様によれば、高周波帯域の電磁波の吸収特性に優れた電磁波遮蔽体を製造することができる。
【0079】
カーボンナノチューブをマスターバッチ化して用いる場合には、母材の種類は、マスターバッチの担体高分子材料と同じ種類の素材であってもよく、異なる種類の素材であってもよい。
【0080】
電磁波遮蔽体形成材料中における母材の含有量は60質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが更に好ましく、95質量%以上であることが特に好ましい。上限は、99.9質量%以下であることが好ましく、99.8質量%以下であることがより好ましく、99.6質量%以下であることが更に好ましい。また、カーボンナノチューブをマスターバッチ化して用いる場合には、電磁波遮蔽体形成材料中における母材とマスターバッチに含まれる担体高分子材料との合計の含有量は、60質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが更に好ましく、95質量%以上であることが特に好ましい。上限は、99.9質量%以下であることが好ましく、99.8質量%以下であることがより好ましく、99.6質量%以下であることが更に好ましい。
【0081】
(その他添加剤)
本発明の電磁波遮蔽体形成材料は、必要に応じて更に添加剤を含有することができる。添加剤としては、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、架橋剤、顔料、着色剤、発泡剤、帯電防止剤、難燃剤、滑剤、軟化剤、粘着付与剤、可塑剤、離型剤、防臭剤、香料などが挙げられる。
【0082】
電磁波遮蔽体形成材料中における添加剤の含有量は0.01~30質量%であることが好ましい。下限は、0.05質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましい。上限は、25質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましい。
【0083】
<電磁波遮蔽体形成材料>
本発明の電磁波遮蔽体は、上述した本発明の電磁波遮蔽体形成材料を成形して得られた電磁波遮蔽体であり、26.5GHz~110GHzの周波数の電磁波の吸収率が45%以上であることを特徴とする。
【0084】
電磁波遮蔽体形成材料の成形方法としては、特に限定はなく、公知の方法を用いることができる。射出成形、プレス成形、ブロー成形、真空成形、圧縮成形などが挙げられる。
【0085】
電磁波遮蔽体の26.5GHz~110GHzの周波数の電磁波の吸収率は、50%以上であることが好ましい。また、電磁波遮蔽体の26.5GHz~110GHzの周波数の電磁波の平均吸収率は50%以上であることが好ましく、55%以上であることがより好ましく、60%以上であることが更に好ましい。
【0086】
電磁波遮蔽体の26.5GHz~110GHzの周波数の電磁波の反射減衰量は-2dB以下であることが好ましく、-3dB以下であることがより好ましく、-4dB以下であることが更に好ましい。下限は、特に限定はないが、-12dB以上とすることができる。
【0087】
電磁波遮蔽体の26.5GHz~110GHzの周波数の電磁波の透過減衰量は-3dB以下であることが好ましく、-4dB以下であることがより好ましく、-5dB以下であることが更に好ましい。
【0088】
電磁波遮蔽体の表面抵抗率は2×104Ω/sq.以上であることが好ましく、1×105Ω/sq.以上であることがより好ましく、1×106Ω/sq.以上であることが更に好ましく、2×106Ω/sq.以上であることが特に好ましい。
【0089】
電磁波遮蔽体の電磁波の吸収率、反射減衰量および表面抵抗率の値は、大気中、25℃の温度条件下で測定した値である。
【0090】
電磁波遮蔽体中のカーボンナノチューブの平均バンドル径は、1.5μm以下であることが好ましく、1.0μm以下であることがより好ましく、0.5μm以下であることが更に好ましく、0.3μm以下であることがより一層好ましく、0.1μm以下であることが特に好ましい。
【0091】
本発明の電磁波遮蔽体は、通信機器、コンピュータ、家電、自動車電装機器、医療用電気機器などの電子機器の放射ノイズ、ETC(Electronic Toll Collection System)、レーダーなどにおける電波反射対策などに用いることができる。
