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特開2022-176614ソリッドタイヤの製造方法とその成形用治具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022176614
(43)【公開日】2022-11-30
(54)【発明の名称】ソリッドタイヤの製造方法とその成形用治具
(51)【国際特許分類】
   B29D 30/04 20060101AFI20221122BHJP
   B29C 39/10 20060101ALI20221122BHJP
   B29C 39/24 20060101ALI20221122BHJP
   B29C 44/00 20060101ALI20221122BHJP
   B29C 44/12 20060101ALI20221122BHJP
   B29C 44/36 20060101ALI20221122BHJP
   B60C 7/10 20060101ALI20221122BHJP
   B29K 105/04 20060101ALN20221122BHJP
   B29L 30/00 20060101ALN20221122BHJP
【FI】
B29D30/04
B29C39/10
B29C39/24
B29C44/00 A
B29C44/12
B29C44/36
B60C7/10 A
B29K105:04
B29L30:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021083128
(22)【出願日】2021-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】594040877
【氏名又は名称】井上護謨工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100098752
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 吏規夫
(72)【発明者】
【氏名】白井 太郎
(72)【発明者】
【氏名】牧原 伸征
(72)【発明者】
【氏名】常国 冬広
【テーマコード(参考)】
3D131
4F204
4F214
4F215
【Fターム(参考)】
3D131BB19
3D131CC01
3D131LA28
4F204AA42
4F204AB02
4F204AC05
4F204AD05
4F204AG19
4F204AG20
4F204AH20
4F204AJ08
4F204EA01
4F204EA05
4F204EB01
4F204EB11
4F204EF27
4F204EK17
4F204EL17
4F214AA42
4F214AB02
4F214AC05
4F214AD05
4F214AG19
4F214AG20
4F214AH20
4F214AJ08
4F214UA01
4F214UB01
4F214UB11
4F214UD17
4F214UF27
4F214UK17
4F215AH20
4F215VC07
4F215VL33
(57)【要約】
【課題】タイヤケーシング内への弾性発泡体原料の注入をスムーズに行い、良好な品質を有するソリッドタイヤを得ることを目的とする。
【解決手段】タイヤケーシング41の内径穴43に外周の側面15が嵌まる嵌合部13を備え、嵌合部13から径の中心に向けて傾斜する斜面16を有する治具本体11と、斜面16に重なる閉鎖部34を備える治具蓋体31と、を有する成形用治具10を用い、タイヤケーシング41の内径穴43に治具本体11の嵌合部13を嵌め、斜面16とタイヤケーシング41の内径穴43の周縁44bとの間の隙間51から、弾性発泡体原料55をタイヤケーシング41内に注入し、治具本体11に治具蓋体31を重ねて隙間51を閉鎖部34で塞ぎ、弾性発泡体原料55を発泡させる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤケーシング内に弾性発泡体原料を注入して発泡させることにより、前記タイヤケーシング内に弾性発泡体が充填されたソリッドタイヤを製造する方法において、
前記タイヤケーシングの内径穴に外周の側面が嵌まる嵌合部を備え、前記嵌合部から径の中心に向けて傾斜する斜面を有する治具本体と、前記斜面に重なる閉鎖部を備える治具蓋体と、を有する成形用治具を用い、
前記タイヤケーシングの内径穴に前記治具本体の嵌合部を嵌め、前記斜面と前記タイヤケーシングの内径穴の周縁との間の隙間から、前記弾性発泡体原料を前記タイヤケーシング内に注入し、
前記治具本体に前記治具蓋体を重ねて前記隙間を前記閉鎖部で塞ぎ、前記弾性発泡体原料の発泡後、前記治具本体と前記治具蓋体を前記タイヤケーシングから外すことを特徴とするソリッドタイヤの製造方法。
