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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022176608
(43)【公開日】2022-11-30
(54)【発明の名称】魚撮像用架台および魚解析システム
(51)【国際特許分類】
   A01K 61/95 20170101AFI20221122BHJP
   G06M 7/00 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
A01K61/95
G06M7/00 301Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021083122
(22)【出願日】2021-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】598163064
【氏名又は名称】学校法人千葉工業大学
(71)【出願人】
【識別番号】592192907
【氏名又は名称】日建リース工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】517221549
【氏名又は名称】株式会社AmaterZ
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】重藤 優太郎
(72)【発明者】
【氏名】竹内 彰一
(72)【発明者】
【氏名】関山 正勝
(72)【発明者】
【氏名】大森 道生
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 将介
(72)【発明者】
【氏名】吉田 優喜博
(72)【発明者】
【氏名】高橋 亮平
(72)【発明者】
【氏名】矢島 正一
【テーマコード(参考)】
2B104
【Fターム(参考)】
2B104AA01
2B104CG20
(57)【要約】
【課題】魚の撮影画像から魚の計数作業や識別作業などの解析作業を行うにあたって、異なる現場での汎用性が高く、かつ安定した解析精度を得られる手段を提供すること。
【解決手段】フィッシュポンプと接続して、フィッシュポンプによって送られる魚を撮像するための魚撮像用架台であって、架台本体A1と、架台本体A1に設置する管状部材であって当該管状部材の一部または全部を透明部材で構成してある流路管A2と、流路管A2の一端に設けてフィッシュポンプと接続可能な接続具A3とを少なくとも有して構成する。この魚撮像用架台を養殖現場などの水槽近くに移動・設置し、フィッシュポンプで魚を組み上げて流路管A2を通過する魚を撮像して解析する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィッシュポンプと接続して、当該フィッシュポンプによって送られる魚を撮像するための、魚撮像用架台であって、
架台本体と、
架台本体に設置する管状部材であって、前記フィッシュポンプによって送られる魚を通過させる、流路管と、
前記流路管の一端に設けて、前記フィッシュポンプと接続可能な、接続具と、
前記流路管内の魚を撮像する撮像部を取り付けるための、取付部と、
を少なくとも有することを特徴とする、
魚撮像用架台。
【請求項2】
前記取付部に取り付けた前記撮像部の撮像範囲に映り込む位置に設置される、スケールをさらに有することを特徴とする、
請求項1に記載の魚撮像用架台。
【請求項3】
前記取付部に取り付けた前記撮像部の撮像範囲に映り込む位置に展開可能な、スクリーンをさらに有することを特徴とする、
請求項1または2に記載の魚撮像用架台。
【請求項4】
前記架台本体を、自走可能に構成してあることを特徴とする、
請求項1乃至3のうち何れか1項に記載の魚撮像用架台。
【請求項5】
前記流路管の一部または全部を透明部材で構成し、
当該透明部材を介して、流路管内の魚を撮像可能な位置に前記取付部を設けてあることを特徴とする、
請求項1乃至4のうち何れか1項に記載の魚撮像用架台。
【請求項6】
請求項1乃至5のうち何れか1項に記載の魚撮像用架台と、
