(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022176574
(43)【公開日】2022-11-30
(54)【発明の名称】鞍乗り型車両のケーブル配策構造
(51)【国際特許分類】
B62J 11/19 20200101AFI20221122BHJP
B62J 17/086 20200101ALI20221122BHJP
B62J 23/00 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
B62J11/19
B62J17/086
B62J23/00 G
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021083078
(22)【出願日】2021-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】氏家 健
(72)【発明者】
【氏名】篠原 寛行
(72)【発明者】
【氏名】前田 瑠衣
(57)【要約】
【課題】車体カバーの内側に配策されたケーブルを適宜固定しつつ電装部品に接続させることができる汎用性の高い鞍乗り型車両のケーブル配策構造を提供する。
【解決手段】鞍乗り型車両のケーブル配策構造は、車体の内部構造を覆うインナーカウル40と、インナーカウル40の外側で少なくともインナーカウル40の一部を覆うアウターカウル50と、コネクタ73によって互いに連結された第1ケーブル71および第2ケーブル72と、を備える。インナーカウル40には、アウターカウル50に覆われた貫通孔46が形成されている。第1ケーブル71および第2ケーブル72は、貫通孔46を挿通されている。コネクタ73は、インナーカウル40とアウターカウル50との間に配置されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の内部構造を覆うインナーカウル(40)と、
前記インナーカウル(40)の外側で少なくとも前記インナーカウル(40)の一部を覆うアウターカウル(50)と、
コネクタ(73)によって互いに連結された第1ケーブル(71)および第2ケーブル(72)と、
を備え、
前記インナーカウル(40)には、前記アウターカウル(50)に覆われた貫通孔(46)が形成され、
前記第1ケーブル(71)および前記第2ケーブル(72)は、前記貫通孔(46)を挿通され、
前記コネクタ(73)は、前記インナーカウル(40)と前記アウターカウル(50)との間に配置されている、
鞍乗り型車両のケーブル配策構造。
【請求項2】
前記第2ケーブル(72)に接続された灯体(60)をさらに備え、
前記貫通孔(46)の少なくとも一部は、車両側面視で前記灯体(60)に車両上下方向に重なっている、
請求項1に記載の鞍乗り型車両のケーブル配策構造。
【請求項3】
前記貫通孔(46)は、前記灯体(60)よりも前記車両上下方向において下方に位置する、
請求項2に記載の鞍乗り型車両のケーブル配策構造。
【請求項4】
前記第1ケーブル(71)は、車体フレーム(10)に対して前記貫通孔(46)よりも車両上下方向において上方で支持されている、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の鞍乗り型車両のケーブル配策構造。
【請求項5】
前記貫通孔(46)は、少なくとも1方向における最大開口幅が前記コネクタ(73)の長手方向の寸法よりも小さくなるように形成されている、
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の鞍乗り型車両のケーブル配策構造。
【請求項6】
前記貫通孔(46)は、前記インナーカウル(40)を車幅方向に貫通しているとともに、車両前後方向の寸法よりも車両上下方向の寸法が大きくなるように形成されている、
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の鞍乗り型車両のケーブル配策構造。
【請求項7】
前記インナーカウル(40)は、前記貫通孔(46)の開口縁から前記貫通孔(46)の貫通方向に沿って突出した周壁部(48)を備える、
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の鞍乗り型車両のケーブル配策構造。
【請求項8】