【請求項2】
前記斜面は、前記治具本体の全周に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のソリッドタイヤの製造方法。
【請求項3】
前記弾性発泡体原料の注入は、前記タイヤケーシングの内径穴の周縁に沿って行うことを特徴とする請求項1または2に記載のソリッドタイヤの製造方法。
【請求項4】
タイヤケーシングの内径穴に外周の側面が嵌まる嵌合部を備え、前記嵌合部から径の中心に向けて傾斜する斜面を有する治具本体と、
前記斜面に重なる閉鎖部を備える治具蓋体と、を有し、
前記治具本体の嵌合部が前記タイヤケーシングの内径穴に嵌まった際に、前記斜面と前記タイヤケーシングの内径穴の周縁との間に弾性発泡体原料注入用の隙間を生じることを特徴とするソリッドタイヤの成形用治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソリッドタイヤの製造方法とその成形用治具に関する。
【背景技術】
【0002】
パンクしないタイヤとして、図7に示すタイヤケーシング61内に弾性発泡体66が充填されたソリッドタイヤ60がある。タイヤケーシング61はゴム等からなる環状のものである。弾性発泡体66は、適度の硬さと弾性を有する発泡体で形成され、例えば硬質ウレタンフォームが挙げられる。
【0003】
ソリッドタイヤ60の従来の製造方法として、図8に示す下型71と上型81とからなる成形用治具70を用いる以下の方法がある(特許文献1)。
【0004】
下型71は、タイヤケーシング61の内径穴63に嵌まる円柱部73を有し、円柱部73には注入孔76が形成されている。注入孔76は、円柱部73の上面74の縁に形成された垂直の溝状凹部からなる。
上型81は、円柱部73の上面74に重ねられた際に注入孔76に蓋をするように構成されている。
下型71と上型81は、重ねられた状態でボルト91とナット93により結合される。
【0005】
下型71と上型81を用いるソリッドタイヤの製造方法では、図9に示すように下型71の円柱部73をタイヤケーシング61の内径穴63に嵌め、下型71の注入孔76から、弾性発泡体原料65をタイヤケーシング61内に注入し、下型71に上型81を重ねてボルト91とナット93で結合する。その状態で弾性発泡体原料65をタイヤケーシング61内で発泡させた後、下型71と上型81をタイヤケーシング61から外してソリッドタイヤを得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004-174844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、下型71と上型81とよりなる成形用治具70を用いる従来のソリッドタイヤの製造方法では、下型71の注入孔76が、円柱部73の上面74の縁に形成された垂直の小さな溝状凹部からなるため、注入孔76から注入される弾性発泡体原料65の流れが悪く、タイヤケーシング61内に弾性発泡体原料65をスムーズに注入するのが難しい。その結果、弾性発泡体原料65がタイヤの外に溢れることがある。仮に、弾性発泡体原料65が注入孔76から溢れずにタイヤケーシング61内に入ったとしても、スムーズに入っていないため、タイヤケーシング61内での発泡反応にバラツキが発生し、出来上がり品質は、硬度にバラツキのあるものになる。
【0008】
本発明は前記の点に鑑みなされたものであって、タイヤケーシング内への弾性発泡体原料の注入をスムーズに流れよく行うことができ、タイヤケーシング内に形成される弾性発泡体を発泡状態のばらつきの少ない良好な品質を有するものにできるソリッドタイヤの製造方法とその成形用治具の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様は、タイヤケーシング内に弾性発泡体原料を注入して発泡させることにより、前記タイヤケーシング内に弾性発泡体が充填されたソリッドタイヤを製造する方法において、前記タイヤケーシングの内径穴に外周の側面が嵌まる嵌合部を備え、前記嵌合部から径の中心に向けて傾斜する斜面を有する治具本体と、前記斜面に重なる閉鎖部を備える治具蓋体と、を有する成形用治具を用い、前記タイヤケーシングの内径穴に前記治具本体の嵌合部を嵌め、前記斜面と前記タイヤケーシングの内径穴の周縁との間の隙間から、前記弾性発泡体原料を前記タイヤケーシング内に注入し、前記治具本体に前記治具蓋体を重ねて前記隙間を前記閉鎖部で塞ぎ、前記弾性発泡体原料の発泡後、前記治具本体と前記治具蓋体を前記タイヤケーシングから外すことを特徴とする。
【0010】
