(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022176537
(43)【公開日】2022-11-30
(54)【発明の名称】ボイラ
(51)【国際特許分類】
F23N 1/02 20060101AFI20221122BHJP
F23N 5/18 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
F23N1/02 104Z
F23N1/02 103
F23N1/02 105
F23N5/18 K
F23N5/18 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021083024
(22)【出願日】2021-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142365
【弁理士】
【氏名又は名称】白井 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】伊東 航
【テーマコード(参考)】
3K003
【Fターム(参考)】
3K003AB03
3K003AB06
3K003CA04
3K003CA06
3K003CB05
3K003DA03
3K003DA04
(57)【要約】
【課題】排ガス中の酸素濃度を一定に保つ制御を極力持続できるボイラを提供することである。
【解決手段】ボイラにおいて、燃焼量に応じた流量となるように、燃焼用空気を供給し、供給される燃焼用空気の流量を検出し、空気比を所定範囲とするための補正値を特定し、特定される補正値と、検出された燃焼用空気の流量とに基づいて、供給する燃料の流量を調整し、補正値の変化量が特定量を超えることにより異常条件が成立しているときには当該補正値に基づく調整を行わない。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼量に応じた流量となるように、燃焼用空気または燃料を供給する供給手段と、
供給される燃焼用空気の流量または燃料の流量を検出する流量検出手段と、
空気比を所定範囲とするための補正値を特定する補正値特定手段と、
前記補正値特定手段により特定される補正値と、前記流量検出手段によって検出された燃焼用空気の流量または前記流量検出手段によって検出された燃料の流量とに基づいて、供給する燃料の流量または供給する燃焼用空気の流量を調整する流量調整手段とを備え、
前記流量調整手段は、補正値の変化量が特定量を超えることにより異常条件が成立しているときには当該補正値に基づく調整を行わない、ボイラ。
【請求項2】
前記異常条件は、前記補正値特定手段により特定された補正値の所定期間における平均値からの変化量が前記特定量を超えることにより成立する、請求項1に記載のボイラ。
【請求項3】
前記所定期間の終点は、現在時刻よりも一定時間前となるタイミングに定められている、請求項2に記載のボイラ。
【請求項4】
前記補正値の変化量とは、燃焼量を変化させる制御を開始する前の補正値と、前記供給手段により供給される燃焼用空気または燃料の流量が変化後の燃焼量に応じた流量となった後の補正値との変化量である、請求項1~請求項3のいずれかに記載のボイラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイラに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ノズルなどの噴出部に燃料を供給する燃料供給ライン上に調整弁を設けて、燃焼用空気の流量と連動させて比例弁(調整弁)を制御して燃料の流量を調整することにより、多位置制御(高燃焼、中燃焼、低燃焼など)や比例制御を行う燃焼装置を備えたボイラがある。また、このようなボイラとして、供給される燃焼用空気の流量に応じて燃料の流量調整を行うものがあった(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなボイラにおいては、例えば排ガスの酸素濃度(あるいは燃焼時の空気比等)が一定に保たれることが望ましいところ、実際には外的要因(例えば、燃料の温度や燃焼用空気の温度、燃料の組成等)に応じて排ガスの酸素濃度の変動を招いてしまい、その結果として失火、一酸化炭素増大等の燃焼異常を生じさせてしまう虞があった。なお、供給される燃料の流量に応じて燃焼用空気の流量調整を行うものにおいても、同様の不具合を生じさせてしまう虞がある。
【0005】
