IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ケイミュー株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-水硬性硬化体及びその製造方法 図1
  • 特開-水硬性硬化体及びその製造方法 図2
  • 特開-水硬性硬化体及びその製造方法 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022176704
(43)【公開日】2022-11-30
(54)【発明の名称】水硬性硬化体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B28B 11/04 20060101AFI20221122BHJP
   C04B 41/65 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
B28B11/04
C04B41/65
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021083258
(22)【出願日】2021-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】503367376
【氏名又は名称】ケイミュー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】特許業務法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今枝 佑太
(72)【発明者】
【氏名】合川 英男
(72)【発明者】
【氏名】余宮 佑輔
【テーマコード(参考)】
4G028
4G055
【Fターム(参考)】
4G028DA01
4G028DB01
4G055AA01
4G055BA32
(57)【要約】
【課題】所望のエフロ模様が得やすい水硬性硬化体及びその製造方法を提供する。
【解決手段】表面に水硬性材料の硬化を阻害する硬化阻害物質及びエフロレッセンスを含む。前記硬化阻害物質が弱酸塩に含まれることが好ましい。前記弱酸塩が顆粒状であることが好ましい。水硬性硬化体1は、基材2と、前記基材2の表面上に設けられた表層3と、を備え、前記表層3は、前記水硬性材料と前記硬化阻害物質とを含むことが好ましい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に水硬性材料の硬化を阻害する硬化阻害物質及びエフロレッセンスを含む、
水硬性硬化体。
【請求項2】
前記硬化阻害物質が弱酸塩に含まれる、
請求項1に記載の水硬性硬化体。
【請求項3】
前記弱酸塩が顆粒状である、
請求項2に記載の水硬性硬化体。
【請求項4】
基材と、
前記基材の表面上に設けられた表層と、を備え、
前記表層は、前記水硬性材料と前記硬化阻害物質とを含む、
請求項1~3のいずれか1項に記載の水硬性硬化体。
【請求項5】
水硬性材料を主成分とする成形体の表面上に、前記水硬性材料の硬化を阻害する硬化阻害機能と、エフロレッセンスの生成の際に核となるエフロ生成核機能と、を有するエフロ模様生成材料を設ける第1工程と、
前記第1工程後に、前記成形体を養生する第2工程と、を備える、
水硬性硬化体の製造方法。
【請求項6】
前記エフロ模様生成材料は顆粒状であり、
前記第1工程で前記成形体の表面上に前記エフロ模様生成材料を散布して設ける、
請求項5に記載の水硬性硬化体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水硬性硬化体及びその製造方法に関するものである。より詳細には、本願発明は、表面にエフロレッセンスを有する水硬性硬化体及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
内装材や外装材に使用される建築板には、セメントを主成分とした無機質建築材が知られている。このような建築板は、セメントを主成分とするスラリーを抄造法により抄き上げてセメントシートを作製し、その上にセメントを主成分とする低含水率の表層材を散布し、プレス型やロール型で加圧成型することにより、模様を付与している。その後、蒸気によって硬化させる蒸気養生、さらに高温・高圧で硬化させるオートクレーブ養生を経て硬化体となる。そして、硬化体に塗装によって意匠表現を行うのが一般的である。
【0003】
