(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022176498
(43)【公開日】2022-11-30
(54)【発明の名称】絶縁リング及び組電池
(51)【国際特許分類】
H01M 50/593 20210101AFI20221122BHJP
H01M 50/213 20210101ALI20221122BHJP
H01M 50/284 20210101ALI20221122BHJP
H01M 50/298 20210101ALI20221122BHJP
H01M 50/588 20210101ALI20221122BHJP
H01M 50/507 20210101ALI20221122BHJP
【FI】
H01M50/593
H01M50/213
H01M50/284
H01M50/298
H01M50/588
H01M50/507
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021082966
(22)【出願日】2021-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000237721
【氏名又は名称】FDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002918
【氏名又は名称】弁理士法人扶桑国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 雅善
【テーマコード(参考)】
5H040
5H043
【Fターム(参考)】
5H040AA03
5H040AA22
5H040AA37
5H040AT01
5H040AY06
5H040DD03
5H040DD08
5H040DD10
5H040DD15
5H040DD26
5H040NN03
5H043AA04
5H043AA19
5H043BA04
5H043BA07
5H043BA16
5H043BA19
5H043CA03
5H043CA22
5H043FA02
5H043FA22
5H043FA23
5H043FA26
5H043FA33
5H043GA02
5H043GA03
5H043GA23
5H043GA24
5H043HA06
5H043HA11D
5H043HA13D
5H043HA22
5H043JA02
5H043JA12
5H043JA13
5H043JA15
5H043JA21
5H043KA14
5H043KA15
5H043KA22
5H043KA24
5H043KA28
5H043KA29
5H043KA45
5H043LA21
(57)【要約】
【課題】構造及び組み立て作業の複雑化を抑えて安全性の高い組電池を得ることのできる絶縁リングを実現する。
【解決手段】絶縁リング1は、並設される円筒形電池群を含む組電池の一端面側に取り付けられる。絶縁リング1は、絶縁性の基板10と、それに設けられる配線層20とを有する。基板10は、円筒形電池群の各電極面に対応するリング部11と、それらを連結する連結部12とを備える。基板10の、円筒形電池群と対向される側とは反対側の主面10bに、配線層20が設けられる。配線層20には、ダイオード等の保護部品が実装されるほか、円筒形電池群の所定の電極面と接続されるタブの接続、円筒形電池群の所定の電極面間の接続用や組電池の外部接続用のリード配線の接続が行われる。絶縁リング1が用いられることで、構造及び組み立て作業の複雑化が抑えられて、安全性の高い組電池が得られる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
並設される円筒形電池群を含む組電池の、前記円筒形電池群の一端面側に設けられる各々の電極面に対応するリング部と、隣り合う前記リング部間を連結する連結部とを備える絶縁性の基板と、
前記基板の、前記円筒形電池群と対向される側の第1主面とは反対側の第2主面に設けられる配線層と
を有することを特徴とする絶縁リング。
【請求項2】
前記基板の前記第2主面に前記配線層が設けられたプリント基板であることを特徴とする請求項1に記載の絶縁リング。
【請求項3】
前記配線層に実装された電子部品を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の絶縁リング。
【請求項4】
可撓性を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の絶縁リング。
【請求項5】
並設される円筒形電池群と、
前記円筒形電池群の一端面側に取り付けられる第1絶縁リングと
を含み、
前記第1絶縁リングは、
前記円筒形電池群の前記一端面側に設けられる各々の第1電極面に対応する第1リング部と、隣り合う前記第1リング部間を連結する第1連結部とを備える絶縁性の第1基板と、
前記第1基板の、前記円筒形電池群と対向される側の第1主面とは反対側の第2主面に設けられる第1配線層と
を有することを特徴とする組電池。
【請求項6】
前記第1絶縁リングは、前記第1基板の前記第2主面に前記第1配線層が設けられたプリント基板であることを特徴とする請求項5に記載の組電池。
【請求項7】
前記第1絶縁リングは、前記第1配線層に実装された電子部品を有することを特徴とする請求項5又は6に記載の組電池。
【請求項8】
前記第1絶縁リングは、可撓性を有することを特徴とする請求項5乃至7のいずれかに記載の組電池。
【請求項9】
前記第1配線層に接続される第1接続部と、前記第1リング部の内側に位置する前記第1電極面に接続される第2接続部とを備える板状の導体部材を含むことを特徴とする請求項5乃至8のいずれかに記載の組電池。
【請求項10】
前記円筒形電池群の他端面側に取り付けられ、前記円筒形電池群の前記他端面側に設けられる各々の第2電極面に対応する第2リング部と、隣り合う前記第2リング部間を連結する第2連結部とを備える絶縁性の第2基板を有する第2絶縁リングを含むことを特徴とする請求項5乃至9のいずれかに記載の組電池。
【請求項11】
前記第1配線層に接続される第3接続部と、
前記第2リング部の内側に位置する前記第2電極面に接続される第4接続部と、
前記第3接続部及び前記第4接続部と接続され、前記円筒形電池群の前記一端面と前記他端面との間の側面に沿って延び、絶縁性の被覆材で覆われた中間部と
