(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022176621
(43)【公開日】2022-11-30
(54)【発明の名称】電池シートの検査方法、電池シートの製造方法、及び、組電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/04 20060101AFI20221122BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20221122BHJP
H01M 10/058 20100101ALI20221122BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H01M4/66 A
H01M10/058
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021083142
(22)【出願日】2021-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】519100310
【氏名又は名称】APB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】草野 亮介
(72)【発明者】
【氏名】小林 真也
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 勇輔
(72)【発明者】
【氏名】堀江 英明
【テーマコード(参考)】
5H017
5H028
5H029
【Fターム(参考)】
5H017AA03
5H017EE07
5H028AA10
5H028BB02
5H028BB12
5H029AJ12
5H029AK01
5H029AK02
5H029AK03
5H029AK05
5H029AK16
5H029AL02
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL11
5H029AL12
5H029AL16
5H029AM03
5H029AM04
5H029AM07
5H029BJ12
5H029BJ27
5H029CJ30
(57)【要約】
【課題】短絡の不具合を簡便に発見できる電池シートの検査方法を提供すること。
【解決手段】積層方向に順に積層された正極樹脂集電体と正極活物質層とセパレータと負極活物質層と負極樹脂集電体とを有する電池シートを検査対象物として、非接触式電圧測定機を用いることにより、上記電池シートの表面から離隔した状態で、上記電池シートの表面の複数箇所における電圧を測定する、測定工程と、上記電圧に基づいて上記電池シートに短絡箇所が存在するか否かを判定する、判定工程と、を備える、ことを特徴とする電池シートの検査方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層方向に順に積層された正極樹脂集電体と正極活物質層とセパレータと負極活物質層と負極樹脂集電体とを有する電池シートを検査対象物として、非接触式電圧測定機を用いることにより、前記電池シートの表面から離隔した状態で、前記電池シートの表面の複数箇所における電圧を測定する、測定工程と、
前記電圧に基づいて前記電池シートに短絡箇所が存在するか否かを判定する、判定工程と、を備える、ことを特徴とする電池シートの検査方法。
【請求項2】
前記測定工程では、前記非接触式電圧測定機を、前記電池シートの表面のうちの前記積層方向に対向する箇所から離隔した状態で、前記積層方向に対向するように配置する、請求項1に記載の電池シートの検査方法。
【請求項3】
前記測定工程では、前記非接触式電圧測定機が前記積層方向に対向した状態で配置された領域に、前記電池シートを通過させる、請求項1又は2に記載の電池シートの検査方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の電池シートの検査方法により前記短絡箇所が存在しないと判定された電池シートを選別する、選別工程を備える、ことを特徴とする電池シートの製造方法。
【請求項5】