しかし、塗装を行うことで、意匠が人工的であり、画一的になる場合がある。そこで、塗装によらない意匠表現方法として、養生工程中にセメント反応物や析出物の生成を妨げないようにシーラー濃度を薄くすることで、硬化体の表面にセメント反応物や析出物(エフロレッセンス(白華))を生成させることによって、自然な風合いを表現する技術も提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-121484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、シーラーの塗布量によりエフロレッセンスによる模様(エフロ模様)をコントロールしているが、より所望のエフロ模様を得られるようにしたいという要望がった。
【0006】
本発明は、上記事由に鑑みてなされており、所望のエフロ模様が得やすい水硬性硬化体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る水硬性硬化体は、表面に水硬性材料の硬化を阻害する硬化阻害物質及びエフロレッセンスを含む。
【0008】
本発明の一態様に係る水硬性硬化体の製造方法は、第1工程と第2工程とを備える。前記第1工程は、水硬性材料を主成分とする成形体の表面上に、前記水硬性材料の硬化を阻害する硬化阻害機能と、エフロレッセンスの生成の際に核となるエフロ生成核機能と、を有するエフロ模様生成材料を設ける。前記第2工程は、前記第1工程後に、前記成形体を養生する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、硬化阻害物質の有無により、エフロレッセンスの生成量や生成位置をコントロールしやすくなり、所望のエフロ模様が得やすい、という利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本実施形態に係る水硬性硬化体を示す断面図である。
図2図2Aは、比較例1を示す写真である。図2Bは、実施例1を示す写真である。図2Cは、実施例2を示す写真である。
図3図3Aは、比較例2を示す写真である。図3Bは、実施例3を示す写真である。図3Cは、実施例4を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施形態)
(1)概要
特許文献1のように、シーラー濃度で水硬性硬化体の表面にエフロレッセンス(白華)を発生させたり、抑えたりすることは可能であるが、全面が白くなる、白華の割合が少ないなどの状態があり、自然な風合いとなるエフロレッセンスの生成量や模様をコントロールすることは難しい。
【0012】
一方、本実施形態に係る水硬性硬化体は、硬化阻害物質とエフロレッセンスとを表面に有している。ここで、硬化阻害物質とは、水硬性材料の硬化を阻害する物質である。従って、本実施形態に係る水硬性硬化体の表面には、硬化阻害物質の存在により硬化が阻害された部分と、硬化阻害物質の不存在により硬化が阻害されなかった部分とが生じる。そして、硬化が阻害された部分では、エフロレッセンスの生成が抑えられる。従って、硬化阻害物質の有無で水硬性硬化体の表面にエフロレッセンスの生成量と生成位置とをコントロールしやすくなり、自然な風合いとなるエフロレッセンスの量や模様を有する所望のエフロ模様(エフロレッセンスにより形成される模様)を得やすくなる。
【0013】
(2)詳細
<水硬性硬化体>
本実施形態に係る水硬性硬化体は、壁材、屋根材、内装材、外装材などの建材として使用される。
【0014】
本実施形態に係る水硬性硬化体は、水硬性材料の硬化物である。水硬性材料は、セメント、シリカ質原料、増量材、マイカ、補強繊維などを固形分として含有し、さらに必要に応じて水を含有している。セメントは、例えば、ポルドランドセメントなどを含有することが好ましい。シリカ質原料は、例えば、SiO含有率が70質量%以上であるとともにブレーン値が3000cm以上のケイ石粉、前記以外のケイ石粉、シリカパウダー、高炉水砕スラグ、フライアッシュ、パルプスラッジ焼却灰、及び汚泥焼却灰からなる群から選択される少なくとも一つを含有することが好ましい。増量材は、骨材(細砂)、回収セメント製品の破砕物などを含有することが好ましい。増量材は、平均粒径が5mm未満の範囲内であることが好ましい。補強繊維は、例えば、パルプ、ビニロン繊維、ポリプロピレン繊維、及びロックウールからなる群から選択される少なくとも一つを含有することが好ましい。
【0015】
水硬性材料は、固形分(水以外の成分)100質量部に対して、セメントの含有量が30質量部以上70質量部以下であることが好ましく、シリカ質原料の含有量が30質量部以上60質量部以下であることが好ましく、補強繊維の含有量が3質量部以上6質量部以下であることが好ましく、増量材の含有量が5質量部以上40質量部以下の範囲内であることが好ましく、マイカの含有量が3質量部以上15質量部以下の範囲内であることが好ましい。
【0016】