本発明は、かかる実情に鑑み考え出されたものであり、その目的は、排ガス中の酸素濃度を一定に保つ制御を極力持続できるボイラを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明のある局面に従うボイラは、燃焼量に応じた流量となるように、燃焼用空気または燃料を供給する供給手段と、供給される燃焼用空気の流量または燃料の流量を検出する流量検出手段と、空気比を所定範囲とするための補正値を特定する補正値特定手段と、前記補正値特定手段により特定される補正値と、前記流量検出手段によって検出された燃焼用空気の流量または前記流量検出手段によって検出された燃料の流量とに基づいて、供給する燃料の流量または供給する燃焼用空気の流量を調整する流量調整手段とを備え、前記流量調整手段は、補正値の変化量が特定量を超えることにより異常条件が成立しているときには当該補正値に基づく調整を行わない。
【0007】
上記の構成によれば、補正値に基づいて供給する燃料の流量または供給する燃焼用空気の流量が調整されるため、空気比が所定範囲内となり、排ガス中の酸素濃度を一定に保つことができる。一方で、補正値の変化量が閾値を超えて急激に変化した補正値に基づいて流量を調整した場合には、失火、一酸化炭素増大等の燃焼異常を生じさせてしまう虞があるところ、補正値の変化量が特定量を超えることにより異常条件が成立しているときには当該補正値に基づく調整が行われない。これにより、例えば一定値からの差分で異常判定する場合と比較して、補正値の変化量が特定量を超えていないときには補正値に基づく流量の調整を継続できるため、燃焼異常とならない範囲(より厳密な範囲)で補正値に基づく流量の調整を極力持続させることができる。
【0008】
好ましくは、前記異常条件は、前記補正値特定手段により特定された補正値の所定期間における平均値からの変化量が前記特定量を超えることにより成立する。
【0009】
上記の構成によれば、例えば、あるタイミング(瞬間)における補正値からの変化量に基づいて異常判定する場合においては異常と判定される場合であっても、所定期間における平均値からの変化量に基づいて異常判定する場合にはより多くの補正値を用いて均された値に基づきより厳密に判定される結果、異常とは判定されない場合が生じ得る。その結果、燃焼異常とならない範囲(より厳密な範囲)で補正値に基づく流量の調整を極力持続させることができる。
【0010】
好ましくは、前記所定期間の終点は、現在時刻よりも一定時間前となるタイミングに定められている。
【0011】
上記の構成によれば、現在時刻の直前における補正値を考慮せずに一定時間前までの所定期間における平均値からの変化量で異常判定されるため、異常判定の精度を高めることができる。
【0012】
好ましくは、前記補正値の変化量とは、燃焼量を変化させる制御を開始する前の補正値と、前記供給手段により供給される燃焼用空気または燃料の流量が変化後の燃焼量に応じた流量となった後の補正値との変化量である。
【0013】
上記の構成によれば、補正値の変化量が大きくなりやすい燃焼量の変化の際には、燃焼量変化中の補正値を考慮せず、燃焼量変化前の補正値と燃焼量変化後の補正値との変化量に基づいて異常判定されるため、異常判定の精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】ボイラの制御の一例を説明するためのフローチャートである。
【
図3】現在時刻よりも一定時間前を終点とする所定期間の例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<概略構成について>
以下に、
図1を参照しつつ、本発明の実施の形態に係るボイラ1について説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係るボイラ1の構成を模式的に示す図である。
【0016】
ボイラ1は、燃料を燃焼させて蒸気を生成するボイラ本体2と、空気供給路30を介してボイラ本体2内に空気を送り込む送風機(送風手段)3と、ボイラ本体2からの排ガスなどを導出する煙道4と、ボイラ本体2に燃料を供給する燃料供給ライン(燃料供給路)5とを備えている。なお、燃料は、ガスである例について説明するが、ガスなどの気体に限らず、油などの液体であってもよい。
【0017】
燃料供給ライン5は、空気供給路30に接続されている。燃料供給ライン5から供給される燃料は、空気供給路30において、送風機3から送風される空気と混合されて、ボイラ本体2内のバーナ20に供給される。
【0018】
送風機3から供給される空気は、燃焼用空気として空気供給路30を介してボイラ本体2内のバーナ20に供給される。燃焼用空気の流量の調整は、空気供給路30にダンパ7を設けて、ダンパ7の位置(開度)を調整するか、これに代えてまたはこれに加えて、インバータを用いて送風機3のファンの回転速度を変えることでなされる。本実施の形態では、燃焼用空気の流量は、ダンパ7の開度制御および送風機3のインバータ制御により調整される。