請求項1~3のいずれかに記載の電池シートの検査方法により前記短絡箇所が存在しないと判定された電池シートを、複数枚積層する、積層工程を備える、ことを特徴とする組電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池シートの検査方法、電池シートの製造方法、及び、組電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大容量電池の需要が高まり、複数個の単電池を積層した組電池が多く製造される中、それらの製造過程において不具合品を効率良く取り除く必要性が高まっている。
【0003】
特許文献1には、正極板と負極板をセパレータを介して積層して構成した極板群を電槽内に挿入して成る電池の短絡検査方法であって、極板群を電槽に挿入する前に極板群を加圧しながら短絡不良を検査することを特徴とする電池の短絡検査方法が開示されている。
【0004】
特許文献2には、組電池を構成する単電池を検査する方法であって、複数個の単電池を積層状に配列し、配列した単電池群を積層方向に押圧した状態で各単電池を検査することを特徴とする単電池の検査方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001-236985号公報
【特許文献2】特開2005-339925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の検査方法では、単電池を組んだ極板群を加圧した状態で短絡不良を検査するため、極板群に不具合が発見された場合、どの単電池に不具合が生じているのかを特定することが容易ではない。
【0007】
一方、特許文献2に記載の検査方法では、積層状に配列した単電池群を積層方向に押圧した状態で各単電池を検査するため、単電池群に不具合が発見された場合、不具合が生じている単電池を単電池群から取り替える必要がある。
【0008】
このように、従来の検査方法は、単電池単位、より具体的には、単電池に用いられる電池シート単位で不具合を効率的に発見する方法ではなかった。
【0009】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、短絡の不具合を簡便に発見できる電池シートの検査方法を提供することを目的とするものである。また、本発明は、上記電池シートの検査方法を用いた電池シートの製造方法を提供することを目的とするものである。更に、本発明は、上記電池シートの検査方法を用いた組電池の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、積層方向に順に積層された正極樹脂集電体と正極活物質層とセパレータと負極活物質層と負極樹脂集電体とを有する電池シートを検査対象物として、非接触式電圧測定機を用いることにより、上記電池シートの表面から離隔した状態で、上記電池シートの表面の複数箇所における電圧を測定する、測定工程と、上記電圧に基づいて上記電池シートに短絡箇所が存在するか否かを判定する、判定工程と、を備える、ことを特徴とする電池シートの検査方法;上記電池シートの検査方法により上記短絡箇所が存在しないと判定された電池シートを選別する、選別工程を備える、ことを特徴とする電池シートの製造方法;上記電池シートの検査方法により上記短絡箇所が存在しないと判定された電池シートを、複数枚積層する、積層工程を備える、ことを特徴とする組電池の製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電池シート単位で短絡の不具合を簡便に発見できる。更に、本発明によれば、非接触式電圧測定機が電池シートに完全に非接触な状態であるため、電圧測定時に非接触式電圧測定機と接触することによる電池シートの損傷が生じることがなく、その損傷に由来する異物が電池シートに混入することもない。よって、電圧の測定速度を上げたり、電圧の測定頻度を上げたりすることが容易となるため、電池シートの製造効率を向上させることができる。これにより、不具合が生じていない電池シートを用いて組電池を製造できるため、組電池の製造歩留まりを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の電池シートの検査方法の一例を示す側面模式図である。
【
