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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022176594
(43)【公開日】2022-11-30
(54)【発明の名称】支承装置及び組付け方法
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/02 20060101AFI20221122BHJP
   F16B 21/04 20060101ALI20221122BHJP
   E04H 9/02 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
F16F15/02 L
F16F15/02 E
F16B21/04 B
E04H9/02 331E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021083106
(22)【出願日】2021-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000229737
【氏名又は名称】日本ピラー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】田中 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】林 圭介
(72)【発明者】
【氏名】長峰 洋一
【テーマコード(参考)】
2E139
3J037
3J048
【Fターム(参考)】
2E139AA01
2E139AC19
2E139CA24
3J037AA01
3J037CA04
3J048AA07
3J048AC01
3J048BD01
3J048BG04
3J048DA01
3J048EA38
3J048EA39
(57)【要約】
【課題】滑り部材の素材を問わず、確実に滑り部材を保持部材に固定できる支承装置及び組付け方法を提供することを目的とする。
【解決手段】第1構造物及び第2構造物におけるそれぞれの対向部分に配設した上沓10及び下沓20で構成された支承装置1の上沓10に、上沓摺動面10aを構成する合成樹脂製のスライドベアリング36と、スライドベアリング36を保持するピストン35とが備えられ、ピストン35に、上沓摺動面10aが露出する態様でスライドベアリング36を収容する凹状の装着凹部352が設けられ、装着凹部352に収容されたスライドベアリング36を固定する係合凸部353と係合溝362とが対向部分に配置され、スライドベアリング36に設けられた係合溝362は、収容方向Cに延びる収容方向溝部363と、回転方向Rに延びる周方向溝部364とが設けられた。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1構造物及び第2構造物におけるそれぞれの対向部分に配設した第1沓及び第2沓で構成され、前記第1沓及び前記第2沓との対向部分における摺動面同士が摺動する支承装置の一方の沓に、前記摺動面を構成する合成樹脂製の滑り部材と、該滑り部材を保持する保持部材とが備えられ、
前記保持部材に、前記摺動面が露出する態様で前記滑り部材を収容する凹状の収容凹部が設けられ、
前記収容凹部に収容された前記滑り部材を固定する固定手段が設けられ、
前記固定手段は、
前記収容凹部に収容された前記滑り部材と前記保持部材との対向部分に配置され、前記対向部分における前記保持部材及び前記滑り部材の一方に設けられたスライド溝と、他方に設けられ、前記スライド溝に係合する係合凸部とが備えられ、
前記スライド溝は、
前記収容凹部に前記滑り部材を収容する収容方向に延びる収容方向溝部分と、
前記収容方向と交差する交差方向溝部分とが設けられている
支承装置。
【請求項2】
前記固定手段は、
前記滑り部材と前記保持部材との対向部分のうち、前記収容方向と交差する方向の側部に配置された
請求項1に記載の支承装置。
【請求項3】
前記滑り部材は円盤状であるとともに、前記収容凹部は円盤状空間であり、
前記交差方向溝部分は、
前記滑り部材の側周面あるいは、前記収容凹部を形成する前記保持部材の内側周面に形成された
請求項2に記載の支承装置。
【請求項4】
前記保持部材と前記滑り部材との前記対向部分の少なくとも一部に
前記収容凹部に収容した前記滑り部材と前記保持部材を接着する接着部が設けられた
請求項1乃至請求項3のうちいずれかに記載の支承装置。
【請求項5】
第1構造物及び第2構造物におけるそれぞれの対向部分に配設した第1沓及び第2沓で構成され、前記第1沓及び前記第2沓との対向部分における摺動面同士が摺動する支承装置において、前記摺動面を構成する合成樹脂製の滑り部材と、該滑り部材を保持する保持部材とが備えられた一方の沓の組付け方法であって、
