(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022176597
(43)【公開日】2022-11-30
(54)【発明の名称】水栓弁装置
(51)【国際特許分類】
F16K 11/076 20060101AFI20221122BHJP
【FI】
F16K11/076 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021083109
(22)【出願日】2021-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100107537
【弁理士】
【氏名又は名称】磯貝 克臣
(72)【発明者】
【氏名】橋本 謙一
(72)【発明者】
【氏名】窪園 幸徳
【テーマコード(参考)】
3H067
【Fターム(参考)】
3H067AA12
3H067BB02
3H067BB12
3H067CC60
3H067DD03
3H067DD12
3H067DD32
3H067EA02
3H067EB03
3H067EB12
3H067FF02
3H067GG13
3H067GG21
(57)【要約】
【課題】 温度調整の電動化を実現することに適した水栓弁装置を提供すること。
【解決手段】 中空円筒状に構成されたシリンダ体と、シリンダ体の周壁内にそれぞれ設けられた水流入孔、湯流入孔、及び、湯水流出孔と、シリンダ体を回転可能に収容するハウジング体と、ハウジング体の内部空間に連通するようにそれぞれ設けられた水供給路、湯供給路、及び、湯水流出路と、シリンダ体の軸方向一方側に回転操作可能に設けられた操作部と、シリンダ体を軸方向に貫通すると共にシリンダ体に接続ないし一体化されたシャフト体と、を備える。シリンダ体及びシャフト体は、操作部の回転操作によって回転位置を変える。ハウジング体は、シャフト体支持部材を受容する受容部を有しており、受容部の一部に、シャフト体支持部材を湯側シール部材及び水側シール部材の側に向けて位置調整する突部が設けられている。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空円筒状に構成されたシリンダ体と、
前記シリンダ体の周壁内にそれぞれ設けられた、水流入孔、湯流入孔、及び、湯水流出孔と、
前記シリンダ体を回転可能に収容するハウジング体と、
前記ハウジング体の内部空間に連通するようにそれぞれ設けられた、水供給路、湯供給路、及び、湯水流出路と、
前記シリンダ体の軸方向一方側に、回転操作可能に設けられた操作部と、
前記シリンダ体を軸方向に貫通すると共に、前記シリンダ体に接続ないし一体化されたシャフト体と、
前記シャフト体を前記シリンダ体の外側で回転可能に支持するシャフト体支持部材と、
前記ハウジング体の前記湯供給路と前記シリンダ体との間に介在された湯側シール部材と、
前記ハウジング体の前記水供給路と前記シリンダ体との間に介在された水側シール部材と、
を備え、
前記ハウジング体は、前記シャフト体支持部材を受容する受容部を有しており、
前記受容部の一部に、前記シャフト体に接続ないし一体化された前記シリンダ体が前記湯側シール部材及び前記水側シール部材の側に向けて付勢されるように、前記シャフト体を支持する前記シャフト体支持部材に当接する突部が設けられており、
前記シリンダ体及び前記シャフト体は、前記操作部の回転操作によって回転位置を変えるようになっており、
前記シリンダ体の回転位置に応じて、前記水供給路と前記水流入孔との連通量、前記湯供給路と前記湯流入孔との連通量、及び/または、前記湯水流出孔と前記湯水流出路との連通量、が変化することによって、温度調整が実現される
ことを特徴とする水栓弁装置。
【請求項2】
中空円筒状に構成されたシリンダ体と、
前記シリンダ体の周壁内にそれぞれ設けられた、水流入孔、湯流入孔、及び、湯水流出孔と、
前記シリンダ体を回転可能に収容するハウジング体と、
前記ハウジング体の内部空間に連通するようにそれぞれ設けられた、水供給路、湯供給路、及び、湯水流出路と、
前記シリンダ体の軸方向一方側に、回転操作可能に設けられた操作部と、
前記シリンダ体を軸方向に貫通すると共に、前記シリンダ体に接続ないし一体化されたシャフト体と、
前記シャフト体を前記シリンダ体の外側で回転可能に支持するシャフト体支持部材と、
前記ハウジング体の前記湯供給路と前記シリンダ体との間に介在された湯側シール部材と、
前記ハウジング体の前記水供給路と前記シリンダ体との間に介在された水側シール部材と、
を備え、
前記ハウジング体は、前記シャフト体支持部材を受容する受容部を有しており、
前記シャフト体支持部材の前記受容部に受容される領域の一部に、当該領域が前記受容部に受容される際に前記シャフト体に接続ないし一体化された前記シリンダ体が前記湯側シール部材及び前記水側シール部材の側に向けて付勢されるように前記受容部に当接する突部が設けられており、
前記シリンダ体及び前記シャフト体は、前記操作部の回転操作によって回転位置を変えるようになっており、
前記シリンダ体の回転位置に応じて、前記水供給路と前記水流入孔との連通量、前記湯供給路と前記湯流入孔との連通量、及び/または、前記湯水流出孔と前記湯水流出路との連通量、が変化することによって、温度調整が実現される
ことを特徴とする水栓弁装置。
【請求項3】
中空円筒状に構成されたシリンダ体と、
前記シリンダ体の周壁内にそれぞれ設けられた、水流入孔、湯流入孔、及び、湯水流出孔と、
前記シリンダ体を回転可能に収容するハウジング体と、
前記ハウジング体の内部空間に連通するようにそれぞれ設けられた、水供給路、湯供給路、及び、湯水流出路と、
前記シリンダ体の軸方向一方側に、回転操作可能に設けられた操作部と、
前記シリンダ体を軸方向に貫通すると共に、前記シリンダ体に接続ないし一体化されたシャフト体と、
前記シャフト体を前記シリンダ体の外側で回転可能に支持するシャフト体支持部材と、
前記ハウジング体の前記湯供給路と前記シリンダ体との間に介在された湯側シール部材と、
前記ハウジング体の前記水供給路と前記シリンダ体との間に介在された水側シール部材と、
を備え、
前記ハウジング体は、前記シャフト体支持部材を受容する受容部を有しており、
前記シャフト体支持部材の前記受容部に受容される領域と前記受容部との間の一部に、当該領域が前記受容部に受容される際に前記シャフト体に接続ないし一体化された前記シリンダ体が前記湯側シール部材及び前記水側シール部材の側に向けて付勢されるように前記シャフト体支持部材及び前記受容部に当接する追加位置決め片が挿入されており、
前記シリンダ体及び前記シャフト体は、前記操作部の回転操作によって回転位置を変えるようになっており、
前記シリンダ体の回転位置に応じて、前記水供給路と前記水流入孔との連通量、前記湯供給路と前記湯流入孔との連通量、及び/または、前記湯水流出孔と前記湯水流出路との連通量、が変化することによって、温度調整が実現される
ことを特徴とする水栓弁装置。
【請求項4】
前記シャフト体支持部材は、樹脂製滑り軸受けを介して、前記シャフト体を支持している
