(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022176632
(43)【公開日】2022-11-30
(54)【発明の名称】電源制御装置および電源制御方法
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20221122BHJP
B60R 16/033 20060101ALI20221122BHJP
H02J 7/02 20160101ALI20221122BHJP
【FI】
H02J7/00 S
B60R16/033 B
H02J7/00 302B
H02J7/00 302C
H02J7/02 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021083162
(22)【出願日】2021-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】株式会社デンソーテン
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白島 大樹
(72)【発明者】
【氏名】松本 健
【テーマコード(参考)】
5G503
【Fターム(参考)】
5G503AA04
5G503AA07
5G503BA04
5G503BB01
5G503BB02
5G503BB06
5G503CA11
5G503DA05
5G503DA07
5G503DA08
5G503DA17
5G503DA18
5G503EA05
5G503EA08
5G503FA06
5G503FA16
5G503GD03
5G503GD04
(57)【要約】
【課題】系統間スイッチを再接続したときの第2電源の充電量減少を抑制することができる電源制御装置および電源制御方法を提供する。
【解決手段】実施形態に係る電源制御装置は、第1系統、第2系統、系統間スイッチ、電池用スイッチ、および制御部を備える。第1系統は、第1電源の電力を第1負荷に供給する。第2系統は、第2電源の電力を第2負荷に供給する。系統間スイッチは、第1系統および第2系統を接続切断可能である。電池用スイッチは、第2電源を第2系統に接続切断可能である。制御部は、電源の異常を検知すると、系統間スイッチを遮断し、電池用スイッチを導通した後、電源に異常がないと判定すると、系統間スイッチを再導通し、電池用スイッチを遮断し、系統間スイッチを再導通するとき、系統間の電圧差が閾値以上であれば、閾値未満に収まるように収束制御を行い、その間、電池用スイッチを遮断する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電源の電力を第1負荷に供給する第1系統と、
第2電源の電力を第2負荷に供給する第2系統と、
前記第1系統および前記第2系統を接続切断可能な系統間スイッチと、
前記第2電源を前記第2系統に接続切断可能な電池用スイッチと、
電源の異常を検知した場合に前記系統間スイッチを遮断し、前記電池用スイッチを導通した後、前記電源に異常がないと判定すると、前記系統間スイッチを再導通し、前記電池用スイッチを遮断する制御部を備え、
前記制御部は、前記系統間スイッチを再導通するとき、前記第1電源と前記第2電源との電圧差が閾値以上であれば、前記閾値未満に収まるように収束制御を行い、前記電源に異常がないと判定してから、前記収束制御を行っている間、前記電池用スイッチを遮断する
ことを特徴とする電源制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記収束制御が完了すると、前記系統間スイッチおよび前記電池用スイッチを導通して前記第2電源を充電し、充電が完了すると前記電池用スイッチを遮断する
ことを特徴とする請求項1に記載の電源制御装置。
【請求項3】
第1電源の電力を第1負荷に供給する第1系統と、
第2電源の電力を第2負荷に供給する第2系統と、
前記第1系統および前記第2系統を接続切断可能な系統間スイッチと、
前記第2電源を前記第2系統に接続切断可能な電池用スイッチと
を備える電源制御装置の制御部が、
電源の異常を検知した場合に前記系統間スイッチを遮断し、前記電池用スイッチを導通した後、前記電源に異常がないと判定すると、前記系統間スイッチを再導通し、前記電池用スイッチを遮断することと、
前記系統間スイッチを再導通するとき、前記第1電源と前記第2電源との電圧差が閾値以上であれば、前記閾値未満に収まるように収束制御を行い、前記電源に異常がないと判定してから、前記収束制御を行っている間、前記電池用スイッチを遮断することと
