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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022176512
(43)【公開日】2022-11-30
(54)【発明の名称】遮光性積層体
(51)【国際特許分類】
   B32B 7/023 20190101AFI20221122BHJP
   B65D 81/30 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
B32B7/023
B65D81/30 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021082991
(22)【出願日】2021-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】313004403
【氏名又は名称】株式会社フジシール
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】節田 有貴
(72)【発明者】
【氏名】表 沙帆梨
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 彰
【テーマコード(参考)】
3E067
4F100
【Fターム(参考)】
3E067AB01
3E067AB81
3E067AB96
3E067BB25A
3E067CA12
3E067CA13
3E067FC01
3E067GD01
4F100AA21C
4F100AA21E
4F100AB10B
4F100AK01E
4F100AK42A
4F100AK51B
4F100AK51C
4F100AK51E
4F100AT00A
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA05
4F100BA07
4F100CA13C
4F100CA13E
4F100CC00B
4F100CC00C
4F100DE02B
4F100GB15
4F100GB23
4F100HB31D
4F100JA03A
4F100JB08E
4F100JK16E
4F100JL10B
4F100JL10C
4F100JN02B
4F100JN02C
(57)【要約】
【課題】従来と同等程度の遮光性を有しつつ、遮蔽層の色目を青みがかった白に見せることが可能であるとともに、遮蔽層の白色の彩度を向上させることが可能な遮光性積層体を提供する。
【解決手段】遮光性積層体(10)は、基材(11)と、基材(11)上の遮光層(12)と、遮光層(12)上の遮蔽層(13)とを備えている。遮光層(12)は銀インキ層である。遮蔽層(13)は白インキ層である。遮光層(12)および遮蔽層(13)が基材(11)の同じ側に位置する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材上の遮光層と、
前記遮光層上の遮蔽層と、を備え、
前記遮光層は、銀インキ層であり、
前記遮蔽層は、白インキ層であり、
前記遮光層および前記遮蔽層が前記基材の同じ側に位置する、遮光性積層体。
【請求項2】
前記遮蔽層上にデザイン印刷層をさらに備える、請求項1に記載の遮光性積層体。
【請求項3】
前記基材上の滑り性付与層をさらに備え、
前記滑り性付与層は、前記基材の前記遮光層および前記遮蔽層が位置する側と反対側に位置する、請求項1または請求項2に記載の遮光性積層体。
【請求項4】
前記基材と前記遮光層との間に、アルカリ可溶性の樹脂を含む下地層をさらに備える、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の遮光性積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、遮光性積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種の飲食料品、化成品、化粧品または医薬品等の物品を収容するための容器の外表面に、内容物の品質の保護および保存期間の延長等の観点から、容器の外側から光が容器の内部に透過することを遮断することを目的として遮光性積層体が装着されることがある。
【0003】