【0019】
燃料供給ライン5には、流路を開閉するための開閉弁(電磁弁)11,12と、燃料供給量調整弁13とが設けられている。燃料供給量調整弁13は、ボイラ本体2に供給する燃料の流量を調整可能である圧力調整弁として機能するとともに遮断機能をも備える。燃料供給量調整弁13は、開閉弁11,12よりも下流側に設けられており、制御装置6によって開度が調整されるモータバルブである。なお、燃料供給量調整弁13は、燃料の流量を調整するものであればモータバルブに限らず、例えば、空気式制御弁であってもよい。
【0020】
制御装置6は、内部にメモリ、タイマ、および演算処理部を含むコンピュータにより実現され、電気的に接続される各センサからの信号に基づいて、燃料供給量調整弁13や送風機3、ダンパ7の制御を行う。
【0021】
本実施の形態における空気供給路30には、ダンパ7より下流にパンチングメタル等の燃焼用空気減圧部材8が設けられている。空気流量検出部9は、燃焼用空気減圧部材8の前後の差圧を検出する差圧センサを備えており、検出した差圧を特定可能な差圧情報を出力する。空気流量検出部9は、制御装置6と電気的に接続されている。これにより、空気流量検出部9からの差圧情報を制御装置6に入力することができる。なお、空気流量検出部9から出力されるアナログ信号はデジタル信号に変換されて、制御装置6に入力される。
【0022】
制御装置6は、燃焼量が異なる複数種類の燃焼段階として、例えば、低燃焼段階L、中燃焼段階M、高燃焼段階Hのいずれかの燃焼段階に制御する。制御装置6は、設定されている目標蒸気圧と蒸気ヘッダの蒸気圧とに応じて、燃焼段階を制御する。制御装置6は、制御されている燃焼段階に応じた態様(例えば、回転数、周波数)となるよう送風機3を制御し、燃焼段階に応じた量の燃焼用空気を供給する。制御装置6は、空気流量検出部9が検出した差圧情報に基づいて、ボイラ本体2に実際に供給されている燃焼用空気の流量を算出(検出)する。
【0023】
制御装置6は、算出した燃焼用空気の流量と後述する補正値とに基づいて、燃料供給量調整弁13の開度調整を行う。例えば、燃焼用空気の流量が増加すれば、燃料供給量調整弁13の開度を大きくして燃料の流量を増加させる一方、燃焼用空気の流量が減少すれば、燃料供給量調整弁13の開度を小さくして燃料の流量を減少させる。
【0024】
制御装置6は、制御部61と記憶部62とを備える。制御部61は、記憶部62に予め記憶された開度調整情報に基づいて、燃料供給量調整弁13に対して開度を特定するための開度特定信号を送信する。これにより、燃料供給量調整弁13は、燃焼用空気減圧部材8の前後の差圧に応じた開度に制御されて、ボイラ本体2に供給する燃料の流量を調整することができる。なお、開度調整情報とは、例えば、差圧(あるいは差圧から算出される燃焼用空気の流量)に応じて燃料供給量調整弁13の開度を特定可能なテーブルであってもよく、また差圧(あるいは差圧から算出される燃焼用空気の流量)に応じて燃料供給量調整弁13の開度を特定するための演算式であってもよい。
【0025】
記憶部62には、ボイラ1に関する各種の情報が記憶され、本実施の形態では、燃料供給流量を補正するための補正値が記憶されている。燃料供給量調整弁13の開度は、燃焼用空気減圧部材8の前後の差圧に基づき、開度調整情報に従って特定される。このため、理論的には、燃焼用空気の流量と供給される燃料の流量とに基づく空気比は、燃焼段階(燃焼量)に応じた空気比に収束されることになる。しかし、例えば、外的要因(例えば、燃料の温度や燃焼用空気の温度、燃料の組成等)に起因して、燃焼段階に応じた空気比に収束しない場合が実際には生じ得る。補正値とは、燃焼段階に応じた空気比(あるいは空気比の所定範囲内)に収束させるために燃料の供給量を補正するための値であり、運転状態中に検出され得る特定パラメータ(例えば、排ガスの酸素濃度等)の値に応じて随時更新される。補正値は、最新の特定パラメータの値に応じて制御中の燃焼段階に応じた空気比(あるいは空気比の所定範囲内)に収束させる(寄せる)ための補正値をフィードバック制御等により随時特定して更新される。
【0026】
本実施の形態のボイラ1は、運転状態中において、例えば、特定パラメータとして排ガスの酸素濃度を随時検出する。制御装置6は、検出された排ガスの酸素濃度と予め定められている基準酸素濃度とに基づいて、例えば、排ガスの酸素濃度>基準酸素濃度となるときには高空気比となっているため燃料の供給量を増やす値(例えば、1より大きな値)を補正値として特定し、記憶部62において記憶し、排ガスの酸素濃度<基準酸素濃度となるときには低空気比となっているため燃料の供給量を減らす値(例えば、1未満となる値)を補正値として特定し、記憶部62において記憶する。このように、制御装置6は、補正値を特定・記憶するための処理を、運転状態中において繰り返し行う。