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の水栓弁装置。
【請求項5】
前記樹脂製滑り軸受けの耐摩耗性は、前記突部または前記追加位置決め片の耐摩耗性よりも高い
ことを特徴とする請求項4に記載の水栓弁装置。
【請求項6】
前記シャフト体支持部材は、前記シリンダ体の両側に設けられている
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の水栓弁装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水栓弁装置に関し、特には、温度調整の電動化を実現することに適した水栓弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
流量調整バルブについては、本件出願人が電動化を実現している(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、温度調整の電動化を実現することに適した水栓弁装置については、未だ好適なものが提案されていなかった。
【0005】
本発明は、以上のような背景の下で創案されたものである。本発明の目的は、温度調整の電動化を実現することに適した水栓弁装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
中空円筒状に構成されたシリンダ体と、
前記シリンダ体の周壁内にそれぞれ設けられた、水流入孔、湯流入孔、及び、湯水流出孔と、
前記シリンダ体を回転可能に収容するハウジング体と、
前記ハウジング体の内部空間に連通するようにそれぞれ設けられた、水供給路、湯供給路、及び、湯水流出路と、
前記シリンダ体の軸方向一方側に、回転操作可能に設けられた操作部と、
前記シリンダ体を軸方向に貫通すると共に、前記シリンダ体に接続ないし一体化されたシャフト体と、
前記シャフト体を前記シリンダ体の外側で回転可能に支持するシャフト体支持部材と、
前記ハウジング体の前記湯供給路と前記シリンダ体との間に介在された湯側シール部材と、
前記ハウジング体の前記水供給路と前記シリンダ体との間に介在された水側シール部材と、
を備え、
前記ハウジング体は、前記シャフト体支持部材を受容する受容部を有しており、
前記受容部の一部に、前記シャフト体に接続ないし一体化された前記シリンダ体が前記湯側シール部材及び前記水側シール部材の側に向けて付勢されるように、前記シャフト体を支持する前記シャフト体支持部材に当接する突部が設けられており、
前記シリンダ体及び前記シャフト体は、前記操作部の回転操作によって回転位置を変えるようになっており、
前記シリンダ体の回転位置に応じて、前記水供給路と前記水流入孔との連通量、前記湯供給路と前記湯流入孔との連通量、及び/または、前記湯水流出孔と前記湯水流出路との連通量、が変化することによって、温度調整が実現される
ことを特徴とする水栓弁装置である。
【0007】
本発明によれば、シリンダ体の回転位置に応じて温度調整が実現されるため、コンパクトな水栓弁設計が実現され得る。
【0008】
また、本発明によれば、操作部の電動化に支障がないため、温度調整の電動化を実現することに適している。
【0009】
また、本発明の水栓弁装置は、前記シリンダ体を軸方向に貫通すると共に前記シリンダ体に接続ないし一体化されたシャフト体を備えている。
【0010】
これにより、シリンダ体の位置を変更するための制御をシャフト体の位置を制御する比較的簡単な構成で実現することができる。
【0011】
また、本発明において、前記ハウジング体は、前記シャフト体支持部材を受容する受容部を有しており、前記受容部の一部に、前記シャフト体に接続ないし一体化された前記シリンダ体が前記湯側シール部材及び前記水側シール部材の側に向けて付勢されるように、前記シャフト体を支持する前記シャフト体支持部材に当接する突部が設けられている。
【0012】
これにより、シャフト体支持部材を湯側シール部材及び水側シール部材の側に向けて付勢することで適切なシール代を安定的に確保することが容易となり、湯側シール部材及び水側シール部材の十分なシール性能を保証することができる。また、当該突部は、直接的にシャフト体に作用するのではなく、シャフト体支持部材を介して間接的にシャフト体に作用するため、シャフト体の回転の際の不所望の抵抗増大を招く虞が小さく、また、シャフト体の回転によって突部が摩耗してしまうという虞もない。また、これらの機能を突部で担保することで、突部のサイズだけを調整することで、両者のバランスを確保できるようになる。
【0013】
本発明は、
中空円筒状に構成されたシリンダ体と、
前記シリンダ体の周壁内にそれぞれ設けられた、水流入孔、湯流入孔、及び、湯水流出孔と、
前記シリンダ体を回転可能に収容するハウジング体と、
前記ハウジング体の内部空間に連通するようにそれぞれ設けられた、水供給路、湯供給路、及び、湯水流出路と、
前記シリンダ体の軸方向一方側に、回転操作可能に設けられた操作部と、
前記シリンダ体を軸方向に貫通すると共に、前記シリンダ体に接続ないし一体化されたシャフト体と、
前記シャフト体を前記シリンダ体の外側で回転可能に支持するシャフト体支持部材と、
前記ハウジング体の前記湯供給路と前記シリンダ体との間に介在された湯側シール部材と、
前記ハウジング体の前記水供給路と前記シリンダ体との間に介在された水側シール部材と、
を備え、
前記ハウジング体は、前記シャフト体支持部材を受容する受容部を有しており、
前記シャフト体支持部材の前記受容部に受容される領域の一部に、当該領域が前記受容部に受容される際に前記シャフト体に接続ないし一体化された前記シリンダ体が前記湯側シール部材及び前記水側シール部材の側に向けて付勢されるように前記受容部に当接する突部が設けられており、
前記シリンダ体及び前記シャフト体は、前記操作部の回転操作によって回転位置を変えるようになっており、
前記シリンダ体の回転位置に応じて、前記水供給路と前記水流入孔との連通量、前記湯供給路と前記湯流入孔との連通量、及び/または、前記湯水流出孔と前記湯水流出路との連通量、が変化することによって、温度調整が実現される
ことを特徴とする水栓弁装置である。
【0014】
本発明によっても、シリンダ体の回転位置に応じて温度調整が実現されるため、コンパクトな水栓弁設計が実現され得る。
【0015】
また、本発明によっても、操作部の電動化に支障がないため、温度調整の電動化を実現することに適している。
【0016】
また、本発明の水栓弁装置も、前記シリンダ体を軸方向に貫通すると共に前記シリンダ体に接続ないし一体化されたシャフト体を備えている。
【0017】
これにより、シリンダ体の位置を変更するための制御をシャフト体の位置を制御する比較的簡単な構成で実現することができる。
【0018】
また、本発明において、前記ハウジング体は、前記シャフト体支持部材を受容する受容部を有しており、前記シャフト体支持部材の前記受容部に受容される領域の一部に、当該領域が前記受容部に受容される際に前記シャフト体に接続ないし一体化された前記シリンダ体が前記湯側シール部材及び前記水側シール部材の側に向けて付勢されるように前記受容部に当接する突部が設けられている。
