(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022176627
(43)【公開日】2022-11-30
(54)【発明の名称】半導体チップおよびその製造方法、並びに電子機器
(51)【国際特許分類】
H01L 27/146 20060101AFI20221122BHJP
H04N 5/225 20060101ALI20221122BHJP
G02B 3/00 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
H01L27/146 D
H04N5/225 300
H04N5/225 400
G02B3/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021083153
(22)【出願日】2021-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】316005926
【氏名又は名称】ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121131
【弁理士】
【氏名又は名称】西川 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082131
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 義雄
(74)【代理人】
【識別番号】100168686
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 勇介
(72)【発明者】
【氏名】鎌谷 良介
(72)【発明者】
【氏名】湯川 富之
(72)【発明者】
【氏名】山本 篤志
【テーマコード(参考)】
4M118
5C122
【Fターム(参考)】
4M118AA10
4M118AB01
4M118BA14
4M118CA03
4M118FA06
4M118GA02
4M118GC08
4M118GD03
4M118GD04
4M118GD07
4M118GD08
4M118GD20
4M118HA02
4M118HA07
4M118HA09
4M118HA22
4M118HA23
4M118HA24
4M118HA25
4M118HA31
4M118HA33
5C122DA14
5C122DA26
5C122EA55
5C122FB05
5C122FB17
5C122FC06
5C122GE05
(57)【要約】
【課題】信頼性や耐久性を向上させることができるようにする。
【解決手段】半導体チップは、CIS(CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor) Image sensor)等の固体撮像素子と、固体撮像素子上に設置されたガラス基板と、ガラス基板上に形成されたレンズとを備える。ガラス基板は、レンズが形成される領域の周囲に深さがL1-L2である溝部を有する。本技術は、例えば、CIS等の固体撮像素子を有するWCSP(Wafer Level Chip Size Package)である半導体チップ等に適用できる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像素子と、
前記撮像素子上に設置されたガラス基板と、
前記ガラス基板上に形成されたレンズと、
を備え、
前記ガラス基板は、前記レンズが形成される領域の周囲に溝部を有する
ように構成された
半導体チップ。
【請求項2】
前記溝部の側面は斜面である
ように構成された
請求項1に記載の半導体チップ。
【請求項3】
前記溝部の側面には光の正反射を防止する加工が施されている
ように構成された
請求項1に記載の半導体チップ。
【請求項4】
前記溝部の底面は曲面である
ように構成された
請求項1に記載の半導体チップ。
【請求項5】
前記溝部の底面には、前記溝部の底面が平面である場合に比べて表面積が増加する加工が施されている
ように構成された
請求項1に記載の半導体チップ。
【請求項6】
前記溝部の底面は、凹凸を有する
ように構成された
請求項5に記載の半導体チップ。
【請求項7】
前記レンズ上に形成される反射防止膜と、
前記レンズと前記反射防止膜の間に形成されるバッファ層と
をさらに備える
請求項1に記載の半導体チップ。
【請求項8】
前記バッファ層は、屈折率が低い膜である
ように構成された
請求項7に記載の半導体チップ。
【請求項9】
前記バッファ層は、前記レンズの上面と側面に形成される
ように構成された
請求項7に記載の半導体チップ。
【請求項10】
前記バッファ層の側面の厚みは、上面の厚みの60%以上である
ように構成された
請求項9に記載の半導体チップ。
【請求項11】
前記反射防止膜は、前記レンズの上面と側面に形成される
ように構成された
請求項9に記載の半導体チップ。
【請求項12】
前記反射防止膜は、前記レンズの上面に形成される
ように構成された
請求項9に記載の半導体チップ。
【請求項13】
撮像素子上に設置されるガラス基板の、レンズを形成する領域の周囲に溝部を形成し、
前記ガラス基板の前記レンズを形成する領域に前記レンズを形成する
半導体チップの製造方法。
【請求項14】
前記レンズの上にバッファ層が成膜され、
前記バッファ層の上に反射防止膜が成膜される
請求項13に記載の半導体チップの製造方法。
【請求項15】
撮像素子と、
前記撮像素子上に設置されたガラス基板と、
前記ガラス基板上に形成されたレンズと、
を備え、
前記ガラス基板は、前記レンズが形成される領域の周囲に溝部を有する
ように構成された
半導体チップと、
前記半導体チップからの信号を処理する信号処理回路と
を備える電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、半導体チップおよびその製造方法、並びに電子機器に関し、特に、信頼性や耐久性を向上させることができるようにした半導体チップおよびその製造方法、並びに電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、固体撮像素子、ガラス基板、およびIR(Infrared)カットフィルタが積層された一体化構成部の最前段に、固体撮像素子の受光面に対して入射光を合焦させる複数のレンズのうちの最下位層レンズが形成される撮像装置がある。
【0003】
このような撮像装置において、最下位層レンズの外周側面であって、ガラス基板との境界に、裾引き部を形成することにより、最下位層レンズをガラス基板に対してより強固に接着させることが考案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、この最下位層レンズにAR(Anti Reflection)コートを施し、反射を防止することが考案されている(例えば、特許文献2参照)。このARコートは、例えば、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、スチレン系等の樹脂、Si(ケイ素),C(炭素)、およびH(水素)を主成分とする絶縁膜(例えば、SiCH,SiCOH,SiCNH)、Si(ケイ素)とN(窒素)を主成分とする絶縁膜(例えば、SiON,SiN)、水酸化シリコン、アルキルシラン、アルコキシシラン、ポリシロキサン等の少なくともいずれかの材料ガスと酸化剤を用いて成膜されるSiO2膜、P-SiO膜、HDP-SiO膜などである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-213151号公報
【特許文献2】国際公開第2019/235247号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、固体撮像素子に積層されたガラス基板上に最下位層レンズを形成する方法としては、例えば、ガラス基板上の最下位層レンズを形成する領域であるレンズ領域に光硬化樹脂であるレンズ樹脂を塗布し、そのレンズ樹脂を最下位層レンズの所望の形状に対応する形状の遮光マスク付き金型を用いて露光する方法がある。この方法では、露光後に洗浄処理を行って未露光(未硬化)のレンズ樹脂等を除去することにより、所望の形状の最下位層レンズが形成される。
【0007】
しかしながら、露光用の光の屈折などの影響により、最下位層レンズの端部の形状を高精度で制御することは困難である。その結果、その端部に形成される裾部(レンズスソ)と洗浄処理によって除去される未硬化のレンズ樹脂等が接触すると、洗浄処理により、その未硬化のレンズ樹脂等とともに裾部の一部が剥離され、クラックが発生する場合がある。そして、このクラックにより、ガラス基板と最下位層レンズの密着力が低下すると、レンズ剥がれが発生する恐れがある。従って、このようなクラックの発生を抑制し、信頼性や耐久性を向上させることが望まれている。
【0008】
本技術は、このような状況に鑑みてなされたものであり、信頼性や耐久性を向上させることができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本技術の第1の側面の半導体チップは、撮像素子と、前記撮像素子上に設置されたガラス基板と、前記ガラス基板上に形成されたレンズとを備え、前記ガラス基板は、前記レンズが形成される領域の周囲に溝部を有するように構成された半導体チップである。
【0010】
本技術の第2の側面の製造方法は、撮像素子上に設置されるガラス基板の、レンズを形成する領域の周囲に溝部を形成し、前記ガラス基板の前記レンズを形成する領域に前記レンズを形成する半導体チップの製造方法である。
【0011】
本技術の第3の側面の電子機器は、撮像素子と、前記撮像素子上に設置されたガラス基板と、前記ガラス基板上に形成されたレンズとを備え、前記ガラス基板は、前記レンズが形成される領域の周囲に溝部を有するように構成された半導体チップと、前記半導体チップからの信号を処理する信号処理回路とを備える電子機器である。
【0012】
本技術の第1の側面においては、撮像素子と、前記撮像素子上に設置されたガラス基板と、前記ガラス基板上に形成されたレンズとが設けられ、前記ガラス基板は前記レンズが形成される領域の周囲に溝部を有する。
【0013】
本技術の第2の側面においては、撮像素子上に設置されるガラス基板の、レンズを形成する領域の周囲に溝部が形成され、前記ガラス基板の前記レンズを形成する領域に前記レンズが形成される。
【0014】
本技術の第3の側面においては、撮像素子と、前記撮像素子上に設置されたガラス基板と、前記ガラス基板上に形成されたレンズとを備え、前記ガラス基板は、前記レンズが形成される領域の周囲に溝部を有するように構成された半導体チップと、前記半導体チップからの信号を処理する信号処理回路とが設けられる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本技術を適用した半導体チップの第1実施の形態の第1の構成例を示す断面図である。
【
図2】
図1の一体化部の製造方法を説明する図である。
