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特開2022-176637抗菌性粘着フィルムおよびその製造方法
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  • 特開-抗菌性粘着フィルムおよびその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022176637
(43)【公開日】2022-11-30
(54)【発明の名称】抗菌性粘着フィルムおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/29 20180101AFI20221122BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20221122BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20221122BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20221122BHJP
   A01N 59/16 20060101ALN20221122BHJP
   A01P 3/00 20060101ALN20221122BHJP
【FI】
C09J7/29
C09J7/38
B32B27/18 F
B32B27/00 M
A01N59/16 A
A01P3/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021083168
(22)【出願日】2021-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】岩渕 陽花
【テーマコード(参考)】
4F100
4H011
4J004
【Fターム(参考)】
4F100AA04A
4F100AK01B
4F100AK21B
4F100AK25D
4F100AK41C
4F100AT00C
4F100BA04
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10D
4F100CA12A
4F100CB05D
4F100DE01A
4F100EH462
4F100EH46A
4F100EH46B
4F100EH46D
4F100EJ862
4F100JC00
4F100JC00A
4F100JL13
4F100YY00A
4F100YY00C
4F100YY00D
4H011AA02
4H011BB18
4H011DA07
4H011DA08
4H011DD05
4J004AB01
4J004CA02
4J004CB03
4J004CC02
4J004CE02
(57)【要約】
【課題】抗菌剤粒子の表面が樹脂で被覆されることを防ぎ、フィルム表面に抗菌剤が高濃度で露出しており、抗菌剤の殺菌・抗菌性の効果を有効に保持・発揮させると共に、樹脂層への抗菌剤粒子の密着性が良く、抗菌剤粒子の脱落を抑えることができ、かつ、コスト低減化が可能な抗菌性粘着フィルムおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】フィルム層4と、フィルム層4の一方の面に形成された粘着剤層5と、フィルム層4において粘着剤層5と反対側の面に形成された樹脂層3とを備え、樹脂層3においてフィルム層4と反対側の面に、抗菌剤粒子を含む抗菌剤塗布層が形成されている抗菌性粘着フィルム1。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム層と、前記フィルム層の一方の面に形成された粘着剤層と、前記フィルム層において前記粘着剤層と反対側の面に形成された樹脂層とを備え、前記樹脂層において前記フィルム層と反対側の面に、抗菌剤粒子を含む抗菌剤塗布層が形成されていることを特徴とする抗菌性粘着フィルム。
【請求項2】
前記抗菌剤粒子が銀系抗菌剤であることを特徴とする請求項1に記載の抗菌性粘着フィルム。
【請求項3】
前記フィルム層の厚みが20μm以上100μm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の抗菌性粘着フィルム。
【請求項4】
前記粘着剤層の厚みが20μm以上40μm以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の抗菌性粘着フィルム。
【請求項5】
前記抗菌剤粒子の粒径が500nm以上2μm以下であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の抗菌性粘着フィルム。
【請求項6】
前記樹脂層において前記フィルム層と反対側の面に抗菌剤粒子の懸濁液を塗布・乾燥させることで抗菌剤塗布層を形成させ、抗菌剤粒子を露出させる工程を有することを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載の抗菌性粘着フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は抗菌性粘着フィルムおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、住環境を改善することを目的として、とくに清潔な環境を提供するために様々な工夫がなされている。とくに衛生上殺菌又は抗菌性を必要とするもののうち、粘着フィルムの場合は、通常、抗菌剤を粘着フィルム表面の樹脂に練り込むことにより、殺菌性又は抗菌性を付与している。