を備える接続部材を含むことを特徴とする請求項10に記載の組電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁リング及び組電池に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の電池を含む組電池が知られている。例えば、組電池に関し、隣接する電池群の一方の電池の凸状端子を覆うキャップ部を有する第1端子と、他方の電池の平状端子と接続される第2端子との間に、第1端子のキャップ部が挿通されるリング状のPTC(Positive Temperature Coefficient)素子を配置する技術が知られている。
【0003】
このほか、複数の電池の陽極側及び陰極側に嵌め込まれる連結台によって各電池を相互に連結する技術、その連結台に各電池の電極を電気的に接続する端子板を一体形成する技術が知られている。
【0004】
また、一端側に正極端子及び負極端子を有する複数の蓄電素子の他端側を、弾性材料の絶縁性連結部材により連結する技術、その絶縁性連結部材を、複数のキャップ体とそれらを連結する複数の連結体とを有し、それらに耐変形性帯状測温体を刺し通した構造とする技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平6-38157号公報
【特許文献2】特開平6-223803号公報
【特許文献3】特開2004-186232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、並設される複数の円筒形電池を含む組電池では、その安全性を確保するため、保護部品として電流ヒューズ、ダイオード、PTC素子等の電子部品が取り付けられ得る。例えば、アキシャルリードを有するアキシャル型の電子部品が、組電池の一方の端面側及び他方の端面側の電極面間、或いは組電池の一方の端面側の電極面間等、組電池に含まれる円筒形電池群の所定の電極面間に接続される。
【0007】
このような組電池では、所定の電極面以外との電子部品の接触、それに起因した短絡や事故を回避するため、絶縁対策が施される。例えば、電子部品の位置に合わせ、円筒形電池群の各々に対応したリング部を連結した平板状の絶縁リングを円筒形電池群の端面に設けたり、円筒形電池群の側周面や隣接する円筒形電池間の谷間に絶縁テープを貼り付けたりする等の絶縁対策が施される。
【0008】
しかし、これまでの絶縁対策では、十分な絶縁を実現するために絶縁対策に要する部品の増大や作業の複雑化等を招いてしまい、組電池の構造及び組み立て作業が複雑化することがあった。
【0009】
1つの側面では、本発明は、構造及び組み立て作業の複雑化を抑えて安全性の高い組電池を得ることのできる絶縁リングを実現することを目的とする。また、1つの側面では、本発明は、そのような絶縁リングを用い、構造及び組み立て作業の複雑化を抑えて安全性の高い組電池を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
1つの態様では、並設される円筒形電池群を含む組電池の、前記円筒形電池群の一端面側に設けられる各々の電極面に対応するリング部と、隣り合う前記リング部間を連結する連結部とを備える絶縁性の基板と、前記基板の、前記円筒形電池群と対向される側の第1主面とは反対側の第2主面に設けられる配線層とを有する絶縁リングが提供される。
【0011】
また、1つの態様では、上記のような絶縁リングを用いた組電池が提供される。
【発明の効果】
【0012】
1つの側面では、構造及び組み立て作業の複雑化を抑えて安全性の高い組電池を得ることのできる絶縁リングを実現することが可能になる。また、1つの側面では、そのような絶縁リングを用い、構造及び組み立て作業の複雑化を抑えて安全性の高い組電池を実現することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】第1の実施の形態に係る絶縁リングの一例について説明する図である。
【
図3】第1の実施の形態に係る絶縁リングの構成例について説明する図(その1)である。
【
図4】第1の実施の形態に係る絶縁リングの構成例について説明する図(その2)である。
【
図5】第2の実施の形態に係る組電池の第1の例について説明する図である。
【
図6】第2の実施の形態に係る接続部材の一例について説明する図である。
【
図7】第2の実施の形態に係る組電池の第2の例について説明する図である。
【
図8】第2の実施の形態に係る組電池の第3の例について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
はじめに、組電池の一例について述べる。
図1は組電池の一例について説明する図である。
図1(A)には組電池の一例の要部平面模式図を示している。
図1(B)には組電池の一例の要部側面図を模式的に示している。
【0015】
図1(A)及び
図1(B)に示す組電池1000は、1列に並設される3本の円筒形電池1010群を含む。組電池1000に含まれる各円筒形電池1010は、一方の端面側に正極端子が設けられ、他方の端面側に負極端子が設けられる電池である。ここでは、円筒形電池1010の、正極端子が設けられる端面を「電極面」又は「正極面」とも言い、負極端子が設けられる端面を「電極面」又は「負極面」とも言う。
【0016】
図1(A)及び
図1(B)に示す組電池1000は、3本の円筒形電池1010群が、負極面と正極面とが交互になるように1列に並設され、直列接続される組電池の一例である。3本の円筒形電池1010群は、一方の端面側及び他方の端面側のうちの少なくとも一方に設けられる絶縁リング1020、例えば、両方の端面側にそれぞれ設けられる絶縁リング1020を用いて固定される。絶縁リング1020は、3本の円筒形電池1010群の端面に設けられる各々の電極面(正極面又は負極面)に対応する3個のリング部1021群が連結された平板状の基板である。各リング部1021には、対応する円筒形電池1010の電極面に通じる開口部が設けられる。絶縁リング1020は、各リング部1021が、円筒形電池1010群の各電極面に対向し、各リング部1021に設けられた開口部から、対応する電極面の一部が露出するように、両面テープや接着剤等を用いて円筒形電池1010群の端面に貼り付けられる。円筒形電池1010群は、絶縁リング1020が貼り付けられ、1列に並設された状態で固定される。
【0017】
