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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022176552
(43)【公開日】2022-11-30
(54)【発明の名称】角度測定システム及び角度測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 17/00 20060101AFI20221122BHJP
【FI】
G01B17/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021083041
(22)【出願日】2021-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】市毛 祐也
【テーマコード(参考)】
2F068
【Fターム(参考)】
2F068AA31
2F068BB01
2F068DD03
2F068DD09
2F068FF02
2F068FF12
2F068FF25
2F068QQ41
2F068QQ45
(57)【要約】
【課題】外乱の影響を受けにくい角度測定システムを提供する。
【解決手段】
振動する円盤を備え、測定対象面30に超音波を送信し、測定対象面30で反射された超音波を受信する超音波素子10と、受信された超音波の音圧と、超音波素子10が備える円盤の半径と、に基づき、測定対象面30の角度を算出する角度算出部301と、を備える角度測定システム。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動する円盤を備え、測定対象面に超音波を送信し、前記測定対象面で反射された前記超音波を受信する超音波素子と、
受信された前記超音波の音圧と、前記円盤の半径と、に基づき、前記測定対象面の角度を算出する角度算出部と、
を備える、角度測定システム。
【請求項2】
前記角度算出部が、受信された前記超音波の伝播距離を算出し、
前記角度算出部が、さらに前記伝播距離に基づき、前記測定対象面の前記角度を算出する、請求項1に記載の角度測定システム。
【請求項3】
前記角度算出部が、さらに前記円盤の振幅に基づき、前記測定対象面の前記角度を算出する、請求項1又は2に記載の角度測定システム。
【請求項4】
前記角度が0のときに前記超音波素子が前記測定対象面に前記超音波を送信し、前記測定対象面で反射され、前記超音波素子で受信された前記超音波の音圧を前記角度が0のときの前記超音波の音圧として、
前記角度算出部が、さらに前記角度が0のときの前記超音波の音圧に基づき、前記測定対象面の前記角度を算出する、請求項1から3のいずれか1項に記載の角度測定システム。
【請求項5】
前記角度が0のときに前記超音波素子が前記測定対象面に前記超音波を送信し、前記測定対象面で反射され、前記超音波素子で受信された前記超音波の伝播距離を前記角度が0のときの前記超音波の伝播距離として、
前記角度算出部が、さらに前記角度が0のときの前記超音波の前記伝播距離に基づき、前記測定対象面の前記角度を算出する、請求項1から3のいずれか1項に記載の角度測定システム。
【請求項6】
前記角度算出部が、さらに前記超音波の波数、前記超音波の媒体の密度、前記超音波の伝播速度、及び前記超音波の角周波数からなる群から選択される少なくとも1つに基づき、前記測定対象面の前記角度を算出する、請求項1から5のいずれか1項に記載の角度測定システム。
【請求項7】
1を一次のベッセル関数、kを前記超音波の波数、aを前記円盤の半径、θが前記測定対象面の前記角度、pθrを受信された前記超音波の前記音圧、2L’を前記超音波の伝播距離、jを虚数単位、ρを前記超音波の媒体の密度、cを前記超音波の伝播速度、V0を前記円盤の振幅として、前記角度算出部が、下記(1)式に基づき、前記角度を算出する、請求項1に記載の角度測定システム。
【数1】
【請求項8】
1を一次のベッセル関数、kを前記超音波の波数、aを前記円盤の半径、θが前記測定対象面の前記角度、pθrを受信された前記超音波の前記音圧、L’を前記超音波の伝播距離の半分、jを虚数単位、cを前記超音波の伝播速度、pを角度θが0のときの超音波の音圧、2Lを角度θが0のときの超音波の伝播距離、ωを超音波の角周波数として、前記角度算出部が、下記(2)式に基づき、前記角度を算出する、請求項1に記載の角度測定システム。
