(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022176535
(43)【公開日】2022-11-30
(54)【発明の名称】電力取引システム及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/06 20120101AFI20221122BHJP
【FI】
G06Q50/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021083021
(22)【出願日】2021-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】曹 民圭
(72)【発明者】
【氏名】石井 良和
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 直
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】電力を適切に取引することができる電力取引システム及びプログラムを提供する。
【解決手段】電力取引システムは、優先度付きの需要入札情報と供給入札情報を取得するマッチング関連データ取得部100と、需要入札情報と供給入札情報の予測発現率を求める発現率予測部200と、需要入札情報と供給入札情報の予測約定率を求める約定率予測部300と、予測発現率及び予測約定率に基づいて優先度を切り替えながら需要入札情報と供給入札情報をマッチングさせるマッチング部400と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
優先度付きの需要入札情報と供給入札情報を取得するマッチング関連データ取得部と、
前記需要入札情報と前記供給入札情報の予測発現率を求める発現率予測部と、
前記需要入札情報と前記供給入札情報の予測約定率を求める約定率予測部と、
前記予測発現率及び前記予測約定率に基づいて優先度を切り替えながら前記需要入札情報と前記供給入札情報をマッチングさせるマッチング部とを備えることを特徴とする電力取引システム。
【請求項2】
需要入札情報及び、又は前記供給入札情報の値に範囲を設定することを特徴とする請求項1に記載の電力取引システム。
【請求項3】
供給電力を、再生可能エネルギー安定分、再生可能エネルギー変動分、再生可能エネルギー充放電能力、再生可能エネルギー放電能力、非再生可能エネルギー、非再生可能エネルギー充放電能力、非再生可能エネルギー放電能力に区分して、それぞれの供給電力において前記発現率予測部と前記約定率予測部が前記予測発現率と前記予測約定率を予測することを特徴とする請求項1に記載の電力取引システム。
【請求項4】
前記再生可能エネルギー安定分、前記再生可能エネルギー変動分を再エネの予測値と実績値に基づく信頼度区間を算出し、天候変動の場合、変動後の天候に基づく信頼度区間と予測値を用いて前記予測発現率と前記予測約定率を更新することを特徴とする請求項3に記載の電力取引システム。
【請求項5】
前記マッチング部は、次の優先度のマッチング条件に切り替える前に、再生可能エネルギー安定分または再生可能エネルギー変動分と再生可能エネルギー充放電能力の組み合わせを検索して、その組み合わせによる前記供給入札情報と前記需要入札情報とが一致する場合にマッチングさせることを特徴とする請求項3に記載の電力取引システム。
【請求項6】
優先度付きの需要入札情報と供給入札情報を取得するマッチング関連データ取得部と、
前記需要入札情報と前記供給入札情報の予測発現率を求める発現率予測部と、
前記需要入札情報と前記供給入札情報の予測約定率を求める約定率予測部と、
前記予測発現率及び前記予測約定率に基づいて優先度を切り替えながら前記需要入札情報と前記供給入札情報をマッチングさせるマッチング部とをコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力取引システム及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の火力発電などの集中型電源だけではなく、分散型電源が普及しつつある。分散型電源は、発電型の太陽光発電やコジェネレーションシステム、蓄電型の蓄電池やヒートポンプなど、多様な種類がある。一方で、電力の需要側では、消費電力をすべて再生可能エネルギーからの発電量とするRE100宣言などの動きがある。まだ再生可能エネルギーの量が十分ではないため、消費電力のうち50%を再生可能エネルギーからの発電量とするRE50も考えられる。消費電力のうちどのくらいの割合を再生可能エネルギーからの発電量とするかをRE比率と呼ぶ。需要側が求めるRE比率は一概ではなく、需要側のニーズによって多様化すると考えられる。