前記流路管の一端に接続して、当該流路管内に魚を送り込むフィッシュポンプと、
前記取付部に取り付けて、前記流路管内の魚の撮像データを取得する、撮像部と、
前記撮像データに基づいて、前記流路管を流れる、魚の数、魚種、大きさおよび重さのうち少なくとも何れか1つを求める解析作業を行う、解析部と、
を少なくとも有することを特徴とする、
魚解析システム。
【請求項7】
前記撮像部を複数有し、各撮像部で前記流路管を異なるアングルから撮像することを特徴とする、
請求項6に記載の魚解析システム。
【請求項8】
前記解析部は、前記複数の撮像部から得られる前記撮像データをタイムコードで紐付けて解析作業を行うことを特徴とする、
請求項7に記載の魚解析システム。
【請求項9】
前記解析部が、前記流路管内の魚の逆走を検知する機能を更に有することを特徴とする、
請求項6乃至8のうち何れか1項に記載の魚解析システム。
【請求項10】
前記フィッシュポンプの流速を制御可能な流速制御部を更に有し、
前記流速制御部は、前記解析部によって前記流路管を逆走する魚を検知した際に、前記フィッシュポンプの流速を上げることを特徴とする、
請求項9に記載の魚解析システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚の撮影画像から魚の計数作業や識別作業などの解析作業を行う際に用いる、魚撮像用架台および当該魚撮像用架台を用いた魚解析システムに関する。
【背景技術】
【0002】
養殖事業者が稚魚を買い入れる際、稚魚の体重・匹数は人間が勘と経験で判断しており、精緻なデータに基づくものではなかった。
そのため、いま養殖を行っている水槽に何匹いて、どれくらいの重量になっていて、従ってどれくらいの餌量が必要なのか、ということも正確なデータはなく、人が勘で判断をしているに留まっている。
しかし、餌量は、魚の健康・成長進度に大きく影響を与える事項であり、判断を間違えると大量斃死に繋がるため、餌量の適切なコントロールは養殖の損益にも大きな影響を及ぼすものであり、人の経験や勘に依存することなく、魚の体重、匹数を容易かつ正確に把握できるようにする技術が養殖業界では強く望まれている。
【0003】
ところで、魚の計数作業や種類を識別する手段として、以下の特許文献に記載の技術が開示されている。
例えば、以下の特許文献1には、移送中の魚の画像を解析して、当該撮影箇所を通過した魚の数を計数する魚計数装置の技術が開示されている。
また、以下の特許文献2には、釣り上げた生存魚を凍結用の魚艙へと移動する途上で取得した画像に対し、グレースケール化処理とブラー処理を行って輪郭抽出を行い、この輪郭から魚の位置と移動軌跡を算出した上で、魚の数を計数する魚計数装置の技術が開示されている。
また、以下の特許文献3には、漁獲物の画像をビッグデータから選択し、ニューラルネットワークにより解析して前記漁獲物の特徴量を抽出し、ディープラーニングにより前記漁獲物を識別する漁獲物識別システムの技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6624629号公報
【特許文献2】特許第6632042号公報
【特許文献3】特許第6401411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した各特許文献では、以下に記載する課題のうち、少なくとも何れか1つの課題を有する。
(1)魚の撮像データを正確に取得するために、どのような態様で撮像データを取得するかについての特段の言及がない。
(2)魚の撮像時に、撮像部の画角内で複数の魚が重なり合っている場合に、誤カウントが生じうる点についての解決策が提案されていない。
(3)魚の移送路が事前に用意されている状態での提供を想定したシステムのため、この移送路に適した設計を個別に行う必要が生じ、コスト高に繋がる。
(4)養殖現場や、港での水揚げ時など、異なる現場に対応可能な汎用性に優れるシステムの提供が所望されている中、上記(1)~(3)などの理由からこのニーズに応えられていない。
【0006】