本発明の第2の態様は、ソリッドタイヤの成形用治具であって、タイヤケーシングの内径穴に外周の側面が嵌まる嵌合部を備え、前記嵌合部から径の中心に向けて傾斜する斜面を有する治具本体と、前記斜面に重なる閉鎖部を備える治具蓋体と、を有し、前記治具本体の嵌合部が前記タイヤケーシングの内径穴に嵌まった際に、前記斜面と前記タイヤケーシングの内径穴の周縁との間に弾性発泡体原料注入用の隙間を生じることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、タイヤケーシングの内径穴に治具本体の嵌合部を嵌め、嵌合部から径の中心に向けて傾斜している斜面とタイヤケーシングの内径穴の周縁との間の隙間から、弾性発泡体原料をタイヤケーシング内に注入するため、弾性発泡体原料をスムーズにタイヤケーシング内に流入させることができ、タイヤケーシング内に形成される弾性発泡体を発泡状態のばらつきが少ないものにでき、良好な品質を有するソリッドタイヤを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の成形用治具の一実施形態について示す斜視図である。
図2】本発明の製造方法の一実施形態に使用する成形用治具及びタイヤケーシングの断面図である。
図3】本発明の製造方法の一実施形態における治具本体のセット工程と、弾性発泡体原料の注入工程を示す断面図である。
図4】本発明の製造方法の一実施形態における発泡工程を示す断面図である。
図5】本発明の製造方法において加温する場合の一実施形態の断面図である。
図6】本発明の成形用治具の他の実施形態について示す斜視図である。
図7】ソリッドタイヤの断面図である。
図8】従来の成形用治具を示す斜視図である。
図9】従来のソリッドタイヤの製造時を示す断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の成形用治具及びその成形用治具を用いるソリッドタイヤの製造方法について実施形態を説明する。
図1の斜視図及び図2の断面図に示す本発明の一実施形態の成形用治具10は、図7に示したソリッドタイヤ60と同様の構成からなるソリッドタイヤを製造する際に使用されるものであり、治具本体11と治具蓋体31とを有する。治具本体11及び治具蓋体31は、金属または樹脂で形成されている。
【0014】
治具本体11は、タイヤケーシング41の内径穴43より大径の円盤状部12の片面に形成された嵌合部13を有する。嵌合部13は、タイヤケーシング41の内径穴43に嵌まる外周の側面15を備える。治具本体11の先端側には、嵌合部13から該嵌合部13の径の中心に向けて傾斜した斜面16が、嵌合部13の側面15から続いて治具本体11の全周に形成されている。
【0015】
嵌合部11の側面15の高さは、図3の(A)に示すように、ソリッドタイヤの製造時、タイヤケーシング41の内径穴43に一側から嵌合部13が嵌められた際に、タイヤケーシング41の内径穴43の他側の周縁44bと斜面16との間に隙間51を生じるように設定される。
【0016】
嵌合部11の側面15の外径は、タイヤケーシング41の内径穴43と等しいあるいは所定量大であり、タイヤケーシング41の内径穴43に嵌合部13が一側から嵌められた際に、内径穴43の一側の周縁44aに嵌合部11の側面15が密着するのが好ましい。
【0017】
なお、嵌合部13は、図示の形態では、円柱状の先端側の角部がテーパー(斜面16)となっているが、それに限られるものではなく、タイヤケーシング41の内径穴43に嵌まる外周の側面15と斜面16を有するものであればよい。
【0018】
治具蓋体31は、治具本体11の先端側に重なった際に治具本体の11の斜面16に重なる閉鎖部34を有する。実施形態の治具蓋体31は、タイヤケーシング41の内径穴43より大径の円盤状部32の片面に、嵌合部13の外周の側面15と略等しい外径の円柱状部33を有し、該円柱状部33の先端の中心側が円錐台状に窪んで縁が治具本体11の斜面16に重なる閉鎖部34となっている。
【0019】
治具本体11及び治具蓋体31の中心には、治具本体11に治具蓋体31を重ねた際に連通するボルト挿通孔17、37が形成され、ボルト38を挿通できるようになっている。ボルト38は、後述するソリッドタイヤの製造時に、治具本体11と治具蓋体31を結合するものであり、治具本体11と治具蓋体31を重ねた状態でナット39が締め付けられる。
【0020】
成形用治具10を用いて行うソリッドタイヤの製造方法の実施形態について説明する。
ソリッドタイヤの製造方法は、治具本体のセット工程と、弾性発泡体原料の注入工程と、発泡工程と、成形用治具取り外し工程とを有する。
【0021】
治具本体のセット工程では、図3の(A)に示すように、治具本体11の嵌合部13を、タイヤケーシング41の内径穴43に一側から挿入してタイヤケーシング41の内径穴43に嵌め、治具本体11の先端側の斜面16とタイヤケーシング41の内径穴43の他側の周縁44bとの間に、隙間51を形成する。
