(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022176549
(43)【公開日】2022-11-30
(54)【発明の名称】フラットスラブ構造
(51)【国際特許分類】
E04B 5/43 20060101AFI20221122BHJP
E02D 29/05 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
E04B5/43 C
E02D29/05 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021083037
(22)【出願日】2021-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】本多 和人
(72)【発明者】
【氏名】藤永 直樹
(72)【発明者】
【氏名】要 知市郎
(72)【発明者】
【氏名】今井 貴大
【テーマコード(参考)】
2D147
【Fターム(参考)】
2D147AA08
(57)【要約】
【課題】配管の自由度が高い地下ピットを、容易に構築可能な、フラットスラブ構造を提供する。
【解決手段】フラットスラブ構造10は、建物の1階床2を形成するフラットスラブ構造10であって、フラットスラブ11を支持する独立フーチング基礎と、フラットスラブ11の下方側において、地盤Gの表面に設けられたコンクリート層12と、を備え、地盤Gには、地盤Gの表面がフラットスラブ11の外周部11s側から中央部11c側に向けて下るよう形成された勾配部102が設けられ、フラットスラブ11とコンクリート層12との間には地下ピットPが設けられる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の1階床を形成するフラットスラブ構造であって、
フラットスラブを支持する独立フーチング基礎と、
前記フラットスラブの下方側において、地盤の表面に設けられたコンクリート層と、を備え、
前記地盤には、前記地盤の表面が前記フラットスラブの外周部側から中央部側に向けて下るよう形成された勾配部が設けられ、
前記フラットスラブと前記コンクリート層との間には地下ピットが設けられることを特徴とするフラットスラブ構造。
【請求項2】
前記独立フーチング基礎は、フーチングと、前記フーチングの略中央に立設された基礎柱と、を備えており、
前記フラットスラブの下側にキャピタル部が一体に形成され、当該キャピタル部を前記フーチングが支えるか、または、前記フーチングの上方に基礎増打ち部が設けられ、前記フラットスラブを前記基礎増打ち部が支えることを特徴とする請求項1に記載のフラットスラブ構造。
【請求項3】
前記フラットスラブの外周部側における、前記コンクリート層に対する前記フラットスラブの高さは、前記フラットスラブの中央部側における、前記コンクリート層に対する前記フラットスラブの高さよりも、小さいことを特徴とする請求項1または2に記載のフラットスラブ構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラットスラブ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
構造物の1階の床下に、設備、配管等を収容する地下ピットが設けられることがある。
例えば特許文献1には、構造物の基礎底版とスラブとの間にピットが形成された構成が開示されている。この構成において、スラブは、基礎底版上に設けられた複数の基礎梁上に設けられている。基礎梁は、長手方向の中央部に設けられた逆ハンチ部と、長手方向の両端部に設けられた現場打コンクリート梁部と、で構成されている。逆ハンチ部と現場打コンクリート梁部との境界部分には、小梁が設けられている。逆ハンチ部は、梁成が現場打コンクリート梁部と小梁の梁成より低くされてスペースが形成されており、このスペースに配管ユニットが設けられる。
特許文献1に開示されたような構成では、ピットを形成するには、基礎底版上に、ピットの高さに応じた基礎梁を設ける必要があり、手間と工期が掛かる。
また、配管ユニットは、上記のように構成された逆ハンチ部上のスペース内に設ける必要があるため、配管を設計する際における、配管の自由度が高いとは言えない。
【0003】
また、特許文献2には、底部コンクリートスラブ上に、複数のソイルセメント柱を有したソイルセメント柱列壁と、後打ちコンクリート壁とを備えた地下ピットが開示されている。
特許文献2に開示されたような地下ピットでは、地下ピットを形成するには、底部コンクリートスラブ上に、地下ピットの高さに応じたソイルセメント柱列壁、および後打ちコンクリート壁を設ける必要があり、手間と工期が掛かる。
