(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022176622
(43)【公開日】2022-11-30
(54)【発明の名称】電池用部材の検査方法、電池用部材の製造方法、及び、組電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/139 20100101AFI20221122BHJP
H01M 10/0585 20100101ALI20221122BHJP
H01M 4/04 20060101ALI20221122BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
H01M4/139
H01M10/0585
H01M4/04 A
H01M4/66 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021083143
(22)【出願日】2021-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】519100310
【氏名又は名称】APB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】小林 真也
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 勇輔
(72)【発明者】
【氏名】堀江 英明
【テーマコード(参考)】
5H017
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H017AA03
5H017AS02
5H017EE07
5H029AJ14
5H029AK01
5H029AK03
5H029AK05
5H029AK16
5H029AL02
5H029AL03
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5H029AL07
5H029AL08
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5H050CA01
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5H050CA05
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5H050CA11
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5H050CA25
5H050CA26
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050DA04
5H050EA23
5H050GA28
(57)【要約】
【課題】短絡等の不具合を簡便に発見できるとともに、製造効率の向上に寄与できる電池用部材の検査方法を提供すること。
【解決手段】樹脂集電体を少なくとも有し、かつ、上記樹脂集電体が露出した露出表面を有する電池用部材を検査対象物として、上記電池用部材の上記露出表面に平行な搬送面を有する搬送機構で上記電池用部材を搬送するとともに、導電体プローブを上記電池用部材の表面のうちの上記露出表面に導通する位置に接触させることで上記電池用部材の表面の複数箇所における電気特性を測定する、搬送及び測定工程と、上記電気特性が許容範囲外である箇所が上記電池用部材に存在するか否かを判定する、判定工程と、を備える、ことを特徴とする電池用部材の検査方法。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂集電体を少なくとも有し、かつ、前記樹脂集電体が露出した露出表面を有する電池用部材を検査対象物として、前記電池用部材の前記露出表面に平行な搬送面を有する搬送機構で前記電池用部材を搬送するとともに、導電体プローブを前記電池用部材の表面のうちの前記露出表面に導通する位置に接触させることで前記電池用部材の表面の複数箇所における電気特性を測定する、搬送及び測定工程と、
前記電気特性が許容範囲外である箇所が前記電池用部材に存在するか否かを判定する、判定工程と、を備える、ことを特徴とする電池用部材の検査方法。
【請求項2】
前記搬送及び測定工程では、前記電気特性として電気抵抗を測定し、
前記判定工程では、前記電気抵抗が許容範囲外である箇所が前記電池用部材に存在するか否かを判定する、請求項1に記載の電池用部材の検査方法。
【請求項3】
前記搬送及び測定工程では、前記電気特性として電圧を測定し、
前記判定工程では、前記電圧が許容範囲外である箇所が前記電池用部材に存在するか否かを判定する、請求項1に記載の電池用部材の検査方法。
【請求項4】
前記樹脂集電体は、正極樹脂集電体と負極樹脂集電体とを含み、
前記電池用部材は、積層方向に順に積層された前記正極樹脂集電体と正極活物質層とセパレータと負極活物質層と前記負極樹脂集電体とを有する電池シートであり、
前記電池用部材の前記露出表面は、前記正極樹脂集電体が露出した正極露出表面と、前記負極樹脂集電体が露出した負極露出表面と、を含み、
前記搬送及び測定工程では、前記導電体プローブを、前記正極露出表面及び前記負極露出表面の一方に接触させる、請求項1~3のいずれかに記載の電池用部材の検査方法。
【請求項5】
前記電池用部材は、前記樹脂集電体である、請求項1~3のいずれかに記載の電池用部材の検査方法。
【請求項6】
前記電池用部材は、前記樹脂集電体と活物質層とが積層方向に積層されてなる電極シートである、請求項1~3のいずれかに記載の電池用部材の検査方法。
【請求項7】
前記電池用部材は、前記樹脂集電体と活物質層とセパレータとが積層方向に順に積層されてなるセパレータ付き電極シートである、請求項1~3のいずれかに記載の電池用部材の検査方法。
【請求項8】
前記搬送機構は、ベルトコンベアである、請求項1~7のいずれかに記載の電池用部材の検査方法。
【請求項9】
前記ベルトコンベアは、導電性のベルトを有する、請求項8に記載の電池用部材の検査方法。
【請求項10】
前記搬送及び測定工程では、前記電池用部材を、導電性の搬送トレイに積載した状態で搬送する、請求項1~9のいずれかに記載の電池用部材の検査方法。
【請求項11】
前記搬送トレイには、導電性のプローブが設けられ、
前記搬送及び測定工程では、前記搬送トレイに設けられた前記プローブを、前記電池用部材の表面に接触させる、請求項10に記載の電池用部材の検査方法。
【請求項12】
前記搬送トレイに設けられた前記プローブは、前記搬送トレイと同じ材料で一体化している、請求項11に記載の電池用部材の検査方法。
【請求項13】
前記搬送トレイに設けられた前記プローブは、炭素材からなる、請求項11又は12に記載の電池用部材の検査方法。
【請求項14】