図2】
図2は、本発明の電池シートの検査方法において検査対象物として用いられる電池シートの一例を示す一部切り欠き斜視模式図である。
【
図3】
図3は、組電池の一例を示す一部切り欠き斜視模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[電池シートの検査方法]
本発明の電池シートの検査方法は、積層方向に順に積層された正極樹脂集電体と正極活物質層とセパレータと負極活物質層と負極樹脂集電体とを有する電池シートを検査対象物として、非接触式電圧測定機を用いることにより、電池シートの表面から離隔した状態で、電池シートの表面の複数箇所における電圧を測定する、測定工程と、電圧に基づいて電池シートに短絡箇所が存在するか否かを判定する、判定工程と、を備える。
【0014】
検査対象物である電池シートに短絡箇所が存在する場合、短絡箇所の電圧は0Vとなる。そのため、非接触式電圧測定機を用いて短絡箇所の電圧をピンポイントで測定すると、例えば、他の箇所の電圧が100mV程度であるにも関わらず、その箇所の電圧は0Vとなる。一方、非接触式電圧測定機のサイズによっては、短絡箇所とその周辺の非短絡箇所との電圧を合わせて測定する場合もある。この場合、測定される電圧は、短絡箇所に加えて非短絡箇所も含めた数値となるために0Vとはならず、例えば、50mV程度となる。このような挙動を鑑み、本発明の電池シートの検査方法では、測定された電圧が許容範囲外である箇所が電池シートに存在する場合、電池シートに短絡箇所が存在すると判定する。
【0015】
本発明の電池シートの検査方法において、電圧の許容範囲は、電極の仕様に依存する所定値の±30%であることが好ましい。なお、上記所定値については、検査対象物である電池シートの表面の複数箇所において測定された電圧の平均値からも求めることができる。
【0016】
以上により、本発明の電池シートの検査方法では、電池シート単位で短絡の不具合を簡便に発見できる。
【0017】
本発明の電池シートの検査方法では、積層方向に順に積層された正極樹脂集電体と正極活物質層とセパレータと負極活物質層と負極樹脂集電体とを有する電池シートを検査対象物とする。一方、従来の金属集電体を有する電池シートでは、横方向(面方向)への電気抵抗が低く、電流が面内で均一化されてしまう。そのため、金属集電体を有する電池シートを検査対象物とする場合は、本発明の電池シートの検査方法であっても短絡の不具合を発見できない。このように、本発明の電池シートの検査方法は、樹脂集電体を有する電池シートにのみ有効である、と言える。
【0018】
本発明の電池シートの検査方法において、検査対象物として用いられる電池シートは、単電池と同義である。電池シート、すなわち、単電池としては、例えば、リチウムイオン電池等が挙げられる。本明細書中、リチウムイオン電池は、リチウムイオン二次電池も含む概念とする。
【0019】
本発明の電池シートの検査方法において、測定工程では、非接触式電圧測定機を用いることにより、電池シートの表面から離隔した状態で、電池シートの表面の複数箇所における電圧を測定する。このように、本発明の電池シートの検査方法では、非接触式電圧測定機が電池シートに完全に非接触な状態であるため、電圧測定時に非接触式電圧測定機と接触することによる電池シートの損傷が生じることがなく、その損傷に由来する異物が電池シートに混入することもない。よって、本発明の電池シートの検査方法では、電圧の測定速度を上げたり、電圧の測定頻度を上げたりすることが容易となるため、電池シートの製造効率を向上させることができる。
【0020】
非接触式電圧測定機としては、例えば、イイダ電子社製の非接触交流電圧センサー、日置電機社製の「クランプオンパワーロガーPW3365-10」、フルーク社製の「Fluke T6-1000」等が市販されている。しかしながら、これらの非接触式電圧測定機は、あくまで測定対象物の金属部に非接触な状態で電圧を測定するものであり、実際には、測定対象物の金属部の被覆カバー(絶縁カバー)に接触した状態で電圧を測定するものである。つまり、これらの非接触式電圧測定機は、測定対象物に完全に非接触な状態で電圧を測定するものではない。
【0021】
