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特開2022-176530レーザラスタ走査型画像取得装置及びこれを用いた画像表示装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022176530
(43)【公開日】2022-11-30
(54)【発明の名称】レーザラスタ走査型画像取得装置及びこれを用いた画像表示装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/24 20060101AFI20221122BHJP
   G02B 26/10 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
G01B11/24 F
G02B26/10 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021083016
(22)【出願日】2021-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】303035709
【氏名又は名称】株式会社オプセル
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(72)【発明者】
【氏名】小俣 公夫
【テーマコード(参考)】
2F065
2H045
【Fターム(参考)】
2F065AA04
2F065AA06
2F065AA19
2F065AA54
2F065BB02
2F065CC25
2F065DD06
2F065FF10
2F065GG04
2F065GG23
2F065HH04
2F065JJ01
2F065LL20
2F065LL59
2F065LL62
2F065MM02
2F065NN06
2F065PP22
2F065QQ03
2F065QQ28
2F065QQ29
2F065UU06
2H045AA01
2H045BA13
2H045BA24
2H045BA32
2H045CA64
(57)【要約】      (修正有)
【課題】テレセントリック光学系に3波長のレーザ光を採用し、1回の走査で得た反射光量に基づいて高さ特定することにより、精密な画像データを短時間で得ることが可能なレーザラスタ走査型画像取得装置及びこれを用いた画像表示装置を提供する。
【解決手段】レーザラスタ走査画像取得手段は、赤色、緑色、青色のレーザ光を出力するレーザ光源部と、各色レーザ光を合成する光合成部と、走査光を被観察面に照射するテレセントリックfθレンズ26と、反射光を赤色、緑色、青色の反射光に分離する光分離部と、該光分離部でそれぞれ導かれた反射光を取り込む3つの受光部とを備え、テレセントリックfθレンズで集光された各色レーザ光は、同一スポット径で重ね合わされ、赤色レーザ光及び青色レーザ光の両焦点位置PR,PBが緑色レーザ光の焦点位置PGを中心に上下に等間隔で設定されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光源を用いた共焦点光学系を有するレーザラスタ走査画像取得手段を備え、観察対象を一定の速度で移動させながら被観察面にレーザラスタ走査光を複数回照射することによって被観察面の画像情報を取得可能なレーザラスタ走査型画像取得装置であって、
前記レーザラスタ走査画像取得手段は、赤色、緑色、青色の異なる波長の3つのレーザ光を平行光束として出力するレーザ光源部と、前記3つのレーザ光を合成する光合成部と、該光合成部からのレーザ光を反射してレーザラスタ走査用の走査光に変換する走査ポリゴンミラーと、該走査ポリゴンミラーからの走査光を前記被観察面に垂直に照射するテレセントリックfθレンズと、前記被観察面からの反射光を前記テレセントリックfθレンズにより平行光束に変換し、前記走査ポリゴンミラーで反射させた後に前記レーザ光源部からのレーザ光と分離するビームスプリッタと、該ビームスプリッタで分離した前記反射光を赤色、緑色、青色の異なる波長の3つの反射光に分離する光分離部と、該光分離部でそれぞれ導かれた反射光を取り込む3つの受光部とを備え、
前記受光部は、前記光分離部からの反射光を集光する結像レンズと、前記テレセントリックfθレンズの焦点位置と共役の位置に設置した共焦点絞りと、前記結像レンズにより集光されて前記共焦点絞りを通過した前記反射光の光量情報を計測する受光素子とを有し、
前記テレセントリックfθレンズで集光された各色レーザ光は、同一スポット径で重ね合わされ、赤色レーザ光及び青色レーザ光の両焦点位置が緑色レーザ光の焦点位置を中心に上下に等間隔で設定されていることを特徴とするレーザラスタ走査型画像取得装置。
【請求項2】