前記導電体プローブは、炭素材からなる、請求項1~13のいずれかに記載の電池用部材の検査方法。
【請求項15】
請求項1~14のいずれかに記載の電池用部材の検査方法により前記電気特性が許容範囲外である箇所が存在しないと判定された電池用部材を選別する、選別工程を備える、ことを特徴とする電池用部材の製造方法。
【請求項16】
請求項1~14のいずれかに記載の電池用部材の検査方法により前記電気特性が許容範囲外である箇所が存在しないと判定された電池用部材を用いた電池シートを、複数枚積層する、積層工程を備える、ことを特徴とする組電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池用部材の検査方法、電池用部材の製造方法、及び、組電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大容量電池の需要が高まり、複数個の単電池を積層した組電池が多く製造される中、それらの製造過程において不具合品を効率良く取り除く必要性が高まっている。
【0003】
特許文献1には、正極板と負極板をセパレータを介して積層して構成した極板群を電槽内に挿入して成る電池の短絡検査方法であって、極板群を電槽に挿入する前に極板群を加圧しながら短絡不良を検査することを特徴とする電池の短絡検査方法が開示されている。
【0004】
特許文献2には、組電池を構成する単電池を検査する方法であって、複数個の単電池を積層状に配列し、配列した単電池群を積層方向に押圧した状態で各単電池を検査することを特徴とする単電池の検査方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001-236985号公報
【特許文献2】特開2005-339925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の検査方法では、単電池を組んだ極板群を加圧した状態で短絡不良を検査するため、極板群に不具合が発見された場合、どの単電池に不具合が生じているのかを特定することが容易ではない。
【0007】
一方、特許文献2に記載の検査方法では、積層状に配列した単電池群を積層方向に押圧した状態で各単電池を検査するため、単電池群に不具合が発見された場合、不具合が生じている単電池を単電池群から取り替える必要がある。
【0008】
このように、従来の検査方法は、単電池単位、より具体的には、単電池に用いられる樹脂集電体、電極シート、セパレータ付き電極シート、又は、電池シートといった電池用部材単位で不具合を効率的に発見する方法ではなかった。更に、従来の検査方法は、不具合を効率的に発見する方法ではなかったため、製造効率の低下を招く要因となっていた。
【0009】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、短絡等の不具合を簡便に発見できるとともに、製造効率の向上に寄与できる電池用部材の検査方法を提供することを目的とするものである。また、本発明は、上記電池用部材の検査方法を用いた電池用部材の製造方法を提供することを目的とするものである。更に、本発明は、上記電池用部材の検査方法を用いた組電池の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、樹脂集電体を少なくとも有し、かつ、上記樹脂集電体が露出した露出表面を有する電池用部材を検査対象物として、上記電池用部材の上記露出表面に平行な搬送面を有する搬送機構で上記電池用部材を搬送するとともに、導電体プローブを上記電池用部材の表面のうちの上記露出表面に導通する位置に接触させることで上記電池用部材の表面の複数箇所における電気特性を測定する、搬送及び測定工程と、上記電気特性が許容範囲外である箇所が上記電池用部材に存在するか否かを判定する、判定工程と、を備える、ことを特徴とする電池用部材の検査方法;上記電池用部材の検査方法により上記電気特性が許容範囲外である箇所が存在しないと判定された電池用部材を選別する、選別工程を備える、ことを特徴とする電池用部材の製造方法;上記電池用部材の検査方法により上記電気特性が許容範囲外である箇所が存在しないと判定された電池用部材を用いた電池シートを、複数枚積層する、積層工程を備える、ことを特徴とする組電池の製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電池用部材単位で短絡等の不具合を簡便に発見できる。更に、本発明によれば、製造工程の一部である搬送工程と検査工程の一部である測定工程とを同時に行うことで工程数を削減できるとともに、製造時間、製造コスト、及び、製造スペースを削減できるため、電池用部材の製造効率を向上させることができる。これにより、不具合が生じていない単電池を用いて組電池を製造できるため、組電池の製造歩留まりを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の電池用部材の検査方法の一例を示す斜視模式図である。
【
図2】
図2は、本発明の電池用部材の検査方法の一例について、
図1の後段階を示す斜視模式図である。
【
図3】
図3は、本発明の電池用部材の検査方法の一例について、
図2の後段階を示す斜視模式図である。
【
図4】
図4は、本発明の電池用部材の検査方法の別の一例を示す斜視模式図である。
【
図5】
図5は、本発明の電池用部材の検査方法の別の一例について、
図4の後段階を示す斜視模式図である。
【
図6】
図6は、本発明の電池用部材の検査方法の別の一例について、
図5の後段階を示す斜視模式図である。
【
図7】
図7は、本発明の電池用部材の検査方法において電池用部材として用いられる電池シートの一例を示す一部切り欠き斜視模式図である。
【
図8】
図8は、組電池の一例を示す一部切り欠き斜視模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[電池用部材の検査方法]
本発明の電池用部材の検査方法は、樹脂集電体を少なくとも有し、かつ、樹脂集電体が露出した露出表面を有する電池用部材を検査対象物として、電池用部材の露出表面に平行な搬送面を有する搬送機構で電池用部材を搬送するとともに、導電体プローブを電池用部材の表面のうちの露出表面に導通する位置に接触させることで電池用部材の表面の複数箇所における電気特性を測定する、搬送及び測定工程と、電気特性が許容範囲外である箇所が電池用部材に存在するか否かを判定する、判定工程と、を備える。
【0014】
本発明の電池用部材の検査方法では、電気特性の第1態様として、電気抵抗を測定する。より具体的には、本発明の電池用部材の検査方法において、搬送及び測定工程では、電気特性として電気抵抗を測定し、判定工程では、電気抵抗が許容範囲外である箇所が電池用部材に存在するか否かを判定する。
【0015】
