(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022176520
(43)【公開日】2022-11-30
(54)【発明の名称】燃料供給装置
(51)【国際特許分類】
F02M 37/00 20060101AFI20221122BHJP
【FI】
F02M37/00 R
F02M37/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021083001
(22)【出願日】2021-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】亀井 優
(72)【発明者】
【氏名】蟹江 崇
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 聡志
(72)【発明者】
【氏名】宇野 拓真
(57)【要約】
【課題】簡易な機構で燃料の圧力変化を抑制すること。さらに、圧力変化を抑制する機構における燃料漏れ対策を容易にすることである。
【解決手段】燃料タンク内の燃料をエンジンの燃料噴射装置に圧送する燃料供給装置であって、燃料噴射装置と連通する燃料供給通路230と、燃料供給通路230に燃料を圧送する燃料ポンプと、燃料供給通路230内の燃料の圧力を調整する圧力調整弁40と、燃料タンク内に設置されて、燃料ポンプと圧力調整弁40とが収納されており、内部に燃料供給通路230が形成されているハウジング320とを有しており、圧力調整弁40は、ハウジング320内に形成された燃料供給通路230の端部324に接続されており、ハウジング320内の燃料供給通路230の端部324の容積が燃料の圧力の上昇に伴い増加可能に構成されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンク内の燃料をエンジンの燃料噴射装置に圧送する燃料供給装置であって、
前記燃料噴射装置と連通する燃料供給通路と、
前記燃料供給通路に燃料を圧送する燃料ポンプと、
前記燃料供給通路内の燃料の圧力を調整する圧力調整弁と、
前記燃料タンク内に設置されて、前記燃料ポンプと前記圧力調整弁とが収納されており、内部に前記燃料供給通路が形成されているハウジングと、
を有しており、
前記圧力調整弁は、前記ハウジング内に形成された前記燃料供給通路の端部に接続されており、
前記ハウジング内の前記燃料供給通路の端部の容積が前記燃料の圧力の上昇に伴い増加可能に構成されている燃料供給装置。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料供給装置であって、
前記圧力調整弁のケーシングと前記ハウジングの内壁面間には、シール材が設けられており、
前記圧力調整弁のケーシングが前記シール材にシールされた状態で前記ハウジングの内壁面に沿って移動することで、前記燃料供給通路の端部の容積が増減可能に構成されている燃料供給装置。
【請求項3】
請求項2に記載の燃料供給装置であって、
前記圧力調整弁のケーシング内には、前記燃料供給通路の燃料の圧力を受けるダイヤフラムと、前記ダイヤフラムと一体化されて、前記燃料供給通路内の燃料を前記燃料タンク内に戻す流路を開閉する弁体と、前記燃料の圧力に対して反対側から前記ダイヤフラムを押圧する調圧バネとを備えており、
前記圧力調整弁のケーシングの外側には、そのケーシングを前記燃料供給通路の燃料の圧力と反対方向から押圧する戻りバネが設けられている燃料供給装置。
【請求項4】
請求項3に記載の燃料供給装置であって、
前記戻りバネのバネ力が前記調圧バネのバネ力よりも大きな値に設定されている燃料供給装置。
【請求項5】
請求項1に記載の燃料供給装置であって、
前記圧力調整弁は、前記燃料供給通路の燃料の圧力を受ける受圧面を備える弁体と、前記燃料の圧力に対して反対側から前記弁体を押圧する調圧バネとを備えており、
前記弁体と前記ハウジングの内壁面間には、シール材が設けられており、
前記弁体が前記シール材にシールされた状態で前記ハウジングの内壁面に沿って移動することで、前記燃料供給通路の端部の容積が増減可能に構成されている燃料供給装置。
【請求項6】
請求項5に記載の燃料供給装置であって、
前記ハウジングの壁部には、前記燃料供給通路内の燃料を前記燃料タンク内に戻す燃料戻し穴が形成されており、