上記の非接触式電圧測定機を用いることにより、電池シートの表面の複数箇所における電圧を測定することは可能である。しかしながら、上記の非接触式電圧測定機では、電池シートの表面から離隔した状態で、すなわち、電池シートに完全に非接触な状態で、電池シートの表面の複数箇所における電圧を測定できない。
【0022】
本発明の電池シートの検査方法において、非接触式電圧測定機を電池シートの表面に向ける方法としては、特に限定されないが、電池シートの面内における短絡箇所を確実に検出する観点からは、後述する
図1に示すような以下の方法が好ましい。
【0023】
本発明の電池シートの検査方法において、測定工程では、非接触式電圧測定機を、電池シートの表面のうちの積層方向に対向する箇所から離隔した状態で、積層方向に対向するように配置することが好ましい。
【0024】
本発明の電池シートの検査方法において、測定工程では、非接触式電圧測定機が積層方向に対向した状態で配置された領域に、電池シートを通過させることが好ましい。
【0025】
本発明の電池シートの検査方法では、電池シートを移動させる手段として、搬送機構を用いてもよいし、他の手段(例えば、手動で引っ張る等)を用いてもよい。
【0026】
なお、本発明の電池シートの検査方法では、電池シートを移動させる代わりに、非接触式電圧測定機を移動させてもよい。また、電池シート及び非接触式電圧測定機の両方を移動させてもよい。
【0027】
図1は、本発明の電池シートの検査方法の一例を示す側面模式図である。
【0028】
図1では、非接触式電圧測定機2を、電池シート(単電池)1の表面のうちの積層方向Tに対向する箇所から離隔した状態で、積層方向Tに対向するように配置している。このように非接触式電圧測定機2が積層方向Tに対向した状態で配置された領域に、搬送機構等を用いて、電池シート1を長さ方向Lに通過させることにより、非接触式電圧測定機2を用いて、電池シート1の表面の長さ方向Lでの複数箇所における電圧を連続的に測定(モニタリング)できる。
【0029】
非接触式電圧測定機2の長さ方向Lにおける寸法、より具体的には、非接触式電圧測定機2のうちで電池シート1の表面に対向する部分の長さ方向Lにおける寸法は、電池シート1の長さ方向Lにおける寸法と比較して、小さくてもよいし、同じであってもよいし、大きくてもよい。
【0030】
非接触式電圧測定機2の幅方向Wにおける寸法、より具体的には、非接触式電圧測定機2のうちで電池シート1の表面に対向する部分の幅方向Wにおける寸法は、電池シート1の幅方向Wにおける寸法と比較して、小さくてもよいし、同じであってもよいし、大きくてもよい。
【0031】
非接触式電圧測定機2が幅方向Wに広がった形態を有する場合、非接触式電圧測定機2が積層方向Tに対向した状態で配置された領域に、搬送機構等を用いて、電池シート1を長さ方向Lに通過させることにより、非接触式電圧測定機2を用いて、電池シート1の表面の幅方向Wでの複数箇所における電圧を同時に測定しつつ、電池シート1の表面の長さ方向Lでの複数箇所における電圧を連続的に測定できる。
【0032】
電池シート1の両面には、
図1に示す非接触式電圧測定機2とは別で、長さ方向Lに離隔した位置に、非接触式電圧測定機が更に配置されていてもよい。
【0033】
電池シート1の両面には、複数対の非接触式電圧測定機2が幅方向Wに沿って配置されていてもよい。より具体的には、複数対の非接触式電圧測定機2を、電池シート1の表面のうちの積層方向Tに対向する箇所から離隔した状態で、積層方向Tに対向するように配置してもよい。この状態で、電池シート1を長さ方向Lに移動させることにより、電池シート1の表面の幅方向Wでの複数箇所における電圧を同時に測定しつつ、電池シート1の表面の長さ方向Lでの複数箇所における電圧を連続的に測定できる。
【0034】
電池シート1の両面には、上述した複数対の非接触式電圧測定機2とは別で、長さ方向Lに離隔した位置に、幅方向Wに沿った複数対の非接触式電圧測定機が更に配置されていてもよい。
【0035】
電池シート1の両面には、電池シート1の測定箇所に対応する箇所に複数対の非接触式電圧測定機2が配置されていてもよい。より具体的には、複数対の非接触式電圧測定機2を、電池シート1の表面のうちの、測定箇所と、その測定箇所と積層方向Tに対向する箇所とから離隔した状態で、積層方向Tに対向するように配置してもよい。これにより、電池シート1の表面の複数箇所における電圧を同時に測定できる。