【0019】
これにより、シャフト体支持部材を湯側シール部材及び水側シール部材の側に向けて付勢することで適切なシール代を安定的に確保することが容易となり、湯側シール部材及び水側シール部材の十分なシール性能を保証することができる。また、当該突部は、直接的にシャフト体に作用するのではなく、シャフト体支持部材を介して間接的にシャフト体に作用するため、シャフト体の回転の際の不所望の抵抗増大を招く虞が小さく、また、シャフト体の回転によって突部が摩耗してしまうという虞もない。また、これらの機能を突部で担保することで、突部のサイズだけを調整することで、両者のバランスを確保できるようになる。
【0020】
本発明は、
中空円筒状に構成されたシリンダ体と、
前記シリンダ体の周壁内にそれぞれ設けられた、水流入孔、湯流入孔、及び、湯水流出孔と、
前記シリンダ体を回転可能に収容するハウジング体と、
前記ハウジング体の内部空間に連通するようにそれぞれ設けられた、水供給路、湯供給路、及び、湯水流出路と、
前記シリンダ体の軸方向一方側に、回転操作可能に設けられた操作部と、
前記シリンダ体を軸方向に貫通すると共に、前記シリンダ体に接続ないし一体化されたシャフト体と、
前記シャフト体を前記シリンダ体の外側で回転可能に支持するシャフト体支持部材と、
前記ハウジング体の前記湯供給路と前記シリンダ体との間に介在された湯側シール部材と、
前記ハウジング体の前記水供給路と前記シリンダ体との間に介在された水側シール部材と、
を備え、
前記ハウジング体は、前記シャフト体支持部材を受容する受容部を有しており、
前記シャフト体支持部材の前記受容部に受容される領域と前記受容部との間の一部に、当該領域が前記受容部に受容される際に前記シャフト体に接続ないし一体化された前記シリンダ体が前記湯側シール部材及び前記水側シール部材の側に向けて付勢されるように前記シャフト体支持部材及び前記受容部に当接する追加位置決め片が挿入されており、
前記シリンダ体及び前記シャフト体は、前記操作部の回転操作によって回転位置を変えるようになっており、
前記シリンダ体の回転位置に応じて、前記水供給路と前記水流入孔との連通量、前記湯供給路と前記湯流入孔との連通量、及び/または、前記湯水流出孔と前記湯水流出路との連通量、が変化することによって、温度調整が実現される
ことを特徴とする水栓弁装置である。
【0021】
本発明によっても、シリンダ体の回転位置に応じて温度調整が実現されるため、コンパクトな水栓弁設計が実現され得る。
【0022】
また、本発明によっても、操作部の電動化に支障がないため、温度調整の電動化を実現することに適している。
【0023】
また、本発明の水栓弁装置も、前記シリンダ体を軸方向に貫通すると共に前記シリンダ体に接続ないし一体化されたシャフト体を備えている。
【0024】
これにより、シリンダ体の位置を変更するための制御をシャフト体の位置を制御する比較的簡単な構成で実現することができる。
【0025】
また、本発明において、前記ハウジング体は、前記シャフト体支持部材を受容する受容部を有しており、前記シャフト体支持部材の前記受容部に受容される領域と前記受容部との間の一部に、当該領域が前記受容部に受容される際に前記シャフト体に接続ないし一体化された前記シリンダ体が前記湯側シール部材及び前記水側シール部材の側に向けて付勢されるように前記シャフト体支持部材及び前記受容部に当接する追加位置決め片が挿入されている。
【0026】
これにより、シャフト体支持部材を湯側シール部材及び水側シール部材の側に向けて付勢することで適切なシール代を安定的に確保することが容易となり、湯側シール部材及び水側シール部材の十分なシール性能を保証することができる。また、当該追加位置決め片は、直接的にシャフト体に作用するのではなく、シャフト体支持部材を介して間接的にシャフト体に作用するため、シャフト体の回転の際の不所望の抵抗増大を招く虞が小さく、また、シャフト体の回転によって追加位置決め片が摩耗してしまうという虞もない。また、これらの機能を追加位置決め片で担保することで、追加位置決め片のサイズだけを調整することで、両者のバランスを確保できるようになる。追加位置決め片は、例えば楔形状に、剛性材料で製造されてもよいし、弾性材料で製造されてもよい。後者の場合、シャフト体支持部材を湯側シール部材及び水側シール部材に弾性的に押し当てることができ、湯側シール部材及び水側シール部材が摩耗した際にも適切にシール代を確保することができる。
【0027】
以上の各発明において、シャフト体支持部材は、樹脂製滑り軸受けを介してシャフト体を支持していることが好ましい。
【0028】
これにより、シャフト体のセンタリング機能を効果的に維持することができ、シリンダ体を湯側シール部材及び水側シール部材に対してしっかりと押し当てることができる。
【0029】
また、以上の各発明において、突部または追加位置決め片は、回転する部材とは接触しないため、耐摩耗性を高くする必要が小さい。一方、樹脂製滑り軸受けは、回転するシャフト体を支持する要素であるから、耐摩耗性が高い方が好ましい。従って、樹脂製滑り軸受けの耐摩耗性は、突部または追加位置決め片の耐摩耗性よりも高いことが好ましい。
【0030】
また、以上の各発明において、シャフト体支持部材は、シリンダ体の両側に設けられていることが好ましい。これにより、シリンダ体の全体を、湯側シール部材及び水側シール部材に対してしっかりと押し当てることができる。
【0031】
その他、本発明において、前記シャフト体の両端は、前記ハウジング体の前記内部空間と連通しない領域内にあって、大気開放されていることが好ましい。
【0032】
これによれば、ハウジング体の内部空間の水圧がシャフト体に及ぼす影響が顕著に抑制される。
【0033】
このため、シャフト体を回転させるのに必要なトルク(力)力が小さくて済み、すなわち、電動化の実現にとって非常に都合が良い。
【0034】
例えば、前記シャフト体の両端が存在する領域は、シール部材によって、前記ハウジング体の前記内部空間と連通しないように遮断される。
【0035】
また、前記シャフト体の一端部に接続ないし一体化されると共に、前記操作部に対して回転方向に固定された接続部材を更に備え、前記接続部材は、前記操作部に対して軸方向に移動可能となるように設置されていることが好ましい。
【0036】
これによれば、操作部の回転操作をシャフト体の回転力として確実に伝達することができる一方で、シャフト体の軸方向に作用し得る力が操作部の操作を阻害することがない。
【0037】
また、前記シャフト体の他端部の軸方向移動を規制する一方で、当該シャフト体の他端部の回転は規制しない保持部材を更に備えることが好ましい。
【0038】
このような保持部材によれば、シャフト体の他端部の軸方向移動を規制しながらも、シャフト体の回転、ひいては操作部の操作、を阻害することが抑制される。
【0039】