前記保持部材に、前記摺動面が露出する態様で前記滑り部材を収容する凹状の収容凹部が設けられ、
前記収容凹部に収容された前記滑り部材を固定する固定手段が設けられ、
前記固定手段は、
前記収容凹部に収容された前記滑り部材と、前記収容凹部を形成する前記保持部材との対向部分に配置され、前記対向部分における前記保持部材及び前記滑り部材の一方に設けられたスライド溝と、他方に設けられ、前記スライド溝に係合する係合凸部とが備えられ、
前記スライド溝は、
前記収容凹部に前記滑り部材を収容する収容方向に延びる収容方向溝部分と、
前記収容方向と交差する交差方向溝部分とが設けられており、
前記係合凸部を前記収容方向溝部分に係合させながら、前記滑り部材を前記収容方向に移動させて前記収容凹部に収容し、
前記係合凸部が前記交差方向溝部分をスライドするように、前記収容凹部に収容した前記滑り部材をスライドさせて固定する
組付け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、免震機構として構造物の上部構造体と下部構造体の間に配置され、上部構造物を支持する支持構造における支承装置及び組付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、免震構造物、橋梁、あるいは固定構造物同士を接続する接続部分等の振動や相対変位が生じる構造物において、可動支持する支承装置がある。このような支承装置は、主桁等の被支持構造物と、橋脚等の支持構造物との間に配設され、被支持構造物に固定された上沓と、支持構造物に固定された下沓との境界面、つまり摺動面が摺動することで、境界面における面内方向に変位可能に支持することができる。
【0003】
例えば、特許文献1に記載する滑り支承は、ベースプレート上に固着された滑り板上に摺動自在に載置される滑り材が板状のホルダに固設されており、滑り材が高面圧で支持できるとされている。
なお、一般的に、ホルダに対して滑り材を固定するが、その固定方法としては、滑り材を皿ネジでホルダに固定したり、滑り材を接着剤でホルダに接着して固定したり、その両方を用いるなどがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-147991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、皿ボルトで固定する場合、摺動面に皿ボルトを設けるため、摺動面積が小さくなったり、意図せず皿ボルトが外れて滑り材が固定できなくなったりするおそれがあった。
また、滑り材を接着剤でホルダに接着して固定する場合、滑り材は、滑り性能等の様々な要求性能を満足するために、様々な材料が用いられることがあり、接着剤による接着が十分にできない場合があった。
【0006】
そこで本発明では、滑り部材の素材を問わず、確実に滑り部材を保持部材に固定できる支承装置及び組付け方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、第1構造物及び第2構造物におけるそれぞれの対向部分に配設した第1沓及び第2沓で構成され、前記第1沓及び前記第2沓との対向部分における摺動面同士が摺動する支承装置の一方の沓に、前記摺動面を構成する合成樹脂製の滑り部材と、該滑り部材を保持する保持部材とが備えられ、前記保持部材に、前記摺動面が露出する態様で前記滑り部材を収容する凹状の収容凹部が設けられ、前記収容凹部に収容された前記滑り部材を固定する固定手段が設けられ、前記固定手段は、前記収容凹部に収容された前記滑り部材と前記保持部材との対向部分に配置され、前記対向部分における前記保持部材及び前記滑り部材の一方に設けられたスライド溝と、他方に設けられ、前記スライド溝に係合する係合凸部とが備えられ、前記スライド溝は、前記収容凹部に前記滑り部材を収容する収容方向に延びる収容方向溝部分と、前記収容方向と交差する交差方向溝部分とが設けられている支承装置であることを特徴とする。
【0008】
またこの発明は、第1構造物及び第2構造物におけるそれぞれの対向部分に配設した第1沓及び第2沓で構成され、前記第1沓及び前記第2沓との対向部分における摺動面同士が摺動する支承装置において、前記摺動面を構成する合成樹脂製の滑り部材と、該滑り部材を保持する保持部材とが備えられた一方の沓の組付け方法であって、前記保持部材に、前記摺動面が露出する態様で前記滑り部材を収容する凹状の収容凹部が設けられ、前記収容凹部に収容された前記滑り部材を固定する固定手段が設けられ、前記固定手段は、前記収容凹部に収容された前記滑り部材と、前記収容凹部を形成する前記保持部材との対向部分に配置され、前記対向部分における前記保持部材及び前記滑り部材の一方に設けられたスライド溝と、他方に設けられ、前記スライド溝に係合する係合凸部とが備えられ、前記スライド溝は、前記収容凹部に前記滑り部材を収容する収容方向に延びる収容方向溝部分と、前記収容方向と交差する交差方向溝部分とが設けられており、前記係合凸部を前記収容方向溝部分に係合させながら、前記滑り部材を前記収容方向に移動させて前記収容凹部に収容し、前記係合凸部が前記交差方向溝部分をスライドするように、前記収容凹部に収容した前記滑り部材をスライドさせて固定することを特徴とする。