よって、本発明は、魚の撮像データから魚の計数作業や識別作業などの解析作業を行うにあたって、異なる現場での汎用性が高く、かつ安定した解析精度を得られる手段の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべくなされた本願の第1発明は、フィッシュポンプと接続して、当該フィッシュポンプによって送られる魚を撮像するための、魚撮像用架台であって、架台本体と、架台本体に設置する管状部材であって、前記フィッシュポンプによって送られる魚を通過させる、流路管と、前記流路管の一端に設けて、前記フィッシュポンプと接続可能な、接続具と、前記流路管内の魚を撮像する撮像部を取り付けるための取付部と、を少なくとも有することを特徴とする。
また、本願の第2発明は、前記第1発明において、前記取付部に取り付けた前記撮像部の撮像範囲に映り込む位置に設置される、スケールをさらに有することを特徴とする。
また、本願の第3発明は、前記第1発明または第2発明において、前記取付部に取り付けた前記撮像部の撮像範囲に映り込む位置に展開可能な、スクリーンをさらに有することを特徴とする。
また、本願の第4発明は、前記第1発明乃至第3発明のうち何れか1つに記載の発明において、前記架台本体を、自走可能に構成してあることを特徴とする。
また、本願の第5発明は、前記第1発明乃至第4発明のうち何れか1つに記載の発明において、前記流路管の一部または全部を透明部材で構成し、当該透明部材を介して、流路管内の魚を撮像可能な位置に前記取付部を設けてあることを特徴とする。
また、本願の第6発明は、前記第1発明乃至第5発明のうち何れか1つに記載の魚撮像用架台と、前記流路管の一端に接続して、当該流路管内に魚を送り込むフィッシュポンプと、前記取付部に取り付けて、前記流路管内の魚の撮像データを取得する、撮像部と、前記撮像データに基づいて、前記流路管を流れる、魚の数、魚種、大きさおよび重さのうち少なくとも何れか1つを求める解析作業を行う、解析部と、を少なくとも有することを特徴とする。
また、本願の第7発明は、前記第6発明において、前記撮像部を複数有し、各撮像部で前記流路管を異なるアングルから撮像することを特徴とする。
また、本願の第8発明は、前記第7発明において、前記解析部は、前記複数の撮像部から得られる前記撮像データをタイムコードで紐付けて解析作業を行うことを特徴とする。
また、本願の第9発明は、前記第6発明乃至第8発明のうち何れか1つの記載の発明において、前記解析部が、前記流路管内の魚の逆走を検知する機能を更に有することを特徴とする。
また、本願の第10発明は、前記第9発明において、前記フィッシュポンプの流速を制御可能な流速制御部を更に有し、前記流速制御部は、前記解析部によって前記流路管を逆走する魚を検知した際に、前記フィッシュポンプの流速を上げることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、以下に記載する効果のうち、少なくとも何れか1つの効果を奏する。
(1)架台本体に流路管を搭載した状態の可搬性に優れる魚撮像用架台を用意することにより、この魚撮像用架台を必要な場所に移動させて使用することで、あらゆる場所で魚の撮像作業や解析作業が可能となる。
(2)フィッシュポンプを用いて魚を吸い込んで移送する先で、魚の撮像を行うため、水槽内の魚をもれなく魚とすることができる。
(3)スケールを設けることで、撮像データにおける歪みの補正や、魚のサイズの算出基準を提供することができる。
(4)スクリーンを設けることで、撮像データの背景を均一化することができ、解析精度への悪影響となる要因を除くことができる。
(5)架台本体を自走可能に構成することで、魚撮像用架台の移動がより楽となり、汎用性の向上に繋がる。
(6)一部または全部を透明部材で構成した流路管内に魚を通すことで、管外の撮像部から管内の魚を明瞭に撮影することができる。
(7)複数の撮像部で、流路管を異なるアングルから撮像することにより、一方の撮像部では隠れて撮像できなかった魚を、他方の撮像部で撮像することにより、これらの撮像データを互いに補完しあうことによって魚をより精度良く検出することができる。
