(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022176550
(43)【公開日】2022-11-30
(54)【発明の名称】射出成形機、射出成形機の制御装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
B29C 45/76 20060101AFI20221122BHJP
B22D 17/32 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
B29C45/76
B22D17/32 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021083038
(22)【出願日】2021-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼松 俊輔
【テーマコード(参考)】
4F206
【Fターム(参考)】
4F206AP05
4F206AR04
4F206AR06
4F206AR09
4F206JA07
4F206JD03
4F206JL01
4F206JN03
4F206JP13
4F206JP14
4F206JP15
4F206JP30
4F206JQ46
(57)【要約】
【課題】射出成形機の冷間起動防止動作におけるスクリュの負荷を軽減すること。
【解決手段】主制御器3は、温度測定器2が測定した温度に応じて加熱シリンダ11内の材料を加熱するヒータH1~H5制御し、スクリュ12を駆動するサーボモータM2の回転数Nに応じてサーボアンプA2を制御する。主制御器3は、1回目の起動時には、ヒータH1~H5の加熱を開始した後に、材料が射出可能な状態まで溶融したかを判定する材料溶融判定を行う。2回目以降の起動時には、ヒータH1~H5の加熱を開始した後に、前記材料に与えた熱量が材料溶融判定の開始から材料が溶融したと判定するまでに材料に与えた熱量に基づいて算出した基準値に到達するまで、スクリュ12を回転させずに待機状態とする昇温待機を行い、昇温待機の完了後に材料溶融判定を行う。そして、材料溶融判定の完了後にスクリュ12の通常運転を許可する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱シリンダ内の材料を加熱するヒータと、
前記加熱シリンダの温度を測定する温度測定器と、
前記温度測定器が測定した温度に応じて前記ヒータを制御する温度制御器と、
前記加熱シリンダ内のスクリュを駆動するモータと、
前記モータを駆動するサーボアンプと、
前記温度測定器が測定した温度に応じて前記温度制御器を制御し、前記モータの回転数に応じて前記サーボアンプを制御する制御器と、を備え、
前記制御器は、
1回目の起動時には、前記ヒータの加熱を開始した後に、前記加熱シリンダ内の材料が射出可能な状態まで溶融したかを判定する材料溶融判定を行い、
2回目以降の起動時には、前記ヒータの加熱を開始した後に、前記ヒータが前記材料に与えた熱量が、前記材料溶融判定の開始から前記材料が溶融したと判定するまでに前記ヒータが前記材料に与えた熱量に基づいて算出した基準値に到達するまで、前記スクリュを回転させずに待機状態とする昇温待機を行い、前記昇温待機の完了後に前記材料溶融判定を行い、
前記材料溶融判定の完了後に、前記スクリュの通常運転を許可する、
射出成形機。
【請求項2】
前記制御器は、前記ヒータの加熱を開始してから前記温度測定器が測定した温度が基準温度に到達した後に、前記材料溶融判定又は前記昇温待機を行う、
請求項1に記載の射出成形機。
【請求項3】
前記制御器は、
1回目の起動時に、前記材料溶融判定において、
所定のトルク制限値以下のトルクにて前記モータを回転させ、
前記材料溶融判定において、前記基準温度と前記温度測定器が測定した温度との差分の積算を開始し、
前記モータの回転数が所定の回転数となったときの積算値である第1の積算値を取得し、
2回目以降の起動時に、
前記昇温待機において、
前記差分の積算を開始し、
積算により得られる第2の積算値が前記第1の積算値に基づいて決定された前記基準値に到達したときに、前記昇温待機を完了し、
前記材料溶融判定において、
前記所定のトルク制限値以下のトルクにて前記モータを回転させ、
前記モータの回転数が前記所定の回転数となったときに前記材料溶融判定を完了する、
請求項2に記載の射出成形機。
【請求項4】
前記温度制御器がヒータに出力する電力を測定して、測定結果を前記制御器へ出力する電力測定器をさらに備え、
前記制御器は、
1回目の起動時に、
前記材料溶融判定において、
所定のトルク制限値以下のトルクにて前記モータを回転させ、
前記材料溶融判定において、前記電力測定器が測定した電力の積算を開始し、
前記モータの回転数が所定の回転数となったときの積算値である第1の積算値を取得し、
2回目以降の起動時に、
前記昇温待機において、
前記電力の積算を開始し、
積算により得られる第2の積算値が前記第1の積算値に基づいて決定された前記基準値に到達したときに、前記昇温待機を完了し、
前記材料溶融判定において、
前記所定のトルク制限値以下のトルクにて前記モータを回転させ、
前記モータの回転数が前記所定の回転数となったときに前記材料溶融判定を完了する、
請求項2に記載の射出成形機。
【請求項5】
前記制御器は、
前記基準値、前記基準温度、前記所定のトルク制限値、前記所定の回転数を格納可能な記憶部と、
前記温度制御器から受け取った前記温度を示す情報に応じて前記温度制御器を制御し、前記サーボアンプから受け取った前記モータの回転数を示す情報に応じて前記サーボアンプを制御し、前記材料溶融判定及び前記昇温待機の処理を行う演算器と、を備え、
前記演算器は、
1回目の起動時の前記材料溶融判定で取得した前記第1の積算値に基づいて決定した前記基準値を前記記憶部に書き込み、
前記基準温度、前記所定のトルク制限値、前記所定の回転数を前記記憶部から読み込み、
2回目以降の起動時においては前記基準値を前記記憶部から読み込む、
請求項3又は4のいずれか一項に記載の射出成形機。
【請求項6】
前記制御器が異常を検知したときに出力する異常検出信号に応じて警報を発する警報器をさらに備え、
前記制御器は、前記材料溶融判定の開始から第1監視時間の間に前記モータの回転数が前記所定の回転数に到達しない場合、又は、前記昇温待機の開始から第2監視時間の間に前記第2の積算値が前記基準値に到達しない場合、前記異常検出信号を出力する、
請求項3乃至5のいずれか一項に記載の射出成形機。
【請求項7】
前記基準値は、前記第1の積算値、前記第1の積算値に第1の値を加算した値、前記第1の積算値から第2の値を減算した値、及び、前記第1の積算値に所定の係数を乗算した値のいずれかである、
請求項3乃至6のいずれか一項に記載の射出成形機。
【請求項8】