前記貫通孔(46)は、前記第1ケーブル(71)の横断面、および前記第2ケーブル(72)の横断面よりも大きい、
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の鞍乗り型車両のケーブル配策構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗り型車両のケーブル配策構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両前部において車体カバーの内側に電線であるケーブルが配設された鞍乗り型車両がある。この種の車両では、ケーブルの接続相手の電装部品の配置によっては、車体カバーに形成された貫通孔をケーブルに挿通させる場合がある。例えば、特許文献1には、車体の内部構造を覆うインナーカウルと、インナーカウルの外側において少なくともインナーカウルの一部を覆うアウターカウルと、を備えるカウル付き車両であって、インナーカウルの内側に配設される第1のケーブルと、インナーカウルとアウターカウルの間に配設され、且つ第1のケーブルに接続される第2のケーブルと、を有し、インナーカウルには第1のケーブルが挿通する貫通穴が設けられ、第1のケーブルと第2のケーブルとの接続部がインナーカウルとアウターカウルとの間の隙間に配置された車両が開示されている。さらにこの車両では、第2のケーブルがウィンカランプに接続されている。ウィンカランプは、インナーカウルに取り付けられた基端部を有するとともに、灯火部がアウターカウルの挿通孔を貫通しして車幅方向の外側に突出するように車体カバーに取り付けられている。
【0003】
ところで、車体カバーの内側に配設されたケーブルは、車体カバーや車体フレーム等に適宜固定されることが望ましい。特許文献1に記載の車両では、貫通穴の開口縁に第1のケーブルの一部を係止する凹部が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に係る発明は、インナーカウルとアウターカウルとの間でウィンカランプ等の電装部品にケーブルが接続される車両に適用が限定される。この点、車体カバーの内側に配策されたケーブルを適宜固定しつつ電装部品に接続させるケーブル配策構造において、汎用性が乏しいという課題がある。
【0006】
そこで本発明は、車体カバーの内側に配策されたケーブルを適宜固定しつつ電装部品に接続させることができる汎用性の高い鞍乗り型車両のケーブル配策構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の鞍乗り型車両のケーブル配策構造は、車体の内部構造を覆うインナーカウル(40)と、前記インナーカウル(40)の外側で少なくとも前記インナーカウル(40)の一部を覆うアウターカウル(50)と、コネクタ(73)によって互いに連結された第1ケーブル(71)および第2ケーブル(72)と、を備え、前記インナーカウル(40)には、前記アウターカウル(50)に覆われた貫通孔(46)が形成され、前記第1ケーブル(71)および前記第2ケーブル(72)は、前記貫通孔(46)を挿通され、前記コネクタ(73)は、前記インナーカウル(40)と前記アウターカウル(50)との間に配置されている。
【0008】
本発明によれば、インナーカウルとアウターカウルとの間に配置されたコネクタから第1ケーブルおよび第2ケーブルが延びて貫通孔を挿通されるので、第1ケーブルおよび第2ケーブルを貫通孔の開口縁に係止して位置決めした上でインナーカウルの内側に配策することができる。これにより、インナーカウルの内側で電装部品に第1ケーブルまたは第2ケーブルを接続させることができる。したがって、車体カバーの内側に配策された第1ケーブルおよび第2ケーブルを適宜固定しつつ電装部品に接続させることができる鞍乗り型車両のケーブル配策構造において、汎用性を向上させることができる。
【0009】
上記の鞍乗り型車両のケーブル配策構造において、前記第2ケーブル(72)に接続された灯体(60)をさらに備え、前記貫通孔(46)の少なくとも一部は、車両側面視で前記灯体(60)に車両上下方向に重なっていてもよい。
【0010】
本発明によれば、貫通孔を通って灯体に延びる第2ケーブルを車両上下方向(鉛直方向)に沿わせることができる。これにより、重力による第2ケーブルの弛みを抑制して第2ケーブルの短縮を図ることができる。
【0011】