【0009】
上記第1構造物及び第2構造物は、例えば、橋脚を第1構造物とし、主桁を第2構造物とする橋梁、ビルを第1構造物とし、ビルとビルとを連絡する渡り廊下を第2構造物とする連絡通路、柱を第1構造物とし、トラス屋根を第2構造物とする屋根構造、あるいは、ビルを第1構造物とし、別のビルを第2構造物とするエキスパンション構造における構造物としてもよい。あるいは、サーバを第1構造物とし、ラックを第2構造物とする構造物であってもよい。
上記第1沓及び第2沓は、第1構造物及び第2構造物を上下方向に配置した場合における下沓と上沓とで構成してもよい。
【0010】
この発明により、滑り部材の素材を問わず、確実に滑り部材を保持部材に固定することができる。
詳述すると、前記摺動面を構成する合成樹脂製の滑り部材を保持する保持部材において、前記摺動面が露出する態様で前記滑り部材を収容する凹状の収容凹部に収容された前記滑り部材を固定する固定手段が、前記収容凹部に収容された前記滑り部材と前記保持部材との対向部分に配置され、前記対向部分における前記保持部材及び前記滑り部材の一方に設けられたスライド溝と、他方に設けられ、前記スライド溝に係合する係合凸部とが備えられるとともに、前記スライド溝は、前記収容凹部に前記滑り部材を収容する収容方向に延びる収容方向溝部分と、前記収容方向と交差する交差方向溝部分とが設けられているため、前記係合凸部を前記収容方向溝部分に係合させながら、前記滑り部材を前記収容方向に移動させて前記収容凹部に収容し、前記係合凸部が前記交差方向溝部分をスライドするように、前記収容凹部に収容した前記滑り部材をスライドさせることで、収容凹部に収容した滑り部材を保持部材に固定することができるとともに、意図せず固定が解消することを防止できる。
【0011】
つまり、スライド溝と係合凸部とが備えられた固定手段で収容凹部に収容された滑り部材を、素材を問わず保持部材に確実に固定することができる。
なお、固定手段は、収容凹部に収容された滑り部材と保持部材の対向部分であれば、凹状の収容凹部の側部や底部のいずれか、あるいはその両方に設けられてもよい。
【0012】
またこの発明の態様として、前記固定手段は、前記滑り部材と前記保持部材との対向部分のうち、前記収容方向と交差する方向の側部に配置されてもよい。
この発明により、収容凹部に滑り部材を収容する際に、側部に設けられたスライド溝及び係合凸部を容易に係合させて収容することができる。したがって、収容凹部に滑り部材を容易に収容できるとともに、容易に固定手段で固定することができる。
【0013】
またこの発明の態様として、前記滑り部材は円盤状であるとともに、前記収容凹部は円盤状空間であり、前記交差方向溝部分は、前記滑り部材の側周面あるいは、前記収容凹部を形成する前記保持部材の内側周面に形成されてもよい。
この発明により、円盤状の滑り部材を回転スライドさせることで、前記交差方向溝部分と係合凸部とを容易且つ確実に係合させて固定することができる。
【0014】
またこの発明の態様として、前記保持部材と前記滑り部材との前記対向部分の少なくとも一部に、前記収容凹部に収容した前記滑り部材と前記保持部材を接着する接着部が設けられてもよい。
この発明により、固定手段による固定と協働してより確実に滑り部材を保持部材に固定することができる。また、接着部を設けることで、不用意な滑り部材の移動が規制でき、意図せず、前記交差方向溝部分と係合凸部との係合が解消することを防止できる。
【0015】
この発明の態様として、前記固定手段は、複数設けられてもよい。
この発明により、固定手段による保持部材と滑り部材の固定強度を増大させて、保持部材と滑り部材とをより確実に固定することができる。
【0016】
なお、複数設けられた固定部材では、複数のスライド溝を保持部材及び前記滑り部材の一方に設け、複数の係合凸部を他方に設けてもよいし、あるスライド溝が一方に設けられるとともに、当該スライド溝に係合する係合凸部が他方に設けられ、別のスライド溝が他方に設けられるとともに、当該スライド溝に係合する係合凸部が一方に設けられてもよい。
【0017】
またこの発明の態様として、前記滑り部材が、PTFE製板材で構成されてもよい。
上記PTFE製板材は、所定の滑り性能や硬度など要求性能を満足する板材である。
この発明により、要求性能を満足する滑り材を確実に保持部材に固定することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、滑り部材の素材を問わず、確実に滑り部材を保持部材に固定できる支承装置及び組付け方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】支承装置の概略断面図。