(8)解析部で魚の逆走を検知することにより、同一の魚を重複検出してしまう恐れを低減することができる。
(9)流速制御部を設けることにより、魚の逆走を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係る魚撮像用架台の一例を示す概略斜視図。
図2】架台本体の形状例を示す概略図。
図3】本発明に係る魚解析システムの第1実施例の概略構成図。
図4】本発明に係る魚解析システムの第2実施例の概略構成図。
図5】本発明に係る魚解析システムの第3実施例の概略構成図。
図6】本発明に係る魚解析システムの第4実施例の概略構成図。
図7】本発明に係る魚撮像用架台のその他の変形例を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施例について説明する。
【実施例0011】
<1>全体構成(図1
図1は、本発明に係る魚撮像用架台Aの一例を示す概略斜視図である。
本発明に係る魚撮像用架台Aは、架台本体A1と、架台本体A1に搭載する流路管A2と、前記流路管A2にフィッシュポンプを接続するための接続具A3と、を少なくとも有する。
この魚撮像用架台Aを用いて、フィッシュポンプで水槽から水とともに汲み上げた魚を撮像して撮像データを取得する。
なお、この撮像データは、可視光を受光する撮像素子を用いたものに限られず、超音波や、VLFなどの比較的水中で減衰の少ない電波などの反射波を利用して撮像するものも含まれる。
なお、本発明において、「魚」とは、魚類や甲殻類を含む「魚介類」を意味する。また、魚は養殖か天然であるかを問うものでもない。
以下、各構成要素の詳細について説明する。
【0012】
<2>架台本体(図1
架台本体A1は、搭載した流路管A2を所定の位置に設置するための部材である。
本発明において、架台本体A1の形状は特段限定するものではなく、枠組部材や平板部材などを適宜組み付けて、台状や立体枠状などを構成すればよい。
本実施例では、平板部材に対し、枠組部材を立体的に組み立てて架台本体A1を形成しており、この架台本体A1の前後方向、左右方向、上方向にそれぞれ面的に解放した領域を設けることで、流路管A2と接続するホースの干渉防止や、流路管A2を撮像するための空間の確保を実現している。
【0013】
<2.1>載置台(図1
架台本体A1の台座10には、別途流路管A2を載せる載置台30を設けてもよい。この載置台30の上面を、流路管A2の外形に対応する形に形成しておくことで、流路管A2を安定した状態で架台本体Aに搭載することができる。
【0014】
<2.2>台車機構(図1
また、架台本体A1の台座10の下面に車輪11などを設けて台車状とすることで、魚撮像用架台Aを任意の位置に移動させやすくするよう構成してもよい。
【0015】
<2.3>取付部(図1
架台本体A1には、流路管A2を撮像する撮像部Cとして機能する装置を取り付けておくための取付部20を設けておいても良い。
この取付部20は、架台本体A1の構成部材を流用したものでもよいし、別途脱着自在な別部材を用いたものであってもよい。また、取付部20の設置数も特段限定するものではない。
本実施例では、流路管A2を側面側から撮像する装置を取り付けるべく、架台本体A1から側方に張り出す様に伸びるアーム状の長手部材からなる側方用取付部20aと、架台本体A1の上部フレームの左右方向に架設する長手部材からなる上方用取付部20bと、で構成した二箇所の取付部を設けている。
本実施例のように、側方と上方にそれぞれ取付部を設けておくと、例えば、側方用取付部20aに取り付けた撮像部C1による撮像範囲C11では前方の魚の奥に隠れて撮像できなかった後方の魚を、上方用取付部20bに取り付けた撮像部C2の撮像範囲C21でもって撮像しておき、これらの撮像データを互いに補完しあうことによって魚をより精度良く検出することができる。
各取付部20に取り付ける撮像部Cに、同じ撮像装置を用いた場合には、各撮像部Cから流路管A2までの距離も等長としておくこともできる。
【0016】
<2.4>架台本体の形状例(図2
図2に、架台本体A1の形状例を示す。