たとえば特許文献1には、少なくとも、印刷インキよりなる絵柄印刷層、遮蔽層、透明な基材層、及び遮光層からなる遮光性積層体であって、該遮蔽層は、白インキよりなる1層又は2層以上の印刷層であり、該白インキは、白色顔料とバインダ樹脂との質量配合比が、白色顔料:バインダ樹脂=4~5:1~0.8であり、該遮蔽層が、該基材層の一方側に位置し、かつ該遮光層が、該基材層を挟んで該遮蔽層とは反対側に位置し、かつ、該基材層が、熱収縮性フィルムからなり、熱収縮後に、積層体の絵柄印刷層を設けていない部分において、基材層の遮光層を設けた側と反対側から測定したL*a*b*表色系の明度L*値が82以上である遮光性積層体が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6620526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の遮光性積層体においては、白インキよりなる遮蔽層が黄ばんだ白色に見えてしまう。そのため、特許文献1の遮光性積層体を容器の外表面に装着した場合に、当該容器が長期間放置されていないにも関わらず、長期間放置されているように見えてしまうことがあるため、白インキよりなる遮蔽層の色目を青みがかった白に見せることについての要望がある。
【0006】
また、特許文献1の遮光性積層体の遮蔽層の白色の彩度を向上させるという要望もある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここで開示された実施形態によれば、基材と、基材上の遮光層と、遮光層上の遮蔽層とを備え、遮光層は銀インキ層であり、遮蔽層は白インキ層であり、遮光層および遮蔽層が基材の同じ側に位置する遮光性積層体を提供することができる。
【発明の効果】
【0008】
ここで開示された実施形態によれば、従来と同等程度の遮光性を有しつつ、遮蔽層の色目を青みがかった白に見せることが可能であるとともに、遮蔽層の白色の彩度を向上させることが可能な遮光性積層体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る遮光性積層体の一例の模式的な断面図である。
図2】実施形態に係る遮光性積層体の他の一例の模式的な断面図である。
図3】実施例1の遮光性積層体の模式的な断面図である。
図4】比較例1の遮光性積層体の模式的な断面図である。
図5】実施例1および比較例1の遮光性積層体の波長250nm以上800nm以下の光に対する全光線透過率を示した図である。
図6】実施例2の遮光性積層体の模式的な断面図である。
図7】比較例2の遮光性積層体の模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態について説明する。なお、実施形態の説明に用いられる図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表わすものとする。
【0011】
<遮光性積層体>
図1に、実施形態に係る遮光性積層体の一例の模式的な断面図を示す。図1に示すように、実施形態に係る遮光性積層体10は、基材11と、基材11上の遮光層12と、遮光層12上の遮蔽層13と、遮蔽層13上のデザイン印刷層14とを備えており、遮光層12および遮蔽層13が基材11の同じ側に位置している。
【0012】
本明細書において、「遮光層12および遮蔽層13が基材11の同じ側に位置している」とは、基材11の表面11aまたは裏面11bのいずれか一方の面上に遮光層12および遮蔽層13の両方が位置していることを意味する。
【0013】
<基材>
基材11は、表面11aおよび裏面11bを有し、表面11aまたは裏面11bのいずれか一方の面上に遮光層12および遮蔽層13の両方を支持することが可能な樹脂を含む基体である。
【0014】
基材11に含まれる樹脂としては、たとえば、ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ乳酸等)、ポリスチレン系樹脂(ポリスチレン、スチレン-ブタジエン共重合体等)、ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂(ナイロン等)、アラミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、またはアクリル系樹脂等を用いることができる。基材101は、これらの樹脂の1種類を含んでいてもよく、2種類以上を含んでいてもよい。
【0015】
基材11は、たとえば、熱収縮性のプラスチックフィルム(シュリンクフィルム)であってもよい。基材11がシュリンクフィルムである場合には、たとえば、容器の外表面に装着可能なシュリンクラベルまたはオーバーラップ包装として遮光性積層体10を用いることができる。また、基材11は、たとえば、透明のプラスチックフィルムであってもよく、乳白フィルムであってもよい。
【0016】
基材11は、1層からなる単層フィルムであってもよく、2層以上からなる多層フィルムであってもよい。また、基材11の厚さは、たとえば、5μm以上150μm以下、好ましくは5μm以上120μm以下、より好ましくは5μm以上100μm以下とすることができる。基材11が多層フィルムである場合には、基材11を構成する各フィルムは異なる樹脂を含んでいてもよい。