図2】摺動部の分解斜視図。
図3】組付けベアリングの分解斜視図。
図4】組付けベアリングの斜視図による説明図。
図5】組付けベアリングの平面図及び断面図による説明図。
図6】第2実施形態の組付けベアリングの分解斜視図。
図7】第2実施形態の組付けベアリングの平面図及び断面図による説明図。
図8】第2実施形態の組付けベアリングの変形例の分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【実施形態1】
【0020】
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
図1は支承装置1の概略断面図を示し、図2は上沓10における摺動部30の分解斜視図を示し、図3は組付けベアリング34の分解斜視図を示し、図4は組付けベアリング34の斜視図による説明図を示し、図5は組付けベアリング34の平面図及び断面図による説明図を示している。
【0021】
詳述すると、図3は組付けベアリング34の底面側からの分解斜視図を示し、図4(a)はピストン35に対してスライドベアリング36を組み付ける前の斜視図を示し、図4(b)はスライドベアリング36をピストン35の装着凹部352に収容した状態の斜視図を示している。
なお、図4において、各要素の形状について理解を容易にするため手前側の一部を切欠いて図示している。
【0022】
図5(a)はピストン35の平面図を示し、図5(b)はスライドベアリング36の平面図を示している。図5(c)はスライドベアリング36を装着凹部352に収容した状態の平面図を示し、図5(d)は同状態の図4(b)におけるA-A矢視図を示している。図5(e)は装着凹部352に収容したスライドベアリング36を回転させた状態の平面図を示し、図5(f)は同状態の図4(b)におけるA-A矢視図を示している。
【0023】
支承装置1は、上部構造物と下部構造物との間に配設されて免震構造を構成する免震装置であり、上部構造物に固定された上沓10と、下部構造物に固定された下沓20とで構成され、上沓10と下沓20の境界面、つまり摺動面(10a,20a)が摺動することで、境界面(摺動面)における面内方向に変位可能に支持し、例えば、地震や強い風等による振動エネルギを吸収し、免震することができる。
【0024】
詳しくは、支承装置1は、図1に示すように、上部構造物(図示省略)の底面に固定された上沓10と、下部構造物(図示省略)の上面に固定された下沓20とで構成している。
詳しくは、下沓20は、下部構造物の上面に固定されたソールプレート21と、ソールプレート21に装着されたスライドプレート22とで構成し、スライドプレート22の上面で、後述する上沓10の上沓摺動面10aと摺動する下沓摺動面20aを構成している。なお、スライドプレート22は、ステンレス板で構成している。
【0025】
上沓10は、上部構造物の底面に固定される鋼製のベースポット11と、ベースポット11の底面側中央の装着凹部111に配置した平面視円形状の摺動部30とで構成している。
ベースポット11の装着凹部111に装着される摺動部30は、図2に示すように、上から順に、弾性プレート31、シム32、シールリング33、及び組付けベアリング34で構成している。
【0026】
弾性プレート31は、平面視円形のゴム製のプレートである。
シム32は、弾性プレート31と同じ径の平面視円形形状で形成したフッ素樹脂製の薄板である。
【0027】
シールリング33は、径外側が垂直面となり、径内側が下方に向かって径外側に傾斜する傾斜面である片断面台形状の円形リングであり、外径が弾性プレート31及びシム32と同じ径で形成している。
組付けベアリング34は、装着凹部111に収容されるとともに上沓摺動面10aを構成するものであり、後述するピストン35とスライドベアリング36を組み付けて構成している。
【0028】
ピストン35は、ステンレス製の略円柱形状であり、シールリング33の嵌合を許容する嵌合凹部351を上面の外周縁に沿って形成している。
また、ピストン35は、スライドベアリング36を装着して保持する装着凹部352を底面側に設けている。
【0029】
装着凹部352は、スライドベアリング36の厚みより浅く、下方が開口された円筒状空間であり、装着凹部352の底面354(装着凹部352におけるピストン35の下面)には接着層37を設けている。
【0030】
また、装着凹部352を形成するピストン35の内側面355の開口側の端部(図2において下端、図3において上端)には、径内側に向かって突出する係合凸部353を対向する二箇所に設けている。
【0031】
スライドベアリング36は、自己潤滑性を有するとともに、表面が低摩擦係数のPTFE製の平面視円形の板状体であり、底面361が、下沓20のスライドプレート22の表面である下沓摺動面20aと摺動する上沓摺動面10aを構成している。