加熱シリンダの温度を測定する温度測定器と、
前記温度測定器が測定した温度に応じて、前記加熱シリンダ内の材料を加熱するヒータを制御する温度制御器と、
前記温度測定器が測定した温度に応じて前記温度制御器を制御し、前記加熱シリンダ内のスクリュを駆動するモータの回転数に応じて、前記モータを駆動するサーボアンプを制御する制御器と、を備え、
前記制御器は、
1回目の起動時には、前記ヒータの加熱を開始した後に、前記加熱シリンダ内の材料が射出可能な状態まで溶融したかを判定する材料溶融判定を行い、
2回目以降の起動時には、前記ヒータの加熱を開始した後に、前記ヒータが前記材料に与えた熱量が、前記材料溶融判定の開始から前記材料が溶融したと判定するまでに前記ヒータが前記材料に与えた熱量に基づいて算出した基準値に到達するまで、前記スクリュを回転させずに待機状態とする昇温待機を行い、前記昇温待機の完了後に前記材料溶融判定を行い、
前記材料溶融判定の完了後に、前記スクリュの通常運転を許可する、
射出成形機の制御装置。
【請求項9】
加熱シリンダの温度を測定する温度測定器が測定した温度に応じて、前記加熱シリンダ内の材料を加熱するヒータを制御する処理と、
前記加熱シリンダ内のスクリュを駆動するモータの回転数に応じて、前記モータを駆動するサーボアンプを制御する処理と、をコンピュータに行わせるプログラムであって、
1回目の起動時には、前記ヒータの加熱を開始した後に、前記加熱シリンダ内の材料が射出可能な状態まで溶融したかを判定する材料溶融判定を行う処理と、
2回目以降の起動時には、前記ヒータの加熱を開始した後に、前記ヒータが前記材料に与えた熱量が、前記材料溶融判定の開始から前記材料が溶融したと判定するまでに前記ヒータが前記材料に与えた熱量に基づいて算出した基準値に到達するまで、前記スクリュを回転させずに待機状態とする昇温待機を行う処理と、
前記昇温待機の完了後に前記材料溶融判定を行う処理と、
前記材料溶融判定の完了後に、前記スクリュの通常運転を許可する処理と、をコンピュータに行わせる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形機、射出成形機の制御装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
運転停止状態の射出成形機では、加熱シリンダ内に充填された樹脂の温度が運転停止の間に低下し、樹脂が固化している場合が考え得る。この状態から射出成形機を起動したときに、樹脂が好適に溶融していない状態で、可塑化のために加熱シリンダ内のスクリュを回転させたり、射出のためにスクリュを前進させたりすると、スクリュやノズルに負荷がかかり、これらの部材が破損するおそれがある。そのため、樹脂が好適に溶融してからスクリュの回転又は前後移動を許可する冷間起動防止機能が用いられている。
【0003】
例えば、スクリュのトルクを制限しつつスクリュの回転数を監視して、所定の時間内に回転数が所定値に到達したならばスクリュの通常運転を許可する手法が提案されている(特許文献1)。この手法では、所定時間内にスクリュの回転数が所定値に達したならば樹脂が十分に溶融したものと判定し、回転数が所定値に達しない場合には樹脂の溶融が十分でないとしてアラームを発する。また、これに類似する冷間起動防止手法が様々に提案されている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-79914号公報
【特許文献2】特開2006-62276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述の冷間起動防止手法では、ヒータの昇温を介してから樹脂が十分に溶融するまでの間はスクリュに高い負荷がかかってしまうため、依然としてスクリュが破損するおそれが有る。
【0006】
また、スクリュの回転数を所定の時間監視する必要があるため、スクリュの回転によって電力を消費してしまう。
【0007】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施の形態にかかる射出成形機は、加熱シリンダ内の材料を加熱するヒータと、前記加熱シリンダの温度を測定する温度測定器と、前記温度測定器が測定した温度に応じて前記ヒータを制御する温度制御器と、前記加熱シリンダ内のスクリュを駆動するモータと、前記モータを駆動するサーボアンプと、前記温度に応じて前記温度制御器を制御し、前記モータの回転数に応じて前記サーボアンプを制御する制御器と、を有し、前記制御器は、1回目の起動時には、前記ヒータの加熱を開始した後に、前記材料が射出可能な状態まで溶融したかを判定する材料溶融判定を行い、2回目以降の起動時には、前記ヒータの加熱を開始した後に、前記ヒータが前記材料に与えた熱量が基準値に到達するまで、前記スクリュを回転させずに待機状態とする昇温待機を行い、前記昇温待機の完了後に前記材料溶融判定を行い、前記材料溶融判定の完了後に、前記スクリュの通常運転を許可するものである。
【0009】
一実施の形態にかかる射出成形機の制御装置は、加熱シリンダの温度を測定する温度測定器と、前記温度測定器が測定した温度に応じて、前記加熱シリンダ内の材料を加熱するヒータを制御する温度制御器と、前記温度測定器が測定した温度に応じて前記温度制御器を制御し、前記加熱シリンダ内のスクリュを駆動するモータの回転数に応じて、前記モータを駆動するサーボアンプを制御する制御器と、を有し、前記制御器は、1回目の起動時には、前記ヒータの加熱を開始した後に、前記加熱シリンダ内の材料が射出可能な状態まで溶融したかを判定する材料溶融判定を行い、2回目以降の起動時には、前記ヒータの加熱を開始した後に、前記ヒータが前記材料に与えた熱量が、前記材料溶融判定の開始から前記材料が溶融したと判定するまでに前記ヒータが前記材料に与えた熱量に基づいて算出した基準値に到達するまで、前記スクリュを回転させずに待機状態とする昇温待機を行い、前記昇温待機の完了後に前記材料溶融判定を行い、前記材料溶融判定の完了後に、前記スクリュの通常運転を許可するものである。
【0010】
一実施の形態にかかるプログラムは、加熱シリンダの温度を測定する温度測定器が測定した温度に応じて、前記加熱シリンダ内の材料を加熱するヒータを制御する処理と、前記加熱シリンダ内のスクリュを駆動するモータの回転数に応じて、前記モータを駆動するサーボアンプを制御する処理と、をコンピュータに行わせるプログラムであって、1回目の起動時には、前記ヒータの加熱を開始した後に、前記加熱シリンダ内の材料が射出可能な状態まで溶融したかを判定する材料溶融判定を行う処理と、2回目以降の起動時には、前記ヒータの加熱を開始した後に、前記ヒータが前記材料に与えた熱量が、前記材料溶融判定の開始から前記材料が溶融したと判定するまでに前記ヒータが前記材料に与えた熱量に基づいて算出した基準値に到達するまで、前記スクリュを回転させずに待機状態とする昇温待機を行う処理と、前記昇温待機の完了後に前記材料溶融判定を行う処理と、前記材料溶融判定の完了後に、前記スクリュの通常運転を許可する処理と、をコンピュータに行わせるものである。