前記弁体は、前記燃料戻し穴を閉じる位置と前記燃料戻し穴を開く位置間で、前記ハウジングの内壁面に沿って移動可能に構成されている燃料供給装置。
【請求項7】
請求項5に記載の燃料供給装置であって、
前記弁体の受圧面には、前記燃料供給通路内の燃料を前記燃料タンク内に戻す燃料戻し穴が形成されている燃料供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料タンク内の燃料をエンジンの燃料噴射装置に圧送する燃料供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記した燃料供給装置に関連する技術が特許文献1に記載されている。特許文献1に記載された燃料供給装置100は、
図12に示すように、燃料タンク101内の燃料をエンジンの燃料噴射装置109に圧送する装置である。燃料供給装置100は、燃料供給通路103と、燃料供給通路103に燃料を圧送する燃料タンク101内のポンプモジュール102とを備えている。ポンプモジュール102は、燃料ポンプ104と、燃料の圧力を調整する圧力調整弁105、及び燃料フィルタ106等とから構成されている。また、燃料供給装置100の燃料供給通路103には、ポンプモジュール102から燃料噴射装置109間の位置に燃料の圧力変化を抑制するための第1、第2パルセーションダンパ107,108が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記燃料供給装置100では、燃料の圧力変化を抑制するため、燃料供給通路103に複数のパルセーションダンパ107,108を設けている。このため、燃料供給装置100の構成が複雑化する。さらに、パルセーションダンパ107,108をポンプモジュール102と燃料噴射装置109間の燃料供給通路103に設けるため、パルセーションダンパ107,108の経年劣化等による燃料漏れ対策にコストが掛かる。
【0005】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、簡易な機構で燃料の圧力変化を抑制すること。さらに、圧力変化を抑制する機構における燃料漏れ対策を容易にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題は、各発明によって解決される。第1の発明は、燃料タンク内の燃料をエンジンの燃料噴射装置に圧送する燃料供給装置であって、前記燃料噴射装置と連通する燃料供給通路と、前記燃料供給通路に燃料を圧送する燃料ポンプと、前記燃料供給通路内の燃料の圧力を調整する圧力調整弁と、前記燃料タンク内に設置されて、前記燃料ポンプと前記圧力調整弁とが収納されており、内部に前記燃料供給通路が形成されているハウジングとを有しており、前記圧力調整弁は、前記ハウジング内に形成された前記燃料供給通路の端部に接続されており、前記ハウジング内の前記燃料供給通路の端部の容積が前記燃料の圧力の上昇に伴い増加可能に構成されている。
【0007】
本発明によると、ハウジング内の燃料供給通路の端部の容積が燃料の圧力の上昇に伴い増加可能に構成されている。このため、エンジンにおける燃料噴射のタイミングの関係で、燃料の圧力が設定圧より増加した場合でも、燃料供給通路の端部の容積が増加することで、燃料の圧力上昇を抑制できる。即ち、ハウジング内の燃料供給通路の端部の容積を変えることで、燃料の圧力変動を抑えられるため、機構が簡単になる。また、内部に燃料供給通路が形成されているハウジングが燃料タンク内に配置されているため、燃料供給通路の端部で、万が一、経年劣化による破損等が発生しても、燃料は燃料タンクに戻される。このため、エンジンルームなどの燃料供給装置外への燃料の流出を防止できる。
【0008】
第2の発明によると、圧力調整弁のケーシングとハウジングの内壁面間には、シール材が設けられており、前記圧力調整弁のケーシングが前記シール材にシールされた状態で前記ハウジングの内壁面に沿って移動することで、前記燃料供給通路の端部の容積が増減可能に構成されている。このため、燃料の圧力の脈動を効率的に抑えることができる。
【0009】
