(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022176546
(43)【公開日】2022-11-30
(54)【発明の名称】鋼製支保工の接手構造
(51)【国際特許分類】
E21D 11/18 20060101AFI20221122BHJP
【FI】
E21D11/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021083034
(22)【出願日】2021-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(71)【出願人】
【識別番号】521212373
【氏名又は名称】株式会社カトウ
(74)【代理人】
【識別番号】100097113
【弁理士】
【氏名又は名称】堀 城之
(74)【代理人】
【識別番号】100162363
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 幸彦
(72)【発明者】
【氏名】谷口 信博
(72)【発明者】
【氏名】古家 義信
(72)【発明者】
【氏名】山下 秀文
(72)【発明者】
【氏名】吉田 健一
(72)【発明者】
【氏名】加藤 欣吾
【テーマコード(参考)】
2D155
【Fターム(参考)】
2D155BA06
2D155BB02
2D155CA01
2D155FB01
2D155GD05
2D155KB04
2D155LA17
(57)【要約】
【課題】左右の支保工部材を容易に連結させることができる鋼製支保工の接手構造を提供する。
【解決手段】第1支保工部材1aの天端部にトンネル軸方向の切羽側に向けて取り付けられていると共に、第2支保工部材1bの天端部にトンネル軸方向の坑口側に向けて取り付けられた一対の連結ピン5a、5bと、第1支保工部材1aの天端部にトンネル軸方向の切羽側から挿入可能に取り付けられていると共に、第2支保工部材1bの天端部にトンネル軸方向の坑口側から挿入可能に取り付けられ、第1支保工部材1aと第2支保工部材1bとのトンネル軸方向の相対移動によって一対の連結ピン5a、5bがそれぞれ挿入される一対のボス部6a、6bと、を具備し、一対のボス部6a、6bは、ボス部6a、6bに挿入された連結ピン5a、5bを係止する係止機構をそれぞれ備えている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右に分割された第1支保工部材と第2支保工部材とを天端部で連結して形成される鋼製支保工の接手構造であって、
前記第1支保工部材の天端部にトンネル軸方向の切羽側に向けて取り付けられていると共に、前記第2支保工部材の天端部に前記トンネル軸方向の坑口側に向けて取り付けられた一対の連結ピンと、
前記第1支保工部材の天端部に前記トンネル軸方向の切羽側から挿入可能に取り付けられていると共に、前記第2支保工部材の天端部に前記トンネル軸方向の坑口側から挿入可能に取り付けられ、前記第1支保工部材と前記第2支保工部材との前記トンネル軸方向の相対移動によって一対の前記連結ピンがそれぞれ挿入される一対のボス部と、を具備し、
一対の前記ボス部は、前記ボス部に挿入された前記連結ピンを係止する係止機構をそれぞれ備えていることを特徴とする鋼製支保工の接手構造。
【請求項2】
前記連結ピンには、先端に近づくほど径が小さくなる円錐テーパー面が形成され、
前記ボス部の中空部には、挿入口に向かって径が大きくなる環状テーパー面が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の鋼製支保工の接手構造。
【請求項3】
前記係止機構は、バネの付勢によって前記ボス部の中空部に突出するように設置された係止部材であり、前記係止部材の前記連結ピンに形成された溝部への嵌合によって、前記ボス部に前記連結ピンが係止されることを特徴とする請求項1又は2に記載の鋼製支保工の接手構造。
【請求項4】
前記係止部材は、ボールプランジャであることを特徴とする請求項3に記載の鋼製支保工の接手構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼製支保工の接手構造に関する。
【背景技術】
【0002】
NATM工法(New Austrian Tunneling Method)によるトンネル掘削支保工建込作業において、鋼製支保工は、H形鋼と呼ばれる鋼材をトンネルのアーチ形状に曲げて作製される。鋼製支保工は、左右2つの支保工部材を中央上部(天端)で連結してアーチ状に形成し、これをトンネルの断面に建て込む。