【数2】
【請求項9】
円盤を振動させて測定対象面に超音波を送信し、前記測定対象面で反射した前記超音波を受信することと、
受信した前記超音波の音圧と、前記円盤の半径と、に基づき、前記測定対象面の角度を算出することと、
を含む、角度測定方法。
【請求項10】
受信された前記超音波の伝播距離を算出することをさらに含み、
さらに前記伝播距離に基づき、前記測定対象面の前記角度を算出する、請求項9に記載の角度測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、角度測定システム及び角度測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電波、赤外線、可視光、紫外線、及び放射線などの電磁波を用いて、対象物の角度や対象物までの距離を非接触で測定する技術が提案されている(例えば、特許文献1、2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2019/131840号
【特許文献2】特許第6401594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、例えば、電波は、工場内のノイズや無線機器などの影響を受けやすい。また、例えば、赤外線は、太陽光や蛍光灯の影響を受けやすい。このように、電磁波は、環境的な外乱の影響を受けやすい。そのため、電磁波を用いて対象物の角度や対象物までの距離を非接触で測定する技術は、環境的な外乱の影響を受けやすいという問題がある。そこで、本発明は、外乱の影響を受けにくい角度測定システム及び角度測定方法を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の態様によれば、振動する円盤を備え、測定対象面に超音波を送信し、測定対象面で反射された超音波を受信する超音波素子と、受信された超音波の音圧と、超音波素子が備える円盤の半径と、に基づき、測定対象面の角度を算出する角度算出部と、を備える、角度測定システムが提供される。
【0006】
上記の角度測定システムにおいて、角度が、超音波の中心軸に対して垂直な方向に対する角度であってもよい。
【0007】
上記の角度測定システムにおいて、超音波素子が、測定対象面に垂直に入射して測定対象面で反射された超音波を受信してもよい。
【0008】
上記の角度測定システムにおいて、測定対象面において、超音波が全反射してもよい。
【0009】
上記の角度測定システムにおいて、超音波素子と測定対象面との間の距離が、レイリー距離の半分より長くてもよい。
【0010】
上記の角度測定システムにおいて、角度算出部が、受信された超音波の伝播距離を算出し、角度算出部が、さらに伝播距離に基づき、測定対象面の角度を算出してもよい。
【0011】
上記の角度測定システムにおいて、角度算出部が、さらに超音波素子が備える円盤の振幅に基づき、測定対象面の角度を算出してもよい。
【0012】
上記の角度測定システムにおいて、測定対象面の角度が0のときに超音波素子が測定対象面に超音波を送信し、測定対象面で反射され、超音波素子で受信された超音波の音圧を角度が0のときの超音波の音圧として、角度算出部が、さらに角度が0のときの超音波の音圧に基づき、測定対象面の角度を算出してもよい。
【0013】
上記の角度測定システムにおいて、測定対象面の角度が0のときに超音波素子が測定対象面に超音波を送信し、測定対象面で反射され、超音波素子で受信された超音波の伝播距離を角度が0のときの超音波の伝播距離として、角度算出部が、さらに角度が0のときの超音波の伝播距離に基づき、測定対象面の角度を算出してもよい。
【0014】
上記の角度測定システムにおいて、角度算出部が、さらに超音波の波数、超音波の媒体の密度、超音波の伝播速度、及び超音波の角周波数からなる群から選択される少なくとも1つに基づき、測定対象面の角度を算出してもよい。
【0015】
上記の角度測定システムにおいて、J1を一次のベッセル関数、kを超音波の波数、aを超音波素子が備える振動する円盤の半径、θが測定対象面の角度、pθrを受信された超音波の音圧、2L’を超音波の伝播距離、jを虚数単位、ρを超音波の媒体の密度、cを超音波の伝播速度、V0を円盤の振幅として、角度算出部が、下記(1)式に基づき、角度を算出してもよい。