【発明の効果】
【0011】
一実施の形態によれば、射出成形機の冷間起動防止動作におけるスクリュの負荷を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施の形態1にかかる射出成形機の構成を模式的に示す側面図である。
【
図2】実施の形態1にかかる射出装置の要部の拡大図である。
【
図3】実施の形態1にかかる型締装置のトグル機構の構成を模式的に示す図である。
【
図4】実施の形態1にかかる突き出し機構の構成を模式的に示す図である。
【
図5】冷間起動防止動作にかかる射出成形機の基本構成を模式的に示す図である。
【
図6】冷間起動防止動作にかかる射出成形機の構成をより詳細に示す図である。
【
図7】実施の形態1にかかる制御装置を実現するためのハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図8】実施の形態1にかかる射出成形機の冷間起動防止動作のフローチャートである。
【
図9】実施の形態1にかかる射出成形機の冷間起動防止動作における加熱シリンダ及び材料の温度とモータのトルク及び回転数とを示す図である。
【
図10】実施の形態1にかかる射出成形機の材料溶融判定を示すフローチャートである。
【
図11】実施の形態1にかかる射出成形機の昇温待機を示すフローチャートである。
【
図12】実施の形態2にかかる射出成形機の構成を模式的に示す側面図である。
【
図13】実施の形態2にかかる射出成形機の冷間起動防止動作のフローチャートである。
【
図14】実施の形態2にかかる射出成形機の冷間起動防止動作における加熱シリンダ及び材料の温度と、モータのトルク及び回転数と、ヒータに与える電力と、を示す図である。
【
図15】実施の形態2にかかる射出成形機の材料溶融判定の動作を示すフローチャートである。
【
図16】実施の形態2にかかる射出成形機の昇温待機を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、以下の実施の形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜簡略化されている。また、同一の要素には、同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0014】
実施の形態1
本実施の形態にかかる射出成形機における冷間起動防止動作を理解するための前提として、まず、実施の形態1にかかる射出成形機1000の概要について説明する。
図1に、実施の形態1にかかる射出成形機1000の構成を模式的に示す側面図を示す。射出成形機1000は、ベッド103と、ベッド103上に搭載された射出装置101及び型締装置102を有する。ベッド103には、射出装置101及び型締装置102を駆動するためのモータに電力を供給するための給電装置104が内蔵されている。
【0015】
ベッド103は、例えば床面に載置され、射出装置101及び型締装置102を固定するための固定側部材として構成される。射出装置101及び型締装置102は、成形品の射出成形を行うために、後述するようにベッド103、すなわち固定側部材に固定され、かつ、サーボモータによって駆動される可動側部材105を構成している。サーボモータは、給電装置104から供給される直流電圧をインバータによって所定の周波数及び電圧の3相交流電圧に変換してサーボモータに供給することで、サーボモータを駆動する。
【0016】
射出装置101は、ベッド103上に設けられた基台15に取り付けられており、ホッパ13から加熱シリンダ11に投入された材料ペレット、例えば樹脂ペレットを可塑化し、可塑化した樹脂を金型に射出する装置として構成される。加熱シリンダ11内に投入された樹脂ペレットは、加熱シリンダ11に挿入されたスクリュ12が回転しながら軸方向(+X方向、射出方向の反対方向)に後退することで可塑化(溶融)される。その後、スクリュ12が回転しながら軸方向(-X方向、射出方向)に前進することで、可塑化された材料がノズル14から金型60内に射出される。スクリュ12は、射出用のサーボモータM1によって軸方向に駆動され、可塑化用のサーボモータM2によって回転方向に駆動される。
【0017】
スクリュ12を軸方向(X方向)へ駆動させる機構について説明する。
図2に、実施の形態1にかかる射出装置101の要部の拡大図を示す。スクリュ12の尾部(+X方向の端部)は、回転可能かつ軸方向(X方向)の移動が規制されるように、Y-Z平面を主面とする中間プレート51に軸受けされている。中間プレート51の上部にはボールナット52が固定されており、ボールナット52にはボールネジ53が螺合している。ボールネジ53の+X方向の端部にはプーリ55が固着され、サーボモータM1の回転軸にはプーリ54が固着されている。サーボモータM1は、給電装置104から給電される、ベッド103内に設けられたサーボアンプA1によって駆動される。プーリ54とプーリ55との間にはベルトB1が張られており、ベルトB1によって、プーリ54の回転力、すなわちサーボモータM1の回転力がプーリ55に伝達され、これによりボールネジ53を回転させることができる。ボールネジ53が回転してボールナット52が固定された中間プレート51が軸方向(X方向)に駆動されることで、連動してスクリュ12が軸方向(X方向)に駆動される。これにより、中間プレート51が射出方向(-X方向)に駆動されることで、ノズル14から溶融した材料を金型に射出することができる。中間プレート51が射出方向とは反対方向(+X方向)に駆動されることで、例えば、加熱シリンダ11内に材料を導入することができる。
【0018】
次いで、スクリュ12を回転方向へ駆動させる機構について説明する。加熱シリンダ11から中間プレート51へ向けて露出したスクリュ12の軸はプーリ57に挿通され、プーリ57はスクリュ12に固着されている。サーボモータM2の回転軸にはプーリ56が固着されている。サーボモータM2は、給電装置104から給電される、ベッド103内に設けられたサーボアンプA2によって駆動される。プーリ56とプーリ57との間にはベルトB2が張られており、ベルトB2によって、プーリ56の回転力、すなわちサーボモータM1の回転力がプーリ57に伝達され、スクリュ12を回転させることができる。これにより、スクリュ12を回転させることで、加熱シリンダ11内の材料を可塑化することができる。
【0019】
基台15は、図示しないサーボモータによって、軸方向に駆動可能に構成される。これにより、射出装置101を、X軸に沿った方向、すなわち型締装置102に近づく方向及び遠ざかる方向に移動させることができる。このサーボモータと、サーボモータの駆動力を基台15に伝達する機構については、図面の簡略化のため、図示を省略している。