【0017】
<遮光層>
遮光層12は、遮光性積層体10の外側から遮蔽層13を透過してきた光を反射することによって、遮光性積層体10が装着された容器の内部への光の到達を抑制することを目的とする銀インキ層である。遮光層12を構成する銀インキ層の厚さは、たとえば、0.05μm以上2μm以下とすることができる。なお、本明細書において、「遮光性積層体10の外側から」とは、基材11の表面11a上の遮光層12および遮蔽層13が形成されている側の遮光性積層体10の外側を意味する。
【0018】
遮光層12を構成する銀インキ層としては、たとえば、アルミニウム顔料とバインダ樹脂とを含む層を用いることができる。アルミニウム顔料としては、たとえば、球状のアルミニウム粒子、鱗片状(フレーク状)のアルミニウム片または薄膜状のアルミニウム片を用いることができる。遮光層12を構成する銀インキ層のバインダ樹脂としては、たとえばアクリル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル-ウレタン樹脂、セルロース樹脂(ニトロセルロース樹脂、セルロースアセテートブチレート樹脂、セルロースアセテートプロピオネート樹脂など)またはこれらの混合樹脂を用いることができる。遮光層12を構成する銀インキ層のバインダ樹脂としては、特に、ウレタン樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体およびセルロース樹脂からなるバインダ樹脂を用いることができる。
【0019】
遮光層12を構成する銀インキ層中のアルミニウム顔料の含有量は、たとえば、銀インキ層の10重量%以上70重量%以下とすることができる。遮光層12を構成する銀インキ層中のアルミニウム顔料の含有量が銀インキ層の10重量%以上である場合には遮光層12の遮光性が向上する傾向にある。遮光層12を構成する銀インキ層中のアルミニウム顔料の含有量が銀インキ層の70重量%以下である場合には、遮光層12と他の層との密着性が向上する傾向にある。
【0020】
<遮蔽層>
遮蔽層13は、遮光性積層体10を外側から見たときの遮光層12の色味を遮蔽することを目的とする1層または2層以上の白インキ層である。遮蔽層13を構成する白インキ層の厚さは、たとえば、0.5μm以上4μm以下とすることができる。遮蔽層13の厚さは、たとえば3μm以上10μm以下とすることができる。
【0021】
遮蔽層13を構成する白インキ層としては、たとえば、白色顔料とバインダ樹脂とを含む層を用いることができる。白色顔料としては、たとえば、酸化チタン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、またはこれらの2種類以上からなる混合物等を用いることができる。遮蔽層13を構成する白インキ層のバインダ樹脂としては、たとえばアクリル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル-ウレタン樹脂、セルロース樹脂(ニトロセルロース樹脂、セルロースアセテートブチレート樹脂、セルロースアセテートプロピオネート樹脂など)またはこれらの混合樹脂を用いることができる。遮蔽層13を構成する白インキ層のバインダ樹脂としては、特に、ウレタン樹脂およびアクリル樹脂からなるバインダ樹脂を用いることができる。
【0022】
遮蔽層13を構成する白インキ層中の白色顔料の含有量は、たとえば、遮蔽層13を構成する白インキ層の60重量%以上80重量%以下とすることができる。遮蔽層13を構成する白インキ層中の白色顔料の含有量が白インキ層の60重量%以上である場合には遮蔽層13の遮蔽性を向上することができる傾向にある。遮蔽層13を構成する白インキ層中の白色顔料の含有量が白インキ層の80重量%以下である場合には密着性、スクラッチ性、および耐もみ性を維持できる傾向にある。
【0023】
<デザイン印刷層>
デザイン印刷層14は、たとえば、文字、記号、図形または絵柄等の装飾を遮光性積層体10の外表面に付与することを目的とする印刷インキよりなる層である。デザイン印刷層14の厚さは、たとえば、1μm以上10μm以下とすることができる。なお、デザイン印刷層14は、単層から構成されていてもよく、複数層から構成されていてもよい。
【0024】
<表面保護層>
実施形態に係る遮光性積層体10は、遮蔽層13上またはデザイン印刷層14上に表面保護層(図示せず)をさらに備えていてもよい。表面保護層は、遮蔽層13またはデザイン印刷層14をたとえば外傷等から保護するための層である。表面保護層としては、たとえばオーバープリントニスからなる層を用いることができる。