【
図3】
図1の一体化部の製造方法を説明する図である。
【
図4】
図1の一体化部の製造方法を説明する図である。
【
図5】工程S7と工程S9における溝部周辺の領域の断面図である。
【
図7】溝部がない場合の一体化部におけるレンズの成型を説明する図である。
【
図9】
図8の一体化部における理想的な裾部の周辺の断面図である。
【
図10】
図8の一体化部における実際の裾部の周辺の断面図である。
【
図11】本技術を適用した半導体チップの第1実施の形態における一体化部の第2の構成例を示す断面図である。
【
図12】本技術を適用した半導体チップの第1実施の形態における一体化部の第3の構成例を示す断面図である。
【
図13】本技術を適用した半導体チップの第1実施の形態における一体化部の第4の構成例を示す断面図である。
【
図14】本技術を適用した半導体チップの第2実施の形態の構成例を示す断面図である。
【
図17】本技術を適用した半導体チップの第3実施の形態の構成例を示す断面図である。
【
図18】本技術を適用した半導体チップの第4実施の形態の第1の構成例を示す図である。
【
図19】
図18の半導体チップの製造方法を説明する図である。
【
図20】本技術を適用した半導体チップの第4実施の形態の第2の構成例を示す図である。
【
図21】
図20の半導体チップの製造方法を説明する図である。
【
図22】固体撮像素子の第1の積層構造例の詳細を説明する図である。
【
図23】固体撮像素子の第2の積層構造例の詳細を説明する図である。
【
図24】本技術を適用した電子機器としての撮像装置の構成例を示すブロック図である。
【
図25】半導体チップを使用する使用例を示す図である。
【
図26】内視鏡手術システムの概略的な構成の一例を示す図である。
【
図27】カメラヘッド及びCCUの機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図28】車両制御システムの概略的な構成の一例を示すブロック図である。
【
図29】車外情報検出部及び撮像部の設置位置の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本技術を実施するための形態(以下、実施の形態という)について説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.第1実施の形態(凸形のレンズを有する半導体チップ)
2.第2実施の形態(溝の底面の断面形状が鋸の歯の形状である半導体チップ)
3.第3実施の形態(ARコートが形成される半導体チップ)
4.第4実施の形態(レンズの形状が角型で凹形である半導体チップ)
5.電子機器への適用例
6.半導体チップの使用例
7.内視鏡手術システムへの応用例
8.移動体への応用例
【0017】
なお、以下の説明で参照する図面において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は実際のものとは異なる。また、図面相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0018】
また、以下の説明における上下等の方向の定義は、単に説明の便宜上の定義であって、本開示の技術的思想を限定するものではない。例えば、対象を90°回転して観察すれば上下は左右に変換して読まれ、180°回転して観察すれば上下は反転して読まれる。
【0019】
<第1実施の形態>
<半導体チップの第1の構成例>
図1は、本技術を適用した半導体チップの第1実施の形態の第1の構成例を示す断面図である。
【0020】
図1に示すように、半導体チップ10は、CIS(CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor) Image sensor)等の固体撮像素子11を有するWCSP(Wafer Level Chip Size Package)である。固体撮像素子11は、半導体基板が積層されて構成される積層基板11a上にオンチップレンズ11bを形成することにより構成される。この固体撮像素子11の上には、接着剤12を介して一体化部13が設置されている。一体化部13は、ガラス基板14とレンズ16が順に積層されることにより構成される。
【0021】
ガラス基板14の、レンズ16が形成される領域の周囲の、レンズ16が形成されない領域には、溝部15が形成されている。ここで、ガラス基板14の溝部15以外の領域の厚さをL1とすると、溝部15の厚さはL2(L1>L2)である。また、溝部15の側面15aは傾きを有しているが、この傾きは、ガラス基板14をエッチングして溝部15を形成する際に意図せず発生するものであり、溝部15の側面15aは、理想的には垂直面である。
【0022】
ガラス基板14上のオンチップレンズ11bに対応する領域には、凸形のアクリルレンズであるレンズ16が形成されている。レンズ16は、所望の形状の主部16aと、製造時にレンズ16の端部に意図せず形成される裾部16bとにより構成される。レンズ16は、積層基板11aの表面の、オンチップレンズ11bに対応する領域に形成される図示せぬ受光面に対して入射光を合焦させる複数のレンズのうちの最下位層のレンズである。
【0023】
以上のように構成される半導体チップ10では、図示せぬレンズおよびレンズ16を介して入射された光がガラス基板14、接着剤12、オンチップレンズ11bを介して、積層基板11aの受光面に入射し、その光に対応する電荷が蓄積されることにより、撮像が行われる。
【0024】
<一体化部の製造方法>
図2乃至
図4は、
図1の一体化部13の製造方法を説明する図である。
【0025】
図2に示すように、工程S1において、チャック31にガラス基板14が設置され、レジスト32がパターニングされる。具体的には、ガラス基板14上の溝部15を形成する領域以外の領域にレジスト32が塗布される。
【0026】
工程S2において、工程S1においてレジスト32が塗布されたガラス基板14に対して、ウェットエッチングやドライエッチングなどのエッチングが行われ、ガラス基板14のレジスト32が塗布されていない領域が垂直方向にエッチングされる。これにより、ガラス基板14の、レンズ16を形成する領域の周囲に溝部15が形成される。このとき、溝部15の側面15aは、理想的にはガラス基板14に対して垂直な面であるが、実際には溝部15の底面が上面より小さくなり、側面15aは傾きを有する。工程S3において、レジスト32が除去される。
【0027】
図3の工程S4において、溝部15が形成されたガラス基板14上の、レンズ16を形成しない領域に、溝部15の高さL1-L2よりも薄い、例えば数nmの厚さの撥水膜33がパターニングされる。工程S5において、ガラス基板14上のレンズ16を形成する領域に、光硬化樹脂であるレンズ樹脂34が塗布される。このとき、レンズ16を形成しない領域には撥水膜33が形成されているため、レンズ樹脂34が、レンズ16を形成しない領域、即ちレンズ樹脂34が不要である領域に拡散することを抑制することができる。その結果、レンズ16を形成するために必要なレンズ樹脂34の量を削減することができる。また、レンズ16の形状のバラつきを抑制することができる。
【0028】
工程S6において、レンズ樹脂34に対して、レンズ16の主部16aの形状に対応する形状の遮光マスク付きの金型35が押圧(インプリント)され、金型35を介してレンズ樹脂34に光が照射されることにより、レンズ樹脂34が露光される。これにより、主部16aの形状に対応する形状の、露光されたレンズ樹脂34が硬化され、レンズ16が成型される。即ち、ガラス基板14上のレンズ16を形成する領域に略所望の形状のレンズ16が形成される。一方、金型35からの光が届かず、露光されていないレンズ樹脂34は硬化しない。
【0029】
図4の工程S7において、金型35からレンズ16が離型される。工程S8において、ガラス基板14上に洗浄液36が注入され、洗浄処理が行われる。工程S9において、洗浄液36とともに、撥水膜33と未硬化(未露光)のレンズ樹脂34とが除去され、一体化部13が製造される。
【0030】
以上のようにして製造された一体化部13は、固体撮像素子11の上に、接着剤12を介して接着され、これにより半導体チップ10が製造される。
【0031】
<溝部の説明>
図5は、
図4の工程S7と工程S9における溝部15周辺の領域の断面図である。
【0032】
図5の左側に示すように、
図4の工程S7において金型35からレンズ16が離型されるとき、レンズ16の裾部16bは、ガラス基板14の上面から溝部15のレンズ16側の側面15aに沿って形成されている。
【0033】
具体的には、レンズ16が形成されるガラス基板14の上面と溝部15の底面には、L1-L2の距離の段差があるため、
図3の工程S6における金型35の押圧によりガラス基板14の上から押し出されたレンズ樹脂34は、側面15aを伝って溝部15の底面の撥水膜33上に落下する。押し出されたレンズ樹脂34のうちの、金型35周辺の領域、即ち主部16a周辺の領域は、金型35を介して入射された光の屈折などにより意図せず露光されて硬化し、裾部16bを形成する。従って、この裾部16bは、ガラス基板14の上面から側面15aに沿って形成される。
【0034】
しかしながら、裾部16bは、主部16aの周辺、即ちガラス基板14の上面付近にのみ形成されるため、ガラス基板14の上面からL1―L2だけ低い位置にある溝部15の底面に塗布されている撥水膜33とは接触しない。従って、
図5の右側に示すように、
図4の工程S9において洗浄液36とともに撥水膜33および未硬化のレンズ樹脂34が除去される際、撥水膜33および未硬化のレンズ樹脂34とともに裾部16bが剥離されない。
【0035】
また、裾部16bは、ガラス基板14の上面から側面15aに沿って理想的には垂直方向に形成されるので、レンズ16とガラス基板14の密着力が向上し、レンズ16のガラス基板14からの剥離、いわゆるレンズ剥がれの発生を抑制することができる。
【0036】
<裾部の状態の説明>
図6は、裾部16bの状態を説明する図である。
【0037】
図6のAは、一体化部13全体の斜視図を示し、
図6のBは、
図6のAの矩形R1の拡大図である。
【0038】
図6のAに示すように、溝部15は、レンズ16の外周に沿って形成されている。従って、上述したように撥水膜33および未硬化のレンズ樹脂34とともに裾部16bが剥離されない。よって、
図6のAおよびBに示すように、裾部16bには、裾部16bの一部がガラス基板14から剥離される(浮く)ことによるクラックが発生しない。その結果、このクラックによるガラス基板14とレンズ16の密着力の低下が防止され、レンズ剥がれの発生を抑制することができる。
【0039】
<溝部がない場合の一体化部の説明>
図7は、溝部15がない場合の一体化部におけるレンズの成型を説明する図である。
【0040】
即ち、
図7のAは、
図3の工程S6に対応するものであり、
図7のBは、
図4の工程S7に対応するものである。