上記の鞍乗り型車両のケーブル配策構造において、前記貫通孔(46)は、前記灯体(60)よりも前記車両上下方向において下方に位置していてもよい。
【0012】
本発明によれば、車体に灯体が支持された構成において、インナーカウルおよびアウターカウルを車体に対して持ち上げながら車体から取り外す際に、貫通孔よりも上方で灯体に接続された第2ケーブルが引っ張られることを抑制できる。したがって、第2ケーブルに負荷が掛かることを抑制できる。
【0013】
上記の鞍乗り型車両のケーブル配策構造において、前記第1ケーブル(71)は、車体フレーム(10)に対して前記貫通孔(46)よりも車両上下方向において上方で支持されていてもよい。
【0014】
本発明によれば、インナーカウルおよびアウターカウルを車体フレームに対して持ち上げながら車体フレームから取り外す際に、車体フレームに対して支持された第1ケーブルが引っ張られることを抑制できる。したがって、第1ケーブルに負荷が掛かることを抑制できる。
【0015】
上記の鞍乗り型車両のケーブル配策構造において、前記貫通孔(46)は、少なくとも1方向における最大開口幅が前記コネクタ(73)の長手方向の寸法よりも小さくなるように形成されていてもよい。
【0016】
本発明によれば、コネクタが貫通孔を通過することを規制できるので、第1ケーブルおよび第2ケーブルが貫通孔から脱落することを抑制できる。したがって、単純な構造で第1ケーブルおよび第2ケーブルが貫通孔の開口縁に係止された状態を維持できる。
【0017】
上記の鞍乗り型車両のケーブル配策構造において、前記貫通孔(46)は、前記インナーカウル(40)を車幅方向に貫通しているとともに、車両前後方向の寸法よりも車両上下方向の寸法が大きくなるように形成されていてもよい。
【0018】
本発明によれば、貫通孔の内側で第1ケーブルおよび第2ケーブルを上下に配設できる。これにより、インナーカウルとアウターカウルとの間でコネクタを上下方向に沿わせて配置できる。よって、コネクタ内部に進入した水が効果的に排出されるので、非防水のコネクタに好適な構成とすることができる。
【0019】
上記の鞍乗り型車両のケーブル配策構造において、前記インナーカウル(40)は、前記貫通孔(46)の開口縁から前記貫通孔(46)の貫通方向に沿って突出した周壁部(48)を備えていてもよい。
【0020】
本発明によれば、周壁部が設けられていない構成と比較して、貫通孔において第1ケーブルおよび第2ケーブルとインナーカウルとの接触面積を大きくすることができる。これにより、第1ケーブルおよび第2ケーブルを太くすることなく、第1ケーブルおよび第2ケーブルに掛かる負荷を低減することができる。
【0021】
上記の鞍乗り型車両のケーブル配策構造において、前記貫通孔(46)は、前記第1ケーブル(71)の横断面、および前記第2ケーブル(72)の横断面よりも大きくてもよい。
【0022】
本発明によれば、貫通孔が第1ケーブルおよび第2ケーブルによって塞がれないので、貫通孔を風抜き孔として機能させることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、車体カバーの内側に配策されたケーブルを適宜固定しつつ電装部品に接続させることができる鞍乗り型車両のケーブル配策構造において、汎用性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図3】
図1のIII-III線における断面図である。
【
図4】サイドカウルを車幅方向の内側から見た図である。
【
図5】サイドカウルを車幅方向の外側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明における前後上下左右等の方向は、以下に説明する車両における方向と同一とする。すなわち、上下方向は鉛直方向と一致し、左右方向は車幅方向と一致する。また、以下の説明に用いる図中において、矢印UPは上方、矢印FRは前方、矢印LHは左方をそれぞれ示している。
【0026】
図1は、実施形態の自動二輪車の右側面図である。
図2は、実施形態の自動二輪車の正面図である。
図1および
図2に示すように、本実施形態の自動二輪車1は、車体フレーム10と、操向ハンドル21を有するステアリング機構20と、車両の外郭を形成する車体カバー30と、を備える。
【0027】