【0025】
<滑り性付与層>
実施形態に係る遮光性積層体10は、基材11の裏面11b上に滑り性付与層(図示せず)をさらに備えていてもよい。滑り性付与層は、容器の外表面に遮光性積層体10を装着する際に、遮光性積層体10が装着される容器の外表面に対する遮光性積層体10の滑り性を向上させることを目的として設けられる層である。滑り性付与層が基材11の裏面11b上に設けられた場合には、滑り性付与層は、基材11の遮光層12および遮蔽層13が位置する側と反対側に位置することになる。
【0026】
滑り性付与層は、たとえば、白色顔料とバインダ樹脂とを含む白インキ層を用いることができる。滑り性付与層を構成する白インキ層の白色顔料としては、たとえば、遮蔽層13を構成する白インキ層と同様の白色顔料を用いることができる。滑り性付与層を構成する白インキ層のバインダ樹脂としては、たとえば、遮蔽層13を構成する白インキ層と同様のバインダ樹脂を用いることができる。
【0027】
滑り性付与層を構成する白インキ層中の白色顔料の含有量は、たとえば、滑り性付与層を構成する白インキ層の80重量%以下とすることができる。滑り性付与層に遮蔽機能を持たせるためには、滑り性付与層を構成する白インキ層中の白色顔料の含有量は、たとえば、滑り性付与層を構成する白インキ層の60重量%以上とすることができる。滑り性付与層としては、白色顔料とバインダ樹脂とを含む白インキ層以外にも、たとえば、メジウム等の顔料を含まない層を用いることもできる。滑り性付与層に顔料を含まない層を用いた場合には、後述する下地層を実施形態に係る遮光性積層体10に適用する場合に、基材11の表面11a側のみに下地層を設ければよいという利点がある。
【0028】
<下地層>
図2に、実施形態に係る遮光性積層体10の他の一例の模式的な断面図を示す。図2に示される遮光性積層体10は、基材11と遮光層12との間にアルカリ可溶性の下地層15をさらに備えることを特徴としている。下地層15は、使用後の容器から遮光性積層体10を回収し、アルカリ溶液に遮光性積層体10を浸漬させること等によって遮光性積層体10から基材11上の遮光層12および遮蔽層13等を除去し、リサイクル等のために基材11を分離回収することを目的として設けられる層である。
【0029】
たとえば、アルカリ可溶性の下地層15を用いて特許文献1に記載の遮光性遮光性積層体から基材層を分離回収するためには、遮蔽層と基材層との間および基材層と遮光層との間の2箇所に下地層15を設ける必要がある。
【0030】
一方、実施形態に係る遮光性積層体10においては、遮光層12および遮蔽層13等の層が基材11の同じ側に位置しているため、基材11と遮光層12との間の1箇所のみにアルカリ可溶性の下地層15を設けるだけでよい。
【0031】
また、下地層15を用いることなく、たとえば、遮光性積層体10に対する物理的な力のみで基材11上の遮光層12および遮蔽層13等を除去して基材11を分離回収する場合にも、遮光層12および遮蔽層13等の層が基材11の同じ側に位置していることによって、遮光性積層体10からの基材11の分離回収が特許文献1に記載の遮光性積層体と比べて容易となる。
【0032】
アルカリ可溶性の下地層15としては、たとえば、アルカリ可溶性の樹脂を含む下地層15が挙げられる。アルカリ可溶性の樹脂としては、たとえば、以下(1)~(4)を具備する樹脂を用いることができる。
(1)第1のガラス転移温度T1を有するアクリル酸共重合樹脂である第1樹脂を含有する;
(2)上記T1よりも低い第2のガラス転移温度T2を有するアクリル酸共重合樹脂である第2樹脂を含有する;
(3)下地層15の見掛けの酸価は、40mgKOH/g以上150mgKOH/g以下である;
(4)下地層15に含有される第1樹脂および第2樹脂は、合計で、下地層15全体の50~95質量%を占める。
【0033】
上記(1)~(4)を具備する樹脂は、良好なアルカリ可溶性を有する。したがって、遮光性積層体10が基材11と遮光層12との間にアルカリ可溶性の樹脂を含む下地層15を備えることにより、遮光性積層体10からの下地層15のアルカリ脱離に伴って、基材11上の層も遮光性積層体10から脱離する。
【0034】
上記(1)および(2)に示されるように、第1樹脂および第2樹脂は、それぞれアクリル酸共重合樹脂である。アクリル酸共重合樹脂とは、主たる繰り返し単位として、アクリル酸および/またはメタクリル酸を含むとともに、アクリル酸および/またはメタクリル酸と共重合可能な共重合モノマーを含む樹脂である。アクリル酸共重合樹脂は、樹脂におけるアクリル酸および/またはメタクリル酸、ならびに共重合モノマーの合計割合が、60モル%以上であることが好ましい。
【0035】
