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特開2022-176612蓄電セルの制御装置、蓄電装置、制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022176612
(43)【公開日】2022-11-30
(54)【発明の名称】蓄電セルの制御装置、蓄電装置、制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/04 20060101AFI20221122BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20221122BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20221122BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20221122BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
H02J7/04 K
H02J7/00 S
H01M10/48 P
H01M10/48 301
H01M10/44 P
B60R16/02 645A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021083126
(22)【出願日】2021-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福島 敦史
(72)【発明者】
【氏名】服部 成輝
【テーマコード(参考)】
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
5G503AA07
5G503BA03
5G503BB02
5G503CA01
5G503CA11
5G503CB04
5G503CB11
5G503CC02
5G503DA06
5G503EA05
5G503EA08
5G503FA19
5G503GD03
5G503GD06
5H030AA10
5H030AS08
5H030BB01
5H030BB21
5H030FF22
5H030FF41
5H030FF42
5H030FF43
5H030FF44
5H030FF52
(57)【要約】
【課題】蓄電セルが第1領域から第2領域に移行した以降、少なくとも所定時間は電源喪失を抑制し車両の安全性を確保する。
【解決手段】
車載用の蓄電セルの制御装置130は、前記蓄電セル62は、電池性能に関し、第1領域と前記第1領域よりも電池性能が低下する第2領域とを有し、前記蓄電セル62が前記第1領域A1から前記第2領域A2に移行した場合、車両10を制御する車両制御部140に対して領域Aの移行を通知する信号を出力し、信号出力後、少なくとも所定時間Twは、前記蓄電セル62の電流Iを遮断する電流遮断装置53をクローズに維持して、車両10への電力供給を可能にする。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載用の蓄電セルの制御装置であって、
前記蓄電セルは、電池性能に関し、第1領域と前記第1領域よりも電池性能が低下する第2領域とを有し、
前記蓄電セルが前記第1領域から前記第2領域に移行した場合、車両を制御する車両制御部に対して領域の移行を通知する信号を出力し、
信号出力後、少なくとも所定時間は、前記蓄電セルの電流を遮断する電流遮断装置をクローズに維持して、車両への電力供給を可能にする、制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の制御装置であって、
前記蓄電セルは、前記第1領域と前記第2領域に加えて、前記第2領域よりも電池性能が更に低下する第3領域を有し、
前記信号出力後、前記蓄電セルが前記第2領域から前記第3領域に移行した場合、前記電流遮断装置をオープンして電流を遮断する、制御装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の制御装置であって、
前記第1領域から前記第2領域に移行した段階における前記蓄電セルの電圧、電流、及び温度の少なくともいずれか1つに基づいて、前記所定時間を変更する、制御装置。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の制御装置であって、
車両停車後又はエンジン停止後における前記蓄電セルの充電は禁止する、制御装置。
【請求項5】
請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の制御装置であって、
車両停車後における前記蓄電セルの放電は、前記所定時間の経過によらず許可する、制御装置。
【請求項6】
請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の制御装置であって、
前記蓄電セルを搭載した車両が走行中である場合、前記蓄電セルが前記第1領域から前記第2領域に移行した以降、少なくとも、前記所定時間は、前記電流遮断装置のクローズを維持し、
前記蓄電セルを搭載した車両が非走行である場合、前記蓄電セルが前記第1領域から前記第2領域に移行した段階で、前記電流遮断装置をクローズからオープンに切り換える、制御装置。
【請求項7】
請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の制御装置であって、
前記蓄電セルが非車載の状態において前記第1領域から前記第2領域に移行した場合、領域が移行した段階で、前記電流遮断装置をクローズからオープンに切り換える、制御装置。
【請求項8】
車両用の蓄電装置であって、
蓄電セルと、
前記蓄電セルの電流を遮断する電流遮断装置と、
請求項1~請求項7のいずれか一項に記載の制御装置と、を含む、蓄電装置。
【請求項9】
車載用の蓄電セルの制御方法であって、
前記蓄電セルは、第1領域と、前記第1領域より前記蓄電セルの内圧が高い第2領域とを含み、
前記蓄電セルが前記第1領域から前記第2領域に移行した場合、車両を制御する車両制御部に対して領域の移行を通知する信号を出力し、