検査対象物である電池用部材では、面内で均一な抵抗分布であることが望まれる。そのため、本発明の電池用部材の検査方法では、測定された電気抵抗が許容範囲外である箇所が電池用部材に存在する場合、電池用部材に不具合が生じていると判定する。なお、電気抵抗の増加は、導電材料の分散不良に起因し、電池抵抗の悪化につながる。一方、電気抵抗の減少は、絶縁されるべき箇所が導通して電気抵抗が低下する微小短絡に起因し、電池品質や異常時信頼性の悪化につながる。
【0016】
本発明の電池用部材の検査方法において、電気抵抗の許容範囲は、電極の仕様に依存する所定値の±30%であることが好ましい。なお、上記所定値については、検査対象物である電池用部材の表面の複数箇所において測定された電気抵抗の平均値からも求めることができる。
【0017】
本発明の電池用部材の検査方法では、電気特性の第2態様として、電圧を測定する。より具体的には、本発明の電池用部材の検査方法において、搬送及び測定工程では、電気特性として電圧を測定し、判定工程では、電圧が許容範囲外である箇所が電池用部材に存在するか否かを判定する。
【0018】
検査対象物である電池用部材に短絡箇所が存在する場合、短絡箇所の電圧は0Vとなる。そのため、導電体プローブをピンポイントで短絡箇所に接触させると、例えば、他の箇所の電圧が100mV程度であるにも関わらず、その箇所の電圧は0Vとなる。一方、導電体プローブのサイズによっては、短絡箇所とその周辺の非短絡箇所との電圧を合わせて測定する場合もある。この場合、測定される電圧は、短絡箇所に加えて非短絡箇所も含めた数値となるために0Vとはならず、例えば、50mV程度となる。このような挙動を鑑み、本発明の電池用部材の検査方法では、測定された電圧が許容範囲外である箇所が電池用部材に存在する場合、電池用部材に短絡箇所が存在すると判定する。
【0019】
本発明の電池用部材の検査方法において、電圧の許容範囲は、電極の仕様に依存する所定値の±30%であることが好ましい。なお、上記所定値については、検査対象物である電池用部材の表面の複数箇所において測定された電圧の平均値からも求めることができる。
【0020】
以上により、本発明の電池用部材の検査方法では、電池用部材単位で短絡等の不具合を簡便に発見できる。
【0021】
本発明の電池用部材の検査方法では、樹脂集電体を少なくとも有する電池用部材を検査対象物とする。一方、従来の金属集電体を有する電池用部材では、横方向(面方向)への電気抵抗が低く、電流が面内で均一化されてしまう。そのため、金属集電体を有する電池用部材を検査対象物とする場合は、本発明の電池用部材の検査方法であっても短絡等の不具合を発見できない。このように、本発明の電池用部材の検査方法は、樹脂集電体を有する電池用部材にのみ有効である、と言える。
【0022】
本発明の電池用部材の検査方法において、検査対象物である電池用部材としては、以下の態様のものが用いられる。
【0023】
本発明の電池用部材の検査方法において、電池用部材の第1態様としては、電池シートが用いられる。より具体的には、本発明の電池用部材の検査方法において、樹脂集電体は、正極樹脂集電体と負極樹脂集電体とを含み、電池用部材は、積層方向に順に積層された正極樹脂集電体と正極活物質層とセパレータと負極活物質層と負極樹脂集電体とを有する電池シートであり、電池用部材の露出表面は、正極樹脂集電体が露出した正極露出表面と、負極樹脂集電体が露出した負極露出表面と、を含み、搬送及び測定工程では、導電体プローブを、正極露出表面及び負極露出表面の一方に接触させる。
【0024】
本発明の電池用部材の検査方法において、電池用部材の第1態様として用いられる電池シートは、単電池と同義である。電池シート、すなわち、単電池としては、例えば、リチウムイオン電池等が挙げられる。本明細書中、リチウムイオン電池は、リチウムイオン二次電池も含む概念とする。
【0025】
本発明の電池用部材の検査方法において、電池用部材の第2態様としては、樹脂集電体が用いられる。より具体的には、本発明の電池用部材の検査方法において、電池用部材は、樹脂集電体である。
【0026】
本発明の電池用部材の検査方法において、電池用部材の第3態様としては、電極シートが用いられる。より具体的には、本発明の電池用部材の検査方法において、電池用部材は、樹脂集電体と活物質層とが積層方向に積層されてなる電極シートである。
【0027】
本発明の電池用部材の検査方法において、電池用部材の第3態様として用いられる電極シートは、例えば、電池シートを構成する、正極樹脂集電体と正極活物質層とが積層されてなる正極シート、負極樹脂集電体と負極活物質層とが積層されてなる負極シート等である。
【0028】
本発明の電池用部材の検査方法において、電池用部材の第4態様としては、セパレータ付き電極シートが用いられる。より具体的には、本発明の電池用部材の検査方法において、電池用部材は、樹脂集電体と活物質層とセパレータとが積層方向に順に積層されてなるセパレータ付き電極シートである。
【0029】
本発明の電池用部材の検査方法において、電池用部材の第4態様として用いられるセパレータ付き電極シートは、例えば、電池シートを構成する、正極樹脂集電体と正極活物質層とセパレータとが積層されてなるセパレータ付き正極シート、負極樹脂集電体と負極活物質層とセパレータとが積層されてなるセパレータ付き負極シート等である。
【0030】
本明細書中、電池シート、樹脂集電体、電極シート、及び、セパレータ付き電極シートを特に区別しない場合、電池用部材と言う。
【0031】
本発明の電池用部材の検査方法において、搬送及び測定工程では、電池用部材の露出表面に平行な搬送面を有する搬送機構で電池用部材を搬送するとともに、導電体プローブを電池用部材の表面のうちの露出表面に導通する位置に接触させることで電池用部材の表面の複数箇所における電気特性を測定する。このように、本発明の電池用部材の検査方法では、製造工程の一部である、電池用部材を搬送する搬送工程と、検査工程の一部である、電池用部材の表面の複数箇所における電気特性を測定する測定工程とを、同時に行うことができる。本発明の電池用部材の検査方法によれば、製造工程の一部である搬送工程と検査工程の一部である測定工程とを同時に行うことで工程数を削減できるとともに、製造時間、製造コスト、及び、製造スペースを削減できるため、電池用部材の製造効率を向上させることができる。
【0032】
本明細書中、電池用部材の表面は、樹脂集電体が露出した露出表面、及び、その露出表面に導通する位置を少なくとも含む範囲とする。
【0033】
本発明の電池用部材の検査方法において、導電体プローブの構成材料は特に限定されないが、金属のコンタミネーション(金属の異物混入)を防止する観点、及び、測定感度を高める観点から、導電体プローブは、炭素材からなることが好ましい。より具体的には、導電体プローブの先端部分(電池用部材の表面と接触する部分)の構成材料は、炭素材料であることが好ましい。導電体プローブの先端部分の構成材料は、銅、アルミニウム等の金属系材料であってもよい。