【0003】
鋼製支保工の接手構造は、左右の支保工部材の天端に設けられている継手板同士を突き合わせてボルトで接合をする構造が一般的であり、ボルトを接合するために地山直下に作業員が立ち入って作業を行う必要があった。
【0004】
そこで、作業員によるボルト接合を回避する鋼製支保工の接手構造が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1では、一方の支保工部材の天端部に雄型連結部を有する雄型継手板を設けると共に、他方の支保工部材の天端部に雌型連結部を有する雌型継手板を設け、雄型継手板及び雌型継手板の当接面同士が当接した状態で当接面の横幅方向に相対スライドすることで、雌型連結部に雄型連結部が係止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来技術では、雄型継手板及び雌型継手板の当接面同士が当接した状態で相対スライドさせ、それぞれの当接面に形成された雌型連結部と雄型連結部とを連結させている。従って、鋼製支保工を建て込むエレクタ装置の操作者は、左右の支保工部材を前後にずらした状態で左右方向を正確に位置合わせする必要があり、熟練の技が必要となる。
【0007】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、上述の課題を解消し、左右の支保工部材を容易に連結させることができる鋼製支保工の接手構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の鋼製支保工の接手構造は、左右に分割された第1支保工部材と第2支保工部材とを天端部で連結して形成される鋼製支保工の接手構造であって、前記第1支保工部材の天端部にトンネル軸方向の切羽側に向けて取り付けられていると共に、前記第2支保工部材の天端部に前記トンネル軸方向の坑口側に向けて取り付けられた一対の連結ピンと、前記第1支保工部材の天端部に前記トンネル軸方向の切羽側から挿入可能に取り付けられていると共に、前記第2支保工部材の天端部に前記トンネル軸方向の坑口側から挿入可能に取り付けられ、前記第1支保工部材と前記第2支保工部材との前記トンネル軸方向の相対移動によって一対の前記連結ピンがそれぞれ挿入される一対のボス部と、を具備し、一対の前記ボス部は、前記ボス部に挿入された前記連結ピンを係止する係止機構をそれぞれ備えている。
さらに、本発明の鋼製支保工の接手構造において、前記連結ピンには、先端に近づくほど径が小さくなる円錐テーパー面が形成され、前記ボス部の中空部には、挿入口に向かって径が大きくなる環状テーパー面が形成されていても良い。
さらに、本発明の鋼製支保工の接手構造において、前記係止機構は、バネの付勢によって前記ボス部の中空部に突出するように設置された係止部材であり、前記係止部材の前記連結ピンに形成された溝部への嵌合によって、前記ボス部に前記連結ピンが係止されても良い。
さらに、本発明の鋼製支保工の接手構造において、前記係止部材は、ボールプランジャであっても良い。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、連結ピンがボス部に挿入されるように第1支保工部材と第2支保工部材とを相対移動させるだけで第1支保工部材と第2支保工部材とを連結できるため、建て込み時の誤差が許容され、第1支保工部材と第2支保工部材とを容易に連結させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る鋼製支保工の第1実施形態の構成を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示す鋼製支保工の接手構造の構成を示す拡大斜視図である。
【
図3】
図1に示す鋼製支保工の接手構造の構成を示す断面図である。
【
図4】
図1に示す鋼製支保工を建て込むエレクタ装置の構成例を示す図である。
【
図5】
図3に示す接手構造の連結動作を説明する説明図である。
【
図6】
図3に示すボス部に連結ピンを係止する係止機構を他の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明を実施するための形態(以下、単に「実施形態」という)を、図面を参照して具体的に説明する。
【0012】
本実施形態の鋼製支保工1は、