上記(1)および(2)に関し、第1樹脂のTgであるT1は、90℃以上であることが好ましく、100℃以上であることが特に好ましい。T1の上限値は、たとえば、アクリル酸共重合樹脂の物性から、120℃程度とすることができる。第2樹脂のTgであるT2は、80℃未満であることが好ましく、65℃以下であることが特に好ましい。T2の下限値は、たとえば、取扱い容易性の観点から、30℃程度とすることができる。T1およびT2は、たとえば20℃以上の差があることが好ましく、40℃以上の差があることが特に好ましい。この場合には、下地層15の印刷適性を向上させることができるためである。
【0036】
上記(3)に関し、下地層15の見掛けの酸価とは、下地層15に含まれる2種類以上の樹脂からなる混合樹脂の酸価を意味する。下地層15の見掛けの酸価は、第1樹脂および第2樹脂の各酸価を制御することにより、調整することができる。
【0037】
上記(3)に関し、下地層15の見掛けの酸価は、50mgKOH/g以上130mgKOH/g以下であることがより好ましく、55gKOH/g以上125mgKOH/g以下であることが特に好ましい。これらの場合には、下地層15のアルカリ可溶性と印刷適性とを特に向上させることが可能になる。
【0038】
上記(4)に関し、下地層15における第1樹脂および第2樹脂は、合計で、下地層15全体の70質量%以上95質量%以下を占めることが好ましい。これらの場合には、下地層15のアルカリ可溶性と印刷適性とを特に向上させることが可能になる。第1樹脂と第2樹脂の2種類の樹脂を含有することによる相乗効果を向上させる観点からは、第1樹脂の含有量と第2樹脂の含有量との比(相対的に含有量の大きい樹脂の含有量/相対的に含有量の小さい樹脂の含有量)は3以下であることが好ましい。
【0039】
下地層15がアルカリ可溶性の樹脂を含むことは、たとえば、各種分析技術を用いて確認することができる。たとえば、核磁気共鳴(NMR)、ガスクロマトグラフィー質量分析計(GCMS)または熱分解ガスクロマトグラフィー(熱分解GCMS)等により、下地層15内にアクリル酸共重合樹脂が特定の含有量で存在することを確認することができる。また、下地層15の酸価は、たとえば、下地層15を滴定することによって確認することができる。また、第1樹脂のMmおよび第2樹脂のMmは、たとえばゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により、確認することができる。
【0040】
上述の第1樹脂および第2樹脂は、メタクリル酸-メチルメタクリル酸共重合体(以下、「MM共重合体」とも記す)であることが好ましい。この場合には、下地層15のアルカリ可溶性と印刷適性との両特性を顕著に向上させることが可能になる。
【0041】
下地層15は、第1樹脂および第2樹脂に加え、他の成分を含んでいてもよい。好ましい他の成分としては、セルロース誘導体が挙げられる。下地層15がセルロース誘導体を含む場合には、下地層15の耐ブロッキング性および密着性等を向上させることが可能になる。
【0042】
下地層15におけるセルロース誘導体の含有量は、下地層15の全質量の1質量%以上20質量%以下であることが好ましい。この場合には、下地層15の耐ブロッキング性および印刷適性を向上することができる。
【0043】
また、下地層15は、好ましい他の成分として、たとえば、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体(以下、「VV共重合体」とも記す)を含んでいてもよい。下地層15がVV共重合体を含むことにより、基材101と下地層15との密着性をさらに向上することが可能になる。
【0044】
下地層15におけるVV共重合体の含有量は、下地層15の全質量の5~20質量%であることが好ましく、9~12質量%であることが特に好ましい。これらの場合には、下地層15の密着性および印刷適性を向上することができる。
【0045】
<遮光性積層体の製造方法>
実施形態に係る遮光性積層体10は、たとえば以下のようにして製造することができる。まず、基材11を準備する工程を行なう。基材11は、たとえば、押出法(Tダイ法、インフレーション法、またはチューブラー法など)またはカレンダー法等の方法によってフィルムを成形することにより、必要に応じて、当該フィルムに対してさらに延伸処理を施すことにより準備することができる。
【0046】
次に、基材11の表面11a上に遮光層12を形成する工程を行なう。遮光層12を形成する工程は、たとえば、遮光層12形成用インキを基材11上に印刷した後に乾燥すること等によって行なうことができる。
【0047】
遮光層12形成用インキとしては、たとえば、バインダ樹脂と、アルミニウム顔料と、溶剤とを含む樹脂組成物を用いることができる。