【0034】
本発明の電池用部材の検査方法において、導電体プローブの形態は特に限定されないが、電池用部材の表面の複数箇所における電気特性を広範囲に測定する観点から、導電体プローブは、複数の測定端子を有することが好ましい。
【0035】
本発明の電池用部材の検査方法において、導電体プローブが複数の測定端子を有する場合、複数の測定端子は、電池用部材の搬送方向と搬送方向に直交する方向とに沿って配置されていることが好ましい。
【0036】
本発明の電池用部材の検査方法において、導電体プローブが複数の測定端子を有する場合、複数の測定端子は、同一方向に突出していることが好ましい。より具体的には、複数の測定端子は、電池用部材の表面に接触させるときの電池用部材に向かう方向に突出していることが好ましい。
【0037】
本発明の電池用部材の検査方法において、導電体プローブが複数の測定端子を有する場合、隣り合う測定端子の間隔は、特に限定されないが、等間隔であることが好ましい。
【0038】
本発明の電池用部材の検査方法において、導電体プローブの先端部分の形状、例えば、測定端子の先端部分の形状としては、特に限定されず、例えば、長方形、正方形等が挙げられる。
【0039】
本発明の電池用部材の検査方法において、導電体プローブの先端部分の面積、例えば、測定端子の先端部分の面積は特に限定されないが、その面積が小さくなるほど局所の情報を得ることができるため、測定感度が高まる。この観点から、導電体プローブの先端部分の面積、例えば、測定端子の先端部分の面積は、好ましくは12cm2以下である。
【0040】
本発明の電池用部材の検査方法において、導電体プローブ、例えば、測定端子を電池用部材の表面に接触させるときの圧力は、特に限定されないが、好ましくは5kPa以上である。
【0041】
本発明の電池用部材の検査方法において、電池用部材を搬送する搬送機構としては、特に限定されないが、電池用部材の表面の複数箇所における電気特性を容易に測定する観点からは、以下の態様が好ましい。
【0042】
本発明の電池用部材の検査方法において、搬送機構は、ベルトコンベアであることが好ましい。搬送機構としてベルトコンベアを用いることにより、導電体プローブを電池用部材の表面に容易に接触させることができる。
【0043】
本発明の電池用部材の検査方法において、搬送機構がベルトコンベアである場合、ベルトコンベアは、導電性のベルトを有することが好ましい。この場合、ベルトコンベアが有する導電性のベルトと導電体プローブとを電池用部材の表面に接触させることにより、電池用部材の表面の複数箇所における電気特性を測定する。つまり、ベルトコンベアが有する導電性のベルトは、搬送としての機能だけではなく、導電体プローブと同様の機能も果たすことができる。
【0044】
本発明の電池用部材の検査方法において、導電性のベルトを有するベルトコンベアを搬送機構として用いるのは、少なくとも、導電体プローブを電池用部材の表面に接触させて電気特性を測定する間であればよい。電池用部材の電気特性の測定前後では、搬送機構として、導電性のベルトを有するベルトコンベアを用いてもよいし、非導電性のベルトを有するベルトコンベアを用いてもよい。
【0045】
本発明の電池用部材の検査方法において、電池用部材の表面の複数箇所における電気特性を容易に測定する観点からは、上述した好ましい態様の搬送機構を採用すること以外に、以下の態様を採用することも好ましい。
【0046】
本発明の電池用部材の検査方法において、搬送及び測定工程では、電池用部材を、導電性の搬送トレイに積載した状態で搬送することが好ましい。この場合、導電性の搬送トレイと導電体プローブとを電池用部材の表面に接触させることにより、電池用部材の表面の複数箇所における電気特性を測定する。つまり、導電性の搬送トレイは、導電体プローブと同様の機能を果たすことができる。
【0047】
本発明の電池用部材の検査方法において、導電性の搬送トレイを用いる場合、搬送トレイには、導電性のプローブが設けられ、搬送及び測定工程では、搬送トレイに設けられたプローブを、電池用部材の表面に接触させる、ことが好ましい。この場合、搬送トレイに設けられたプローブと導電体プローブとを、電池用部材を挟んで対向させつつ、電池用部材の表面に接触させることができるため、電池用部材の面内における短絡等の不具合箇所をより確実に検出できる。
【0048】
本発明の電池用部材の検査方法において、導電性のプローブが設けられた導電性の搬送トレイを用いる場合、搬送トレイに設けられたプローブは、搬送トレイと同じ材料で一体化していることが好ましい。この場合、搬送トレイとそれに設けられたプローブとの導通性が高まるため、電池用部材の表面の複数箇所における電気特性をより正確に測定できる。
【0049】
本発明の電池用部材の検査方法において、導電性のプローブが設けられた導電性の搬送トレイを用いる場合、搬送トレイに設けられたプローブの構成材料は特に限定されないが、金属のコンタミネーションを防止する観点、及び、測定感度を高める観点から、搬送トレイに設けられたプローブは、炭素材からなることが好ましい。より具体的には、搬送トレイに設けられたプローブの先端部分(電池用部材の表面と接触する部分)の構成材料は、炭素材料であることが好ましい。搬送トレイに設けられたプローブの先端部分の構成材料は、銅、アルミニウム等の金属系材料であってもよい。
【0050】
本発明の電池用部材の検査方法において、導電性のプローブが設けられた導電性の搬送トレイを用いる場合、搬送トレイに設けられたプローブの先端部分の形状としては、特に限定されず、例えば、長方形、正方形等が挙げられる。
【0051】
本発明の電池用部材の検査方法において、導電性のプローブが設けられた導電性の搬送トレイを用いる場合、搬送トレイに設けられたプローブの先端部分の面積は特に限定されないが、その面積が小さくなるほど局所の情報を得ることができるため、測定感度が高まる。この観点から、搬送トレイに設けられたプローブの先端部分の面積は、好ましくは12cm2以下である。
【0052】
本発明の電池用部材の検査方法において、導電性のプローブが設けられた導電性の搬送トレイを用いる場合、搬送トレイに設けられたプローブを電池用部材の表面に接触させるときの圧力は、特に限定されないが、好ましくは5kPa以上である。
【0053】
本発明の電池用部材の検査方法において、導電性の搬送トレイを用いる場合、搬送機構としては、導電性のベルトを有するベルトコンベアを用いてもよいし、非導電性のベルトを有するベルトコンベアを用いてもよい。
【0054】
なお、本発明の電池用部材の検査方法において、電池用部材が上述したセパレータ付き電極シートである場合は、導電性のベルトを有するベルトコンベアと導電性の搬送トレイとのうちの少なくとも一方を用いるとしても、セパレータ付き電極シートの表面のうちの樹脂集電体が露出した露出表面を搬送面と反対側に向けた上で、その露出表面に導電体プローブを接触させることになる。