前記レーザ光源部と前記テレセントリックfθレンズとの間の光路上には、焦点距離を変化させる可変焦点レンズが設けられていることを特徴とする請求項1記載のレーザラスタ走査型画像取得装置。
【請求項3】
前記被観察面を1回走査する毎に、前記走査光の走査方向と直交する方向に、かつ、前記走査光の幅分だけ前記観察対象を移動させる制御手段を備えていることを特徴とする請求項1又は2記載のレーザラスタ走査型画像取得装置。
【請求項4】
前記テレセントリックfθレンズは、交換可能であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のレーザラスタ走査型画像取得装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項記載のレーザラスタ走査型画像取得装置を用いた画像表示装置であって、
画像表示手段と、前記受光部で計測された光量情報に基づいて前記被観察面の高さ情報を特定する高さ情報特定手段と、前記高さ情報と前記高さ情報に関連付けられる時刻データとに基づいて前記画像表示手段での表示対象となる3次元画像を生成する3次元画像生成手段とを備えていることを特徴とする画像表示装置。
【請求項6】
前記高さ情報に関連付けられた画素値を使用して前記画像表示手段での表示対象となる2次元画像を生成する2次元画像生成手段を備えていることを特徴とする請求項5記載の画像表示装置。
【請求項7】
前記画像表示手段に、前記3次元画像及び前記2次元画像の両方又はいずれか一方を表示可能な請求項6記載の画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザラスタ走査型画像取得装置及びこれを用いた画像表示装置に関し、特に、被観察面の高さ情報を高速かつ高精度で取得可能なレーザラスタ走査型画像取得装置及びこれを用いた画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、物体表面における凸凹や傷、付着物などを検知するために、物体形状の画像データを取得して表面状況を知ろうとする光学装置が提案され、各種産業分野への使用が考えられている。例えば、顕微鏡型のものでは、RGBの波長帯を含む照明光を発生させる光源と、該光源からのライン状の照明光をスキャナにより走査する照明光学系と、検出光を波長分散させる分光プリズムを有する検出光学系と、波長分散させた検出光をRGBのカラーフィルタを通して検出する検出器(CCDセンサ)とを備えている。このような光学装置では、検出光量に応じた検出信号を制御装置(PC)に出力し、演算で画素毎の検出信号を合成することにより、観察物体の高さ情報を画像的に取得することができる(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-185457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
昨今、半導体を始めとする電子デバイス分野では、5G(第5世代移動通信システム)対応の回路基板の精密化や、配線パターンの複雑化に伴い、測定や検査ラインの一層の高速化が求められている。しかも、検査数量や検査領域そのものの増大も見込まれることから、従来の検査装置では実用に耐えないという問題がある。とりわけ、5Gの回路基板では、深さや高さの検査が重要な要素となっているが、特許文献1のような共焦点光学系を用いたものは、高さ方向の計測を行うために、焦点位置を段階的にずらし、その都度反射光量を計測してピーク位置を求める必要がある。そのため、高精度な3次元画像データを得るためには、変化させる焦点位置の段数を増やす必要があり、非常に長い計測時間がかかってしまう。
【0005】
そこで本発明は、テレセントリック光学系に3波長のレーザ光を採用し、1回の走査で得た反射光量に基づいて高さを特定することにより、精密な画像データを短時間で得ることが可能なレーザラスタ走査型画像取得装置及びこれを用いた画像表示装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明のレーザラスタ走査型画像取得装置は、レーザ光源を用いた共焦点光学系を有するレーザラスタ走査画像取得手段を備え、観察対象を一定の速度で移動させながら被観察面にレーザラスタ走査光を複数回照射することによって被観察面の画像情報を取得可能なレーザラスタ走査型画像取得装置であって、前記レーザラスタ走査画像取得手段は、赤色、緑色、青色の異なる波長の3つのレーザ光を平行光束として出力するレーザ光源部と、前記3つのレーザ光を合成する光合成部と、該光合成部からのレーザ光を反射してレーザラスタ走査用の走査光に変換する走査ポリゴンミラーと、該走査ポリゴンミラーからの走査光を前