水硬性材料は、固形分量に対する水の量の比(水の量/固形分量)は、5/95から30/70の範囲内であることが好ましい。なお、後述の表層3を形成する水硬性材料は基材2を形成する水硬性材料よりも水の含有量が少なく、例えば、表層3を形成する水硬性材料は水を含んでいなくてもよい。また、水硬性材料中のSiのモル量に対する、水硬性材料中のCaのモル量の比は(Caのモル量/Siのモル量)は、0.5以上0.9以下であることが好ましい。この場合、水硬性硬化体の表面に適度なエフロレッセンスが生じやすい。このため、水硬性材料に含まれる各成分の配合割合は、Siのモル量に対するCaのモル量の比が、上記範囲内となるように調整することが好ましい。
【0017】
図1に示すように、本実施形態に係る水硬性硬化体1は、基材2と表層3とを備えている。表層3は基材2の厚み方向の片面上に形成されている。基材2と表層3とはいずれも水硬性材料の硬化物で形成することができるが、基材2を形成する水硬性材料と表層3を形成する水硬性材料とは、組成及び性状を異ならせることができる。また基材2と表層3とは製法を異ならせることができる。例えば、基材2は、スラリー状の水硬性材料を抄造法により板状に成形し、その後、養生硬化して形成することができる。また基材2は、粘稠性のある水硬性材料を押出法により板状に成形し、その後、養生硬化して形成することができる。また表層3は、乾燥状態又は水分を僅かに含む水硬性材料を基材2の表面に層状に供給(散布)し、その後、基材2とともに養生硬化して形成することができる。なお、乾燥状態の水硬性材料を使用する場合は、基材2の表面に散布した後、水を散布することにより、水を含有する水硬性材料を基材2の表面上に設けることができる。
【0018】
そして、本実施形態に係る水硬性硬化体1は、表面に硬化阻害物質とエフロレッセンスとを含んでいる。ここで、水硬性硬化体1の表面は、建材等として使用した場合に外側に向いて施工される面である。図1の例では、表層3の表面(基材2と対向する面と反対側の面)が水硬性硬化体1の表面として形成されている。
【0019】
硬化阻害物質は、水硬性材料の硬化を阻害する物質である。すなわち、表層3の表面の一部には硬化阻害物質が存在し、硬化阻害物質が存在する部分では、硬化阻害物質が存在していない部分に比べて、水硬性材料の硬化が阻害されやすい。従って、硬化阻害物質が存在する部分では、エフロレッセンスを生成するための主成分である水酸化カルシウムの量が少なく、エフロレッセンスが生じにくい。一方、表層3の表面において、硬化阻害物質が存在していない部分では、硬化阻害物質が存在している部分に比べて、水硬性材料の硬化が阻害されにくい。従って、硬化阻害物質が存在していない部分では、エフロレッセンスを生成するための主成分である水酸化カルシウムの量が多く、エフロレッセンスが生じやすい。このようにして、水硬性硬化体1の表面には、硬化阻害物質とエフロレッセンスとが混在した状態になっている。
【0020】
そして、水硬性硬化体1の表面には、エフロレッセンスにより形成される模様(エフロ模様)が形成されているが、硬化阻害物質の有無で水硬性硬化体1の表面にエフロレッセンスの生成量と生成位置とをコントロールしやすくなり、自然な風合いとなるエフロレッセンスの量や模様を有する所望のエフロ模様を得やすくなる。例えば、硬化阻害物質を水硬性硬化体1の表面の一部に偏って存在させることにより、水硬性硬化体1の表面の硬化阻害物質が存在していない部分に偏ってエフロレッセンスを生成することができる。また、硬化阻害物質を水硬性硬化体1の表面の全体にほぼ均一に存在させることにより、水硬性硬化体1の表面の全体にほぼ均一にエフロレッセンスを生成することができる。このように硬化阻害物質の量や存在位置をコントロールすることで、自然な風合いとなるエフロレッセンスの量や模様をコントロールして生成しやすくなる。
【0021】
ここで、硬化阻害物質とは水硬性材料の硬化を阻害する硬化阻害機能を有する物質である。硬化阻害物質は、例えば、酸と塩基とが中和反応することで得られる塩に含まれている。この場合、塩における酸由来の部分が硬化阻害物質として作用する。すなわち、酸由来のイオン又はこのイオンから得られる化合物が硬化阻害物質として作用する。塩が弱酸塩の場合は、弱酸に由来する部分が硬化阻害物質として作用する。例えば、弱酸塩がリン酸カリウム(KPO)の場合は、リン酸イオン(PO )及びリン酸イオンから得られる化合物が硬化阻害物質として作用する。また弱酸塩が酢酸カリウム(CHCOOK)の場合は、酢酸イオン(CHCOO)及び酢酸イオンから得られる化合物が硬化阻害物質として作用する。なお、リン酸イオン又は酢酸イオンから得られる化合物とは、リン酸イオン又は酢酸イオンと、水硬性材料中のイオン(例えば、Ca2+、Naなどの金属イオン)とが反応して得られる化合物である。
【0022】