信号出力後、少なくとも所定時間は、前記蓄電セルの電流を遮断する電流遮断装置をクローズに維持して、車両への電力供給を可能にする、制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源喪失を抑制することにより、車両の安全性を確保する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車に搭載されたバッテリは、保護装置の1つとして電流遮断装置を有している。異常を検出した場合、電流遮断装置をオープンして電流を遮断することで、バッテリを保護することが出来る(下記特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-5985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
蓄電セルは、電池性能に関し、第1領域と、前記第1領域よりも電池性能が低下する第2領域を有する場合がある。蓄電セルが第1領域から第2領域に移行した段階で、直ちに、電流遮断装置をオープンして電流を遮断すると、車両は電源を失ってしまう場合がある。
本発明の一態様は、上記のような事情に基づいて完成させたものであって、蓄電セルが第1領域から第2領域に移行した以降、少なくとも所定時間は、電流遮断装置をクローズすることにより、電源喪失を抑制し車両の安全性を確保する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
蓄電セルは、電池性能に関し、第1領域と、前記第1領域よりも電池性能が低下する第2領域と、を有する。蓄電セルの制御装置は、前記蓄電セルが前記第1領域から前記第2領域に移行した場合、車両を制御する車両制御部に対して領域の移行を通知する信号を出力し、信号出力後、少なくとも所定時間は、前記蓄電セルの電流を遮断する電流遮断装置をクローズに維持して、車両への電力供給を可能にする。
【0006】
本技術は、蓄電セル(又は蓄電装置)の制御方法や、蓄電セル(又は蓄電装置の)の制御プログラムにも適用することが出来る。
【発明の効果】
【0007】
本技術は、電源喪失を抑制することにより、車両の安全性を確保することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】車両の側面図
図2】バッテリの分解斜視図
図3】二次電池セルの平面図
図4図3のA-A線断面図
図5】バッテリの電気的構成を示すブロック図
図6】バッテリのSOC-P特性
図7】故障発生後における電流遮断装置のクローズ/オープンの説明図
図8】電流遮断装置の制御フロー
図9】データテーブル
図10】電流遮断装置の制御フロー
図11】電流遮断装置の制御フロー
図12】バッテリのT-P特性
図13】バッテリのI-P特性
図14A】故障発生後における充電の禁止タイミングを示す図
図14B】故障発生後における充電の禁止タイミングを示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
車載用の蓄電セルの制御装置の概要を説明する。
蓄電セルは、電池性能に関し、第1領域と、前記第1領域よりも電池性能が低下する第2領域と、を有する。制御装置は、前記蓄電セルが前記第1領域から前記第2領域に移行した場合、車両を制御する車両制御部に対して領域の移行を通知する信号を出力し、信号出力後、少なくとも所定時間は、前記蓄電セルの電流を遮断する電流遮断装置をクローズに維持して、車両への電力供給を可能にする。
【0010】
この構成では、蓄電セルが第1領域から第2領域に移行した場合、制御装置から車両を制御する車両制御部に対して領域の移行を通知する信号が出力される。制御装置は、信号の出力後、電流遮断装置をクローズからオープンに切り換えず、所定時間はクローズに維持する。
【0011】
上記構成により、信号出力後の所定時間、車両の電源を維持することが可能となり、車両が走行中の場合、ドライバーは車両を安全な場所に緊急停車するなど、安全措置を講じることが出来る。そのため、車両の安全性を確保することが出来る。車両が非走行の場合も、電流遮断装置をクローズに維持することで、窓の開閉制御やドアの施錠制御などドライバーが車両から離れる際に必要な車両制御を行うための電力を確保することが出来る。
【0012】
前記蓄電セルは、前記第1領域と前記第2領域に加えて、前記第2領域よりも電池性能が更に低下する第3領域を有し、制御装置は、前記信号出力後、前記蓄電セルが前記第2領域から前記第3領域に移行した場合、前記電流遮断装置をオープンして電流を遮断してもよい。
【0013】
この構成では、信号出力後、蓄電セルが第2領域から第3領域に移行した場合、電流遮断装置をオープンして電流を遮断する。電流の遮断により、蓄電セルの第3領域における使用を防止することが出来る。
【0014】
前記第1領域から前記第2領域に移行した段階における前記蓄電セルの電圧、電流、及び温度の、少なくともいずれか1つに基づいて、前記所定時間を変更してもよい。蓄電セルの電池性能の劣化進行や、領域間の移行に要する時間は、電圧、電流、温度に依存する。例えば、電流が小さく領域間の移行に要する時間が長いことが予想される場合、所定時間を長くする。このように、移動時点の蓄電セルの状態に応じた時間設定が可能となる。
【0015】
車両停車後又はエンジン停止後における前記蓄電セルの充電を禁止してもよい。車両停車後やエンジン停止後の充電により、蓄電セルが、第3領域に移行することを抑制することが出来る。
【0016】
車両停車後における前記蓄電セルの放電を、前記所定時間の経過によらず、許可してもよい。車両停車後の放電が許可されることにより、蓄電セルのSOCは低下する。車両停車後に蓄電セルを交換する時、SOCが下がった状態で車両から取り外すことができるので、作業の安全性を確保することが出来る。車両停車後の放電の許可により、例えば蓄電装セルを電源として非常信号(ハザードランプ点灯のための信号等)を出すことで、車両が緊急停車中であることを、外部に報知することが出来る。
【0017】
前記蓄電セルを搭載した車両が走行中である場合、前記蓄電セルが前記第1領域から前記第2領域に移行した以降、少なくとも、前記所定時間は、前記電流遮断装置のクローズを維持し、前記蓄電セルを搭載した車両が非走行である場合、前記蓄電セルが前記第1領域から前記第2領域に移行した段階で、前記電流遮断装置をクローズからオープンに切り換えてもよい。