第3の発明によると、圧力調整弁のケーシング内には、燃料供給通路の燃料の圧力を受けるダイヤフラムと、前記ダイヤフラムと一体化されて、前記燃料供給通路内の燃料を前記燃料タンク内に戻す流路を開閉する弁体と、前記燃料の圧力に対して反対側から前記ダイヤフラムを押圧する調圧バネとを備えており、前記圧力調整弁のケーシングの外側には、そのケーシングを前記燃料供給通路の燃料の圧力と反対方向から押圧する戻りバネが設けられている。このため、燃料の圧力が上昇した後、急に低下した場合等に戻りバネの働きにより、圧力調整弁のケーシングが速やかに元の位置に戻る。
【0010】
第4の発明によると、戻りバネのバネ力が調圧バネのバネ力よりも大きな値に設定されている。これにより、燃料供給通路の燃料の圧力が設定圧力に保持されて、弁体が流路を開いている状態(調圧バネが変形している状態)でも、戻りバネのバネ力で圧力調整弁のケーシングは所定の位置に保持されている。そして、前記燃料の圧力が設定圧力よりも上昇した場合に、戻りバネのバネ力に抗して圧力調整弁のケーシングが燃料供給通路の容積を増加させる方向に移動可能となる。
【0011】
第5の発明によると、圧力調整弁は、燃料供給通路の燃料の圧力を受ける受圧面を備える弁体と、前記燃料の圧力に対して反対側から前記弁体を押圧する調圧バネとを備えており、前記弁体と前記ハウジングの内壁面間には、シール材が設けられており、前記弁体が前記シール材にシールされた状態で前記ハウジングの内壁面に沿って移動することで、前記燃料供給通路の端部の容積が増減可能に構成されている。このため、燃料の圧力の脈動を効率的に抑えることができる。
【0012】
第6の発明によると、ハウジングの壁部には、燃料供給通路内の燃料を燃料タンク内に戻す燃料戻し穴が形成されており、弁体は、前記燃料戻し穴を閉じる位置と前記燃料戻し穴を開く位置間で、前記ハウジングの内壁面に沿って移動可能に構成されている。このため、弁体が燃料戻し穴を閉じている状態、即ち、燃料の圧力が設定圧力よりも低い状態で、燃料の圧力の脈動を吸収できる。また、弁体が燃料戻し穴を開いている状態、即ち、燃料の圧力が設定圧力の状態で、燃料の圧力の脈動を吸収できる。
【0013】
第7の発明によると、弁体の受圧面には、燃料供給通路内の燃料を前記燃料タンク内に戻す燃料戻し穴が形成されている。このため、燃料の圧力が設定圧力よりも低い状態から燃料の圧力が設定圧力の状態までの範囲で燃料の圧力の脈動を吸収できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、簡易な機構で燃料の脈動を抑制できる。さらに、圧力変化を抑制する機構における燃料漏れ対策を容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態1に係る燃料供給装置(燃料供給装置本体部)の全体斜視図である。
【
図2】前記燃料供給装置のポンプユニットの縦断面図である。
【
図3】前記燃料供給装置とエンジンの燃料噴射装置との関係を表す配管系統図である。
【
図4】前記ポンプユニットの圧力調整弁の設置構造を表す縦断面図(
図2のIV矢視拡大図)である。
【
図5】前記圧力調整弁のケーシングとポンプユニットのハウジング(レギュレータケース部)の内壁面間のシール材の縦断面図である。
【
図6】前記圧力調整弁の開弁状態を表す縦断面図である。
【
図7】前記圧力調整弁のケーシングがハウジング(レギュレータケース部)内を下方に移動した状態を表す縦断面図である。
【
図8】本発明の実施形態2に係る燃料供給装置の圧力調整弁を表す縦断面図である。
【
図9】前記燃料供給装置の圧力調整弁の動作を表す縦断面図である。
【
図10】変更例1に係る燃料供給装置の圧力調整弁を表す縦断面図である。
【
図11】変更例1に係る燃料供給装置の圧力調整弁の平断面図(
図10のXI-XI平断面図)である。
【
図12】従来の燃料供給装置とエンジンの燃料噴射装置との関係を表す配管系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
〔実施形態1〕
以下、
図1~
図7に基づいて、本発明の実施形態1に係る燃料供給装置について説明する。本実施形態に係る燃料供給装置10は、自動車等の車両に搭載される装置であり、燃料タンクT内の燃料をエンジンの燃料噴射装置18に圧送する。
【0017】
<燃料供給装置10の概要について>
燃料供給装置10は、