【0020】
型締装置102は、成形品の金型60を型締めする装置であり、型締めに用いられるサーボモータM3と、成形品を金型から突き出すためのサーボモータM4と、が設けられる。型締装置102は、型締用のサーボモータM3を駆動することで、例えば軸方向(X方向)に2つに分離している金型をX方向に締め付けて固定する。また、金型に材料(例えば樹脂)を射出して成形された成形品は、突き出し用のサーボモータM4を駆動することで、軸方向に駆動可能な突き出しピンを成形品に突き当てることで、例えば+X方向に成形品を突き出す。以下、型締装置102の構成及び動作について具体的に説明する。
【0021】
型締装置102は、トグル式型締装置として構成されている。
図3に、実施の形態1にかかる型締装置102のトグル機構41の構成を模式的に示す。型締装置102では、Y-Z平面を主面とする板状部材である固定盤20、可動盤30及び型締ハウジング40が軸方向(X方向)に離隔して配列されている。固定盤20は固定側金型61を保持するように構成され、可動盤30は可動側金型62を保持するように構成される。
【0022】
固定盤20と型締ハウジング40との間には、可動盤30を貫通する複数本のタイバー21が設けられている。この例では、4本のタイバー21が固定盤20と型締ハウジング40とを連結している。固定盤20の4つのコーナー近傍には、軸方向(X方向)に固定盤20を貫通する貫通孔が設けられており、これらの4つの貫通孔に4本のタイバー21の固定盤20の側の端部が挿通されて固定されている。型締ハウジング40の4つのコーナー近傍には、軸方向(X方向)に型締ハウジング40を貫通する貫通孔が設けられており、これらの4つの貫通孔に4本のタイバー21の型締ハウジング40の側の端部が挿通されて固定されている。可動盤30の4つのコーナー近傍には、軸方向(X方向)に可動盤30を貫通する貫通孔が設けられており、これらの4つの貫通孔に4本のタイバー21が挿通されている。但し、4本のタイバー21は可動盤30には固定されておらず、可動盤30は4本のタイバー21に対して軸方向(X方向)に摺動可能である。
【0023】
可動盤30と型締ハウジング40との間は、トグル機構41によって連結されている。トグル機構41は、一般的なトグル機構として構成することができ、この例では以下で説明する構成を有する。トグル機構41は、クロスヘッド42、ボールナット43、ボールネジ44、一対の第1リンク45、一対の第2リンク46及び一対の第3リンク47を有するものとして構成される。
【0024】
トグル機構41を駆動するクロスヘッド42はボールナット43に固定され、ボールナット43にはボールネジ44が螺合している。ボールネジ44は、回転可能かつ軸方向(X方向)の移動が規制されるように、型締ハウジング40に軸受けされている。
【0025】
第1リンク45は、Z-X平面を主面とする平板部材からなる棒状部材として構成される。第2のリンク46は、Z-X平面を主面とする平板部材からなる、概ねL字の形状を有する部材として構成される。第1リンク45は、Z-X平面を主面とする平板部材からなる比較的短い棒状部材として構成される。第1リンク45の一端は可動盤30にピン結合される。第2リンク46は、L字形状の屈曲部が成す鋭角が可動盤30に方向を向くように配置されており、第1リンク45の他端は第2リンク46のL字形状の屈曲部にピン結合される。第2リンク46の一端は型締ハウジング40にピン結合され、多端は第3リンク47の一端とピン結合される。第3リンク47の他端は、クロスヘッド42とピン結合される。なお、
図3から明らかなように、ここでいうピン結合とは、第1リンク45~第3リンク47の主面(Z-X)方向の法線方向(Y方向)を軸とするピンによって2つの部材を回転可能に結合することを言う。
【0026】
サーボモータM3は、給電装置104によって給電され、ベッド103内に設けられたサーボアンプA3によって駆動される。サーボモータM3の回転軸にはプーリ48が固着され、ボールネジ44にはプーリ49が固着されている。プーリ48とプーリ49との間にはベルトB3が張られており、ベルトB3によってプーリ48の回転力がプーリ49に伝達され、これによりボールネジ44を回転させることができる。
【0027】
以上の構成により、型締装置102では、ボールネジ44が回転してボールナット43が軸方向(X方向)に駆動されることで、連動してクロスヘッド42が軸方向(X方向)に駆動され、その結果、トグル機構41が駆動される。クロスヘッド42が型締ハウジング40に近づく方向(-X方向)に駆動される場合には、トグル機構41は、可動盤30と型締ハウジング40とを近づけるように駆動される。これにより、固定盤20に保持された固定側金型61と可動盤30に保持された可動側金型62との間を開くことができる。クロスヘッド42が型締ハウジング40から遠ざかる方向(+X方向)に駆動される場合には、トグル機構41は、可動盤30と型締ハウジング40とを遠ざけるように駆動される。これにより、固定盤20に保持された固定側金型61と可動盤30に保持された可動側金型62との間を閉じることができる。
【0028】
可動盤30には、金型から成形品を取り外すための突き出し機構が設けられている。
図4に、実施の形態1にかかる突き出し機構31の構成を模式的に示す。突き出し機構31は、突き出しプレート32、ボールネジ33及び突き出しピン34を有する。
【0029】
ボールネジ33は、可動盤30から型締ハウジング40を向く方向(-X方向)に突き出しており、一端が回転可能かつ軸方向(X方向)の移動が規制されるように可動盤30に軸受けされている。ボールネジ33の突き出したネジ部分は、Y-Z平面を主面とする板状部材である突き出しプレート32の中央部に螺合している。突き出しプレート32からは、可動盤30を向く方向(+X方向)へ向けて、複数の突き出しピン34が延在している。可動盤30及び可動側金型62には複数の突き出しピンが挿通可能な貫通孔が設けられる。
【0030】
突き出し用のサーボモータM4は、回転軸が射出方向(-X方向)に突き出すように、可動盤30に固定されている。サーボモータM4は、給電装置104によって給電され、ベッド103内に設けられたサーボアンプA4によって駆動される。
【0031】
サーボモータM4の回転軸にはプーリ35が固着され、ボールネジ33の他端にはプーリ36が固着されている。プーリ35とプーリ36との間にはベルトB4が張られており、ベルトB4によってプーリ35の回転力がプーリ36に伝達され、これによりボールネジ33を回転させることができる。
【0032】