【0027】
制御装置6は、直近の補正値を用いて、燃焼用空気減圧部材8の前後の差圧に基づき開度調整情報に従って特定される燃料供給量調整弁13の開度を補正するための処理を行う。例えば、補正値が1よりも大きい値であるときには、開度調整情報に従って特定される燃料供給量調整弁13の開度よりも開きが大きな開度(流量が増大する開度)に補正され、補正値が1よりも小さい値であるときには、開度調整情報に従って特定される燃料供給量調整弁13の開度よりも開きが小さい開度(流量が減少する開度)に補正される。これにより、ある燃焼段階において運転状態にあるときには、外的要因を考慮して、当該燃焼段階に応じた空気比(あるいは空気比の所定範囲内)に収束させる(寄せる)ことができる。その結果、空気比が所定範囲内となり、排ガス中の酸素濃度を一定に保つことができる。
【0028】
また、ボイラの燃焼段階移行時(燃焼量の変化時)においては、ボイラ本体2への燃焼用空気の供給流量を移行後の燃焼段階に応じた流量に調整するための処理を行った後に、燃焼用空気の実際の供給流量に応じて燃料の供給流量を調整する処理が行われる。このようなボイラの燃焼段階移行時においては、補正値が大きく変動する。例えば、低燃焼段階Lから中燃焼段階Mに移行される場合など、燃焼量が大きい燃焼段階に移行する際は、燃焼用空気の供給流量が燃料の供給流量に対して過多となり高空気比となる傾向にある。このため、補正値は、空気比を収束させるべく燃料の供給流量を増大させる値に大きく変動し得る。一方、中燃焼段階Mから低燃焼段階Lに移行される場合など、燃焼量が小さい燃焼段階に移行する際は、燃焼用空気の供給流量が燃料の供給流量に対して過小となり低空気比となる傾向にある。このため、補正値は、空気比を収束させるべく燃料の供給流量を減少させる値に大きく変動し得る。しかし、補正値の変化量が大きすぎる場合(燃焼量の変化時に限るものではない)には、失火や一酸化炭素増大等の燃焼異常を生じさせてしまう。
【0029】
このような不具合を抑制するために、例えば、現在時刻における補正値が、一定値(例えば、1)を基準として所定範囲(例えば、±0.15)を超えた場合(補正値が0.85未満あるいは1.15超えの場合)が燃焼異常を生じさせるものと画一的に擬制し、現在時刻における補正値が所定範囲を超えた場合に当該補正値に基づく燃料供給量調整弁13の開度の補正を行わないようにしてもよい。しかし、燃焼異常を生じさせる主な原因は、所定時間前の補正値と現在時刻における補正値との変化量が急激に変化して特定量を超えることである。このため、一定値を基準とする所定範囲を超えた場合であっても、所定時間前の補正値と現在時刻における補正値との変化量が特定量を超えていなければ、燃焼異常が生じることはない。その結果、現在時刻における補正値が所定範囲を超えた場合に当該補正値に基づく流量の調整を行わないようにした場合には、補正値に基づく調整を行っても燃焼異常を生じさせることがない場合にまで、該補正値に基づく流量の調整が行われない頻度が高まる。よって、本実施の形態におけるボイラ1においては、所定時間前の補正値と現在時刻における補正値との変化量が特定量を超えた場合に異常条件が成立したとみなし、変化量が特定量を超えた補正値に基づく燃料供給量調整弁13の開度の補正を行わず、空気流量検出部9が検出した差圧情報(差圧、燃焼用空気の流量)に基づいて燃料供給量調整弁13の開度調整を行う。以下では、このような制御についてより具体的に説明する。
【0030】
<ボイラ制御処理について>
図2は、本発明のボイラの制御の一例を説明するためのフローチャートである。制御装置6は、一定期間(例えば0.1秒)毎に本制御を行い、ボイラ1の運転中は継続して本制御を実行する。
【0031】
ステップS01では、検出された蒸気ヘッダにおける蒸気圧と、目標蒸気圧とに基づき、燃焼段階の移行(燃焼量の変化)が必要であるか否かを判定する。ステップS01において燃焼段階の移行が必要であると判定されなかったときには、ステップS04に移行する。一方、ステップS01において燃焼段階の移行が必要であると判定されたときには、ステップS02に移行する。
【0032】
ステップS02では、燃焼段階を移行する。ステップS03では、ステップS02で移行した燃焼段階に応じた態様(燃焼段階に応じた回転数、あるいは燃焼段階に応じた周波数となる態様)で、送風機3を制御する。ステップS04では、空気流量検出部9により検出した差圧に基づいて燃焼用空気の空気流量を検出(特定)する。
【0033】
