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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022176634
(43)【公開日】2022-11-30
(54)【発明の名称】防蟻用硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
   A01N 59/00 20060101AFI20221122BHJP
   E04B 1/72 20060101ALI20221122BHJP
   E02D 27/01 20060101ALI20221122BHJP
   A01M 29/34 20110101ALI20221122BHJP
   A01P 7/04 20060101ALI20221122BHJP
   A01N 25/10 20060101ALI20221122BHJP
   C04B 28/08 20060101ALI20221122BHJP
   C04B 18/08 20060101ALI20221122BHJP
   C04B 24/26 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
A01N59/00 Z
E04B1/72
E02D27/01 A
A01M29/34
A01P7/04
A01N25/10
C04B28/08
C04B18/08 Z
C04B24/26 Z
C04B24/26 G
C04B24/26 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021083164
(22)【出願日】2021-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】390039295
【氏名又は名称】株式会社コシイプレザービング
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】特許業務法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】辻本 吉寛
(72)【発明者】
【氏名】久保 友治
(72)【発明者】
【氏名】水戸 洋彦
(72)【発明者】
【氏名】奥埜 佑馬
(72)【発明者】
【氏名】池本 直人
【テーマコード(参考)】
2B121
2D046
2E001
4G112
4H011
【Fターム(参考)】
2B121AA16
2B121BB25
2B121EA21
2B121FA12
2D046BA02
2E001DD01
2E001DH14
2E001FA12
2E001FA21
2E001GA28
2E001GA29
2E001GA82
2E001HA32
2E001HA33
2E001HD03
2E001HD08
2E001HD09
2E001JA01
2E001JA06
4G112PA26
4G112PB27
4G112PB31
4H011AC01
4H011BB18
4H011BC19
4H011DA07
4H011DH02
(57)【要約】
【課題】本発明は、硬化物が、外力を掛けてもひび割れることがなく、長期かつ安定に防蟻性を呈する技術等を提供することを課題とする。
【解決手段】フライアッシュ1~20質量%、スラグ1~20質量%、及びJIS G 5901で測定される粒径が425μm以下である珪砂50~90質量%を含む無機粉体(A)、並びに重合体ラテックス(B)を含み、重合体ラテックス(B)のガラス転移温度が-11℃未満であり、重合体ラテックス(B)の固形分量が、フライアッシュ、スラグ、及び珪砂の合計総量100質量部に対し、22質量部以上50質量部未満であることを特徴とする防蟻用硬化性組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フライアッシュ1~20質量%、スラグ1~20質量%、及びJIS G 5901で測定される粒径が425μm以下である珪砂50~90質量%を含む無機粉体(A)、並びに
重合体ラテックス(B)を含み、
重合体ラテックス(B)のガラス転移温度が-11℃未満であり、
重合体ラテックス(B)の固形分量が、フライアッシュ、スラグ、及び珪砂の合計総量100質量部に対し、22質量部以上50質量部未満であることを特徴とする防蟻用硬化性組成物。
【請求項2】
重合体ラテックス(B)が、ブタジエン重合体、ブタジエンスチレン重合体、アクリル重合体、及びアクリルスチレン重合体からなる群より選ばれる1種以上である請求項1に記載の防蟻用硬化性組成物。
【請求項3】
重合体ラテックス(B)のpHが7.5以上である請求項1又は2に記載の防蟻用硬化性組成物。
【請求項4】
アルカリ性溶液(C)をさらに含む請求項1~3のいずれかに記載の防蟻用硬化性組成物。
【請求項5】
アルカリ性溶液(C)の量が、フライアッシュ、スラグ、及び珪砂の合計総量100質量部に対し、1~20質量部である請求項1~4のいずれかに記載の防蟻用硬化性組成物。
【請求項6】
常温で硬化する請求項1~5のいずれかに記載の防蟻用硬化性組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の防蟻用硬化性組成物から形成される硬化物。
【請求項8】