【0004】
また、特許文献3には、基礎スラブと上部建物部の最下層の床スラブとの間にピット内空間が形成され、ピット内空間に、上部建物部の柱下部に設けられた柱下基礎立上部と、柱下部位以外の非柱下部位に設けられた接続用束柱と、を備える構成が開示されている。
特許文献3に開示されたような構成においても、ピットを形成するには、基礎スラブ上に、ピットの高さに応じた柱下基礎立上部、および接続用束柱を設ける必要があり、工期が掛かる。また、ピット内空間には、柱下基礎立上部に加えて複数本の接続用束柱が設けられるため、ピット内空間に配置する配管等は、これらを避けてレイアウトする必要がある。
地下ピットを、配管設計時における配管の自由度が高く、かつ構築が容易となるように、実現することが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-97861号公報
【特許文献2】特開2004-162350号公報
【特許文献3】特開2017-115499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、配管の自由度が高い地下ピットを、容易に構築可能な、フラットスラブ構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、建物の設備配管を設置する地下ピット上のスラブ構造として、地下ピットを形成する床面を傾斜付きのコンクリート層(レベルコンクリート)として構築し、かつスラブを基礎梁なしで、スラブの横断面が矩形状で略一様なフラットスラブで構築することで、配管の設置位置に関する自由度が高く、かつ比較的容易に構築できる点に着眼して、本発明に至った。
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明のフラットスラブ構造は、建物の1階床を形成するフラットスラブ構造であって、フラットスラブを支持する独立フーチング基礎と、前記フラットスラブの下方側において、地盤の表面に設けられたコンクリート層と、を備え、前記地盤には、前記地盤の表面が前記フラットスラブの外周部側から中央部側に向けて下るよう形成された勾配部が設けられ、前記フラットスラブと前記コンクリート層との間には地下ピットが設けられることを特徴とする。
このような構成によれば、フラットスラブは、独立フーチング基礎によって支持される。地下ピットは、フラットスラブの下方側において、地盤の表面に設けられたコンクリート層と、フラットスラブとの間に形成される。地盤には、表面がフラットスラブの外周部側から中央部側に向けて下るように勾配部が形成されて、外周部側における地盤の高さは、中央部側における地盤の高さよりも高くなっている。このため、コンクリート層とフラットスラブの間に地下ピットを構築するに際し、地下ピットを囲うように土留め壁を設けなくとも、構築中の地下ピットの周囲の土砂が崩壊するのを抑制することができる。このため、土留め壁を設ける必要性が低減し、地下ピットを容易に構築できる。
また、上記のように、地盤には、表面がフラットスラブの外周部側から中央部側に向けて下るように勾配部が形成されているため、特にフラットスラブの中央部側においては、地下ピット内の空間の高さを大きく確保することができるので、配管の自由度が高い。
更に、フラットスラブによって地下ピットが形成されているため、フラットスラブの下面から下方すなわち地下ピットへ大きく突出する基礎梁等の突出物が、基本的には設けられない。このため、配管の自由度が、より高くなる。
このようにして、配管の自由度が高い地下ピットを、容易に構築可能な、フラットスラブ構造を実現可能である。
【0008】
本発明の一態様においては、本発明のフラットスラブ構造は、前記独立フーチング基礎は、フーチングと、前記フーチングの略中央に立設された基礎柱と、を備えており、前記フラットスラブの下側にキャピタル部が一体に形成され、当該キャピタル部を前記フーチングが支えるか、または、前記フーチングの上方に基礎増打ち部が設けられ、前記フラットスラブを前記基礎増打ち部が支える。
このような構成によれば、フラットスラブと独立フーチング基礎との接合部分に、キャピタルまたは基礎増打ち部を設けることで、接合部分におけるコンクリートの水平断面積が大きくなる。このため、フラットスラブと独立フーチング基礎が高い接合強度、および高剛性で接合される。
また、フラットスラブに作用する荷重を、効率的に、独立フーチング基礎に伝達することができる。
【0009】
本発明の一態様においては、本発明のフラットスラブ構造は、前記フラットスラブの外周部側における、前記コンクリート層に対する前記フラットスラブの高さは、前記フラットスラブの中央部側における、前記コンクリート層に対する前記フラットスラブの高さよりも小さい。