以上の構成により、突き出し機構31では、ボールネジ33が回転して突き出しプレート32が軸方向(X方向)に駆動されることで、連動して複数の突き出しピン34が軸方向(X方向)に駆動される。突き出しプレート32が可動盤30に近づく方向(+X方向)に駆動される場合には、突き出しピン34が可動盤30及び可動側金型62に設けられた貫通孔に挿入される方向(+X方向)に駆動される。これにより、突き出しピン34が駆動されて可動側金型62の成形品側の表面から突き出すことで、成形品を可動側金型62から取り外すことができる。突き出しプレート32が可動盤30から遠ざかる方向(-X方向)に駆動される場合には、突き出しピン34が可動盤30及び可動側金型62に設けられた貫通孔から引き抜かれる方向(-X方向)に駆動される。これにより、突き出しピン34を貫通孔内に収容することができる。
【0033】
次に、射出成形機1000における冷間起動防止動作について説明する。
図5に、冷間起動防止動作にかかる射出成形機1000の基本構成を模式的に示す。制御装置100は、温度制御器1、温度測定器2及び主制御器3を有する。
【0034】
加熱シリンダ11の外周面には、加熱シリンダ11内の材料を加熱するため、複数のヒータが設けられる。この例では、加熱シリンダ11及びノズル14を含む部分が軸方向に5つの領域Z1~Z5に分けられ、領域Z1~Z5のそれぞれにヒータH1~H5が設けられる。ヒータH1~H5の温度は、主制御器3が温度制御器1へ制御信号CONを与えて、ヒータH1~H5に供給する電流IHを調整することで制御される。
【0035】
領域Z1~Z5には、それぞれ温度センサS1~S5が設けられる。領域Z1~Z5の加熱シリンダ11の温度を示す温度センサS1~S5の出力信号は温度測定器2へ出力され、これにより、温度測定器2は、加熱シリンダ11の領域Z1~Z5の温度T1~T5を監視することができる。温度センサS1~S5は、材料の温度になるべく近い温度を測定するため、加熱シリンダ11において、例えば加熱シリンダ11の内面に近い位置に挿入される。温度測定器2は、温度T1~T5を示す信号を、主制御器3へ出力する。
【0036】
なお、図面の簡略化のため、
図1及び2では、ヒータ及び温度センサの表示を省略している。
【0037】
主制御器3は、射出成形機1000の各部の動作を制御可能に構成される。以下、主制御器3について、より詳細に説明する。
【0038】
図6に、冷間起動防止動作にかかる射出成形機1000の構成をより詳細に示す。主制御器3は、少なくとも、演算部3A及び記憶部3Bを有する。記憶部3Bには、主制御器3が冷間起動防止動作において用いる情報が格納され、かつ、主制御器3が生成した情報が書き込み可能に構成される。演算部3Aは、記憶部3Bから読み込んだ情報に応じて、サーボアンプA2、温度制御器1、警報器4及び射出装置101の動作を制御する。
【0039】
次いで、主制御器3のハードウェア構成の例について説明する。主制御器3の一部又は全部は、コンピュータにより構成することが可能である。
図7は、実施の形態1にかかる主制御器3を実現するためのハードウェア構成の一例を示す図である。コンピュータは、物理的に単一である必要はなく、分散処理を実行する場合には、複数であってもよい。
図7に示すように、コンピュータ900は、CPU(Central Processing Unit)901、ROM(Read Only Memory)902及びRAM(Random Access Memory)903を有し、これらがバス904を介して相互に接続されている。尚、コンピュータを動作させるためのOSソフトなどは、説明を省略するが、コンピュータ900も当然有しているものとする。
【0040】
コンピュータ900において、CPU11は主制御器3の演算部3Aに対応し、記憶部908は主制御器3の演算部3Aに対応する。なお、一時的に使用する情報の読み込み、書き込みについては、必要に応じて、RAM903を記憶部3Bとして用いてもよい。また、情報の読み込みについては、必要に応じて、ROM902を記憶部3Bとして用いてもよい。ROM903、RAM903及び記憶部908は、いずれを用いてもよいし、この中の任意の2つを組み合わせて用いてもよいし、3つを組み合わせて用いてもよい。
【0041】
バス904には、入出力インターフェイス905も接続されている。入出力インターフェイス905には、例えば、キーボード、マウス、センサなどよりなる入力部906、CRT、LCDなどよりなるディスプレイ、並びにヘッドフォンやスピーカなどよりなる出力部907、ハードディスクなどより構成される記憶部908、モデム、ターミナルアダプタなどより構成される通信部909などが接続されている。
【0042】
CPU901は、ROM902に記憶されている各種プログラム、又は記憶部908からRAM903にロードされた各種プログラムに従って各種の処理、本実施の形態においては、例えば後述する制御装置100の各部の処理を実行する。RAM903には又、CPU901が各種の処理を実行する上において必要なデータなども適宜記憶される。
【0043】
通信部909は、例えば図示しないインターネットを介しての通信処理を行ったり、CPU901から提供されたデータを送信したり、通信相手から受信したデータをCPU901、RAM903、記憶部908に出力したりする。記憶部908はCPU901との間でやり取りし、情報の保存・消去を行う。通信部909は又、他の装置との間で、アナログ信号又はディジタル信号の通信処理を行う。
【0044】
入出力インターフェイス905はまた、必要に応じてドライブ910が接続され、例えば、磁気ディスク911、光ディスク912、フレキシブルディスク913、又は半導体メモリ914などが適宜装着され、それらから読み出されたコンピュータプログラムが必要に応じて記憶部908にインストールされる。
【0045】
図6に示すように、制御装置100は、警報器4をさらに有していてもよい。警報器4は、主制御器3が異常を検出したときに出力する異常検出信号ALMに応じて、警報を発する。警報器4としては、ブザーなどの音響により警報を発する機器、回転灯及びシグナルタワーなどの光により警報を発する機器、及び、これらを組み合わせた機器又はシステムを適宜用いてもよい。
【0046】
次いで、射出成形機1000の冷間起動防止動作について説明する。
図8は、射出成形機1000の冷間起動防止動作のフローチャートである。また、
図9に、射出成形機1000の冷間起動防止動作における加熱シリンダ及び材料の温度とサーボモータM2のトルク及び回転数と、を示す。
【0047】
ステップS1
制御装置100の主制御器3は、射出成形機1000の起動開始を指令する開始指令を受け取ったならば、冷間起動防止動作を開始する(
図9のタイミングt1)。
【0048】
ステップS2
主制御器3は、温度制御器1に対してヒータH1~H5の昇温の開始を指令し、かつ、温度測定器2に対して温度センサS1~S5が検出する加熱シリンダ11の領域Z1~Z5の温度T1~T5の測定開始を指令する。