図3の配管系統図に示すように、燃料タンクT内に設置される燃料供給装置本体部20と、燃料供給装置本体部20から吐出された燃料をエンジンの燃料噴射装置18に導く燃料供給配管13とを備えている。燃料供給装置本体部20は、
図1に示すように、燃料タンクTの上部開口(図示省略)を塞ぐ蓋部材21と、燃料タンクTの底部に設置されるポンプユニット30とから構成されている。
【0018】
蓋部材21は、
図1に示すように、円板状の蓋板22を備えており、その蓋板22に側面視L字状の燃料吐出ポート23が設けられている。そして、燃料吐出ポート23に対し、
図3に示す燃料供給配管13の一端が接続されている。また、蓋部材21の蓋板22には、電気用コネクタ24と、キャニスタ(蒸発燃料処理装置)用の配管接続ポート25と、空気抜き用のブリーザパイプ26とが設けられている。
【0019】
<燃料供給装置10のポンプユニット30について>
ポンプユニット30は、
図1~
図3に示すように、燃料を圧送する部分であり、燃料ポンプ32と圧力調整弁40と燃料フィルタ37と燃料レベルゲージ38(
図1参照)とを備えている。そして、燃料ポンプ32、圧力調整弁40、及び燃料フィルタ37が、
図2に示すように、ハウジング300に収納されている。
【0020】
<ポンプユニット30のハウジング300について>
ハウジング300は、
図1、
図2に示すように、大径の主容器部310と、その主容器部310の中央に位置し、縦長に形成された中央容器部320とを備えており、前記主容器部310の底面側が開口311(
図2参照)となっている。そして、
図2に示すように、ハウジング300の主容器部310の開口311の位置に、燃料をろ過する燃料フィルタ37が取付けられている。主容器部310の内側は、燃料フィルタ37を通過した燃料を貯留するサブタンク313となっている。
【0021】
ハウジング300の中央容器部320は、
図2に示すように、燃料ポンプ32のモータ部32mを収納する略円筒形のポンプケース部322と、圧力調整弁40を収納する略円筒形のレギュレータケース部324とを備えている。中央容器部320のポンプケース部322とレギュレータケース部324とは横並び状態で配置されており、そのポンプケース部322とレギュレータケース部324との高さ方向中央位置よりも下側が主容器部310内に配置されている。
【0022】
中央容器部320のポンプケース部322は、下端側が開放されている。このため、燃料ポンプ32のモータ部32mは、中央容器部320のポンプケース部322に対して下側から挿入される。そして、燃料ポンプ32のモータ部32mが中央容器部320のポンプケース部322に挿入された状態で、燃料ポンプ32の下部のポンプ部32pがポンプケース部322から下方に突出するようになる。これにより、燃料ポンプ32のポンプ部32pは、燃料フィルタ37を通過した燃料タンクT内の燃料とサブタンク313内の燃料とを吸引できるようになる。
【0023】
ハウジング300の中央容器部320の上部には、
図2に示すように、燃料供給通路230が水平に形成されている。燃料供給通路230の入口部231は、下側に折り曲げられた状態でポンプケース部322の上端位置に設けられており、その入口部231に対して燃料ポンプ32(モータ部32m)の上端の吐出ポート32zが接続されている。また、燃料供給通路230の途中位置には、レギュレータケース部324と連通する連通路233が接続されている。そして、燃料供給通路230の出口部232が、
図1に示すように、連結チューブ235を介して蓋部材21の燃料吐出ポート23におけるタンク内側接続部23eに接続されている。また、ハウジング300の主容器部310の側面には、燃料タンクT内の燃料の液面レベルを測定するためのフロート式の燃料レベルゲージ38が取付けられている。
【0024】
<中央容器部320のレギュレータケース部324について>
中央容器部320のレギュレータケース部324は、上記したように、圧力調整弁40を収納する部分である。中央容器部320のレギュレータケース部324は、
図4に示すように、下側が開放されており、圧力調整弁40を下方から挿入できるように構成されている。そして、レギュレータケース部324の下側が圧力調整弁40の挿入後、キャップ状のケース蓋部326によって塞がれている。即ち、圧力調整弁40は、燃料供給通路230に対して連通路233、レギュレータケース部324を介して接続されている。