請求項7に記載の硬化物が、建築物の立設部と横設部とから形成される隅部、配管と配管を貫通するコンクリートとの間隙部、断熱材と断熱材との間隙部、及びコンクリートのひび割れ部からなる群より選択される一箇所以上に設置されてなる建築物。
【請求項9】
請求項1~6のいずれかに記載の防蟻用硬化性組成物が断熱材の表面に被覆されてなる断熱材被覆物。
【請求項10】
土間コンクリートと、該土間コンクリートの下側において土間コンクリートに沿って配置される請求項9に記載の断熱材被覆物と、該断熱材被覆物と基礎際との間隙部又は該断熱材被覆物の下側と基礎際により形成される隅部に配置されるスラグ及びグラスウールから選ばれる1種以上とを備える玄関土間構造。
【請求項11】
地面側から順に、請求項9に記載の断熱材被覆物、請求項7に記載の硬化物、及び断熱材が建築物の立設部に接するように積層してなる建築物。
【請求項12】
請求項7に記載の硬化物を、建築物の立設部と横設部とから形成される隅部、配管と配管を貫通するコンクリートとの隙間部、断熱材と断熱材との隙間部、及びコンクリートのひび割れ部からなる群より選択される一箇所以上に再施工することを含むことを特徴とする防蟻構造の再施工方法。
【請求項13】
地面側から順に、請求項9に記載の断熱材被覆物、請求項7に記載の硬化物、及び断熱材が建築物の立設部に接するように積層して再施工することを含むことを特徴とする防蟻構造の再施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防蟻用硬化性組成物、硬化物、建築物、断熱材被覆物、玄関土間構造、及び防蟻構造の再施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
白蟻は、建物の外部から地中を建物内地下に向けて進み、コンクリート間の隙間や割れ目を縫って建物内部に侵入し、支柱となる木材、断熱材等の建築物を食い荒らす為、種々の防蟻手段が開発されている。
【0003】
なかでも、コンクリートは、収縮によるひび割れをもたらしこのひび割れが白蟻侵入経路となることが問題となっており、コンクリートに代わる材料として、セメントクリンカーを使用せず、非晶質のケイ酸アルミニウムを主成分とした原料(活性フィラー)とアルカリ金属のケイ酸塩、炭酸塩、水酸化物水溶液の少なくとも1種類を用いて硬化させたもの(ジオポリマーともいう)が期待されている。このジオポリマーを使用する技術として、特許文献1及び2が知られている。
【0004】
特許文献1は、フライアッシュ、高炉スラグ微粉末、珪砂、苛性ソーダ水溶液、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等を含む組成物を加熱して硬化すると、収縮が低減されることを開示する。
【0005】
他方、特許文献2は、高炉水砕スラグ、フライアッシュ、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、メタ珪酸ナトリウム、SBRラテックス、珪砂を含む組成物を硬化させると、強度と耐酸性が向上することを教示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2021-008396号公報
【特許文献2】特開昭59-030746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
防蟻性を示すには、硬化物が、外力を掛けてもひび割れることがなく、対象物に対して付着性を示すことが望まれるが、特許文献1及び2のいずれも、ジオポリマーを使用して防蟻性を呈する手段を何ら教示していない。
【0008】
そこで、本発明は、硬化物が、外力を掛けてもひび割れることがなく、長期かつ安定に防蟻性を呈する技術(例えば、防蟻用硬化性組成物、硬化物(断熱材被覆物を含む)、建築物(玄関土間構造を含む)、防蟻構造の再施工方法)等を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、所定の無機粉体に、所定の重合体ラテックスを所定量で使用すると、硬化物が、外力を掛けてもひび割れることがなく、長期かつ安定した防蟻性を呈する防蟻用硬化性組成物等が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明の要旨は、以下の通りである。
【0011】
本発明の防蟻用硬化性組成物は、フライアッシュ1~20質量%、スラグ1~20質量%、及びJIS G 5901で測定される粒径が425μm以下である珪砂50~90質量%を含む無機粉体(A)、並びに重合体ラテックス(B)を含み、重合体ラテックス(B)のガラス転移温度が-11℃未満であり、重合体ラテックス(B)の固形分量が、フライアッシュ、スラグ、及び珪砂の合計総量100質量部に対し、22質量部以上50質量部未満であることを特徴とする。
【0012】
重合体ラテックス(B)は、ブタジエン重合体、ブタジエンスチレン重合体、アクリル重合体、及びアクリルスチレン重合体からなる群より選ばれる1種以上であることが好ましい。重合体ラテックス(B)のpHが7.5以上であることも好ましい。
【0013】
本発明の防蟻用硬化性組成物は、アルカリ性溶液(C)をさらに含むことが好ましい。
アルカリ性溶液(C)の量は、フライアッシュ、スラグ、及び珪砂の合計総量100質量部に対し、1~20質量部であってもよい。
【0014】
本発明の防蟻用硬化性組成物は、常温で硬化することが好ましい。
【0015】