【0049】
ステップS3
主制御器3の演算部3Aは、記憶部3Bから基準温度TREFを読み出す。基準温度TREFは、材料のガラス転移点、融点、又は、経験則に基づく値など、材料の溶融状態が変化する値に設定される。
【0050】
ステップS4
主制御器3は、温度測定器2から出力される領域Z1~Z5の温度T1~T5が基準温度TREFに到達したかを継続的に監視する。ここで、測定した温度が目標とする温度に到達したかを判定する方法について検討する。本実施の形態においては、温度T1~T5の全てが目標とする温度に到達したことをもって判定を行ってもよい。また、温度T1~T5のうち、判定対象となる1つ以上の温度を予め決めておき、判定対象の温度の全てが目標とする温度に到達したことをもって判定を行ってもよい。
【0051】
ステップS5
温度T1~T5が基準温度T
REFに到達したならば(
図9のタイミングt2)、主制御器3は、射出成形機1000の起動が1回目であるか否かを判定する。起動が1回目であるか否かの判定は、例えば、射出成形機1000の起動が1回目であることを指定する指令が予め入力されている場合に起動が1回目であると判定し、指令の入力がない場合には起動が2回目以降であると判定してもよい。また、射出成形機1000に設定されている射出条件が変更された場合には1回目の起動と判定し、射出条件が変更されていない場合には2回目以降の起動と判定してもよい。なお、ここでいう射出条件とは、例えば、材料の種類、昇温目標温度、昇温時の温度プロファイル、モータの回転数、モータのトルクなどの、成形品の製作にかかる各種の条件を指すものである。なお、射出成形機1000の起動が1回目であるか否かを判定する方法については、これらの例に限られるものではない。
【0052】
ステップSA
射出成形機1000の起動が1回目である場合、又は、ステップSB5の完了後(
図9のタイミングt3)、材料溶融判定が開始される。
図10は、実施の形態1にかかる射出成形機1000の材料溶融判定の動作を示すフローチャートである。材料溶融判定(ステップSA)は、ステップSA1~SA7で構成される。
【0053】
ステップSA1
射出成形機1000の起動が1回目である場合、又は、ステップSB5の完了後、材料溶融判定を開始する。まず、主制御器3は、材料溶融判定における監視時間の上限を規定する第1基準監視時間TM1、可塑化用のサーボモータM2の回転トルク制限値TR及び基準回転数NREFを記憶部から読み込む。
【0054】
ステップSA2
主制御器3は、基準温度TREFと測定した温度との差分の積算を開始する。温度差分の積算は、温度T1~T5の全てについて行ってもよいし、予め温度T1~T5から選択した温度について行ってもよい。また、ステップS5の温度判定は、温度T1~T5のうちで最も遅く基準温度TREFに到達した温度について行ってもよい。
【0055】
ステップSA3
主制御器3は、サーボアンプA2に、回転トルク制限値TRを指令する。これにより、サーボアンプA2は、回転トルクの上限値として回転トルク制限値TRを用いて可塑化用のサーボモータM2を駆動する。これにより、スクリュ12の回転が始まる。なお、サーボアンプA2は、可塑化用のサーボモータM2に供給する電流値IMをモニタし、これにより可塑化用のサーボモータM2に回転トルクを制御可能に構成されている。回転トルク制限値TRは、材料が溶融している場合にスクリュ12を回転させるのに十分な値であり、かつ、材料が溶融していない場合にスクリュ12が破損しない程度の値が設定される。
【0056】
ステップSA4
主制御器3は、監視時間のカウントを開始し、カウント時間TC1が第1基準監視時間TM1に到達していないことを継続的に監視する。
【0057】
ステップSA5
主制御器3は、可塑化用のサーボモータM2に取り付けられたエンコーダ(不図示)から出力されるサーボモータM2の回転数Nを示す信号を、サーボアンプA2を経由して受け取り、サーボモータM2の回転数Nが基準回転数NREFに到達するかを継続的に監視する。基準回転数NREFは、材料が溶融した状態でスクリュ12を回転させた場合にスクリュ12に過大な負荷がかからず、かつ、材料が溶融している状態でスクリュ12を回転させた場合にスクリュ12が破損せず、かつ、材料が変質しない値に設定される。なお、主制御器3は、サーボモータM2の回転数Nを示す信号を、サーボアンプA2を経由せずにサーボモータM2から受け取ってもよい。
【0058】
ステップSA6
カウント時間T
C1が第1基準監視時間T
M1に到達する前にサーボモータM2の回転数Nが基準回転数N
REFに到達したならば、主制御器3は、温度差分の積算を停止する(
図9のタイミングt4)。上述したように、材料溶融判定においてはトルク及び回転数を制限してスクリュを回転させるため、材料の加熱に対するスクリュのせん断熱の寄与は小さいと考えられ、材料の加熱はヒータによる熱量によるものが支配的と考え得る。そのため、本実施の形態のように、加熱シリンダ11の内面になるべく近い位置に配置した温度センサによって温度を測定することで、材料の温度に近似した温度を測定できる。その結果、ヒータの加熱に対して強い相関を有する温度を測定して基準温度との差分を積算することで、材料の加熱に寄与した熱量を好適に見積もることが可能となる。
【0059】
ステップSA7
サーボモータM2の回転数が基準回転数NREFすることなくカウント時間TC1が第1基準監視時間TM1に到達したならば、主制御器3は警報を発して、冷間起動防止動作を中止する。
【0060】
ステップSB
射出成形機1000の起動が1回目ではない、すなわち2回目以降である場合、昇温待機が開始される。
図11は、実施の形態1にかかる射出成形機1000の昇温待機を示すフローチャートである。昇温待機(ステップSB)は、ステップSB1~SB7で構成される。
【0061】
ステップSB1
射出成形機1000の起動が1回目ではない、すなわち2回目以降である場合、主制御器3は、昇温待機における監視時間の上限を規定する第2基準監視時間TM2と、基準積算値INTと、を記憶部から読み込む。なお、ここでは、基準積算値を単に基準値とも称する。
【0062】
ステップSB2
主制御器3は、基準温度TREFと測定した温度との差分の積算を開始する。
【0063】
ステップSB3
主制御器3は、監視時間のカウントを開始し、カウント時間TC2が第2基準監視時間TM2に到達していないことを継続的に監視する。
【0064】
ステップSB4
主制御器3は、積算によって得られた温度差分積算値DINTが基準積算値INTに到達するかを継続的に監視する。なお、昇温待機(ステップSB)において取得した温度差分積算値DINTは、第2の積算値とも称する。
【0065】
ステップSB5
カウント時間T