【実施例0092】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0093】
<カーボンナノチューブの製造>
(製造例1-1)
シリコン基板の片面に、アルミニウムをターゲットとしてスパッタリングを行い担持膜を成膜し、続いて、その担持膜上に、鉄をターゲットとしてスパッタリングを行い、触媒膜を成膜した。
【0094】
次に、触媒膜の成膜後の基板をCVD装置の反応容器内に立設した。次に、反応容器を閉め、1Paまで減圧しながら同時にヒータに通電して反応容器内の加熱を開始した。次に、反応容器内の温度が700℃に近くなった時点で、反応容器内に窒素ガスを供給し、反応容器内の圧力が90kPaに保持できるように、ポンプによる反応容器内の排気を継続的に行った。
【0095】
次に、反応容器内が750℃になるまで加熱し、反応容器内に窒素ガスと水素ガスの両方を供給し、反応容器内の圧力を30kPaに維持し、反応容器内の温度が750℃に到達後、窒素ガス、水素ガスおよびアセチレンガスを上記ヒータによる予熱を行いながら、反応容器内の基板の上端から下端に向かって触媒膜表面に沿って供給して、反応容器内の圧力を30kPaに保持しながら、基板上へのカーボンナノチューブの合成を行い、長さ0.1~2mm、平均長さ2.0mm、層数3~8層、平均層数6層、直径5~12nm、平均直径9nm、比表面積225m2/g、G/D比0.8、金属不純物含有率250ppmのウェーブがほとんどない直線的なカーボンナノチューブが得られた。
【0096】
なお、カーボンナノチューブの長さは、基板のままあるいは基板からカーボンナノチューブを刈り取った後、走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製、型式:JSM-7800F)により撮影されたSEM像から評価した。また、カーボンナノチューブの平均長さについては、SEM像からカーボンナノチューブを任意に30本選択して、30本のカーボンナノチューブの長さの平均値を算出して求めた。
【0097】
カーボンナノチューブの層数および直径は、基板のままあるいは基板からカーボンナノチューブを刈り取った後、透過型電子顕微鏡(株式会社日立ハイテク製、型式:HF2200)により撮影されたTEM像から評価した。カーボンナノチューブの平均層数は、カーボンナノチューブの層数を判定可能なTEM像から任意の30視野を選出し、30個のカーボンナノチューブの層数の平均値における小数点以下の数字を四捨五入して求めた。また、カーボンナノチューブの平均直径は、TEM像から任意の30視野を選出し、30本のカーボンナノチューブの直径の平均値における小数点以下の数字を四捨五入して求めた。
【0098】
カーボンナノチューブの比表面積(BET値)は、JIS Z8830(ISO 9277)に基づき、比表面積測定装置(株式会社島津製作所製、型式:3Flex)を用いたガス吸着法(多点法)により測定した。
【0099】
カーボンナノチューブのG/D比は、ラマンマイクロスコープ(RENISHAW社製、型式:inVia)を用いて求めた。具体的には、ラマンマイクロスコープを用いて測定されるラマンスペクトルのG-band(1590cm-1)のピーク強度をD-band(1350cm-1)のピーク強度で除した値を求めた。
【0100】
<カーボンナノチューブ分散液の製造>
(製造例2-1)
カルボキシメチルセルロース(商品名セロゲン WS-C、第一工業製薬株式会社製)120gをイオン交換水5880gに溶解して6kgのCMC溶解液を作製した。CMC溶解液に、製造例1-1で得られたカーボンナノチューブ120gとイオン交換水23.8kgを加えて攪拌後、カッターミキサー(FMI社製、ロボクープ R-10E)で3000rpmにて10分間処理を行い、カーボンナノチューブ分散液1を製造した。
【0101】
(製造例2-2)
カーボンナノチューブ分散液1を、高圧ホモジナイザー(スターバーストラボ HJP-25003、株式会社スギノマシン製)に圧力150MPaで1回通してカーボンナノチューブ分散液2を製造した。
【0102】
<マスターバッチの製造>
(製造例3-1)