を含むことを特徴とする電源制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、電源制御装置および電源制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の自動運転による走行中に電源失陥が発生しても、安全な場所まで退避走行させて停車させることができるように、第1電源と第2電源とを備え、一方の電源系統に地絡が発生した場合に、他方の電源系統によって自動運転用の車載機器(負荷)へ電力を供給する冗長電源システムがある。
【0003】
冗長電源システムは、第1電源の電力を自動運転用の第1負荷に供給する第1系統と、第2電源の電力を第1負荷と同一の機能を備える第2負荷に供給する第2系統とを備える。さらに、冗長電源システムは、第1系統および第2系統間を接続切断可能な系統間スイッチと、第2電源および第2系統を接続切断可能な電池用スイッチとを備える。
【0004】
冗長電源システムは、通常時には、系統間スイッチおよび電池用スイッチを導通して第1電源から第1負荷および第2負荷へ電力を供給し、例えば、第1電源または第2電源の電圧が地絡閾値以下になった場合に、地絡と判定して系統間スイッチを遮断する。これにより、冗長電源システムは、一方の電源系統に地絡が発生した場合に、他方の電源系統によって自動運転用の負荷へ電力を供給して退避走行のためのバックアップ制御を行うことができる。
【0005】
かかる冗長電源システムでは、例えば、第1負荷または第2負荷が過負荷状態になった場合に、地絡が発生していなくても第1電源および第2電源の電圧が一時的に地絡閾値以下になることがある。この場合、冗長電源システムが過負荷状態の発生を地絡と誤判定して系統間スイッチを不必要に遮断すると、車両が正常に継続可能な自動運転を中止して退避走行に移行する。
【0006】
このため、第1電源または第2電源の電圧が第1閾値未満になった場合に系統間スイッチを遮断し、その後、所定時間が経過する前に第1電源または第2電源の電圧が第1閾値よりも小さい第2閾値まで低下しなければ、系統間スイッチを再導通する電源システムがある(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
かかる電源システムによれば、例えば、過負荷状態の発生により電源電圧が一時的に低下して系統間スイッチを遮断しても、その後、電源電圧が正常な電圧まで復帰すれば、系統間スイッチを再導通するので、自動運転の中断時間を最小限に抑えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、電源システムでは、系統間スイッチの遮断から再導通までの間に、第2電源が放電するため、系統間スイッチを再接続したときの第2電源の充電量が減少する。
【0010】
実施形態の一態様は、上記に鑑みてなされたものであって、系統間スイッチを再接続したときの第2電源の電圧低下を抑制することができる電源制御装置および電源制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
実施形態の一態様に係る電源制御装置は、第1系統と、第2系統と、系統間スイッチと、電池用スイッチと、制御部とを備える。第1系統は、第1電源の電力を第1負荷に供給する。第2系統は、第2電源の電力を第2負荷に供給する。系統間スイッチは、前記第1系統および前記第2系統を接続切断可能である。電池用スイッチは、前記第2電源を第2系統に接続切断可能である。制御部は、電源の異常を検知した場合に前記系統間スイッチを遮断し、前記電池用スイッチを導通した後、前記電源に異常がないと判定すると、前記系統間スイッチを再導通し、前記電池用スイッチを遮断する。前記制御部は、前記系統間スイッチを再導通するとき、前記第1電源と前記第2電源との電圧差が閾値以上であれば、前記閾値未満に収まるように収束制御を行い、前記電源に異常がないと判定してから、前記収束制御を行っている間、前記電池用スイッチを遮断する。
【発明の効果】
【0012】