車体フレーム10は、エンジン4を支持するとともに、リヤサスペンション5を介して後輪3を支持する。車体フレーム10は、その前端部のヘッドパイプ11でステアリング機構20を回動可能に支持している。車体フレーム10は、ステアリング機構20を介して前輪2を操向可能に支持している。ヘッドパイプ11には、フロントカウル31(後述)等を支持するステー12(
図3参照)が結合している。
【0028】
ステアリング機構20は、左右一対のフロントフォーク22を備える。一対のフロントフォーク22は、下端部に前輪2の車軸を支持している。一対のフロントフォーク22には、前輪2を覆うフロントフェンダ23が取り付けられている。さらに、ステアリング機構20は、一対のフロントフォーク22の上部の間に渡って設けられるトップブリッジおよびボトムブリッジと、トップブリッジとボトムブリッジとの間に渡って設けられて車体フレーム10のヘッドパイプ11内に挿通されるステアリングステムと、を備える(いずれも不図示)。トップブリッジは、操向ハンドル21を支持している。
【0029】
車体カバー30は、車両前部において、ヘッドパイプ11およびフロントフォーク22の上部を前方および車幅方向外側から覆っている。車体カバー30は、フロントカウル31と、左右一対のサイドカウル36と、を備える。
【0030】
フロントカウル31は、ヘッドパイプ11およびフロントフォーク22の上部を前方から覆っている。フロントカウル31の意匠面32(外表面)は、ヘッドライト6のレンズ6aに連なっている。サイドカウル36は、側面視でフロントカウル31に対して後方で隣接している。サイドカウル36は、ヘッドパイプ11およびフロントフォーク22の上部を車幅方向外側から覆っている。サイドカウル36は、インナーカウル40と、少なくともインナーカウル40の一部を覆うアウターカウル50と、を備える。
【0031】
図1に示すように、インナーカウル40は、フロントカウル31の両側縁33に対向する前縁41を有するとともに、前縁41から後方に延びている。インナーカウル40の外表面における前上部は、アウターカウル50に覆われず、意匠面42を形成している。インナーカウル40の意匠面42は、フロントカウル31の意匠面32に連なっている。なおインナーカウル40は、フロントカウル31と一体的に形成されていてもよい。
【0032】
アウターカウル50は、インナーカウル40の外側に配置されている。アウターカウル50は、インナーカウル40の前上部を露出させるように配置されている。アウターカウル50の外表面は、インナーカウル40の意匠面42に連なる意匠面51を形成している。本実施形態では、アウターカウル50はフロントカウル31を覆っていないが、アウターカウルはフロントカウルの一部を覆っていてもよい。また、アウターカウルの一部がインナーカウルを覆っていなくてもよい。
【0033】
図3は、
図1のIII-III線における断面図である。
図3に示すように、車体カバー30は、前側のウィンカランプ60(灯体)が取り付けられる取付部43を有する。取付部43は、左右一対のウィンカランプ60に対応して、左右のインナーカウル40それぞれに設けられている(
図3では右のインナーカウル40に設けられた取付部43のみを図示)。取付部43は、インナーカウル40の意匠面42に形成されている。取付部43には、後述する第2ケーブル72が挿通される孔44(
図4参照)が形成されている。ウィンカランプ60は、取付部43に取り付けられるとともに車幅方向に沿って延びる軸部61と、軸部61の外端部に支持されているとともにウィンカーの灯火を行う灯火部64と、を有する。軸部61の内端部は、インナーカウル40の内側からボルト62によって取付部43に締結されている。灯火部64は、前方に開口したハウジング65(
図5参照)と、ハウジング65の開口を閉塞するとともに軸部61よりも前方に膨出したレンズ66と、ハウジング65とレンズ66との間に収容された光源(不図示)と、を備える。左右のウィンカランプ60のそれぞれは、インナーカウル40の内側を配策されたケーブル70を介してメータユニットに接続されている。
【0034】
図4は、サイドカウルを車幅方向の内側から見た図である。
図3および