図7において、
図3と同様のものには同一の符号を付してあり、説明は繰り返しになるので、適宜、省略する。
【0041】
図7のAに示すように、一体化部13において溝部15がない場合、溝部15がないガラス基板51上の、撥水膜33が形成されない領域に塗布されたレンズ樹脂34に対して金型35を用いた露光が行われることにより、レンズ52が成型される。このとき、金型35からの光が届かず、露光されないレンズ樹脂34は硬化しない。レンズ52は、裾部16bの代わりに裾部52bを備える点が、レンズ16と異なっており、その他の構成はレンズ16と同様である。
【0042】
図7のBに示すように、金型35からレンズ52が離型される際、ガラス基板14上には、レンズ52の主部16aだけでなく、金型35からの光の屈折等により意図せず硬化された裾部52bが形成されており、撥水膜33と接触する。
【0043】
具体的には、撥水膜33によりレンズ52を形成しない領域へのレンズ樹脂34の漏れが抑制されているが、金型35からの光の屈折等によりレンズ52の端部の形状を高精度で制御することは困難である。従って、レンズ52の成型時に主部16a以外の領域に意図せずに裾部52bが形成されるが、ガラス基板51には溝部15がないため、裾部52bと撥水膜33は同一のガラス基板14上にあり、接触する。従って、この後、洗浄処理が行われ、撥水膜33とその上の未硬化のレンズ樹脂34とが除去される際、撥水膜33および未硬化のレンズ樹脂34とともに裾部52bの一部が剥離される。
【0044】
図8は、以上のようにしてレンズ52が成型された場合の一体化部の斜視図である。
図8のAは、一体化部全体の斜視図であり、
図8のBは、
図8のAの矩形R2の拡大図である。
【0045】
図8のAおよびBに示すように、一体化部53ではガラス基板51に溝部15が形成されていないので、上述したように撥水膜33および未硬化のレンズ樹脂34とともに裾部52bの一部が剥離される。従って、
図8のAおよびBに示すように、裾部52bには、裾部52bの一部がガラス基板14から剥離されることによるクラック71が発生する場合がある。
【0046】
図9は、一体化部53における理想的な裾部の周辺の断面図であり、
図10は、実際の裾部52bの周辺の断面図である。
図9のAは、理想的な裾部の周辺全体の断面図であり、
図9のBは、
図9のAの矩形R3の拡大図である。
図10のAは、実際の裾部52bの周辺全体の断面図である。
図10のBの左側は、
図10のAの矩形R4の拡大図であり、
図10のBの右側は、
図10のAの矩形R5の拡大図である。
【0047】
図9のAおよびBに示すように、レンズ52の理想的な裾部55は、クラックを有さず、ガラス基板51との密着力が高いものである。しかしながら、
図10のBの左側に示すように、実際の裾部52bは、上述したようにクラック71が発生する場合がある。この場合、クラック71によりレンズ52とガラス基板51の密着力が低下する。従って、
図10のAの右側に示すように、レンズ52が例えば矢印D方向の力を受けた際、
図10のBの右側に示すように、裾部52bのクラック71が広がり、ガラス基板51からのレンズ52の剥離、いわゆるレンズ剥がれが発生する可能性がある。
【0048】
<一体化部の第2の構成例>
図11は、本技術を適用した半導体チップの第1実施の形態における一体化部の第2の構成例を示す断面図であり、
図4の工程S7に対応する工程における一体化部を示す断面図である。
【0049】
図11のAは、一体化部90全体の断面図であり、
図11のBは、
図11のAの矩形R6の拡大図である。
図11の一体化部90において、
図1や
図4の一体化部13と対応する部分については同一の符号を付してある。従って、その部分の説明は適宜省略し、一体化部13と異なる部分に着目して説明する。
【0050】
図11の一体化部90は、ガラス基板14の代わりにガラス基板91が設けられる点が、一体化部13と異なっており、その他は一体化部13と同様に構成されている。ガラス基板91は、溝部15の代わりに溝部92が設けられる点が、ガラス基板14と異なっており、その他はガラス基板14と同様に構成されている。
【0051】
溝部92は、溝部92の側面92aが所定の傾きを有する斜面である点が、溝部15と異なっており、その他は溝部15と同様に構成されている。
図11では、溝部92の左側のレンズ16側の側面92aの水平方向に対する角度はα(0°<α<90°)であり、溝部92の右側のレンズ16側の側面92aの水平方向に対する角度はβ(0°<β<90°)である。角度αとβは同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0052】
溝部92は、溝部15と同様に、ガラス基板14の上面からL1-L2だけ低い位置に底面を有するので、
図11に示すように、この底面に塗布されている撥水膜33と裾部16bは接触しない。従って、裾部16bにクラックが発生せず、レンズ剥がれの発生を抑制することができる。
【0053】
また、溝部92の側面92aは斜面であるので、垂直面である場合に比べて側面92aに対する裾部16bの接着面積が増加する。従って、側面92aと裾部16bの密着力が向上し、その結果、レンズ剥がれの発生をより抑制することができる。
【0054】
<一体化部の第3の構成例>
図12は、本技術を適用した半導体チップの第1実施の形態における一体化部の第3の構成例を示す断面図であり、
図4の工程S7に対応する工程における一体化部を示す断面図である。
【0055】
図12のAは、一体化部110全体の断面図であり、
図12のBは、
図12のAの矩形R7の拡大図である。
図12の一体化部110において、
図1や
図4の一体化部13と対応する部分については同一の符号を付してある。従って、その部分の説明は適宜省略し、一体化部13と異なる部分に着目して説明する。
【0056】
図12の一体化部110は、ガラス基板14の代わりにガラス基板111が設けられる点が、一体化部13と異なっており、その他は一体化部13と同様に構成されている。ガラス基板111は、溝部15の代わりに溝部112が設けられる点が、ガラス基板14と異なっており、その他はガラス基板14と同様に構成されている。
【0057】
溝部112は、側面112aに光の正反射を防止する加工として梨地加工が施されている点が、溝部15と異なっており、その他は溝部15と同様に構成されている。即ち、溝部112は、側面112aの表面に凹凸面113を有している。
【0058】
溝部112は、溝部15と同様に、ガラス基板14の上面からL1-L2だけ低い位置に底面を有するので、
図12に示すように、この底面に塗布されている撥水膜33と裾部16bは接触しない。従って、裾部16bにクラックが発生せず、レンズ剥がれの発生を抑制することができる。
【0059】
また、溝部112の側面112aの表面には凹凸面113が設けられているので、レンズ16の成型時に金型35から入射されて漏れ出た光は凹凸面113で乱反射する。その結果、この漏れ出た光による裾部16bの形成を抑制することができる。
【0060】
側面112aに施される加工は、光の正反射を防止する加工であれば、梨地加工以外の加工であってもよい。
【0061】
<一体化部の第4の構成例>
図13は、本技術を適用した半導体チップの第1実施の形態における一体化部の第4の構成例を示す断面図であり、
図4の工程S7に対応する工程における一体化部を示す断面図である。
【0062】
図13のAは、一体化部130全体の断面図であり、
図13のBは、
図13のAの矩形R8の拡大図である。
図13の一体化部130において、
図1や
図4の一体化部13と対応する部分については同一の符号を付してある。従って、その部分の説明は適宜省略し、一体化部13と異なる部分に着目して説明する。
【0063】
図13の一体化部130は、ガラス基板14の代わりにガラス基板131が設けられる点が、一体化部13と異なっており、その他は一体化部13と同様に構成されている。ガラス基板131は、溝部15の代わりに溝部132が設けられる点が、ガラス基板14と異なっており、その他はガラス基板14と同様に構成されている。
【0064】
溝部132は、底面が曲面である点、および、底面の最も低い位置の厚さがL3(L1>L3)である点が、溝部15と異なっており、その他は溝部15と同様に構成されている。
【0065】
溝部132は、ガラス基板14の上面からL1-L3だけ低い位置を底面の最も低い位置とするので、溝部15と同様に、
図13に示すように、この底面に塗布されている撥水膜33と裾部16bは接触しない。従って、裾部16bにクラックが発生せず、レンズ剥がれの発生を抑制することができる。
【0066】
また、溝部132の底面は曲面になっているので、洗浄処理後に、洗浄液36とともに、撥水膜33と未硬化のレンズ樹脂34を容易に除去することができる。
【0067】
以上のように、半導体チップ10は、固体撮像素子11と、固体撮像素子11上に設置されたガラス基板14(91,111,131)と、ガラス基板14(91,111,131)上に形成されたレンズ16とを備え、ガラス基板14は、レンズ16が形成される領域の周囲に溝部15(92,112,132)を有する。
【0068】
従って、レンズ16の形成時に、撥水膜33と裾部16bが接触しない。これにより、洗浄液36とともに撥水膜33と未硬化のレンズ樹脂34を除去する際に、それらとともに裾部16bの一部が剥離され、裾部16bにクラックが発生することを抑制することができる。従って、そのクラックによりガラス基板14(91,111,131)からレンズ16が剥離することを抑制することができる。その結果、半導体チップ10の信頼性や耐久性を向上させることができる。
【0069】
なお、図示は省略するが、一体化部90(110,130)の製造方法は、
図2乃至
図4で説明した一体化部13の製造方法と同様である。また、一体化部13(90,11,130)の製造方法において、撥水膜33は形成されなくてもよい。
【0070】
<第2実施の形態>
<半導体チップの構成例>
図14は、本技術を適用した半導体チップの第2実施の形態の構成例を示す断面図である。
【0071】
図14のAは、半導体チップ140全体の断面図であり、
図14のBは、
図14のAの矩形R9の拡大図である。
図14の半導体チップ140において、
図1の半導体チップ10と対応する部分については同一の符号を付してある。従って、その部分の説明は適宜省略し、半導体チップ10と異なる部分に着目して説明する。
【0072】
図14の半導体チップ140は、一体化部13の代わりに一体化部150が設けられる点が、半導体チップ10と異なっており、その他は半導体チップ10と同様に構成されている。一体化部150は、ガラス基板14の代わりにガラス基板151が設けられる点が、一体化部13と異なっており、その他は一体化部13と同様に構成されている。ガラス基板151は、溝部15の代わりに溝部152が設けられる点が、ガラス基板14と異なっており、その他はガラス基板14と同様に構成されている。