【数1】
【0016】
上記の角度測定システムが、角度θの値と、(1)式の左辺の値と、の関係を保存するテーブル記憶装置をさらに備えていてもよい。
【0017】
上記の角度測定システムにおいて、角度算出部が、(1)式の右辺の値を算出し、算出した右辺の値に最も近似する左辺の値を与える角度θの値をテーブル記憶装置から読み出してもよい。
【0018】
上記の角度測定システムにおいて、J1を一次のベッセル関数、kを超音波の波数、aを超音波素子が備える振動する円盤の半径、θが測定対象面の角度、pθrを受信された超音波の音圧、L’を超音波の伝播距離の半分、jを虚数単位、cを超音波の伝播速度、pを角度θが0のときの超音波の音圧、2Lを角度θが0のときの超音波の伝播距離、ωを超音波の角周波数として、角度算出部が、下記(2)式に基づき、角度を算出してもよい。
【数2】
【0019】
上記の角度測定システムが、角度θの値と、(2)式の左辺の値と、の関係を保存するテーブル記憶装置をさらに備えていてもよい。
【0020】
上記の角度測定システムにおいて、角度算出部が、(2)式の右辺の値を算出し、右辺の値に最も近似する左辺の値を与える角度θの値をテーブル記憶装置から読み出してもよい。
【0021】
上記の角度測定システムが、超音波素子が備える円盤の半径の所定の値、超音波素子が備える円盤の振幅の所定の値、角度が0のときの超音波の音圧の所定の値、角度が0のときの超音波の伝播距離の所定の値、超音波の波数の所定の値、超音波の媒体の密度の所定の値、超音波の伝播速度の所定の値、及び超音波の角周波数の所定の値からなる群から選択される少なくとも1つを保存するパラメーター記憶装置をさらに備えていてもよい。
【0022】
また、本発明の態様によれば、円盤を振動させて測定対象面に超音波を送信し、測定対象面で反射した超音波を受信することと、受信した超音波の音圧と、円盤の半径と、に基づき、測定対象面の角度を算出することと、を含む、角度測定方法が提供される。
【0023】
上記の角度測定方法において、角度が、超音波の中心軸に対して垂直な方向に対する角度であってもよい。
【0024】
上記の角度測定方法において、超音波を送信する超音波素子が、振動する円盤を備えていてもよい。
【0025】
上記の角度測定方法において、測定対象面に垂直に入射して測定対象面で反射された超音波を受信してもよい。
【0026】
上記の角度測定方法において、測定対象面において、超音波が全反射してもよい。
【0027】
上記の角度測定方法において、超音波素子と測定対象面との間の距離が、レイリー距離の半分より長くてもよい。
【0028】
上記の角度測定方法が、受信された超音波の伝播距離を算出することをさらに含み、さらに伝播距離に基づき、測定対象面の角度を算出してもよい。
【0029】
上記の角度測定方法において、さらに円盤の振幅に基づき、測定対象面の角度を算出してもよい。
【0030】
上記の角度測定方法において、測定対象面の角度が0のときに測定対象面に超音波を送信し、測定対象面で反射され、受信された超音波の音圧を角度が0のときの超音波の音圧として、さらに角度が0のときの超音波の音圧に基づき、測定対象面の角度を算出してもよい。
【0031】
上記の角度測定方法において、測定対象面の角度が0のときに測定対象面に超音波を送信し、測定対象面で反射され、受信された超音波の伝播距離を角度が0のときの超音波の伝播距離として、さらに角度が0のときの超音波の伝播距離に基づき、測定対象面の角度を算出してもよい。
【0032】
上記の角度測定方法において、さらに超音波の波数、超音波の媒体の密度、超音波の伝播速度、及び超音波の角周波数からなる群から選択される少なくとも1つに基づき、測定対象面の角度を算出してもよい。
【0033】
上記の角度測定方法において、J1を一次のベッセル関数、kを超音波の波数、aを超音波素子が備える振動する円盤の半径、θが測定対象面の角度、pθrを受信された超音波の音圧、2L’を超音波の伝播距離、jを虚数単位、ρを超音波の媒体の密度、cを超音波の伝播速度、V0を円盤の振幅として、下記(3)式に基づき、角度を算出してもよい。
【数3】
【0034】