絶縁リング1020を用いて固定された円筒形電池1010群の、絶縁リング1020の開口部から露出する電極面にそれぞれ、導体部材であるタブ1030が半田付けや溶接等の手法を用いて取り付けられる。絶縁リング1020により、タブ1030とそれが取り付けられる電極面以外との接触、短絡が回避される。タブ1030には、隣接する円筒形電池1010間の谷間に延びる延伸部1031が設けられた比較的複雑な形状の専用タブが用いられる。例えば、タブ1030は、並設される円筒形電池1010群の各電極面に取り付けられる。所定の隣接する円筒形電池1010に取り付けられるタブ1030同士は、更に別のタブ1040によって接続されてもよい。一部のタブ1030、例えば、列の両端に配置される円筒形電池1010に接続されるタブ1030に、組電池1000の外部接続用の正負一対のリード配線1050が半田付けされる。一対のリード配線1050には、端部の接続箇所は露出させて当該端部に繋がる中間部が絶縁性の被覆材(絶縁被覆材)で覆われるものが用いられる。一対のリード配線1050のうちの1本は、タブ1030の上を引き回され、別の1本は、隣接する円筒形電池1010間の谷間に延びるように引き回される。組電池1000では、タブ1030や、タブ1030とリード配線1050との半田付け部の露出を回避するために、また、タブ1030,1040とリード配線1050との接触を回避するために、絶縁テープ1060が貼り付けられる。
【0018】
隣接する円筒形電池1010間の谷間に延びるタブ1030の延伸部1031には、組電池1000の安全性を確保するため、保護部品として、アキシャル型のダイオード1070が接続される。ダイオード1070のアキシャルリード1071は、隣接する円筒形電池1010間の谷間に延びるタブ1030の延伸部1031に半田付けされる。隣接する円筒形電池1010間の谷間には、円筒形電池1010の側面と、ダイオード1070及びそのアキシャルリード1071との接触、タブ1030の延伸部1031との接触、並びにアキシャルリード1071と延伸部1031との半田付け部との接触を回避するために、絶縁テープ1061が貼り付けられる。また、一対のリード配線1050のうちの1本は、隣接する円筒形電池1010間の谷間に延びるように引き回され、当該リード配線1050とその接続先のタブ1030との間には、保護部品として、SPC接続子1080を介して電流ヒューズ1090が接続される。SPC接続子1080及び電流ヒューズ1090は、谷間の円筒形電池1010の側面との接触を回避するために、絶縁チューブ1062で被覆される。更に、ダイオード1070のアキシャルリード1071とタブ1030の延伸部1031との半田付け部が露出するのを回避するために、組電池1000が全体的に外装絶縁チューブ1063で被覆される。
【0019】
このように組電池1000では、その安全性を確保するために、絶縁リング1020のほか、絶縁テープ1060,1061、絶縁チューブ1062及び外装絶縁チューブ1063を用いた絶縁対策が施される。絶縁対策が不十分であると、短絡やそれに起因した事故を招く恐れがある。
【0020】
しかし、上記のような組電池1000では、十分な絶縁を実現するために絶縁対策に要する部品の増大や作業の複雑化、例えば、作業工数の増大や組み立て作業のミスを招いてしまい、組電池の構造及び組み立て作業が複雑化することがあった。また、上記のような組電池1000では、ダイオード1070のアキシャルリード1071とタブ1030の延伸部1031とを半田付けする際、その熱によって絶縁テープ1061が破損し、短絡が引き起こされる場合があった。このほか、上記のような組電池1000では、その搬送時や使用時の振動等により、タブ1030の上を引き回されるリード配線1050がタブ1030,1040と衝突してその絶縁被覆材が破損し、短絡が引き起こされる場合があった。
【0021】
以上のような点に鑑み、ここでは以下に実施の形態として示すような手法により、構造及び組み立て作業の複雑化を抑えて安全性の高い組電池を得ることのできる絶縁リングを実現する。また、そのような絶縁リングを用い、構造及び組み立て作業の複雑化を抑えて安全性の高い組電池を実現する。
【0022】
[第1の実施の形態]
図2は第1の実施の形態に係る絶縁リングの一例について説明する図である。
図2(A)には第1の実施の形態に係る絶縁リングの一例の要部平面図を模式的に示している。
図2(B)には第1の実施の形態に係る絶縁リングの一例の要部側面図を模式的に示している。
図2(C)には第1の実施の形態に係る絶縁リングの一例の要部底面図を模式的に示している。
【0023】
図2(A)~
図2(C)に示す絶縁リング1は、1列に並設される3本の円筒形電池群を含む組電池の、その3本の円筒形電池群に取り付けられる絶縁リングの一例である。組電池に含まれる各円筒形電池は、一方の端面側に正極端子が設けられ、他方の端面側に負極端子が設けられる電池である。ここでは、円筒形電池の、正極端子が設けられる端面を「電極面」又は「正極面」とも言い、負極端子が設けられる端面を「電極面」又は「負極面」とも言う。
【0024】
図2(A)~
図2(C)に示す絶縁リング1は、基板10、配線層20及び絶縁層30を有する。
基板10は、絶縁性の基板である。基板10には、各種絶縁材料、例えば、エポキシ樹脂やフェノール樹脂等の樹脂材料、或いはそのような樹脂材料がガラス等のファイバやシートと複合化された材料が用いられる。基板10の樹脂材料には、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン等が用いられてもよい。基板10には、セラミックス等の材料が用いられてもよい。基板10には、可撓性を有するフレキシブルな材料が用いられてもよい。基板10の厚さは、例えば、0.1mm~1mm程度とされる。基板10は、組電池の3本の円筒形電池群の一方の端面側に設けられる各々の電極面(正極面又は負極面)に対応するリング部11と、隣り合うリング部11間を連結する連結部12とを備える。各リング部11には、対応する円筒形電池の電極面に通じる開口部11aが設けられる。基板10のリング部11の開口部11aの直径は、例えば、10mm程度とされる。
【0025】
基板10の一方の主面10aに、所定のパターンを有する配線層20が設けられる。基板10は、組電池の円筒形電池群に取り付けられる際には、配線層20が設けられる一方の主面10aとは反対側の他方の主面10bが、円筒形電池群と対向されるように、取り付けられる。例えば、基板10の、円筒形電池群と対向される側の主面10bには、配線層20のような導体層を設けない構成とすることができ、
図2(A)~
図2(C)(及び後述の