【0055】
本発明の電池用部材の検査方法において、搬送機構で電池用部材を搬送するとともに、導電体プローブを電池用部材の表面に接触させる際、導電体プローブを、搬送速度に合わせて電池用部材に追従させることが好ましい。つまり、導電体プローブを、電池用部材の表面に接触させたまま、電池用部材と同じ搬送速度で移動させることが好ましい。これにより、電池用部材の搬送と、電池用部材の表面の複数箇所における電気特性の測定とを、同時に、かつ、効率的に行うことができる。
【0056】
図1は、本発明の電池用部材の検査方法の一例を示す斜視模式図である。
【0057】
図1では、電池用部材1を、ベルトコンベア(搬送機構)2を用いて搬送方向L1に搬送している。
【0058】
電池用部材1は、樹脂集電体が露出した露出表面(
図1では、上面及び下面のうちの少なくとも一方)を有している。
【0059】
ベルトコンベア2は、電池用部材1の露出表面に平行な搬送面を有している。
【0060】
ベルトコンベア2は、搬送面の構成部材として、導電性のベルトを有している。
【0061】
ベルトコンベア2の搬送面の上方、
図1では電池用部材1のベルトコンベア2と反対側には、導電体プローブ3が配置されている。導電体プローブ3は、搬送速度に合わせて電池用部材1に追従可能なように構成されている。
【0062】
導電体プローブ3は、複数の測定端子3aを有している。
【0063】
複数の測定端子3aは、電池用部材1の搬送方向L1と搬送方向L1に直交する方向L2とに沿って配置されている。これにより、後述する電池用部材1の電気特性の測定時に、導電体プローブ3を、電池用部材1の表面の広範囲に接触させることができる。
【0064】
複数の測定端子3aは、電池用部材1に向かって同一方向(
図1では、下方向)に突出している。
【0065】
隣り合う測定端子3aの間隔は、特に限定されないが、等間隔であることが好ましい。
【0066】
なお、複数の測定端子3aは、搬送方向L1に沿って、いわゆるジグザグ状に配置されていてもよい。また、複数の測定端子3aは、搬送方向L1に直交する方向L2に沿って、いわゆるジグザグ状に配置されていてもよい。
【0067】
電池用部材1の検査方法の手順について、
図1に加えて、
図2及び
図3も参照しつつ以下に説明する。
図2は、本発明の電池用部材の検査方法の一例について、
図1の後段階を示す斜視模式図である。
図3は、本発明の電池用部材の検査方法の一例について、
図2の後段階を示す斜視模式図である。
【0068】
まず、
図1に示すように、ベルトコンベア2を用いて、電池用部材1を搬送方向L1に搬送する。
【0069】
次に、
図2に示すように、ベルトコンベア2で搬送されている電池用部材1の表面(
図2では、上面)に、導電体プローブ3を接触させる。この際、導電体プローブ3を、搬送速度に合わせて電池用部材1に追従させながら、電池用部材1の表面に接触させる。なお、導電体プローブ3を、電池用部材1が下方に搬送されてきたタイミングで降下させることで、電池用部材1の表面に接触させてもよい。
【0070】
そして、導電体プローブ3を、電池用部材1の表面に接触させたまま、電池用部材1と同じ搬送速度で移動させる。この際、ベルトコンベア2のベルトと導電体プローブ3とに接続された、電気特性を測定する測定機器4を用いて、電池用部材1の表面の複数箇所における電気特性を測定(モニタリング)する。
【0071】
その後、
図3に示すように、導電体プローブ3を、電池用部材1の表面から離す。
【0072】
図1、
図2、及び、
図3に示す手順を繰り返すことにより、複数の電池用部材1に対して、電気特性の測定を連続的に行うことができる。
【0073】
図4は、本発明の電池用部材の検査方法の別の一例を示す斜視模式図である。
【0074】
図4では、電池用部材1を、導電性の搬送トレイ5に積載した状態で、ベルトコンベア2を用いて搬送方向L1に搬送している。
【0075】
搬送トレイ5は、表面及び内部の全体が導電性材料で構成されていてもよいし、表面のみが導電性材料で構成されていてもよい。
【0076】
搬送トレイ5には、導電性のプローブ5aが複数設けられている。より具体的には、搬送トレイ5に設けられた複数のプローブ5aは、搬送トレイ5と同じ材料で一体化している。
【0077】
搬送トレイ5に設けられた複数のプローブ5aは、電池用部材1に向かって同一方向(
図4では、上方向)に突出している。
【0078】
搬送トレイ5に設けられた複数のプローブ5aは、電池用部材1の表面(
図4では、下面)に接触している。
【0079】
隣り合うプローブ5aの間隔は、特に限定されないが、等間隔であることが好ましい。
【0080】
なお、複数のプローブ5aは、搬送方向L1に沿って、いわゆるジグザグ状に配置されていてもよい。また、複数のプローブ5aは、搬送方向L1に直交する方向L2に沿って、いわゆるジグザグ状に配置されていてもよい。
【0081】
ベルトコンベア2のベルトと搬送トレイ5とは、接触することで導通している。
【0082】
なお、
図4に示す状態と異なり、ベルトコンベア2の代わりに、非導電性のベルトを有するベルトコンベアを用いてもよい。
【0083】
搬送トレイ5に積載された電池用部材1の検査方法の手順について、
図4に加えて、
図5及び
図6も参照しつつ以下に説明する。
図5は、本発明の電池用部材の検査方法の別の一例について、
図4の後段階を示す斜視模式図である。
図6は、本発明の電池用部材の検査方法の別の一例について、
図5の後段階を示す斜視模式図である。
【0084】
まず、
図4に示すように、ベルトコンベア2を用いて、搬送トレイ5に積載された電池用部材1を搬送方向L1に搬送する。
【0085】
次に、
図5に示すように、ベルトコンベア2で搬送されている電池用部材1の表面(
図5では、上面)に、導電体プローブ3を接触させる。この際、導電体プローブ3を、搬送速度に合わせて電池用部材1に追従させながら、電池用部材1の表面に接触させる。なお、導電体プローブ3を、電池用部材1が下方に搬送されてきたタイミングで降下させることで、電池用部材1の表面に接触させてもよい。
【0086】
そして、導電体プローブ3を、電池用部材1の表面に接触させたまま、電池用部材1と同じ搬送速度で移動させる。この際、ベルトコンベア2のベルトと導電体プローブ3とに接続された測定機器4を用いて、電池用部材1の表面の複数箇所における電気特性を測定する。
【0087】
なお、ベルトコンベア2のベルトの代わりに、搬送トレイ5が測定機器4に接続されていてもよい。つまり、搬送トレイ5と導電体プローブ3とが測定機器4に接続されていてもよい。この場合も、測定機器4を用いて、電池用部材1の表面の複数箇所における電気特性を測定できる。