このような構成によれば、上記のようなフラットスラブ構造を効率的に実現可能である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、地下ピットを容易に構築可能な、フラットスラブ構造を提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係るフラットスラブ構造を一部に備える建物の1階床を示す平面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係るフラットスラブ構造の第1変形例の構成を示す断面図である。
【
図5】本発明の実施形態に係るフラットスラブ構造の第2変形例の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、基礎梁を設けることなく、フラットスラブと、地盤に勾配を設け、当該地盤の表面に設ける傾斜付きコンクリート層(レベルコンクリート)によって地下ピットが形成されるフラットスラブ構造である。
以下、添付図面を参照して、本発明によるフラットスラブ構造を実施するための形態について、図面に基づいて説明する。
本実施形態に係るフラットスラブ構造を一部に備える建物の1階床を示す平面図を
図1に示す。
図2は、
図1におけるI-I矢視断面図である。
図3は、
図1におけるII-II矢視断面図である。
図1~
図3に示されるように、本実施形態に係るフラットスラブ構造10は、建物1の1階床2を形成する。1階床2は、フラットスラブ11によって形成されている。フラットスラブ11の一部の領域の下方には、配管、設備等を収容可能な地下ピットPが形成されている。後に説明するように、フラットスラブ11は、地盤G上に、あるいは、地盤G中に設けられた基礎杭または地盤改良体110、112上に支持されている。
【0013】
図2に示すように、フラットスラブ構造10は、フラットスラブ11と、フラットスラブ11の下方側に設けられたコンクリート層12と、独立フーチング基礎20と、を備えている。
フラットスラブ11については後に詳説する。
コンクリート層12は、フラットスラブ11の下方側に設けられている。コンクリート層12は、所定の厚さで打設されたコンクリートからなり、地盤Gの表面を覆うように設けられている。コンクリート層12は、本実施形態においては、その上に設けられる空間や構造体等の高さ位置を調整する目的で設けられており、コンクリート層12には、構造用の鉄筋は配筋されておらず、ひび割れを抑制するための溶接用金網が埋設されている。また、コンクリート層12は、フラットスラブ構造10を構成する独立フーチング基礎20の配置位置等との関係において、無筋であっても良い。
フラットスラブ構造10は、フラットスラブ11とコンクリート層12との間に、地下ピットPを有している。ピットPは、フラットスラブ11の下面と、コンクリート層12の上面により、表面が形成されている。
図1に示すように、地下ピットPは、本実施形態においては、フラットスラブ11の全域においてその下方に設けられてはおらず、フラットスラブ11の一部の下方にのみ設けられている。
【0014】
図1、
図2に示されるように、地下ピットPが設けられている領域におけるフラットスラブ11の外周部11sには、部分的に、基礎杭または地盤改良体110が設けられている。フラットスラブ11の、基礎杭または地盤改良体110に対応する部分には、フラットスラブ11から下方に突出する外周キャピタル部16が一体に設けられている。外周キャピタル部16は、基礎杭または地盤改良体110上に支持されている。これにより、フラットスラブ11は、基礎杭または地盤改良体110上に支持されている。
また、
図3に示されるように、地下ピットPが設けられている領域におけるフラットスラブ11の外周部11sの、基礎杭または地盤改良体110が設けられていない部分においては、フラットスラブ11は地盤G上に設けられたコンクリート層12上に載置されて、地盤Gによって支持されている。
【0015】
独立フーチング基礎20は、地下ピットPが形成されている領域の内部側においては、基礎杭または地盤改良体112上に設けられている。独立フーチング基礎20は、フラットスラブ11を支持する。本実施形態において、独立フーチング基礎20は、地下ピットPが形成されている領域に、水平方向に間隔をあけて複数が設けられている。複数の独立フーチング基礎20は、地下ピットPが設けられている領域におけるフラットスラブ11の外周部11s、及びまたは中央部11c側に設けられている。