図3(A))には、このような構成の例を示している。配線層20には、各種導体材料、例えば、銅(Cu)等の金属材料が用いられる。配線層20の金属材料には、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、銀(Ag)、金(Au)等が用いられてもよい。配線層20には、導体材料の粉末を樹脂材料と混合した導体ペーストから形成されるものが用いられてもよい。
【0026】
図2(A)には一例として、互いに分離されて配置された第1のパターン21、第2のパターン22、第3のパターン23、第4のパターン24及び第5のパターン25を有する配線層20を示している。尚、絶縁リング1の配線層20のパターンは、この
図2(A)に示すようなものに限定されない。絶縁リング1が用いられる組電池の円筒形電池群の配列や接続方式、即ち、絶縁リング1と対向される側に円筒形電池群の正極面が揃えられて並設されるか、負極面が揃えられて並設されるか、或いは正極面と負極面とが交互に配列されるように並設されるかによって、更には、円筒形電池群が直列接続されるか、並列接続されるかによって、絶縁リング1の配線層20のパターンの数、形状、レイアウト等が適宜変更される。
【0027】
配線層20が設けられた基板10の主面10aには、配線層20の所定の部位に通じる開口部30aを有する絶縁層30が設けられる。絶縁層30には、各種絶縁材料、例えば、レジスト又はソルダレジスト等の有機系材料が用いられる。絶縁層30には、酸化シリコン(SiO)や窒化シリコン(SiN)等の無機系材料が用いられてもよい。絶縁層30の開口部30aから露出する配線層20の部位には、後述のように、ダイオードや電流ヒューズといった電子部品、組電池の円筒形電池群との接続用のタブ、組電池の外部接続用のリード配線等が接続される。
【0028】
例えば、絶縁リング1は、
図2(A)~
図2(C)に示すような構成、即ち、基板10の主面10aに所定のパターンを有する配線層20が設けられ、その配線層20を部分的に覆うようにレジスト等の絶縁層30が設けられた、片面配線型のプリント基板とされる。絶縁リング1は、可撓性を有する片面配線型のプリント基板、いわゆるフレキシブル基板とされてもよい。
【0029】
図3及び
図4は第1の実施の形態に係る絶縁リングの構成例について説明する図である。
図3(A)には第1の実施の形態に係る絶縁リングの第1の構成例の要部断面図を模式的に示している。
図3(B)には第1の実施の形態に係る絶縁リングの第2の構成例の要部断面図を模式的に示している。
図3(C)には第1の実施の形態に係る絶縁リングの第3の構成例の要部断面図を模式的に示している。また、
図4(A)には第1の実施の形態に係る絶縁リングの第4の構成例の要部平面図を模式的に示している。
図4(B)には第1の実施の形態に係る絶縁リングの第5の構成例の要部平面図を模式的に示している。
【0030】
上記
図2(A)~
図2(C)に示したように、絶縁リング1を片面配線型のプリント基板とする場合には、絶縁リング1は、例えば、
図3(A)に示すような断面構造を有する構成とすることができる。即ち、絶縁リング1は、基板10の一方の主面10aに、所定のパターンを有する銅等の配線層20、及びその配線層20の所定の部位に通じる開口部30aを有するレジスト等の絶縁層30が設けられた構成を有する。絶縁層30の開口部30aから露出する配線層20の部位に、電子部品、タブ、リード配線等が接続される。絶縁リング1は、その基板10の、配線層20及びそれを部分的に覆う絶縁層30が設けられる側の主面10aとは反対側の主面10bが、組電池の円筒形電池群と対向され、両面テープや接着剤等を用いてそれら円筒形電池群に取り付けられる。
【0031】
また、組電池の円筒形電池群に取り付けられる絶縁リングには、上記
図2(A)~
図2(C)及び
図3(A)に示した絶縁リング1のような構成に限らず、他の構成が採用されてもよい。
【0032】
例えば、組電池の円筒形電池群に取り付けられる絶縁リングには、
図3(B)に示す絶縁リング1aのような構成を採用することもできる。
図3(B)に示す絶縁リング1aは、片面配線型のプリント基板であって、配線層20及び絶縁層30が設けられる基板10の主面10aとは反対側の主面10bに、別の絶縁層31が設けられた構成を有する。基板10の主面10b側に設ける絶縁層31には、基板10の主面10a側に設ける絶縁層30と同様の材料、即ち、レジスト等の絶縁材料を用いることができる。絶縁層31には、絶縁リング1aの基板10の主面10bを保護する機能を持たせたり、両面テープや接着剤等を用いた円筒形電池群と絶縁リング1aとを接着する際の接着強度を高める機能を持たせたりすることができる。
【0033】
また、組電池の円筒形電池群に取り付けられる絶縁リングには、
図3(C)に示す絶縁リング1bのような構成を採用することもできる。
図3(C)に示す絶縁リング1bは、両面配線型のプリント基板であって、配線層20及び絶縁層30が設けられる基板10の主面10aとは反対側の主面10bに、所定のパターンを有する別の配線層26、及びその配線層26の全体を覆う別の絶縁層31が設けられた構成を有する。基板10には、主面10aと主面10bとの間を貫通するように設けられ且つ主面10aの配線層20と主面10bの配線層26とを接続するビア27(又はビアホール)が設けられる。基板10の主面10b側に設けられる配線層26には、基板10の主面10a側に設けられる配線層20と同様の材料、即ち、銅等の金属材料、導体ペーストから形成されるもの等を用いることができる。ビア27にも同様に、銅等の金属材料、導体ペーストから形成されるもの等を用いることができる。基板10の主面10b側に設けられる絶縁層31には、レジスト等の絶縁材料を用いることができる。
図3(C)に示す絶縁リング1bのように、両面配線型のプリント基板とすることで、基板10の主面10aに設けられる配線層20のパターン数の増大、パターン形状の自由度の向上、絶縁層30から露出させる部位(電子部品等を接続する部位)のレイアウトの自由度の向上等を図ることができる。
【0034】
例えば、上記
図2(A)~
図2(C)及び
図3(A)に示したような絶縁リング1のプリント基板、
図3(B)に示した絶縁リング1a並びに
図3(C)に示した絶縁リング1bのプリント基板は、いずれもサブトラクティブ法又はアディティブ法を用いて形成することができる。
【0035】
上記のような絶縁リング1,1a,1b等(絶縁リング1等とも言う)には、組電池の円筒形電池群への取り付け前に、組電池の保護部品として用いられるダイオードや電流ヒューズといった電子部品が予め実装されてもよい。