カーボンナノチューブ分散液1の30kgに、ポリプロピレンエマルション(商品名アローベース YA-6010、ユニチカ株式会社製、固形分濃度25質量%、pH9.93)8352gを添加して混合液を調製した。この混合液にカチオンポリマー(商品名ダイヤキャッチCHP295、三菱ケミカル株式会社製、重量平均分子量702,000)2質量%溶液を3600g添加して攪拌した。更に20%ギ酸溶液を上記混合液が凝固するまで添加した。得られた凝固物を目開き149μmのメッシュでろ過し、凝固物を回収した。凝固物を脱水後、110℃で乾燥してマスターバッチ1(カーボンナノチューブの含有量5質量%)を製造した。
【0103】
(製造例3-2)
カーボンナノチューブ分散液1のかわりにカーボンナノチューブ分散液2を用いた以外は製造例3-1と同様の操作を行い、マスターバッチ2(カーボンナノチューブの含有量5質量%)を製造した。
【0104】
(製造例3-3)
カーボンナノチューブ分散液2の6kgに、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)ラテックス(商品名Nipol LX531B、日本ゼオン株式会社製、固形分濃度66質量%、pH11)を655g添加して混合液を調製した。次に、上記混合液に20%ギ酸溶液を上記混合液が凝固するまで添加した。得られた凝固物を目開き149μmのメッシュでろ過し、凝固物を回収した。凝固物を脱水後、110℃で乾燥してマスターバッチ3(カーボンナノチューブの含有量5質量%)を製造した。
【0105】
<電磁波遮蔽体形成材料の製造>
(製造例4-1~4-4)
二軸押出機(Omega30H STEER社製)を用いて下記表1に記載の配合比で原料を溶融混練して製造例4-1~4-4の電磁波遮蔽体形成材料を製造した。混練温度は190℃である。
【0106】
(製造例4-5~4-7)
ミキサー(ラボプラストミル、株式会社東洋精機製)を用いて、表2のA練りの欄に記載の配合比で原料を5分間混練りしてA練り混錬物を得た後、上記ミキサーを用いて表2のB練りの欄に記載の配合比で原料を3分間混練してB練り混錬物を得た。得られたA練り混錬物とB練混錬物とをミキシングロール(日本ロール製造株式会社製)を用いて混練り(ロール間の隙間1mm)して、製造例4-5~4-7の電磁波遮蔽体形成材料(ゴム組成物)を製造した。
【0107】
表1、2において、電磁波遮蔽体形成材料中のカーボンナノチューブの含有量を「CNT濃度」の欄に記載する。また、電磁波遮蔽体形成材料中のカーボンナノチューブのバンドル径を「CNTのバンドル径」の欄に記載する。また、電磁波遮蔽体形成材料の比重を「比重」の欄に記載する。また、電磁波遮蔽体形成材料の比重増加率を「比重増加率」の欄に記載する。
【0108】
なお、電磁波遮蔽体形成材料中のカーボンナノチューブのバンドル径は、電磁波遮蔽体形成材料を用いて厚さ1mmの成形体をプレス成形により作製し、この成形体を切断して得られた断面を走査型電子顕微鏡を用いて無作為に選択したカーボンナノチューブ50本の直径(外径)を測定し、それらの平均値を求めて算出した。なお、製造例4-1~4-4の材料は油圧加熱冷却プレス(型式1811 井本製作所)にて設定温度200℃でプレス後、20℃でプレスを行って成形体を製造した。製造例4-5~4-7の材料は油圧加熱冷却プレス(型式1811 井本製作所)にて設定温度170℃でプレス後、20℃でプレスを行って成形体を製造した。
また、電磁波遮蔽体形成材料の比重増加率は、以下の式より算出した。
比重増加率=(電磁波遮蔽体形成材料の比重/電磁波遮蔽体形成材料からカーボンナノチューブを除いた材料の比重)×100
【0109】
【0110】
表1、2に記載の略語で記載した素材の詳細は以下の通りである。
MB1:上述したマスターバッチ1
MB2:上述したマスターバッチ2
MB3:上述したマスターバッチ3
PP:ポリプロピレン樹脂(商品名:ノバテックPP BC03GS、日本ポリプロ株式会社製)
MAPP:マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(商品名:ユーメックス1001、三洋化成工業株式会社製)
酸化防止剤:アデカスタブAO-60(商品名、株式会社ADEKA製)
NBR:アクリロニトリルブタジエンゴム(商品名:Nipol DN2850、日本ゼオン株式会社製)
酸化亜鉛:白水化学株式会社製「1号亜鉛華」
加工油:JX日鉱日石社製「T-DAE」、低アロマオイル
硫黄:軽井沢精錬所株式会社製
加硫促進剤A:1,3-ジフェニルグアニジン(商品名:ノクセラーD、大内新興化学工業株式会社製)