C2が第2基準監視時間T
M2に到達する前に温度差分積算値D
INTが基準積算値INTに到達したならば、主制御器3は、温度差分の積算を停止する(
図9のタイミングt3)。
【0066】
ステップSB6
ステップSB5の後、主制御器3は、温度差分積算値DINTの値をリセットして、昇温待機を完了する。
【0067】
ステップSB7
温度差分積算値DINTが基準積算値INTに到達することなくカウント時間TC2が第2基準監視時間TM2に到達したならば、主制御器3は異常検出信号ALMを警報器4へ出力して、冷間起動防止動作を中止する。
【0068】
図8に戻って、冷間起動防止動作について引き続き説明する。
【0069】
ステップS6
主制御器3は、再度、射出成形機1000の起動が1回目であるか否かを判定する。
【0070】
ステップS7
射出成形機1000の起動が1回目である場合、主制御器3は、材料溶融判定(ステップSA)での積算によって得られた温度差分積算値DINTを基準積算値INTとして記憶部に書き込む。なお、1回目の起動時の材料溶融判定(ステップSA)において取得した温度差分積算値DINTは、第1の積算値とも称する。
【0071】
ステップS8
ステップS8の後、又は、射出成形機1000の起動が2回目以降である場合(ステップS7:NO)、主制御器3は、温度差分積算値DINTの値をリセットする。
【0072】
ステップS9
主制御器3は、スクリュ12の通常運転を許可して、処理を終了する。
【0073】
以上、本構成によれば、1回目の起動の場合には、スクリュ12の回転を早期に開始して材料溶融判定を行うことで、材料が確実に溶融した後にスクリュ12に通常運転を許可する。
【0074】
これに対し、2回目以降の起動の場合には、1回目の起動時に取得した時間差分積算値を利用して、時間差分積算値に達するまでの間の時間、スクリュ12を回転させることなく、ヒータによって加熱シリンダ11の昇温させる昇温待機を行う。そして、昇温待機の終了後、すなわち、1回目の起動の場合に比べて材料が高温の状態で材料溶融判定が開始するので、材料溶融判定に要する時間を短縮することができる。これにより、比較的硬い未溶融の材料と接触しながらスクリュ12を回転させる時間が短縮され、スクリュ12に高い負荷がかかる時間を削減できるので、スクリュ12の破損を好適に防止することが可能となる。
【0075】
実施の形態2
実施の形態2にかかる射出成形機について説明する。実施の形態1では、材料の昇温に要した熱量を測定するために温度差分積算値を用いていたが、材料の昇温に要する熱量の測定方法はこれに限られるものではない。本実施の形態では、ヒータに与える電力を積算することで材料の昇温に要する熱量の測定を行う例について説明する。
【0076】
図12に、実施の形態2にかかる射出成形機2000の構成を模式的に示す側面図を示す。射出成形機2000は、実施の形態1にかかる射出成形機1000の制御装置100を制御装置200に置換した構成を有する。
【0077】
制御装置200は、制御装置200の主制御器3を主制御器5に置換し、かつ、電力測定器6を追加した構成を有する。主制御器5の演算部5A及び記憶部5Bは、それぞれ演算部3A及び記憶部3Bに対応する。電力測定器6は、温度制御器1がヒータH1~H5へ供給する電力を測定し、測定した電力Pを主制御器3へ出力可能に構成される。
【0078】
次いで、射出成形機2000の冷間起動防止動作について説明する。
図13は、射出成形機2000の冷間起動防止動作のフローチャートである。また、
図14に、射出成形機2000の冷間起動防止動作における加熱シリンダ及び材料の温度と、モータのトルク及び回転数と、ヒータに与える電力とを示す。実施の形態1(
図8)と比較して、ステップSA及びSBはそれぞれステップSC及びSDに置換され、かつ、ステップS7及びS8はそれぞれステップS10及びS11に置換される。
【0079】
ステップS1~ステップS5
ステップS1~ステップS5は、
図8と同様であるので、重複する説明を省略する。
【0080】
ステップSC
射出成形機1000の起動が1回目である場合(
図14のタイミングt2)、又は、ステップSD5の完了後(
図14のタイミングt3)、材料溶融判定が開始される。
図15は、実施の形態2にかかる射出成形機2000の材料溶融判定の動作を示すフローチャートである。材料溶融判定(ステップSC)は、ステップSC1~SC7で構成される。
【0081】
ステップSC1
ステップSC1は、
図10のステップSA1と同様であるので、重複する説明を省略する。
【0082】
ステップSC2
主制御器3は、ヒータに与える電力量Pの積算を開始する。
【0083】
ステップSC3~SC5、SC7
ステップSC3~SC5、SC7は、それぞれ
図10のステップSA3~SA5、SA7と同様であるので、重複する説明を省略する。
【0084】
ステップSC6
カウント時間TC1が第1基準監視時間TM1に到達する前にサーボモータM2の回転数Nが基準回転数NREFに到達したならば、主制御器3は、電力の積算を停止する。実施の形態1で説明したように、材料溶融判定においてはトルク及び回転数を制限してスクリュを回転させるため、材料の加熱に対するスクリュのせん断熱の寄与は小さいと考えられ、材料の加熱はヒータによる熱量によるものが支配的と考え得る。そのため、加熱シリンダ11の内面になるべく近い位置に配置した温度センサによって温度を測定することで、材料の温度に近似した温度を測定できる。その結果、ヒータの加熱に対して強い相関を有すると考え得るヒータに与える電力を測定して積算することで、材料の加熱に寄与した熱量を好適に見積もることが可能となる。
【0085】
ステップSD
射出成形機1000の起動が1回目ではない、すなわち2回目以降である場合、昇温待機が開始される。
図16は、実施の形態2にかかる射出成形機2000の昇温待機を示すフローチャートである。昇温待機(ステップSD)は、ステップSD1~SD7で構成される。
【0086】
ステップSD1
ステップSD1は、
図11のステップSB1と同様であるので、重複する説明を省略する。
【0087】
ステップSD2
主制御器3は、ヒータに与える電力量Pの積算を開始する。なお、本実施の形態においても、昇温待機(ステップSD)において取得した電力積算値DINTは、第2の積算値とも称する。
【0088】
ステップSD3、SD4、SD7
ステップSD3、SD4及びSD7は、それぞれ
図11のステップSB3、SB4及びSB7と同様であるので、重複する説明を省略する。
【0089】
ステップSD5
カウント時間T
C2が第2基準監視時間T
M2に到達する前に電力積算値P
INTが基準積算値INTに到達したならば、主制御器3は、電力の積算を停止する(
図14のタイミングt3)。
【0090】
ステップSD6