【0032】
なお、スライドベアリング36は、ピストン35の装着凹部352に装着された際に装着凹部352より突出する高さで形成された円盤状であり、側面366に係合凸部353が係合する係合溝362を、係合凸部353に対応して対向する二箇所に設けている。
【0033】
係合溝362は、底面361の反対側の端部から高さ方向に延びる収容方向溝部363と、収容方向溝部363の底面361側の端部から周方向に延びる周方向溝部364とで側面視逆L字状に形成している。
【0034】
一端が開放され、他端が周方向溝部364につながる収容方向溝部363は、装着凹部352の深さに対応する長さで形成されている。収容方向溝部363と周方向溝部364とで構成された係合溝362は、係合凸部353が係合できる幅及び深さで形成している。
なお、スライドベアリング36において、収容方向溝部363が開放された側の面を接着面365とする。
【0035】
上述のように構成したピストン35とスライドベアリング36とは、収容方向溝部363に係合凸部353を係合させながら、装着凹部352に向かってスライドベアリング36を図4(a)に示すように収容方向Cに移動させて、スライドベアリング36を装着凹部352に収容する。このとき、装着凹部352の底面354には接着層37を適宜の厚みで塗布しておく。
【0036】
収容方向溝部363の端部まで係合凸部353が到達するまで、スライドベアリング36を収容方向Cに移動させて装着凹部352に収容すると、スライドベアリング36の底面361が接着層37を介して底面354に当接する。
【0037】
また、このとき、係合溝362に係合した係合凸部353が収容方向溝部363の端部つまり周方向溝部364の端部に位置することとなるため、装着凹部352に収容されたスライドベアリング36を平面視中央を回転中心として、図4(b)において矢印Rで示す回転方向に回転する(図5(c),(d)参照)。
【0038】
装着凹部352に収容されたスライドベアリング36を回転方向Rに回転させると、係合凸部353が周方向溝部364を係合した状態でスライドし、周方向溝部364の端部まで回転させる(図5(e),(f)参照)。これにより、装着凹部352収容したスライドベアリング36とピストン35とを組み付けて固定して組付けベアリング34を構成することができる。
【0039】
なお、装着凹部352に収容したスライドベアリング36の回転方向Rの回転は、接着層37が硬化するまでに行い、スライドベアリング36を回転方向Rに回転してから接着層37が硬化することで、係合凸部353と係合溝362とによるピストン35とスライドベアリング36との固定をより確実にすることができる。
【0040】
上述のように、支承装置1は、第1構造物及び第2構造物におけるそれぞれの対向部分に配設した上沓10及び下沓20で構成され、上沓10及び下沓20との対向部分における摺動面10a,20aが摺動するように構成されている。支承装置1の上沓10は、上沓摺動面10aを構成する合成樹脂製のスライドベアリング36と、スライドベアリング36を保持するピストン35とが備えられ、ピストン35に、上沓摺動面10aが露出する態様でスライドベアリング36を収容する凹状の装着凹部352が設けられている。
【0041】
装着凹部352に収容されたスライドベアリング36を固定する係合凸部353と係合溝362とが対向部分に配置され、係合溝362はスライドベアリング36に設けられ、係合凸部353はピストン35に設けられている。係合溝362は、装着凹部352にスライドベアリング36を収容する収容方向Cに延びる収容方向溝部363と、収容方向Cと交差する回転方向Rに延びる周方向溝部364とが設けられている。
【0042】
そして、ピストン35の係合凸部353をスライドベアリング36の収容方向溝部363に係合させながら、スライドベアリング36を収容方向Cに移動させて装着凹部352に収容し、係合凸部353が周方向溝部364をスライドするように、装着凹部352に収容したスライドベアリング36を回転方向Rにスライドさせて固定する。
そのため、スライドベアリング36の素材を問わず、確実にスライドベアリング36をピストン35に固定することができる。
【0043】
詳述すると、上沓摺動面10aを構成する合成樹脂製のスライドベアリング36を保持するピストン35において、上沓摺動面10aが露出する態様でスライドベアリング36を収容する凹状の装着凹部352に収容されたスライドベアリング36を固定する係合凸部353と係合溝362とが、装着凹部352に収容されたスライドベアリング36とピストン35との対向部分に配置されている。
【0044】
スライドベアリング36に設けられた係合溝362は、装着凹部352にスライドベアリング36を収容する収容方向Cに延びる収容方向溝部363と、収容方向Cと交差する周方向溝部364とが設けられている。