加硫促進剤B:N―tert-ブチルー2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(商品名:ノクセラーNS、大内新興化学工業株式会社製)
【0111】
<成形体(電磁波遮蔽体)の製造>
[製造例5-1~5-8] ポリプロピレン成形体の製造
下記表に記載の電磁波遮蔽体形成材料(製造例4-1~4-4)を射出成形またはプレス成形して、下記表に記載の厚さ、縦15cm、横15cmの板状の成形体(電磁波遮蔽体)を製造した。射出成形条件およびプレス成形条件は以下の通りである。得られた成形体(電磁波遮蔽体)の表面抵抗率を合わせて記す。
【0112】
(射出成形条件)
電動式射出成型機(FNX140、日精樹脂工業株式会社製)にて成形温度190℃、金型温度50℃、射出圧力30MPaで成形体を製造した。
【0113】
(プレス成形条件)
油圧加熱冷却プレス(型式1811 井本製作所)にて設定温度170℃でプレス後、20℃でプレスを行って成形体を製造した。
【0114】
[製造例5-9~5-11] NBR成形体の製造
下記表に記載の電磁波遮蔽体形成材料(製造例4-5~4-7)を油圧成型機でプレス成形および加硫(170℃、5分)を行い、下記表に記載の厚さの成形体(電磁波遮蔽体)を製造した。
【0115】
(表面抵抗率の測定方法)
各製造例で製造した成形体から、100mm×100mmの正方形状の試験片を3個切り出し測定サンプルとした。測定サンプルの中心位置にプローブを押し当て、抵抗値(Ω)を測定した。5個の測定サンプルの抵抗値(Ω)を測定し、その平均値を成形体の抵抗値(Ω)とした。そして、得られた抵抗値(Ω)を常法に従って表面抵抗率(Ω/sq.)に換算した。この際、104Ω以上の高抵抗の場合は、二重リング法による高抵抗率計(三菱ケミカルアナリティック社製、ハイレスタ(登録商標)MCP-HT800、プローブ:URSプローブ)を用いて、JIS K 6911に従って、室温(25℃)での抵抗値(Ω)を測定した。また、104Ω未満の低抵抗の場合は、四探針法による低抵抗率計(三菱ケミカルアナリティック社製、ロレスタ(登録商標)MCP-610T、プローブ:ASPプローブ)を用いてJIS K 7194に従って、室温(25℃)での抵抗値(Ω)を測定した。
【0116】
【0117】
(電磁波の吸収率、反射減衰量および透過減衰量の測定)
PNAマイクロ波ネットワークアナライザN5227(キーサイトテクノロジー社製)を用い、大気中で、室温(25℃)にて測定した。各製造例の成形体を送信アンテナと受信アンテナの中央に置き、電磁波を成形体へ垂直に照射し、反射波及び透過波(反射係数S11、透過係数S21)を測定し、下記式を用いて電磁波の吸収率、反射減衰量、透過減衰量を測定した。
吸収率(%)=(1-|S11|2-|S21|2)×100
反射減衰量(dB)=20log10|S11|
透過減衰量(dB)=20log10|S21|
S11は成形体の反射係数であり、S21は成形体の透過係数である。
【0118】
測定周波数は使用するアンテナにより、(1)26.5GHz~45GHz(Kaバンド)、(2)45GHz~67GHz(Vバンド)、(3)67GHz~75GHz(Vバンド)、(4)75GHz~110GHz(Wバンド)の区分に分けて測定した。各バンドの区分けはIEEE Std. 521-2002に準拠した。
【0119】
【0120】
【0121】
製造例5-1~製造例5-3、製造例5-5~製造例5-10の成形体は、実施例の成形体である。製造例5-1~製造例5-3、製造例5-5~製造例5-10の成形体の製造に用いた、製造例4-1、製造例4-3、製造例4-4、製造例4-5、製造例4-6の電磁波遮蔽体形成材料は、軽量で、成形加工性に優れていた。また、製造例5-1~製造例5-3、製造例5-5~製造例5-10の成形体は、いずれも26.5GHz~110GHzの周波数の電磁波の吸収率が45%以上であり、上記周波数の範囲の電磁波の吸収特性に優れていた。更には、製造例5-1~製造例5-3、製造例5-5~製造例5-10の成形体は、26.5GHz~110GHzの周波数の電磁波の反射減衰量が-2dB以下であり、上記周波数の電磁波に対する反射の小さいものであった。製造例5-1~製造例5-3、製造例5-5~製造例5-10の成形体は、高周波帯域の電磁波の吸収特性に優れており、これらの成形体を通信機器などに用いることで、機器内部での回路間の電磁波干渉による誤動作等を効果的に抑制することができる。