【0018】
この構成では、蓄電セルを搭載した車両が、走行中か非走行かにより、電流遮断装置の接続状態を切り換える。そのため、車両の安全性を確保しつつ、蓄電セルの第2領域における使用を最小限に抑えることが出来る。つまり、車両が走行中である場合、第1領域から第2領域への移行後、所定時間は電流遮断装置をクローズして電源を維持することで車両の安全性を確保する。車両が非走行である場合、第1領域から第2領域への移行後、電流遮断装置をオープンして電流を遮断することで、蓄電セルの第2領域での使用を最小限に抑えることが出来る。
【0019】
前記蓄電セルが非車載の状態において前記第1領域から前記第2領域に移行した場合、領域が移行した段階で、前記電流遮断装置をクローズからオープンに切り換えてもよい。蓄電セルが非車載の場合、非走行の場合と同様に、電源を維持する必要性は小さい。電流遮断装置をオープンして電流を遮断することで、非車載の蓄電セルの第2領域での使用を最小限に抑えることが出来る。
【0020】
<実施形態1>
1.バッテリ50の説明
【0021】
図1に示すように、車両10には、エンジン20と、エンジン20の始動時等に用いられるバッテリ50と、が搭載されている。バッテリ50は「蓄電装置」の一例である。図2に示すように、バッテリ50は、組電池60と、回路基板ユニット65と、収容体71を備える。車両10には、エンジン20(内燃機関)に代えて、車両駆動用の蓄電装置や、燃料電池が搭載されていてもよい。
【0022】
収容体71は、合成樹脂材料からなる本体73と蓋体74とを備えている。本体73は有底筒状である。本体73は、底面部75と、4つの側面部76とを備えている。4つの側面部76によって上端部分に上方開口部77が形成されている。
【0023】
収容体71は、組電池60と回路基板ユニット65を収容する。回路基板ユニット65は、組電池60の上部に配置されている。
【0024】
蓋体74は、本体73の上方開口部77を閉鎖する。蓋体74の周囲には外周壁78が設けられている。蓋体74は、平面視略T字形の突出部79を有する。蓋体74の前部のうち、一方の隅部に正極の外部端子51が固定され、他方の隅部に負極の外部端子52が固定されている。
【0025】
図3及び図4に示すように、二次電池セル62は、直方体形状のケース82内に電極体83を非水電解質と共に収容したものである。二次電池セル62は一例としてリチウムイオン二次電池である。ケース82は、ケース本体84と、その上方の開口部を閉鎖する蓋85とを有している。
【0026】
図4に示す電極体83は、詳細は図示しないが、銅箔からなる基材に活物質を塗布した負極要素と、アルミニウム箔からなる基材に活物質を塗布した正極要素との間に、多孔性の樹脂フィルムからなるセパレータを配置したものである。これらはいずれも帯状で、セパレータに対して負極要素と正極要素とを幅方向の反対側にそれぞれ位置をずらした状態で、ケース本体84に収容可能となるように扁平状に巻回されている。
電極体83は、巻回タイプのものに代えて、積層タイプのものであってもよい。
【0027】
正極要素には正極集電体86を介して正極端子87が、負極要素には負極集電体88を介して負極端子89がそれぞれ接続されている。正極集電体86及び負極集電体88は、平板状の台座部90と、この台座部90から延びる脚部91とからなる。台座部90には貫通孔が形成されている。脚部91は正極要素又は負極要素に接続されている。正極端子87及び負極端子89は、端子本体部92と、その下面中心部分から下方に突出する軸部93とからなる。そのうち、正極端子87の端子本体部92と軸部93とは、アルミニウム(単一材料)によって一体成形されている。負極端子89においては、端子本体部92がアルミニウム製で、軸部93が銅製であり、これらを組み付けたものである。正極端子87及び負極端子89の端子本体部92は、蓋85の両端部に絶縁材料からなるガスケット94を介して配置され、このガスケット94から外方へ露出されている。
【0028】
蓋85は、圧力開放弁95を有している。圧力開放弁95は、正極端子87と負極端子89の間に位置している。圧力開放弁95は、安全弁である。圧力開放弁95は、ケース82の内圧Pが制限値P3を超えた場合に、開放して、ケース82の内圧Pを下げる。
【0029】
図5は、バッテリ50の電気的構成を示すブロック図である。バッテリ50は、組電池60と、電流計測部である電流検出抵抗54と、電流遮断装置53と、電圧検出回路110と、温度センサ58と、管理装置130と、を備える。
【0030】
バッテリ50の2つの外部端子51、52は、車両ECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)140と、エンジン20の動力により発電する発電機であるオルタネータ150と、車載された車両負荷160と、にそれぞれ電気的に接続されている。車両ECU140は、車両10を制御する車両制御部である。車両ECU140は、オルタネータ150や車両負荷160を制御する。エンジン等の駆動系も制御してもよい。車両ECU140は1つに限らず、複数でもよい。
【0031】
エンジン20の駆動中において、オルタネータ150の発電量が車両負荷160の電力消費より大きい場合、バッテリ50はオルタネータ150により充電される。オルタネータ150の発電量が車両負荷160の電力消費より小さい場合、バッテリ50は、その不足分を補うため、放電する。
【0032】
エンジン20の停止中、オルタネータ150は発電を停止する。バッテリ50は、充電されない状態となり、車両ECU140や車両負荷160に対して放電のみ行う状態となる。
【0033】
組電池60は、複数の二次電池セル62から構成されている。二次電池セル62は、12個あり、3並列で4直列に接続されている。図5は、並列に接続された3つの二次電池セル62を1つの電池記号で表している。二次電池セル12は、「蓄電セル」の一例である。バッテリ50は、定格12Vである。
【0034】