図4に示すように、ケーブル70は、コネクタ73によって互いに連結された第1ケーブル71および第2ケーブル72を備える。第1ケーブル71は、コネクタ73からメータユニット側に延びてメータユニットに電気的に接続されている。第2ケーブル72は、コネクタ73からウィンカランプ60側に延びてウィンカランプ60に電気的かつ機械的に接続されている。第1ケーブル71および第2ケーブル72は、それぞれ一対の電線74を束ねたハーネスである。一対の電線74は、信号線およびアース線である。以下では、各ケーブル71,72において、一対の電線74が束ねられた部分を結束部と称する。
【0035】
コネクタ73は、第1ケーブル71の一対の電線74と、第2ケーブル72の一対の電線74と、を接続している。コネクタ73は、第1ケーブル71および第2ケーブル72の信号線同士を電気的かつ機械的に接続しているとともに、第1ケーブル71および第2ケーブル72のアース線同士を電気的かつ機械的に接続している。コネクタ73は、互いに係止されることで一体化する雄型カプラおよび雌型カプラと、雄型カプラおよび雌型カプラを覆うスリーブ78と、を備える。雄型カプラは、第1ケーブル71および第2ケーブル72のうち一方のケーブルの各電線74に固着されている。雌型カプラは、第1ケーブル71および第2ケーブル72のうち他方のケーブルの各電線74に固着されている。スリーブ78は、一体化した雄型カプラおよび雌型カプラの接続部を1つずつ覆うように形成されている。スリーブ78は、円筒状に形成されている。スリーブ78は、軸方向が長手方向となるように形成されている。スリーブ78は、コネクタ73の外形を形成している。コネクタ73は、一対のスリーブ78が長手方向を略一致させた状態で隣接し合うように形成されている。
【0036】
インナーカウル40には、ケーブル70が挿通される貫通孔46が形成されている。貫通孔46は、インナーカウル40を車幅方向に貫通している。貫通孔46は、アウターカウル50に車幅方向の外側から覆われている。インナーカウル40のうち貫通孔46の開口縁および周縁部は、アウターカウル50に対して間隔をあけている。これにより、インナーカウル40とアウターカウル50との間には、貫通孔46が開口した隙間47が形成されている。
【0037】
図5は、サイドカウルを車幅方向の外側から見た図である。
図4および
図5に示すように、貫通孔46は、ウィンカランプ60よりも下方に位置している。貫通孔46の少なくとも一部は、側面視でウィンカランプ60に上下方向に重なっている。本実施形態では、貫通孔46の後端部がウィンカランプ60の軸部61の前部およびレンズ66に上下方向に重なっている。
【0038】
図3および
図4に示すように、貫通孔46は、コネクタ73が通過可能な形状に形成されている。貫通孔46は、長円形状に形成されている。貫通孔46は、長軸が水平方向に対して前上がりに傾斜するように形成されている。貫通孔46の長手方向は、上下方向に対して45°未満の角度で傾斜している。これにより、貫通孔46は、前後方向の寸法よりも上下方向の寸法が大きくなるように形成されている。
【0039】
貫通孔46は、少なくとも1方向における最大開口幅がコネクタ73の長手方向の寸法よりも小さくなるように形成されている。本実施形態では、貫通孔46は、全ての方向における最大開口幅がコネクタ73の長手方向の寸法よりも小さくなるように形成されている。なお、コネクタ73の長手方向の寸法は、スリーブ78の長手方向の寸法である。
【0040】
貫通孔46は、第1ケーブル71の結束部の横断面、および第2ケーブル72の結束部の横断面よりも大きい。これにより、第1ケーブル71および第2ケーブル72は、それぞれ貫通孔46の開口縁に対して隙間をあけた状態で挿通可能となっている。本実施形態では、第1ケーブル71の結束部の外径、および第2ケーブル72の結束部の外径は、貫通孔46の全ての方向における最大開口幅よりも小さい。さらに本実施形態では、第1ケーブル71の結束部の外径、および第2ケーブル72の結束部の外径の和は、貫通孔46の全ての方向における最大開口幅よりも小さい。
【0041】
インナーカウル40は、貫通孔46の開口縁から貫通孔46の貫通方向に沿って突出した周壁部48を備える。周壁部48は、貫通孔46の周囲を全周にわたって延びている。周壁部48は、貫通孔46の開口縁からインナーカウル40の内側および外側の両方向に突出している。周壁部48の端面の内周縁および外周縁は、それぞれ全周にわたって角を丸められている。
【0042】