各独立フーチング基礎20は、例えば鉄筋コンクリート造である。独立フーチング基礎20は、プレキャストコンクリートとして形成されてもよい。各独立フーチング基礎20は、フーチング21と、基礎柱22と、を一体に備えている。フーチング21は、地盤Gに設けられた基礎杭または地盤改良体112上に、高さを調整するためのレベルコンクリート25を介して設けられている。フーチング21は、上下方向に所定の厚さを有して形成されている。フーチング21は、レベルコンクリート25上で、水平方向に広がるように形成されている。
基礎柱22は、フーチング21の中央部から上方に向かって突出している。基礎柱22は、1階床2から上方に延びる、1階の柱3を支持する。
【0016】
フラットスラブ11は、所定の厚さを有し、かつ断面が略均一、略一様となるように形成されている。特に本実施形態においては、フラットスラブ11は、下面が平坦な平面となり、下面から下方への突出物が設けられないように形成されている。本実施形態では、フラットスラブ11において、独立フーチング基礎20が設けられている部分には、フラットスラブ11から下方に突出するキャピタル部15が一体に形成されている。キャピタル部15は、基礎柱22の外周部に位置するように設けられて、基礎柱22の外周部において、フーチング21の上面に接する。このキャピタル部15により、フラットスラブ11は、独立フーチング基礎20が設けられている部分で強固に支持される。
本実施形態において、キャピタル部15とフーチング21は、これを構成するコンクリートのみによってせん断力に対抗するように設計されている。したがって、キャピタル部15とフーチング21には、せん断補強筋が設けられていない。
フラットスラブ11は、基礎柱同士の間に架設される、基礎梁を有していない。フラットスラブ11は、互いに隣り合う独立フーチング基礎20間、または独立フーチング基礎20と基礎杭または地盤改良体110や地盤Gとの間に架設されることで、梁のような水平材として機能する。フラットスラブ11は、フラットスラブ11に作用する鉛直荷重を独立フーチング基礎20、基礎杭または地盤改良体110、地盤Gに伝達する。フラットスラブ11には、曲げ性状(曲げ応力)、及び押し抜き破壊(面外せん断応力)に抵抗するために、水平方向に図示しない鉄筋(主筋、主筋と交差方向に配筋される配力筋)が配筋される。本実施形態において、フラットスラブ11には、面材せん断補強筋は設けられておらず、フラットスラブ11のスラブ厚さを形成するコンクリートによって、面材せん断補強筋で負担する応力に抵抗する。
【0017】
地下ピットPが設けられている領域において、地盤Gは、フラットスラブ11の下方側において、下方に掘削し、あるいは掘削された土砂を部分的に埋め戻すことによって、上面が形成されている。地下ピットPが設けられている領域において、地盤Gは、勾配部102を有している。勾配部102は、地下ピットPが設けられている領域におけるフラットスラブ11の外周部11s側から中央部11c側に向けて地盤Gの表面が下るように形成されている。
地下ピットPが設けられている領域におけるフラットスラブ11の外周部11sの、基礎杭または地盤改良体110が設けられている部分では、勾配部102は、基礎杭または地盤改良体110からフラットスラブ11の中央部11c側に向けて、地盤Gの表面が下るように形成されている。
また、
図3に示すように、地下ピットPが設けられている領域におけるフラットスラブ11の外周部11sの、基礎杭または地盤改良体110が設けられていない部分では、勾配部102は、フラットスラブ11の下面とコンクリート層12が接する部分からフラットスラブ11の中央部11c側に向けて、地盤Gの表面が下るように形成されている。
図2に示すように、地盤Gは、フラットスラブ11の中央部11c側において独立フーチング基礎20が設けられている部分の周囲に、フーチング外周傾斜面105を備えている。フーチング外周傾斜面105は、独立フーチング基礎20のフーチング21の外周部から離間するにしたがって下るように形成されている。
地盤Gは、勾配部102と、フーチング外周傾斜面105との間に、平面部107を有している。平面部107は、勾配部102の下端とフーチング外周傾斜面105との下端とを結ぶように形成されている。
【0018】
コンクリート層12は、地盤Gの表面に形成された勾配部102、フーチング外周傾斜面105、および平面部107を覆うように設けられている。
図3に示すように、地下ピットPが設けられている領域におけるフラットスラブ11の外周部11sで、コンクリート層12は、フラットスラブ11の下面に接している。
図2に示すように、フラットスラブ11の外周部11sにおいて、基礎杭または地盤改良体110が設けられた部分では、コンクリート層12は、基礎杭または地盤改良体110と、フラットスラブ11の外周キャピタル部16との間に挟み込まれている。