【0003】
ところで、抗菌剤を予め樹脂に練り込んでおき、それを素材として利用する場合は、物品の表面にブリードアウトした抗菌剤のみが有効となるため、樹脂内部に存在する抗菌剤はその殺菌・抗菌性の効果を有効に保持・発揮させることができない。そのため、抗菌剤を樹脂に練り込んだ素材において、抗菌剤の殺菌・抗菌性の効果を有効に保持・発揮させるためには、その表面に抗菌剤を高濃度で露出させることが必要となる。
【0004】
特許文献1では、無機系抗菌剤と樹脂からなる抗菌性樹脂層が設けられた抗菌性粘着基材において、抗菌性樹脂層の厚みを無機系抗菌剤の平均粒径の3倍以下にすることで、抗菌剤を結着させる樹脂の使用量を抑え、樹脂層表面に露出する抗菌剤の量を増大させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8-216348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のように樹脂の使用量を低減したとしても、樹脂と抗菌剤とを混合して基材上に塗布した場合、抗菌剤粒子の表面は樹脂で被覆されてしまい、抗菌性粘着基材の表面に抗菌剤を高濃度で露出させることができない。その結果、抗菌剤はその殺菌・抗菌性の効果を有効に保持・発揮させることができないと考えられる。
【0007】
また、表面に抗菌剤粒子を高濃度で露出させる手法として、樹脂から成る基材表面に抗菌剤粒子をスプレーで吹き付ける方法もあるが、樹脂表面に抗菌剤粒子を直接吹き付けるため、抗菌剤粒子の密着性が悪く、抗菌剤粒子の脱落が多くなる。また、抗菌剤粒子のロスが多く、コストが高くなってしまう。
【0008】
そこで本発明は、抗菌剤粒子の表面が樹脂で被覆されることを防ぎ、フィルム表面に抗菌剤が高濃度で露出しており、抗菌剤の殺菌・抗菌性の効果を有効に保持・発揮させると共に、樹脂層への抗菌剤粒子の密着性が良く、抗菌剤粒子の脱落を抑えることができ、かつ、コスト低減化が可能な抗菌性粘着フィルムおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
課題を解決するために、本発明の一態様に係る抗菌性粘着フィルムは、フィルム層と、フィルム層の一方の面に形成された粘着剤層と、フィルム層において粘着剤層と反対側の面に形成された樹脂層とを備え、樹脂層においてフィルム層と反対側の面に、抗菌剤粒子を含む抗菌剤塗布層が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、抗菌剤を予め樹脂に練り込んでいるのではなく、樹脂層の一方の面(粘着剤層側と反対側の面)に抗菌剤粒子を含む抗菌剤塗布層が形成されているため、抗菌剤粒子の表面が樹脂で被覆されることを防ぎ、フィルム表面に抗菌剤が高濃度で露出しているため、抗菌剤の殺菌・抗菌性の効果を有効に保持・発揮させることが可能であると共に、樹脂層への抗菌剤粒子の密着性が良く、抗菌剤粒子の脱落を抑えることができ、かつ、抗菌剤粒子のロスが少ないためコスト低減化が可能な抗菌性粘着フィルムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る抗菌性粘着フィルムを模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態に係る抗菌性粘着フィルムについて、図面を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る抗菌性粘着フィルム1を模式的に示す断面図であり、厚さと平面寸法との関係、各層の厚さの比率等は現実のものとは異なる。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造等が下記のものに特定されるものではない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0013】
図1に示すように、本実施形態の抗菌性粘着フィルム1は、フィルム層4と、フィルム層4の一方の面に形成された粘着剤層5と、フィルム層4において前記粘着剤層と反対側の面に形成された樹脂層3とを備えている。また、樹脂層においてフィルム層と反対側の面に、抗菌剤粒子6を含む抗菌剤塗布層2が形成されている。
【0014】
抗菌剤を予め樹脂に練り込んでいるのではなく、樹脂層3の一方の面(粘着剤層側と反対側の面)に抗菌剤粒子6を含む抗菌剤塗布層2が形成されているため、抗菌剤粒子6の表面が樹脂で被覆されることを防ぎ、フィルム表面に抗菌剤が高濃度で露出しているため、抗菌剤の殺菌・抗菌性の効果を有効に保持・発揮させることが可能であると共に、樹脂層3への抗菌剤粒子6の密着性が良く、抗菌剤粒子6の脱落を抑えることができ、かつ、抗菌剤粒子6のロスが少ないためコスト低減化が可能となる。
【0015】
以下、図1を参照して、抗菌性粘着フィルム1について詳細に説明する。
【0016】
<フィルム層>