また硬化阻害物質が塩における酸由来の部分である場合、この塩の塩基由来の部分はエフロ生成核物質として作用する場合がある。エフロ生成核物質は、エフロレッセンスの生成の際に核となるエフロ生成核機能を有する。すなわち、塩基由来のイオン又はこのイオンから得られる化合物がエフロ生成核物質として作用する。エフロ生成核物質が核となってエフロレッセンスが出現するため、エフロレッセンスが自然な風合いとなる。塩が弱酸塩の場合は、弱酸に由来する部分がエフロ生成核物質として作用する。例えば、弱酸塩がリン酸カリウム(KPO)又は酢酸カリウム(CHCOOK)の場合は、カリウムイオン(K)及びカリウムイオンから得られる化合物がエフロ生成核物質として作用する。カリウムイオンから得られる化合物とは、カリウムイオンと、水硬性材料中のイオン(例えば、CO 2-、SO 2-などのイオン)とが反応して得られる化合物である。
【0023】
このように本実施形態に係る水硬性硬化体1は、硬化阻害物質が存在する表面の一部ではエフロレッセンスが生成されにくく、エフロ生成核物質が存在する表面の一部ではエフロレッセンスが生成されやすい。従って、エフロレッセンスの生成量や生成位置(模様)をコントロールして生成しやすくなる。
【0024】
<水硬性硬化体の製造方法>
本実施形態に係る水硬性硬化体1の製造方法は、第1工程と第2工程とを備える。第1工程は、水硬性材料を主成分とする成形体の表面上にエフロ模様生成材料を設ける工程である。水硬性材料を主成分とする成形体は、養生硬化により基材2となる。この成形体は、上記のような抄造法や押出法により板状に形成されている。エフロ模様生成材料は、水硬性材料の硬化を阻害する硬化阻害機能と、エフロレッセンスの生成の際に核となるエフロ生成核機能と、を有する。エフロ模様生成材料は、上記の硬化阻害物質とエフロ生成核物質とを含むことが好ましい。従って、エフロ模様生成材料は、上記の弱酸塩を含むことができ、具体的には、リン酸カリウム及び酢酸カリウムの少なくとも一方を含むことが好ましい。
【0025】
エフロ模様生成材料は、顆粒状であることが好ましい。後述のように、エフロ模様生成材料は表層2を形成するための水硬性材料に配合して使用される。表層2を形成するための水硬性材料は水を含まないか、ほとんど含まないため、ほぼ乾燥状態の水硬性材料である。従って、エフロ模様生成材料が顆粒状の方が液状の場合よりも混合しやすい。またエフロ模様生成材料は成形体の表面に直接散布することもあり、この場合は、液状よりも顆粒状の方が散布しやすい。さらにエフロ模様生成材料は、水硬性硬化体1の内部に存在するよりも表面付近に存在する方がエフロレッセンスの生成のコントロールが行いやすい。そして、液状のエフロ模様生成材料であれば、成形体に染み込んで表面付近に留まらせることが難しくなるが、顆粒状のエフロ模様生成材料であれば、成形体に染み込みにくく、表面付近に留めやすい。顆粒状のエフロ模様生成材料は、粒径が2μm以下であることが好ましいが、特に限定されない。なお、エフロ模様生成材料は、水溶液としてのpHが4~9のものが使用でき、例えば、リン酸カリウムは水溶液のpHが4~5を示し、酢酸カリウムは水溶液のpHが7~9である。またエフロ模様生成材料は、強酸塩よりも弱酸塩の方が好ましい。強酸塩の場合は、硬化阻害物質の作用が大きくなり、エフロレッセンスの生成が阻害されすぎるおそれがある。
【0026】
第1工程では、成形体の表面上に表層3を形成するための水硬性材料を層状に供給する工程を含む。表層3を形成するための水硬性材料は、養生硬化により基材2の表面上で表層3となる。そして、表層3を形成するための水硬性材料には、エフロ模様生成材料を配合してもよい。この場合、表層3を形成するための水硬性材料を成形体の表面上に供給(散布)するのと同時に、エフロ模様生成材料の散布も行うことができ、生産性が高まる。また成形体の表面上に表層3を形成するための水硬性材料を層状に供給した後、この水硬性材料にエフロ模様生成材料を散布してもよい。さらに成形体の表面上に表層3を形成するための水硬性材料を層状に供給した後、この水硬性材料に水を散布する場合があるが、この水にエフロ模様生成材料を含有させておいてもよい。なお、表層3を形成するための水硬性材料を成形体の表面上に供給する前に、成形体の表面上にシーラー塗料を塗布してもよい。この場合、シーラー塗料中にエフロ模様生成材料を配合してもよい。
【0027】
第2工程は、上記第1工程の後に行われる。第2工程は、成形体と、成形体の表面上に供給された表層3を形成するための水硬性材料とを養生硬化する工程である。この養生硬化により成形体から基材2が形成され、表層3を形成するための水硬性材料から表層3が形成される。養生硬化としては、自然養生、蒸気養生、オートクレーブ養生の一つ又は複数を行うことができる。例えば、オートクレーブ養生の場合は、効果的にエフロレッセンスを生じさせるために、160℃以上180℃以下、0.5MPa以上0.9MPa以下、8時間以上13時間以下の条件で行うことが好ましい。