貫通孔46には、第1ケーブル71および第2ケーブル72が挿通されている。第1ケーブル71および第2ケーブル72を連結するコネクタ73は、インナーカウル40とアウターカウル50の間の隙間47に配置されている。コネクタ73は、スリーブ78の長手方向を貫通孔46の長手方向に沿わせた状態で配置されている。コネクタ73は、側面視で上端部が貫通孔46の内側に位置し、かつ側面視で下端部が貫通孔46の下方に位置するように配置されている。
【0043】
第1ケーブル71は、コネクタ73の上部から延出している。第1ケーブル71の結束部は、貫通孔46の上部を通ってインナーカウル40の内側に延びている。第1ケーブル71は、インナーカウル40の内側を貫通孔46から上方に延びている。第1ケーブル71は、車体カバー30とは異なる部材を介して、車体フレーム10に対して支持されている。本実施形態では、第1ケーブル71は、ヘッドパイプ11に固定されたステー12に固定されている。第1ケーブル71は、貫通孔46よりも上方で車体フレーム10に対して支持されている。
【0044】
第2ケーブル72は、コネクタ73の下部から延出している。第2ケーブル72は、各電線74の屈曲を経て、貫通孔46に向けて上方に延びている。第2ケーブル72の結束部は、貫通孔46の下部を通ってインナーカウル40の内側に延出している。第2ケーブル72は、インナーカウル40の内側を貫通孔46から上方に延びている。第2ケーブル72は、インナーカウル40の内側で第1ケーブル71の後方かつ車幅方向の外側を通ってインナーカウル40の取付部43に向けて延びている。第2ケーブル72は、取付部43に形成された孔44を通ってインナーカウル40の内側からウィンカランプ60の軸部61の内側に入っている。
【0045】
以上に説明したように、本実施形態では、インナーカウル40にはアウターカウル50に覆われた貫通孔46が形成され、第1ケーブル71および第2ケーブル72は貫通孔46を挿通され、第1ケーブル71および第2ケーブル72を連結したコネクタ73はインナーカウル40とアウターカウル50との間に配置されている。この構成によれば、インナーカウル40とアウターカウル50との間に配置されたコネクタ73から第1ケーブル71および第2ケーブル72が延びて貫通孔46を挿通されるので、第1ケーブル71および第2ケーブル72を貫通孔46の開口縁に係止して位置決めした上でインナーカウル40の内側に配策することができる。これにより、インナーカウル40の内側でウィンカランプ60にケーブル70を接続させることができる。よって、インナーカウル40の意匠面42にウィンカランプ60が取り付けられた車両においても、ケーブル70の露出を抑制してケーブル70の保護性能の向上、および意匠性の悪化の抑制を図ることができる。したがって、車体カバー30の内側に配策されたケーブル70を適宜固定しつつウィンカランプ60に接続させることができるケーブル配策構造において、汎用性を向上させることができる。
【0046】
また、本実施形態のケーブル配策構造は、第2ケーブル72に接続されたウィンカランプ60をさらに備える。貫通孔46の少なくとも一部は、側面視でウィンカランプ60に上下方向に重なっている。この構成によれば、貫通孔46を通ってウィンカランプ60に延びる第2ケーブル72を上下方向(鉛直方向)に沿わせることができる。これにより、重力による第2ケーブル72の弛みを抑制して第2ケーブル72の短縮を図ることができる。
【0047】
第1ケーブル71は、側面視で車体フレーム10に対して貫通孔46よりも上方で支持されている。この構成によれば、インナーカウル40およびアウターカウル50を車体フレーム10に対して持ち上げながら車体フレーム10から取り外す際に、車体フレーム10に対して支持された第1ケーブル71が引っ張られることを抑制できる。したがって、第1ケーブル71に負荷が掛かることを抑制できる。
【0048】
貫通孔46は、少なくとも1方向における最大開口幅がコネクタ73の長手方向の寸法よりも小さくなるように形成されている。この構成によれば、コネクタ73が貫通孔46を通過することを規制できるので、第1ケーブル71および第2ケーブル72が貫通孔46から脱落することを抑制できる。したがって、単純な構造で第1ケーブル71および第2ケーブル72が貫通孔46の開口縁に係止された状態を維持できる。
【0049】