実施形態の一態様に係る電源制御装置および電源制御方法は、系統間スイッチを再接続したときの第2電源の充電量減少を抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、実施形態に係る電源制御装置の構成例を示す説明図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る電源制御装置の動作例を示す説明図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る電源制御装置の動作例を示す説明図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る電源制御装置の動作例を示す説明図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る電源制御装置の動作例を示す説明図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係る電源制御装置の動作例を示す説明図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係る電源制御装置の動作例を示す説明図である。
【
図8】
図8は、実施形態に係る電源制御装置の動作例を示す説明図である。
【
図9】
図9は、実施形態に係る電源制御装置の制御部が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、電源制御装置および電源制御方法の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。以下では、自動運転機能を備える車両に搭載されて負荷へ電力を供給する電源制御装置を例に挙げて説明するが、実施形態に係る電源制御装置は、自動運転機能を備えていない車両に搭載されてもよい。
【0015】
また、以下では、電源制御装置が搭載される車両が電気自動車またはハイブリット自動車である場合について説明するが、電源制御装置が搭載される車両は、内燃機関によって走行するエンジン自動車であってもよい。
【0016】
[1.電源制御装置の構成]
図1は、実施形態に係る電源制御装置の構成例を示す説明図である。
図1に示すように、実施形態に係る電源制御装置1は、第1電源10と、第1負荷101と、一般負荷102と、第2負荷103と、自動運転制御装置100とに接続される。電源制御装置1は、第1電源10の電力を第1負荷101および一般負荷102に供給する第1系統110と、後述する第2電源20の電力を第2負荷103に供給する第2系統120とを備える。
【0017】
第1負荷101は、自動運転用の負荷を含む。例えば、第1負荷101は、自動運転中に動作するステアリングモータ、電動ブレーキ装置、車載カメラ、およびレーダ等を含む。一般負荷102は、例えば、ディスプレイ、エアコン、オーディオ、ビデオ、および各種ライト等を含む。
【0018】
第2負荷103は、第1負荷101と同様の機能を備える。第2負荷103は、例えば、ステアリングモータ、電動ブレーキ装置、車載カメラ、およびレーダ等の自動運転中に動作する装置を含む。第1負荷101、一般負荷102、および第2負荷103は、電源制御装置1から供給される電力によって動作する。自動運転制御装置100は、第1負荷101または第2負荷103を動作させて、車両を自動運転制御する装置である。
【0019】
第1電源10は、DC/DCコンバータ(以下、「DC/DC11」と記載する)と、鉛バッテリ(以下、「PbB12」と記載する)とを含む。なお、第1電源10の電池は、PbB12以外の任意の2次電池であってもよい。
【0020】
DC/DC11は、発電機と、PbB12よりも電圧が高い高圧バッテリとに接続され、発電機および高圧バッテリの電圧を降圧して第1系統110に出力する。発電機は、例えば、走行する車両の運動エネルギーを電気に変換して発電するオルタネータである。高圧バッテリは、例えば、電気自動車やハイブリット自動車に搭載される車両駆動用のバッテリである。
【0021】
なお、第1電源10は、エンジン自動車に搭載される場合、DC/DC11の代わりにオルタネータ(発電機)が設けられる。DC/DC11は、PbB12の充電、第1負荷101および一般負荷102への電力供給、第2負荷103への電力供給、および後述する第2電源20の充電を行う。
【0022】
電源制御装置1は、第2電源20と、系統間スイッチ41と、電池用スイッチ42と、制御部3と、第1電圧センサ51と、第2電圧センサ52とを備える。第2電源20は、第1電源10による電力供給ができなくなった場合のバックアップ用電源である。第2電源20は、リチウムイオンバッテリ(以下、「LiB21」と記載する)を備える。なお、第2電源20の電池は、LiB21以外の任意の2次電池であってもよい。
【0023】
系統間スイッチ41は、第1系統110と第2系統120とを接続する系統間ライン130に設けられ、第1系統110と第2系統120とを接続および切断可能なスイッチである。電池用スイッチ42は、第2電源20と第2系統120とを接続および切断可能なスイッチである。