【0036】
複数対の非接触式電圧測定機2を用いる場合、非接触式電圧測定機2は、その配置形態が特に限定されず、例えば、千鳥状、格子状等に配置される。なお、複数対の非接触式電圧測定機2が千鳥状に配置される場合、複数対の非接触式電圧測定機2は、長さ方向に沿って、いわゆるジグザグ状に配置されていてもよいし、幅方向Wに沿って、いわゆるジグザグ状に配置されていてもよい。
【0037】
複数対の非接触式電圧測定機2を用いる場合、隣り合う非接触式電圧測定機2の間隔は、特に限定されないが、等間隔であることが好ましい。
【0038】
図2は、本発明の電池シートの検査方法において検査対象物として用いられる電池シートの一例を示す一部切り欠き斜視模式図である。
【0039】
図2に示す電池シート(単電池)10は、略矩形平板状の正極樹脂集電体17の表面に正極活物質層15が設けられた正極12と、略矩形平板状の負極樹脂集電体19の表面に負極活物質層16が設けられた負極13とが、略平板状のセパレータ14を介して積層されて構成され、全体として略矩形平板状となっている。正極12及び負極13は、各々、例えば、リチウムイオン電池の正極及び負極として機能する。
【0040】
電池シート10は、正極樹脂集電体17と負極樹脂集電体19との間に配置されてセパレータ14の周縁部を固定し、かつ、正極活物質層15とセパレータ14と負極活物質層16とを封止する、環状の枠部材18を有することが好ましい。
【0041】
正極樹脂集電体17及び負極樹脂集電体19は、枠部材18により所定間隔をもって対向するように位置決めされているとともに、セパレータ14及び正極活物質層15、並びに、セパレータ14及び負極活物質層16も、枠部材18により所定間隔をもって対向するように位置決めされている。
【0042】
正極樹脂集電体17とセパレータ14との間隔、及び、負極樹脂集電体19とセパレータ14との間隔は、電池シート10、例えば、リチウムイオン電池の容量に応じて調整される。このように、正極樹脂集電体17、負極樹脂集電体19、及び、セパレータ14の位置関係は、必要な間隔が得られるように定められている。
【0043】
以下に、電池シートの各構成要素の好ましい態様について説明する。
【0044】
正極活物質層は、正極活物質を含む。
【0045】
正極活物質としては、例えば、リチウムと遷移金属との複合酸化物{遷移金属元素が1種類である複合酸化物(例えば、LiCoO2、LiNiO2、LiAlMnO4、LiMnO2、LiMn2O4等)、遷移金属元素が2種類である複合酸化物(例えば、LiFeMnO4、LiNi1-xCoxO2、LiMn1-yCoyO2、LiNi1/3Co1/3Al1/3O2、LiNi0.8Co0.15Al0.05O2等)、遷移金属元素が3種類以上である複合酸化物[例えば、LiMaM’bM’’cO2(M、M’、及び、M’’は、各々異なる遷移金属元素であり、a+b+c=1を満たす。例えば、LiNi1/3Mn1/3Co1/3O2等)等]等}、リチウム含有遷移金属リン酸塩(例えば、LiFePO4、LiCoPO4、LiMnPO4、LiNiPO4等)、遷移金属酸化物(例えば、MnO2、V2O5等)、遷移金属硫化物(例えば、MoS2、TiS2等)、導電性高分子(例えば、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリ-p-フェニレン、ポリビニルカルバゾール等)等が挙げられる。なお、リチウム含有遷移金属リン酸塩は、遷移金属サイトの一部を他の遷移金属で置換したものであってもよい。
【0046】
上述した正極活物質は、1種類単独で用いられてもよいし、2種類以上で併用されてもよい。
【0047】
正極活物質は、導電助剤及び被覆用樹脂で被覆された被覆正極活物質であることが好ましい。正極活物質が被覆用樹脂で被覆されていると、電極の体積変化が緩和されるため、電極の膨張を抑制できる。
【0048】