【0003】
発電や蓄電などの供給側と需要側が電力取引システムを介して電力を取引する。JEPX(Japan Election Power eXchange)など既存の電力取引システムがあるが、欧州では地域内で電力を取引する電力取引システムなども出現しているため、既存の電力取引システムだけではなく、新たな形の電力取引システムも考える必要がある。
既存の電力取引システムは、電力の種類として、再生可能エネルギー電力と非再生可能エネルギー電力を区分なく取引をする。そして蓄電池などからの電力供給能力の取引も十分に顧慮していない。取引単位も主に30分単位などで決まっていることが多い。このような電力取引システムは、電力を一種類に標準化した形で取引するため、取引自体は効率よく可能であるが、電力の需要側と供給側のニーズがすべて反映できないという問題がある。
【0004】
供給側と需要側のそれぞれの本来の電力へのニーズを考えてみる。供給側の発電型設備がコジェネレーションシステムの場合、定格運転をしたら一番効率がいい。したがって、ある一定時間と量で構成されるブロックごと売るほうがいい。または、ブロックの中の一定部分を自家消費することが決まった場合は、でこぼこのような形のブロックを売るほうがいい。
再生可能エネルギーの場合は、予測をしても実際の出力は、予測値と異なったりする。したがって、電力の需要側に安定的に電力を供給することが難しい。一方で需要側は、安定的な再生可能エネルギーを求めるニーズがあるが、再生可能エネルギーの余剰電力で水素を生産するなど、クリーンで安く、出力の不確実性が高くていいという供給へのニーズもある。このように多様なニーズに対応するためには、多様なマッチング条件で取引できることが望ましい。供給側と需要側の多様なニーズは取引上の多様な条件で現れる。ここで供給と需要が示す多様なマッチング条件とは、電力の種類、取引希望条件がある。取引形態としてはザラバ方式を想定する。
【0005】
特許文献1には、取引機会を多数のユーザに与えることができる電力取引装置等を提供することを目的とする電力取引装置として、売電側又は買電側での約定の割合である約定率を決定する約定率決定手段を備える電力取引装置を示している。しかし、特許文献1には、需要側と供給側の多様なニーズを反映できる取引に関する記載はない。
取引システム上で需要側と供給側のマッチング条件に該当する入札が常に十分ある場合は、入札価格と入札量を取引システムの主なパラメータとして用いて、マッチングを実施すればいい。しかし、マッチング条件が多様化すると入札が十分ではなく、常に該当する入札がない場合が想定できる。また、取引システムに参加する需要側または供給側が少ない場合も、同様の状況となる。
【0006】
そこで、本発明の課題は、電力を適切に取引することができる電力取引システムを提供することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1には、取引機会を多数のユーザに与えることができる電力取引装置等を提供することを目的とする電力取引装置として、売電側又は買電側での約定の割合である約定率を決定する約定率決定手段を備える電力取引装置を示している。しかし、需要側と供給側の多様なニーズを反映できる取引に関する記載はない。
取引システム上で需要側と供給側のマッチング条件に該当する入札が常に十分ある場合は、入札価格と入札量を取引システムの主なパラメータとして用いて、マッチングを実施すればいい。しかし、マッチング条件が多様化すると入札が十分ではなく、常に該当する入札がない場合が想定できる。また、取引システムに参加する需要側または供給側が少ない場合も、同様の状況となる。
【0009】
そこで、本発明の課題は、電力を適切に取引することができる電力取引システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の一形態は、優先度付きの需要入札情報と供給入札情報を取得するマッチング関連データ取得部と、前記需要入札情報と前記供給入札情報の予測発現率を求める発現率予測部と、前記需要入札情報と前記供給入札情報の予測約定率を求める約定率予測部と、前記予測発現率及び前記予測約定率に基づいて優先度を切り替えながら前記需要入札情報と前記供給入札情報をマッチングさせるマッチング部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電力を適切に取引することができる電力取引システムを提供することができる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施例1に係る電力取引システムに関わるシステムの構成図である。