また、前記ハウジング体は、前記内部空間を区画するために、軸方向一方側の蓋部材と、軸方向他方側の蓋部材と、を有していることが好ましい。
【0040】
これによれば、蓋部材を取り外すことで、ハウジング体の内部の部品の組立ないし分解(例えばメンテナンス等のため)が容易である。
【0041】
この場合、更に、前記ハウジング体の前記蓋部材の各々は、前記ハウジング体の軸方向端部よりも内方に位置していることが好ましい。
【0042】
これによれば、シャフト体の長さを抑制することができ、水栓弁装置のコンパクト化にとって都合が良い。
【発明の効果】
【0043】
本発明によれば、シリンダ体の回転位置に応じて温度調整が実現されるため、コンパクトな水栓弁設計が実現され得る。また、本発明によれば、操作部の電動化に支障がないため、温度調整の電動化を実現することに適している。
【0044】
特に、本発明によれば、シャフト体支持部材を湯側シール部材及び水側シール部材の側に向けて好適な位置に位置決めすることが容易となり、湯側シール部材及び水側シール部材の十分なシール性能を保証することができる。また、突部または追加位置決め片は、直接的にシャフト体に作用するのではなく、シャフト体支持部材を介して間接的にシャフト体に作用するため、シャフト体の回転の際の不所望の抵抗増大を招く虞が小さく、また、シャフト体の回転によって突部または追加位置決め片が摩耗してしまうという虞もない。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】本発明の一実施形態による水栓弁装置の概略斜視図である。
【
図2】本実施形態の水栓弁装置の概略正面図である。
【
図3】本実施形態の水栓弁装置の概略縦断面斜視図である。
【
図4】本実施形態の水栓弁装置の概略縦断面図である。
【
図6】本実施形態のシリンダ体及びシャフト体を抜き出して示す概略斜視図である。
【
図7】本実施形態の水側シール部材(瓦パッキン)の概略斜視図である(湯側シール部材も同様)。
【
図8】本実施形態の水補シール部材及び湯側シール部材がシリンダ体に当接する様子を示す概略図である。
【
図9】シリンダ体の回転位置に応じて温度調整がなされる具体例の概略説明図である。
【
図10】本実施形態のハウジング体の受容部(シリンダ体支持部材としての外蓋部材を受容する)を示す正面図である。
【
図12】本実施形態のハウジング体の受容部を示す概略斜視図である。
【
図13】本実施形態のハウジング体の受容部に右側外蓋部材を嵌合する様子を示す概略斜視図である。
【
図14】他の実施形態のハウジング体の受容部に右側外蓋部材と楔部材とを嵌合する様子を示す概略斜視図である。
【
図15】更に他の実施形態の右側外蓋部材を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
次に、添付図面を参照して、本発明の一実施形態による水栓弁装置について説明する。本実施形態の水栓弁装置100は、温度調整の電動化を実現することに適した水栓弁装置である。
【0047】
図1は、本発明の一実施形態による水栓弁装置100の概略斜視図であり、
図2は、本実施形態の水栓弁装置100の概略正面図であり、
図3は、本実施形態の水栓弁装置100の概略縦断面斜視図であり、
図4は、本実施形態の水栓弁装置100の概略縦断面図である。また、
図5は、
図4のシリンダ体部分の拡大図であり、
図6は、本実施形態のシリンダ体30及びシャフト体20を抜き出して示す概略斜視図である。
【0048】
図1乃至
図6に示すように、本実施形態の水栓弁装置100は、中空円筒状に構成されたシリンダ体30と、当該シリンダ体30を回転可能に収容するハウジング体10と、を備えている。
【0049】
[シリンダ体30]
シリンダ体30は、例えば、外径15mm、肉厚0.5mm、軸方向長さ50mmであり、ステンレス鋼によって形成されている。シリンダ体30を樹脂材料で構成する場合には、さらに肉厚にすることが好ましい。
【0050】
特に
図5を参照して、シリンダ体30の右端側には樹脂製の右端壁31が嵌合されている。一方、シリンダ体30の左端側の左端壁32は、シリンダ体30の周壁33と一体的に製造されており、ステンレス鋼である。
【0051】
シリンダ体30の周壁33の右側領域には、略矩形状の水流入孔34が設けられている。水流入孔34は、例えば、周方向角度(軸心回りに測った角度)0°(以後の角度位置の説明の基準とする)~90°で開口し、シリンダ体30の右端から軸方向に一定の距離の領域に形成されている。
【0052】
シリンダ体30の周壁33の左側領域には、略矩形状の湯流入孔35が設けられている。湯流入孔35は、例えば、周方向角度(軸心回りに測った角度)90°~180°で開口し(すなわち、水流入孔34とは異なる角度位置で開口し)、シリンダ体30の左端から軸方向に一定の距離の領域に形成されている。
【0053】
シリンダ体30の周壁33の軸方向略中央領域には、湯水流出孔36が設けられている。
【0054】
また、本実施形態のシリンダ体30は、右端壁31から軸方向略中央まで延在する中心管部37を有している。シリンダ体30の湯水流出孔36に対応する軸方向位置において、中心管部37の径方向外側に延在する隔壁38が設けられている(
図6も参照)。
【0055】
[シャフト体20]
そして、シャフト体20が、中心管部37内に挿通されると共に、右端壁31及び左端壁32とそれぞれ固定されている。これにより、シャフト体20とシリンダ体30とは、一体的に回転するようになっている。シャフト体20は、例えばφ3であり、ステンレス鋼製である。
【0056】
[ハウジング体10]
シリンダ体30を収容するハウジング体10の内部空間は、例えば円筒状空間であり、シリンダ体30の周壁33との間に隙間が設けられている。ハウジング体10は、
図4に示すように、略円筒状の内筒部10aと、当該内筒部10aを取り囲む外筒部10bと、を有しており、両者は互いに固定されている。内筒部10aはステンレス鋼によって形成されており、外筒部10bはPPS樹脂で構成されている。
【0057】
特に
図4及び
図5を参照して、ハウジング体10の内部空間の左端は、左側内蓋部材47によって区画されている。左側内蓋部材47は、概ね有底筒状の部材であり、Oリング47aを介してハウジング体10の外筒部10bの内周面内に嵌合されている。また、左側内蓋部材47は、中央部にシャフト体20が挿通される貫通孔が設けられており、当該貫通孔は、Xリング47bによって、シャフト体20の回転を許容しつつ、シールされている。
【0058】
左右対称に、ハウジング体10の内部空間の右端は、右側内蓋部材57によって区画されている。右側内蓋部材57は、概ね有底筒状の部材であり、Oリング57aを介してハウジング体10の外筒部10bの内周面内に嵌合されている。また、右側内蓋部材57は、中央部にシャフト体20が挿通される貫通孔が設けられており、当該貫通孔は、Xリング57bによって、シャフト体20の回転を許容しつつ、シールされている。
【0059】
更に
図4及び