図4(A)には一例として、絶縁リング1の、絶縁層30の開口部30aから露出する配線層20の部位に、表面実装型の3個のダイオード40及び1個の電流ヒューズ50が実装された構成を示している。絶縁リング1には、アキシャルリードを有するアキシャル型の電子部品ではなく、
図4(A)に示すダイオード40及び電流ヒューズ50のような表面実装型の電子部品が実装される。ダイオード40及び電流ヒューズ50は、絶縁層30の開口部30aの配線層20の部位に、半田等の接合材60を用いて接合され、配線層20と接続される。
図4(A)の例では、第1のパターン21と第2のパターン22との間、第2のパターン22と第3のパターン23との間、第4のパターン24と第1のパターン21との間に、それぞれダイオード40が接続される。第4のパターン24と第5のパターン25との間に、電流ヒューズ50が接続される。
【0036】
図4(A)に示すように、組電池の円筒形電池群への取り付け前に予めダイオード40及び電流ヒューズ50が実装されていると、円筒形電池群への取り付け後の絶縁リング1にダイオード40及び電流ヒューズ50を実装する工程が不要になる。また、予めダイオード40及び電流ヒューズ50が実装されていると、組電池の円筒形電池群への取り付け前に、絶縁リング1にダイオード40及び電流ヒューズ50が適正に実装されているか否かをテストすることも可能になる。ダイオード40及び電流ヒューズ50が適正に実装されている絶縁リング1を組電池の円筒形電池群に取り付けることで、円筒形電池群への取り付け後にダイオード40及び電流ヒューズ50を実装する場合に生じ得る接続ミス、接続不良を回避することが可能になる。
【0037】
また、
図4(B)に示すように、ダイオード40及び電流ヒューズ50が実装された絶縁リング1には、組電池の円筒形電池群への取り付け前に、予めタブ70やリード配線80が更に実装されてもよい。
【0038】
例えば、一端(接続部70a)が円筒形電池群の各々の電極面(正極面又は負極面)と接続されるタブ70の他端(接続部70b)が、絶縁リング1の絶縁層30の開口部30aから露出する配線層20の部位に、半田等の接合材を用いて、或いは溶接等の手法を用いて、接続される。タブ70には、比較的単純な平面長方形の平板状のタブを用いることができる。尚、絶縁リング1には、円筒形電池群のうちの異なるもの同士の電極面間を接続するためのタブが予め実装されてもよく、その場合は、当該電極面に接続されるタブの両端(接続部)間の中間部が絶縁リング1に実装され、例えば、後述の
図7に示すような絶縁リング1dを予め準備する場合等に、このような手法が用いられる。
【0039】
例えば、リード配線80として、組電池の外部接続用の正負一対のリード配線81,82の一端(接続部81a,82a)が、絶縁リング1の絶縁層30の開口部30aから露出する配線層20の部位に、半田等の接合材を用いて、或いは溶接等の手法を用いて、接続される。このほか、リード配線80として、一端(接続部)が所定の円筒形電池の電極面又はそれに繋がるタブと接続されるリード配線83の他端(接続部83b)が、絶縁リング1の絶縁層30の開口部30aから露出する配線層20の部位に、半田等の接合材を用いて、或いは溶接等の手法を用いて、接続される。
【0040】
このように絶縁リング1には、予め、ダイオード40及び電流ヒューズ50が実装されてもよく(
図4(A))、タブ70やリード配線80が更に実装されてもよい(
図4(B))。尚、絶縁リング1には、ダイオード40及び電流ヒューズ50と共に、タブ70及びリード配線80のうちのいずれか一方のみが実装されてもよい。また、ここでは絶縁リング1を例にしたが、上記絶縁リング1a,1b(
図3(B)及び
図3(C))についても同様に、ダイオード40及び電流ヒューズ50を実装することができ、タブ70やリード配線80を更に実装することができる。
【0041】
上記のような絶縁リング1等が用いられ、組電池が組み立てられる。絶縁リング1等によれば、後述のように、絶縁対策に要する部品の増大や作業の複雑化、例えば、作業工数の増大や組み立て作業のミスを抑え、組電池の構造及び組み立て作業の複雑化を抑えて、十分な絶縁が実現される安全性の高い組電池を得ることが可能になる。また、絶縁リング1等によれば、アキシャル型の電子部品の使用、比較的複雑な形状の専用タブの使用が不要になるほか、それらの使用に伴って生じ得る絶縁部材(絶縁テープやリード配線の絶縁被覆材)の破損に起因した短絡等を回避することが可能になる。
【0042】
[第2の実施の形態]
ここでは、上記のような構成を有する絶縁リングを用いた組電池の例を、第2の実施の形態として説明する。
【0043】
図5は第2の実施の形態に係る組電池の第1の例について説明する図である。
図5(A)には第2の実施の形態に係る組電池の第1の例の要部平面図を模式的に示している。
図5(B)には第2の実施の形態に係る組電池の第1の例の要部側面図を模式的に示している。
図5(C)には第2の実施の形態に係る組電池の第1の例の要部底面図を模式的に示している。
【0044】
図5(A)~
図5(C)に示す組電池100Aは、1列に並設される3本の円筒形電池110群を含む組電池の一例である。組電池100Aに含まれる各円筒形電池110は、一方の端面側に正極端子が設けられ、他方の端面側に負極端子が設けられる電池である。各円筒形電池110には、例えば、リチウム一次電池が用いられる。各円筒形電池110には、リチウム二次電池、ニッケル水素電池、アルカリ乾電池等が用いられてもよい。ここでは、円筒形電池110の、正極端子が設けられる端面を「電極面」又は「正極面」とも言い、負極端子が設けられる端面を「電極面」又は「負極面」とも言う。
【0045】
図5(A)~
図5(C)には一例として、円筒形電池110群を直列接続する場合の組電池100Aを示している。例えば、円筒形電池110群は、円筒形電池110群の負極面110bが組電池100Aの一方の端面側に揃えられ、円筒形電池110群の正極面110aが組電池100Aの他方の端面側に揃えられて、1列に並設される。円筒形電池110群の負極面110bが揃えられた組電池100Aの端面側に、例えば、上記第1の実施の形態で述べたようなプリント基板の絶縁リング1が、両面テープ等を用いて取り付けられる。円筒形電池110群の正極面110aが揃えられた組電池100Aの端面側には、例えば、ポリカーボネート等の樹脂材料を用いて形成される通常の平板状の絶縁リング2が、両面テープ等を用いて取り付けられる。円筒形電池110群に取り付けられる絶縁リング1の開口部11aからは、円筒形電池110群の負極面110b(そこに設けられる負極端子)が露出する。円筒形電池110群に取り付けられる絶縁リング2の開口部2aからは、円筒形電池110群の正極面110a(そこに設けられる正極端子)が露出する。絶縁リング1及び絶縁リング2により、円筒形電池110群が1列に並設された状態で固定される。