ステップSD5の後、主制御器3は、電力積算値PINTの値をリセットして、昇温待機を完了する。
【0091】
図13に戻って、冷間起動防止動作について引き続き説明する。
【0092】
ステップS6
図8の場合と同様に、主制御器3は、再度、射出成形機1000の起動が1回目であるか否かを判定する。
【0093】
ステップS10
射出成形機2000の起動が1回目である場合、主制御器3は、積算によって得られた電力積算値PINTを基準積算値INTとして記憶部に書き込む。なお、本実施の形態においても、1回目の起動時の材料溶融判定(ステップSC)において取得した温度差分積算値DINTは、第1の積算値とも称する。
【0094】
ステップS11
ステップS10の後、又は、射出成形機2000の起動が2回目以降である場合(ステップS6:NO)、主制御器3は、電力積算値PINTの値をリセットする。
【0095】
ステップS9
図8の場合と同様に、主制御器3は、スクリュ12の通常運転を許可して、処理を終了する。
【0096】
以上、本構成によれば、時間差分の積算に代えて、ヒータの電力の積算を用いて昇温時の時間の測定を行っても、実施の形態1と同様に、1回目の起動の場合には、スクリュ12の回転を早期に開始して材料溶融判定を行うことで、材料が確実に溶融した後にスクリュ12に通常運転を許可する。
【0097】
これに対し、2回目以降の起動の場合には、1回目の起動時に取得した電力積算値を利用して、電力積算値に達するまでの間の時間、スクリュ12を回転させることなく、ヒータによって加熱シリンダ11の昇温させる昇温待機を行う。そして、昇温待機の終了後、すなわち、1回目の起動の場合に比べて材料が高温の状態で材料溶融判定が開始するので、材料溶融判定に要する時間を短縮することができる。これにより、比較的硬い未溶融の材料と接触しながらスクリュ12を回転させる時間が短縮され、スクリュ12に高い負荷がかかる時間を削減できるので、スクリュ12の破損を好適に防止することが可能となる。
【0098】
その他の実施の形態
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、上述の実施の形態では、積算した値と比較する基準値として、1回目の起動時の材料溶融判定で取得した温度差分積算値又は電力積算値をそのまま基準値として用いるものとして説明した。しかし、これは例示に過ぎず、基準値は、温度差分積算値又は電力積算値に基づいて決定した値としてもよい。基準値としては、例えばマージンを設定するために、温度差分積算値又は電力積算値に所定の値を加算した値、温度差分積算値又は電力積算値から所定の値を減算した値、及び、温度差分積算値又は電力積算値に所定の係数を乗算した値のいずれかであってもよい。
【0099】
上述の実施の形態では、材料を射出するときにスクリュの前後動をモータによって行う電動型射出成形機について説明したが、射出成形機は電動型に限られない。上述した冷間起動防止装置は、材料を射出するときにスクリュの前後動を油圧によって行う油圧型射出成形機に適用してもよい。
【0100】
上述の実施の形態では、射出される材料として樹脂を用いる例について説明したが、上述した冷間起動防止装置は、マグネシウムなどの金属材料を射出する射出成形機に適用してもよい。
【0101】
加熱シリンダ11内の材料を加熱するヒータ及び温度センサが5つずつ設けられる構成について説明したが、これは例示に過ぎず、必要に応じてヒータの数及び温度センサの数は任意の数としてもよい。
【0102】
上述の実施の形態では、サーボモータM1~M4は、それぞれベルトB1~B4を介して駆動力を伝達するものとしているが、これは例示に過ぎず、歯車機構等の各種の駆動力伝達手段を用いてもよい。
【0103】
上述の実施の形態では、本発明を主にハードウェアの構成として説明したが、これに限定されるものではなく、任意の処理を、CPU(Central Processing Unit)にコンピュータプログラムを実行させることにより実現することも可能である。
プログラムは、コンピュータに読み込まれた場合に、実施形態で説明された1又はそれ以上の機能をコンピュータに行わせるための命令群(又はソフトウェアコード)を含む。プログラムは、非一時的なコンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体に格納されてもよい。限定ではなく例として、コンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体は、random-access memory(RAM)、read-only memory(ROM)、フラッシュメモリ、solid-state drive(SSD)又はその他のメモリ技術、CD-ROM、digital versatile disc(DVD)、Blu-ray(登録商標)ディスク又はその他の光ディスクストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスクストレージ又はその他の磁気ストレージデバイスを含む。プログラムは、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体上で送信されてもよい。限定ではなく例として、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体は、電気的、光学的、音響的、またはその他の形式の伝搬信号を含む。
【符号の説明】
【0104】
A1~A4 サーボアンプ
B1~B4 ベルト
M1~M4 サーボモータ
SUP 3相交流電源
H1~H5 ヒータ
S1~S5 温度センサ
1 温度制御器
2 温度測定器
3、5 主制御器
3A、5A 演算部
3B、5B 記憶部
4 警報器
6 電力測定器
11 加熱シリンダ
12 スクリュ
13 ホッパ
14 ノズル
15 基台
20 固定盤
21 タイバー
30 可動盤
31 突き出し機構
32 突き出しプレート
33 ボールネジ
34 突き出しピン
35、36 プーリ
40 型締ハウジング
41 トグル機構
42 クロスヘッド
43 ボールナット
44 ボールネジ
45 第1リンク
46 第2リンク
47 第3リンク
48、49 プーリ
51 中間プレート
52 ボールナット
53 ボールネジ
54~57 プーリ
60 金型
61 固定側金型
62 可動側金型
100、200 制御装置
101 射出装置
102 型締装置
103 ベッド
104 給電装置
105 可動側部材
1000、2000 射出成形機
900 コンピュータ
901 CPU
902 ROM
903 RAM
904 バス
905 入出力インターフェイス
906 入力部
907 出力部
908 記憶部
909 通信部
910 ドライブ
911 磁気ディスク
912 光ディスク
913 フレキシブルディスク
914 半導体メモリ