【0024】
第1電圧センサ51は、第1系統110に設けられ、第1系統110の電圧を検出し、検出結果を制御部3に出力する。第2電圧センサ52は、第2系統120に設けられ、第2系統120の電圧を検出し、検出結果を制御部3に出力する。
【0025】
制御部3は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを有するマイクロコンピュータや各種の回路を含む。なお、制御部3は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアで構成されてもよい。
【0026】
制御部3は、CPUがROMに記憶されたプログラムを、RAMを作業領域として使用して実行することにより、電源制御装置1の動作を制御する。制御部3は、第1電圧センサ51および第2電圧センサ52から入力される検出結果に基づいて、第1系統110または第2系統120の地絡を検出する。制御部3による地絡の検出方法の具体例については、後述する。
【0027】
制御部3は、第1系統110または第2系統120の地絡を検出した場合、その旨を自動運転制御装置100に通知する。なお、制御部3は、第1系統110または第2系統120の地絡を検出した場合、自動運転が不可能な状態である旨を自動運転制御装置100に通知してもよい。また、制御部3は、第1系統110または第2系統120の地絡を検出していない場合、自動運転が可能な状態である旨を自動運転制御装置100に通知してもよい。
【0028】
制御部3は、第1系統110に地絡等の電源失陥が発生した場合には、系統間スイッチ41を遮断し、電池用スイッチ42を導通して、第2電源20から第2負荷103に電力を供給する。また、制御部3は、第2系統120に地絡等の電源失陥が発生した場合には、系統間スイッチ41を遮断し、電池用スイッチ42を遮断した状態で、第1電源10から第1負荷101および一般負荷102に電力を供給する。
【0029】
これにより、電源制御装置1は、自動運転中にいずれか一方の系統が地絡しても、他方の系統を使用し、自動運転制御装置100によって車両を安全な場所まで退避走行させて停車させることができる。次に、
図2~
図8を参照し、電源制御装置1の動作について説明する。
【0030】
[2.電源制御装置の通常時動作]
制御部3は、第1系統110および第2系統120に地絡が発生していない通常時には、
図2に示すように、電池用スイッチ42を遮断した状態で系統間スイッチ41を導通し、第1電源10から第1負荷101、一般負荷102、および第2負荷103に電力を供給する。
【0031】
[3.電源制御装置の動作]
次に、
図3~
図8を参照して、電源制御装置1の動作について説明する。
図3~
図8は、実施形態に係る電源制御装置の動作例を示す説明図である。
図3に示すように、電源制御装置1では、例えば、第1系統110で地絡200が発生すると、地絡点に向けて過電流が流れるため、第1電圧センサ51によって検出される第1系統110の電圧が地絡閾値以下になる。
【0032】
また、電源制御装置1では、第2系統120で地絡201が発生すると、地絡点に向けて過電流が流れるため、第2電圧センサ52によって検出される第2系統120の電圧が地絡閾値以下になる。
【0033】
このため、制御部3は、第1電圧センサ51または第2電圧センサ52の少なくともいずれか一方によって検出される電圧が地絡閾値以下になった場合に、電源の異常を検知して系統間スイッチ41を遮断し、電池用スイッチ42を導通する。このとき、制御部3は、第1系統110または第2系統120に地絡が発生したと仮判定する。
【0034】
その後、制御部3は、所定時間が経過しても第1電圧センサ51によって検出される電圧が所定時間以上地絡閾値以下であり、第2電圧センサ52によって検出される電圧が所定時間以内に地絡閾値を超えるまで復帰した場合、第1系統110に地絡200が発生したと本判定する。
【0035】
そして、
図4に示すように、制御部3は、第2電源20から第2負荷103に電力を供給し、その旨を自動運転制御装置100に通知する。これにより、自動運転制御装置100は、第2電源20から供給される電力によって第2負荷103を動作させて、車両を安全な場所まで退避走行させて停車させることができる。
【0036】
また、制御部3は、第1系統110または第2系統120に地絡が発生したと仮判定した後、所定時間が経過しても第2電圧センサ52によって検出される電圧が地絡閾値以下であり、第1電圧センサ51によって検出される電圧が所定時間以内に地絡閾値を超えるまで復帰した場合、第2系統120に地絡201が発生したと本判定する。