【
図2】本発明の実施例1に係る電力取引システムのハードウェア構成図である。
【
図3】本発明の実施例1に係る電力取引システムの機能ブロック図である。
【
図4】本発明の実施例1に係る電力取引システムで用いる需要入札情報の例を示す図である。
【
図5】本発明の実施例1に係る電力取引システムに関し需要入札情報をグラフ化したものである。
【
図6】本発明の実施例1に係る電力取引システムで用いる供給入札情報の例を示す図である。
【
図7】本発明の実施例1に係る電力取引システムに関し供給入札情報をグラフ化したものである。
【
図8】本発明の実施例1に係る電力取引システムに関し検索の結果を時間軸で表した図である。
【
図9】本発明の実施例1に係る電力取引システムのマッチング部の処理を示すフローチャートである。
【
図10】本発明の実施例3に係る電力取引システムの機能ブロック図である。
【
図11】再生可能エネルギーの予測値の例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施例について複数例説明する。
【実施例0014】
図1は、実施例1に係る電力取引システムに関わるシステムの構成図である。電力取引システム10は、ここでは、電力の需要側である需要側システム1と、その設備である需要設備11とを備えている。また、電力の供給側である供給側システム2と、その設備である供給設備21とを備えている。各需要設備11と各供給設備21は電力供給ライン3で接続されている。
需要側システム1と供給側システム2とは通信ネットワーク4を介して電力取引システム10と接続されている。需要側システム1と供給側システム2とは通信ネットワーク4を介してそれぞれ需要設備11と供給設備21と接続している。電力取引システム10が通信ネットワーク4を介して需要設備11や供給設備21と接続していてもよい。需要側システム1は、需要設備11から電力消費量などの需要情報を取得して電力取引システム10で電力を取引する需要入札情報を作成する。供給側システム2は、供給設備21から発電量などの供給情報を取得して電力取引システム10で電力を取引する供給入札情報を作成する。電力取引システム10は、需要入札情報と供給入札情報を取得して、需要と供給をマッチングさせるシステムである。
【0015】
図2は、電力取引システム10のハードウェア構成図である。電力取引システム10の機能は、汎用コンピュータやサーバ等の電子計算機(及びその周辺機器)によって実現される。
図2に示すように、電力取引システム10は、そのハードウェア構成として、CPU811(Central Processing Unit)と、メモリ812と、ストレージ813と、入力装置814と、通信インタフェース815と、表示装置816と、を含んで構成されている。CPU811は、メモリ812やストレージ813に記憶されているプログラムに基づいて、所定の演算処理を実行する。メモリ812は、データを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)を含んでいる。ストレージ813として、例えば、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)が用いられる。
【0016】
ストレージ813には、プログラム817がセットアップされていて、このプログラム817に基づいて電力取引システム10は以下に説明する各種処理を実行する。
入力装置814は、ユーザの操作によって、データの入力を行うものである。このような入力装置814として、キーボードやマウスの他、タッチパネル等が用いられる。なお、入力装置814として、管理用パソコンのキーボードやマウスが用いられてもよい。通信インタフェース815は、電力取引システム10と需要側システム1、供給側システム2、需要設備11、供給設備21との間で、通信ネットワーク4を介してデータのやり取りが行われる際、所定のプロトコルに基づくデータ変換を行う。
【0017】
表示装置816は、例えば、液晶ディスプレイであり、CPU811の演算結果等を表示する。なお、表示装置816として、管理用パソコンのディスプレイが用いられてもよい。電力取引システム10は、1つの装置(サーバ等)で構成されていてもよいし、また、通信線やネットワークを介して、複数の装置(図示せず)が所定に接続された構成であってもよい。
【0018】