組電池60、電流遮断装置53及び電流検出抵抗54は、パワーライン55P、パワーライン55Nを介して、直列に接続されている。パワーライン55P、55Nは、銅などの金属材料からなる板状導体であるバスバーBSBを用いることが出来る。パワーライン55P、パワーライン55Nは電流経路の一例である。
【0035】
パワーライン55Pは、正極の外部端子51と組電池60の正極とを接続する。パワーライン55Nは、負極の外部端子52と組電池60の負極とを接続する。
【0036】
電流遮断装置53は、正極側のパワーライン55Pに設けられている。電流遮断装置53は、FETなどの半導体スイッチでもよいし、機械式の接点を有するリレーでもよい。電流遮断装置53は、ノーマリクローズであり、正常時、クローズに制御される。
【0037】
電流検出抵抗54は、負極側のパワーライン55Nに設けられている。電流検出抵抗54の両端電圧Vrに基づいて、組電池60の電流Iを計測することができる。
【0038】
電圧検出回路110は、二次電池セル62の電圧Vと、組電池60の総電圧Vabを検出することができる。温度センサ58は、組電池60に取り付けられており、組電池60の温度Tを検出する。
【0039】
管理装置130は、回路基板100上に実装されており、CPU131と、メモリ132と、通信部133を備える。管理装置130は、「制御装置」の一例である。
【0040】
通信部133は、信号線を介して、車両ECU140に対して接続されており、車両ECU140と通信する。管理装置130は、車両ECU140から、車両10の動作状態(走行中、停車中、駐車中など)に関する信号を通信により受信できる。
【0041】
管理装置130は、電圧検出回路110、電流検出抵抗54、温度センサ58の出力に基づいて、バッテリ50の状態を監視する。つまり、組電池60の温度T、電流I、総電圧Vabを監視する。
【0042】
管理装置130は、組電池60の電流Iに基づいて、組電池60のSOC[%]を推定する処理を行う。
【0043】
SOC(state of charge:充電状態)は、満充電容量に対する残存容量の比率であり、下記の(1)式にて表される。
【0044】
SOC=(Cr/Co)×100・・・・・・・・・・(1)
Coは二次電池の満充電容量、Crは二次電池の残存容量である。
【0045】
SOCは、下記の(2)式で示すように、電流Iの時間に対する積分値に基づいて推定することが出来る。電流の符号を、充電時はプラス、放電はマイナスとする。
【0046】
SOC=SOCo+100×(∫Idt/Co)・・・(2)
SOCoは、SOCの初期値、Iは電流である。
【0047】
メモリ132には、SOCを推定するプログラムや、図8に示す制御フローの実行プログラムが記憶されている。これらプログラムの実行に必要なデータが記憶されている。プログラムは、CD-ROM等の記録媒体に記憶して、譲渡等することが出来る。プログラムは、電気通信回線を用いて配信することも出来る。
【0048】
2.二次電池セル62の特性
図6は、横軸をSOC[%]、縦軸を二次電池セルの内圧P[Pa]とした、二次電池セル62のSOC-P特性を示すグラフである。内圧Pは、二次電池セル62のケース82の内部の圧力である。二次電池セル62は、SOCの変化量に対する内圧Pの変化量、つまりグラフの傾きが、異なる3つの領域A1~A3を有している。
【0049】
第1領域A1は、SOCが100[%]以下の領域、第2領域A2は、SOCが100[%]~108[%]の領域、第3領域A3は、SOCが108[%]以上の領域である。
【0050】
第1領域A1は、二次電池セル62の正常使用領域であり、内圧Pが使用上限値P1以下の領域である。使用上限値P1は、二次電池セル62を安全に使用できる内圧Pの上限値である。
【0051】
第2領域A2は、内圧Pが使用上限値P1よりも大きく、第1領域A1に比べて内圧Pが高い領域である。第2領域A2は、使用により二次電池セル62が不安全事象に至ることはほぼないが、使用を推奨する領域ではない。
【0052】
第3領域A3は、第2領域A2に比べて内圧Pが更に高く、二次電池セル62の安全性の確保が困難な不安全領域である。第3領域A3は、使用により二次電池セル62が不安全事象に至る可能性がある。
【0053】
圧力開放弁95が動作する制限値P3は、第3領域A3に含まれており、二次電池セル62が第3領域A3に移行した後、内圧Pが制限値P3まで上昇すると、圧力開放弁95が開放して内圧Pを下げる。
【0054】
SOCの変化量に対する内圧Pの変化量は、第3領域A3、第2領域A2、第1領域A1の順に大きい。第1領域A1は、内圧Pの変化量が小さく、所定値以下である。
【0055】
内圧変化量の大小関係:A3>A2>A1
【0056】
内圧変化量が異なる理由は、SOCが高いほど、二次電池セル62の電圧Vが高くなり、セル内部の電解液が分解して、気化し易いことが考えられる。
【0057】
二次電池セル62の「内圧P」と「電池性能」は相関性があり、内圧Pが高い程、電池性能が低下する。「電池性能」の指標として、二次電池セル62の内部抵抗[Ω]、容量維持率[%]や電池出力[W]を挙げることが出来る。電池性能は、これらの指標を総合的に判断するものでもよいし、いずれか一つを代表値として、判断するものでもよい。
【0058】
同一条件(例えば、同じCレート)で使用した場合、第2領域A2は、第1領域A1に比べて内圧Pが高いことから、電池性能が低下する領域である。第2領域A2は、第1領域A1に比べて内圧Pの変化量が大きいことから、電池性能の低下が加速する領域(SOC変化に対する電池性能の低下量が大きい領域)である。第3領域A3は、第2領域A2に比べて内圧Pが高いことから、電池性能が更に低下する領域である。第3領域A3は、第2領域A2に比べて、内圧Pの変化量が大きいことから、電池性能の低下が更に加速する領域(SOC変化に対する電池性能の低下量が更に大きい領域)である。
【0059】
電解液の分解は不可逆であることから、第2領域A2や第3領域A3を一度でも経験すると、その後、第1領域A1に戻っても、内圧Pは元には戻らず、電池性能も回復しない。
【0060】
2.車両10の安全性確保と不安全事象の抑制
車両ECU140は、第1領域A1の上限値であるSOC100%を超えないように、オルタネータ150を充電制御する。しかし、オルタネータ150の故障などにより、充電制御が不能になると、SOC100%を超えても、充電が継続し、組電池60が正常使用領域である第1領域A1から、内圧Pが高く電池性能が低下する第2領域A2に移行する場合がある。