【0046】
プリント基板の絶縁リング1は、絶縁性の基板10と、基板10に設けられた所定のパターンを有する配線層20と、配線層20の所定の部位に通じる開口部30aを有する絶縁層30とを含む。絶縁リング1には、円筒形電池110群への取り付け前に、予めダイオード40及び電流ヒューズ50が実装される。絶縁リング1には、円筒形電池110群への取り付け前に、予めタブ70及びリード配線81,82,83が接続されてもよい。絶縁リング1には、円筒形電池110群への取り付け後に、タブ70及びリード配線81,82,83が接続されてもよい。
【0047】
組電池100Aでは、絶縁リング1の開口部11aから露出する円筒形電池110群の負極面110bの各々に、タブ70が接続される。タブ70は、円筒形電池110群の負極面110bの各々を、絶縁リング1の配線層20の所定の部位にそれぞれ接続する、比較的単純な平面長方形の平板状の導体部材である。平板状のタブ70の、一方の接続部70aが、円筒形電池110の負極面110bと接続され、他方の接続部70bが、絶縁リング1の配線層20の所定の部位と接続される。タブ70は、半田等の接合材を用いて、或いは溶接等の手法を用いて、円筒形電池110の負極面110b及び絶縁リング1の配線層20の所定の部位と接続される。
【0048】
組電池100Aでは、絶縁リング1の配線層20の所定の部位に、組電池100Aの外部接続用の正負一対のリード配線81,82、及び所定の円筒形電池110の正極面110aとの接続用のリード配線83が接続される。外部接続用の正負一対のリード配線81,82の接続部81a,82a、及び円筒形電池110の正極面110aとの接続用のリード配線83の接続部83bが、絶縁リング1の配線層20の所定の部位と接続される。リード配線81,82及びリード配線83は、半田等の接合材を用いて、或いは溶接等の手法を用いて、絶縁リング1の配線層20の所定の部位と接続される。
【0049】
組電池100Aでは、絶縁リング2の開口部2aから露出する円筒形電池110群の正極面110aの各々に、平板状の導体部材であるタブ71が接続される。タブ71は、半田等の接合材を用いて、或いは溶接等の手法を用いて、円筒形電池110の正極面110aと接続される。絶縁リング1の配線層20の所定の部位に一方の接続部83bが接続されるリード配線83の、他方の接続部83aが、円筒形電池110の正極面110aに接続されたタブ71と接続される。リード配線83は、隣接する円筒形電池110間の谷間に沿って配置される。隣接する円筒形電池110間の谷間に沿ってリード配線83が配置可能なように、その一方の接続部83bが接続される配線層20の部位の位置(絶縁層30の開口部30aの位置)が設定される。
【0050】
円筒形電池110群が直列接続される組電池100Aの場合、例えば、図面左右方向に1列に並設される円筒形電池110群のうち、左端の円筒形電池110の負極面110bが、タブ70を通じて絶縁リング1の配線層20の第1のパターン21に接続され、その第1のパターン21に接続されたリード配線83が、中央の円筒形電池110の正極面110aにタブ71を通じて接続される。中央の円筒形電池110の負極面110bは、タブ70を通じて絶縁リング1の配線層20の第2のパターン22に接続され、その第2のパターン22に接続されたリード配線83が、右端の円筒形電池110の正極面110aにタブ71を通じて接続される。右端の円筒形電池110の負極面110bは、タブ70を通じて、外部接続用のリード配線81が繋がる、絶縁リング1の配線層20の第3のパターン23に接続される。左端の円筒形電池110の正極面110aは、タブ71及びそれに接続されたリード配線83を通じて、絶縁リング1の配線層20の第4のパターン24に接続され、第4のパターン24は、電流ヒューズ50を介して、外部接続用のリード配線82が繋がる、絶縁リング1の配線層20の第5のパターン25に接続される。第1のパターン21と第2のパターン22との間、第2のパターン22と第3のパターン23との間、第4のパターン24と第1のパターン21との間に、それぞれダイオード40が接続される。
【0051】
組電池100Aでは、リード配線81,82が外部に引き出されるように、円筒形電池110群、ダイオード40及び電流ヒューズ50が実装された絶縁リング1、絶縁リング2、タブ70,71及びリード配線83が、外装絶縁チューブ90で被覆される。
【0052】
上記のような構成を有する組電池100Aでは、円筒形電池110群を固定する絶縁リング1に配線層20が設けられ、その配線層20に接続されるように、絶縁リング1に保護部品として表面実装型のダイオード40及び電流ヒューズ50が実装される。更に、組電池100Aでは、円筒形電池110群の負極面110bが、比較的単純な平面長方形の平板状のタブ70で、絶縁リング1の配線層20に接続される。組電池100Aでは、保護部品としてアキシャル型の電子部品を用いることを要しない。更に、アキシャル型の電子部品を、隣接する円筒形電池110間の谷間に配置して所定の円筒形電池110の電極面と接続する場合に使用されるような比較的複雑な形状の専用タブ(上記
図1(A)に示したようなタブ1030等)を準備することを要しない。
【0053】
組電池100Aにおいて、リード配線81,82は、円筒形電池110群の負極面110b側に取り付けられる絶縁リング1に接続され、リード配線83は、当該絶縁リング1と円筒形電池110群の正極面110a側に取り付けられるタブ71とに接続される。リード配線81,82及びリード配線83には、絶縁リング1及びタブ71との接続箇所である端部は露出させて当該端部に繋がる中間部が絶縁被覆材で覆われるものが用いられる。組電池100Aでは、円筒形電池110群の側面に、リード配線81,82及びリード配線83の、絶縁リング1及びタブ71との接続箇所が配置されない。そのため、円筒形電池110群の側面に絶縁テープを貼り付けることを要しない。
【0054】