【0045】
そのため、係合凸部353を収容方向溝部363に係合させながら、スライドベアリング36を収容方向Cに移動させて装着凹部352に収容し、係合凸部353が周方向溝部364をスライドするように、装着凹部352に収容したスライドベアリング36を回転方向Rに回転スライドさせることで、装着凹部352に収容したスライドベアリング36をピストン35に固定することができる。
【0046】
つまり、係合凸部353と係合溝362とで装着凹部352に収容されたスライドベアリング36を、素材を問わずピストン35に確実に固定することができる。ピストン35とスライドベアリング36との固定が意図せず解消することを防止できる。
【0047】
また、係合凸部353と係合溝362は、対向する二箇所に設けられているため、ピストン35とスライドベアリング36の固定強度を増大させて、ピストン35とスライドベアリング36とをより確実に固定することができる。
【0048】
また、係合凸部353と係合溝362は、スライドベアリング36とピストン35との対向部分のうち、収容方向Cと交差する方向の側部(355,366)に配置されているため、装着凹部352にスライドベアリング36を収容する際に、側部(355,366)に設けられた係合溝362及び係合凸部353を容易に係合させて容易に収容できるとともに、容易に係合凸部353と係合溝362とで固定することができる。
【0049】
また、スライドベアリング36は円盤状であるとともに、装着凹部352は円盤状空間であり、周方向溝部364は、スライドベアリング36の側面366に形成されているため、円盤状のスライドベアリング36を回転方向Rに回転スライドさせることで、周方向溝部364と係合凸部353とを容易且つ確実に係合させて固定することができる。
【0050】
また、ピストン35とスライドベアリング36との対向部分の一部である底面354に、装着凹部352に収容したスライドベアリング36とピストン35を接着する接着層37が設けられているため、係合凸部353と係合溝362とによる固定と協働してより確実にスライドベアリング36をピストン35に固定することができる。
【0051】
また、接着層37を設けることで、不用意なスライドベアリング36の移動が規制でき、意図せず、周方向溝部364と係合凸部353との係合が解消することを防止できる。
また、スライドベアリング36が、PTFE製板材で構成されているため、要求性能を満足する滑り材を確実にピストン35に固定することができる。
【実施形態2】
【0052】
以下において、この発明の別の実施形態を図面と共に説明する。
以下における第2実施形態の組付けベアリング34aの説明において、上述の組付けベアリング34と同じ構成については同じ符号を付してその説明を省略する。
【0053】
上述の組付けベアリング34では、装着凹部352を有するピストン35に係合凸部353を備え、スライドベアリング36の側面366に係合溝362を備え、係合凸部353と係合溝362とを係合させて固定した。これに対し、第2実施形態の組付けベアリング34aでは、ピストン35に備えた係合凸部353の代わりにスライドベアリング36aに係合凸部367を備えるとともに、スライドベアリング36の側面366に設けた係合溝362の代わりに、装着凹部352を設けたピストン35aの内側面355に係合溝356を設けている。
【0054】
詳述すると、第2実施形態の組付けベアリング34aは、装着凹部352を形成するピストン35aの内側面355において、対向する二箇所に係合溝356を設けている。
係合溝356は、装着凹部352を形成するピストン35aの内側面355に沿って形成されており、装着凹部352における開口側から底面354に向かって装着凹部352の高さ方向に延びる収容方向溝部357と、収容方向溝部357の底面354側の端部から周方向に延びる周方向溝部358とで断面視L字状に形成している。なお、装着凹部352の開口側の収容方向溝部357は開口している。また、周方向溝部358は装着凹部352aの内側面355において底面354に沿って形成されている。
【0055】
ピストン35に備えた係合凸部353の代わりにスライドベアリング36aに設けた係合凸部367は、スライドベアリング36aの側面366における接着面365の側の端部において径外側に向かって突出するように形成され、係合溝356に対応して2箇所に設けている。なお、係合凸部367はスライドベアリング36aにおいて一体成形されている。
【0056】
上述のように構成したピストン35aとスライドベアリング36aとは、収容方向溝部357に係合凸部367を係合させながら、装着凹部352に向かってスライドベアリング36aを図6に示すように収容方向Cに移動させて、スライドベアリング36aを装着凹部352に収容する。このとき、装着凹部352の底面354には接着層37を適宜の厚みで塗布しておく。