【0061】
管理装置130は、SOCや電圧を監視し、組電池60が第2領域A2に移行した場合(図7に示す時刻t1)、車両ECU140に対して領域Aの移行を通知する信号を出力する。車両ECU140は信号を受信した場合、警告ランプを点灯するなど、ドライバーに対して車両10の緊急停車を要求する又は促す。
【0062】
管理装置130は、車両ECU140に対して信号出力後、電流遮断装置53をクローズからオープンに切り換えず、所定時間Tw(図7に示すt1~t2)は、クローズを維持する。
【0063】
信号出力後、所定時間Twはクローズを維持することで、故障したオルタネータ150から車両10への電力供給が停止した場合でも、バッテリ50から車両10への電力供給が可能である。
【0064】
そのため、所定時間Twは車両10の電源を維持することが可能となり、走行中の場合、ドライバーは車両10を安全な場所に緊急停車することが出来る。
【0065】
管理装置130は、所定時間Twの経過後(図7のt2以降)、電流遮断装置53をクローズからオープンに切り換えて、バッテリ50の再使用を禁止してもよい。再使用を禁止する理由は、信号出力後の所定時間Twは、第2領域A2での使用になることから、二次電池セル62の内圧Pが、組電池60を安全に使用できる使用上限値P1よりも大きいからである。
【0066】
第2領域A2に移行した二次電池セル62の内圧Pの変化量は、組電池60の温度Tに依存する。つまり、バッテリ50の温度Tが高いほど、内圧Pの変化が大きい。SOC変化は、総電圧Vabや充電電流Iに依存し、総電圧Vabが高いほど、充電電流Iが大きいほど、第2領域A2から第3領域A3に移行しやすい。総電圧Vabが高い程、領域Aが移行し易い理由は、総電圧が高い程、充電電圧が高くなることから、充電電流Iが大きくなるからである。
【0067】
そのため、所定時間Twは、信号出力時点の組電池60の総電圧Vab、充電電流I、温度Tにより、変更してもよい。つまり、信号出力時点のバッテリ50の総電圧Vabが低いほど、所定時間Twを長くしてもよい。充電電流Iが小さいほど、所定時間Twを長くしてもよい。温度Tが低いほど、所定時間Twを長くしてもよい。所定時間Twは、概ね2分~3分程度、確保できるとよい。
【0068】
図8は、電流遮断装置53の制御フローである。
制御フローは、S10~S90の9ステップから構成されており、車両10の走行開始を伝える走行開始信号をバッテリ50が車両ECU140から受信した場合に実行される。
【0069】
管理装置130は、走行開始信号を受信すると、電流検出抵抗54の計測値とその極性に基づいて、充電の有無を検出する(S10)。
【0070】
充電を検出すると、管理装置130は、SOCの現在値に基づいて、バッテリ50の領域A1~A3を検出する(S20)。通常、SOCは100%以下であることから、バッテリ50は、第1領域A1に含まれている。
【0071】
管理装置130は、その後、組電池60が第1領域A1から第2領域A2に移行したか、否か判定する(S30)。移行していなければ、S20に戻る。
【0072】
オルタネータの故障等により車両ECU140の充電制御が不能になると、走行中、バッテリ50は充電され続けることがあり、SOCが100%を超える可能性がある。
【0073】
管理装置130は、SOCが100%を超え、組電池60が第2領域A2に移行すると、バッテリ50の総電圧Vab、充電電流I、温度Tに基づいて、所定時間Twを算出する(S40、S50)。
【0074】
所定時間Twの算出は、例えば、I、Vを2つの変数とした2次元のデータテーブルを用いることが出来る。図9はデータテーブルの一例を示す。
【0075】
この実施形態では、図9のデータテーブルを温度Tごとに作成している。管理装置130は、第2領域移行時点の組電池温度に対応するデータテーブルを選択し、第2領域移行時点の組電池60の総電圧Vab、充電電流Iから所定時間Twを決定する。
【0076】
管理装置130は、その後、組電池60の領域Aの移行を通知する信号を車両10に送信する。このとき、所定時間Twも併せて通知してもよい。
【0077】
管理装置130は信号出力後、電流遮断装置53をクローズに維持する(S60)。そして、信号出力後の経過時間をカウントとし、信号出力から所定時間Twが経過したか、判断する(S70)。
【0078】
管理装置130は、信号出力から所定時間Twが経過した場合、電流遮断装置53に指令を与えて、電流遮断装置53をクローズからオープンに切り換える。電流遮断装置53の切り換えにより、組電池60の電流Iを遮断することが出来る。
【0079】
管理装置130は、所定時間Twのカウント中、組電池60が第2領域A2から第3領域A3に移行したかどうかを判断する(S90)。
【0080】
二次電池セル62が第3領域A3に移行した場合、所定時間Twの経過前であっても、電流遮断装置53をクローズからオープンに切り換える。電流遮断装置53をオープンに切り換えることで、第3領域A3に移行した組電池60が不安全事象に至ることを、抑制することが出来る。圧力開放弁95が開くことを抑制することが出来る。
【0081】
3.効果説明
この構成では、組電池60が第1領域A1から第2領域A2に移行した場合、管理装置130は、車両ECU140に対して領域Aの移行を通知する信号を出力する。管理装置130は、信号出力後、電流遮断装置53をクローズからオープンに切り換えず、所定時間Twはクローズに維持する。
【0082】
信号出力後の所定時間Twは、車両10の電源を維持することが可能となり、走行中の場合、ドライバーは車両10を安全な場所に緊急停車するなど、安全措置を講じることが出来る。そのため、車両10の安全性を確保することが出来る。
【0083】
この構成は、信号出力後、組電池60が第2領域A2から第3領域A3に移行した場合、電流遮断装置53をオープンして電流を遮断する。電流の遮断により、第3領域A3に移行したバッテリ50が不安全事象に至ることを抑制することが出来る。
【0084】
この構成では、電源確保により車両10の安全性を維持しつつ、バッテリ50が不安全事象に至ることを抑制することが出来る。