導電助剤としては、例えば、金属系導電助剤[例えば、アルミニウム、ステンレス(SUS)、銀、金、銅、チタン等]、炭素系導電助剤[例えば、グラファイト、カーボンブラック(アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルランプブラック等)等]、これらの混合物、これらの合金、これらの金属酸化物等が挙げられる。中でも、電気的安定性の観点から、アルミニウム、ステンレス、銀、金、銅、チタン、炭素系導電助剤、及び、これらの混合物が好ましく、銀、金、アルミニウム、ステンレス、及び、炭素系導電助剤がより好ましく、炭素系導電助剤が特に好ましい。
【0049】
導電助剤は、粒子系セラミック材料や樹脂材料の周りに導電性材料(好ましくは、上述した導電助剤のうちで金属のもの)をめっき等でコーティングしたものでもよい。
【0050】
上述した導電助剤は、1種類単独で用いられてもよいし、2種類以上で併用されてもよい。
【0051】
導電助剤の形態(形状)は、特に限定されず、粒子形態であってもよいし、粒子形態以外の形態であってもよい。導電助剤について、粒子形態以外の形態は、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ等、いわゆるフィラー系導電助剤として実用化されている形態であってもよい。
【0052】
被覆用樹脂と導電助剤との比率は、特に限定されないが、電池の内部抵抗等の観点から、重量比率で被覆用樹脂(樹脂固形分重量):導電助剤が、1:0.01~1:50であることが好ましく、1:0.2~1:3.0であることがより好ましい。
【0053】
被覆用樹脂としては、特開2017-054703号公報に非水系二次電池活物質被覆用樹脂として記載されたものが好適に用いられる。
【0054】
正極活物質層は、被覆正極活物質に含まれる導電助剤以外に、別の導電助剤を更に含んでもよい。
【0055】
別の導電助剤としては、上述した被覆正極活物質に含まれる導電助剤と同様のものが好適に用いられる。
【0056】
正極活物質層は、正極活物質を含み、かつ、正極活物質同士を結着する結着材(バインダとも言う)を含まない非結着体であることが好ましい。
【0057】
非結着体は、正極活物質の位置が結着材により固定されておらず、正極活物質同士、更には、正極活物質と集電体とが不可逆的に固定されていないものを意味する。
【0058】
正極活物質層は、粘着性樹脂を更に含んでもよい。
【0059】
粘着性樹脂としては、例えば、特開2017-054703号公報に記載された非水系二次電池活物質被覆用樹脂に少量の有機溶剤を混合してそのガラス転移温度を室温以下に調整したもの、特開平10-255805公報に粘着剤として記載されたもの等が好適に用いられる。
【0060】
粘着性樹脂は、溶媒成分を揮発させて乾燥させても固体化せずに粘着性(水、溶剤、熱等を使用せずに僅かな圧力を加えることで接着する性質)を有する樹脂を意味する。一方、結着材として用いられる溶液乾燥型の電極バインダは、溶媒成分を揮発させることで乾燥、固体化して活物質同士を強固に接着固定するものを意味する。このように、溶液乾燥型の電極バインダ(結着剤)と粘着性樹脂とは、異なる材料である。
【0061】
正極活物質層の厚みは、特に限定されないが、電池性能の観点から、好ましくは150~600μm、より好ましくは200~450μmである。
【0062】
負極活物質層は、負極活物質を含む。
【0063】
負極活物質としては、公知のリチウムイオン電池用負極活物質が使用可能であり、例えば、炭素系材料[例えば、黒鉛、難黒鉛化性炭素、アモルファス炭素、樹脂焼成体(例えば、フェノール樹脂、フラン樹脂等を焼成し炭素化したもの等)、コークス類(例えば、ピッチコークス、ニードルコークス、石油コークス等)、炭素繊維等]、珪素系材料[例えば、珪素、酸化珪素(SiOx)、珪素-炭素複合体(例えば、炭素粒子の表面を珪素及び/又は炭化珪素で被覆したもの、珪素粒子又は酸化珪素粒子の表面を炭素及び/又は炭化珪素で被覆したもの、炭化珪素等)、珪素合金(例えば、珪素-アルミニウム合金、珪素-リチウム合金、珪素-ニッケル合金、珪素-鉄合金、珪素-チタン合金、珪素-マンガン合金、珪素-銅合金、珪素-スズ合金等)等]、導電性高分子(例えば、ポリアセチレン、ポリピロール等)、金属(例えば、スズ、アルミニウム、ジルコニウム、チタン等)、金属酸化物(例えば、チタン酸化物、リチウム・チタン酸化物等)、金属合金(例えば、リチウム-スズ合金、リチウム-アルミニウム合金、リチウム-アルミニウム-マンガン合金等)、これらと炭素系材料との混合物等が挙げられる。