組電池100Aでは、アキシャル型の電子部品を用いること、及びそのための専用タブを準備することが不要になるため、絶縁リング1による円筒形電池110群の固定後にそのような専用タブを電極面に接続し、その専用タブにアキシャル型の電子部品を実装するといった作業が不要になる。また、組電池100Aでは、円筒形電池110群の側面に絶縁テープを貼り付けることが不要になり、アキシャル型の電子部品を実装すること、及びそのための専用タブを準備することが不要になるため、当該電子部品を専用タブに半田付けする際の熱で絶縁テープを破損して短絡させるといった不良の発生が回避される。
【0055】
組電池100Aでは、リード配線81,82が絶縁リング1の配線層20に接続され、その配線層20によって所定の円筒形電池110の位置まで引き回される。リード配線81,82がタブ70の上を引き回されないため、リード配線81,82とタブ70との衝突が回避され、衝突によるリード配線81,82の絶縁被覆材の破損、それに起因した短絡が回避される。
【0056】
組電池100Aでは、円筒形電池110群の負極面110bが一方の端面側に揃えられ、正極面110aが他方の端面側に揃えられて、1列に並設される。このように、円筒形電池110群の極性の向きを揃えることで、組み立て作業時に誤って短絡させてしまうリスクを低減することが可能になる。
【0057】
絶縁リング1を用いた組電池100Aによれば、絶縁対策に要する部品の増大や作業の複雑化、例えば、作業工数の増大や組み立て作業のミスが抑えられ、組電池の構造及び組み立て作業の複雑化が抑えられる。これにより、十分な絶縁が実現される安全性の高い組電池100Aが得られる。
【0058】
ここでは、絶縁リング1を用い、極性の向きを揃えて並設される円筒形電池110群を直列接続する組電池100Aを示したが、絶縁リング1の配線層20のパターン等を適宜変更することで、極性の向きを揃えて並設される円筒形電池110群を並列接続した組電池を得ることもできる。
【0059】
また、ここでは、絶縁リング1を用いる例を示したが、絶縁リング1a,1b等を用いて、同様に組電池を得ることができる。
また、ここでは、円筒形電池110群の負極面110b側にプリント基板の絶縁リング1を取り付け、正極面110a側に通常の絶縁リング2を取り付ける例を示したが、負極面110b側と共に、正極面110a側にもプリント基板の絶縁リングを取り付けることもできる。正極面110a側に取り付けられるプリント基板の絶縁リングの配線層に、タブ71やリード配線83を接続したり、表面実装型のダイオード40や電流ヒューズ50等の電子部品を実装したりすることもできる。
【0060】
また、円筒形電池110群の正極面110aと、負極面110b側に取り付けられるプリント基板の絶縁リング1の配線層20との接続には、リード配線83及びタブ71に限らず、次の
図6に示すような接続部材を用いることもできる。
【0061】
図6は第2の実施の形態に係る接続部材の一例について説明する図である。
図6(A)には第2の実施の形態に係る接続部材の一例の要部正面図を模式的に示している。
図6(B)には第2の実施の形態に係る接続部材の一例の要部側面図を模式的に示している。
【0062】
図6(A)及び
図6(B)に示す接続部材84は、平板状のタブ84aと、その両端部84aa,84ab間にあって当該両端部84aa,84abと接続される中間部を覆う絶縁被覆材84bとを含む。タブ84aの一方の端部84abが、円筒形電池110群の負極面110b側に取り付けられるプリント基板の絶縁リング1の配線層20と、半田等の接合材を用いて、或いは溶接等の手法を用いて、接続される。タブ84aの他方の端部84aaが、円筒形電池110群の正極面110aと、半田等の接合材を用いて、或いは溶接等の手法を用いて、接続される。タブ84aの絶縁被覆材84bは、一方の端部84abが絶縁リング1の配線層20と接続され、他方の端部84aaが正極面110aと接続されるタブ84aの、円筒形電池110との接触を回避する。絶縁被覆材84bには、各種絶縁材料、例えば、フッ素樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーンゴム等を用いることができる。
【0063】
上記のようなリード配線83及びタブ71に代えて、この
図6(A)及び
図6(B)に示すようなタブ84a及び絶縁被覆材84bを含む接続部材84を用いると、組電池100Aの部品点数を削減して、作業工数を削減することが可能になる。
【0064】
また、円筒形電池110群は、上記のように極性の向きを揃えて並設されるほか、極性が正負交互の配列となるように並設されてもよい。
図7は第2の実施の形態に係る組電池の第2の例について説明する図である。
図7(A)には第2の実施の形態に係る組電池の第2の例の要部平面図を模式的に示している。
図7(B)には第2の実施の形態に係る組電池の第2の例の要部底面図を模式的に示している。
【0065】
図7(A)及び
図7(B)に示す組電池100Bは、3本の円筒形電池110群が、負極面110bと正極面110aとが交互になるように1列に並設された組電池の一例である。組電池100Bでは、このように並設される円筒形電池110群の一方の端面側に、プリント基板の絶縁リング1dが取り付けられ、他方の端面側に、通常の絶縁リング2が取り付けられ、円筒形電池110群が直列接続される。
【0066】
組電池100Bでは、例えば、図面左右方向に1列に並設される円筒形電池110群のうち、左端の円筒形電池110の負極面110bが、タブ70を通じて、中央の円筒形電池110の正極面110aに接続される。中央の円筒形電池110の負極面110bが、タブ71を通じて、右端の円筒形電池110の正極面110aに接続される。右端の円筒形電池110の正極面110aは、タブ71及びそれに接続されたリード配線83を通じて、絶縁リング1dの配線層20の第2のパターン22に接続され、右端の円筒形電池110の負極面110bは、タブ70を通じて、外部接続用のリード配線81が繋がる、絶縁リング1dの配線層20の第3のパターン23に接続される。左端の円筒形電池110の正極面110aは、タブ71及びそれに接続されたリード配線83を通じて、絶縁リング1dの配線層20の第4のパターン24に接続され、第4のパターン24は、電流ヒューズ50を介して、外部接続用のリード配線82が繋がる、絶縁リング1dの配線層20の第5のパターン25に接続される。第1のパターン21と第2のパターン22との間、第2のパターン22と第3のパターン23との間、第4のパターン24と第1のパターン21との間に、それぞれダイオード40が接続される。
【0067】