図2(a)は、平板状の台座10の底面に車輪11を設け、当該台座10の上面に二箇所の載置台30を設け、台座10の側面から側方用取付部20aを張り出す様に設けた構成を示している。本構成では、流路管A2の側方側にのみ撮像部Cを設置する場合の実施例として適している。
図2(b)は、枠状の台座10の途上に、門型形状を呈する上方用取付部20bを設け、当該台座10の底面にスペーサ12を設けた構成としている。本構成では、フォークリフト等によって架台本体A1を運搬して使用する場合の実施例として適している。
図2(c)は、平板状の台座10の底面に車輪11を設け、当該台座10の上面に、二つの門型部材を離間させて配置し、その門型部材間に架設した上方用取付部20bを設けた構成としている。本構成では、架台本体A1の安定性をより求められる現場での実施例として適している。
【0017】
<3>流路管(図1
流路管A2は、解析対象の魚を通過させるための管状部材である。
流路管A2は、管外から、受光素子を用いた撮像部Cによる撮像を行う際には、撮像部Cの撮像範囲が含まれる範囲を、透明部材で構成しておく。
本実施例では、流路管A2に透明なアクリル管を用いることで、管内の魚を任意のアングルから撮像可能としている。
【0018】
<4>接続具(図1
接続具A3は、流路管A2の端部と、フィッシュポンプから伸びるホースとを接続する際のアタッチメントとなる部材である。
接続具A3の形状は、流路管A2の管径や、ホース径に応じて適宜設計すればよい。
また、接続具A3は、流路管A2やホースと分離独立した部材に限定されるものではなく、流路管A2の端部や、フィッシュポンプのホースの端部に一体的に形成されているものも含まれる。
【0019】
<5>その他の部材
本発明に係る魚撮像用架台Aには、その他、以下の部材を設けてもよい。
【0020】
<5.1>スケール(図1
スケール40は、撮像部Cの画角内に収まる位置に配置しておくことで、撮像データにおける歪みの補正や、魚のサイズの算出基準の提供を行うための部材である。
本実施例では、流路管A2の側面手前側に所定幅で目盛線が付されたスケール40を配置している。
このスケール40を予め設けておくことにより、広角での撮像データにおいて発生しやすい歪みの補正が可能となる。
また、撮像部Cとなる撮像装置の入れ換えや、設定解像度の変更に伴って撮像データ内の1画素数あたりのサイズが変わった場合であっても、当該スケール40を基準にすることで、魚のサイズを正しく算出することができる。
【0021】
<5.2>スクリーン(図1
スクリーン50は、流路管A2を挟んで、撮像部Cと対向する側に配置しておくことで、撮像データの背景を均一化するための部材である。
本実施例では、ロール状に巻き取った状態から下方に引き出して展開可能なスクリーン50を、側方用取付部20aを設けた側と反対側の側部側で展開可能な構成としている。
このスクリーン50を必要に応じて展開することで、撮像部Cで得られる撮像データから魚の輪郭や形状を導き出すために行う、解析部Dでの二値化の画像処理をより精度良く行うことができる。
【0022】
<5.3>光源(図示せず)
光源は、撮像データをより明確に撮像するための部材である。
光源には、撮像データ内で魚以外の影を消滅させることを目的とするライトや、魚に照射した光を輪郭線として撮像し、解析部Dで当該輪郭線を抽出可能なラインレーザなどを用いることができる。
【0023】
<6>まとめ
このように、本発明に係る魚撮像用架台は可搬性に優れるため、この魚撮像用架台を必要な場所に移動させて使用することで、養殖現場や、港の水揚げなど、あらゆる場所で魚の撮像作業が可能となる。
【実施例0024】
次に、本発明に係る魚撮像用架台Aを用いた魚解析システムの第1実施例について説明する。
【0025】
<1>全体構成(図3
本発明に係る魚解析システムは、魚撮像用架台A、フィッシュポンプB、撮像部Cおよび解析部Dを少なくとも具備して構成する。
以下、各構成要素の詳細について説明する。
【0026】
<2>魚撮像用架台(図3
魚撮像用架台Aは、前記した実施例1で説明した架台、すなわち、架台本体A1に、側方用取付部20aおよび上方用取付部20bを設け、流路管A2にスケール40を配置したものを用いている。