図1を参照すると、トンネル掘削に伴い露出する地山の崩落防止のために、掘削直後の坑壁に沿って建て込まれるアーチ状のH形鋼であり、トンネル軸方向に沿って所定間隔で設置される。鋼製支保工1は、切羽に向かって右側に配置される第1支保工部材1aと切羽に向かって左側に配置される第2支保工部材1bとに分割された状態で建て込まれ、天端部(中央上部)を連結してアーチ状に形成される。
【0013】
第1支保工部材1a及び第2支保工部材1bは、左右対称な所定の湾曲形状を有するH形鋼であり、それぞれの天端部に第1支保工部材1aと第2支保工部材1bとを連結する接手構造が設けられている。
【0014】
この接手構造は、
図2及び
図3を参照すると、第1支保工部材1aの天端部に取り付けられた連結ピン5a及びボス部6aと、第2支保工部材1bの天端部に取り付けられた連結ピン5b及びボス部6bとを備える。第1支保工部材1aのボス部6aに第2支保工部材1bの連結ピン5bが、第2支保工部材1bのボス部6bに第1支保工部材1aの連結ピン5aがそれぞれ挿入された状態で係止され、第1支保工部材1aと第2支保工部材1bとが連結される。なお、
図2は、天端部の拡大図である。また、
図3は、ボス部6a、6b及び連結ピン5a、5bのそれぞれの軸心を通る平面で切断した断面図である。
【0015】
第1支保工部材1aを構成するH形鋼は、対向する上フランジ2a及び下フランジ3aと、上フランジ2a及び下フランジ3aと直交し、上フランジ2aと下フランジ3aとをつなぐウェブ4aとからなり、上フランジ2a及び下フランジ3aのフランジ面が所定の形状に湾曲している。第1支保工部材1aは、上フランジ2aが地山側に配置され、上フランジ2a及び下フランジ3aがトンネル軸方向と平行になるように設置される。
【0016】
第1支保工部材1aの天端部には、円柱状の連結ピン5aと円筒状のボス部6aとが支持板7aを用いて取り付けられている。支持板7aは、鋼板で構成され、上フランジ2aと下フランジ3aとの坑口側端部にかけ渡されて、溶接等によって固定されている。なお、
図3に示す符号73aは、支持板7aの固定を補強する補強板である。
【0017】
支持板7aは、第1支保工部材1aの天端部から延出した延出面71aを備え、支持板7aの延出面71aには、連結ピン5aが切羽側に向けて上フランジ2a及び下フランジ3aと平行(トンネル軸方向)に立設されている。
【0018】
第1支保工部材1aの天端部のウェブ4a及び支持板7aには、ボス部6aが貫通する開口部41a及び開口部72aがそれぞれ形成されている。そして、ボス部6aは開口部41a及び開口部72aを貫通し、中空部61が上フランジ2a及び下フランジ3aと平行(トンネル軸方向)に、第2支保工部材1bの連結ピン5bが切羽側から挿入可能な状態でウェブ4a及び支持板7aに溶接等によって固定されている。
【0019】
第2支保工部材1bを構成するH形鋼は、対向する上フランジ2b及び下フランジ3bと、上フランジ2b及び下フランジ3bと直交し、上フランジ2bと下フランジ3bとをつなぐウェブ4bとからなり、上フランジ2b及び下フランジ3bのフランジ面が所定の形状に湾曲している。第2支保工部材1bは、上フランジ2bが地山側に配置され、上フランジ2b及び下フランジ3bがトンネル軸方向と平行になるように設置される。
【0020】
第2支保工部材1bの天端部には、円柱状の連結ピン5bと円筒状のボス部6bとが支持板7bを用いて取り付けられている。支持板7bは、鋼板で構成され、上フランジ2bと下フランジ3bとの切羽側端部にかけ渡されて、溶接等によって固定されている。なお、
図3に示す符号73bは、支持板7bの固定を補強する補強板である。
【0021】
そして、支持板7bは、第2支保工部材1bの天端部から延出した延出面71bを備え、支持板7bの延出面71bには、連結ピン5bが坑口側に向けて上フランジ2b及び下フランジ3bと平行(トンネル軸方向)に立設されている。
【0022】
第2支保工部材1bの天端部のウェブ4b及び支持板7bには、ボス部6bが貫通する開口部41b及び開口部72bがそれぞれ形成されている。そして、ボス部6bは開口部41b及び開口部72bを貫通し、中空部61が上フランジ2b及び下フランジ3bと平行(トンネル軸方向)に、第1支保工部材1aの連結ピン5aが坑口側から挿入可能な状態でウェブ4b及び支持板7bに溶接等によって固定されている。
【0023】
本実施形態では、第1支保工部材1aの連結ピン5aと、第2支保工部材1bの連結ピン5bとは、同一の構成であり、第1支保工部材1aのボス部6aと、第2支保工部材1bのボス部6bとは、同一の構成である。従って、共通の構成は、符号「a」、「b」を省略して以下説明する。