ここでは図示を省略するが、組電池100Bでは、リード配線81,82が外部に引き出されるように、円筒形電池110群、ダイオード40及び電流ヒューズ50が実装された絶縁リング1d、絶縁リング2、タブ70,71及びリード配線83が、外装絶縁チューブで被覆される。
【0068】
組電池100Bでは、円筒形電池110群の極性の向きを交互にすることで、極性の向きを揃えた上記組電池100Aに比べて、絶縁リング1d側の1枚のタブ70、絶縁リング2側の1枚のタブ71、及び1本のリード配線83を削減することが可能になる。組電池100Bによれば、部品点数の更なる削減により、組電池の構造及び組み立て作業の複雑化が一層抑えられるようになる。
【0069】
ここでは、円筒形電池110群の一方の端面側にプリント基板の絶縁リング1dを取り付け、他方の端面側に通常の絶縁リング2を取り付ける例を示したが、一方の端面側と共に、他方の端面側にもプリント基板の絶縁リングを取り付けることもできる。他方の端面側に取り付けられるプリント基板の絶縁リングの配線層に、タブ71やリード配線83を接続したり、表面実装型のダイオード40や電流ヒューズ50等の電子部品を実装したりすることもできる。
【0070】
組電池100Bにおいて、リード配線83及びタブ71に代えて、上記
図6(A)及び
図6(B)に示したような接続部材84を用いることもできる。これにより、組電池100Bの部品点数を削減して、作業工数を削減することが可能になる。
【0071】
また、以上の説明では、1列に並設される3本の円筒形電池110群を含む組電池100A,100Bを示したが、組電池に含まれる円筒形電池110群の本数は3本に限定されるものではない。
【0072】
図8は第2の実施の形態に係る組電池の第3の例について説明する図である。
図8(A)には第2の実施の形態に係る組電池の第3の例の要部平面図を模式的に示している。
図8(B)には第2の実施の形態に係る組電池の第3の例の要部底面図を模式的に示している。
【0073】
図8(A)及び
図8(B)に示す組電池100Cは、1列に並設される7本の円筒形電池110群を含む。
図8(A)及び
図8(B)には一例として、負極面110bと正極面110aとが交互に配列するように並設される円筒形電池110群を直列接続する場合の組電池100Cを示している。
【0074】
組電池100Cでは、円筒形電池110群の一方の端面側にプリント基板の絶縁リング1eが取り付けられ、他方の端面側に通常の絶縁リング2が取り付けられる。プリント基板の絶縁リング1eが取り付けられる端面側では、隣接する円筒形電池110の負極面110bと正極面110aとがタブ70で接続され、通常の絶縁リング2が取り付けられる端面側では、隣接する円筒形電池110の正極面110aと負極面110bとがタブ71で接続される。円筒形電池110群の、絶縁リング2が取り付けられる端面側の正極面110aは、それに接続されたタブ71、及びそのタブ71に接続されたリード配線83を通じて、絶縁リング1eの配線層20に接続される。図面左右方向に1列に並設される円筒形電池110群の、右端の円筒形電池110の負極面110bは、タブ70を通じて、外部接続用のリード配線81が繋がる、絶縁リング1eの配線層20に接続される。左端の円筒形電池110の正極面110aがタブ71及びリード配線83を通じて接続される絶縁リング1eの配線層20は、電流ヒューズ50を介して、外部接続用のリード配線82が繋がる、絶縁リング1eの配線層20に接続される。絶縁リング1eの配線層20の所定のパターン間にそれぞれ、ダイオード40が接続される。
【0075】
ここでは図示を省略するが、組電池100Cでは、リード配線81,82が外部に引き出されるように、円筒形電池110群、ダイオード40及び電流ヒューズ50が実装された絶縁リング1d、絶縁リング2、タブ70,71及びリード配線83が、外装絶縁チューブで被覆される。
【0076】
組電池100Cでは、円筒形電池110群の極性の向きを交互にすることで、極性の向きを揃えた場合に比べて、用いるタブ70,71の枚数及びリード配線83の本数を削減することが可能になる。これにより、組電池の構造及び組み立て作業の複雑化が抑えられるようになる。
【0077】
ここでは、円筒形電池110群の一方の端面側にプリント基板の絶縁リング1eを取り付け、他方の端面側に通常の絶縁リング2を取り付ける例を示したが、一方の端面側と共に、他方の端面側にもプリント基板の絶縁リングを取り付けることもできる。他方の端面側に取り付けられるプリント基板の絶縁リングの配線層に、タブ71やリード配線83を接続したり、表面実装型のダイオード40や電流ヒューズ50等の電子部品を実装したりすることもできる。
【0078】
組電池100Cにおいて、リード配線83及びタブ71に代えて、上記
図6(A)及び
図6(B)に示したような接続部材84を用いることもできる。これにより、組電池100Cの部品点数を削減して、作業工数を削減することが可能になる。
【0079】
尚、1列に並設される7本の円筒形電池110群を、それらの極性の向きを揃えて並設し、直列接続すること、或いは並列接続することも可能である。
また、組電池に含まれる円筒形電池110群の本数は3本や7本には限定されず、4本~6本或いは8本以上とすることもできる。
【0080】
以上の説明では、円筒形電池110群が1列に並設された組電池を例にしたが、円筒形電池110群が複数列で並設される組電池についても同様に、その複数列の円筒形電池110群の配列に合わせて連結されたリング部11を含む基板10、配線層20及び絶縁層30を有するプリント基板の絶縁リングを取り付け、複数列の円筒形電池110群を直列接続或いは並列接続することも可能である。
【符号の説明】
【0081】
1,1a,1b,1d,1e,2,1020 絶縁リング
2a,11a,30a 開口部
10 基板
10a,10b 主面
11,1021 リング部
12 連結部
20,26 配線層
21,22,23,24,25 パターン
27 ビア
30,31 絶縁層
40,1070 ダイオード
50,1090 電流ヒューズ
60 接合材
70,71,84a,1030,1040 タブ
70a,70b,81a,82a,83a,83b 接続部
80,81,82,83,1050 リード配線
84 接続部材
84aa,84ab 端部
84b 絶縁被覆材
90 外装絶縁チューブ
100A,100B,100C,1000 組電池
110,1010 円筒形電池
110a 正極面
110b 負極面
1031 延伸部
1060,1061 絶縁テープ
1062 絶縁チューブ
1063 外装絶縁チューブ
1071 アキシャルリード
1080 SPC接続子