本発明には、前記防蟻用硬化性組成物から形成される硬化物が包含される。
【0016】
本発明の一態様は、前記硬化物が、建築物の立設部と横設部とから形成される隅部、配管と配管を貫通するコンクリートとの間隙部、断熱材と断熱材との間隙部、及びコンクリートのひび割れ部からなる群より選択される一箇所以上に設置されてなる建築物に関する。
【0017】
本発明の別態様には、前記防蟻用硬化性組成物が断熱材の表面に被覆されてなる断熱材被覆物が含まれる。
【0018】
本発明のさらなる別態様として、土間コンクリートと、該土間コンクリートの下側において土間コンクリートに沿って配置される前記断熱材被覆物と、該断熱材被覆物と基礎際との間隙部又は該断熱材被覆物の下側と基礎際により形成される隅部に配置されるスラグ及びグラスウールから選ばれる1種以上とを備える玄関土間構造が挙げられる。
【0019】
本発明の建築物には、地面側から順に、前記断熱材被覆物、前記硬化物、及び断熱材が建築物の立設部に接するように積層してなる建築物も含まれる。
【0020】
本発明の一態様において、防蟻構造の再施工方法は、前記硬化物を、建築物の立設部と横設部とから形成される隅部、配管と配管を貫通するコンクリートとの隙間部、断熱材と断熱材との隙間部、及びコンクリートのひび割れ部からなる群より選択される一箇所以上に再施工することを含むことを特徴とする。
【0021】
本発明の別態様において、防蟻構造の再施工方法は、地面側から順に、前記断熱材被覆物、前記硬化物、及び断熱材が建築物の立設部に接するように積層して再施工することを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、硬化物が、外力を掛けてもひび割れることがなく、長期かつ安定した防蟻性を呈することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
1.防蟻用硬化性組成物
本発明の防蟻用硬化性組成物は、フライアッシュ1~20質量%、スラグ1~20質量%、及びJIS G 5901で測定される粒径が425μm以下である珪砂50~90質量%を含む無機粉体(A)、並びに重合体ラテックス(B)を含み、重合体ラテックス(B)のガラス転移温度が-11℃未満であり、重合体ラテックス(B)の固形分量が、フライアッシュ、スラグ、及び珪砂の合計総量100質量部に対し、22質量部以上50質量部未満であることを特徴とする。
係る本発明の防蟻用硬化性組成物から形成される硬化物は、外力を掛けてもひび割れることなく、防蟻剤を使用しなくても建築物の種々の構造に長期かつ安定に防蟻性を付与し得る。また、本発明の防蟻用硬化性組成物は、新築時の建築物のみならず、経年した建築物の再施工にも適用することが可能である。
【0024】
無機粉体(A)
本発明で使用される無機粉体(A)は、セメントクリンカーを使用せず、非晶質のケイ酸アルミニウムを主成分とした原料(活性フィラー)とアルカリ金属のケイ酸塩、炭酸塩、水酸化物水溶液の少なくとも1種類を用いて硬化させるものであることが好ましい。
【0025】
すなわち、無機粉体(A)は、硬化物のひび割れを防止する観点から、また、対象物への付着性、耐熱性、耐酸性、耐化学侵食性の観点から、フライアッシュ、スラグ、及び珪砂を必須成分として含み、フライアッシュ、スラグ、及び珪砂の合計量は、無機粉体100質量%中、好ましくは90質量%以上、より好ましくは93質量%以上、さらに好ましくは96質量%以上、さらにより好ましくは99質量%以上、特に好ましくは100質量%である。
【0026】
フライアッシュは、石炭を燃焼して得られる灰(例えば石炭灰)であればよく、二酸化ケイ素(SiO2)と酸化アルミニウム(Al23)を主成分として含むものであればよい。フライアッシュは、1種又は2種以上で使用してもよい。
フライアッシュは、JIS A 6201(強熱減量、粉末度、フロー値比等)によって、1種、2種、3種、4種に分類されてもよく、耐熱性の観点から、フライアッシュ1種であることが好ましく、更に分級された微粒子粉末が好ましい。
【0027】
フライアッシュの含有率は、硬化物の硬化速度の観点から、無機粉体(A)100質量%中、1~20質量%であり、好ましくは2質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは8質量%以上、さらにより好ましくは11質量%以上である。
【0028】
スラグは、鉄の精錬で得られる高炉スラグ又は製鋼スラグ等の鉄鋼スラグであればよく、二酸化ケイ素(SiO2)と酸化アルミニウム(Al23)を主成分として含むものであればよい。スラグは、高炉スラグであることが好ましく、徐冷スラグ、水砕スラグであることがより好ましい。スラグは、1種又は2種以上で使用してもよい。
【0029】
スラグは、ブレーン法により、所定の比表面積及び粒径を有していることが好ましい。
スラグの比表面積は、例えば1000~30000cm2/g、好ましくは3000~20000cm2/g、より好ましくは7000~15000cm2/gである。
スラグの平均粒径は、例えば1~15μm、好ましくは11μm以下、より好ましくは9μm以下、さらに好ましくは7μm以下、さらにより好ましくは5μm以下である。
【0030】
スラグの含有率は、硬化物の硬化速度の観点から、無機粉体(A)100質量%中、1~20質量%であり、好ましくは18質量%以下、より好ましくは16質量%以下、さらに好ましくは14質量%以下である。