ステップS05では、ボイラ1の運転状態に応じて変動する特定パラメータを特定する。特定パラメータは、取り出される蒸気量に変動を生じさせるような環境等の変化(外的要因)の指標である。本実施の形態においては、特定パラメータとして、ボイラ本体2からの排ガスのO2センサにより検出される排ガスの酸素濃度を用いる。O2センサは、煙道4の所定位置に設けられている。ステップS06では、ステップS05で特定された特定パラメータに基づいて、空気比を所定範囲とするための補正値を特定し、記憶部62に記憶する。なお、補正値としては、通常、例えば、0.3~1.7などの範囲内における値が特定されるが、これに限るものではない。ステップS07では、現在時刻よりも一定時間前を終点とする所定期間における補正値の平均値(以下、平均補正値ともいう)を算出する。記憶部62においては、当該所定期間における平均補正値を算出可能となるように、所定期間における補正値の履歴が時刻等とともに記憶されているものとする。一定時間とは、バーナ20での燃焼により生じた排ガスが、煙道4のO2センサに到達するまでに要する時間以上となる時間であればよく、本実施形態では、燃焼量の変化(例えば、送風機3の回転数の変化)が開始されてから完了(例えば、送風機3の回転数が変化後の燃焼量に応じた回転数に到達)するまでに要する平均的な時間よりも長く定められており、例えば5秒であるがこれに限るものではない。所定期間とは、一定時間前が終点となる期間であって、例えば3秒であるがこれに限るものではない。
【0034】
ステップS08では、現在時刻において特定されている補正値(ステップS06で特定・記憶された直近の補正値、以下、現在補正値ともいう)と、ステップS07で算出された平均補正値との差が、特定量以内であるか否かを判定する。特定量とは、失火や一酸化炭素増大等の燃焼異常を生じさせてしまうことになり得る補正値の変化量として事前調査等により確認されて設定されている値であって、例えば、0.3などであるがこれに限るものではなく0.1~1などの間における任意の値であってもよい。
【0035】
ここで、一定時間および所定期間について説明する。
図3は、現在時刻よりも一定時間前を終点とする所定期間の例を説明するための図である。
図3では、縦軸において燃焼段階、送風機の回転数、および、補正値の遷移例が示され、横軸において時間の流れが示されている。低燃焼段階Lにおいては、
図2のステップS03にて送風機3の回転数が低燃焼用の回転数に制御される。
図3では、低燃焼段階Lにおいて、
図2のステップS06により特定される補正値の値が数値a付近において変動している様子が示されている。
【0036】
図3のタイミングAは、低燃焼段階Lに制御されている間のあるタイミングを例示している。タイミングAであるときには、ステップS07においてタイミングAから一定時間前を終点とするA時用の所定期間における平均補正値が算出され、ステップS08においてタイミングAにおける現在補正値と算出された平均補正値との差が特定量以内であるか否かが判定される。なお、燃焼段階(燃焼量)が変化していないときには、よほど影響の強い外的要因が生じない限り、
図3に示すように補正値は所定値近傍にて変動するため特定量以内であると判定される可能性が高い。
【0037】
一方、燃焼段階(燃焼量)が変化したときには、前述したように補正値が大きく変動する可能性が高い。
図3のタイミングBは、燃焼量が変化した場合の一例として、低燃焼段階Lから高燃焼段階Hへの移行が完了したときのタイミングを例示している。高燃焼段階Hへの移行が完了したタイミングとは、
図3に示すように、例えば、送風機3の回転数が高燃焼用の回転数に制御されて、ボイラ本体2に供給される燃焼用空気の流量が高燃焼段階Hの流量となったタイミングをいうが、当該タイミング以降であればこれに限るものではない。また、燃焼量の変化が開始されてから送風機3の回転数が変化して燃焼用空気の流量も変化することに伴って、
図3に示されるように、適正な空気比となるように補正値も変動している。
【0038】
タイミングBであるときには、ステップS07においてタイミングBから一定時間前を終点とするB時用の所定期間における平均補正値が算出され、ステップS08においてタイミングBにおける現在補正値と算出された平均補正値との差が特定量以内であるか否かが判定される。一定時間は、燃焼量の変化が開始されてから完了するまでに要する平均的な時間よりも長く定められている。このため、