【0088】
その後、
図6に示すように、導電体プローブ3を、電池用部材1の表面から離す。
【0089】
図4、
図5、及び、
図6に示す手順を繰り返すことにより、搬送トレイ5に個別に積載された複数の電池用部材1に対して、電気特性の測定を連続的に行うことができる。
【0090】
以下、本発明の電池用部材の検査方法の実施例について説明する。なお、本発明の電池用部材の検査方法は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0091】
[実施例1]
実施例1では、まず、
図4に示すように、ベルトコンベア2を用いて、搬送トレイ5に積載された電池用部材1を、20m/分の搬送速度で搬送方向L1に搬送した。
【0092】
電池用部材1としては、電池シートを用いた。
【0093】
ベルトコンベア2は、搬送面の構成部材として、導電性のベルトを有していた。
【0094】
搬送トレイ5は、サイズが長さ8cm×幅6cmであり、表面が導電性材料で構成されていた。なお、本実施例で用いた搬送トレイ5には、
図4と異なり、導電性のプローブ5aが設けられていなかった。
【0095】
次に、
図5に示すように、ベルトコンベア2で搬送されている電池用部材1の表面に、先端部分の面積が12cm
2である測定端子3aを複数有する導電体プローブ3を接触させた。この際、測定端子3aに5kPaの圧力が加わるように、導電体プローブ3を電池用部材1の表面に押圧しつつ接触させた。
【0096】
そして、導電体プローブ3を、電池用部材1の表面に接触させたまま、電池用部材1と同じ搬送速度で移動させた。この際、ベルトコンベア2のベルトと導電体プローブ3とに接続された測定機器4を用いて、電池用部材1の電気抵抗をモニタリングした。測定機器4としては、日置電機社製のケミカルインピーダンスアナライザ「IM3590」を用いた。
【0097】
導電体プローブ3を電池用部材1の表面に接触させてから1秒後、
図6に示すように、導電体プローブ3を、電池用部材1の表面から離した。
【0098】
[実施例2]
測定端子3aの先端部分の面積を24cm2に変更したこと以外、実施例1と同様にして、電池用部材1の電気抵抗をモニタリングした。
【0099】
[実施例3]
測定端子3aの先端部分の面積を48cm2に変更したこと以外、実施例1と同様にして、電池用部材1の電気抵抗をモニタリングした。
【0100】
実施例1、実施例2、及び、実施例3において、電池用部材1の電気抵抗をモニタリングした結果、正常領域での平均電気抵抗と、意図的に短絡させた異常箇所での電気抵抗と、両者の差(「異常箇所での電気抵抗」-「正常領域での平均電気抵抗」)とは、表1に示す通りとなった。
【0101】
【0102】
表1に示すように、実施例1、実施例2、及び、実施例3において、意図的に短絡させた異常箇所では、正常領域よりも電気抵抗が低下する事象が確認された。
【0103】
[実施例4]
測定機器4として日置電機社製のメモリハイロガー「LR8401」を用いることにより、電池用部材1の電圧をモニタリングしたこと以外、実施例1と同様にして、電池用部材1の検査を行った。
【0104】
[実施例5]
測定端子3aの先端部分の面積を24cm2に変更したこと以外、実施例4と同様にして、電池用部材1の電圧をモニタリングした。
【0105】
[実施例6]
測定端子3aの先端部分の面積を48cm2に変更したこと以外、実施例4と同様にして、電池用部材1の電圧をモニタリングした。
【0106】
実施例4、実施例5、及び、実施例6において、電池用部材1の電圧をモニタリングした結果、正常領域での平均電圧と、意図的に短絡させた異常箇所での電圧と、両者の差(「異常箇所での電圧」-「正常領域での平均電圧」)とは、表2に示す通りとなった。
【0107】
【0108】
表2に示すように、実施例4、実施例5、及び、実施例6において、意図的に短絡させた異常箇所では、正常領域よりも電圧が低下する事象が確認された。
【0109】
図7は、本発明の電池用部材の検査方法において電池用部材として用いられる電池シートの一例を示す一部切り欠き斜視模式図である。
【0110】
図7に示す電池シート(単電池)10は、略矩形平板状の正極樹脂集電体17の表面に正極活物質層15が設けられた正極12と、略矩形平板状の負極樹脂集電体19の表面に負極活物質層16が設けられた負極13とが、略平板状のセパレータ14を介して積層されて構成され、全体として略矩形平板状となっている。正極12及び負極13は、各々、例えば、リチウムイオン電池の正極及び負極として機能する。
【0111】
電池シート10は、正極樹脂集電体17と負極樹脂集電体19との間に配置されてセパレータ14の周縁部を固定し、かつ、正極活物質層15とセパレータ14と負極活物質層16とを封止する、環状の枠部材18を有することが好ましい。
【0112】
正極樹脂集電体17及び負極樹脂集電体19は、枠部材18により所定間隔をもって対向するように位置決めされているとともに、セパレータ14及び正極活物質層15、並びに、セパレータ14及び負極活物質層16も、枠部材18により所定間隔をもって対向するように位置決めされている。
【0113】
正極樹脂集電体17とセパレータ14との間隔、及び、負極樹脂集電体19とセパレータ14との間隔は、電池シート10、例えば、リチウムイオン電池の容量に応じて調整される。このように、正極樹脂集電体17、負極樹脂集電体19、及び、セパレータ14の位置関係は、必要な間隔が得られるように定められている。
【0114】
以下に、電池シートの各構成要素の好ましい態様について説明する。樹脂集電体、電極シートの各構成要素、及び、セパレータ付き電極シートの各構成要素の好ましい態様についても同様である。
【0115】
正極活物質層は、正極活物質を含む。
【0116】
正極活物質としては、例えば、リチウムと遷移金属との複合酸化物{遷移金属元素が1種類である複合酸化物(例えば、LiCoO2、LiNiO2、LiAlMnO4、LiMnO2、LiMn2O4等)、遷移金属元素が2種類である複合酸化物(例えば、LiFeMnO4、LiNi1-xCoxO2、LiMn1-yCoyO2、LiNi1/3Co1/3Al1/3O2、LiNi0.8Co0.15Al0.05O2等)、遷移金属元素が3種類以上である複合酸化物[例えば、LiMaM’bM’’cO2(M、M’、及び、M’’は、各々異なる遷移金属元素であり、a+b+c=1を満たす。例えば、LiNi1/3Mn1/3Co1/3O2等)等]等}、リチウム含有遷移金属リン酸塩(例えば、LiFePO4、LiCoPO4、LiMnPO4、LiNiPO4等)、遷移金属酸化物(例えば、MnO2、V2O5等)、遷移金属硫化物(例えば、MoS2、TiS2等)、導電性高分子(例えば、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリ-p-フェニレン、ポリビニルカルバゾール等)等が挙げられる。なお、リチウム含有遷移金属リン酸塩は、遷移金属サイトの一部を他の遷移金属で置換したものであってもよい。