【0031】
珪砂は、花崗岩などの風化で生じる石英(SiO2を主成分とする)からなる砂であればよく、珪砂は、天然珪砂又は人造珪砂であることが好ましく、粒径が調節された人造珪砂であることがより好ましい。珪砂は、1種又は2種以上で使用してもよい。
【0032】
本発明で使用される珪砂の粒径は、JIS G 5901に基づいた粒径を有することが好ましい。
珪砂の粒径は、425μm(5号珪砂)以下であり、好ましくは300μm(5.5号珪砂)以下、より好ましくは250μm以下、さらにより好ましくは212μm(6号珪砂)以下である。
【0033】
粒径425μm以下の珪砂の含有率は、珪砂100質量%中、好ましくは95質量%以上、より好ましくは97質量%以上、さらに好ましくは99質量%以上、さらにより好ましくは100質量%である。
無機粉体(A)において、珪砂の粒径が小さい程、粒径が小さい珪砂が多い程、硬化物は、骨材分離が生じず、硬化が促進され、ひび割れることがない。
【0034】
珪砂の含有率は、硬化物のひび割れ防止の観点から、無機粉体(A)100質量%中、50~90質量%であり、好ましくは55~85質量%、より好ましくは60~80質量%である。珪砂の含有率が低いと、骨材分離が生じ易く、硬化物のひび割れが生じる虞があり高価である。
【0035】
無機粉体(A)は、フライアッシュ、スラグ、珪砂を含み、ジオポリマーを形成する限り、他の成分を含んでいてもよく、他の成分としては、川砂、シリカフューム等が挙げられる。他の成分は、1種又は2種以上であってもよい。
【0036】
無機粉体(A)の他の成分の量は、無機粉体(A)100質量%中、例えば0~15質量%、好ましくは1~10質量%、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下である。
【0037】
重合体ラテックス(B)
本発明の防蟻用硬化性組成物は、硬化物に外力を掛けてもひび割れを防止する観点から、重合体ラテックス(B)を含む。
重合体ラテックス(B)は、溶媒と共にゴム重合体を含み、重合体ラテックス(B)は、ブタジエン重合体、ブタジエンスチレン重合体、アクリル重合体、及びアクリルスチレン重合体からなる群より選ばれる1種以上を含むことが好ましく、アクリル重合体を含むことがより好ましい。重合体ラテックスは、1種又は2種以上を使用してもよい。
【0038】
重合体ラテックス(B)として、ポリトロン(登録商標)E5300、Z865、Z871(以上、旭化成製)等を使用することができる。
【0039】
重合体ラテックス(好ましくはゴム重合体)のガラス転移温度は、防蟻用硬化性組成物の施工性、硬化物のひび割れ防止の観点から、-11℃未満であり、好ましくは-100℃以上-18℃以下、より好ましくは-90℃以上-20℃以下、さらに好ましくは-80℃以上-30℃以下である。重合体ラテックスのガラス転移温度が、-11℃以上であると、硬化物にひび割れが発生して、白蟻侵入路が形成される虞がある。
ガラス転移温度は、従来公知の方法で求めることができ、例えば、示差走査熱量計により測定することが可能である。
【0040】
溶媒及びゴム重合体を含む重合体ラテックス(B)の固形分量は、例えば20~65質量%、好ましくは25~60質量%、より好ましくは30~55質量%である。
換言すれば、溶媒は、重合体ラテックス(B)100質量%中、例えば35~80質量%、好ましくは40~75質量%、より好ましくは45~70質量%である。
【0041】
重合体ラテックス(B)の使用量は、無機粉体の総量に対する固形分量として表されてもよく、重合体ラテックス(B)の固形分量は、フライアッシュ、スラグ、及び珪砂の合計総量100質量部に対し、22質量部以上50質量部未満である。
【0042】
重合体ラテックス(B)の固形分量は、(i)防蟻用硬化性組成物を対象物に対して練り物として設置して硬化する場合、(ii)防蟻用硬化性組成物を対象物に対して塗布して硬化する場合に応じて、変更されてもよい。
【0043】
前記(i)の場合、重合体ラテックス(B)の固形分量は、フライアッシュ、スラグ、及び珪砂の合計総量100質量部に対し、好ましくは22質量部以上35質量部以下、より好ましくは23質量部以上34質量以下、さらに好ましくは25質量部以上33質量部以下、さらにより好ましくは28質量部以上32質量部以下である。
重合体ラテックス(B)の固形分量が少ないと、施工性が不良となり、硬化物はひび割れ、重合体ラテックス(B)の固形分量が多いと、硬化物の厚みを一定のものとすることができない虞がある。
【0044】
前記(ii)の場合、重合体ラテックス(B)の固形分量は、フライアッシュ、スラグ、及び珪砂の合計総量100質量部に対し、好ましくは35質量部超50質量部未満、より好ましくは39質量部以上50質量部未満、さらに好ましくは41質量部以上50質量部未満、さらにより好ましくは43質量部以上50質量部未満である。
重合体ラテックス(B)の固形分量が少ないと、対象物への施工性が不良となり、重合体ラテックス(B)の固形分量が多いと、硬化物の厚みを一定のものとすることができない虞がある。
【0045】
重合体ラテックス(B)に含まれる溶媒は、水溶液であってもよく、好ましくはアルコール性水溶液、水であり、より好ましくは水である。
【0046】
アルコールは、エタノール、メタノール、プロパノール、ブタノール等が挙げられる。