図3に示されるように、B時用の所定期間が、燃焼量の変化が開始される前までの期間となり、タイミングBにおけるステップS08では、燃焼量を変化させる制御を開始する前の補正値と、送風機3により供給される燃焼用空気の流量が変化後の燃焼量に応じた流量となった後の補正値との変化量が特定量以内であるか否かが判定される。より具体的には、移行開始前の燃焼段階(例えば低燃焼段階L)における補正値と、移行完了後の燃焼段階(例えば高燃焼段階H)における補正値との変化量が特定量以内であるか否かが判定される。なお、
図3では、高燃焼段階Hにおいて、
図2のステップS06により特定される補正値の値が数値b(<数値a)付近において変動している様子が示されている。また、
図3では、燃焼量が高くなる場合に補正値が小さくなる例を示しているが、これに限らず、使用環境や外的要因などによって燃焼量が高くなる場合に補正値が大きくなる場合もあり、また、燃焼量が低くなる場合においても補正値が小さくなる場合もあれば大きくなる場合もある。
【0039】
図2に戻り、ステップS08において特定量以内であると判定されたときには、ステップS09に移行する。一方、特定量以内であると判定されなかったときには、ステップS10に移行する。
【0040】
ステップS09では、ステップS04で検出した空気流量と、ステップS06で更新記憶した補正値とに基づいて、燃料供給量調整弁13の開度を制御する。すなわち、補正値に基づいて燃料供給量調整弁13の開度補正を行う。これにより、ある燃焼段階での運転状態中における特定パラメータの値に基づいて、当該燃焼段階に応じた空気比(あるいは空気比の所定範囲内)に収束させるように、燃料の供給量を調整できる。
【0041】
一方、補正値の変化量が燃焼異常を生じさせてしまう変化量である場合には、ステップS10において異常報知(例えば、警告表示、アラーム音出力等)が行われ、ステップS11においてステップS04で検出した空気流量に基づいて燃料供給量調整弁13の開度を制御し、補正値に基づく燃料供給量調整弁13の開度補正を行わない。
【0042】
以上のように、本実施の形態では、
図2のステップS08~S11に示すように、
図2のステップS06で特定・記憶された現在補正値と、
図2のステップS07で算出された平均補正値との差が特定量以内であると判断された場合には、
図2のステップS09に示すように、
図2のステップS04で検出した空気流量と、
図2のステップS06で更新記憶した補正値とに基づいて、燃料供給量調整弁13の開度を制御する。このため、補正値に基づいて供給する燃焼用空気の流量が調整されるため、空気比が所定範囲内となり、排ガス中の酸素濃度を一定に保つことができる。一方、
図2のステップS06で特定・記憶された現在補正値と、
図2のステップS07で算出された平均補正値との差が特定量以内であると判断されなかった場合には、
図2のステップS11に示すように、ステップS04で検出した空気流量に基づいて燃料供給量調整弁13の開度を制御し、補正値に基づく燃料供給量調整弁13の開度補正を行わない。このため、補正値の変化量が閾値を超えて急激に変化した補正値に基づいて流量を調整した場合には、失火、一酸化炭素増大等の燃焼異常を生じさせてしまう虞がある。また、仮に、現在時刻における補正値が一定値(例えば、1)を基準として所定範囲(例えば、±0.15)を超えた(補正値が0.85未満あるいは1.15超えの場合)か否かで異常判定する場合には、判定基準が一定値となるため本来燃焼異常を生じさせない場合にまで異常と判定されてしまう結果、補正値に基づく調整を行うことができない頻度が高まる。一方、本実施形態におけるボイラ1では、都度変動する補正値同士を比較して、補正値の変化量が特定量を超えていないときには補正値に基づく流量の調整を継続できるため、燃焼異常とならない範囲(より厳密な範囲)で補正値に基づく流量の調整を極力持続させることができる。
【0043】
また、本実施の形態では、補正値の変化量が、
図2のステップS07および
図3に示すように、タイミングAにおいては現在補正値(数値a近傍、ステップS06で特定)と、A時用の所定期間における平均補正値(数値a近傍、ステップS07で算出)との差で特定され、また、タイミングBにおいては現在補正値(数値b近傍、ステップS06で特定)と、B時用の所定期間における平均補正値(数値a近傍、ステップS07で算出)との差で特定される。このため、例えば、A時用の所定期間のあるタイミング(瞬間)における補正値やB時用の所定期間のあるタイミング(瞬間)における補正値からの変化量に基づいて異常判定する場合においては異常と判定される場合であっても、所定期間における平均値からの変化量に基づいて異常判定する場合にはより多くの補正値を用いて均された値に基づきより厳密に判定される結果、異常とは判定されない場合が生じ得る。その結果、燃焼異常とならない範囲(より厳密な範囲)で補正値に基づく流量の調整を極力持続させることができる。
【0044】