【0048】
また、基材11と遮光層12との間にアルカリ可溶性の下地層15を設ける場合には、基材11の表面11a上に遮光層12を形成する工程は、基材11の表面11a上に下地層15を形成する工程と、下地層15上に遮光層12を形成する工程とを含んでいてもよい。
【0049】
基材11の表面11a上に下地層15を形成する工程は、たとえば、アルカリ可溶性の下地層15形成用インキを基材11の表面11a上に印刷した後に乾燥すること等によって行なうことができる。
【0050】
下地層15上に遮光層12を形成する工程は、たとえば、遮光層12形成用インキを下地層15上に印刷した後に乾燥すること等によって行なうことができる。
【0051】
次に、遮光層12上に遮蔽層13を形成する工程を行なう。遮蔽層13を形成する工程は、たとえば、遮蔽層13形成用インキを遮光層12上に印刷した後に乾燥すること等によって行なうことができる。
【0052】
遮蔽層13形成用インキとしては、たとえば、バインダ樹脂と、白色顔料と、溶剤とを含む樹脂組成物を用いることができる。
【0053】
その後、遮蔽層13上にデザイン層14を形成する工程を行なう。デザイン層14を形成する工程は、たとえば、デザイン層14形成用インキを遮蔽層13上に印刷した後に乾燥すること等によって行なうことができる。
【0054】
実施形態に係る遮光性積層体10が、表面保護層および/または滑り性付与層等の他の層をさらに備える場合には、たとえば、それらの層の形成用のインキを印刷した後に乾燥すること等によってこれらの他の層を形成することができる。以上の工程を経ることにより、実施形態に係る遮光性積層体10を製造することができる。
【0055】
<用途>
実施形態に係る遮光性積層体10は、基材11と、基材11上の遮光層12と、遮光層12上の遮蔽層13とを備え、遮光層12および遮蔽層13が基材11の同じ側に位置しているため、従来と同等程度の遮光性を有しつつ、遮蔽層の色目を青みがかった白に見せることが可能であるとともに、遮蔽層の白色の彩度を向上させることが可能である。この理由は明確ではないが、基材11の一方面上に、遮光層12および遮蔽層13の順に積層されていることが、遮光層13中のアルミニウム片等のアルミニウム顔料の配向性に影響を与えていることが考えられる。
【0056】
実施形態に係る遮光性積層体10は、たとえば、水、ジュース、緑茶、紅茶、ウーロン茶、麦茶、抹茶、プーアル茶、日本酒、みりん、ポン酢、酢、油、ビタミン含有飲料、牛乳、乳飲料、乳酸菌飲料、ヨーグルト、ビール、ウイスキー、ブランデー、ラム酒、赤ワイン、白ワイン、ロゼワイン、各種カクテル、醤油、各種ソース、天つゆ、各種たれ、だし汁、ドレッシング、マヨネーズ、ローション、乳液、化粧水、シャンプー、リンス、液体医薬品、または液体化学薬品等の容器の外表面に装着されることが好適である。
【0057】
特に、実施形態に係る遮光性積層体10を、たとえば、プラスチック製ボトルまたはガラス瓶等の容器全体に装着することによって、可視光領域および紫外光領域の光の遮光性に優れ、また、意匠性にも優れた容器を提供することができる。
【0058】
遮光性積層体10が容器に装着された場合に、遮光層12は、遮光性積層体10の面積の50%以上に設けられていることが好ましく、80%以上に設けられていることがより好ましく、90%以上に設けられていることがさらに好ましい。この場合に、容器の内容物を遮光層12によって好適に外光から保護することができる。また、遮光性積層体10が容器に装着された場合に、遮蔽層13は、遮光層12全体を覆っていることが好ましい。この場合に、上述の意匠性を効果的に発揮することができる。
【実施例0059】
<実施例1および比較例1の遮光性積層体の作製>
図3に示す断面を備える実施例1の遮光性積層体10を作製した。まず、遮光層形成用インキとして、ウレタン樹脂およびセルロース樹脂からなるバインダ樹脂中に、蒸着法により作製された薄膜状のアルミニウム片を添加し、溶剤を用いて混錬した銀インキを用意した。銀インキの組成は、アルミニウム片1.5重量%、樹脂6%および残部の溶剤であった。
【0060】
また、遮蔽層形成用インキとして、ウレタン樹脂およびアクリル樹脂からなるバインダ樹脂中に、酸化チタン顔料および各種添加剤を添加し、溶剤を用いて混錬した白インキを用意した。遮蔽層形成用インキの白インキの組成は、酸化チタン48重量%、樹脂12重量%、添加剤5重量%および溶剤35重量%であった。
【0061】
また、滑り性付与層形成用インキとして、ウレタン樹脂およびアクリル樹脂からなるバインダ樹脂中に、酸化チタン顔料および各種添加剤を添加し、溶剤を用いて混錬した白インキを用意した。滑り性付与層形成用インキの白インキの組成は、酸化チタン37重量%、樹脂12重量%、添加剤5重量%および溶剤46重量%であった。