図5を参照して、左側内蓋部材47は左側内蓋補助部材46によって補助されている。左側内蓋補助部材46は、概ねディスク状の部材であり、Oリング46aを介して左側内蓋部材47の内周面内に嵌合されている。また、左側内蓋補助部材46も、中央部にシャフト体20が挿通される貫通孔が設けられており、当該貫通孔は、Xリング46bによって、シャフト体20の回転を許容しつつ、シールされている。
【0060】
左右対称に、右側内蓋部材57は右側内蓋補助部材56によって補助されている。右側内蓋補助部材56は、概ねディスク状の部材であり、Oリング56aを介して右側内蓋部材57の内周面内に嵌合されている。また、右側内蓋補助部材56も、中央部にシャフト体20が挿通される貫通孔が設けられており、当該貫通孔は、Xリング56bによって、シャフト体20の回転を許容しつつ、シールされている。
【0061】
更に
図4及び
図5を参照して、左側内蓋部材47及び左側内蓋補助部材46の更に左側に、左側外蓋部材45が配置されている。左側外蓋部材45は、概ね有底筒状の部材であり、ハウジング体10の外筒部10bの内周面(受容部)内に嵌合されている。また、左側内蓋部材47は、中央部にシャフト体20が挿通される貫通孔が設けられており、当該貫通孔は、樹脂製滑り軸受(ブシュ)45bによって、シャフト体20の回転を許容しつつ、シールされている。
【0062】
左右対称に、右側内蓋部材57及び右側蓋補助部材56の更に右側に、右側外蓋部材55が配置されている。右側外蓋部材55は、概ね有底筒状の部材であり、ハウジング体10の外筒部10bの内周面(受容部)内に嵌合されている。また、右側内蓋部材57は、中央部にシャフト体20が挿通される貫通孔が設けられており、当該貫通孔は、樹脂製滑り軸受(ブシュ)55bによって、シャフト体20の回転を許容しつつ、シールされている。
【0063】
また、ハウジング体10には、その内部空間に連通するように、水供給路、湯供給路、及び、湯水流出路が設けられている。
【0064】
具体的には、本実施形態の湯水流出路は、ハウジング体10と一体の湯水流出口15によって提供されている。湯水流出口15は、ハウジング体10の上方に向けて開口しており、例えばエルボ接続管(不図示)を介して、湯水供給管(不図示)に接続されている。
【0065】
また、シリンダ体30が可動域内のどの位置姿勢であってもシリンダ体30の湯水流出孔36の全部が連通できる大きさ及び位置に、湯水流出口15が設けられている。
【0066】
一方、本実施形態の水供給路は、ハウジング体10の外筒部10bに形成された水供給管路11と、ハウジング体10の内筒部10aの対応する切欠部内に収容ないし嵌合された水側シール部材16(例えば瓦パッキン)の貫通孔16h(
図7参照)と、によって提供されている。
図7は、水側シール部材16(瓦パッキン)の概略斜視図である。
図7に示すように、貫通孔16hは、矩形断面孔となっている。出荷時(使用前)において、水側シール部材16(瓦パッキン)のシリンダ側の当接面は、曲率半径8mmの円筒面の一部となっており、外筒部10b側の当接面は、曲率半径12mmの円筒面の一部となっており、両面間の径方向の厚みは4mmとなっているが、組付後は、後述する突部61(または、突部55p、楔部材62)の作用によって、両面間の厚みは5%程度圧縮されている。
【0067】
水側シール部材16の貫通孔16hのサイズ及び(ハウジング体10の軸方向についての)位置は、当該貫通孔16hと水流入孔34との連通量が最大となるように制御された状態で、水流入孔34の全体と連通できるようなサイズ及び位置となっている(後述の
図8及び
図9参照)。
【0068】
同様に、本実施形態の湯供給路は、ハウジング体10の外筒部10bに形成された湯供給管路13と、ハウジング体10の内筒部10aの対応する切欠部内に収容ないし嵌合された湯側シール部材18(例えば瓦パッキン)の貫通孔18h(
図7参照)と、によって提供されている。貫通孔18hも、矩形断面孔となっている(
図7参照)。出荷時(使用前)において、湯側シール部材18(瓦パッキン)のシリンダ側の当接面は、曲率半径8mmの円筒面の一部となっており、外筒部10b側の当接面は、曲率半径12mmの円筒面の一部となっており、両面間の径方向の厚みは4mmとなっているが、組付後は、後述する突部61(または、突部55p、楔部材62)の作用によって、両面間の厚みは5%程度圧縮されている。
【0069】
湯側シール部材18の貫通孔18hのサイズ及び(ハウジング体10の軸方向についての)位置は、当該貫通孔18hと湯流入孔35との連通量が最大となるように制御された状態で、湯流入孔35の全体と連通できるようなサイズ及び位置となっている(後述の
図8及び
図9参照)。
【0070】
[操作機構40]
図1乃至
図4に示すように、シリンダ体30の左側(軸方向一方側)に、操作機構40が設けられている。操作機構40は、回転操作可能に設けられた操作部41を有している。操作部41は、本実施形態では、不図示の制御本体部から制御指令を受信して、当該制御指令によって回転操作され得るステッピングモータである。
【0071】
本実施形態では、シャフト体20及びシリンダ体30は、操作部41の回転操作によって軸方向位置を変えないで回転位置を変えるようになっている。
【0072】
具体的には、特に
図4に示すように、操作部41の回転軸(出力軸)が、回転筒42の底部側に軸方向にも回転方向にも固定されている。回転筒42は、その底部側が左側に位置するように配置されていて、ハウジング筒44内で軸線回りに回転可能に保持されている。
【0073】
ハウジング筒44は、その左側で、操作部41の本体を保持している。また、ハウジング筒44は、その右側で、ハウジング体10の外筒部10bに接続(嵌合)されている。
【0074】
回転筒42は、右側(底部と反対側)が開放されており、摺動筒43が軸方向に摺動移動可能に嵌合されており、回転筒42と摺動筒43とは、回転方向には固定されている。例えば、摺動筒43は、軸方向断面において十字状に突出する4つの凸部を有していて、回転筒42は、当該4つの凸部を軸方向に摺動移動可能に収容する4つの凹部を有している。すなわち、当該4つの凸部のそれぞれが4つの凹部のそれぞれに収容されており、回転筒42が回転する際には、摺動筒43も同様に回転する。(摺動筒43が、接続部材として、操作部41の回転軸に対して回転方向に固定される一方で、操作部41の回転軸に対して軸方向には移動可能となっている。)
【0075】
そして、摺動筒43が、シャフト体20の左端部に固定されている。これにより、摺動筒43が回転すると、シャフト体20及びシリンダ体30も、同様に回転する。一方で、摺動筒43は、回転筒42に対して軸方向には固定されずに、回転筒42に収納されているため、シャフト体20が軸方向の負荷を受けても、回転筒42には当該軸方向の負荷が掛からないようになっている。
【0076】
本実施形態では、操作部41は、最大で90°+αの回動操作を提供するようになっている。
【0077】
[支持機構50]