【0073】
溝部152は、底面に対して、溝部152の底面が平面である場合に比べて表面積が増加する加工として、断面形状を鋸の歯の形状にする加工が施されている点、および、底面の最も低い位置の厚さがL4(L4>L2)である点が、溝部15と異なっており、その他は溝部15と同様に構成されている。なお、L1-L4は、裾部16bが溝部15の底面と接触するほど小さい。
【0074】
溝部152の底面は裾部16bと接触するが、溝部152の底面の断面は鋸の歯の形状であり、底面が平面である場合に比べて溝部152の底面の表面積は大きい。従って、溝部152の底面と裾部16bの密着力は、溝部152の底面が平面である場合に比べて大きい。
【0075】
なお、溝部152の底面に対して行われる加工は、底面が平面である場合に比べて表面積が増加する加工、即ち底面が凹凸を有するようにする加工であれば、どのような加工であってもよい。
【0076】
<一体化部の製造方法>
図15および
図16は、
図14の一体化部150の製造方法を説明する図である。
【0077】
【0078】
まず、
図2の工程S1乃至S3の処理と同様の工程が行われ、ガラス基板151に溝部152が形成される。次に、
図15の工程S31において、溝部152の底面に対して断面形状を鋸の歯の形状にする加工が施される。工程S32において、ガラス基板151上のレンズ16を形成する領域に、レンズ樹脂34が塗布される。
【0079】
工程S33において、レンズ樹脂34に対して金型35が押圧され、金型35を介してレンズ樹脂34に光が照射されることにより、レンズ樹脂34が露光される。これにより、主部16aの形状に対応する形状の、露光されたレンズ樹脂34が硬化され、レンズ16が成型される。即ち、ガラス基板151上のレンズ16を形成する領域に略所望の形状のレンズ16が形成される。一方、金型35からの光が届かず、露光されていないレンズ樹脂34は硬化しない。
【0080】
図16の工程S34において、金型35からレンズ16が離型される。工程S35において、ガラス基板151上に洗浄液36が注入され、洗浄処理が行われる。工程S36において、洗浄液36とともに、未硬化のレンズ樹脂34が除去され、一体化部150が製造される。
【0081】
ここで、溝部152の底面が平面である場合に比べて、溝部152の底面の表面積は大きいため、溝部152の底面と裾部16bの密着力は高い。従って、未硬化のレンズ樹脂34ととともに裾部16bが溝部152の底面から剥離され、裾部16bにクラックが発生することを抑制することができる。
【0082】
以上のようにして製造された一体化部150は、固体撮像素子11の上に、接着剤12を介して接着され、これにより半導体チップ140が製造される。なお、
図15および
図16の製造方法の例では、撥水膜が形成されないようにしたが、撥水膜が形成されるようにしてもよい。また、洗浄液36は、裾部16bと接触しない程度の厚さになるように注入されてもよい。この場合、裾部16bの剥離の発生をさらに抑制することができる。
【0083】
以上のように、半導体チップ140は、固体撮像素子11と、固体撮像素子11上に設置されたガラス基板151と、ガラス基板151上に形成されたレンズ16とを備え、ガラス基板151は、レンズ16が形成される領域の周囲に溝部152を有する。また、溝部152の底面には、溝部152の底面が平面である場合に比べて表面積が大きくなる加工が施されている。従って、溝部152の底面と裾部16bの密着力が向上する。これにより、洗浄液36とともに未硬化のレンズ樹脂34を除去する際に、未硬化のレンズ樹脂34とともに裾部16bが剥離され、裾部16bにクラックが発生することを抑制することができる。従って、そのクラックによりガラス基板151からレンズ16が剥離することを抑制することができる。その結果、半導体チップ140の信頼性や耐久性を向上させることができる。
【0084】
なお、第1実施の形態および第2実施の形態では、固体撮像素子11と一体化部13(90,110,130,150)の製造が別々に行われ、一体化部13(90,110,130,150)の製造後に固体撮像素子11に一体化部13(90,110,130,150)が接着されることにより半導体チップ10(140)が製造されたが、固体撮像素子11が形成された後、固体撮像素子11の上に一体化部13(90,110,130,150)が形成されるようにしてもよい。この場合、一体化部13(90,110,130,150)を製造する際、チャック31の上に、ガラス基板14(91,111,131,151)が接着剤12を介して接着された固体撮像素子11が設置される。
【0085】
また、第1実施の形態および第2実施の形態の溝部15(92,112,132,152)の特徴は、組み合わされてもよい。例えば、溝部112,132、および152は、溝部92と同様に側面に傾きを有していてもよい。また、溝部132および152は、溝部92と同様に側面の表面に凹凸面113を有していてもよい。
【0086】
<第3実施の形態>
<半導体チップの構成例>
図17は、本技術を適用した半導体チップの第3実施の形態の構成例を示す断面図である。
【0087】
図17の半導体チップ200において、
図1の半導体チップ10と対応する部分については同一の符号を付してある。従って、その部分の説明は適宜省略し、半導体チップ10と異なる部分に着目して説明する。
【0088】
図17の半導体チップ200は、一体化部13の代わりに一体化部210が設けられる点が、半導体チップ10と異なっており、その他は半導体チップ10と同様に構成されている。一体化部210は、バッファ層211とARコート212が新たに設けられる点が、一体化部13と異なっており、その他は一体化部13と同様に構成されている。
【0089】
バッファ層211は、ARコート212とレンズ16の間に形成される。バッファ層211は、レンズ16の側面と上面を覆い、溝部15を含む、ガラス基板14のレンズ16が形成されない領域の上にも形成されている。バッファ層211は、外部からARコート212を介して入射された光をレンズ16に透過させる際にその光に影響を与えない程度の低い屈折率、例えばレンズ16と同一または少し高い屈折率を有する。また、バッファ層211は、ARコートの変形を抑制可能な程度に硬い。バッファ層211としては、SiO2,SiON等の膜を用いることができる。
【0090】
ARコート212は、反射防止膜であり、バッファ層211の全面を覆っている。ARコート212は、TiOx,TaOx,NbOx等のうちの少なくとも1つからなる高屈折率膜と、SiOx,SiON等のうちの少なくとも1つからなる低屈折率膜とが交互に積層された4層構造を有する。
【0091】
以上のように、半導体チップ200は、レンズ16とARコート212の間にバッファ層211を備える。これにより、半導体チップ200の信頼性評価のために、温度サイクル(TC(Temperature Cycle))試験、高温高湿保存(THS(Temperature Humidity Storage))試験等が行われる際、ARコート212が破損することを抑制することができる。
【0092】
具体的には、レンズ16とARコート212の間にバッファ層211が設けられない場合、半導体チップ200に対して温度サイクル試験等が行われると、レンズ16とARコート212の熱応力差によりARコート212が変形し、破損する恐れがある。また、バッファ層211が設けられない場合、半導体チップ200に対して高温高質保存試験等が行われると、レンズ16が水分を吸収して膨潤し、ARコート212が破損する恐れがある。
【0093】
従って、半導体チップ200では、レンズ16とARコート212の間にバッファ層211を挿入し、緩衝材として機能させることにより、温度サイクル試験等による熱変形および高温高質保存試験等によるレンズ16への水分の侵入を抑制する。その結果、ARコート212の破損が抑制され、半導体チップ200の信頼性を確保することができる。例えば、500時間以上の温度サイクル試験や高温高質保存試験における信頼性を確保することができる。
【0094】
なお、説明は省略するが、一体化部210の製造方法は、後述する第4実施の形態の一体化部の製造方法と同様である。
【0095】
<第4実施の形態>
<半導体チップの第1の構成例>
図18は、本技術を適用した半導体チップの第4実施の形態の第1の構成例を示す図である。
【0096】
図18のAは、半導体チップ300の上面図であり、
図18のBは、半導体チップ300の断面図である。
図18の半導体チップ300において、
図17の半導体チップ200と対応する部分については同一の符号を付してある。従って、その部分の説明は適宜省略し、半導体チップ200と異なる部分に着目して説明する。
【0097】
図18の半導体チップ300は、一体化部210の代わりに一体化部310が設けられる点が、半導体チップ200と異なっており、その他は半導体チップ200と同様に構成されている。一体化部310は、レンズ16の代わりにレンズ311が設けられる点が、一体化部210と異なっており、その他は一体化部210と同様に構成されている。レンズ311は、アクリルレンズである。レンズ311は、角型で凹形の主部311aと、製造時に端部に意図せずに形成される裾部311bとを有する。
【0098】
<製造方法の説明>
図19は、
図18の半導体チップ300の製造方法を説明する図である。
【0099】
図19の工程S51において、レンズ311に対してプラズマ処理が行われる。このレンズ311は、接着剤12を介して固体撮像素子11に接着され、
図2の工程S1乃至S3と同様の工程により溝部15が形成されたガラス基板14に、
図3および
図4の工程S4乃至S9と同様の工程により形成されたものである。
【0100】
工程S52において、レンズ311の上面および側面、並びにガラス基板14のレンズ311が形成されていない領域の上に、スパッタ等によりバッファ層211が成膜される。このバッファ層211の厚みは、自重で破損しない程度の厚みであり、例えば、400nm~1100nmの任意の値をとり得るが、ここでは800nmとする。また、バッファ層211の側面の厚みは、水の侵入を抑制するために必要な厚み、例えば上面の厚みの60%以上である。バッファ層211の成膜はスパッタ以外の方法であってもよいが、スパッタである場合低温で成膜しやすい。
【0101】
工程S53において、工程S52において形成されたバッファ層211の全面にARコート212が成膜され、半導体チップ300が製造される。
【0102】
なお、
図19においてチャック31は省略されているが、固体撮像素子11は、チャック等に設置される。このことは、後述する
図21においても同様である。
【0103】
以上のように、半導体チップ300は、レンズ311とARコート212の間にバッファ層211を備える。従って、半導体チップ200と同様に、ARコート212の破損を抑制し、半導体チップ300の信頼性を確保することができる。
【0104】
<半導体チップの第2の構成例>