【0057】
収容方向溝部357の端部まで係合凸部367が到達するまで、スライドベアリング36aを収容方向Cに移動させて装着凹部352に収容すると、スライドベアリング36aの接着面365が接着層37を介して底面354に当接する。
【0058】
また、このとき、係合溝356に係合した係合凸部367が収容方向溝部357の端部つまり周方向溝部358の端部に位置することとなるため、装着凹部352に収容されたスライドベアリング36aを平面視中央を回転中心として、図7(c),(d)に示すように回転方向Rに回転する。
【0059】
装着凹部352に収容されたスライドベアリング36aを回転方向Rに回転させると、係合凸部367が周方向溝部358を係合した状態でスライドし、周方向溝部358の端部まで回転方向Rに回転させる(図7(e),(f)参照)。これにより、装着凹部352収容したスライドベアリング36aとピストン35aとを組み付けて固定して組付けベアリング34aを構成することができる。
【0060】
なお、装着凹部352に収容したスライドベアリング36aの回転方向Rの回転は、接着層37が硬化するまでに行い、スライドベアリング36aを回転方向Rに回転してから接着層37が硬化することで、係合凸部367と係合溝356とによるピストン35aとスライドベアリング36aとの固定をより確実にすることができる。
【0061】
上述のように、組付けベアリング34aは、対向部分におけるピストン35aに設けられた係合溝356と、スライドベアリング36aに設けられた係合凸部367とが備えられるとともに、係合溝356は、装着凹部352にスライドベアリング36aを収容する収容方向Cに延びる収容方向溝部357と、収容方向Cと交差する回転方向Rに周方向溝部358とが設けられている。
【0062】
そのため、係合凸部367を収容方向溝部357に係合させながら、スライドベアリング36aを収容方向Cに移動させて装着凹部352に収容し、係合凸部367が周方向溝部358をスライドするように、装着凹部352に収容したスライドベアリング36aを回転方向Rに回転スライドさせることで、装着凹部352に収容したスライドベアリング36aをピストン35aに固定することができる。
【0063】
つまり、係合溝356と係合凸部367とが備えられた係合凸部367と係合溝356で装着凹部352に収容されたスライドベアリング36aを、素材を問わずピストン35aに確実に固定することができる。
【0064】
また、係合凸部367と係合溝356は、対向する二箇所に設けられているため、ピストン35aとスライドベアリング36aの固定強度を増大させて、ピストン35aとスライドベアリング36aとをより確実に固定することができる。
【0065】
また、係合凸部367と係合溝356は、スライドベアリング36aとピストン35aとの対向部分のうち、収容方向Cと交差する方向の側部(355,366)に配置されているため、装着凹部352にスライドベアリング36aを収容する際に、側部(355,366)に設けられた係合溝356及び係合凸部367を容易に係合させて収容することができる。したがって、装着凹部352にスライドベアリング36aを容易に収容できるとともに、容易に係合凸部367と係合溝356で固定することができる。
【0066】
また、スライドベアリング36aは円盤状であるとともに、装着凹部352は円盤状空間であり、周方向溝部358は、装着凹部352を形成するピストン35aの内側面355に形成されている。
そのため、円盤状のスライドベアリング36aを回転方向Rに回転スライドさせることで、周方向溝部358と係合凸部367とを容易且つ確実に係合させて固定することができる。
【0067】
また、ピストン35aとスライドベアリング36aとの対向部分の少なくとも一部である底面354に、装着凹部352に収容したスライドベアリング36aとピストン35aを接着する接着層37が設けられている。
【0068】
そのため、係合凸部367と係合溝356による固定と協働してより確実にスライドベアリング36aをピストン35aに固定することができる。また、底面354に接着層37を設けることで、不用意なスライドベアリング36aの移動が規制でき、意図せず、周方向溝部358と係合凸部367との係合が解消することを防止できる。
また、スライドベアリング36aが、PTFE製板材で構成されているため、要求性能を満足する滑り材を確実にピストン35aに固定することができる。
【0069】
なお、上述のスライドベアリング36aでは、側面366の接着面365側の端部に係合凸部367を一体成形で設けたが、図8に示すように、別体成形された凸状部材368で係合凸部を構成してもよい。
【0070】