記被観察面に垂直に照射するテレセントリックfθレンズと、前記被観察面からの反射光を前記テレセントリックfθレンズにより平行光束に変換し、前記走査ポリゴンミラーで反射させた後に前記レーザ光源部からのレーザ光と分離するビームスプリッタと、該ビームスプリッタで分離した前記反射光を赤色、緑色、青色の異なる波長の3つの反射光に分離する光分離部と、該光分離部でそれぞれ導かれた反射光を取り込む3つの受光部とを備え、前記受光部は、前記光分離部からの反射光を集光する結像レンズと、前記テレセントリックfθレンズの焦点位置と共役の位置に設置した共焦点絞りと、前記結像レンズにより集光されて前記共焦点絞りを通過した前記反射光の光量情報を計測する受光素子とを有し、前記テレセントリックfθレンズで集光された各色レーザ光は、同一スポット径で重ね合わされ、赤色レーザ光及び青色レーザ光の両焦点位置が緑色レーザ光の焦点位置を中心に上下に等間隔で設定されていることを特徴としている。
【0007】
また、前記レーザ光源部と前記テレセントリックfθレンズとの間の光路上には、焦点距離を変化させる可変焦点レンズが設けられていることを特徴としている。さらに、前記被観察面を1回走査する毎に、前記走査光の走査方向と直交する方向に、かつ、前記走査光の幅分だけ前記観察対象を移動させる制御手段を備えていることを特徴としている。加えて、前記テレセントリックfθレンズは、交換可能であることを特徴としている。
【0008】
また、本発明の画像表示装置は、前記レーザラスタ走査型画像取得装置を用いた画像表示装置であって、画像表示手段と、前記受光部で計測された光量情報に基づいて前記被観察面の高さ情報を特定する高さ情報特定手段と、前記高さ情報と前記高さ情報に関連付けられる時刻データとに基づいて前記画像表示手段での表示対象となる3次元画像を生成する3次元画像生成手段とを備えていることを特徴としている。さらに、前記高さ情報に関連付けられた画素値を使用して前記画像表示手段での表示対象となる2次元画像を生成する2次元画像生成手段を備えていることを特徴としている。加えて、前記画像表示手段に、前記3次元画像及び前記2次元画像の両方又はいずれか一方を表示可能であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、レーザラスタ走査画像取得手段において、テレセントリックな共焦点光学系に赤色、緑色、青色の異なる波長のレーザ光を出力する3つのレーザ光源部と、これに対応する3つの受光部とを備え、被観察面への走査時に、同一スポット径で重ね合わせた各色レーザ光のうちの赤色レーザ光及び青色レーザ光の両焦点位置を、緑色レーザ光の焦点位置を中心に上下に等間隔で設定しているので、最大反射光量が得られる高さ方向の基準点間を上から下まで等分した高さ距離(段数)を規定することができる。これにより、1回の走査で得た3波長の反射光量の大小と高さとの関係を導き出せば、2次元走査の任意の位置における高さを特定することが可能となり、高さ情報に基づいて生成される3次元画像から観察対象の表面状況を短時間で精度よく知ることができる。
【0010】
また、被観察面からの反射光をテレセントリックfθレンズの焦点面と共役の位置に設置した共焦点絞りを通過させ、余分な反射光をカットしてピントの合った光だけが受光素子に受光されるので、3次元画像の高精細化、高コントラスト化に寄与するものである。とりわけ、表示色を設定する際には、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)のRGB値で定義することにより、実際の色情報に限りなく近いカラー画像が得られることから、表示色の再現性にも優れている。すなわち、観察対象の判別性(識別性)を高め、例えば、基板検査においては、どこが欠陥であるかを見た目からもすぐに突き止めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一形態例におけるレーザラスタ走査型画像取得装置及び画像表示装置の全体構成を示す図である。
図2】レーザラスタ走査画像取得手段の構成を示す図である。
図3】観察対象の表面の拡大図である。
図4】各色レーザ光における焦点距離と反射光量との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1乃至図4は、本発明のレーザラスタ走査型画像取得装置及び画像表示装置の一形態例を示している。レーザラスタ走査型画像取得装置10は、図1に示すように、主に、レーザ光源を用いた共焦点光学系を有するレーザラスタ走査画像取得手段11を基台12上の支柱13に上下動可能に設けたものである。使用時には、手動フォーカスノブ14を回動操作して電動ステージ15上に載置した観察対象の被観察面(図示せず)に焦点を合わせ、電動ステージ15を、例えば、水平方向(図1の紙面方向)へ移動させながら、この移動方向に直交する走査方向(図1の左右方向)をもつレーザラスタ走査用の走査光を被観察面に対して複数回照射する。これにより、レーザラスタ走査画像取得手段11では、走査光の反射光を受けて、被観察面の画像データ(画像情報)を取得することが可能になる。