【0022】
弾性発泡体原料の注入工程では、図3の(B)に示すように、治具本体11の先端側の斜面16とタイヤケーシング41の内径穴43の周縁44bとの間の隙間51から、液状の弾性発泡体原料55をタイヤケーシング41内に所定量注入する。その際、弾性発泡体原料55は、治具本体11の斜面16に沿ってタイヤケーシング41内に導かれるため、タイヤケーシング41へスムーズに流入することができる。弾性発泡体原料55は、ソリッドタイヤの弾性発泡体として好適な弾性発泡体を形成する液状の発泡原料であり、例えば硬質ポリウレタン発泡体原料などを挙げることができる。符号54は、弾性発泡体原料55の注入装置のノズルを示す。
【0023】
また、タイヤケーシング41内への弾性発泡体原料55の注入は、タイヤケーシング41の内径穴43の周縁44bに沿って行い、内径穴43の全周に渡って行うのが好ましい。それによって、タイヤケーシング41内に注入される弾性発泡体原料55の偏りを防ぐことができ、タイヤケーシング41内で弾性発泡体原料55の不均一な発泡を防ぐことができる。
【0024】
なお、弾性発泡体原料55の注入を、タイヤケーシング41の内径穴43の周縁44bに沿って行う方法としては、治具本体11の中心を軸として、タイヤケーシング41及び治具本体11を周方向へ回転させながら弾性発泡体原料55を注入する、あるいは注入装置のノズル54を内径穴43の周縁44bに沿って移動させながら弾性発泡体原料55を注入する方法などがあり、何れでもよい。
【0025】
発泡工程では、図4に示すように、治具本体11に治具蓋体31を重ね、治具本体11の斜面16に重なる治具蓋体31の閉鎖部34で、図3の(B)に示した隙間51を塞ぐ。その状態で、タイヤケーシング41内の弾性発泡体原料55を発泡させる。弾性発泡体原料55の発泡により、タイヤケーシング14内に弾性発泡体56が形成され、充填される。
【0026】
また、発泡工程において、弾性発泡体原料55が発泡してタイヤケーシング41内に充満する際、治具本体11の斜面16に治具蓋体31の閉鎖部34が重なっているため、治具本体11と治具蓋体31との境界面(重なり面)の接触面積が大になり、治具本体11と治具蓋体31の境界面(重なり面)のシール性が高くなる。その結果、タイヤケーシング41内に充満した弾性発泡体原料55が、治具本体11と治具蓋体31との境界面(重なり面)から漏出するのが抑えられる効果もある。
【0027】
なお、発泡工程では、タイヤケーシング41を加温して、タイヤケーシング14内の弾性発泡体原料55の発泡反応を促進させてもよい。例えば、図5に示すように、電熱ヒーターや温水の配管などが取り付けられた加温容器59にタイヤケーシング41を収容して、発泡工程(あるいは注入・発泡工程)を行ってもよい。加温容器59は、弾性発泡体原料55の注入後に蓋をしてもよい。また、加温容器一体型の金型を用いて弾性発泡体原料55の注入とその後の発泡を行ってもよい。
【0028】
成形用治具取り外し工程では、弾性発泡体原料55の発泡後(弾性発泡体56の形成後)に、治具本体11と治具蓋体31を分離させ、タイヤケーシング41の内径穴43から外してソリッドタイヤを得る。製造されたソリッドタイヤは、タイヤケーシング41の内径穴43にホイールが取り付けられて自転車、車椅子、ゴルフカート等に装着される。
【0029】
なお、本発明は実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨に沿って変形が可能である。
例えば、前記実施形態の成形用治具10では、治具本体11の先端側の全周に斜面16が形成されているが、それに限られるものではなく、図6に示す他の実施形態に係る成形用治具10Aのように、治具本体11Aの先端側の一部に斜面16Aを設けてもよい。符号13Aは嵌合部、15Aは外周の側面、31Aは治具蓋体、34Aは閉鎖部である。
また、弾性発泡体の発泡時における治具本体と治具蓋体の結合方法は、ボルトとナットに限られず、例えば治具本体に重ねた治具蓋体を、プレス等によって治具本体に押し付ける方法でもよい。
【0030】
本発明によれば、弾性発泡体原料をスムーズにタイヤケーシング内に注入することができ、タイヤケーシング内における弾性発泡体原料の発泡をばらつきの少ないものにでき、良好な品質を有するソリッドタイヤを得ることができる。
【符号の説明】
【0031】
10 成形用治具
11 治具本体
13 嵌合部
15 側面
16 斜面
31 治具蓋体
34 閉鎖部
41 タイヤケーシング
43 内径穴
44a,44b 内径穴の周縁
51 隙間
55 弾性発泡体原料
56 弾性発泡体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9