図3は、電力取引システム10の機能ブロック図である。電力取引システム10は、マッチング関連データ取得部100、発現率予測部200、約定率予測部300、マッチング部400、取引管理部500の機能を備えている。マッチング関連データをマッチング関連データ取得部100で取得し、発現率予測部200と約定率予測部300で発現率と約定率を予測し、それに基づいてマッチング部400で需要と供給の入札をマッチングさせる。マッチング部400のマッチング結果は取引管理部500で管理する。
【0019】
<マッチング関連データ取得部>
マッチング関連データ取得部100では、需要入札情報、供給入札情報、天気予報、過去のマッチング履歴を含むデータを取得する。需要入札情報、供給入札情報を併せて入札情報と呼ぶ場合もある。
【0020】
需要入札情報は、電力の需要側のマッチング条件を含む情報であり、需要入札ID、需要入札個別ID、購入希望電力日時、購入希望電力種類、購入希望電力(kW)、購入希望電力量(kWh)、購入希望価格、ブロック入札希望、購入希望電力地点、優先度の情報を含む。
図4は需要入札情報の例である。
需要入札IDは、需要入札情報の識別標識であり、電力取引システム10で自動的に付与される。
【0021】
需要入札個別IDは、同じ需要入札IDにおいて複数のマッチング条件に対してそれぞれ付与される識別標識である。一つの需要入札IDの中で複数の需要入札個別IDのうち各一つの需要入札個別IDがマッチングされる。
購入希望電力日時は、いつ購入電力を使用するかに関する情報である。
購入希望電力種類は、再生可能エネルギー(再エネ)、非再生可能エネルギー(非再エネ)などの区分で、電力取引システム10で定義された電力種類を選択する形となる。ここで再生可能エネルギーは再生可能エネルギーから発電された電力である。非再生可能エネルギーは再生可能エネルギーではなく、化石燃料等を用いて発電された電力である。ここでは例として再生可能エネルギーと表現したが、太陽光発電、風力発電など詳細化してもよい。
【0022】
購入希望電力は、購入を希望する電力であり、購入希望電力量は購入を希望する電力量である。購入希望電力量と購入希望電力を購入希望電力日時で記載した時間積分した量と合わせる。
購入希望価格は、購入希望電力や購入希望電力量に対する価格である。ブロック入札希望は、需要入札個別IDを分割した形でマッチングするかしないかに関する情報である。
【0023】
図5は、需要入札情報をグラフ化したものである。購入希望電力量(kWh)の電力(kW)を縦軸、時間を横軸として表している。電力の需要側は需要入札ID(D100を示す)に対して、D101のブロックのように需要入札個別IDに分割した形で入札することもできる。前記の需要入札情報でブロック入札希望が“×”な場合はブロックに分割した入札はしない。ブロック入札希望が“〇”な場合は、ブロックに分割してマッチングする。この分割は電力取引システム10で予め決めた分割の仕方に従う。例えば
図5のD101の縦と横の長さを、電力取引システム10が決めた値に規格化する。
【0024】
購入希望電力地点は、どこで発電された電力を購入するかに関する情報である。電力取引システム10で決めて地点の名称または地点のIDとなる。購入希望電力地点がどこでも関係ない場合は、全国またはanyのような名称となる。
優先度は、同じ需要入札IDにおいて各需要入札個別IDの優先度となる。優先度の付け方は、電力取引システム10が決めた優先度の付け方のルールに従えばいい。たとえば、1を一番優先度を高くし、次に2、3,4のような順番で優先度を下げることが考えられる。
【0025】
供給入札情報(
図6)は、基本的に需要入札情報と類似する。供給入札情報は、電力の供給側のマッチング条件を含む情報であり、供給入札ID、供給入札個別ID、販売希望電力日時、販売希望電力種類、販売希望電力(kW)、販売希望電力量(kWh)、販売希望価格、ブロック入札希望、供給電力地点、優先度の情報を含む。
図6は供給入札情報の例である。
供給入札IDは、供給入札情報の識別標識であり、電力取引システム10で自動的に付与される。
【0026】
供給入札個別IDは、同じ供給入札IDにおいて複数のマッチング条件に対してそれぞれ付与される識別標識である。供給入札IDの中で複数の供給入札個別IDのうち各一つの供給入札個別IDがマッチングされる。
販売希望電力日時は、いつ販売電力を使用するかに対する情報である。
販売希望電力種類は、再生可能エネルギー、非再生可能エネルギーなどの区分であり、電力取引システム10で定義された電力種類を選択する形となる。ここで再生可能エネルギーは再生可能エネルギーから発電された電力である。非再生可能エネルギーは再生可能エネルギーではなく、化石燃料等を用いて発電された電力である。ここでは例として再生可能エネルギーと表現したが、太陽光発電、風力発電など詳細化してもいい。