図20は、本技術を適用した半導体チップの第4実施の形態の第2の構成例を示す図である。
【0105】
図20のAは、半導体チップ330の上面図であり、
図20のBは、半導体チップ330の断面図である。
図20の半導体チップ330において、
図18の半導体チップ300と対応する部分については同一の符号を付してある。従って、その部分の説明は適宜省略し、半導体チップ300と異なる部分に着目して説明する。
【0106】
図20の半導体チップ330は、一体化部310の代わりに一体化部340が設けられる点が、半導体チップ300と異なっており、その他は半導体チップ300と同様に構成されている。一体化部340は、ARコート212の代わりにARコート341が設けられる点が、一体化部310と異なっており、その他は一体化部310と同様に構成されている。
【0107】
ARコート341は、バッファ層211の全面ではなく、レンズ311の上面に形成されたバッファ層211のみを覆っている。即ち、レンズ311の側面およびガラス基板14のレンズ311が形成されない領域の上には、バッファ層211のみが形成されている。
【0108】
<製造方法の説明>
図21は、
図20の半導体チップ330の製造方法を説明する図である。
【0109】
図21の工程S71およびS72は、
図19の工程S51およびS52と同様であるので、説明は省略する。工程S73において、工程S72において形成されたバッファ層211のうちの、レンズ311の上面のバッファ層211の上にARコート212が成膜され、半導体チップ330が製造される。
【0110】
以上のように、半導体チップ330は、レンズ311とARコート341の間にバッファ層211を備える。従って、半導体チップ200と同様に、ARコート212の破損を抑制し、半導体チップ300の信頼性を確保することができる。
【0111】
また、半導体チップ330では、レンズ311の側面のバッファ層211の上にはARコート212が形成されないので、半導体チップ300の製造を容易に行うことができる。一方、レンズ311の側面(側壁)は光学特性に影響しないため、半導体チップ330は、レンズ311の側面のバッファ層211の上にARコート212を有さないが、半導体チップ300と同様の光学特性を有することができる。また、バッファ層211は、レンズ311の側面を覆うため、高温高質保存試験等によるレンズ311への水分の侵入を抑制することができる。
【0112】
その結果、例えば、高屈折率膜等の水平方向(レンズ311の側面に垂直な方向)の成膜が困難である場合であっても、半導体チップ300と同様の光学特性と信頼性を有する半導体チップ330を製造することができる。
【0113】
なお、第4実施の形態では、固体撮像素子11の形成後に一体化部310(340)が形成されるようにしたが、第1実施の形態および第2実施の形態と同様に、固体撮像素子11と一体化部310(340)の製造が別々に行われ、一体化部310(330)の製造後に固体撮像素子11に一体化部310(340)が接着されることにより半導体チップ300(330)が製造されるようにしてもよい。
【0114】
また、ARコート212および341の層数は4層に限定されず、何層であってもよい。レンズ16およびレンズ311は、アクリルレンズ以外のレンズであってもよい。
【0115】
さらに、第3実施の形態および第4実施の形態では、半導体チップ200(300,330)が溝部15を有するようにしたが、上述した他の溝部92,112,132、または152を有するようにしてもよい。
【0116】
上述した
図1、
図14、および
図17乃至
図21では、固体撮像素子11の構造を簡略化して記載したが、実際には、固体撮像素子11は、積層構造を有する。
【0117】
<固体撮像素子の第1の積層構造例>
図22を参照して、半導体チップ10における固体撮像素子11の第1の積層構造例について詳細に説明する。
図22は、半導体チップ10の一部分を拡大して示した断面図である。
図22の半導体チップ10において、
図1と対応する部分については同一の符号を付してあり、説明は繰り返しになるので、適宜省略する。
【0118】
図22の固体撮像素子11の積層基板11aは、下側基板401と上側基板402とが積層されて構成される。下側基板401には、例えばシリコン(Si)で構成された半導体基板421の上側(上側基板402側)に、多層配線層422が形成されている。この多層配線層422により、画素ごとに光電変換を行う画素部から出力された画素信号を処理する信号処理回路などのロジック回路や画素部の制御を行う制御回路が構成されている。なお、制御回路は、上側基板402に構成されるようにしてもよい。
【0119】
多層配線層422は、上側基板402に最も近い最上層の配線層423a、中間の配線層423b、及び、半導体基板421に最も近い最下層の配線層423cなどからなる複数の配線層423と、各配線層423の間に形成された層間絶縁膜424とで構成される。
【0120】
複数の配線層423は、例えば、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、タングステン(W)などを用いて形成され、層間絶縁膜424は、例えば、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜などで形成される。複数の配線層423及び層間絶縁膜424のそれぞれは、全ての階層が同一の材料で形成されていてもよし、階層によって2つ以上の材料を使い分けてもよい。
【0121】
半導体基板421の所定の位置には、半導体基板421を貫通するシリコン貫通孔425が形成されており、シリコン貫通孔425の内壁に、絶縁膜426を介して接続導体427が埋め込まれることにより、シリコン貫通電極(TSV:Through Silicon Via)428が形成されている。絶縁膜426は、例えば、SiO2膜やSiN膜などで形成することができる。
【0122】
なお、
図22に示されるシリコン貫通電極428では、内壁面に沿って絶縁膜426と接続導体427が成膜され、シリコン貫通孔425内部が空洞となっているが、内径によってはシリコン貫通孔425内部全体が接続導体427で埋め込まれることもある。換言すれば、貫通孔の内部が導体で埋め込まれていても、一部が空洞となっていてもどちらでもよい。このことは、後述するチップ貫通電極(TCV:Through Chip Via)458などについても同様である。
【0123】
シリコン貫通電極428の接続導体427は、半導体基板421の下面側に形成された再配線429と接続されており、再配線429は、はんだボール430と接続されている。接続導体427及び再配線429は、例えば、銅(Cu)、タングステン(W)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、チタンタングステン合金(TiW)、ポリシリコンなどで形成することができる。
【0124】
また、半導体基板421の下面側には、はんだボール430が形成されている領域を除いて、再配線429と絶縁膜426を覆うように、ソルダマスク(ソルダレジスト)431が形成されている。
【0125】
一方、上側基板402には、シリコン(Si)で構成された半導体基板451の下側(下側基板401側)に、多層配線層452が形成されている。この多層配線層452により、画素部の回路が構成されている。
【0126】
多層配線層452は、半導体基板451に最も近い最上層の配線層453a、中間の配線層453b、及び、下側基板401に最も近い最下層の配線層453cなどからなる複数の配線層453と、各配線層453の間に形成された層間絶縁膜454とで構成される。
【0127】
複数の配線層453及び層間絶縁膜454として使用される材料は、上述した配線層423及び層間絶縁膜424の材料と同種のものを採用することができる。また、複数の配線層453や層間絶縁膜454が、1または2つ以上の材料を使い分けて形成されてもよい点も、上述した配線層423及び層間絶縁膜424と同様である。
【0128】
なお、
図22の例では、上側基板402の多層配線層452は3層の配線層453で構成され、下側基板401の多層配線層422は4層の配線層423で構成されているが、配線層の総数はこれに限られず、任意の層数で形成することができる。
【0129】
半導体基板451の上面には、PN接合により形成された、光電変換素子としてのフォトダイオード455が画素ごとに2次元状に配列された受光面が設けられる。フォトダイオード455は、受光量に応じた電荷(信号電荷)を生成し、蓄積する。
【0130】
また、図示は省略されているが、半導体基板451と多層配線層452には、画素部を構成する、フォトダイオード455以外の、複数の画素トランジスタやメモリ部なども形成されている。
【0131】
R(赤)、G(緑)、またはB(青)のカラーフィルタ456とオンチップレンズ11bが形成されていない半導体基板451の所定の位置には、上側基板402の配線層453aと接続されているシリコン貫通電極457と、下側基板401の配線層423aと接続されているチップ貫通電極458が、形成されている。
【0132】
シリコン貫通電極457とチップ貫通電極458は、半導体基板451上面に形成された接続用配線459で接続されている。また、シリコン貫通電極457及びチップ貫通電極458のそれぞれと半導体基板451との間には、絶縁膜460が形成されている。さらに、半導体基板451の上面には、絶縁膜(平坦化膜)461を介して、カラーフィルタ456やオンチップレンズ11bが形成されている。
【0133】
以上のように、固体撮像素子11の積層基板11aは、下側基板401の多層配線層422側と、上側基板402の多層配線層452側とを貼り合わせた積層構造となっている。
図22では、下側基板401の多層配線層422と、上側基板402の多層配線層452との貼り合わせ面が、破線で示されている。
【0134】
また、積層基板11aでは、上側基板402の配線層453と下側基板401の配線層423が、シリコン貫通電極457とチップ貫通電極458の2本の貫通電極により接続され、下側基板401の配線層423とはんだボール(裏面電極)430が、シリコン貫通電極428と再配線429により接続されている。これにより、固体撮像素子11の平面積を、極限まで小さくすることができる。従って、半導体チップ10を小型化することができる。
【0135】
<固体撮像素子の第2の積層構造例>
図23は、半導体チップ10における固体撮像素子11の第2の積層構造例の詳細を説明する図であり、半導体チップ10の一部分を拡大して示した断面図である。
【0136】
図23の固体撮像素子11において、
図22と対応する部分については同一の符号を付してある。従って、その部分の説明は適宜省略し、
図22の固体撮像素子11と異なる部分に着目して説明する。
【0137】
図23の固体撮像素子11では、下側基板401と上側基板402の接続方法が、
図22の基本構造と異なる。
【0138】
即ち、