【0028】
このようにして第2工程を行うと、基材2と表層3とを備えた水硬性硬化体1が得られる。この水硬性硬化体1の表層3の表面には、エフロ模様生成材料により、自然な風合いのエフロ模様が形成されている。
【0029】
(変形例)
実施形態は、本発明の様々な実施形態の一つに過ぎない。実施形態は、本発明の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0030】
水硬性硬化体1としては、基材2と表層3との二層のものを説明したが、これに限らず、表層3の無い水硬性硬化体であってもよい。この場合、基材に対応する部分のみで、水硬性硬化体が形成される。
【0031】
エフロ模様生成材料は、液状であってもよい。この場合、塗布や散布などの手段で成形体の表面上又は表層2を形成するための水硬性材料の層に供給することができる。また液状のエフロ模様生成材料は、表層2を形成するための水硬性材料に配合してもよい。
【0032】
エフロ模様生成材料は、弱酸塩のように、硬化阻害機能とエフロ生成核機能の両方を有するものだけでなく、硬化阻害物質とエフロ生成核物質とを別々の化合物として含んでいてもよい。
【実施例0033】
(実施例1~4、比較例1、2)
水硬性材料を主成分とする成形体を抄造法により成形し、この成形体の表面上にシーラー塗料を塗布した後、エフロ模様生成材料を配合した水硬性材料を層状に散布した。この後、オートクレーブ養生により成形体と散布した水構成材料とを養生硬化することにより基材と表層からなる水硬性硬化体を形成した。エフロ模様生成材料としては、弱酸塩であるリン酸カリウムを使用した。実施例1,2及び比較例1では基材は黒色であった。実施例3,4及び比較例2では基材はベージュ色であった。
【0034】
表1には、表層を形成するための水硬性材料の組成、弱酸塩の配合量、CaとSiの含有比(C/S)、シーラー塗料の希釈率、シーラー塗料の塗布量を示す。また図2A図2C及び図3A図3Cに、実施例1~4及び比較例1、2の写真を示す。
【0035】
【表1】
【0036】
(まとめ)
以上説明したように、第1の態様に係る水硬性硬化体1は、表面に水硬性材料の硬化を阻害する硬化阻害物質及びエフロレッセンスを含む。
【0037】
この態様によれば、硬化阻害物質の有無により、エフロレッセンスの生成量や生成位置をコントロールしやすくなり、所望のエフロ模様が得やすい、という利点がある。
【0038】
第2の態様は、第1の態様に係る水硬性硬化体1であって、前記硬化阻害物質が弱酸塩に含まれる。
【0039】
この態様によれば、弱酸塩の有無により、エフロレッセンスの生成量や生成位置をコントロールしやすくなり、所望のエフロ模様が得やすい、という利点がある。
【0040】
第3の態様は、第2の態様に係る水硬性硬化体1であって、前記弱酸塩が顆粒状である。
【0041】
この態様によれば、液状の場合に比べて、顆粒状の弱酸塩の方が散布しやすくなり、生産性を向上させることができる、という利点がある。
【0042】
第4の態様は、第1~3のいずれか1つの態様に係る水硬性硬化体1であって、基材2と、基材2の表面上に設けられた表層3と、を備える。表層3は、前記水硬性材料と前記硬化阻害物質とを含む。
【0043】
この態様によれば、基材2よりも表面側にある表層3において、エフロレッセンスの生成量や生成位置をコントロールしやすくなる、という利点がある。
【0044】
第5の態様に係る水硬性硬化体の製造方法は、第1工程と第2工程とを有する。前記第1工程は、水硬性材料を主成分とする成形体の表面上に、前記水硬性材料の硬化を阻害する硬化阻害機能と、エフロレッセンスの生成の際に核となるエフロ生成核機能と、を有するエフロ模様生成材料を設ける。前記第2工程は、前記第1工程後に、前記成形体を養生する。
【0045】
この態様によれば、エフロ模様生成材料の有無により、エフロレッセンスの生成量や生成位置をコントロールしやすくなり、所望のエフロ模様が得やすい、という利点がある。
【0046】
第6の態様は、第5の態様に係る水硬性硬化体1の製造方法であって、前記エフロ模様生成材料は顆粒状であり、前記第1工程で前記成形体の表面上に前記エフロ模様生成材料を散布して設ける。
【0047】
この態様によれば、液状のエフロ模様生成材料と場合に比べて、顆粒状のエフロ模様生成材料の方が散布しやすくなり、生産性を向上させることができる、という利点がある。
【符号の説明】
【0048】
1 水硬性硬化体
2 基材
3 表層
図1
図2
図3