【0025】
レギュレータケース部324は、
図4に示すように、圧力調整弁40の上部ケーシング41の外径寸法より若干大きな内径寸法の上側収容室324eと、その上側収容室324eの下側に段差を介して形成されて、上側収容室324eより大径の下端収容室324xとを備えている。また、レギュレータケース部324の下端外周面には、鉤状のフック部324fが円周方向に等間隔で複数個形成されている。また、レギュレータケース部324のフック部324fの下端面は、圧力調整弁40のフランジ部43に対して上方から当接するストッパ面324sとなっている。
【0026】
レギュレータケース部324の下端収容室324xには、
図4に示すように、その下端収容室324xの内壁面と圧力調整弁40の上部ケーシング41の外周面間をシールするシール材51と筒状のスペーサ53とが設けられている。これにより、圧力調整弁40は、シール材51によってシールされた状態でレギュレータケース部324の下端収容室324xの内壁面に沿って上下方向に一定寸法だけ移動が可能になる。ここで、シール材51は、
図5に示すように、円環状に形成されており、断面形状が上側で広く下側で狭い略逆台形状に形成されている。即ち、シール材51は、内周傾斜面51eと、外周傾斜面51rと、平坦な下面51dと、断面V字形の上側受圧面51vとを備えている。
【0027】
そして、シール材51の上側受圧面51vで、
図4に示すように、レギュレータケース部324内の燃料の圧力を受けられるように構成されている。また、シール材51の内周傾斜面51eが圧力調整弁40の上部ケーシング41の外周面に面接触し、外周傾斜面51rがレギュレータケース部324の下端収容室324xの内壁面に面接触し、平坦な下面51dがスペーサ53の上面に当接するようになる。即ち、シール材51によってレギュレータケース部324と圧力調整弁40の上部ケーシング41間がシールされる。ここで、シール材51とスペーサ53とは、圧力調整弁40に保持されている。このため、圧力調整弁40がレギュレータケース部324の内壁面に沿って上下移動する際は、シール材51とスペーサ53とは圧力調整弁40と共に移動するようになる。なお、シール材51は、レギュレータケース部324に対して摺動抵抗が低いものを使用するのが好ましい。
【0028】
<ケース蓋部326について>
レギュレータケース部324の下側を塞ぐケース蓋部326は、
図4に示すように、圧力調整弁40の下部ケーシング42を収納する蓋本体部326mと、蓋本体部326mの上端外周面に設けられた連結壁部326zとから構成されている。ケース蓋部326の連結壁部326zは、レギュレータケース部324の下端部を囲える内径寸法で形成されている。そして、ケース蓋部326の連結壁部326zには、レギュレータケース部324のフック部324fに対応する位置に、それらのフック部324fがそれぞれ係合可能な係合穴326kが形成されている。
【0029】
即ち、ケース蓋部326の連結壁部326zの係合穴326kに対して、
図4に示すように、レギュレータケース部324のフック部324fが係合することで、ケース蓋部326はレギュレータケース部324の下部を塞いだ状態で、レギュレータケース部324に固定される。ケース蓋部326の蓋本体部326mの上端面は、圧力調整弁40のフランジ部43に対して下方から当接するストッパ面326sとなっている。ここで、ケース蓋部326がレギュレータケース部324に固定された状態で、レギュレータケース部324のフック部324fのストッパ面324sとケース蓋部326の蓋本体部326mのストッパ面326sとは、予め決められた距離だけ離れている。そして、レギュレータケース部324のストッパ面324sとケース蓋部326のストッパ面326s間に圧力調整弁40のフランジ部43が配置されている。
【0030】
このため、圧力調整弁40のフランジ部43はレギュレータケース部324のストッパ面324sとケース蓋部326のストッパ面326s間で上下方向に移動が可能になる。即ち、圧力調整弁40は、フランジ部43がレギュレータケース部324のストッパ面324sに当接する上限位置と、ケース蓋部326のストッパ面326sに当接する下限位置間で上下方向に移動が可能になる。また、ケース蓋部326の蓋本体部326mの下端部には、圧力調整弁40を押し上げる方向に付勢された戻りバネ55の下端部を受けるバネ受け部326bが設けられている。さらに、バネ受け部326bの中心側には、燃料をサブタンク313に戻す戻し穴326rが形成されている。