貫通孔46は、インナーカウル40を車幅方向に貫通しているとともに、前後方向の寸法よりも上下方向の寸法が大きくなるように形成されている。この構成によれば、貫通孔46の内側で第1ケーブル71および第2ケーブル72を上下に配設できる。これにより、インナーカウル40とアウターカウル50との間でコネクタ73を上下方向に沿わせて配置できる。よって、コネクタ73の内部に進入した水がスリーブ78から効果的に排出されるので、非防水のコネクタに好適な構成とすることができる。
【0050】
インナーカウル40は、貫通孔46の開口縁から貫通孔46の貫通方向に沿って突出した周壁部48を備える。この構成によれば、周壁部が設けられていない構成と比較して、貫通孔46において第1ケーブル71および第2ケーブル72とインナーカウル40との接触面積を大きくすることができる。これにより、第1ケーブル71および第2ケーブル72を太くすることなく、第1ケーブル71および第2ケーブル72に掛かる負荷を低減することができる。
【0051】
貫通孔46は、第1ケーブル71の横断面、および第2ケーブル72の横断面よりも大きい。この構成によれば、貫通孔46が第1ケーブル71および第2ケーブル72によって塞がれないので、貫通孔46を風抜き孔として機能させることができる。
【0052】
第1ケーブル71の結束部の外径、および第2ケーブル72の結束部の外径の和は、貫通孔46の全ての方向における最大開口幅よりも小さい。この構成によれば、第1ケーブル71および第2ケーブル72を貫通孔46の内側の任意の位置で互いにすれ違うように変位させることができる。これにより、第1ケーブル71および第2ケーブル72の位置関係を容易に変更できるので、コネクタ73を通過させてケーブル70を配策する作業を容易にすることができる。
【0053】
第1ケーブル71および第2ケーブル72は、インナーカウル40の内側を貫通孔46から上方に延びている。これにより、第1ケーブル71および第2ケーブル72の一方を弛ませた際に他方が張ることを抑制できる。よって、ケーブル70を配策する作業において、第1ケーブル71および第2ケーブル72に負荷が掛かりにくくすることができる。
【0054】
なお、本発明は、図面を参照して説明した上述の実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。本発明は運転者が車体を跨いで乗車する鞍乗り型車両全般に適用することができる。すわなち、本発明は自動二輪車だけでなく自動三輪車、またはバギーやATV(All Terrain Vehicle)等の自動四輪車に適用可能である。また本発明は、原動機としてモータを備えた車両に適用することができる。
【0055】
また、上記実施形態では、ウィンカランプ60がインナーカウル40に支持されているが、この構成に限定されない。ウィンカランプはフロントカウル等、インナーカウル以外の箇所に取り付けられていてもよい。例えば、ウィンカランプは、車体フレームやステアリング機構等の車体系パーツに支持されていてもよい。このような構成において、インナーカウルの貫通孔がウィンカランプよりも下方に位置することで、インナーカウルおよびアウターカウルを車体に対して持ち上げながら車体から取り外す際に、貫通孔よりも上方でウィンカランプに接続された第2ケーブルが引っ張られることを抑制できる。したがって、第2ケーブルに負荷が掛かることを抑制できる。
【0056】
また、上記実施形態では、第1ケーブル71は、ステー12を介して車体フレーム10に支持されているが、この構成に限定されない。第1ケーブルは、車体フレームに直接支持されていてもよい。
【0057】
また、上記実施形態では、コネクタ73が一体化した雄型カプラおよび雌型カプラの接続部を1つずつ覆うスリーブ78を備えているが、この構成に限定されない。コネクタは、第1ケーブル側の端子を保持するハウジングと、第2ケーブル側の端子を保持するハウジングと、を互いに連結させることで第1ケーブルおよび第2ケーブルを接続する構成であってもよい。
【0058】
また、上記実施形態では、ケーブル70の接続相手の電装部品がウィンカランプ60であるが、ケーブルの接続相手の電装部品はウィンカランプ以外であってもよい。
【0059】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。
【符号の説明】
【0060】
10…車体フレーム 40…インナーカウル 46…貫通孔 48…周壁部 50…アウターカウル 60…ウィンカランプ(灯体) 71…第1ケーブル 72…第2ケーブル 73…コネクタ