【0024】
連結ピン5は、上フランジ2及び下フランジ3の幅よりも長く、3列の溝部51が周方向に所定の間隔で形成されている円柱部と、先端に近づくほど径が小さくなる円錐テーパー面52が形成された先端部とを備えている。なお、溝部51の列数には、特に制限はなく、1もしくは2列であっても、4列以上であっても良い。
【0025】
ボス部6の中空部61は、ボールプランジャ8が配置されている円筒部と、連結ピン5の挿入口に向かって径が大きくなる環状テーパー面62が形成された挿入部とを備えている。
【0026】
ボールプランジャ8は、バネで付勢された係止部材であるボールが中空部61に突出するように設置され、連結ピン5の溝部51と同じ間隔で軸方向に配置されている。これにより、ボス部6の中空部61に挿入された連結ピン5の溝部51のそれぞれにボールプランジャ8のボールが嵌合され、ボス部6に連結ピン5が係止される。すなわち、連結ピン5の溝部51を係止するボス部6のボールプランジャ8が係止機構として機能する。
【0027】
また、連結ピン5の挿入に際し、ボールプランジャ8のボールがばねの付勢された状態で連結ピン5の周面に当接するため、ボールプランジャ8は、案内機構としても機能する。なお、ボールプランジャ8は、複数個を中空部61の中心軸の周方向において等間隔で設置すると、ボス部6の中空部61と連結ピン5との軸を合わせることができ、より効果的に案内することができる。
【0028】
鋼製支保工1の建て込みには、
図4に示すエレクタ装置9を用いる。エレクタ装置9は、一対のブーム91と、ブーム91に先端に設けられたクランプ92を有して構成されている。一対のブーム91は、上下、左右など広角度に自在に揺動できる様に油圧シリンダなどの揺動部材が用いられて構成されている。そして、ブーム91の先端側に接続されたクランプ92も第1支保工部材1a、第2支保工部材1bなどを握持できるよう油圧シリンダなどの揺動部材が用いられて構成されている。
【0029】
なお、
図4に示すように、一対のブーム91の他、先端にクランプ92を有する一対のサブブーム93が設けられる場合がある。サブブーム93が設けられる場合は比較的大きいトンネル内に大型の鋼製支保工1を建て込む場合に使用される。
【0030】
一対のブーム91(サブブーム93)に各々設けられたクランプ92で第1支保工部材1aと第2支保工部材1bとを握持し、アーチ状をなす様に連結して鋼製支保工1をトンネル内の所定位置に建て込む。
【0031】
第1支保工部材1aと第2支保工部材1bとの連結は、一対のブーム91に第1支保工部材1a及び第2支保工部材1bをそれぞれ把持し、
図2及び
図3に示すように、天端部をトンネル軸方向にずらした状態で設置箇所に配置する。
【0032】
そして、連結ピン5の円錐テーパー面52が形成された先端部をボス部6の環状テーパー面62が形成された挿入部に導くように、第1支保工部材1aと第2支保工部材1bとをトンネル軸方向に相対移動させる。
【0033】
すると、連結ピン5とボス部6の軸がずれていた場合でも、連結ピン5の先端部は、ボス部6の環状テーパー面62と、円錐テーパー面52とによって、
図5(a)に示すように、ボス部6のボールプランジャ8が配置されている円筒部に導かれる。従って、ターゲットとトータルステーションを用いた位置決めや、マーカーとカメラによるモーションキャプチャー技術を用いた位置決めに誤差が生じても許容できる。
【0034】
そして、
図5(b)に示すように、ボス部6の中空部61に挿入された連結ピン5の3列の溝部51のそれぞれにボールプランジャ8のボールが嵌合され、ボス部6に連結ピン5が係止される位置まで、第1支保工部材1aと第2支保工部材1bとをトンネル軸方向に相対移動させる。これにより、2つのボルトを接合するために地山直下に作業員が立ち入って作業を行うことなく、安全に第1支保工部材1aと第2支保工部材1bとを連結して鋼製支保工1を建て込むことができる。
【0035】
連結ピン5は、上フランジ2及び下フランジ3の幅よりも長いため、第1支保工部材1aと第2支保工部材1bとが連結された状態では、
図5(b)に示すように、連結ピン5の先端部がボス部6から突出する。この突出した連結ピン5の先端部を視認することで、連結を確認することができる。さらに、連結ピン5の先端部をボス部6と異なる色に着色することで、挿入時の誘導と連結の確認とを容易に行うことができる。
【0036】