【0013】
これらの各種機器を一体的に備えた装置本体16は、制御用のクライアントPC(Personal Computer)17や前記画像データを表示するためのモニタ(画像表示手段)18などからなる画像表示装置19にネットワーク接続され、画像処理システムの構成要素となる。個々の配線について図示は省略するが、例えば、レーザラスタ走査画像取得手段11及び電動ステージ15は、システム制御ボックス20を介してクライアントPC17のI/Oポート21に接続されている。また、レーザラスタ走査画像取得手段11の作動は、光学系制御ボックス22からの指令を受けてなされ、出力信号はクライアントPC17のA/D変換部23を介してコントローラ(図示せず)へ送信される。コントローラは、各種インターフェースと共にレーザラスタ走査画像取得手段11の一要素としても機能し、システムの作動に必要な各種制御プログラム(アプリケーション)を実行するCPUを中心に構成されている。
【0014】
電動ステージ15は、モータを組み込んだ複数の移動機構部15aによって3次元的に移動可能である。システム制御ボックス20は、レーザラスタ走査画像取得手段11や電動ステージ15の制御手段として機能するもので、コントローラからの指令を受けて、例えば、被観察面を1回走査する毎に、走査光の走査方向と直交する方向に、かつ、走査光の幅分、例えば、1μm分だけ観察対象を移動させる制御を行う。A/D変換部23は、被観察面の情報であるアナログ信号をデジタル信号に変換するもので、例えば、レーザラスタ走査画像取得手段11の受光素子で計測した光量データ(光量情報)を出力する。
【0015】
付属のマウス24やキーボード25などを操作して装置本体16を作動させると、制御プログラムの実行により被観察面の高さデータ(高さ情報)を1回の走査で取得する制御が行われる。そして、後述する高さ情報特定処理を行って取得した任意の位置における高さデータは、走査ごとに入力された時点の時刻データ(時刻情報)と関連付けられる。こうして、被観察面の移動方向に、つまり時系列順に全走査分つなげられた高さデータは、立体視することが可能なフルカラー3次元画像(立体画像)と、広範囲にわたって焦点の合ったフルカラー2次元画像(平面画像)とに変換され、モニタ18の表示画面で各画像を同時に並べて、又は、各画像を1つずつ個別に確認することができる。
【0016】
レーザラスタ走査画像取得手段11は、図2に示すように、各種部品を収容した筐体11aと、該筐体11aの下端部に交換可能に装着されたテレセントリックfθレンズ(走査レンズ)26とを有しており、具体的には、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の異なる波長の3つのレーザ光を平行光束として出力するレーザ光源部27と、前記3つのレーザ光を合成する光合成部28と、該光合成部28からのレーザ光を反射してレーザラスタ走査用の走査光Lsに変換する走査ポリゴンミラー29と、該走査ポリゴンミラー29からの走査光Lsを被観察面に垂直に照射するテレセントリックfθレンズ26と、被観察面からの反射光をテレセントリックfθレンズ26により平行光束に変換し、走査ポリゴンミラー29で反射させた後にレーザ光源部27からのレーザ光と分離するビームスプリッタ30と、該ビームスプリッタ30で分離した反射光を赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の異なる波長の3つの反射光Lrに分離する光分離部31と、該光分離部31でそれぞれ導かれた反射光Lrを取り込む3つの受光部(フォトマルセンサ)32と、該受光部32で計測した光量データを前記クライアントPC17のA/D変換部23へ出力するための出力部33とを有している。
【0017】
光合成部28は、全反射ミラー28a、ダイクロイックミラー28b及びビームコンバイナ28cを用いて構成され、赤色(R)及び緑色(G)レーザ光源部27から射出したレーザ光は、各ミラー28a,28bで反射した後、ビームコンバイナ28cでそれぞれ反射し、青色(B)レーザ光源部27から射出したレーザ光と共通の光路へ導かれる。この合成光は、互いにピーク波長の異なる赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の波長帯域の光を重ね合わせた分光特性を有している。赤色(R)レーザ光は、例えば、600nm以上650nm以下の波長域内にピーク波長を有することが好ましい。緑色(G)レーザ光は、例えば、500nm以上550nm以下の波長域内にピーク波長を有することが好ましい。青色(B)レーザ光は、例えば、450nm以上480nm以下の波長域内にピーク波長を有することが好ましい。