【0117】
上述した正極活物質は、1種類単独で用いられてもよいし、2種類以上で併用されてもよい。
【0118】
正極活物質は、導電助剤及び被覆用樹脂で被覆された被覆正極活物質であることが好ましい。正極活物質が被覆用樹脂で被覆されていると、電極の体積変化が緩和されるため、電極の膨張を抑制できる。
【0119】
導電助剤としては、例えば、金属系導電助剤[例えば、アルミニウム、ステンレス(SUS)、銀、金、銅、チタン等]、炭素系導電助剤[例えば、グラファイト、カーボンブラック(アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルランプブラック等)等]、これらの混合物、これらの合金、これらの金属酸化物等が挙げられる。中でも、電気的安定性の観点から、アルミニウム、ステンレス、銀、金、銅、チタン、炭素系導電助剤、及び、これらの混合物が好ましく、銀、金、アルミニウム、ステンレス、及び、炭素系導電助剤がより好ましく、炭素系導電助剤が特に好ましい。
【0120】
導電助剤は、粒子系セラミック材料や樹脂材料の周りに導電性材料(好ましくは、上述した導電助剤のうちで金属のもの)をめっき等でコーティングしたものでもよい。
【0121】
上述した導電助剤は、1種類単独で用いられてもよいし、2種類以上で併用されてもよい。
【0122】
導電助剤の形態(形状)は、特に限定されず、粒子形態であってもよいし、粒子形態以外の形態であってもよい。導電助剤について、粒子形態以外の形態は、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ等、いわゆるフィラー系導電助剤として実用化されている形態であってもよい。
【0123】
被覆用樹脂と導電助剤との比率は、特に限定されないが、電池の内部抵抗等の観点から、重量比率で被覆用樹脂(樹脂固形分重量):導電助剤が、1:0.01~1:50であることが好ましく、1:0.2~1:3.0であることがより好ましい。
【0124】
被覆用樹脂としては、特開2017-054703号公報に非水系二次電池活物質被覆用樹脂として記載されたものが好適に用いられる。
【0125】
正極活物質層は、被覆正極活物質に含まれる導電助剤以外に、別の導電助剤を更に含んでもよい。
【0126】
別の導電助剤としては、上述した被覆正極活物質に含まれる導電助剤と同様のものが好適に用いられる。
【0127】
正極活物質層は、正極活物質を含み、かつ、正極活物質同士を結着する結着材(バインダとも言う)を含まない非結着体であることが好ましい。
【0128】
非結着体は、正極活物質の位置が結着材により固定されておらず、正極活物質同士、更には、正極活物質と集電体とが不可逆的に固定されていないものを意味する。
【0129】
正極活物質層は、粘着性樹脂を更に含んでもよい。
【0130】
粘着性樹脂としては、例えば、特開2017-054703号公報に記載された非水系二次電池活物質被覆用樹脂に少量の有機溶剤を混合してそのガラス転移温度を室温以下に調整したもの、特開平10-255805公報に粘着剤として記載されたもの等が好適に用いられる。
【0131】
粘着性樹脂は、溶媒成分を揮発させて乾燥させても固体化せずに粘着性(水、溶剤、熱等を使用せずに僅かな圧力を加えることで接着する性質)を有する樹脂を意味する。一方、結着材として用いられる溶液乾燥型の電極バインダは、溶媒成分を揮発させることで乾燥、固体化して活物質同士を強固に接着固定するものを意味する。このように、溶液乾燥型の電極バインダ(結着剤)と粘着性樹脂とは、異なる材料である。
【0132】
正極活物質層の厚みは、特に限定されないが、電池性能の観点から、好ましくは150~600μm、より好ましくは200~450μmである。
【0133】
負極活物質層は、負極活物質を含む。
【0134】
負極活物質としては、公知のリチウムイオン電池用負極活物質が使用可能であり、例えば、炭素系材料[例えば、黒鉛、難黒鉛化性炭素、アモルファス炭素、樹脂焼成体(例えば、フェノール樹脂、フラン樹脂等を焼成し炭素化したもの等)、コークス類(例えば、ピッチコークス、ニードルコークス、石油コークス等)、炭素繊維等]、珪素系材料[例えば、珪素、酸化珪素(SiOx)、珪素-炭素複合体(例えば、炭素粒子の表面を珪素及び/又は炭化珪素で被覆したもの、珪素粒子又は酸化珪素粒子の表面を炭素及び/又は炭化珪素で被覆したもの、炭化珪素等)、珪素合金(例えば、珪素-アルミニウム合金、珪素-リチウム合金、珪素-ニッケル合金、珪素-鉄合金、珪素-チタン合金、珪素-マンガン合金、珪素-銅合金、珪素-スズ合金等)等]、導電性高分子(例えば、ポリアセチレン、ポリピロール等)、金属(例えば、スズ、アルミニウム、ジルコニウム、チタン等)、金属酸化物(例えば、チタン酸化物、リチウム・チタン酸化物等)、金属合金(例えば、リチウム-スズ合金、リチウム-アルミニウム合金、リチウム-アルミニウム-マンガン合金等)、これらと炭素系材料との混合物等が挙げられる。
【0135】
上述した負極活物質は、1種類単独で用いられてもよいし、2種類以上で併用されてもよい。
【0136】
負極活物質は、導電助剤及び被覆用樹脂で被覆された被覆負極活物質であってもよい。負極活物質が被覆用樹脂で被覆されていると、電極の体積変化が緩和されるため、電極の膨張を抑制できる。
【0137】
被覆負極活物質に含まれる導電助剤及び被覆用樹脂としては、上述した被覆正極活物質に含まれる導電助剤及び被覆用樹脂と同様のものが好適に用いられる。
【0138】
負極活物質層は、被覆負極活物質に含まれる導電助剤以外に、別の導電助剤を更に含んでもよい。
【0139】
別の導電助剤としては、上述した被覆正極活物質に含まれる導電助剤と同様のものが好適に用いられる。
【0140】
負極活物質層は、正極活物質層と同様に、負極活物質同士を結着する結着材を含まない非結着体であることが好ましい。
【0141】
負極活物質層は、正極活物質層と同様に、粘着性樹脂を更に含んでもよい。
【0142】
負極活物質層の厚みは、特に限定されないが、電池性能の観点から、好ましくは150~600μm、より好ましくは200~450μmである。
【0143】
正極樹脂集電体及び負極樹脂集電体は、各々、導電性高分子材料からなる樹脂集電体である。
【0144】
正極樹脂集電体及び負極樹脂集電体の形態(形状)は、各々、特に限定されず、導電性高分子材料からなるシート状の集電体であってもよいし、導電性高分子材料で構成された微粒子からなる堆積層であってもよい。
【0145】
正極樹脂集電体及び負極樹脂集電体の厚みは、各々、特に限定されないが、好ましくは50~500μmである。
【0146】