【0031】
<圧力調整弁40について>
圧力調整弁40は、燃料供給通路230内の燃料の圧力を調整する弁である。圧力調整弁40は、
図4に示すように、フランジ部43の位置で互いに連結される略円筒状の上部ケーシング41と下部ケーシング42とを備えている。前記フランジ部43の位置には、上部ケーシング41内の空間と下部ケーシング42内の空間とを仕切るダイヤフラム44の端縁が両ケーシング41,42に挟まれた状態で固定されている。そして、ダイヤフラム44の中央には、上下方向に貫通する流路45fを備える弁体45が固定されている。上部ケーシング41の中央には、下端位置に弁座面46vを備える弁座部材46が固定されている。そして、ダイヤフラム44の弁体45の上端が弁座部材46の弁座面46vに当接することで(
図4参照)、弁体45の流路45fが塞がれる。
【0032】
下部ケーシング42内には、
図4に示すように、燃料の圧力を設定するための調圧バネ47が設けられている。また、下部ケーシング42の下端中央部には、下端開口42hが形成されている。さらに、上部ケーシング41の上部には、燃料供給通路230と連通しているレギュレータケース部324内の燃料を上部ケーシング41内に導く燃料流入通路41eが形成されている。これにより、燃料供給通路230内の燃料の圧力がダイヤフラム44に対して上方から加わるようになる。また、ダイヤフラム44には、そのダイヤフラム44を上方に押圧するように付勢された調圧バネ47のバネ力が加わるようになる。即ち、ダイヤフラム44には、燃料の圧力と反対側から調圧バネ47のバネ力が加わるようになる。
【0033】
そして、燃料供給通路230内の燃料の圧力が設定圧力よりも上昇し、前記圧力に起因する力が調圧バネ47のバネ力よりも大きくなると、
図6に示すように、ダイヤフラム44が調圧バネ47のバネ力に抗して下方に変形する。これにより、弁体45の上端が弁座面46vから離れて、弁体45の流路45fが開かれる。この状態で、燃料供給通路230内の燃料の一部が圧力調整弁40の弁体45の流路45f、下部ケーシング42の下端開口42h、及びケース蓋部326の戻し穴326rを通ってサブタンク313に戻される。即ち、圧力調整弁40は、燃料の圧力が低下するように動作する。また、燃料供給通路230内の燃料の圧力が設定圧力よりも低くなると、調圧バネ47のバネ力でダイヤフラム44が上方に押圧され、弁体45が弁座面46vに当接して流路45fが閉じられる。即ち、圧力調整弁40は、燃料の圧力が上昇するように動作する。
【0034】
<燃料供給装置10の動作について>
燃料供給装置10のポンプユニット30では、燃料供給通路230内の燃料の圧力が設定圧力に調整されるように、圧力調整弁40の調圧バネ47のバネ力が設定されている。ポンプユニット30において燃料ポンプ32が駆動されると、
図2に示すように、燃料タンクT内の燃料が燃料フィルタ37を通して燃料ポンプ32に吸引され、吐出ポート32zからハウジング300内の燃料供給通路230に吐出される。そして、燃料供給通路230に圧送された燃料は、連通路233を介してレギュレータケース部324内に送られ、圧力調整弁40によって設定圧力に調整された状態で燃料供給通路230の出口部232から吐出される。
【0035】
燃料供給通路230の出口部232から吐出された燃料は、
図1に示すように、連結チューブ235を介して蓋部材21の燃料吐出ポート23に送られ、
図3に示すように、燃料吐出ポート23から燃料供給配管13を通してエンジンの燃料噴射装置18に送られる。前述のように、圧力調整弁40は、燃料の圧力が設定圧力に調整されるように調圧バネ47のバネ力が設定されている。このため、燃料の圧力が設定圧力に調整されている状態では、
図6に示すように、圧力調整弁40の弁体45は燃料ポンプ32の吐出状況に応じて流路45fの開閉を行なっている。
【0036】