詳述すると、スライドベアリング36bにおける側面366に凸状部材368を挿入する挿入孔369を設け、四角柱状の凸状部材368を径方向に向けて挿入孔369に挿入して係合凸部を構成する。
なお、凸状部材368を挿入する挿入孔369はスライドベアリング36bの側面366における接着面365側ではあるが、少し高さ方向の中央側に寄った位置に設けられる。
【0071】
そのため、装着凹部352を形成するピストン35bの内側面355に設けた係合溝356bにおいて、収容方向溝部357に比べて短く形成された収容方向溝部357bは底面354から少し上方位置まで延びており、周方向溝部358bはピストン35bの内側面355における底面354より上方の位置に形成される。
【0072】
なお、組付けベアリング34bを構成するピストン35bとスライドベアリング36bとの組み付け方法については、組付けベアリング34aを構成するピストン35aとスライドベアリング36aとの組み付け方法と同じであり、組み付けられた組付けベアリング34bにおける作用効果は組付けベアリング34aと同じであるため、その説明を省略する。
【0073】
また、上述の説明では、組付けベアリング34aにおける係合凸部367を別体で構成した凸状部材368をスライドベアリング36bの側面366に設けた挿入孔369に挿入して構成したが、上述の組付けベアリング34におけるピストン35において装着凹部352を形成する内面に設けた係合凸部353を別体で構成してもよい。この場合、装着凹部352の内面において開口側の端部から少し底面354の側に設けた挿入孔369に周方向溝部358を挿入する。そして、周方向溝部364を、挿入孔369に挿入した凸状部材368に応じた位置に形成することで実現することができる、
【0074】
以上、本発明の構成と、前述の実施態様との対応において、本発明の第1構造物は実施形態の下部構造物に対応し、
以下同様に、
第2構造物は実施形態の上部構造物に対応し、
第1沓は上沓10に対応し、
第2沓は下沓20に対応し、
支承装置は支承装置1に対応し、
摺動面は上沓摺動面10aに対応し、
一方の沓は上沓10に対応し、
滑り部材はスライドベアリング36,36a,36bに対応し、
保持部材はピストン35,35a,35bに対応し、
収容凹部は装着凹部352に対応し、
固定手段は係合凸部353(367,368)と係合溝362(356、356b)に対応し、
スライド溝は係合溝362,356,356bに対応し、
係合凸部は係合凸部353,367,368に対応し、
収容方向溝部分は収容方向溝部363,357,357bに対応し、
交差方向溝部分は周方向溝部364,358,358bに対応し、
収容方向は収容方向Cに対応し、
側部は側部(355,366)に対応し、
側周面は側面366に対応し、
内側周面は内側面355に対応し、
交差方向は回転方向Rに対応し、
接着部は接着層37に対応するも、上記実施形態に限定するものではない。
【0075】
例えば、上述の説明においては、上沓10に組付けベアリング34を備えたが下沓20に組付けベアリング34を備えてもよい。
【0076】
上述の組付けベアリング34を備えた上沓10を有する支承装置1は、上部構造物と下部構造物との間に配設されて免震構造を構成する免震装置であったが、サーバを第1構造物とし、ラックを第2構造物として免震支持する支承装置であってもよい。
【0077】
また、ピストン35とスライドベアリング36とを固定する係合凸部353,367,368と係合溝362,356、356bは、それぞれ対向する二箇所に設けたが、三箇所以上に設けてもよい。この場合、等間隔に配置された方が好ましい。
【0078】
また、複数設けた係合凸部(353,367,368)と係合溝(362,356、356b)は、それぞれピストン35とスライドベアリング36のいずれかにそれぞれ設けたが、ピストン35における対向する箇所に係合凸部353と係合溝356(356b)を設け、スライドベアリング36における対向する箇所に係合凸部367(368)と係合溝356(356b)とを設けてもよい。
【0079】
さらには、装着凹部352に収容されたスライドベアリング36,36a,36bとピストン35,35a,35bの側部に設けたが、スライドベアリング36の接着面365と装着凹部352を形成するピストン35の底面354のいずれか一方に係合凸部を設け、他方に係合溝を設けてもよい。
【符号の説明】
【0080】
1…支承装置
10…上沓
10a…上沓摺動面
20…下沓
35,35a,35b…ピストン
36,36a,36b…スライドベアリング
37…接着層
352…装着凹部
353,367,368…係合凸部
355…内側面
356,356b,362…係合溝
357,357b,363…収容方向溝部
358,358b,364…周方向溝部
366…側面
C…収容方向
R…回転方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8