【0064】
上述した負極活物質は、1種類単独で用いられてもよいし、2種類以上で併用されてもよい。
【0065】
負極活物質は、導電助剤及び被覆用樹脂で被覆された被覆負極活物質であってもよい。負極活物質が被覆用樹脂で被覆されていると、電極の体積変化が緩和されるため、電極の膨張を抑制できる。
【0066】
被覆負極活物質に含まれる導電助剤及び被覆用樹脂としては、上述した被覆正極活物質に含まれる導電助剤及び被覆用樹脂と同様のものが好適に用いられる。
【0067】
負極活物質層は、被覆負極活物質に含まれる導電助剤以外に、別の導電助剤を更に含んでもよい。
【0068】
別の導電助剤としては、上述した被覆正極活物質に含まれる導電助剤と同様のものが好適に用いられる。
【0069】
負極活物質層は、正極活物質層と同様に、負極活物質同士を結着する結着材を含まない非結着体であることが好ましい。
【0070】
負極活物質層は、正極活物質層と同様に、粘着性樹脂を更に含んでもよい。
【0071】
負極活物質層の厚みは、特に限定されないが、電池性能の観点から、好ましくは150~600μm、より好ましくは200~450μmである。
【0072】
正極樹脂集電体及び負極樹脂集電体は、各々、導電性高分子材料からなる樹脂集電体である。
【0073】
正極樹脂集電体及び負極樹脂集電体の形態(形状)は、各々、特に限定されず、導電性高分子材料からなるシート状の集電体であってもよいし、導電性高分子材料で構成された微粒子からなる堆積層であってもよい。
【0074】
正極樹脂集電体及び負極樹脂集電体の厚みは、各々、特に限定されないが、好ましくは50~500μmである。
【0075】
正極樹脂集電体及び負極樹脂集電体を構成する導電性高分子材料としては、例えば、導電性高分子や樹脂に必要に応じて導電剤を添加したもの等が挙げられる。
【0076】
導電性高分子材料を構成する導電剤としては、上述した被覆正極活物質に含まれる導電助剤と同様のものが好適に用いられる。
【0077】
導電性高分子材料を構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリシクロオレフィン(PCO)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルアクリレート(PMA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、これらの混合物等が挙げられる。中でも、電気的安定性の観点から、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、及び、ポリシクロオレフィンが好ましく、ポリエチレン、ポリプロピレン、及び、ポリメチルペンテンがより好ましい。
【0078】
上述した樹脂は、1種類単独で用いられてもよいし、2種類以上で併用されてもよい。
【0079】
セパレータとしては、公知のリチウムイオン電池用セパレータが使用可能であり、例えば、ポリエチレン又はポリプロピレン製の多孔性フィルム、多孔性ポリエチレンフィルムと多孔性ポリプロピレンフィルムとの積層フィルム、合成繊維(例えば、ポリエステル繊維、アラミド繊維等)又はガラス繊維等からなる不織布、これらの表面にシリカ、アルミナ、チタニア等のセラミック微粒子を付着させたもの等が挙げられる。
【0080】
電池シートは、正極活物質層及び負極活物質層に存在する電解液を含む。
【0081】
電解液としては、公知のリチウムイオン電池の製造時に用いられる、電解質及び非水溶媒を含有する公知の電解液が使用可能である。
【0082】
電解質としては、公知の電解液に用いられるもの等が使用可能であり、例えば、LiN(FSO2)2、LiPF6、LiBF4、LiSbF6、LiAsF6、LiClO4等の無機酸のリチウム塩、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2、LiC(CF3SO2)3等の有機酸のリチウム塩等が挙げられる。中でも、電池出力及び充放電サイクル特性の観点から、LiN(FSO2)2、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2等のイミド系電解質、及び、LiPF6が好ましい。