【0085】
<実施形態2>
実施形態2は、緊急停車後における電流遮断装置53の制御を開示する。図10は、緊急停車後における電流遮断装置53の制御フローである。
【0086】
図10の制御フローは、第2領域A2への移行に伴って、管理装置130から車両ECU140に領域Aの移行を通知する信号が出力された後、管理装置130が電流遮断装置53をクローズに維持する制御と並行して行われる。
【0087】
管理装置130は、領域Aの移行を通知する信号を受けた緊急動作中の車両10が停車したか、否かを検出する(S100)。停車の判断は、組電池60の電流Iを閾値と比べることにより判断してもいいし、車両ECU140との通信により、判断してもよい。つまり、車両ECU140から車両10の動作状態(走行中、停車中、駐車中など)に関する信号の受信できる場合、その信号の受信の有無で判断してもよい。
【0088】
管理装置130は、車両10の停車を検出すると、SOCの現在値に基づいて、組電池60が第1領域A1、第2領域A2、第3領域A3のうち、どの領域に有るのか、判断する(S120)。
【0089】
管理装置130は、組電池60が第3領域A3に含まれると判定した場合(S120:NO)、電流遮断装置53をクローズからオープンに切り換える(S150)。
【0090】
電流遮断装置53をオープンに切り換えて電流Iを遮断することで、第3領域A3に移行した組電池60が不安全事象に至ることを、抑制することが出来る。
【0091】
管理装置130は、組電池60が第1領域A1又は第2領域A2に含まれている場合(S120:YES)、組電池60は、充電を除き、一時的な使用が可能であると判断し、電流遮断装置53をクローズに維持する(S130)。
【0092】
その後、管理装置130は、電流検出抵抗54の出力を監視し、組電池60が「充電」されているか、「放電」されているか、判定する(S140)。「充電」、「放電」は、電流計測値の極性から判断できる、
【0093】
管理装置130は、組電池60が充電中の場合(S140:YES)、電流遮断装置53をオープンに切り換え、電流を遮断することで、充電を禁止する(S150)。充電禁止により、組電池60が、第3領域A3に移行することを防止することが出来る。
【0094】
管理装置130は、組電池60が放電中の場合(S140:NO)、電流遮断装置53をクローズに維持し、放電を許容する(S130)。クローズ維持は、信号出力から所定時間Twが経過した以降も、維持される。
【0095】
放電の許容により、バッテリ50を電源として、ハザードランプ点灯など非常信号を出すことで、車両10が緊急停車中であることを、外部に報知することが出来る。
【0096】
車両10の緊急停車後、組電池60のSOCは、放電により低下する。そのため、第2領域A2に移行したバッテリ50を交換する時に、SOCが下がった状態で車両10から取り外すことができるので、安全性を確保することが出来る。
【0097】
<実施形態3>
実施形態2は、緊急停車後、組電池60が充電された場合、電流遮断装置53をオープンして電流を遮断した(S140:YES、S150)。
【0098】
電流の遮断条件は、(B)~(D)でもよい。
(A)緊急停車後の充電
(B)ドライバーの安全が確認できた場合
(C)緊急停車後の再走行での使用
(D)所定値以上の大電流での放電
(E)電池温度が所定値以上での使用
(F)過放電での使用
【0099】
(A)~(F)の全てを、「遮断条件」として、(A)~(F)のうち、いずれかの条件が成立した場合に、電流を遮断してもよい。(A)~(F)のうち、一部を遮断条件としてもよい。例えば、(A)と(C)を遮断条件とし、(A)又は(C)が成立した場合、電流を遮断してもよい。(A)と(C)の組み合わせに限らず、他の組み合わせを、遮断条件としてもよい。組み合わせの数は、(A)~(C)など、2以上でもよい。
【0100】
(B)を遮断条件に含める理由は、ドライバーの安全が確認できた場合、それ以上、車両10に対して電力供給する必要はないからである。安全確認の有無は、緊急停車後、車両10が駐車に移行したか、否かで判断してもよい。駐車の有無は、車両ECU140との通信で判断してもよい。電流値で判断してもよい、
【0101】
(C)を遮断条件に含める理由は、第2領域A2を経験したバッテリ50が、車両10の再走行により、通常と同じ用途(車両負荷への放電やオルタネータによる充電)で使用されることを抑制するためである。再走行の有無は、車両ECU140との通信で判断してもよい。
【0102】
(D)、(E)を遮断条件に含める理由は、第2領域A2を経験したバッテリ50が、異常発熱して、不安全事象に至ることを、抑制するためである。
【0103】
(F)を遮断条件に含める理由は、過放電になると、それ以上、車両10に対して電力供給することが出来ないためである。
【0104】
<実施形態4>
実施形態1~3では、組電池60が第1領域A1から第2領域A2に移行した場合、緊急停車する車両10の電源を維持するため、所定時間Twは、電流遮断装置53をクローズに維持した。
【0105】
組電池60が第1領域A1から第2領域A2に移行する原因として、走行中のオルタネータ150の故障以外に、以下が考えられる。
(a)充電電圧が異なる外部充電器(例えば、24V用充電器)による充電
(b)ジャンプスタートにおけるブースタケーブルの逆接続
(c)バッテリの外部短絡(外部端子51、52間の短絡)
【0106】
組電池60が第1領域A1から第2領域A2に移行しても、バッテリ50が非車載の場合や車両10が非走行である場合、電源を維持する必要性は小さい。
【0107】
管理装置130は、組電池60が第1領域A1から第2領域A2に移行した場合において、以下の場合、電流遮断装置53をクローズからオープンに切り換える(S350)。
【0108】
(1)バッテリが非車載の場合(S310:NO)
(2)車両10が非走行である場合(S320:NO)
【0109】
(1)、(2)の場合、電流遮断装置53をオープンに切り換えて電流を遮断することで、バッテリ50が第2領域A2で使用されることを防止することが出来る。第2領域A2での使用を防止することで、バッテリ50を再利用することが可能となる。
【0110】