【0018】
光分離部31は、3枚のダイクロイックミラー31a,31b,31cを用いて構成され、ビームスプリッタ30からの反射光を赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の各色の反射光Lrに分離し、分離した各色の反射光Lrをこれらに対応する受光部32に入射させる。受光部32は、光分離部31からの反射光を集光する結像レンズ34と、テレセントリックfθレンズ26の焦点位置(結像位置)と共役の位置に設置した共焦点絞り(ピンホール)35と、結像レンズ34により集光されて共焦点絞り35を通過した反射光の光量を計測する受光素子(図示せず)とを有している。
【0019】
テレセントリックfθレンズ(走査レンズ)26は、内蔵される複数枚のレンズを精度良く加工して組み合わせたもので、入射したレーザ光を平らな平面に対して垂直に集光するレンズである。これにより、走査ポリゴンミラー29の反射面29aで反射されたレーザ光は、テレセントリック光学系に対して斜めに入射しても、テレセントリック光学系からは互いに平行な関係で出射する。また、レーザ光のスポット(集光点)は各波長によってその径が異なるため、集光された各色レーザ光が同一スポット径で重ね合わされるように設定されている。さらに、こうしたレンズ設計において、各色レーザ光は同一箇所に集光されるものの、焦点位置、すなわち図2において、PR,PG,PBとして図示されている面の高さ方向(上下方向)の位置についてはそれぞれ異なるように設定されている。具体的には、赤色(R)レーザ光及び青色(B)レーザ光の両焦点位置PR,PBが緑色(G)レーザ光の焦点位置PGを中心に上下に等間隔で設定されている。したがって、下から赤色焦点位置PR、緑色焦点位置PG、青色焦点位置PBの順で、例えば50μmずつ間隔をあけて設定することで、その間を上から下まで1μmずつ100等分した高さ距離(段数)が規定される。
【0020】
また、レーザ光源部27とテレセントリックfθレンズ26との間の光路上には、焦点距離を変化させる可変焦点レンズ36が設けられている。可変焦点レンズ36は、例えば、液体レンズである。液体レンズは、フォーカス機構(図示せず)に印加される電圧に応じて焦点距離を変更可能な構成となっている。フォーカス機構は、液体レンズの焦点距離を調節する駆動部であって、液体レンズの所定箇所に電圧を加えるための電極を含む電気回路である。
【0021】
さらに、走査ポリゴンミラー29に対応する位置に原点センサ37及び原点レーザ発生部38が設けられている。原点センサ37は、原点レーザ発生部38による投光を走査ポリゴンミラー29の反射面29aを介して受光しながら、該反射面29aの回転位置が、反射面29aによるレーザ光の走査が開始可能な位置にきたときに原点信号を出力する。言い換えると、原点センサ37は、これからレーザ光の走査を行う反射面29aの角度が所定の角度位置になったときに原点信号を出力する。ここで、走査ポリゴンミラー29が10面体からなる反射面29aを有する場合、原点センサ37は、走査ポリゴンミラー29が1回転する周期で、10回原点信号を出力することになる。原点信号はコントローラに送られ、原点センサ37が原点信号を出力してから時間差をもってレーザ光の走査方向に沿った走査が開始される。すなわち、原点信号は、レーザラスタ走査画像取得手段11による走査光Lsの走査開始タイミングを示す情報となる。
【0022】
以下では、レーザラスタ走査型画像取得装置10により被観察面の画像データを取得して、これを画像表示装置19により視覚的に表示させる手順について説明する。ここでの観察対象(図示せず)は、例えば、大きさ(直径)が8インチの電子回路基板などが挙げられる。まず、電源を投入してシステムを起動した後、キャリブレーションを行ってXYZ軸の3次元座標系が設定される。このとき、可変焦点レンズ36において焦点距離が適宜調節され、テレセントリック光学系に生じる色収差が補正される。
【0023】