また、本実施の形態では、
図2のステップS07および
図3に示すように、所定期間の終点は、タイミングA、Bのそれぞれについて設定されており、それぞれのタイミングの一定時間前(例えば5秒前)である。このように、現在時刻の直前における補正値を考慮せずに一定時間前までの所定期間における平均値からの変化量で異常判定されるため、異常判定の精度を高めることができる。
【0045】
また、本実施の形態では、
図2のステップS07および
図3に示すように、タイミングBにおける補正値の変化量とは、低燃焼段階における平均補正値(数値a近傍)と、高燃焼段階の現在補正値(数値b近傍)との差(例えば、≒数値a-数値b)であるため、補正値の変化量が大きくなりやすい燃焼量の変化の際には、燃焼量変化中の補正値を考慮せず、燃焼量変化前の補正値と燃焼量変化後の補正値との変化量に基づいて異常判定されるため、異常判定の精度を高めることができる。
【0046】
本発明では、上記の実施の形態に限られず、種々の変形、応用が可能である。以下、本発明に適用可能な上記の実施の形態の変形例などについて説明する。
【0047】
上記実施の形態においては、燃焼段階に応じた態様で送風機3を制御し、
図2のステップS04で示したように差圧に基づき空気流量(燃焼用空気の供給流量)を検出した上で、ステップS09で示したように当該空気流量と補正値とに基づき燃料供給量調整弁13の開度(燃料の供給流量)を制御することにより、空気比を調整する例を説明した。しかし、空気比を調整するための処理は、これに限らず、例えば、燃焼段階に応じた開度となるように燃料供給量調整弁13の開度を制御した上で、実際の燃料の供給流量を検出し、当該燃料の供給流量と補正値とに基づく空気流量(燃焼用空気の供給流量、例えば送風機3)を制御することにより、空気比を調整するようにしてもよい。実際の燃料の供給流量の検出に際しては、例えば、燃料供給ライン5にオリフィス等を複数箇所に設けて差圧を検出し、当該差圧に基づいて燃料の供給流量を検出するものであってもよい。この場合における補正値は、燃料の供給流量を補正する値ではなく、空気流量(燃焼用空気の供給流量)を補正するための値である。具体的に、制御装置6は、検出された排ガスの酸素濃度と予め定められている基準酸素濃度とに基づいて、例えば、排ガスの酸素濃度>基準酸素濃度となるときには高空気比となっているため空気流量を減らす値(例えば、1未満となる値)に補正値を特定・記憶し、排ガスの酸素濃度<基準酸素濃度となるときには低空気比となっているため空気流量を増やす値(例えば、1より大きな値)に補正値を特定・記憶する。また、制御装置6は、随時更新される補正値を用いて、燃料の供給流量に基づき特定される送風機3の態様(例えば、回転数)を補正するための処理を行う。また、このように構成する場合にも、
図2のステップS06で特定・記憶された現在補正値と、
図2のステップS07で算出された平均補正値との差が特定量以内であると判断されなかった場合には、異常条件が成立しているとして、当該補正値に基づく、空気流量の調整を行わないようにする。これにより、失火、一酸化炭素増大等の燃焼異常を生じさせてしまうことを防止できる。また、一定値(例えば、補正値が取り得る値が0.3~1.7の場合にその中間値となる1)からの差分(例えば、1と現在補正値との差分が特定量内か否か)で異常判定する場合と比較して、補正値の変化量が特定量を超えていないときには補正値に基づく流量の調整を継続できるため、燃焼異常とならない範囲(より厳密な範囲)で補正値に基づく流量の調整を極力持続させることができる。なお、上記の例では、補正値に基づいて空気流量を制御する手法として、送風機3の態様(回転数等)を調整する例を示したが、これに限らず、ダンパ7の開度を調整するものであってもよく、また、送風機3の態様(回転数等)およびダンパ7の開度の双方を調整するものであってもよい。
【0048】
上記実施の形態では、補正値の変化量が特定量以内であると判定されなかったときには、ステップS11において例示したように補正値に基づく補正(調整)を行わない例について説明したが、特定量以内であると判定されなかった現在補正値に基づく補正(調整)を行わないものであればよく、例えば、ステップS11においては、空気流量(差圧)と、補正値の変化量が特定量以内となる値であって現在補正値に最も近い値とに基づき制御するもの、つまり補正値の変化量が特定量以内となる値であって現在補正値に最も近い値に基づく補正(調整)を行うものであってもよい。なお、燃焼用空気の流量(あるいは燃料の流量)の補正は、補正値に基づいて行うものに限らず、これに替えてあるいは加えて、運転状態中における使用環境・状況等に基づいて行うものであってもよい。例えば、燃料の温度や燃焼用空気の温度等を加味して燃料供給量調整弁13の開度を補正(調整)するものであってもよい。