基材フィルム層4は、主に各種天然樹脂、合成高分子樹脂からなり、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、セルロース、メチルセルロース、メチルエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどの汎用プラスチック、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンスルファイドなどのエンジニアプラスチックを利用することができる。フィルム層4の厚みは強度と製造時の生産性を考慮すると20μm以上100μm以下が好ましい。フィルム層4は、意匠性の観点から、透明もしくは任意に着色されていてもよい。
【0017】
<粘着剤層>
粘着剤層5は、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、エポキシ系粘着剤及びイソシアネー
ト系粘着剤のいずれかからなる。粘着剤層5の厚みは強度と製造時の生産性を考慮すると20μm以上40μm以下が好ましい。
【0018】
<樹脂層>
樹脂層3としては、水溶性高分子が好ましく、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、デンプン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウムなどを利用することができる。
【0019】
<抗菌剤粒子>
抗菌剤粒子6としては、例えば、黄色ブドウ球菌や大腸菌への抗菌効果を考慮すれば、無機化合物に銀イオンが担持された銀系抗菌剤粒子が好ましい。無機化合物としては、例えば、ジルコニウムまたはその塩を採用できる。特に、リン酸ジルコニウムが好ましく、人体への安全性、抗菌速度、及び抗菌性能の持続性を向上できる。銀系抗菌剤粒子の形状としては、球体状、楕円体、多面体状等を使用でき、特に、球体状が好ましい。平均粒径は3μm以上では脱落しやすく、500nm未満では凝集しやすいため、500nm以上2μm以下が好ましい。樹脂層3上への抗菌剤粒子6の塗布量は、従来の銀系抗菌剤粒子を含有する抗菌性粘着フィルムと同等、またはそれ以下で従来以上の殺菌・抗菌性の効果を発揮させることができると考えられる。
【0020】
抗菌性粘着フィルム1の製造方法としては、例えば、フィルム層4の一方の面に粘着剤層5を塗布・乾燥させる工程と、フィルム層4において粘着剤層5と反対側の面に樹脂層3を塗布・乾燥させる工程と、樹脂層3においてフィルム層4と反対側の面に抗菌剤粒子6の懸濁液を塗布・乾燥させることで抗菌剤塗布層2を形成させ、抗菌剤粒子6を露出させる工程とを有する。
【実施例0021】
以下、本実施形態における抗菌性粘着フィルム1について、具体的な実施例及び比較例を挙げて説明する。
【0022】
<実施例1>
基材フィルムとして50μmのポリエステルフィルムを用い、その基材フィルムの一方の面にアクリル系粘着剤を塗布・乾燥させて、厚さ30μmの粘着剤層を形成した。次に、基材フィルムにおいて粘着剤層と反対側の面にポリビニルアルコール水溶液を塗布・乾燥させて、厚さ0.5μmの樹脂層を形成した。最後に、樹脂層においてフィルム層と反対側の面に銀イオン担持リン酸ジルコニウム系抗菌剤の水系懸濁液を抗菌剤粒子が0.5g/mの割合で存在するように塗布・乾燥させて、抗菌性粘着フィルムを得た。
【0023】
<比較例1>
粘着剤層は実施例1と同様に形成した。次に、ポリビニルアルコール水溶液に銀イオン担持リン酸ジルコニウム系抗菌剤を添加し、抗菌剤粒子が0.5g/mの割合で存在するように塗布・乾燥させることで厚さ0.5μmの樹脂層を形成し、抗菌性粘着フィルムを得た。
【0024】
<比較例2>
粘着剤層は実施例1と同様に形成した。次に、ポリビニルアルコール水溶液を厚さが0.5μmとなるように塗布・乾燥させることで樹脂層を形成し、抗菌性粘着フィルムを得た。
【0025】
以上のようにして得られた実施例及び比較例の抗菌性粘着フィルムの抗菌性を特許文献1と同様の手法で評価した。
【0026】
<試験1>
実施例1および比較例1、2で作製した抗菌性粘着フィルムの表面にメチシリン耐性黄色ブドウ球菌液を接種(10μl/cm)し、23℃、65%Rhで放置し、3時間後
および6時間後に菌を培地で洗い流した。次に、菌数測定用培地による混釈平板培養法により生菌数を測定した。その結果を表1に示す。
【0027】
【表1】
【0028】
表1から、本発明の一実施形態に係る実施例1の抗菌性粘着フィルムは殺菌・抗菌性の効果を有効に保持・発揮させることが可能であると確認できた。
【0029】
実施例1と比較例1および比較例2の結果より、本発明の一実施形態に係る実施例1の抗菌性粘着フィルムは比較例1および比較例2と比較して銀系抗菌剤の添加量を半分以下まで削減することができると考えられ、原料のコスト削減が可能であると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は抗菌性粘着フィルムに関し、抗菌剤の殺菌・抗菌性の効果を有効に保持・発揮させることが可能な抗菌性粘着フィルムに関する。
【符号の説明】
【0031】
1…抗菌性粘着フィルム
2…抗菌剤塗布層
3…樹脂層
4…フィルム層
5…粘着剤層
6…抗菌剤粒子
図1