本実施形態では、連結ピン5の溝部51と、ボールプランジャ8で係止機構を構成しているため、トンネル軸方向の相対移動によって、溝部51とボールプランジャ8との係止を解消することができる。従って、連結途中や連結後であっても、連結を解消して連結作業をやり直すことができる。
【0037】
また、係止機構には、ボールプランジャ8の代わりに、バネで付勢された係止部材であるピンが中空部61に突出するように設置された、
図6(a)に示すようなピンプランジャ81(スプリングプランジャ)を用いても良い。
【0038】
なお、係止を解消する必要がない場合、係止機構は、
図6(b)に示すように、板バネ82に係止部材を取り付け、板バネ82で付勢された中空部61に突出するように設置した係止部材によって溝部51を係止するようにしても良い。さらに、
図6(c)に示すように、板バネ83自体を中空部61に突出するように設置し、板バネ83の端部が係止部材として溝部51を係止するようにしても良い。
【0039】
また、本実施形態では、連結ピン5及びボス部6の中空部61の断面形状をいずれも円形としたが、連結ピン5がボス部6の中空部61に挿入可能であれば断面形状に制限はない。例えば、連結ピン5及びボス部6の中空部61の断面形状を楕円や多角形にしても良い。
【0040】
以上説明したように、本実施形態は、左右に分割された第1支保工部材1aと第2支保工部材1bとを天端部で連結して形成される鋼製支保工1の接手構造であって、第1支保工部材1aの天端部にトンネル軸方向の切羽側に向けて取り付けられていると共に、第2支保工部材1bの天端部にトンネル軸方向の坑口側に向けて取り付けられた一対の連結ピン5a、5bと、第1支保工部材1aの天端部にトンネル軸方向の切羽側から挿入可能に取り付けられていると共に、第2支保工部材1bの天端部にトンネル軸方向の坑口側から挿入可能に取り付けられ、第1支保工部材1aと第2支保工部材1bとのトンネル軸方向の相対移動によって一対の連結ピン5a、5bがそれぞれ挿入される一対のボス部6a、6bと、を具備し、一対のボス部6a、6bは、ボス部6a、6bに挿入された連結ピン5a、5bを係止する係止機構をそれぞれ備えている。
この構成により、連結ピン5a、5bがボス部6a、6bに挿入されるように第1支保工部材1aと第2支保工部材1bとを相対移動させるだけで第1支保工部材1aと第2支保工部材1bとを連結できるため、建て込み時の誤差が許容され、第1支保工部材1aと第2支保工部材1bとを容易に連結させることができる。従って、作業員の技量による鋼製支保工1の建て込みに要する時間のバラツキをなくすことができる。
【0041】
さらに、本実施形態において、連結ピン5には、先端に近づくほど径が小さくなる円錐テーパー面52が形成され、ボス部6の中空部61には、挿入口に向かって径が大きくなる環状テーパー面62が形成されている。
この構成により、連結ピン5a、5bの先端部は、ボス部6a、6bの環状テーパー面62と、円錐テーパー面52とによって、ボス部6a、6bの係止機構が配置されている円筒部に導かれる。従って、ターゲットとトータルステーションを用いた位置決めや、マーカーとカメラによるモーションキャプチャー技術を用いた位置決めに誤差が生じても許容できる。
【0042】
さらに、本実施形態において、係止機構は、バネの付勢によってボス部6の中空部61に突出するように設置された係止部材であり、係止部材の連結ピン5に形成された溝部51への嵌合によって、ボス部6に連結ピン5が係止される。
この構成により、ボス部6に連結ピン5をしっかりと係止することができる。
【0043】
さらに、本実施形態において、係止部材は、ボールプランジャ8である。
この構成により、連結途中や連結後であっても、連結を解消して連結作業をやり直すことができる。
【0044】
以上、実施形態をもとに本発明を説明した。この実施形態は例示であり、それらの各構成要素の組み合わせ等にいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0045】
1 鋼製支保工
1a 第1支保工部材
1b 第2支保工部材
2、2a、2b 上フランジ
3、3a、3b 下フランジ
4a、4b ウェブ
5、5a、5b 連結ピン
6、6a、6b ボス部
7a、7b 支持板
8 ボールプランジャ
9 エレクタ装置
41a、41b 開口部
51 溝部
52 円錐テーパー面
61 中空部
62 環状テーパー面
71a、71b 延出面
72a、72b 開口部
73a、73b 補強板
81 ピンプランジャ
82、83 板バネ
91 ブーム
92 クランプ
93 サブブーム