図11は、バッテリ50が第2領域A2に移行した以降における、電流遮断装置53の制御フローである。第2領域A2への移行前、電流遮断装置53はクローズである。
【0111】
管理装置130は、バッテリ50が第1領域A1から第2領域A2に移行した場合、バッテリ50が「非車載」か否か、判定する(S310)。
【0112】
「非車載」の判断は、通信線接続の有無で判断してもいいし、電流値で判断してもよい。つまり、通信線が未接続である場合や、長期間電流値がほぼゼロの場合、バッテリ50は「非車載」と判定することが出来る。
【0113】
管理装置130は、バッテリ50は「非車載」と判定した場合(S310:NO)、直ちに、電流遮断装置53をオープンに切り換える(S350)。
【0114】
管理装置130は、バッテリ50は「車載」と判定した場合(S310:YES)、車両10が「走行中」か否か、判定する(S320)。
【0115】
車両10が走行中か否かは、車両ECU140との通信で判定することが出来る。つまり、車両ECU140との間での通信が頻繁に行われている場合、走行中と判断し、所定期間通信が無い場合、非走行と判断できる。車両ECU140から車両10の動作状態(走行中、停車中、駐車中など)に関する信号の受信できる場合、その信号の受信の有無で判断してもよい。
【0116】
管理装置130は、「非走行」と判定した場合(S320:NO)、直ちに、電流遮断装置53をオープンに切り換える(S350)。
【0117】
管理装置130は、「走行中」と判定した場合(S320:YES)、車両ECU140に対して、領域Aの移行を通知する信号を出力する。管理装置130は、電流遮断装置53をクローズに維持する(S330)。
【0118】
管理装置130は、車両ECU140への信号出力後、経過時間をカウントする。そして、信号出力後、所定時間Twが経過すると、電流遮断装置53をクローズからオープンに切り換える。
【0119】
この構成では、組電池60の領域Aが第1領域A1から第2領域A2に移行した場合、バッテリ50を搭載した車両10が、走行中か非走行かにより、電流遮断装置50の接続状態を切り換える。
【0120】
そのため、車両の安全性を確保しつつ、内圧が高い第2領域A2において、組電池60が使用されることを最小限に抑えることが出来る。つまり、車両10が走行中である場合、第1領域A1から第2領域A2への移行後、所定時間Twは電流遮断装置53をクローズして電源を維持するため、車両の安全性を確保できる。車両10が非走行である場合、第1領域A1から第2領域A2への移行後、ただちに、電流遮断装置53をオープンして電流を遮断するため、組電池60の第2領域A2における使用を最小限に抑えることが出来る。
【0121】
車両10が非走行の場合、組電池60の第2領域A2での使用を防止することで、バッテリ50の低下を抑えることが出来、バッテリ50の再使用が可能となる。バッテリ50が「非車載」の場合も同様である。
【0122】
<実施形態5>
実施形態1では、組電池60のSOCと内圧Pとの関係に基づいて、バッテリ50を3つの領域A1~A3に区分した。実施形態5では、組電池60の温度Tと内圧Pとの関係に基づいて、バッテリ50を3つの領域A1~A3に区分する。
【0123】
図12は、横軸を二次電池セル62の温度T、縦軸を二次電池セル62の内圧Pとした、二次電池セル62のT-P特性を示すグラフである。
【0124】
二次電池セル62は、温度Tの変化量に対する内圧Pの変化量、つまりグラフの傾きが異なる3つの領域A1~A3を有している。
【0125】
第1領域A1は、組電池60の温度TがT1[℃]以下の領域、第2領域A2は、組電池60の温度がT1[℃]~T2[℃]の領域、第3領域A3は、組電池60の温度TがT2[℃]以上の領域である。
【0126】
内圧Pの変化量が異なる理由は、温度Tが高いほど、電池内部の化学反応が起き易く、電解液が分解して気化し易いことが考えられる。
【0127】
管理装置130は、温度センサ58の出力に基づいて組電池60の温度Tを監視し、度Tが正常使用領域である第1領域A1に含まれている場合、電流遮断装置53をクローズに維持する。
【0128】
管理装置130は、組電池60の温度Tが、内圧の高い第2領域A2に移行した場合、車両ECU140に対して領域Aの移行を通知する信号を出力する。管理装置130は、信号出力後、所定時間Twは、電流遮断装置53をクローズに維持する。
【0129】
電流遮断装置53のクローズを所定時間Twは維持することにより、車両10が緊急停車するまでの間、電源を維持することが出来る。所定時間Twは、組電池60の温度Tが第1領域A1から第2領域A2に移行した段階(移行した時点)の組電池60の総電圧Vab、電流Iにより変更してもよい。
【0130】
管理装置130は、車両10への信号出力後、組電池60の温度Tを監視する。管理装置130は、組電池60の温度Tが、不安全領域である第3領域A3に移行した場合、電流遮断装置53に指令を送り、電流遮断装置53をクローズからオープンに切り換える。
【0131】
電流遮断装置53をオープンして電流を遮断することで、第3領域A3に移行したバッテリ50が不安全事象に至ることを抑制できる。
【0132】
この構成では、実施形態1~4と同様に、緊急停車時における電源確保により車両10の安全性を維持しつつ、バッテリ50が不安全事象に至ることを抑制することが出来る。
【0133】
<実施形態6>
実施形態5では、組電池60の温度Tと内圧Pとの関係に基づいて、バッテリ50を3つの領域A1~A3に区分した。組電池60の温度Tは、電流Iと相関があり、電流Iが大きいほど、組電池60は温度上昇し易い。
【0134】
実施形態6では、組電池60の電流Iと内圧Pとの関係に基づいて、バッテリ50を3つの領域A1~A3に区分する。
【0135】
図13は、横軸を二次電池セル62の電流I、縦軸を二次電池セル62の内圧Pとした、二次電池セル62のI-P特性を示すグラフである。電流Iは充電電流でもいいし、放電電流でもよい。
【0136】
第1領域A1は、組電池60の電流IがI1[A]以下の領域、第2領域A2は、組電池60の電流がI1[A]~I2[A]の領域、第3領域A3は、組電池60の電流IがI2[A]以上の領域である。
【0137】