【0027】
販売希望電力は、購入を希望する電力であり、販売希望電力量は、販売を希望する電力量である。販売希望電力量と販売希望電力を販売希望電力日時で記載した時間積分した量と合わせる。販売希望価格は、販売希望電力や販売希望電力量に対する価格である。
【0028】
ブロック入札希望は、販売入札個別IDに分割した形でマッチングするかしないかに関する情報である。
図7は供給入札情報をグラフ化したものである。販売希望電力量(kWh)の電力(kW)を縦軸、時間を横軸として表している。電力の需要側は供給入札ID(D200を示す)に対して、D201のブロックのように供給入札個別IDに分割した形で入札することもできる。前記の供給入札情報でブロック入札希望が“×”な場合は分割した入札はしない。ブロック入札希望が“〇”な場合は、ブロックに分割してマッチングする。この分割は電力取引システム10で予め決めた分割の仕方に従う。例えば
図5のD201の縦と横の長さを、電力取引システム10が決めた値に規格化する。
【0029】
供給電力地点は、どこで発電された電力なのかに関する情報である。電力取引システム10で決めて地点の名称または地点のIDとなる。
優先度は、同じ供給入札IDにおいて各供給入札個別IDの優先度となる。電力取引システム10が決めた優先度の付け方のルールに従えばいい。たとえば、1を一番優先度を高くし、次に2、3,4のような順番で優先度を下げることが考えられる。
天気予報は、過去の天気予報の履歴データと将来の天気予報を含む情報であり、各地点の情報である。
【0030】
過去のマッチング履歴は、過去の取引システムの需要入札情報、供給入札情報、マッチング履歴の情報を含む情報である。
<発現率予測部>
発現率予測部200は、各需要入札情報と供給入札情報の予測発現率を求める。需要入札情報に対する発現率は、需要入札情報に該当する供給入札情報が各時刻で現れる確率である。供給入札情報に対する予測発現率は、供給入札情報に該当する需要入札情報が各時刻で現れる確率である。たとえば、需要入札情報と一致する供給入札情報が現れる確率を計算する。
【0031】
予測方法としては、過去のマッチング履歴を用いて予測をする。たとえば、予測対象の需要入札情報に該当する過去の供給入札情報を検索する。
図8は検索の結果を時間軸で表したものである。需要入札情報に該当する供給入札情報として供給入札情報A(S10)と供給入札情報B(S20)が検索されたとする。供給入札情報Aはt1時刻で取引システム上に現れて、供給入札情報Bはt10時刻で取引システム上に現れたとする。過去のマッチング履歴の全日数Ttotalに対して、t1とt10において供給入札情報が現れたことになる。予測発現率の計算式は、例えば、以下のように計算できる。
【0032】
“各時刻での予測発現率Zt=Tu/Ttotal”
ここで、Tuは予測対象の需要入札情報に該当する供給入札情報が対象時刻に現れた日数の合計となる。
供給入札情報が全日数において1日だけt1時刻で現れた場合、t1時刻での予測発現率は1/Ttotalとなる。t2からt9時刻までは、供給入札情報がマッチングされずに入札が残っている場合は、予測発現率がt1時刻での予測発現率と同じ値をとる。もし供給入札情報Aがt2時刻でマッチングされた場合は、t3時刻からt9時刻での予測発現率は0となる。t10時刻においては、供給入札情報がマッチングされずに入札が残っている場合は、予測発現率は2/Ttotalとなる。もし供給入札情報Aがt2時刻でマッチングされた場合は、1/Ttotalとなる。
【0033】
Ttotalが取引システム上の全日数という例で説明したが、需要入札情報と供給入札情報の予測発現は季節的な要因もあるため、季節区間を設定して、需要入札情報の購入希望電力日時を基準に季節区間を割当、その区間内の過去の需要入札情報と供給入札情報を用いることが考えられる。たとえば、季節として春、夏、秋、冬と区分する。区分の仕方は、春は3月から5月、夏は6月から8月、秋は9月から11月、冬は12月から2月と区分すればいい。このような区分で需要入札情報と供給入札情報を分ける。このように分けた情報を用いて予測発現率を予測する。さらに、平日と週末によって需要の形態が異なることも想定できるため、季節ごとに平日と週末の区分で需要入札情報と供給入札情報を分けることも考えられる。そして天候ごとに需要入札情報と供給入札情報を分けることも考えられる。
【0034】