上記の角度測定方法が、角度θの値と、(3)式の左辺の値と、の関係を取得することをさらに含んでいてもよい。
【0035】
上記の角度測定方法が、(3)式の右辺の値を算出し、算出した右辺の値に最も近似する左辺の値を与える角度θの値を上記関係から特定することをさらに含んでいてもよい。
【0036】
上記の角度測定方法において、J1を一次のベッセル関数、kを超音波の波数、aを超音波素子が備える振動する円盤の半径、θが測定対象面の角度、pθrを受信された超音波の音圧、L’を超音波の伝播距離の半分、jを虚数単位、cを超音波の伝播速度、pを角度θが0のときの超音波の音圧、2Lを角度θが0のときの超音波の伝播距離、ωを超音波の角周波数として、下記(4)式に基づき、角度を算出してもよい。
【数4】
【0037】
上記の角度測定方法が、角度θの値と、(4)式の左辺の値と、の関係を取得することをさらに含んでいてもよい。
【0038】
上記の角度測定方法が、(4)式の右辺の値を算出し、右辺の値に最も近似する左辺の値を与える角度θの値を上記関係から特定することをさらに含んでいてもよい。
【0039】
上記の角度測定方法が、超音波素子が備える円盤の半径の所定の値、超音波素子が備える円盤の振幅の所定の値、角度が0のときの超音波の音圧の所定の値、角度が0のときの超音波の伝播距離の所定の値、超音波の波数の所定の値、超音波の媒体の密度の所定の値、超音波の伝播速度の所定の値、及び超音波の角周波数の所定の値からなる群から選択される少なくとも1つを取得することをさらに含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0040】
本発明によれば、外乱の影響を受けにくい角度測定システム及び角度測定方法を提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1図1は、第1実施形態に係る角度測定システムを示す模式図である。
図2図2は、第1実施形態に係る角度測定システムを示す模式図である。
図3図3は、超音波の伝播距離と音圧との関係の例を示すグラフである。
図4図4は、第2実施形態に係る角度測定システムを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号で表している。ただし、図面は模式的なものである。したがって、具体的な寸法等は以下の説明を照らし合わせて判断するべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0043】
(第1実施形態)
第1実施形態に係る角度測定システムは、図1に示すように、振動する円盤を備え、測定対象面30に超音波を送信し、測定対象面30で反射された超音波を受信する超音波素子10と、受信された超音波の音圧と、超音波素子10が備える円盤の半径と、に基づき、測定対象面30の角度を算出する角度算出部301と、を備える。
【0044】
超音波素子10は、例えば、振動しない基板11に固定されている。超音波素子10は、例えば、半径aの剛円板を備える。剛円板は、面に対して垂直方向に振幅V0で振動し、超音波を発する。超音波は、例えば、周波数が20kHz以上の音波である。超音波素子10の剛円板の面に対して垂直な方向をx方向として、超音波は、x方向と平行な方向を中心軸として伝播する。また、超音波素子10は、超音波を受信し、受信した超音波の音圧を検出するように構成されている。
【0045】
測定対象面30は、例えば、金属、樹脂、及びガラス等からなる固体である。通常、空気と固体との音響インピーダンスの差は大きいため、測定対象面30で、超音波は、音圧を実質的に減少することなく、反射される。図2に示すように、測定対象面30が傾いていない場合、測定対象面30は、x方向において超音波素子10から距離Lの位置に配置されている。
【0046】
超音波素子10が発した超音波の中心軸上の音圧pは、下記(5)式で与えられる。
【数5】
【0047】
(5)式において、ρは超音波の媒体の密度、cは超音波の伝播速度、kは超音波の波数、lは超音波素子10からの伝播距離を表す。波数kは、下記(6)式で与えられる。
k=ω/c (6)
(6)式において、ωは角周波数を表す。
【0048】