そして、圧力調整弁40の弁体45の流路45fを通過した燃料は、圧力調整弁40の下端開口42h、及びケース蓋部326の戻し穴326rを通過してハウジング300のサブタンク313に戻されるようになる。ここで、戻りバネ55のバネ力は、燃料の圧力を設定圧力に調整する調圧バネ47のバネ力よりも大きくなるように調整されている。このため、燃料の圧力が設定圧力のときには、圧力調整弁40は、
図6に示すように、戻りバネ55のバネ力を受けてフランジ部43の上面がレギュレータケース部324のストッパ面324sに当接する上限位置に保持されている。そして、この状態におけるレギュレータケース部324の内容積はS0となる。
【0037】
車両の運転中には、運転状況等の関係で、燃料の圧力が大きく脈動することがある。前記脈動により、例えば、燃料供給通路230内の燃料の圧力が設定圧力より大幅に上昇すると、
図7に示すように、圧力調整弁40のダイヤフラム44が調圧バネ47のバネ力に抗して下方に変形し、弁体45の流路45fが開放される。さらに、圧力調整弁40の上部ケーシング41の上面側が燃料の圧力を受けることで、圧力調整弁40の全体が戻りバネ55のバネ力に抗して下方に移動するようになる。
【0038】
そして、圧力調整弁40が寸法Hだけ下方に移動し、フランジ部43の下面がケース蓋部326のストッパ面326sに当接した状態で、圧力調整弁40の下降が停止し、圧力調整弁40は下限位置に保持される。この状態におけるレギュレータケース部324の内容積をS1となる。即ち、レギュレータケース部324の内容積は、(S1-S0)だけ増加する。これにより、燃料供給通路230内の燃料の圧力上昇が抑制される。また、前記脈動により、燃料供給通路230内の燃料の圧力が大幅に低下すると、圧力調整弁40は戻りバネ55のバネ力により速やかに上限位置まで戻される。
【0039】
<実施形態1に係る用語と本発明に係る用語との対応>
本実施形態に係る燃料供給装置10における燃料供給配管13、ハウジング300の燃料供給通路230、連通路233、及びレギュレータケース部324の内部空間が本発明の燃料供給通路に相当する。また、レギュレータケース部324の内部空間が本発明の燃料供給通路の端部に相当する。また、圧力調整弁40の上部ケーシング41と下部ケーシング42とが本発明の圧力調整弁のケーシングに相当する。さらに、圧力調整弁40の弁体45の流路45f,42h,326rが本発明における燃料供給通路内の燃料を燃料タンクに戻す流路に相当する。
【0040】
<本実施形態に係る燃料供給装置10の長所について>
本実施形態に係る燃料供給装置10によると、ハウジング300内の燃料供給通路230の端部(レギュレータケース部324)の容積が燃料の圧力の上昇に伴い増加可能に構成されている。このため、エンジンにおける燃料噴射のタイミングの関係で、燃料の圧力が設定圧より上昇した場合でも、燃料供給通路230の端部の容積が増加することで、燃料の圧力上昇を抑制できる。即ち、ハウジング300内の燃料供給通路230の端部の容積を変えることで、燃料の圧力変動を抑えられるため、機構が簡単になる。また、ハウジング300が燃料タンクT内に配置されているため、燃料供給通路の端部(レギュレータケース部324)で、万が一、経年劣化による破損等が発生しても、燃料は燃料タンクTに戻される。このため、エンジンルームなどの燃料供給装置外への燃料の流出を防止できる。
【0041】
〔実施形態2〕
以下、
図8から
図11に基づいて、本発明の実施形態2に係る燃料供給装置について説明する。本実施形態に係る燃料供給装置は、実施形態1に係る燃料供給装置10におけるレギュレータケース部324の構成と、圧力調整弁40との構成を変更したものであり、その他の構成については実施形態1に係る燃料供給装置10の構成と同様である。このため、実施形態1に係る燃料供給装置10と同様の機構については、同一符号を付して説明を省略する。
【0042】
本実施形態に係る燃料供給装置では、