【0027】
<3>フィッシュポンプ(図3
フィッシュポンプBは、魚を水とともに移送するためのポンプである。
フィッシュポンプBは、移送能力[t/h]、吐出量[m/h]、移送距離[m]、移送揚程[m]、対象魚、魚のサイズ[cm]などで、形式が分かれており、現場条件に応じて適した形式のフィッシュポンプを採用すればよい。
【0028】
<4>撮像部(図3
撮像部Cは、流路管A2内を通過する魚を撮像するためのポンプである。
撮像部Cは、流路管A2内に設けてある、透明部材で構成した箇所を撮像範囲内とするカメラ、ビデオカメラ、赤外線カメラや、流路管A2の内外に設置して、超音波や電波などの反射波を用いて撮像する装置等が含まれる、撮像装置、またはこれらの撮像装置をモジュールとして備えている情報処理端末(PC、タブレット、スマートフォンなど)、その他公知の撮像装置を用いることができる。
本実施例では、撮像部Cにビデオカメラを用いている。
撮像部Cで取得する撮像データは静止画でも動画であってもよい。
撮像部Cは、フレームレート、画角、連続撮影時間などの諸条件から、適宜最適な撮像装置を用いれば良い。
【0029】
<5>解析部(図3
解析部Dは、撮像部Cで取得した撮像データに基づいて、流路管A2を通過した魚の諸情報を解析するための装置である。
この諸情報には、魚の数、魚種、大きさおよび重さのうち少なくとも何れか1つが含まれる。
解析部Dは、CPU、メモリ、記憶装置などを備えた情報処理端末(PC、タブレット、スマートフォンなど)や、サーバなどを適宜組み合わせて構成することができる。
また、解析部Dは、撮像部Cとして機能する装置で兼用してもよい。
【0030】
<5.1>撮像部からのデータ受信例
解析部Dでの撮像部Cからの撮像データの受け取り態様は、種々の方法を用いることができる。
たとえば、撮像部Cに装着して撮像データを記録する外部記憶媒体を介してデータを受け取る方法や、ネットワーク経由でデータを受信する方法などがある。
【0031】
<5.2>解析処理
解析部Dによる解析処理は、流路管A2内に魚を通過させる作業と同時並行でリアルタイムに行っても良いし、流路管A2内への魚の通過が全て完了した段階で、撮像部Cから全ての撮像データを引き取ってから一括して作業を行っても良い。
【0032】
<5.3>複数の撮像部からの撮像データの取扱い
複数の撮像部Cからそれぞれ撮像データを取得する際には、各撮像データをタイムコードで紐付けて同期をとった状態で解析作業を行った上で1つにまとめた解析結果を出力してもよいし、各撮像データを個別に解析作業を行って、それぞれの解析結果を出力して、何れの解析結果を採用するかをユーザに選択させるよう構成してもよい。
【0033】
<6>解析部での解析手法
本発明において、撮像データの解析手法は限定されるものではなく、前記した特許文献1(特許第6624629号公報)、特許文献2(特許第6632042号公報)、特許文献3(特許第6401411号公報)などで開示される公知技術等を用いて、魚の数、魚種、大きさおよび重さなどを算出すれば良い。
【0034】
<7>まとめ
このように、本発明に係る魚解析システムによれば、養殖現場において、水槽内の魚の数、サイズ、重量などを正確に把握することができ、餌量の適切なコントロールを行うことができる。
また、港での水揚げ時においては、魚の数、サイズ、重量に加えて、さらに魚種の特定を行うことによって、水揚げ内容を正確に把握することができる。
【実施例0035】
次に、本発明に係る魚撮像用架台を用いた魚解析システムの第2実施例について説明する。
【0036】
<1>魚の逆走検知機能(図4
フィッシュポンプBの流速が低い場合などに、魚が流路管A2内を逆走してしまうと、同一の魚を重複検出して計数に誤差が生じる場合がある。
そこで、本発明は、実施例2で説明した魚解析システムにおいて、解析部Dに、更に魚の逆走を検知する機能を加えた構成とすることもできる。
解析部Dにおいて、魚の形状を検出可能としている場合、魚の向きが流路管A2の流れに逆行しているかどうかは容易に検出することができる。