管理装置130は、電流検出抵抗54の出力に基づいて、組電池60の電流Iを監視する。電流Iが正常使用領域である第1領域A1に含まれている場合、管理装置130は、電流遮断装置53をクローズに維持する。
【0138】
管理装置130は、組電池60の電流Iが、内圧の高い第2領域A2に移行した場合、車両ECU140に対して領域Aの移行を通知する信号を出力する。管理装置130は、信号出力後、所定時間Twは、電流遮断装置53をクローズに維持する。
【0139】
電流遮断装置53を所定時間Twはクローズに維持することにより、車両10が緊急停車するまでの間、電源を維持することが出来る。所定時間Twは、組電池60の電流Iが第1領域A1から第2領域A2に移行した段階(移行した時点)の組電池60の総電圧Vab、温度Tにより変更してもよい。
【0140】
管理装置130は、車両10への信号出力後、組電池60の電流Iを監視する。管理装置130は、組電池60の電流Iが、不安全領域である第3領域A3に移行した場合、電流遮断装置53に指令を送り、電流遮断装置53をクローズからオープンに切り換える。
【0141】
電流遮断装置53をオープンして、電流Iを遮断することで、第3領域A3に移行したバッテリ50が不安全事象に至ることを抑制できる。電流遮断は、所定時間Twの経過の有無に関係なく、組電池60が第3領域A3に移行した場合は、直に実行される。
【0142】
この構成では、実施形態1~5と同様に、緊急停車時における電源確保により車両10の安全性を維持しつつ、バッテリ50が不安全事象に至ることを抑制することが出来る。
【0143】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0144】
(1)二次電池セル62は、リチウムイオン二次電池に限らず、他の非水電解質二次電池でもよい。二次電池セル62は、複数を直並列に接続する場合に限らず、直列の接続や、単セルでもよい。二次電池セル62に代えて、キャパシタを用いることも出来る。内圧Pが異なる複数の領域(第1領域及び第1領域よりも内圧の高い第2領域)を有する特性の蓄電セルであれば、種類は問わない。二次電池セル、キャパシタは、蓄電セルの一例である。
【0145】
(2)上記実施形態では、第1領域A1から第2領域A2への移行、第2領域A2から第3領域A3への移行を二次電池セル62の「SOC」により判断した。領域の移行は、電池性能の低下と相関性のある物理量であれば、他の物理量に基づいて、判断してもよい。例えば、二次電池セル62の「電圧」により判断してもよい。「電圧」以外に、二次電池セルの「温度」や「電流」により判断してもよい。
【0146】
(3)上記実施形態において、二次電池セル62は、電池性能に関し、第1領域A1、第2領域A2、第3領域A3の3つの領域A1~A3を有していた。二次電池セル62は、少なくとも、第1領域A1と、第1領域A1よりも電池性能が低下する第2領域A2を有していればよく、第3領域A3は有ってもよいし、無くてもよい。
【0147】
第2領域A2は、第1領域A1よりも電池性能が低下する領域であればよく、電池性能の低下が加速するか否かは、どちらでもよい。つまり、図6に示すSOC-P特性の場合、第2領域A2は、第1領域A1と比較して、内圧Pが高い領域(電池性能が低下する領域)であればよく、グラフの傾きは、変化していてもよいし、変化していなくてもよい。第3領域A3についても、同様である。
【0148】
(4)実施形態1では、所定時間Twを、第2領域移行時点の組電池60の総電圧、電流、温度に基づいて変更した。所定時間Twは、固定値でもよい。変更する場合、総電圧、電流、温度のいずれか1つに基づいて、所定時間Twを変更してもよい。或いは、2つに基づいて、所定時間Twを変更してもよい。
【0149】
(5)実施形態4では、組電池60の領域Aが第1領域A1から第2領域A2に移行した場合、バッテリ50を搭載した車両10が、走行中か非走行かにより、電流遮断装置50の接続状態を切り換えた。つまり、車両10が走行中である場合、第1領域A1から第2領域A2への移行後、所定時間Twは電流遮断装置53をクローズして電源を維持し、非走行の場合、第1領域A1から第2領域A2への移行後、ただちに、電流遮断装置53をオープンして電流を遮断した。車両が走行中である場合に限らず、非走行(停車中や駐車中など)の場合でも、第1領域A1から第2領域A2への移行後、所定時間Twは電流遮断装置53をクローズして電源を維持してもよい。電源維持により、窓の開閉制御やドアの施錠制御など、ドライバーが車両10から離れる際に必要な車両制御を行うための電力を確保することが出来る。従って、車両の安全性が向上する。
【0150】
(6)上記実施形態では、管理装置130を、バッテリ50の内部に設けた。バッテリ50は、電流検出抵抗54や電圧検出回路110などの計器類を少なくとも備えていればよく、管理装置130や電流遮断装置53は、バッテリ50の装置外に有ってもよい。
【0151】
(7)上記実施形態では、二次電池セル62の外装体を「直方体形状のケース(金属缶又はプラスチックケース)82」としたが、外装体はラミネートフィルム(パウチセル)でもよい。
【0152】
(8)上記実施形態2では、図14Aに示すように、バッテリ50が第1領域A1から第2領域A2に移行した場合、バッテリ50から車両ECU140に対して領域Aの移行を通知する信号を出力した。そして、車両10が緊急するまでの間、電流遮断装置53をクローズに維持して電源を維持し、車両10が緊急停車した以降は、バッテリ50の充電を禁止することにより、バッテリ50が領域A2から領域A3に移行することを防止した。図14Bに示すように、エンジン停止するまで間、電流遮断装置53をクローズに維持して電源を維持し、エンジン停止した以降、充電を禁止することにより、バッテリ50が領域A2から領域A3に移行することを防止してもよい。
【符号の説明】
【0153】
10 車両10
50 バッテリ(蓄電装置)
53 電流遮断装置
54 電流検出抵抗
58 温度センサ
60 組電池
130 管理装置(制御装置)
140 車両ECU(車両制御部)
150 オルタネータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14A
図14B