溶液がアルコールを含む場合、溶液中のアルコール濃度は、例えば1~20質量%、好ましくは1~15質量%、より好ましくは1~10質量%、さらに好ましくは2~5質量%である。
【0047】
重合体ラテックス(B)のpHは、無機粉体(A)の硬化を促進する観点から、好ましくは7.5以上、より好ましくは7.7以上13以下、さらに好ましくは7.9以上12以下である。
重合体ラテックス(B)が上記pH範囲であると、後述するアルカリ性溶液(C)が無くても、無機粉体(A)を硬化させることが可能となる。
【0048】
重合体ラテックス(B)は、その他、鉱油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等を含んでいてもよい。
【0049】
アルカリ性溶液(C)
無機粉体(A)の硬化をさらに促進する観点から、本発明の防蟻用硬化性組成物は、アルカリ性溶液(C)をさらに含んでいてもよい。
【0050】
アルカリ性溶液は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化カルシウム、アンモニア、炭酸水素ナトリウムからなる群から選択される1種以上を溶質として含む溶液であることが好ましく、水酸化ナトリウム、及び水酸化カリウムからなる群より選択される1種以上を溶質として含む溶液であることがより好ましい。
【0051】
アルカリ性溶液(C)の量は、無機粉体(A)の硬化促進の観点から、フライアッシュ、スラグ、及び珪砂の合計総量100質量部に対し、好ましくは1~20質量部、より好ましくは1~18質量部、さらに好ましくは2~15質量部、さらにより好ましくは3~12質量部である。
【0052】
本発明の防蟻用硬化性組成物は、他の成分として、増粘剤、消泡剤、発泡剤、防さび剤、防凍剤、着色剤、保水剤等の添加剤を含んでいてもよい。かかる添加剤の含有率は、防蟻用硬化性組成物100質量%中、例えば0~30質量%、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。
【0053】
本発明の防蟻性硬化性組成物は、非加熱で硬化されてもよく、加熱して硬化されてもよいが、現場での作業性の観点から、非加熱で硬化することが好ましく、常温で硬化することがより好ましい。
【0054】
本発明の防蟻用硬化性組成物を非加熱で硬化させる場合、硬化時間は、例えば1時間~1日、好ましくは6時間~1日、硬化温度は、例えば20~40℃、好ましくは20~30℃である。
本発明の防蟻用硬化性組成物を加熱して硬化させる場合、硬化温度は、例えば30~80℃、好ましくは40~60℃、硬化時間は、例えば5分~1日、好ましくは30分~3時間である。
【0055】
2.硬化物
本発明には、前記防蟻用硬化性組成物から形成される硬化物が包含される。
当該硬化物を形成する防蟻用硬化性組成物の使用量は、例えば10~1500g/m、好ましくは50~1200g/m、より好ましくは100~1000g/mである。
当該硬化物は、対象物(例えば後述する建築物)に対して所定の厚み(好ましくは1~40mm、より好ましくは1.5~30mm、さらに好ましくは2.0~20mm、さらにより好ましくは2.5~15mm)で設置されることが好ましい。
当該硬化物は、対象物に対して所定の面積(好ましくは1~1000cm2、より好ましくは1~500cm2、さらに好ましくは1~200cm2)で設置されることが好ましい。
当該硬化物は、JIS K 5600-5-1に準じて所定の耐屈曲性(弾性)を呈してもよく、硬化物を折り曲げてもひび割れを生じないものであることが好ましい。
【0056】
本発明において、当該硬化物は、所定の建築物に適用することにより防蟻性を呈することが可能である。本発明において、建築物には、布基礎コンクリート、防湿コンクリート(土間コンクリート)、ベタ基礎コンクリート(以上纏めてコンクリートと称する場合がある)、断熱材等が含まれる。
【0057】
3.建築物(I)
建築物において、前記硬化物を、建築物の立設部と横設部とから形成される隅部、配管と配管を貫通するコンクリートとの間隙部、断熱材と断熱材との間隙部、及びコンクリートのひび割れ部からなる群より選択される一箇所以上に設置してなることが好ましい。
【0058】
上記のうち、建築物の立設部と横設部とから形成される隅部、配管と配管を貫通するコンクリートとの間隙部、断熱材と断熱材との間隙部は、いずれも白蟻侵入経路となる部分であり、白蟻侵入経路に硬化物を存在させることを目的としている。
コンクリートのひび割れ部に硬化物を設置する場合、硬化物は、防蟻性を呈するだけではなく、コンクリート補修剤として使用することができる。
【0059】
建築物の立設部は、布基礎工法での「布基礎」及びベタ基礎工法での「立ち上がり基礎」のことをいい、建築物の横設部は、布基礎工法での「防湿コンクリート(土間コンクリート)」及びベタ基礎工法での「地面上のコンクリートベース盤」のことをいう。
【0060】
建築物の立設部と横設部とから形成される隅部としては、例えば、布基礎コンクリート等の立設部と土間コンクリート等の横設部とにより形成される隅部、布基礎コンクリート等の立設部とフーチング部(布基礎コンクリートにおいて水平に打設されている部分)とにより形成される隅部、布基礎コンクリート等の立設部と断熱材とにより形成される隅部、土間コンクリート等の横設部と断熱材とにより形成される隅部、布基礎コンクリート等の立設部とフーチング部と断熱材とにより形成される部分等が挙げられる。