【0019】
このようにして形成された地下ピットPにおいて、フラットスラブ11の外周部11s側における、コンクリート層12に対するフラットスラブ11の高さHsは、フラットスラブ11の中央部11c側における、コンクリート層12に対するフラットスラブ11の高さHcよりも、小さい。つまり、地下ピットPの外周部11s側の高さHsは、地下ピットPの中央部11c側における高さHcよりも小さい。
【0020】
上述したようなフラットスラブ構造10によれば、建物1の1階床2を形成するフラットスラブ構造10であって、フラットスラブ11を支持する独立フーチング基礎20と、フラットスラブ11の下方側において、地盤Gの表面に設けられたコンクリート層12と、を備え、地盤Gには、地盤Gの表面がフラットスラブ11の外周部11s側から中央部11c側に向けて下るよう形成された勾配部102が設けられ、フラットスラブ11とコンクリート層12との間には地下ピットPが設けられる。
このような構成によれば、フラットスラブ11は、独立フーチング基礎20によって支持される。地下ピットPは、フラットスラブ11の下方側において、地盤Gの表面に設けられたコンクリート層12と、フラットスラブ11との間に形成される。地盤Gには、表面がフラットスラブ11の外周部11s側から中央部11c側に向けて下るように勾配部102が形成されて、外周部11s側における地盤Gの高さは、中央部11c側における地盤Gの高さよりも高くなっている。このため、コンクリート層12とフラットスラブ11の間に地下ピットPを構築するに際し、地下ピットPを囲うように土留め壁を設けなくとも、構築中の地下ピットPの周囲の土砂が崩壊するのを抑制することができる。このため、土留め壁を設ける必要性が低減し、地下ピットPを容易に構築できる。
また、上記のように、地盤Gには、表面がフラットスラブ11の外周部側11sから中央部側11cに向けて下るように勾配部102が形成されているため、特にフラットスラブ11の中央部11c側においては、地下ピットP内の空間の高さを大きく確保することができるので、配管の自由度が高い。
更に、フラットスラブ11によって地下ピットPが形成されているため、フラットスラブ11の下面から下方すなわち地下ピットPへ大きく突出する基礎梁等の突出物が、基本的には設けられない。このため、配管の自由度が、より高くなる。
このようにして、配管の自由度が高い地下ピットPを、容易に構築可能な、フラットスラブ構造10を実現可能である。
【0021】
特に、本実施形態においては、上記のように、フラットスラブ11は基礎梁を有さない。すなわち、基礎梁を用いなくとも構築可能なフラットスラブ11によって地下ピットPが形成されているため、地下ピットPに基礎梁を設ける必要がない。これにより、配管の自由度が、より高くなる。また、一般的な基礎梁付きのスラブの場合には、地下ピット内の点検作業等を目的として、基礎梁に人通孔を設ける必要があるが、これが不要となり、配管の自由度が、更に高くなる。
また、一般に基礎梁は、主筋、肋筋、幅止筋等の部材を、鉄筋の被りを確保しつつ、一定の体積内に収めるように設計する必要があるため、設計に多くの手間を要する。本実施形態のフラットスラブ構造10においては、このような基礎梁の設計工数を削減できるため、この点においても、構築が容易である。
【0022】
また、1階の床を、例えば土間コンクリートとして実現するような建物1を構築するに際し、基礎梁を施工した後に鉄骨の建方を重機により行う場合には、土間コンクリートは建物1の本体を施工している間の適切なタイミングで施工すればよいため、重機の走行領域を自由に設定できる。したがって、施工効率が良い。
これに対し、1階の床が構造スラブである場合には、上方を重機が通過するために特別な補強が必要になることがある等、施工的な制約が増え、施工コストも嵩む。
上記のようなフラットスラブ構造10においては、フラットスラブ11は、既に説明したように、鉛直荷重、曲げ性状(曲げ応力)、及び押し抜き破壊(面外せん断応力)に抵抗する構造スラブとして機能している。そのうえで、キャピタル部15やフーチング21の大きさを適切に調整し、なおかつフラットスラブ11をあと施工にしたとしても、重機が走行する領域に鉄筋が突出しないようにすることで、土間コンクリートと同様に、重機の走行領域を確保することができる。
【0023】
また、独立フーチング基礎20は、フーチング21と、フーチング21の略中央に立設された基礎柱22と、を備えており、フラットスラブ11の下側にキャピタル部15が一体に形成され、キャピタル部15をフーチング21が支える。