一方、シリンダ体30の右側(軸方向他方側)に、支持機構50が設けられている。当該支持機構50によって、シャフト体20及びシリンダ体30は、軸方向位置を変えないで回転可能に支持されている。
【0078】
具体的には、ハウジング筒44と略左右対称に、ハウジング筒54が設けられている。そして、ハウジング筒54が、シャフト体20の右端部を、一対の止め輪58を介して保持している。これにより、ハウジング筒54とシャフト体20とは、互いに回転可能であるが、軸方向には固定されている。
【0079】
また、ハウジング筒54は、その左側で、ハウジング体10の外筒部10bに接続(嵌合)されている。
【0080】
[シャフト体20の両端]
前述の構成により、本実施形態のシャフト体20の両端は、ハウジング体10の内部空間と連通しないように遮断された領域内にあって、大気開放されている(水圧ではなく大気圧を受けている)。
【0081】
具体的には、シャフト体20の左端は、樹脂製滑り軸受(ブシュ)45bとXリング46b、47bとによって、ハウジング体10の内部空間と連通しないように遮断されており、シャフト体20の右端は、樹脂製滑り軸受(ブシュ)55bとXリング56b、57bとによって、ハウジング体10の内部空間と連通しないように遮断されている。
【0082】
これにより、ハウジング体10の内部空間の水圧がシャフト体20に及ぼす影響が顕著に抑制されている。このため、シャフト体20(及びシリンダ体30)を回転させるのに必要なトルク(力)が小さくて済み、すなわち、操作部41に必要なトルクが小さくて済む。シャフト体20のうち遮断される部分の径が同径であれば、さらに良い。
【0083】
また、ハウジング体10は、内部空間を区画するために、左側外蓋部材45、左側内蓋補助部材46及び左側内蓋部材47、並びに、右側外蓋部材55、右側内蓋補助部材56及び右側内蓋部材57、を有しているが、これらの蓋部材45~47、55~57を取り外すことで、ハウジング体10の内部の部品の組立ないし分解(例えばメンテナンス等のため)が容易である。
【0084】
更に、本実施形態では、ハウジング体10の左側内蓋部材47、左側内蓋補助部材46、右側内蓋部材57及び右側内蓋補助部材56の各々がハウジング体10の軸方向端部よりも内方に位置していて、シャフト体20の長さを抑制している。
【0085】
[止水機能]
また、本実施形態の水栓弁装置100は、湯水を止水する湯水止水部を更に備えている。具体的には、湯水止水部は、水供給路の上流側に設けられる水止水部11sと、湯供給路の上流側に設けられる湯止水部13sと、を有する(
図2参照)。これによれば、湯または水が他方の上流側に逆流することが防止される。
【0086】
[シール機能]
また、本実施形態の水栓弁装置100は、シャフト体支持部材としての左側外蓋部材45及び右側外蓋部材55を、湯側シール部材18(瓦パッキン)及び水側シール部材16(瓦パッキン)の側に向けて好適な位置に位置決めすることで、湯側シール部材18及び水側シール部材16の十分なシール性能を保証する。
【0087】
具体的には、ハウジング体10が、左側外蓋部材45を受容する受容部60を有しており、当該受容部60の一部に、シャフト体20に固定(接続ないし一体化)されたシリンダ体30が湯側シール部材18及び水側シール部材16の側に向けて付勢されるように、シャフト体20を支持する左側外蓋部材45(シャフト体支持部材)に当接する(左側外蓋部材45を湯側シール部材18及び水側シール部材16の側に向けて位置調整する)突部61が設けられている。
【0088】
図10は、ハウジング体10の受容部60(シリンダ体支持部材としての右側外蓋部材55を受容する)を示す正面図であり、
図11は、
図10のXI部の拡大図であり、
図12は、ハウジング体10の受容部60を示す概略斜視図であり、
図13は、ハウジング体10の受容部60に右側外蓋部材55を嵌合する様子を示す概略斜視図である。
【0089】
図10乃至
図12に示すように、受容部60は概ね円筒状空間(内径約25mm、軸方向長さ約3mm)として形成されており、上方側内面に高さ約0.3mm、軸方向長さ約2mmの下がり天井面状の突部61(本実施形態では下方露出面が平坦面である)が設けられている。突部61の耐摩耗性は、樹脂製滑り軸受け(ブシュ)55bの耐摩耗性よりも低い。一方、当該受容部60内に受容される右側外蓋部材55は、一対の側方突部55sを除いて、外径約25mm、軸方向長さ約3mmの円柱状の外周縁輪郭を有している。一対の側方突部55sは、ハウジング体10に設けられた対応する一対の側方凹部10rに篏合するようになっている。
【0090】
より詳細には、右側外蓋部材55の上端面が突部61(その軸方向長さの全長に亘って)に当接(押圧)された状態で一対の側方突部55sと一対の側方凹部10rとが嵌合するようになっている。もっとも、一対の側方突部55sと一対の側方凹部10rとの嵌合状態には、上下方向の遊びがあってもよい
【0091】
また、詳細な図示は省略するが、概ね左右対称に、ハウジング体10は、左側外蓋部材45を受容する受容部を有しており、当該受容部の一部に、左側外蓋部材45を湯側シール部材18及び水側シール部材16の側に向けて位置調整する突部が設けられている。
【0092】
以上のような一対の突部を設けたことにより、シャフト体支持部材としての左側外蓋部材45及び右側外蓋部材55を、湯側シール部材18(瓦パッキン)及び水側シール部材16(瓦パッキン)の側に向けて付勢して(好適な位置に位置決めして)、適切なシール代を安定的に確保することが容易である。これにより、湯側シール部材18及び水側シール部材16の十分なシール性能を保証することができる。
【0093】
また、当該一対の突部は、直接的にシャフト体20に作用するのではなく、シャフト体支持部材としての左側外蓋部材45及び右側外蓋部材55を介して間接的にシャフト体20に作用するため、シャフト体20の回転の際の不所望の抵抗増大を招く虞が小さく、また、シャフト体20の回転によって突部が摩耗してしまうという虞もない。また、これらの機能を突部で担保することで、突部のサイズだけを調整することで、両者のバランスを確保できるようになる。
【0094】
[水栓弁装置100の作用]
次に、本実施形態の水栓弁装置100の作用について説明する。
【0095】
前述の構成により、本実施形態のシリンダ体30は、操作部41の回転操作によって軸方向位置を変えないで回転位置を変えるようになっている。
【0096】
そして、シリンダ体30の回転位置に応じて、水側シール部材16の貫通孔16h(水供給路)と水流入孔34との連通量、及び、湯側シール部材18の貫通孔18h(湯供給路)と湯流入孔35との連通量、が変化することによって、温度調整が実現されるようになっている。本実施形態では、湯水流出孔36と湯水流出路とは、常時良好な連通状態に維持される。
図8は、本実施形態の水側シール部材16及び湯側シール部材18がシリンダ体30に当接する様子を示す概略図である。
【0097】
本実施形態では、操作部41の回転操作によって、水側シール部材16の貫通孔16h(水供給路)と水流入孔34との連通量と、湯側シール部材18の貫通孔18h(湯供給路)と湯流入孔35との連通量と、の比率が変化して温度調整が実現されるようになっている。