【0061】
上記隅部周辺又は配管周辺に、粒剤を設置しておき、その上に本発明の防蟻用硬化性組成物を塗布してもよい。
【0062】
粒剤は、軽石、多孔質プラスチック、及び多孔質ガラスからなる群より選択される多孔質材料であることが好ましい。中でも、嵩比重、経済性等の点から、軽石が好ましい。
【0063】
粒剤の粒径は、例えば0.001~10mmであり、0.001~5mm程度であってもよい。
粒剤の粒度分布は、例えば2.4mm超2%以下、2.4mm以下0.5mm超91%以上、0.5mm以下7%以下である。
粒剤の嵩密度は、例えば0.1~1.0g/cm3であり、好ましくは0.2~0.8g/cm3であり、より好ましくは0.3~0.7g/cm3である。
粒剤の見かけ密度は、例えば0.15~1.5g/cm3であり、好ましくは0.3~1.2g/cm3、より好ましくは0.5~1.0g/cm3である。
【0064】
粒剤は、建築物床下の基礎コンクリートの立設部に沿って、少なくとも単一粒剤の粒度よりも大きくなるように撒布されていることが好ましく、1~100mmの高さ及び1~100cmの幅で撒布されていることがより好ましく、3~30mmの高さ及び3~30cmの幅で撒布されていることがさらに好ましい。当該高さは、例えば鉛直方向において粒剤が積層された範囲を表す。また粒剤を配管の周囲に撒布する場合にも、単一の粒剤の粒度よりも大きくなる様に撒布されていることが好ましく、1~100mmの高さ及び1~100cmの幅で撒布されていることがより好ましく、3~30mmの高さ及び3~30cmの幅で撒布されていることがさらに好ましい。
【0065】
配管と配管を貫通するコンクリートとの間隙部としては、土壌に接する基礎コンクリートの横設部と該横設部を貫通する配管との間隙部、土壌に接する基礎コンクリートの立設部と該立設部を貫通する配管との間隙部、それらの組み合わせ等が挙げられる。
【0066】
配管は、建築物の地下などに埋設される給水管や配水管であってもよく、硬質のポリ塩化ビニル管、給水・給湯用架橋ポリエチレン管等であることが好ましい。
配管は、複数の管を有するものであってもよく、複数の各種配管を通すための管(鞘管)であってもよい。
【0067】
断熱材は、布基礎工法の場合、建築物外周の布基礎と防湿コンクリートの接合箇所(打継ぎ部)付近における屋内側、またベタ基礎工法の場合、地面上のコンクリートベース盤と立ち上がり基礎との接合箇所(打継ぎ部)がある場合においてその付近における屋内側に敷設するが、上記断熱材と断熱材との間隙部に硬化物を設置する。
【0068】
断熱材としては、発泡ポリウレタン、発泡ポリエチレン、発泡ポリスチレン等の発泡樹脂、グラスウール、ロックウール、厚手のフェルト、合成繊維製ワタ等の繊維製断熱材、多孔質材料、粒子断熱材を容器に充填したもの、或いはこれらの積層体等が用いられる。
【0069】
断熱材は、立設部側のみ、横設部側のみ、立設部側及び横設部側の両方に配設されてもよく、横設部の上側、横設部の下側又は上側及び下側の両方に配設されてもよい。断熱材の数は、施工対象に応じて変化してもよい。
【0070】
4.断熱材被覆物
上記の建築物で使用される断熱材の表面は、被覆されていなくてもよいが、断熱材は、本発明の防蟻用硬化性組成物で被覆されていてもよい。
本発明の一態様は、前記防蟻用硬化性組成物が、断熱材の表面に被覆されてなる断熱材被覆物(以下、防蟻用断熱材という場合がある)も包含する。上記建築物の断熱材として、通常の断熱材及び断熱材被覆物の両方が使用されてもよい。
【0071】
本発明の防蟻用硬化性組成物が断熱材の表面を被覆する為、重合体ラテックスの固形分量が、前記(ii)に示す条件を満たすよう、重合体ラテックス、アルカリ性溶液等を多めに添加すればよい。
【0072】
本発明の防蟻用硬化性組成物が断熱材の表面に被覆する手段としては、例えば、スプレーコート法、バーコート法、スピンコート法、ディスペンサ法、刷毛塗り、へら塗り、ローラー塗り、ディッピング法などが挙げられる。これらのうち、スプレーコート法が好ましい。
【0073】
断熱材における被覆の厚さは、例えば0.1~10mm、好ましくは0.2~8mm、より好ましくは0.5~5mmであり、断熱材の全周囲に渡って均一な厚さであることが好ましい。
【0074】
断熱材被覆物は、白蟻侵入経路に対応して種々の建築物に使用すればよく、断熱材被覆物は、土間コンクリートの下側や基礎コンクリートのフーチング部に使用することが好ましい。
【0075】
5.玄関土間構造
断熱材被覆物を土間コンクリートの下側に使用する場合、本発明の玄関土間構造は、土間コンクリートと、該土間コンクリートの下側において土間コンクリートに沿って配置される前記断熱材被覆物と、該断熱材被覆物と基礎際との間隙部又は該断熱材被覆物の下側と基礎際により形成される隅部に配置されるスラグ及びグラスウールから選ばれる1種以上とを備える。
【0076】
該断熱材被覆物と基礎際との間隙部又は該断熱材被覆物の下側と基礎際により形成される隅部は、白蟻侵入経路となる部分であることから、スラグ、グラスウールを当該間隙部又は隅部に設置することにより、防蟻性をより向上させ得る。
【0077】
グラスウールは、成形体又は非成形体であることがより好ましい。具体的には、グラスウールの成形体として旭ファイバーグラス株式会社から販売されている「アクリアウール16K(商品名)」、「アクリアUボードNT(商品名)」を用いることができる。