【0037】
そして、
図5に示すように、制御部3は、電池用スイッチ42を遮断して、第1電源10から第1負荷101に電力を供給し、その旨を自動運転制御装置100に通知する。これにより、自動運転制御装置100は、第1電源10から供給される電力によって第1負荷101を動作させて、車両を安全な場所まで退避走行させて停車させることができる。
【0038】
また、電源制御装置1では、地絡200,201ではなく、第1負荷101または一般負荷102が過負荷状態になった場合に、第1電圧センサ51によって検出される電圧が一時的に地絡閾値以下になることがある。また、電源制御装置1では、第2負荷103が過負荷状態になった場合に、第2電圧センサ52によって検出される電圧が一時的に地絡閾値以下になることがある。
【0039】
この場合、
図6に示すように、電源制御装置1では、継続的に第1電源10から第1負荷101および一般負荷102に電力が供給され、第2負荷103から第2負荷103に電力が供給されている。
【0040】
このため、制御部3は、第1系統110または第2系統120に地絡が発生したと仮判定した後、所定時間が経過する前に第1電圧センサ51および第2電圧センサ52によって検出される電圧が共に地絡閾値を超えるまで復帰すれば、電源に異常がないと本判定する。その後、制御部3は、
図2に示した通常動作に復帰させるため、電池用スイッチ42を遮断し、系統間スイッチ41を再導通する。
【0041】
このとき、電源制御装置1では、系統間スイッチ41を遮断してから、電源に異常がないと本判定するまでの間、第2電源20から第2負荷103に電力を供給したため、第2電源20の電圧が第1電源10の電圧よりも低くなっていることがある。また、第1負荷101、一般負荷102、および第2負荷103の動作状態によっては、第1電源10の電圧が第2電源20の電圧より低くなっていることもある。
【0042】
電源制御装置1は、第1電源10と第2電源20との電位差が大きい状態で系統間スイッチ41を再導通すると、系統間スイッチ41が破損する恐れがある。そこで、制御部3は、系統間スイッチ41を再導通するときに、第1電源10および第2電源20の電位差が所定の閾値以上であれば、電位差が閾値未満に収まるように収束制御を行う。
【0043】
ただし、電源制御装置1は、収束制御中に電池用スイッチ42を導通させたままだと、第2電源20が放電してしまい、LiB21の充電量が減少する。そこで、
図7に示すように、制御部3は、電源に異常がないと本判定すると、第2電源20の電圧を記憶してから電池用スイッチ42を遮断する。
【0044】
その後、制御部3は、第1電源10および第2電源20の電位差が所定の閾値以上であれば、電位差が閾値未満に収まるように収束制御を行う。例えば、制御部3は、電池用スイッチ42を遮断する直前の第2電源20の電圧が第1電源10の電圧よりも低い場合、DC/DC11に第1電源10の電圧を降圧させる指令を出力して収束制御を行う。
【0045】
なお、制御部3は、電池用スイッチ42を遮断する直前の第2電源20の電圧がPbB12の電圧よりも低い場合、例えば、図示しない上位の制御装置に対して、一般負荷102を動作させてPbB12の電力を強制的に消費させるよう要求することで収束制御を行ってもよい。
【0046】
また、制御部3は、第1電源10の電圧が電池用スイッチ42を遮断する直前の第2電源20の電圧よりも低い場合には、DC/DC11に第1電源10の電圧を昇圧させる指令を出力して収束制御を行う。
【0047】
このように、制御部3は、電源に異常がないと判定すると、直ちに電池用スイッチ42を遮断するので、第2電源20の電圧が第1電源10の電圧よりも低い場合、第2電源20の電圧低下を最小限に抑えることができる。したがって、制御部3は、第1電源10および第2電源20の電圧差を可及的に小さくできるので、収束制御に要する時間を短縮することができる。
【0048】
また、制御部3は、電源に異常がないと判定してから、収束制御を行っている間、電池用スイッチ42を遮断するので、系統間スイッチ41を再接続したときの第2電源20の充電量減少を抑制することができる。
【0049】
その後、制御部3は、収束制御が完了すると、
図8に示すように、電池用スイッチ42を再導通させてから系統間スイッチ41を再導通し、第1電源10の電力によって第2電源20を充電する。なお、制御部3は、電池用スイッチ42と系統間スイッチ41とを同時に再導通させてもよい。
【0050】