図22の固体撮像素子11では、下側基板401と上側基板402が、シリコン貫通電極457とチップ貫通電極458の2本の貫通電極を用いて接続されていたのに対して、
図23の固体撮像素子11では、下側基板401の多層配線層422内の最上層の配線層423aと、上側基板402の多層配線層452内の最下層の配線層453cの金属結合(Cu-Cu接合)により接続されている。
【0139】
図23の固体撮像素子11下側のはんだボール430との接続方法は、
図22の固体撮像素子11と同様である。すなわち、シリコン貫通電極428が下側基板401の最下層の配線層423cと接続されることにより、はんだボール430と積層基板11a内の配線層423及び配線層453とが接続されている。
【0140】
一方、
図23の固体撮像素子11においては、半導体基板421の下面側に、はんだボール430が接続される再配線429と同一層に、電気的にはどこにも接続されていないダミー配線511が、再配線429と同一の配線材料で形成されている点が、
図22の固体撮像素子11と異なる。
【0141】
このダミー配線511は、下側基板401側の最上層の配線層423aと、上側基板402側の最下層の配線層453cの金属結合(Cu-Cu接合)時の凹凸の影響を低減するためのものである。すなわち、Cu-Cu接合を行う際に、半導体基板421の下面の一部の領域のみに再配線429が形成されていると、再配線429の有無による厚みの差で凹凸が発生する。従って、ダミー配線511を設けることで、凹凸の影響を低減することができる。
【0142】
なお、図示は省略するが、半導体チップ140,200,300、および330における固体撮像素子11の構造も、
図22や
図23の固体撮像素子11と同様である。また、第1乃至第4実施の形態では、固体撮像素子11が積層構造を有する裏面照射型のCISであるものとしたが、本発明は、積層構造を有しないCISや表面照射型のCISにも適用することができる。
【0143】
<5.電子機器への適用例>
上述した半導体チップ10(140,200,300,330)は、例えば、デジタルスチルカメラやデジタルビデオカメラなどの撮像装置、撮像機能を備えた携帯電話機、または、撮像機能を備えた他の機器といった各種の電子機器に適用することができる。
【0144】
図24は、本技術を適用した電子機器としての撮像装置の構成例を示すブロック図である。
【0145】
図24に示される撮像装置1001は、光学系1002、シャッタ装置1003、固体撮像装置1004、駆動回路1005、信号処理回路1006、モニタ1007、およびメモリ1008を備えて構成され、静止画像および動画像を撮像可能である。
【0146】
光学系1002は、1枚または複数枚のレンズを有して構成され、被写体からの光(入射光)を固体撮像装置1004に導き、固体撮像装置1004の受光面に結像させる。
【0147】
シャッタ装置1003は、光学系1002および固体撮像装置1004の間に配置され、駆動回路1005の制御に従って、固体撮像装置1004への光照射期間および遮光期間を制御する。
【0148】
固体撮像装置1004は、上述した半導体チップ10(140,200,300,330)により構成される。固体撮像装置1004は、光学系1002およびシャッタ装置1003を介して受光面に結像される光に応じて、一定期間、信号電荷を蓄積する。固体撮像装置1004に蓄積された信号電荷は、駆動回路1005から供給される駆動信号(タイミング信号)に従って転送される。
【0149】
駆動回路1005は、固体撮像装置1004の転送動作、および、シャッタ装置1003のシャッタ動作を制御する駆動信号を出力して、固体撮像装置1004およびシャッタ装置1003を駆動する。
【0150】
信号処理回路1006は、固体撮像装置1004から出力された信号電荷に対して各種の信号処理を施す。信号処理回路1006が信号処理を施すことにより得られた画像(画像データ)は、モニタ1007に供給されて表示されたり、メモリ1008に供給されて記憶(記録)されたりする。
【0151】
このように構成されている撮像装置1001においても、固体撮像装置1004として、半導体チップ10(140,200,300,330)を適用することにより、撮像装置1001の信頼性や耐久性を向上させることができる。
【0152】
<6.半導体チップの使用例>
図25は、上述の半導体チップ10(140,200,300,330)を使用する使用例を示す図である。
【0153】
上述した半導体チップ10(140,200,300,330)は、例えば、以下のように、可視光や、赤外光、紫外光、X線等の光をセンシングする様々なケースに使用することができる。
【0154】
・ディジタルカメラや、カメラ機能付きの携帯機器等の、鑑賞の用に供される画像を撮影する装置
・自動停止等の安全運転や、運転者の状態の認識等のために、自動車の前方や後方、周囲、車内等を撮影する車載用センサ、走行車両や道路を監視する監視カメラ、車両間等の測距を行う測距センサ等の、交通の用に供される装置
・ユーザのジェスチャを撮影して、そのジェスチャに従った機器操作を行うために、TVや、冷蔵庫、エアーコンディショナ等の家電に供される装置
・内視鏡や、赤外光の受光による血管撮影を行う装置等の、医療やヘルスケアの用に供される装置
・防犯用途の監視カメラや、人物認証用途のカメラ等の、セキュリティの用に供される装置
・肌を撮影する肌測定器や、頭皮を撮影するマイクロスコープ等の、美容の用に供される装置
・スポーツ用途等向けのアクションカメラやウェアラブルカメラ等の、スポーツの用に供される装置
・畑や作物の状態を監視するためのカメラ等の、農業の用に供される装置
【0155】
<7.内視鏡手術システムへの応用例>
本開示に係る技術(本技術)は、様々な製品へ応用することができる。例えば、本開示に係る技術は、内視鏡手術システムに適用されてもよい。
【0156】
図26は、本開示に係る技術(本技術)が適用され得る内視鏡手術システムの概略的な構成の一例を示す図である。
【0157】
図26では、術者(医師)11131が、内視鏡手術システム11000を用いて、患者ベッド11133上の患者11132に手術を行っている様子が図示されている。図示するように、内視鏡手術システム11000は、内視鏡11100と、気腹チューブ11111やエネルギー処置具11112等の、その他の術具11110と、内視鏡11100を支持する支持アーム装置11120と、内視鏡下手術のための各種の装置が搭載されたカート11200と、から構成される。
【0158】
内視鏡11100は、先端から所定の長さの領域が患者11132の体腔内に挿入される鏡筒11101と、鏡筒11101の基端に接続されるカメラヘッド11102と、から構成される。図示する例では、硬性の鏡筒11101を有するいわゆる硬性鏡として構成される内視鏡11100を図示しているが、内視鏡11100は、軟性の鏡筒を有するいわゆる軟性鏡として構成されてもよい。
【0159】
鏡筒11101の先端には、対物レンズが嵌め込まれた開口部が設けられている。内視鏡11100には光源装置11203が接続されており、当該光源装置11203によって生成された光が、鏡筒11101の内部に延設されるライトガイドによって当該鏡筒の先端まで導光され、対物レンズを介して患者11132の体腔内の観察対象に向かって照射される。なお、内視鏡11100は、直視鏡であってもよいし、斜視鏡又は側視鏡であってもよい。
【0160】
カメラヘッド11102の内部には光学系及び撮像素子が設けられており、観察対象からの反射光(観察光)は当該光学系によって当該撮像素子に集光される。当該撮像素子によって観察光が光電変換され、観察光に対応する電気信号、すなわち観察像に対応する画像信号が生成される。当該画像信号は、RAWデータとしてカメラコントロールユニット(CCU: Camera Control Unit)11201に送信される。
【0161】
CCU11201は、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等によって構成され、内視鏡11100及び表示装置11202の動作を統括的に制御する。さらに、CCU11201は、カメラヘッド11102から画像信号を受け取り、その画像信号に対して、例えば現像処理(デモザイク処理)等の、当該画像信号に基づく画像を表示するための各種の画像処理を施す。
【0162】
表示装置11202は、CCU11201からの制御により、当該CCU11201によって画像処理が施された画像信号に基づく画像を表示する。
【0163】
光源装置11203は、例えばLED(Light Emitting Diode)等の光源から構成され、術部等を撮影する際の照射光を内視鏡11100に供給する。
【0164】
入力装置11204は、内視鏡手術システム11000に対する入力インタフェースである。ユーザは、入力装置11204を介して、内視鏡手術システム11000に対して各種の情報の入力や指示入力を行うことができる。例えば、ユーザは、内視鏡11100による撮像条件(照射光の種類、倍率及び焦点距離等)を変更する旨の指示等を入力する。
【0165】
処置具制御装置11205は、組織の焼灼、切開又は血管の封止等のためのエネルギー処置具11112の駆動を制御する。気腹装置11206は、内視鏡11100による視野の確保及び術者の作業空間の確保の目的で、患者11132の体腔を膨らめるために、気腹チューブ11111を介して当該体腔内にガスを送り込む。レコーダ11207は、手術に関する各種の情報を記録可能な装置である。プリンタ11208は、手術に関する各種の情報を、テキスト、画像又はグラフ等各種の形式で印刷可能な装置である。
【0166】
なお、内視鏡11100に術部を撮影する際の照射光を供給する光源装置11203は、例えばLED、レーザ光源又はこれらの組み合わせによって構成される白色光源から構成することができる。RGBレーザ光源の組み合わせにより白色光源が構成される場合には、各色(各波長)の出力強度及び出力タイミングを高精度に制御することができるため、光源装置11203において撮像画像のホワイトバランスの調整を行うことができる。また、この場合には、RGBレーザ光源それぞれからのレーザ光を時分割で観察対象に照射し、その照射タイミングに同期してカメラヘッド11102の撮像素子の駆動を制御することにより、RGBそれぞれに対応した画像を時分割で撮像することも可能である。当該方法によれば、当該撮像素子にカラーフィルタを設けなくても、カラー画像を得ることができる。
【0167】
また、光源装置11203は、出力する光の強度を所定の時間ごとに変更するようにその駆動が制御されてもよい。その光の強度の変更のタイミングに同期してカメラヘッド11102の撮像素子の駆動を制御して時分割で画像を取得し、その画像を合成することにより、いわゆる黒つぶれ及び白とびのない高ダイナミックレンジの画像を生成することができる。
【0168】