図8に示すように、レギュレータケース部324に対してピストン状の弁体60を挿入することで、実施形態1に係る燃料供給装置10の圧力調整弁40と同様の機能を持たせている。即ち、本実施形態に係る圧力調整弁(図番省略)の弁体60は、円筒部64と、その円筒部64の上端開口を塞ぐ円盤状の受圧板62とから構成されている。そして、受圧板62の上面が燃料の圧力を受ける受圧面となっている。弁体60の円筒部64の外周面とレギュレータケース部324の内壁面間はシール材51によってシールされている。即ち、弁体60は、シール材51によってシールされている状態で、レギュレータケース部324内を上下方向に移動が可能となる。なお、シール材51は、レギュレータケース部324に対して摺動抵抗が低いものを使用するのが好ましい。また、弁体60の受圧板62とケース蓋部326のバネ受け部326b間には、弁体60を押し上げる方向に付勢された調圧バネ66が設けられている。また、レギュレータケース部324の壁部には、レギュレータケース部324内の燃料をサブタンク313に戻すための燃料戻し穴324hが所定高さ位置に形成されている。
【0043】
燃料供給通路230(レギュレータケース部324)内の燃料の圧力が設定圧力よりも低い状態では、
図8に示すように、調圧バネ66のバネ力で弁体60が押し上げられ、弁体60の円筒部64がレギュレータケース部324の燃料戻し穴324hを塞いでいる。この状態で、燃料の圧力が上昇すると、燃料の圧力で弁体60が調圧バネ66のバネ力に抗して下方に移動し、レギュレータケース部324の内容積が増加することで、燃料の圧力上昇が抑制される。
【0044】
また、燃料の圧力が設定圧力よりも上昇すると、燃料の圧力で弁体60が調圧バネ66のバネ力に抗してさらに下方に移動し、
図9に示すように、レギュレータケース部324の内容積が増加するとともに、レギュレータケース部324の燃料戻し穴324hが開放される。即ち、レギュレータケース部324の内容積が増加することと、レギュレータケース部324内の燃料がサブタンク313に戻されることで、燃料の圧力が設定圧力になるように調整される。また、前記脈動の発生により、燃料の圧力が設定圧力よりも上昇すると、燃料の圧力で弁体60は調圧バネ66のバネ力に抗してさらに下方に移動する。これにより、レギュレータケース部324の内容積がさらに増加し、燃料の圧力上昇が抑制される。このように、実施形態1の場合と比較して簡単な構成で燃料の圧力の調整が可能になる。
【0045】
<変更例1>
ここで、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、本実施形態では、レギュレータケース部324の壁部に燃料戻し穴324hを形成する例を示した。しかし、レギュレータケース部324の壁部に燃料戻し穴324hを形成する代わりに、
図10、
図11に示すように、弁体60の受圧板62に小径の貫通穴からなる複数の燃料戻し穴62hを形成する構成でも可能である。これにより、燃料ポンプ32により吐出され、圧力調整弁40に調圧された際に生じた余剰燃料が、常に、弁体60の受圧板62の燃料戻し穴62hを通してサブタンク313に戻されるようになる。そして、燃料の圧力の上昇に伴って弁体60が調圧バネ66のバネ力に抗して押し下げられる。これにより、レギュレータケース部324の内容積が増加し、燃料の圧力上昇が抑制される。
【0046】
また、本実施形態1、2では、圧力調整弁40、あるいは弁体60を上下方向に移動可能なようにレギュレータケース部324内に収納することで、レギュレータケース部324の内容積を増減させる例を示した。しかし、圧力調整弁40、あるいは弁体60を上下方向に移動させる代わりに、レギュレータケース部324の上部の壁部、即ち、圧力調整弁40等よりも上方に位置する壁部を拡径方向、あるいは縮径方向に変形させることで、レギュレータケース部324の内容積を増減させる構成でも可能である。また、本実施形態1、2における燃料噴射方法は、直噴、またはポート噴射のどちらでも良い。
【符号の説明】
【0047】
10・・・燃料供給装置
13・・・燃料供給配管(燃料供給通路)
18・・・燃料噴射装置
T・・・・燃料タンク
32・・・燃料ポンプ
40・・・圧力調整弁
41・・・上部ケーシング(ケーシング)
42・・・下部ケーシング(ケーシング)
44・・・ダイヤフラム
45・・・弁体
45f・・流路(燃料供給通路内の燃料を燃料タンクに戻す流路)
47・・・調圧バネ
51・・・シール材
55・・・戻りバネ
230・・燃料供給通路
233・・連通路(燃料供給通路)
300・・ハウジング
313・・サブタンク(燃料タンク)
324・・レギュレータケース部(燃料供給通路の端部)
60・・・弁体
62h・・燃料戻し穴
62・・・受圧板
66・・・調圧バネ
324h・燃料戻し穴