観察対象を電動ステージ15上に載置すると、被観察面はレーザラスタ走査画像取得手段11からの走査光Lsが移動方向と直交する方向に切断するように配置される。そして、所定の計測開始操作を行うと、コントローラによって装置本体16が自動制御される。ここで、レーザラスタ走査画像取得手段11による走査光Lsは同じ位置に照射されるが、一方で、被観察面は電動ステージ15上において一定量(数μm単位)で移動される。例えば、10面体からなる反射面29aを有する走査ポリゴンミラー29が秒速400回転で高速回転されると、各反射面29aからの反射光を受けて被観察面に対して1秒間に4000回、一定の走査速度を維持しながら走査が行われる。これに対応して、電動ステージ15は、被観察面の移動速度が秒速4mmで移動するように制御される。すなわち、1μmの幅をもつ走査光Lsであれば、被観察面を1回走査する毎に、その幅分(1μm)だけ移動させる制御がなされる。
【0024】
レーザ光の走査を行うと、被観察面の反射光Lrは、戻り光として結像レンズ34から共焦点絞り35に集光される。共焦点絞り35は、被観察面の焦点の範囲内の光のみを通過させるため、受光素子に取り込んで生成される赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の画像信号は、ピントの合った焦点位置の画素値として、それぞれ、例えば256階調(0~255)で表される色情報が関連付けられ、コントラストの良い共焦点画像データになる。一方、コントローラでは、こうした共焦点画像データに基づいて被観察面の高さデータを生成する。
【0025】
前記高さデータの生成は、コントローラ(高さ情報特定手段)が実行する制御プログラムの高さ情報特定処理によってなされる。高さ情報特定処理は、1回の走査で取得した光量データ、すなわち、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の各波長の反射光量の大きさを比較して行われる。図3に示すように模式的に表すと、被観察面の高さ方向(Z方向)において、設定基準面となる0位置に対して、緑色(G)レーザ光の焦点位置PGを一致させ、ここから、例えば、赤色(R)レーザ光の焦点位置PRが-50μmの位置、青色(B)レーザ光の焦点位置PBが+50μmの位置にそれぞれ設定される。このとき、赤色(R)レーザ光の焦点位置PRと青色(B)レーザ光の焦点位置PBとの間を上から下まで1μmずつ100等分した高さ距離が規定される。
【0026】
また、図4の焦点距離と反射光量との関係を示すグラフから分かるように、各焦点位置PR,PG,PBに対応して反射光量のピーク(受光量分布の最大値)が発生していることから、レーザ光の走査方向(Y方向)に沿った走査が行われると、走査方向の1画素に対応する位置において、例えば、赤色(R)0%,緑色(G)100%,青色(B)0%で、緑色が強く出たのであれば、これを高さに換算すると、0位置(高さ=0)として高さデータが特定される。また、各反射光量が、赤色(R)100%,緑色(G)0%,青色(B)0%で、赤色が強く出たのであれば、これを高さに換算すると、-50μmとして高さデータが特定される。これと逆に、各反射光量が、赤色(R)0%,緑色(G)0%,青色(B)100%で、青色が強く出たのであれば、+50μmとして高さデータが特定される。さらに、各反射光量が、赤色(R)0%,緑色(G)50%,青色(B)50%で、緑色及び青色の2色が同程度の強さで出たのであれば、プラスの符号が付されて、+25μmとして高さデータが特定される。
【0027】
こうして、色の反射率の大きさから被観察面の高さ位置(深さ位置)を特定し、高さデータは、走査ポリゴンミラー29の走査角度に対応する時刻データに関連付けられた後、クライアントPC17の記憶部にそれぞれ記憶される。
【0028】
ここで、3次元画像生成手段として機能するコントローラでは、自動的に、あるいはユーザ操作に応じて、時刻データに関連付けられた高さデータを記憶部から読み出し、例えば、あらかじめ規定したXYZ座標空間内に時系列に従って配置することにより、3次元画像合成処理を行う。こうして被観察面の移動方向に全走査分つなげた3次元画像データは、表示上の処理がなされた後、RGB値で表されるフルカラー3次元画像としてモニタ18の表示画面に表示される。
【0029】
また、2次元画像生成手段としても機能するコントローラでは、高さデータを記憶部から読み出すときに、その高さ位置の画素データ(画素値)を抽出し、この画素データを、例えば、あらかじめ規定したXY座標平面上に時系列に従って配置することにより、2次元画像合成処理を行う。こうして被観察面の移動方向に全走査分つなげた2次元画像データは、表示上の処理がなされた後、RGB値で表されるフルカラー2次元画像として、前記3次元画像と同時に並べて、又は、1つずつ個別にモニタ18の表示画面に表示される。この2次元画像は、被観察面の全ての場所に焦点の合った、いわゆる全焦点画像である。
【0030】