また、光源装置11203は、特殊光観察に対応した所定の波長帯域の光を供給可能に構成されてもよい。特殊光観察では、例えば、体組織における光の吸収の波長依存性を利用して、通常の観察時における照射光(すなわち、白色光)に比べて狭帯域の光を照射することにより、粘膜表層の血管等の所定の組織を高コントラストで撮影する、いわゆる狭帯域光観察(Narrow Band Imaging)が行われる。あるいは、特殊光観察では、励起光を照射することにより発生する蛍光により画像を得る蛍光観察が行われてもよい。蛍光観察では、体組織に励起光を照射し当該体組織からの蛍光を観察すること(自家蛍光観察)、又はインドシアニングリーン(ICG)等の試薬を体組織に局注するとともに当該体組織にその試薬の蛍光波長に対応した励起光を照射し蛍光像を得ること等を行うことができる。光源装置11203は、このような特殊光観察に対応した狭帯域光及び/又は励起光を供給可能に構成され得る。
【0169】
図27は、
図26に示すカメラヘッド11102及びCCU11201の機能構成の一例を示すブロック図である。
【0170】
カメラヘッド11102は、レンズユニット11401と、撮像部11402と、駆動部11403と、通信部11404と、カメラヘッド制御部11405と、を有する。CCU11201は、通信部11411と、画像処理部11412と、制御部11413と、を有する。カメラヘッド11102とCCU11201とは、伝送ケーブル11400によって互いに通信可能に接続されている。
【0171】
レンズユニット11401は、鏡筒11101との接続部に設けられる光学系である。鏡筒11101の先端から取り込まれた観察光は、カメラヘッド11102まで導光され、当該レンズユニット11401に入射する。レンズユニット11401は、ズームレンズ及びフォーカスレンズを含む複数のレンズが組み合わされて構成される。
【0172】
撮像部11402は、撮像素子で構成される。撮像部11402を構成する撮像素子は、1つ(いわゆる単板式)であってもよいし、複数(いわゆる多板式)であってもよい。撮像部11402が多板式で構成される場合には、例えば各撮像素子によってRGBそれぞれに対応する画像信号が生成され、それらが合成されることによりカラー画像が得られてもよい。あるいは、撮像部11402は、3D(Dimensional)表示に対応する右目用及び左目用の画像信号をそれぞれ取得するための1対の撮像素子を有するように構成されてもよい。3D表示が行われることにより、術者11131は術部における生体組織の奥行きをより正確に把握することが可能になる。なお、撮像部11402が多板式で構成される場合には、各撮像素子に対応して、レンズユニット11401も複数系統設けられ得る。
【0173】
また、撮像部11402は、必ずしもカメラヘッド11102に設けられなくてもよい。例えば、撮像部11402は、鏡筒11101の内部に、対物レンズの直後に設けられてもよい。
【0174】
駆動部11403は、アクチュエータによって構成され、カメラヘッド制御部11405からの制御により、レンズユニット11401のズームレンズ及びフォーカスレンズを光軸に沿って所定の距離だけ移動させる。これにより、撮像部11402による撮像画像の倍率及び焦点が適宜調整され得る。
【0175】
通信部11404は、CCU11201との間で各種の情報を送受信するための通信装置によって構成される。通信部11404は、撮像部11402から得た画像信号をRAWデータとして伝送ケーブル11400を介してCCU11201に送信する。
【0176】
また、通信部11404は、CCU11201から、カメラヘッド11102の駆動を制御するための制御信号を受信し、カメラヘッド制御部11405に供給する。当該制御信号には、例えば、撮像画像のフレームレートを指定する旨の情報、撮像時の露出値を指定する旨の情報、並びに/又は撮像画像の倍率及び焦点を指定する旨の情報等、撮像条件に関する情報が含まれる。
【0177】
なお、上記のフレームレートや露出値、倍率、焦点等の撮像条件は、ユーザによって適宜指定されてもよいし、取得された画像信号に基づいてCCU11201の制御部11413によって自動的に設定されてもよい。後者の場合には、いわゆるAE(Auto Exposure)機能、AF(Auto Focus)機能及びAWB(Auto White Balance)機能が内視鏡11100に搭載されていることになる。
【0178】
カメラヘッド制御部11405は、通信部11404を介して受信したCCU11201からの制御信号に基づいて、カメラヘッド11102の駆動を制御する。
【0179】
通信部11411は、カメラヘッド11102との間で各種の情報を送受信するための通信装置によって構成される。通信部11411は、カメラヘッド11102から、伝送ケーブル11400を介して送信される画像信号を受信する。
【0180】
また、通信部11411は、カメラヘッド11102に対して、カメラヘッド11102の駆動を制御するための制御信号を送信する。画像信号や制御信号は、電気通信や光通信等によって送信することができる。
【0181】
画像処理部11412は、カメラヘッド11102から送信されたRAWデータである画像信号に対して各種の画像処理を施す。
【0182】
制御部11413は、内視鏡11100による術部等の撮像、及び、術部等の撮像により得られる撮像画像の表示に関する各種の制御を行う。例えば、制御部11413は、カメラヘッド11102の駆動を制御するための制御信号を生成する。
【0183】
また、制御部11413は、画像処理部11412によって画像処理が施された画像信号に基づいて、術部等が映った撮像画像を表示装置11202に表示させる。この際、制御部11413は、各種の画像認識技術を用いて撮像画像内における各種の物体を認識してもよい。例えば、制御部11413は、撮像画像に含まれる物体のエッジの形状や色等を検出することにより、鉗子等の術具、特定の生体部位、出血、エネルギー処置具11112の使用時のミスト等を認識することができる。制御部11413は、表示装置11202に撮像画像を表示させる際に、その認識結果を用いて、各種の手術支援情報を当該術部の画像に重畳表示させてもよい。手術支援情報が重畳表示され、術者11131に提示されることにより、術者11131の負担を軽減することや、術者11131が確実に手術を進めることが可能になる。
【0184】
カメラヘッド11102及びCCU11201を接続する伝送ケーブル11400は、電気信号の通信に対応した電気信号ケーブル、光通信に対応した光ファイバ、又はこれらの複合ケーブルである。
【0185】
ここで、図示する例では、伝送ケーブル11400を用いて有線で通信が行われていたが、カメラヘッド11102とCCU11201との間の通信は無線で行われてもよい。
【0186】
以上、本開示に係る技術が適用され得る内視鏡手術システムの一例について説明した。本開示に係る技術は、以上説明した構成のうち、撮像部11402等に適用され得る。具体的には、半導体チップ10(140,200,300,330)は、撮像部11402に適用することができる。撮像部11402に本開示に係る技術を適用することにより、撮像部11402の信頼性や耐久性を向上させることができる。
【0187】
なお、ここでは、一例として内視鏡手術システムについて説明したが、本開示に係る技術は、その他、例えば、顕微鏡手術システム等に適用されてもよい。
【0188】
<8.移動体への応用例>
本開示に係る技術(本技術)は、様々な製品へ応用することができる。例えば、本開示に係る技術は、自動車、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、自動二輪車、自転車、パーソナルモビリティ、飛行機、ドローン、船舶、ロボット等のいずれかの種類の移動体に搭載される装置として実現されてもよい。
【0189】
図28は、本開示に係る技術が適用され得る移動体制御システムの一例である車両制御システムの概略的な構成例を示すブロック図である。
【0190】
車両制御システム12000は、通信ネットワーク12001を介して接続された複数の電子制御ユニットを備える。
図28に示した例では、車両制御システム12000は、駆動系制御ユニット12010、ボディ系制御ユニット12020、車外情報検出ユニット12030、車内情報検出ユニット12040、及び統合制御ユニット12050を備える。また、統合制御ユニット12050の機能構成として、マイクロコンピュータ12051、音声画像出力部12052、及び車載ネットワークI/F(interface)12053が図示されている。
【0191】
駆動系制御ユニット12010は、各種プログラムにしたがって車両の駆動系に関連する装置の動作を制御する。例えば、駆動系制御ユニット12010は、内燃機関又は駆動用モータ等の車両の駆動力を発生させるための駆動力発生装置、駆動力を車輪に伝達するための駆動力伝達機構、車両の舵角を調節するステアリング機構、及び、車両の制動力を発生させる制動装置等の制御装置として機能する。
【0192】
ボディ系制御ユニット12020は、各種プログラムにしたがって車体に装備された各種装置の動作を制御する。例えば、ボディ系制御ユニット12020は、キーレスエントリシステム、スマートキーシステム、パワーウィンドウ装置、あるいは、ヘッドランプ、バックランプ、ブレーキランプ、ウィンカー又はフォグランプ等の各種ランプの制御装置として機能する。この場合、ボディ系制御ユニット12020には、鍵を代替する携帯機から発信される電波又は各種スイッチの信号が入力され得る。ボディ系制御ユニット12020は、これらの電波又は信号の入力を受け付け、車両のドアロック装置、パワーウィンドウ装置、ランプ等を制御する。
【0193】
車外情報検出ユニット12030は、車両制御システム12000を搭載した車両の外部の情報を検出する。例えば、車外情報検出ユニット12030には、撮像部12031が接続される。車外情報検出ユニット12030は、撮像部12031に車外の画像を撮像させるとともに、撮像された画像を受信する。車外情報検出ユニット12030は、受信した画像に基づいて、人、車、障害物、標識又は路面上の文字等の物体検出処理又は距離検出処理を行ってもよい。
【0194】
撮像部12031は、光を受光し、その光の受光量に応じた電気信号を出力する光センサである。撮像部12031は、電気信号を画像として出力することもできるし、測距の情報として出力することもできる。また、撮像部12031が受光する光は、可視光であっても良いし、赤外線等の非可視光であっても良い。
【0195】
車内情報検出ユニット12040は、車内の情報を検出する。車内情報検出ユニット12040には、例えば、運転者の状態を検出する運転者状態検出部12041が接続される。運転者状態検出部12041は、例えば運転者を撮像するカメラを含み、車内情報検出ユニット12040は、運転者状態検出部12041から入力される検出情報に基づいて、運転者の疲労度合い又は集中度合いを算出してもよいし、運転者が居眠りをしていないかを判別してもよい。
【0196】
マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030又は車内情報検出ユニット12040で取得される車内外の情報に基づいて、駆動力発生装置、ステアリング機構又は制動装置の制御目標値を演算し、駆動系制御ユニット12010に対して制御指令を出力することができる。例えば、マイクロコンピュータ12051は、車両の衝突回避あるいは衝撃緩和、車間距離に基づく追従走行、車速維持走行、車両の衝突警告、又は車両のレーン逸脱警告等を含むADAS(Advanced Driver Assistance System)の機能実現を目的とした協調制御を行うことができる。
【0197】
また、マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030又は車内情報検出ユニット12040で取得される車両の周囲の情報に基づいて駆動力発生装置、ステアリング機構又は制動装置等を制御することにより、運転者の操作に拠らずに自律的に走行する自動運転等を目的とした協調制御を行うことができる。
【0198】
また、マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030で取得される車外の情報に基づいて、ボディ系制御ユニット12020に対して制御指令を出力することができる。例えば、マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030で検知した先行車又は対向車の位置に応じてヘッドランプを制御し、ハイビームをロービームに切り替える等の防眩を図ることを目的とした協調制御を行うことができる。
【0199】
音声画像出力部12052は、車両の搭乗者又は車外に対して、視覚的又は聴覚的に情報を通知することが可能な出力装置へ音声及び画像のうちの少なくとも一方の出力信号を送信する。
図28の例では、出力装置として、オーディオスピーカ12061、表示部12062及びインストルメントパネル12063が例示されている。表示部12062は、例えば、オンボードディスプレイ及びヘッドアップディスプレイの少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0200】
図29は、撮像部12031の設置位置の例を示す図である。
【0201】
図29では、車両12100は、撮像部12031として、撮像部12101,12102,12103,12104,12105を有する。
【0202】
撮像部12101,12102,12103,12104,12105は、例えば、車両12100のフロントノーズ、サイドミラー、リアバンパ、バックドア及び車室内のフロントガラスの上部等の位置に設けられる。フロントノーズに備えられる撮像部12101及び車室内のフロントガラスの上部に備えられる撮像部12105は、主として車両12100の前方の画像を取得する。サイドミラーに備えられる撮像部12102,12103は、主として車両12100の側方の画像を取得する。リアバンパ又はバックドアに備えられる撮像部12104は、主として車両12100の後方の画像を取得する。撮像部12101及び12105で取得される前方の画像は、主として先行車両又は、歩行者、障害物、信号機、交通標識又は車線等の検出に用いられる。
【0203】
なお、
図29には、撮像部12101ないし12104の撮影範囲の一例が示されている。撮像範囲12111は、フロントノーズに設けられた撮像部12101の撮像範囲を示し、撮像範囲12112,12113は、それぞれサイドミラーに設けられた撮像部12102,12103の撮像範囲を示し、撮像範囲12114は、リアバンパ又はバックドアに設けられた撮像部12104の撮像範囲を示す。例えば、撮像部12101ないし12104で撮像された画像データが重ね合わせられることにより、車両12100を上方から見た俯瞰画像が得られる。
【0204】
撮像部12101ないし12104の少なくとも1つは、距離情報を取得する機能を有していてもよい。例えば、撮像部12101ないし12104の少なくとも1つは、複数の撮像素子からなるステレオカメラであってもよいし、位相差検出用の画素を有する撮像素子であってもよい。
【0205】
例えば、マイクロコンピュータ12051は、撮像部12101ないし12104から得られた距離情報を基に、撮像範囲12111ないし12114内における各立体物までの距離と、この距離の時間的変化(車両12100に対する相対速度)を求めることにより、特に車両12100の進行路上にある最も近い立体物で、車両12100と略同じ方向に所定の速度(例えば、0km/h以上)で走行する立体物を先行車として抽出することができる。さらに、マイクロコンピュータ12051は、先行車の手前に予め確保すべき車間距離を設定し、自動ブレーキ制御(追従停止制御も含む)や自動加速制御(追従発進制御も含む)等を行うことができる。このように運転者の操作に拠らずに自律的に走行する自動運転等を目的とした協調制御を行うことができる。
【0206】
例えば、マイクロコンピュータ12051は、撮像部12101ないし12104から得られた距離情報を元に、立体物に関する立体物データを、2輪車、普通車両、大型車両、歩行者、電柱等その他の立体物に分類して抽出し、障害物の自動回避に用いることができる。例えば、マイクロコンピュータ12051は、車両12100の周辺の障害物を、車両12100のドライバが視認可能な障害物と視認困難な障害物とに識別する。そして、マイクロコンピュータ12051は、各障害物との衝突の危険度を示す衝突リスクを判断し、衝突リスクが設定値以上で衝突可能性がある状況であるときには、オーディオスピーカ12061や表示部12062を介してドライバに警報を出力することや、駆動系制御ユニット12010を介して強制減速や回避操舵を行うことで、衝突回避のための運転支援を行うことができる。
【0207】
撮像部12101ないし12104の少なくとも1つは、赤外線を検出する赤外線カメラであってもよい。例えば、マイクロコンピュータ12051は、撮像部12101ないし12104の撮像画像中に歩行者が存在するか否かを判定することで歩行者を認識することができる。かかる歩行者の認識は、例えば赤外線カメラとしての撮像部12101ないし12104の撮像画像における特徴点を抽出する手順と、物体の輪郭を示す一連の特徴点にパターンマッチング処理を行って歩行者か否かを判別する手順によって行われる。マイクロコンピュータ12051が、撮像部12101ないし12104の撮像画像中に歩行者が存在すると判定し、歩行者を認識すると、音声画像出力部12052は、当該認識された歩行者に強調のための方形輪郭線を重畳表示するように、表示部12062を制御する。また、音声画像出力部12052は、歩行者を示すアイコン等を所望の位置に表示するように表示部12062を制御してもよい。
【0208】
以上、本開示に係る技術が適用され得る車両制御システムの一例について説明した。本開示に係る技術は、以上説明した構成のうち、撮像部12031等に適用され得る。具体的には、半導体チップ10(140,200,300,330)は、撮像部12031に適用することができる。撮像部12031に本開示に係る技術を適用することにより、撮像部12031の信頼性や耐久性を向上させることができる。
【0209】
本技術の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本技術の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【0210】
例えば、上述した複数の実施の形態の全てまたは一部を組み合わせた形態を採用することができる。
【0211】
本明細書に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものではなく、本明細書に記載されたもの以外の効果があってもよい。
【0212】
なお、本技術は、以下の構成を取ることができる。
(1)
撮像素子と、
前記撮像素子上に設置されたガラス基板と、
前記ガラス基板上に形成されたレンズと、
を備え、
前記ガラス基板は、前記レンズが形成される領域の周囲に溝部を有する
ように構成された
半導体チップ。
(2)
前記溝部の側面は斜面である
ように構成された
前記(1)に記載の半導体チップ。
(3)
前記溝部の側面には光の正反射を防止する加工が施されている
ように構成された
前記(1)または(2)に記載の半導体チップ。
(4)
前記溝部の底面は曲面である
ように構成された
前記(1)乃至(3)のいずれかに記載の半導体チップ。
(5)
前記溝部の底面には、前記溝部の底面が平面である場合に比べて表面積が増加する加工が施されている
ように構成された
前記(1)乃至(3)のいずれかに記載の半導体チップ。
(6)
前記溝部の底面は、凹凸を有する
ように構成された
前記(5)に記載の半導体チップ。
(7)
前記レンズ上に形成される反射防止膜と、
前記レンズと前記反射防止膜の間に形成されるバッファ層と
をさらに備える
前記(1)乃至(6)のいずれかに記載の半導体チップ。
(8)
前記バッファ層は、屈折率が低い膜である
ように構成された
前記(7)に記載の半導体チップ。
(9)
前記バッファ層は、前記レンズの上面と側面に形成される
ように構成された
前記(7)に記載の半導体チップ。
(10)
前記バッファ層の側面の厚みは、上面の厚みの60%以上である
ように構成された
前記(9)に記載の半導体チップ。
(11)
前記反射防止膜は、前記レンズの上面と側面に形成される
ように構成された
前記(9)または(10)に記載の半導体チップ。
(12)
前記反射防止膜は、前記レンズの上面に形成される
ように構成された
前記(9)または(10)に記載の半導体チップ。
(13)
撮像素子上に設置されるガラス基板の、レンズを形成する領域の周囲に溝部を形成し、
前記ガラス基板の前記レンズを形成する領域に前記レンズを形成する
半導体チップの製造方法。
(14)
前記レンズの上にバッファ層が成膜され、
前記バッファ層の上に反射防止膜が成膜される
前記(13)に記載の半導体チップの製造方法。
(15)
撮像素子と、
前記撮像素子上に設置されたガラス基板と、
前記ガラス基板上に形成されたレンズと、
を備え、
前記ガラス基板は、前記レンズが形成される領域の周囲に溝部を有する
ように構成された
半導体チップと、
前記半導体チップからの信号を処理する信号処理回路と
を備える電子機器。
【符号の説明】
【0213】
10 半導体チップ, 11 固体撮像素子, 14 ガラス基板, 15 溝部, 16 レンズ, 91 ガラス基板, 92 溝部, 92a 側面, 111 ガラス基板, 112 溝部, 112a 側面, 131 ガラス基板, 132 溝部, 140 半導体チップ, 151 ガラス基板, 152 溝部, 211 バッファ層, 212 ARコート, 300 半導体チップ, 311 レンズ, 330 半導体チップ, 341 ARコート, 1001 撮像装置, 1006 信号処理回路