このとき、電源制御装置1は、第1電源10および第2電源20の電位差を収束制御によって所定の閾値未満に収めているので、系統間スイッチ41を再導通しても系統間スイッチ41を破損させることがない。
【0051】
その後、制御部3は、第2電源20の充電が完了すると、電池用スイッチ42を遮断する。これにより、電源制御装置1は、正常動作に復帰した後、第2電源20の不要な放電を防止することができる。また、第2電源20がバックアップ制御に必要な電圧まで充電されていない場合は自動運転が許可されないため、第2電源20の放電を抑えることで自動運転可能な機会が増大する。
【0052】
また、電源制御装置1は、その後、第1系統110に地絡などの電源失陥が発生した場合に、満充電状態の第2電源20によってバックアップ制御を開始できるので、退避走行の距離を延長させることができる。
【0053】
[4.電源制御装置の制御部が実行する処理]
次に、
図9を参照して実施形態に係る制御部が実行する処理の一例について説明する。
図9は、実施形態に係る電源制御装置の制御部が実行する処理の一例を示すフローチャートである。実施形態に係る制御部3は、通常動作中に、
図9に示す処理を繰り返し実行する。
【0054】
具体的には、
図9に示すように、制御部3は、まず、電源の異常を検知したか否かを判定する(ステップS101)。制御部3は、電源の異常を検知しないと判定した場合(ステップS101,No)、処理を終了してステップS101から処理を再度開始する。
【0055】
また、制御部3は、電源の異常を検知したと判定(仮判定)した場合(ステップS101,Yes)、系統間スイッチ41を遮断し(ステップS102)、電池用スイッチ42を導通する(ステップS103)。その後、制御部3は、電源に異常がないか否かを判定(本判定)する(ステップS104)。
【0056】
制御部3は、電源に本異常があると判定した場合(ステップS104,No)、第2系統120の異常か否かを判定する(ステップS113)。制御部3は、第2系統120の異常と判定した場合(ステップS113,Yes)、電池用スイッチ42を遮断し(ステップS114)、自動運転制御装置100にその旨を通知し(ステップS115)、処理を終了してステップS101から処理を再度開始する。これにより、第1系統110による退避走行制御が行われる。
【0057】
また、制御部3は、第2系統120の異常でないと判定した場合(ステップS113,No)、第1系統110の異常であるため、その旨を通知し(ステップS115)、処理を終了してステップS101から処理を再度開始する。これにより、第2系統120による退避走行制御が行われる。
【0058】
また、制御部3は、電源に異常がないと判定した場合(ステップS104,Yes)、第2電源20の電圧を記憶し(ステップS105)、電池用スイッチ42を遮断する(ステップS106)。その後、制御部3は、第1電源10および第2電源20の電圧差が閾値以上であるか否かを判定する(ステップS107)。
【0059】
制御部3は、第1電源10および第2電源20の電圧差が閾値以上でないと判定した場合(ステップS107,No)、処理をステップS109へ移す。また、制御部3は、第1電源10および第2電源20の電圧差が閾値以上であると判定した場合(ステップS107,Yes)、当該電圧差が閾値以下に収まるまで収束制御を行う(ステップS108)。
【0060】
その後、制御部3は、電池用スイッチ42を導通し(ステップS109)、系統間スイッチ41を導通する(ステップS110)。続いて、制御部3は、第2電源20の充電が完了したか否かを判定する(ステップS111)。
【0061】
制御部3は、第2電源20の充電が完了していないと判定した場合(ステップS111,No)、第2電源20の充電が完了するまでステップS111の判定処理を繰り返す。そして、制御部3は、第2電源20の充電が完了したと判定した場合(ステップS111,Yes)、電池用スイッチ42を遮断し(ステップS112)、処理を終了してステップS101から処理を再度開始する。
【0062】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0063】
1 電源制御装置
10 第1電源
11 DC/DC
12 PbB
20 第2電源
21 LiB
3 制御部
41 系統間スイッチ
42 電池用スイッチ
51 第1電圧センサ
52 第2電圧センサ
100 自動運転制御装置
101 第1負荷
102 一般負荷
103 第2負荷
110 第1系統
120 第2系統
130 系統間ライン