【0078】
グラスウールの非成形体とは、小塊状に加工したものをいい、例えば、吹き込みタイプのグラスウールとして旭ファイバーグラス株式会社から「アクリアブロー(商品名)」として販売されている。
【0079】
6.建築物(II)
断熱材被覆物を基礎コンクリートのフーチング部に使用する場合、本発明には、地面側から順に、前記断熱材被覆物、前記硬化物、及び断熱材が建築物の立設部に接するように積層してなる建築物が含まれる。断熱材被覆物、硬化物、断熱材は、上述したものであればよく、断熱材被覆物は、横設部の上面レベルまで設置され、硬化物は、横設部上に設置されることが好ましい。
【0080】
かかる態様では、硬化物が、防蟻用断熱材と断熱材の間に使用されるが、防蟻性を呈する限り、防蟻用断熱材と断熱材のみが、建築物の立設部に接するように積層してなる建築物であってもよい。
【0081】
本発明は、前記建築物(I)、前記玄関土間構造、及び前記建築物(II)からなる群より選択される1以上を同時に満たす態様を含み得る。
【0082】
7.防蟻構造の再施工方法
本発明の防蟻用硬化性組成物及びそれから形成される硬化物は、防蟻構造の再施工に使用してもよい。
建築物(I)について防蟻構造を再施工する場合、本発明の防蟻構造の再施工方法は、前記硬化物を、建築物の立設部と横設部とから形成される隅部、配管と配管を貫通するコンクリートとの隙間部、断熱材と断熱材との隙間部、及びコンクリ-トのひび割れ部からなる群より選択される一箇所以上に再施工することを含むことを特徴とする。
防蟻構造の再施工部分である前記隅部、前記隙間部は、上述した通りであり、断熱材には、防蟻用断熱材及び断熱材の両方が含まれる。
【0083】
他方、建築物(II)について防蟻構造を再施工する場合、本発明の防蟻構造の再施工方法の別態様は、地面側から順に、前記断熱材被覆物、前記硬化物、及び断熱材が建築物の立設部に接するように積層して再施工することを含むことを特徴とする。
勿論、硬化物を使用しない場合の断熱材被覆物(防蟻用断熱材)と、断熱材が、建築物の立設部に接するように積層して再施工することも可能である。
【実施例0084】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、以下においては、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味する。
【0085】
実施例1
フライアッシュ1種(JIS A 6201)14.48%、高炉スラグ粉末11.70%、珪砂6号(212μm)74.0%となるように計量し、容器内で1分間混合して無機粉体(A)とした。次にアルカリ性溶液(C)としてKOH32%希釈液を無機粉体(A)に対して9.51%添加し、1分間混合した後、更にアクリル系共重合体ラテックス(B)(旭化成製、ポリトロン(登録商標)Z865、ガラス転移温度-51℃、固形分51%、水49%、pH8.0)を無機粉体(A)100%に対して32.26%(固形分量)添加し、1分間混合した後、室温20℃湿度60%の大気中で対象物上に厚み3mmの円形となるように施工した。
【0086】
後述する通り、施工性を判定したところ、均一な防蟻用硬化性組成物が形成され、12時間後に硬化物として弾性固化体を得た。得られた硬化物の折り曲げ弾性試験では全くひび割れを生じず、良好な柔軟性を示したことから、白蟻貫通試験で良好と推定した。硬化物は4カ月経過後でも同様な柔軟性を有していた。
【0087】
実施例2
ガラス転移温度が-23℃のアクリル系共重合体ラテックス(B)(旭化成製、ポリトロン(登録商標)Z871、固形分49%、水51%、pH9.0)を使用すること以外は、実施例1と同様に実施例2を行った。
【0088】
その結果、均一な防蟻用硬化性組成物が形成され、12時間後に硬化物として弾性固化体を得ることが出来た。得られた硬化物は実施例1と同様に、折り曲げ弾性試験でもひび割れを生じず、良好な柔軟性を示したことから、白蟻貫通試験で良好と推定した。
【0089】
実施例3
ガラス転移温度が-19℃のアクリル系共重合体ラテックス(B)(旭化成製、ポリトロン(登録商標)E5300、固形分45%、水55%、pH8.5)を使用すること以外は、実施例1と同様に実施例3を行った。
【0090】
その結果、均一な防蟻用硬化性組成物が形成され、12時間後に硬化物として弾性固化体を得ることが出来た。得られた硬化物の折り曲げ弾性試験では表面に僅かに微細なひび割れが発生したが、白蟻貫通試験では良好と推定した。
【0091】
比較例1
フライアッシュ1種(JIS A 6201)14.48%、高炉スラグ粉末11.70%、珪砂3号(1700~420μm)25.84%、珪砂4号(1200~210μm)22.0%、珪砂6号(450~70μm)26.0%となるよう計量し、容器内で1分間混合し無機粉体(A)とした。次にアルカリ性溶液(C)としてK(OH)32%希釈液を無機粉体(A)に対して6.0%添加し、1分間混合した後、更にアクリル系共重合体ラテックス(B)(旭化成製、ポリトロン(登録商標)Z865、ガラス転移温度-51℃、固形分51%、水49%、pH8.0)を無機粉体(A)に対して11.35%(固形分量)添加し、1分間混合した後、室温20℃湿度60%の大気中で対象物上に厚み3mmの円形となるように施工した。
【0092】