【0049】
上記実施の形態において、ボイラ1の運転状態に応じて変動する特定パラメータとしては、ボイラ本体2からの排ガスのO2センサによる検出される排ガスの酸素濃度を用いる例を説明したが、これに限らず、例えば、排ガスの温度、空気の温度、発熱量を直接計測した値等を用いるものであってもよい。
【0050】
上記実施の形態では、検出された排ガスの酸素濃度と基準酸素濃度とに基づいて補正値を更新する例を説明したが、これに限らず、例えば、燃料の発熱量と基準発熱量、または、燃料の質量流量と基準質量流量に基づいて補正値を更新するようにしてもよい。
【0051】
上記実施の形態において、一定時間を燃焼量の変化(例えば、送風機3の回転数の変化)が開始されてから完了(例えば、送風機3の回転数が変化後の燃焼量に応じた回転数に到達)するまでに要する平均的な時間よりも長い時間とすることにより、燃焼量を変化させる際に、燃焼量変化前の補正値(あるいは平均補正値)と、燃焼量変化後の補正値(現在補正値)との変化量に基づいて補正値に基づく調整を行うか否かを特定する例について説明したが、一定時間は、前述したとおり、バーナ20での燃焼により生じた排ガスが、煙道4のO2センサに到達するまでに要する時間以上となる時間であればよい。この場合であっても、燃焼量を変化させる際には、一定時間と関係なく、燃焼量変化前(移行開始前、あるいは移行開始タイミングよりも所定時間前)の補正値(あるいは平均補正値)と、燃焼量変化後(移行完了後)の補正値(現在補正値)との変化量に基づいて補正値に基づく調整を行うか否かを特定するようにしてもよい。燃焼量の変化の前後で補正値が比較的大きく変動するため、その際の補正値の変化量が特定量を超えるか否かを判断することは効果的である。
【0052】
上記実施の形態において、補正値の変化量として、
図2のステップS06で特定される現在時刻において特定されている補正値(現在補正値)と、ステップS07で算出される所定期間における補正値の平均値(平均補正値)との差を用いる例を説明した。すなわち、判定対象とする補正値として現在時刻の瞬間値を用い、判定基準とする補正値として現在時刻よりも前の所定期間における補正値の平均値を用いる例を説明した。しかし、判定対象とする補正値は、現在時刻の補正値が考慮されているものであれば、所定時間前(例えば、3秒前)から現在時刻までの期間における補正値の平均値であってもよい。また、判定基準とする補正値は、現在時刻よりも一定時間前の補正値(瞬間値)であってもよい。つまり、補正値の変化量は、上記実施の形態のように判定対象とする補正値として現在時刻の瞬間値を用い、判定基準とする補正値として現在時刻よりも前の所定期間における補正値の平均値を用いて特定されるものに限らず、以下のものであってもよい。
・例1:判定対象とする補正値として所定時間前(例えば、3秒前)から現在時刻までの期間における補正値の平均値を用い、判定基準とする補正値として現在時刻よりも前の所定期間における補正値の平均値を用いて特定されるもの。
・例2:判定対象とする補正値として現在時刻の瞬間値を用い、判定基準とする補正値として現在時刻よりも一定時間前の補正値(瞬間値)を用いて特定されるもの。
・例3:判定対象とする補正値として所定時間前(例えば、3秒前)から現在時刻までの期間における補正値の平均値を用い、判定基準とする補正値として現在時刻よりも一定時間前の補正値(瞬間値)を用いて特定されるもの。
【0053】
上記実施の形態において、補正値の変化量が特定量を超える場合に異常条件が成立しているとして補正値に基づく流量の調整を行わない例を説明したが、これに加えて、補正値の上下限値(通常取り得る値として例示した0.3~1.7を含む値、例えば下限値:0.1、上限値:1.9等)を設定することもできる。補正値が上下限値を超えた場合にも、異常条件が成立しているとして補正値に基づく流量の調整を行わないようにすることにより、より安定した制御が可能となり、異常判定の精度を高めることができる。
【0054】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものでないと考えられるべきである。この発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0055】
1 ボイラ
2 ボイラ本体
3 送風機(送風手段)
4 煙道
5 燃料供給ライン(燃料供給路)
6 制御装置
61 制御部
62 記憶部
7 ダンパ
8 燃焼用空気減圧部材
9 空気流量検出部(流量検出手段)
11 開閉弁
12 開閉弁
13 燃料供給量調整弁
20 バーナ
30 空気供給路