このように、本発明によれば、レーザラスタ走査画像取得手段11において、テレセントリックな共焦点光学系に赤色、緑色、青色の異なる波長のレーザ光を出力する3つのレーザ光源部27と、これに対応する3つの受光部32とを備え、被観察面への走査時に、同一スポット径で重ね合わせた各色レーザ光(走査光Ls)のうちの赤色レーザ光及び青色レーザ光の両焦点位置PR,PBを、緑色レーザ光の焦点位置PGを中心に上下に等間隔で設定しているので、最大反射光量が得られる高さ方向の基準点間を上から下まで等分した高さ距離(段数)を規定することができる。これにより、1回の走査で得た3波長の反射光量の大小と高さとの関係を導き出せば、2次元走査の任意の位置における高さを特定することが可能となり、高さデータに基づいて生成される3次元画像から観察対象の表面状況を短時間で精度よく知ることができる。
【0031】
また、被観察面からの反射光Lrをテレセントリックfθレンズ26の焦点面と共役の位置に設置した共焦点絞り35を通過させ、余分な反射光をカットしてピントの合った光だけが受光素子に受光されるので、3次元画像の高精細化、高コントラスト化に寄与するものである。とりわけ、表示色を設定する際には、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)のRGB値で定義することにより、実際の色情報に限りなく近いカラー画像が得られることから、表示色の再現性にも優れている。すなわち、観察対象の判別性(識別性)を高め、例えば、基板検査においては、どこが欠陥であるかを見た目からもすぐに突き止めることができる。
【0032】
さらに、レーザ光源部27とテレセントリックfθレンズ26との間の光路上に可変焦点レンズ36を設けているので、テレセントリック系における色収差を補正する上で好ましく、液体レンズを組み込んだ光学系では、焦点距離の変更が容易であることから、大小様々な観察対象物を最適視野で観察、解析することが可能となる。また、液体レンズを組み込んだ光学系では、高さデータの高さの変更も容易にできるので、これにより、その後の欠陥解析や製品への不良低減のための製作条件の見直し、適正な製作条件への変更指示を行なうための重要な評価結果を提供できることになる。
【0033】
また、被観察面を1回走査する毎に、走査光の走査方向と直交する方向に、かつ、走査光の幅分だけ被観察面を移動させる制御手段を備えているので、高さデータに基づいて得られた3次元画像データの解像度がより高められ、画像データ取得の高速化と高解像度化を両立させることができる。さらに、テレセントリックfθレンズ26が交換可能であるため、光学的なパラメータを容易に変更できることから、実用性に優れたものである。
【0034】
加えて、3次元及び2次元の各画像を生成する画像生成手段を備えているので、3次元表示(立体画像表示)による良好な視認性を確保しつつ、ユーザが直感的に把握可能な、すなわち、各焦点位置の画素値を用いて、2次元の、どこでも焦点が合った2次元表示(全焦点画像表示)が達成される。これにより、被観察面の全体にわたって鮮明なカラー画像が得られるとともに、画像データの圧縮にも対応できることから、各画像を表示させる際の表示速度や応答速度の高速化に資するものである。
【0035】
なお、本発明は、前記形態例に限定されるものではなく、テレセントリック光学系には連続している3波長のレーザ光源を用い、各反射光をそれぞれ独立の検知領域で検知する方式とすればよく、被観察面の大きさや形状などに応じて、装置本体や周辺機器などの構成を適宜に変更することができる。また、高さ情報特定処理におけるアルゴリズムも適宜に変更可能である。さらに、高さデータは、通常、走査光の幅が小さいほど高精度なものが得られるが、本実施形態例では走査ポリゴンミラーからの走査光の幅が、最小1μm程度になっていることから、生成される3次元画像及び2次元画像のそれぞれの画素値もミクロンオーダの精度が達成できる。
【符号の説明】
【0036】
10…レーザラスタ走査型画像取得装置、11…レーザラスタ走査画像取得手段、11a…筐体、12…基台、13…支柱、14…手動フォーカスノブ、15…電動ステージ、15a…移動機構部、16…装置本体、17…PC、18…モニタ、19…画像表示装置、20…システム制御ボックス、21…I/Oポート、22…光学系制御ボックス、23…A/D変換部、24…マウス、25…キーボード、26…テレセントリックfθレンズ、27…レーザ光源部、28…光合成部、28a…全反射ミラー、28b…ダイクロイックミラー、28c…ビームコンバイナ、29…走査ポリゴンミラー、29a…反射面、30…ビームスプリッタ、31…光分離部、31a,31b,31c…ダイクロイックミラー、32…受光部、33…出力部、34…結像レンズ、35…共焦点絞り、36…可変焦点レンズ、37…原点センサ、38…原点レーザ発生部
図1
図2
図3
図4