後述の通りに、施工性を判定したところ、骨材分離を生じ、均一な防蟻用硬化性組成物が出来ず、硬化物として良好な弾性固化体を得ることが出来なかった。
【0093】
比較例2
高炉スラグ2.91%、珪砂3号(1700μm)34.0%、珪砂4号(850μm)29.0%、珪砂6号(212μm)34.0%となるように計量し、容器内で1分間混合し無機粉体(A)とした。次にアルカリ性溶液(C)としてKOH32%希釈液を無機粉体(A)に対して6.0%添加し、1分間混合した後、更にアクリル系共重合体ラテックス(B)(旭化成製、ポリトロン(登録商標)Z865、ガラス転移温度-51℃、固形分51%、水49%、pH8.0)を無機粉体(A)に対して11.35%(固形分量)添加し、1分間混合した後、室温20℃湿度60%の大気中で対象物上に厚み3mmの円形となるように施工した。
【0094】
後述の通りに、施工性を判定したが、比較例1と同様に骨材分離を生じ、均一な防蟻用硬化性組成物が出来ず、硬化物として良好な弾性固化体を得ることが出来なかった。
【0095】
比較例3
フライアッシュ1種(JIS A 6201)14.48%、高炉スラグ粉末11.70%、珪砂6号(212μm)74.0%となるように計量した後、容器内で1分間混合し無機粉体(A)とした。次にアルカリ性溶液(C)としてKOH32%希釈液を添加せず、アクリル系共重合体ラテックス(B)(旭化成製、ポリトロン(登録商標)Z865、ガラス転移温度-51℃、固形分51%、水49%、pH8.0)のみを無機粉体(A)に対して20.35%(固形分量)添加し、1分間混合した後、室温20℃湿度60%の大気中で対象物上に厚み3mmの円形となるように施工した。
【0096】
後述の通りに、施工性を判定したところ、均一な防蟻用硬化性組成物が形成され、2日後に硬化物として弾性固化体を得ることが出来た。得られた固化体の折り曲げ弾性試験では、ひび割れが生じたことから、白蟻貫通試験で不可と推定した。
【0097】
比較例4
フライアッシュ1種(JIS A 6201)4.48%、B種高炉スラグ粉末11.70%、珪砂6号(212μm)74.0%となるように計量し、容器内で1分間混合し無機粉体(A)とした。次にアルカリ性溶液(C)としてKOH32%希釈液を無機粉体(A)に対して6.0%添加し、1分間混合した後、更にアクリル系共重合体ラテックス(C)(旭化成製、ポリトロン(登録商標)Z865、ガラス転移温度-51℃、固形分51%、水49%、pH8.0)を無機粉体(A)に対して21.5%(固形分量)添加し、1分間混合した後、室温20℃湿度60%の大気中で対象物上に厚み3mmの円形となるように施工した。
【0098】
後述の通りに、施工性を判定したところ、粘性が強く均一な防蟻用硬化性組成物が形成されず、3時間後に硬化した。折り曲げ弾性試験でも硬化物は割れ、弾性のない固化体であったことから、白蟻貫通試験でも不良と推定した。
【0099】
比較例5
ガラス転移温度が-11℃のアクリル系共重合体ラテックス(旭化成製、ポリトロン(登録商標)A5400、固形分41%、水59%、pH8.5)を使用すること以外は、実施例1と同様に比較例5を行った。
【0100】
その結果、均一な防蟻用硬化性組成物が形成され、12時間後に硬化物として弾性固化体を得ることが出来た。しかし得られた硬化物の折り曲げ弾性試験では試料に微細なひび割れが発生し下部まで達していたことから、白蟻貫通試験では不可と推定した。
【0101】
比較例6
ガラス転移温度が-8℃のアクリル系共重合体ラテックス(旭化成製、ポリトロン(登録商標)A4300、固形分45%、水55%、pH8.5)を使用すること以外は、実施例1と同様に比較例6を行った。
【0102】
その結果、均一な防蟻用硬化性組成物が形成され、12時間後に硬化物として弾性固化体を得ることが出来た。しかし得られた硬化物の折り曲げ弾性試験では試料が数片にひび割れたことから、白蟻貫通試験では不可と推定した。
【0103】
比較例7
市販の補修用ポリマーセメントモルタル(粉末ポリマーがプリブレンド)を使用し、実施例1と同様な柔らかさになる様加水し、1分間混合した後、室温20℃湿度60%の大気中で対象物上に厚み3mmの円形となるように施工した。
【0104】
後述する通り、施工性を判定したところ、均一な硬化性組成物が形成され、12時間後に硬化物として固化体を得ることが出来た。しかし得られた硬化物は硬い板状であり、折り曲げ弾性試験を実施するまでもなく割れた。この結果から白蟻貫通試験は不可と推定した。
【0105】
実施例及び比較例における評価方法(例えば、施工性、硬化条件、弾性(評価方法、評価基準)、白蟻貫通試験(評価方法、評価基準))
【0106】
(1)施工性
評価方法:ビニール袋上で厚み3mmに施工した。
評価基準:左官コテで押さえられる均一な試料であるかどうかで評価した。
(2)硬化条件
評価方法:施工後指跡が付かなくなるまで固化させた。
評価基準:施工後約半日であるかどうかで評価した。
(3)弾性(硬化物のひび割れ評価)
評価方法:JIS K 5600-5-1耐屈曲性試験方法に順じた。
棒状(マンドレス)を挟んで折り曲げず、手で固化体を折り曲げた。
評価基準:固化試料を手で180度折り曲げてもひび割れを生じないかどうかで評価した。
(4)白蟻貫通試験
評価方法:弾性試験結果より推定した。
評価基準:ひび割れを全く生じなければ白蟻は貫通しないと判断した。
また、試料表面に微細なひび割れが生じても試料下部まで達していない場合は良好と判断した。