【0098】
図9は、本実施形態のシリンダ体30の位置制御の概略説明図である。本実施形態では、シリンダ体30の回転位置に応じて温度調整がなされる。
【0099】
図9(a)は、シリンダ体30の周壁33における水流入孔34と湯流入孔35の位置を概略的に示している。
【0100】
図9(b)は、水側シール部材16の貫通孔16h(水供給路)と水流入孔34との連通量が最大で、湯側シール部材18の貫通孔18h(湯供給路)と湯流入孔35との連通が遮断される、という状態を概略的に示している。この時、湯水流出孔36及び湯水流出路を介して出力される湯水混合水は、水:100%、湯:0%、である。
【0101】
図9(c)は、
図9(b)の状態から操作部41の回転操作によってシャフト体20及びシリンダ体30が回転位置を変え、水側シール部材16の貫通孔16h(水供給路)と水流入孔34との連通量が50%で、湯側シール部材18の貫通孔18h(湯供給路)と湯流入孔35との連通量も50%である、という状態を概略的に示している。この時、湯水流出孔36及び湯水流出路を介して出力される湯水混合水は、水:50%、湯:50%、である。
【0102】
図9(d)は、
図9(c)の状態から更に操作部41の回転操作によってシャフト体20及びシリンダ体30が回転位置を変え、水側シール部材16の貫通孔16h(水供給路)と水流入孔34との連通が遮断され、湯側シール部材18の貫通孔18h(湯供給路)と湯流入孔35との連通量が最大である、という状態を概略的に示している。この時、湯水流出孔36及び湯水流出路を介して出力される湯水混合水は、水:0%、湯:100%、である。
【0103】
[基本的効果]
以上のように、本実施形態の水栓弁装置100によれば、シリンダ体30の回転位置に応じて温度調整が実現されるため、コンパクトな水栓弁設計が実現され得る。
【0104】
また、本実施形態の水栓弁装置100によれば、操作部41の電動化に支障がないため、温度調整の電動化を実現することに適している。
【0105】
また、本実施形態の水栓弁装置100によれば、シリンダ体30を軸方向に貫通すると共にシリンダ体30に固定(接続)されたシャフト体20が設けられている。これにより、シリンダ体30の位置を変更するための制御をシャフト体20の位置を制御する比較的簡単な構成で実現することができる。
【0106】
また、本実施形態の水栓弁装置100によれば、ハウジング体10は、左側外蓋部材45及び右側外蓋部材55(シャフト体支持部材)をそれぞれ受容する受容部60を有しており、当該受容部60の一部に、シャフト体20に固定(接続ないし一体化)されたシリンダ体30が湯側シール部材18及び水側シール部材16の側に向けて付勢されるように、シャフト体20を支持する左側外蓋部材45及び右側外蓋部材55(シャフト体支持部材)に当接する(左側外蓋部材45及び右側外蓋部材55を水側シール部材16及び湯側シール部材18の側に向けて位置調整する)突部61が設けられている。これにより、左側外蓋部材45及び右側外蓋部材55(シャフト体支持部材)を水側シール部材16及び湯側シール部材18の側に向けて付勢する(好適な位置に位置決めする)ことで適切なシール代を安定的に確保することが容易であり、水側シール部材16及び湯側シール部材18の十分なシール性能を保証することができる。また、当該突部61は、直接的にシャフト体20に作用するのではなく、左側外蓋部材45及び右側外蓋部材55(並びに樹脂製滑り軸受(ブシュ)45b及び樹脂製滑り軸受(ブシュ)55b)を介して間接的にシャフト体20に作用するため、シャフト体20の回転の際の不所望の抵抗増大を招く虞が小さく、また、シャフト体20の回転によって突部が摩耗してしまうという虞もない。
【0107】
また、本実施形態の水栓弁装置100によれば、左側外蓋部材45及び右側外蓋部材55は、それぞれ、樹脂製滑り軸受(ブシュ)45b及び樹脂製滑り軸受(ブシュ)55bを介してシャフト体20を支持している。これにより、シャフト体20のセンタリング機能を効果的に維持することができ、シリンダ体30を水側シール部材16及び湯側シール部材18に対してしっかりと押し当てることができる。
【0108】
また、本実施形態の水栓弁装置100によれば、左側外蓋部材45及び右側外蓋部材55は、シリンダ体30の両側に設けられている。これにより、シリンダ体30の全体を、水側シール部材16及び湯側シール部材18に対してしっかりと押し当てることができる。
【0109】
更に、本実施形態の水栓弁装置100によれば、シャフト体20の左端部に固定(接続)されると共に操作部41に対して回転方向に固定された接続部材としての摺動筒43が設けられており、当該摺動筒43は、操作部41に対して軸方向には移動可能である。これにより、操作部41の回転操作をシャフト体20の回転力として確実に伝達することができる一方で、シャフト体20の軸方向に作用し得る力が操作部41の操作を阻害することがない。
【0110】
また、本実施形態の水栓弁装置100によれば、シャフト体20の右端部の軸方向移動を規制する一方で、当該シャフト体20の右端部の回転は規制しない支持機構50が設けられている。これにより、シャフト体20の右端部の軸方向移動を規制しながらも、シャフト体20の回転、ひいては操作部41の操作、を阻害することが抑制される。
【0111】
また、本実施形態の水栓弁装置100によれば、湯水を止水する湯水止水部が設けられている。これにより、流量調整機能によって最少流量に調整するたけでは止水が不完全である(遮断制御状態でのシール機能が不十分である)場合でも、確実な止水機能が確保されている。
【0112】
特に、本実施形態の水栓弁装置100によれば、湯水止水部は、水供給路の上流側に設けられる水止水部11sと、湯供給路の上流側に設けられる湯止水部13sと、によって構成されており、湯または水が他方の上流側に逆流することが防止されている。
【0113】
[大気開放による効果]
また、本実施形態の水栓弁装置100によれば、シャフト体20がシリンダ体30を軸方向に貫通しており、シャフト体20の両端は、ハウジング体10の内部空間と連通しない領域内にあって、大気開放されている。これにより、ハウジング体10の内部空間の水圧がシャフト体20に及ぼす影響が顕著に抑制されている。このため、シャフト体20を回転させるのに必要なトルク(力)が小さくて済み、すなわち、電動化の実現にとって非常に都合が良い。
【0114】
特に、本実施形態の水栓弁装置100によれば、シャフト体20の左端は、樹脂製滑り軸受(ブシュ)45bとXリング46b、47bとによって、ハウジング体10の内部空間と連通しないように遮断されており、シャフト体20の右端は、樹脂製滑り軸受(ブシュ)55bとXリング56b、57bとによって、ハウジング体10の内部空間と連通しないように遮断されている。このため、ハウジング体10の内部空間の水圧がシャフト体20に及ぼす影響が極めて効果的に抑制されている。また、シャフト体20の左右両端の、ハウジング体10の内部空間と連通しないように遮断されている部分の径は、等しくなっており、作用する水圧が相殺するように構成されている。