図3は、媒体が空気であり、剛円板の半径aが2cmであり、角周波数ωが40kHzであり、剛円板の振幅V0が1mmである場合の音圧pの算出値と、超音波の伝播距離lと、の関係を示すグラフである。この場合、lが0.05mより小さい近距離場では、音圧pは、0と2ρcV0の間を振幅するが、lが大きい遠距離場では、音圧pは距離lに反比例して小さくなる。一般に、遠距離場において、超音波の音圧pは、下記(7)式で近似可能である。
P≒ρωQ/2πx (7)
(7)式におけるQは、下記(8)式で与えられる
Q=πa2V0 (8)
【0049】
近距離場と遠距離場の境目となる距離を、レイリー距離という。レイリー距離R0は、下記(9)式で与えられる。
R0=a2/(2k) (9)
実施形態において、図2に示す超音波素子10と測定対象面30との間の距離Lは、レイリー距離の半分より長い。
【0050】
図2に示す測定対象面30で全反射して超音波素子10に戻ってきた超音波の伝播距離lは2Lであるため、超音波素子10に戻ってきた超音波の音圧は、(7)及び(8)式より、下記(10)式で与えられる。
【数6】
【0051】
再び図1を参照して、x方向に対して垂直な方向をy方向とし、xy平面に対して垂直な方向をz方向とする。測定対象面30がz方向と平行な回転軸を中心としてy方向に対してθ度傾いた場合、超音波素子10から発せられ、中心軸からθ度方向に進行した超音波が、測定対象面30に垂直に入射する。ここで、超音波素子10から発せられ、中心軸からθ度方向に進行した超音波が、測定対象面30に垂直に入射するまでの伝播距離をL’として、測定対象面30に垂直に入射した超音波の音圧pθhは、下記(11)式で与えられる。
【数7】
【0052】
(11)式において、jは虚数単位、J1は一次のベッセル関数を表す。
【0053】
超音波素子10から発せられ、中心軸からθ度方向に進行し、測定対象面30で全反射して超音波素子10に戻ってきた超音波の音圧pθrは、下記(12)式で与えられる。なお、測定対象面30に垂直とは異なる角度で入射した超音波は、超音波素子10とは実質的に異なる位置に向かって反射される。
【数8】
【0054】
(12)式を変形すると、下記(13)式が得られる。
【数9】
【0055】
超音波の音圧pθrは、超音波素子10で検出可能である。超音波の伝播距離2L’は、例えば、受信した超音波の波形から算出可能である。超音波の伝播距離2L’は、例えば、超音波を送信してから受信するまでの時間と、超音波の伝播速度cから算出してもよい。超音波の波数k、超音波素子10の剛円盤の半径a、超音波の媒体の密度ρ、超音波の伝播速度c、及び超音波素子10の剛円盤の振幅V0のそれぞれの値は、通常、一定であり、予め取得可能、あるいは既知である。したがって、(13)式に基づいて、測定対象面30の傾きの角度θを算出可能である。
【0056】
角度算出部301は、例えば、コンピューターシステム300に含まれる。角度算出部301は、例えば、超音波素子10に電気的に接続されている。角度算出部301は、超音波素子10から、超音波の音圧pθrを受け取る。また、角度算出部301は、超音波の伝播距離2L’を算出する。なお、角度算出部301は、送信した超音波の角周波数とは異なる角周波数の超音波を受信した場合、異なる角周波数の超音波をノイズとして除去してもよい。また、角度算出部301は、送信した超音波の波形を平均化して、ノイズを除去してもよい。
【0057】
角度算出部301には、例えば、パラメーター記憶装置401が電気的に接続されている。パラメーター記憶装置401は、超音波の波数k、超音波素子10の剛円盤の半径a、超音波の媒体の密度ρ、超音波の伝播速度c、及び超音波素子10の剛円盤の振幅V0のそれぞれの所定の値を保存する。
【0058】
角度算出部301は、パラメーター記憶装置401から、超音波の波数k、超音波素子10の剛円盤の半径a、超音波の媒体の密度ρ、超音波の伝播速度c、及び超音波素子10の剛円盤の振幅V0のそれぞれの所定の値を読み出し、上記(13)式に基づいて、測定対象面30の傾きの角度θを算出する。なお、上記(13)式に基づいて、測定対象面30の傾きの角度θを算出する場合、上記(13)式を変形してもよい。例えば、上記(6)式を用いて、波数kをω/cに置換してもよい。
【0059】