この逆走を検知した場合には、以下の方法等の実施が考えられる。
【0037】
<2>方法1:流速制御部による自動制御
本発明に係る魚解析システムに、更に流量制御部を設けた構成とする方法である。
流速制御部Eは、撮像部Cで撮像された魚のうち、解析部Dでの解析によって流路管A2内を逆走している魚を検知した際に、フィッシュポンプBへと流速の増加の指令を送信する機能を有する装置である。
この流速制御部Eによって必要に応じてフィッシュポンプBの流速を上げることで、魚の逆走を自動的に抑制することができる。
【0038】
<3>方法2:逆走検知の通知
解析部Dとして機能する情報処理装置から、周囲の作業員が認識可能な態様でアラームを通知する方法である。
この場合、アラーム通知後に、作業員がフィッシュポンプBの流速を手動で上げることで、魚の逆走を抑制する。
本方法では、先の方法1と異なり、自動でフィッシュポンプBの流速調整はできないものの、フィッシュポンプBに流速を上げる指令を外部装置から受信するための改造を要しない点で有益である。
【0039】
前記した方法1,2において、フィッシュポンプの流速を上げた状態は、そのまま継続してもよいし、一時的なものとしてもよい。
例えば、一時的にフィッシュポンプの流速を上げるように制御する場合には、流速を上げたのち、魚の逆走の検知が無くなった状態が所定時間維持された場合などに、流速を下げるような制御を行うことが考えられる。
【実施例0040】
次に、本発明に係る魚撮像用架台Aを用いた魚解析システムの第3実施例について説明する。
【0041】
<1>同一水槽への循環構成(図5
実施例2では、一方の水槽X内の魚を他方の水槽Y内にフィッシュポンプBで移送する途上に本発明に係る魚撮像用架台Aを設置する態様としていたところ、本実施例では、フィッシュポンプBで移送した魚を同一の水槽に戻すよう構成したものである。
この場合、一方の水槽Xの内部に移動可能な仕切りX1を配置するなどして、フィッシュポンプBの吸込側の領域と、魚撮像用架台Aを通過して戻された魚の吐出側の領域とを区画しておけば良い。
【0042】
<2>まとめ
本実施例に係る構成によれば、水槽内の魚の解析のために別体の水槽への移送作業を省略することができる。
【実施例0043】
次に、本発明に係る魚撮像用架台を用いた魚解析システムの第4実施例について説明する。
【0044】
<1>往路と復路での多重解析(図6
本発明に係る魚解析システムでは、一方の水槽Xから他方の水槽Yへの魚の移送(往路)で得られた解析結果と、他方の水槽Yから一方の水槽Xへの魚の移送(復路)で得られた解析結果とを解析部Dでさらに照合して、解析結果に修正を加えることが可能な構成としてもよい。
【0045】
<2>まとめ
本実施例に係る構成によれば、水槽内の魚の解析のために別体の水槽への移送作業を省略することができる。
【実施例0046】
次に、本発明に係る魚撮像用架台のその他の実施例について説明する。
【0047】
<1>流路管内に取付部を設けた構成(図7(a))
本実施例では、架台本体に設置した流路管の管内に取付部を設け、管内に設置した防水仕様の撮像部でもって魚の撮像データを取得する構成としている。この場合、流路管は透明部材で構成する必要性は無い。
【0048】
<2>流路管の外面に取付部を設けた構成(図7(b))
本発明に係る魚撮像用架台は、架台本体に設置した流路管の管壁外面に取付部を設け、当該取付部に取り付けた超音波や電波を用いて撮像する撮像部でもって魚の撮像データを取得する構成としてもよい。この場合にも流路管は透明部材で構成する必要性は無い。
【符号の説明】
【0049】
A:魚撮像用架台
A1:架台本体
10:台座
11:車輪
12:スペーサ
20:取付部
20a:側方用取付部
20b:上方用取付部
30:載置台
40:スケール
50:スクリーン
A2:流路管
A3:接続具
B:フィッシュポンプ
C:撮像部
C11,C21:撮像範囲
D:解析部
E:流速制御部
X:一方の水槽
X1:仕切り
Y:他方の水槽
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7