【0083】
非水溶媒としては、公知の電解液に用いられるもの等が使用可能であり、例えば、ラクトン化合物、環状又は鎖状炭酸エステル、鎖状カルボン酸エステル、環状又は鎖状エーテル、リン酸エステル、ニトリル化合物、アミド化合物、スルホン、スルホラン、これらの混合物等が挙げられる。
【0084】
電解液の電解質濃度は、好ましくは1~5mol/L、より好ましくは1.5~4mol/L、更に好ましくは2~3mol/Lである。
【0085】
電解液の電解質濃度が1mol/Lよりも低いと、電池の入出力特性が充分に得られないことがある。電解液の電解質濃度が5mol/Lよりも高いと、電解質が析出してしまうことがある。
【0086】
電解液の電解質濃度は、電池シート、例えば、リチウムイオン電池から電解液を溶媒等を用いずに抽出して、その濃度を測定することにより確認可能である。
【0087】
[電池シートの製造方法]
本発明の電池シートの製造方法は、本発明の電池シートの検査方法により短絡箇所が存在しないと判定された電池シートを選別する、選別工程を備える。
【0088】
本発明の電池シートの製造方法では、選別工程により、短絡箇所が存在する不具合品を取り除きつつ、短絡箇所が存在しない電池シートを効率的に得ることができる。
【0089】
[組電池の製造方法]
本発明の組電池の製造方法は、本発明の電池シートの検査方法により短絡箇所が存在しないと判定された電池シートを、複数枚積層する、積層工程を備える。
【0090】
図3は、組電池の一例を示す一部切り欠き斜視模式図である。
図3では、外装体の一部が除去された状態を示している。
【0091】
図3に示す組電池100は、電池シート10が複数枚積層されつつ接続されてなる。
図3に示す例では、
図2に示す電池シート10が5枚積層された状態を示している。組電池100では、負極樹脂集電体19の上面と正極樹脂集電体17の下面とが隣接するように、電池シート10が積層されている。この場合、電池シート10は、複数枚直列接続されている。
【0092】
組電池100は、外装体110に収容されている。
【0093】
外装体110としては、例えば、金属缶ケース、高分子金属複合フィルム等が挙げられる。
【0094】
組電池100の最下面を構成する正極樹脂集電体の表面上には、導電性シートが設けられている。導電性シートの一部は、外装体110から引き出されて正極引出端子120となっている。
【0095】
組電池100の最上面を構成する負極樹脂集電体の表面上には、別の導電性シートが設けられている。別の導電性シートの一部は、外装体110から引き出されて負極引出端子130となっている。
【0096】
正極引出端子120及び負極引出端子130となる導電性シートの構成材料としては、導電性を有する材料であれば特に限定されず、例えば、銅、アルミニウム、チタン、ステンレス鋼、ニッケル、これらの合金等の金属、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラス等が挙げられる。
【0097】
本発明の電池シートの検査方法では、数mm程度の微小な短絡も発見できる。これにより、本発明の組電池の製造方法では、確実に不具合が生じていない電池シートを用いて組電池を製造できるため、組電池の製造歩留まりを向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明の電池シートの検査方法で検査対象物とされる電池シートは、特に、携帯電話、パーソナルコンピューター、ハイブリッド自動車、及び、電気自動車の用途で用いられるリチウムイオン電池に有用である。
【符号の説明】
【0099】
1、10 電池シート(単電池)
2 非接触式電圧測定機
12 正極
13 負極
14 セパレータ
15 正極活物質層
16 負極活物質層
17 正極樹脂集電体
18 枠部材
19 負極樹脂集電体
100 組電池
110 外装体
120 正極引出端子
130 負極引出端子
L 長さ方向
T 積層方向
W 幅方向