例えば、建設現場や工場の生産ラインにおいて、測定対象面の角度を計測する場合、測定対象面が高所にあると、人手による角度の測定は、危険が生じ、また足場を組むのは煩雑である。これに対し、第1実施形態に係る角度測定システムは、非接触で測定対象面の角度を計測することが可能であるため、測定対象面が、作業者の手の届かない場所に位置していても、測定対象面の角度を測定することが可能である。また、超音波は、環境的な外乱の影響を受けにくい。そのため、第1実施形態に係る角度測定システムによれば、環境的な外乱の影響を受けにくい角度の測定が可能である。
【0060】
(第2実施形態)
第2実施形態に係る角度測定システムは、図4に示すように、角度算出部301に電気的に接続されたテーブル記憶装置402をさらに備える。テーブル記憶装置402は、予め取得された、測定対象面30の傾きの角度θと、上記(13)式の左辺と、の関係を保存する。例えば、テーブル記憶装置402は、測定対象面30の傾きの角度θの離散的な値と、角度θのそれぞれの値に対応する上記(13)式の左辺の離散的な値と、の関係を保存する。
【0061】
第2実施形態において、角度算出部301は、上記(13)式の右辺の値を算出する。さらに、角度算出部301は、上記(13)式の右辺の値に最も近似する左辺の値を与える測定対象面30の傾きの角度θを、テーブル記憶装置402から読み出す。第2実施形態に係る角度測定システムの他の構成要素は、第1実施形態と同様である。第2実施形態によれば、予め算出した上記(13)式の左辺の値を利用するため、測定時における測定対象面30の傾きの角度θの算出時間を抑制することが可能である。
【0062】
(第3実施形態)
(10)式と(13)式から、下記(14)式が得られる。
【数10】
【0063】
超音波の角周波数ωの値は、通常、一定であり、予め取得可能、あるいは既知である。角度θが0のときの超音波の音圧pは、予め取得可能である。角度θが0のときの超音波の伝播距離2Lは、予め取得可能である。
【0064】
第3実施形態において、図1に示すパラメーター記憶装置401は、超音波の伝播速度c、角度θが0のときの超音波の音圧p、角度θが0のときの超音波の伝播距離2L、超音波の角周波数ω、超音波素子10の剛円盤の半径a、及び超音波の波数kのそれぞれの所定の値を保存する。
【0065】
角度算出部301は、超音波素子10から、超音波の音圧pθrを受け取る。また、角度算出部301は、超音波の伝播距離2L’を算出する。また、角度算出部301は、パラメーター記憶装置401から、超音波の伝播速度c、角度θが0のときの超音波の音圧p、角度θが0のときの超音波の伝播距離2L、超音波の角周波数ω、超音波素子10の剛円盤の半径a、及び超音波の波数kのそれぞれの所定の値を読み出し、上記(14)式に基づいて、測定対象面30の傾きの角度θを算出する。なお、上記(14)式に基づいて、測定対象面30の傾きの角度θを算出する場合、上記(14)式を変形してもよい。例えば、上記(6)式を用いて、波数kをω/cに置換してもよい。あるいは、角周波数ωを、kcに置換してもよい。第3実施形態に係る角度測定システムの他の構成要素は、第1実施形態と同様である。
【0066】
(第4実施形態)
第4実施形態に係る角度測定システムは、第2実施形態と同様に、図4に示すように、テーブル記憶装置402を備える。第4実施形態において、角度算出部301は、上記(14)式の右辺の値を算出する。さらに、角度算出部301は、上記(14)式の右辺の値に最も近似する左辺の値を与える測定対象面30の傾きの角度θを、テーブル記憶装置402から読み出す。
【0067】
上記のように本発明を実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす記述及び図面はこの発明を限定するものであると理解するべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかになるはずである。本発明はここでは記載していない様々な実施形態等を包含するということを理解すべきである。
【符号の説明】
【0068】
10・・・超音波素子、11・・・基板、30・・・測定対象面、300・・・コンピューターシステム、301・・・角度算出部、401・・・パラメーター記憶装置、402・・・テーブル記憶装置
図1
図2
図3
図4