正極樹脂集電体及び負極樹脂集電体を構成する導電性高分子材料としては、例えば、導電性高分子や樹脂に必要に応じて導電剤を添加したもの等が挙げられる。
【0147】
導電性高分子材料を構成する導電剤としては、上述した被覆正極活物質に含まれる導電助剤と同様のものが好適に用いられる。
【0148】
導電性高分子材料を構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリシクロオレフィン(PCO)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルアクリレート(PMA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、これらの混合物等が挙げられる。中でも、電気的安定性の観点から、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、及び、ポリシクロオレフィンが好ましく、ポリエチレン、ポリプロピレン、及び、ポリメチルペンテンがより好ましい。
【0149】
上述した樹脂は、1種類単独で用いられてもよいし、2種類以上で併用されてもよい。
【0150】
セパレータとしては、公知のリチウムイオン電池用セパレータが使用可能であり、例えば、ポリエチレン又はポリプロピレン製の多孔性フィルム、多孔性ポリエチレンフィルムと多孔性ポリプロピレンフィルムとの積層フィルム、合成繊維(例えば、ポリエステル繊維、アラミド繊維等)又はガラス繊維等からなる不織布、これらの表面にシリカ、アルミナ、チタニア等のセラミック微粒子を付着させたもの等が挙げられる。
【0151】
電池シートは、正極活物質層及び負極活物質層に存在する電解液を含む。
【0152】
電解液としては、公知のリチウムイオン電池の製造時に用いられる、電解質及び非水溶媒を含有する公知の電解液が使用可能である。
【0153】
電解質としては、公知の電解液に用いられるもの等が使用可能であり、例えば、LiN(FSO2)2、LiPF6、LiBF4、LiSbF6、LiAsF6、LiClO4等の無機酸のリチウム塩、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2、LiC(CF3SO2)3等の有機酸のリチウム塩等が挙げられる。中でも、電池出力及び充放電サイクル特性の観点から、LiN(FSO2)2、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2等のイミド系電解質、及び、LiPF6が好ましい。
【0154】
非水溶媒としては、公知の電解液に用いられるもの等が使用可能であり、例えば、ラクトン化合物、環状又は鎖状炭酸エステル、鎖状カルボン酸エステル、環状又は鎖状エーテル、リン酸エステル、ニトリル化合物、アミド化合物、スルホン、スルホラン、これらの混合物等が挙げられる。
【0155】
電解液の電解質濃度は、好ましくは1~5mol/L、より好ましくは1.5~4mol/L、更に好ましくは2~3mol/Lである。
【0156】
電解液の電解質濃度が1mol/Lよりも低いと、電池の入出力特性が充分に得られないことがある。電解液の電解質濃度が5mol/Lよりも高いと、電解質が析出してしまうことがある。
【0157】
電解液の電解質濃度は、電池シート、例えば、リチウムイオン電池から電解液を溶媒等を用いずに抽出して、その濃度を測定することにより確認可能である。
【0158】
[電池用部材の製造方法]
本発明の電池用部材の製造方法は、本発明の電池用部材の検査方法により電気特性が許容範囲外である箇所が存在しないと判定された電池用部材を選別する、選別工程を備える。
【0159】
本発明の電池用部材の製造方法では、選別工程により、電気特性が許容範囲外である箇所が存在する不具合品を取り除きつつ、電気特性が許容範囲外である箇所が存在しない電池用部材を効率的に得ることができる。
【0160】
[組電池の製造方法]
本発明の組電池の製造方法は、本発明の電池用部材の検査方法により電気特性が許容範囲外である箇所が存在しないと判定された電池用部材を用いた電池シートを、複数枚積層する、積層工程を備える。
【0161】
図8は、組電池の一例を示す一部切り欠き斜視模式図である。
図8では、外装体の一部が除去された状態を示している。
【0162】
図8に示す組電池100は、電池シート10が複数枚積層されつつ接続されてなる。
図8に示す例では、
図7に示す電池シート10が5枚積層された状態を示している。組電池100では、負極樹脂集電体19の上面と正極樹脂集電体17の下面とが隣接するように、電池シート10が積層されている。この場合、電池シート10は、複数枚直列接続されている。
【0163】
組電池100は、外装体110に収容されている。
【0164】
外装体110としては、例えば、金属缶ケース、高分子金属複合フィルム等が挙げられる。
【0165】
組電池100の最下面を構成する正極樹脂集電体の表面上には、導電性シートが設けられている。導電性シートの一部は、外装体110から引き出されて正極引出端子120となっている。
【0166】
組電池100の最上面を構成する負極樹脂集電体の表面上には、別の導電性シートが設けられている。別の導電性シートの一部は、外装体110から引き出されて負極引出端子130となっている。
【0167】
正極引出端子120及び負極引出端子130となる導電性シートの構成材料としては、導電性を有する材料であれば特に限定されず、例えば、銅、アルミニウム、チタン、ステンレス鋼、ニッケル、これらの合金等の金属、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラス等が挙げられる。
【0168】
上述した通り、本発明の電池用部材の検査方法では、電池用部材単位で短絡等の不具合を簡便に発見できる。これにより、本発明の組電池の製造方法では、確実に不具合が生じていない電池シートを用いて組電池を製造できるため、組電池の製造歩留まりを向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0169】
本発明の電池用部材の検査方法で検査対象物とされる電池用部材は、特に、携帯電話、パーソナルコンピューター、ハイブリッド自動車、及び、電気自動車の用途で用いられるリチウムイオン電池に有用である。
【符号の説明】
【0170】
1 電池用部材
2 ベルトコンベア(搬送機構)
3 導電体プローブ
3a 測定端子
4 測定機器
5 搬送トレイ
5a プローブ
10 電池シート(単電池)
12 正極
13 負極
14 セパレータ
15 正極活物質層
16 負極活物質層
17 正極樹脂集電体
18 枠部材
19 負極樹脂集電体
100 組電池
110 外装体
120 正極引出端子
130 負極引出端子
L1 搬送方向
L2 搬送方向に直交する方向