ここでは、統計処理による予測について説明したが、この手法だけに制限するものではない。ニューラルネットワークを用いて予測する方法も考えられる。例えば、需要入札情報、供給入札情報を用いて過去の発現率を算出しておく。このデータを用いて教師あり学習としてニューラルネットワークを用いて予測することが可能である。さらに前記で説明した季節や週末・平日、天候を説明変数として用いればさらに予測精度が高まると考えられる。また、過去のマッチング履歴以外に現時刻で取引システムに存在する需要入札情報と供給入札情報から発現率を前記と同様に求めて、その値を説明変数とすることも考えられる。
【0035】
<約定率予測部>
約定率予測部300は、各需要入札情報と供給入札情報の予測約定率を求める。予測発現率は、ある時刻にマッチング可能な需要入札または供給入札があるかないかの指標であるが、予測約定率は、電力の需要または供給がどの程度の量があるかの指標である。予測約定率の計算式は、例えば、以下のようになる。
“各時刻での予測約定率Ct=Ni/Nj”
ここで、Njは予測対象の過去の需要入札情報の合計であり、Niは予測対象の過去の供給入札情報の合計となる。これは予測対象が電力の需要の場合であるが、供給の場合はこの逆数となる。
【0036】
予測約定率の予測においても予測発現率の予測と同じく、季節的要因を想定して、約定率予測に用いる需要入札情報と供給入札情報を季節ごとに区分することも考えられる。さらに週末や平日と区分することも考えられる。そして天候ごとに需要入札情報と供給入札情報を分けることも考えられる。
ここでは、統計処理による予測について説明したが、この手法だけに制限するものではない。ニューラルネットワークを用いて予測する方法も考えられる。例えば、需要入札情報、供給入札情報を用いて過去の予測約定率を算出しておく。このデータを用いて教師あり学習としてニューラルネットワークを用いて予測することが可能である。さらに上記で説明した季節や週末・平日、天候を説明変数として用いればさらに予測精度が高まると考えられる。また、過去のマッチング履歴以外に現時刻で取引システムに存在する需要入札情報と供給入札情報から約定率を上記と同様に求めて、その値を説明変数とすることも考えられる。
【0037】
<マッチング部>
マッチング部400では各需要入札情報と各供給入札情報とのマッチングを行う。
図9はマッチング部の処理を示すフローチャートである。
処理S401ではマッチングの開始として電力取引システム10上に該当する入札を提出する。そして、まず、優先度が高い需要入札情報でマッチングを試す。S402では、マッチングを試した入札がマッチングできたか状況把握する。S403では発現率予測部200と約定率予測部300で算出した予測発現率と予測約定率に基づいてマッチングの優先度の切り替えを判断する。切り替えの基準としては、各優先度の入札に対して、発現率と約定率の積を計算し、マッチングができない状態が続き、次の一段下の優先度の入札より発現率と約定率の積が低くなる場合、その一段下の優先度の入札に切り替えることが考えられる。さらにマッチングができない状態が続く時間を一定期間設定して、この期間の間では該当優先度の入札を維持することも考えられる。
【0038】
S404では、需要入札情報と供給入札情報をマッチングさせる。需要入札情報と供給入札情報が同じもの同士でマッチングさせる。同じ内容の複数の需要入札情報や複数の供給入札情報がある場合は、マッチングのルールとしては、基本的に先着順でマッチングさせる。
【0039】
<取引管理部>
取引管理部500は、マッチングの結果をマッチング部400より取得して、マッチング部400でマッチングする需要入札情報と供給入札情報を更新する。マッチングの結果によりマッチングできたものは、マッチング済みフラグを付けてマッチング部400でマッチングする需要入札情報と供給入札情報から除く処理をする。
以上説明した電力取引システム10によれば、一つの電力の需要または供給の入札において複数のマッチング条件を提示することで、電力取引システム10内の需要入札情報と供給入札情報を増やすことができ、マッチングがしやすくなる。
【0040】
また、電力取引システム10によれば、複数の優先度を持つ入札に対して、予測発現率と予測約定率を予測し、その値に基づいて、優先度を切り替えるため、優先度が高い入札からマッチングを試し、もしマッチングができる確率が低くなる際には次の優先度の入札に切り変えることができる。
さらに、電力取引システム10によれば、複数の優先度を持つ入札に対して、予測発現率と予測約定率を予測し、一定時間入札を維持するため、できるだけ、優先度の高い入札を維持することができる。
【0041】
したがって、本実施例1によれば、電力を適切に取引することができる電力取引システム10を提供することができる。