【0062】
次に、基材11として厚さ30μmのシュリンクフィルムであるPETフィルムを用意した。次に、基材11の表面11a上に遮光層形成用インキを印刷して乾燥させることにより、銀インキ層よりなる遮光層12を形成した。遮光層12を構成する銀インキ層中のアルミニウム片の含有量は、当該銀インキ層の20重量%程度であった。
【0063】
次に、遮光層12を構成する銀インキ層上に遮蔽層形成用インキを印刷して乾燥させる工程を2回繰り返して行なうことによって、2層の白インキ層13a,13bよりなる遮蔽層13を形成した。遮蔽層13を構成する2層の白インキ層中の酸化チタンの含有量は当該2層の白インキ層の74重量%程度であった。
【0064】
また、基材11の裏面11b上に滑り性付与層形成用インキを印刷して乾燥させることにより白インキ層よりなる滑り性付与層16を形成するとともに、遮蔽層13上にオーバープリントニスを印刷することによって表面保護層17を形成した。
【0065】
また、基材11の表面11a上ではなく、基材11の裏面11b上に遮光層12を形成し、遮光層12上に滑り性付与層16を形成したこと以外は実施例1と同一の方法および同一の条件により、図4に示す断面を備える比較例1の遮光性積層体10を作製した。比較例1は、従来の遮光性積層体を意図して作製されたものである。
【0066】
<実施例1および比較例1の遮光性積層体の評価>
上記のようにして作製した実施例1および比較例1の遮光性積層体のそれぞれについて波長250nm以上800nm以下の光に対する全光線透過率[%]を測定した。その結果を図5に示す。図5の横軸が光の波長[nm]を示し、図5の縦軸が全光線透過率[%]を示している。全光線透過率は、実施例1および比較例1の遮光性積層体10の表面保護層17側から光を入射し、滑り性付与層16を通過した光の量をJIS K 7375:2008に基づいて測定された。
【0067】
図5に示すように、実施例1と比較例1の遮光性積層体の全光線透過率にはほとんど差が見られなかった。したがって、実施例1の遮光性積層体は、従来の遮光性積層体と同等程度の遮光性を備えていると考えられる。
【0068】
<実施例2および比較例2の遮光性積層体の作製>
図6に示す断面を備える実施例2の遮光性積層体10を作製した。実施例2の遮光性積層体10は、滑り性付与層16および表面保護層17を形成しなかったこと以外は図3に示す断面を備える実施例1の遮光性積層体10と同一の方法および同一の条件で作製した。
【0069】
また、図7に示す断面を備える比較例2の遮光性積層体10を作製した。比較例2の遮光性積層体10は、滑り性付与層16および表面保護層17を形成しなかったこと以外は図4に示す断面を備える比較例1の遮光性積層体10と同一の方法および同一の条件で作製した。比較例2は、従来の遮光性積層体を意図して作製されたものである。
【0070】
上記のようにして作製した実施例2および比較例2の遮光性積層体のそれぞれの2層の白インキ層13a,13bよりなる遮蔽層13について、JIS Z 8781-4に基づいてa*値およびb*値を算出して求めた。また、c*値は、c*値=[(a*値)2+(b*値)21/2の式から算出した。その結果を表1に示す。
【0071】
なお、表1には、実施例2および比較例2の遮光性積層体のそれぞれのa*値、b*値およびc*値と、これらの値についての実施例2の値と比較例2の値との差が示されている。
【0072】
【表1】
【0073】
表1に示すように、実施例2の遮光性積層体のb*値は、比較例2の遮光性積層体のb*値よりも低い値であった。したがって、実施例2の遮光性積層体の遮蔽層13の色目は、従来の遮光性積層体の遮蔽層13よりも青みがかった白に見えることが確認された。
【0074】
また、表1に示すように、実施例2の遮光性積層体のc*値は、比較例2の遮光性積層体のc*値よりも高い値であった。したがって、実施例2の遮光性積層体の遮蔽層13は従来の遮光性積層体の遮蔽層13よりも彩度が高いことが確認された。
【0075】
以上のように実施形態および実施例について説明を行なったが、上述の各実施形態および各実施例の構成を適宜組み合わせることも当初から予定している。
【0076】
今回開示された実施形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0077】
10 遮光性積層体、11 基材、11a 表面、11b 裏面、12 遮光層、13 遮蔽層、13a,13b 白インキ層、14 デザイン層、15 下地層、16 滑り性付与層、17 表面保護層。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7