このような構成によれば、フラットスラブ11と独立フーチング基礎20との接合部分に、キャピタル部15を設けることで、接合部分におけるコンクリートの水平断面積が大きくなる。このため、フラットスラブ11と独立フーチング基礎20が高い接合強度、および高剛性で接合される。
また、フラットスラブ11に作用する荷重を、効率的に、独立フーチング基礎20に伝達することができる。
【0024】
また、地下ピットPが設けられた領域において、フラットスラブ11の外周部11s側におけるコンクリート層12に対するフラットスラブ11の高さHsは、フラットスラブ11の中央部11c側におけるコンクリート層12に対するフラットスラブ11の高さHcよりも、小さい。
このような構成によれば、上記のようなフラットスラブ構造10を効率的に実現可能である。
【0025】
(実施形態の第1変形例)
なお、本発明のフラットスラブ構造は、図面を参照して説明した上述の実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
例えば、上記実施形態では、フラットスラブ11の下側にキャピタル部15が一体に形成され、キャピタル部15をフーチング21が支える構成としたが、これに限らない。
例えば、
図4に示すように、フーチング21の上方に基礎増打ち部30が設けられ、フラットスラブ11を基礎増打ち部30が支えるようにしてもよい。この場合、フラットスラブ11には、主筋18が設けられ、フラットスラブ11と基礎増打ち部30をと接続する接続筋19が設けられていてもよい。
このような構成によれば、フラットスラブ11と独立フーチング基礎20との接合部分に基礎増打ち部30を設けることで、接合部分におけるコンクリートの水平断面積が大きくなる。このため、フラットスラブ11と独立フーチング基礎20が高い接合強度、および高剛性で接合される。
【0026】
(実施形態の第2変形例)
また、上記実施形態において、
図3を用いて説明したように、地下ピットPの底面を形成するコンクリート層12は、フラットスラブ11の外周部11sでフラットスラブ11の下面に接するようにしたが、これに限らない。
図5に示すように、地下ピットPが設けられる領域の外周部において、フラットスラブ11の外周部11sとコンクリート層12との間に土留め壁50を設けるようにしてもよい。
【0027】
(実施形態の第3変形例)
また、上記実施形態では、フラットスラブ11の中央部の独立フーチング基礎20と地下ピットPを形成するコンクリート層12との間には勾配を有するフーチング外周勾配面105が設けられているが、フーチング外周勾配面105を設けることなく、平面部107が独立フーチング基礎20に向かって延在するようにして、地下ピットを形成する形態でも良い。よって、本形態では、フラットスラブ11の中央部ではフーチング外周勾配面105を設けないことで、地下ピットPを広く確保可能となる。
また、上記実施形態におけるフラットスラブは、スラブの横断面が矩形状に略一様に形成されたスラブである。なお、本明細書では、フラットスラブは、基礎柱同士の間に基礎梁を設けることなく、格子状に扁平梁を設けてスラブを形成するフラットスラブも含む。扁平梁を有するフラットスラブは、大断面の基礎梁を基礎柱同士の間に架設する構造に比べると、扁平梁の数が多く必要となる代わりに各梁の断面が小さく、各扁平梁の下面が、実質的に、フラットスラブの下面となる。このため、扁平梁を有するフラットスラブを用いる場合においても、フラットスラブの下面から下方すなわち地下ピットへ大きく突出する突出物が設けられないため、上記実施形態と同様に、配管の自由度を、高めることが可能となる。
また、上記実施形態では、独立フーチング基礎は、基礎梁、または地盤改良体の上部に設置しているが、基礎梁や地盤改良体を設けなく、独立フーチング基礎を設けても良い。
また、上記実施形態では、配管、設備等を収容するために地下ピットPが設けられているが、地下ピットPは水槽としても使用可能である。
また、上記実施形態では、フラットスラブはキャピタル部、または基礎増打ち部を介して独立フーチング基礎で支持されているが、キャピタル部や基礎増打ち部が設けられることなく、フラットスラブの横断面は一様に形成され、フーチングと基礎柱で構成される独立フーチング基礎で支持される形態であっても良い。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0028】
1 建物 20 独立フーチング基礎
2 1階床 21 フーチング
3 柱 22 基礎柱
10 フラットスラブ構造 30 基礎増打ち部
11 フラットスラブ 102 勾配部
11c 中央部 110、112 地盤改良体
11s 外周部 G 地盤
12 コンクリート層 Hc、Hs 高さ
15 キャピタル部 P 地下ピット