【0115】
また、本実施形態の水栓弁装置100によれば、ハウジング体10の内部空間を区画するために、左側外蓋部材45、左側内蓋補助部材46及び左側内蓋部材47、並びに、右側外蓋部材55、右側内蓋補助部材56及び右側内蓋部材57、が設けられている。これにより、これらの蓋部材45~47、55~57を取り外すことで、ハウジング体10の内部の部品の組立ないし分解(例えばメンテナンス等のため)が容易である。
【0116】
更に、本実施形態の水栓弁装置100によれば、ハウジング体10の左側内蓋部材47、左側内蓋補助部材46、右側内蓋部材57及び右側内蓋補助部材56の各々が、ハウジング体10の軸方向端部よりも内方に位置している。これにより、シャフト体20の長さが抑制されており、水栓弁装置100のコンパクト化にとって都合が良い。
【0117】
[他の実施形態]
図14は、他の実施形態のハウジング体10の受容部60に右側外蓋部材55と楔部材62(追加位置決め突片)とを嵌合する様子を示す概略斜視図である。
【0118】
図14に示す実施形態では、受容部60の一部に突部61が設けられる代わりに、右側外蓋部材55(左側外蓋部材45も同様)の受容部60に受容される領域(外周縁領域)と受容部60との間の一部に、当該領域が受容部60に受容される際にシャフト体20に固定されたシリンダ体30が水側シール部材16及び湯側シール部材18の側に向けて付勢されるように右側外蓋部材55(左側外蓋部材45も同様)及び受容部60に当接する(右側外蓋部材55(左側外蓋部材45も同様)を水側シール部材16及び湯側シール部材18の側に向けて位置調整する)楔部材62(追加位置決め片)が挿入される。
【0119】
このような態様によっても、シャフト体支持部材としての左側外蓋部材45及び右側外蓋部材55を、湯側シール部材18(瓦パッキン)及び水側シール部材16(瓦パッキン)の側に向けて付勢する(好適な位置に位置決めする)ことで、適切なシール代を安定的に確保することが容易である。これにより、湯側シール部材18及び水側シール部材16の十分なシール性能を保証することができる。
【0120】
また、当該一対の楔部材62(追加位置決め片)は、直接的にシャフト体20に作用するのではなく、シャフト体支持部材としての左側外蓋部材45及び右側外蓋部材55を介して間接的にシャフト体20に作用するため、シャフト体20の回転の際の不所望の抵抗増大を招く虞が小さく、また、シャフト体20の回転によって突部が摩耗してしまうという虞もない。また、これらの機能を楔部材62(追加位置決め片)で担保することで、楔部材62(追加位置決め片)のサイズだけを調整することで、両者のバランスを確保できるようになる。
【0121】
楔部材62は、剛性材料で製造されてもよいし、弾性材料で製造されてもよい。後者の場合、左側外蓋部材45及び右側外蓋部材55(シャフト体支持部材)を水側シール部材16及び湯側シール部材18に弾性的に(優しく)押し当てることができる。但し、楔部材62の耐摩耗性は、樹脂製滑り軸受け(ブシュ)45b、55bの耐摩耗性よりも低いことが好ましい。
【0122】
更に、楔部材62の代わりに(楔形状の代わりに)、突部61の機能を代替できる他の形状の追加位置決め片が挿入されてもよい。
【0123】
[更に他の実施形態]
図15は、更に他の実施形態の右側外蓋部材55’を示す概略斜視図である。
【0124】
図15に示す実施形態では、受容部60の一部に突部61が設けられる代わりに、右側外蓋部材55’(左側外蓋部材も同様)の受容部60に受容される領域(外周縁領域)の一部に、当該領域が受容部60に受容される際にシャフト体20に固定されたシリンダ体30が水側シール部材16及び湯側シール部材18の側に向けて付勢されるように受容部60に当接する(右側外蓋部材55’(左側外蓋部材も同様)を水側シール部材16及び湯側シール部材18の側に向けて位置調整する)突部55pが設けられている。
【0125】
図10乃至
図12と略同様に、受容部60は概ね円筒状空間(外径25mm、軸方向長さ3mm)として形成されているが、突部61は設けられていない。一方、当該受容部60内に受容される右側外蓋部材55’(左側外蓋部材も同様)は、突部55p及び一対の側方突部55sを除いて、外径25mm、軸方向長さ3mmの円柱状の外周縁輪郭を有している。突部55pは、最大外径0.3mm、最大外径領域の幅1mm、軸方向長さ2mmの隆起円筒面状に形成されている。一対の側方突部55sは、ハウジング体10に設けられた対応する一対の側方凹部10rに篏合するようになっている。
【0126】
より詳細には、右側外蓋部材55’(左側外蓋部材も同様)の突部55p(その軸方向長さの全長に亘って)が受容部60に当接(押圧)された状態で一対の側方突部55sと一対の側方凹部10rとが嵌合するようになっている。もっとも、一対の側方突部55sと一対の側方凹部10rとの嵌合状態には、上下方向の遊びがあってもよい。
【0127】
このような態様によっても、シャフト体支持部材としての左側外蓋部材及び右側外蓋部材55’を、湯側シール部材18(瓦パッキン)及び水側シール部材16(瓦パッキン)の側に向けて付勢する(好適な位置に位置決めする)ことで、適切なシール代を安定的に確保することが容易である。これにより、湯側シール部材18及び水側シール部材16の十分なシール性能を保証することができる。
【0128】
また、当該一対の突部55pは、直接的にシャフト体20に作用するのではなく、シャフト体支持部材としての左側外蓋部材及び右側外蓋部材55’を介して間接的にシャフト体20に作用するため、シャフト体20の回転の際の不所望の抵抗増大を招く虞が小さく、また、シャフト体20の回転によって突部が摩耗してしまうという虞もない。また、これらの機能を突部で担保することで、突部のサイズだけを調整することで、両者のバラン
【符号の説明】
【0129】
10 ハウジング体
10a 内筒部
10b 外筒部
10r 側方凹部
11 水供給管路
11s 水止水部
13 湯供給管路
13s 湯止水部
15 湯水流出口
16 水側シール部材
16h 貫通孔
18 湯側シール部材
18h 貫通孔
20 シャフト体
30 シリンダ体
31 右端壁
32 左端壁
33 周壁
34 水流入孔
35 湯流入孔
36 湯水流出孔
37 中心管部
38 隔壁
40 操作機構
41 操作部
42 回転筒
43 摺動筒
44 ハウジング筒
45 左側外蓋部材
46 左側内蓋補助部材
46a Oリング
46b Xリング
47 左側内蓋部材
47a Oリング
47b Xリング
50 支持機構
54 ハウジング筒
55 右側外蓋部材
55’ 右側外蓋部材
55p 突部
55s 側方突部
56 右側内蓋補助部材
56a Oリング
56b Xリング
57 右側内蓋部材
57a Oリング
57b Xリング
58 止め輪
60 受容部
61 突部
62 楔部材
100 水栓弁装置