(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022176750
(43)【公開日】2022-11-30
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
B60K 35/00 20060101AFI20221122BHJP
【FI】
B60K35/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021083331
(22)【出願日】2021-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 裕
(72)【発明者】
【氏名】小野 泰弘
(72)【発明者】
【氏名】白井 貴博
【テーマコード(参考)】
3D344
【Fターム(参考)】
3D344AA19
3D344AA21
3D344AC07
3D344AD01
3D344AD11
(57)【要約】
【課題】車両の内装部材に設けられている既存の機器の機能を妨げることなく、新たな表示を加えることができる表示装置を提供することにある。
【解決手段】車両の内装部材110に収納され、車両の内装部材110の近傍に空中結像される像22を表示する表示実体10と、表示実体10を空中結像する光学系と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の内装部材に収納され、前記車両の内装部材の近傍に空中結像される像を表示する表示実体と、
前記表示実体を空中結像する光学系と、
を備える表示装置。
【請求項2】
前記車両の内装部材は、インストルメントパネルである、
請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記表示実体の空中結像は、前記車両の内装部材で遮光される場所を背景に結像される、
請求項1又は2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記表示実体の空中結像は、空調気流の吹出口の近傍に結像される、
請求項3に記載の表示装置。
【請求項5】
前記表示実体は、着脱可能とされている、
請求項1から4のいずれか一項に記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の内部にスマートフォンを取付ける構造であって、取付構造を介して車両の内装部材にスマートフォンを取付ける構成がある(例えば、特許文献1)。
【0003】
この構成によれば、取付構造を介して車両の内装部材にスマートフォンを配置できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の取付構造では、スマートフォンを配置したことによって、車両の内装部材に設けられている既存の機器の機能を妨げる懸念があった。
【0006】
したがって、本発明の目的は、車両の内装部材に設けられている既存の機器の機能を妨げることなく、新たな表示を加えることができる表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、車両の内装部材に収納され、車両の内装部材の近傍に空中結像される像を表示する表示実体と、表示実体を空中結像する光学系と、を備える表示装置を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の表示装置によれば、車両の内装部材に設けられている既存の機器の機能を妨げることなく、新たな表示を加えることができる表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係る表示装置を搭載した車両の車室前部の斜視図である。
【
図2】本発明の第1の実施の形態に係る表示装置の説明図である。
【
図3】本発明の第1の実施の形態に係る表示装置の変形例の概略構造図である。
【
図4】本発明の第2の実施の形態に係る表示装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る表示装置を搭載した車両の車室前部の斜視図である。
図2は、本発明の第1の実施の形態に係る表示装置の説明図であり、
図2(a)は正面からの視認図であり、
図2(b)は
図1のA-A断面の概略構造図である。
図3は、本発明の第1の実施の形態に係る表示装置の変形例の
図1のA-A断面の概略構造図であり、
図3(a)は第1の変形例の断面図であり、
図3(b)は第2の変形例の断面図である。
【0011】
図1に示すように、車両100の車室前部には、インストルメントパネル110(以下、インパネ110 と略する)が、トーボード101の後側において左右一対のフロントピラー102の間に渡されるように、配置されている。トーボード101は、車両100の前室と車室とを仕切る板状部材であり、フロントピラー102は、車体の左右両側に配置された骨格部材である。
【0012】
インパネ110は、内部に空間を有し、機器類、配線類、及びエアバッグ等が内部に配置可能となっている。インパネ110の表面には、複数の吹出口120、表示部材130、メータパネル140、及びグローブボックス150等が設けられている。吹出口120は、インパネ110内に配置される冷暖房や換気の空調装置(図示されていない)から供給される空調気流が吹き出す部位である。表示部材130は、ナビ情報及び車両100の駆動情報等を表示可能な部材であり、本実施の形態では接触操作でナビ操作だけでなく空調操作等も可能な液晶パネルを採用している。メータパネル140は、車両100の速度情報等を示す表示用の部材である。グローブボックス150は、開閉可能な蓋を有した収納スペースである。
【0013】
インパネ110の中央部の吹出口120は、
図2(b)のように、ルーバー123が配置されている。空調装置(図示されていない)から送風流入口124を通って供給される空調気流は、ルーバー123により風向きなどを調整されて、吹出口120から車両100の後方向となる車室に吹き出す。
【0014】
インパネ110の中央部の吹出口120周辺は、インパネ110が湾曲し傾斜している。このため、インパネ110は、
図2(b)のように、送風流入口124の下側が吹出口120から車両100の車室側に延伸された位置に、吹出口120の下面121を有する。
【0015】
本発明の第1の実施の形態の表示装置1は、インパネ110の中央部の吹出口120の下面121付近に設置されている。
【0016】
本発明の第1の実施の形態の表示装置1は、表示実体である表示デバイス10と光学系としての結像部材31とを備えている。
【0017】
表示デバイス10は、自発光型の表示デバイスであり、薄い略直方体形状の本体11と表示部12とを有している。表示部12は、本体11の一面に形成され、その面の大部分を占めている。表示デバイス10は、発光ダイオードを光源とする液晶ディスプレイであり、表示パターンの光を表示部12から発する。なお、表示デバイス10は、これに限らず、有機EL(Electro Luminescence)、蛍光表示管など他の自発光型の表示デバイスでもよい。また、別途、参照光源が必要となるが、非発光型の表示デバイスであってもよい。
【0018】
表示デバイス10は、保持具15によって、吹出口120の下面121の下に傾斜して設置されている。すなわち、表示デバイス10は、一方がインパネ110のアウトラインに沿った位置、かつ、吹出口120の下面121の近傍、他方がインパネ110のアウトラインと吹出口120の下面121から離れた位置とされている。そして、表示デバイス10の表示部12は、吹出口120側に向けて設置されている。
【0019】
結像部材31は、空中像を形成する平板状の光学材料である。結像部材31は、所定位置から発した光を結像部材31に対して対称な位置に至らせることによって結像し、空中像を形成する。このような結像部材31としては、例えば、アスカネット社製のASKA3Dプレートやパリティー・イノベーションズ社製のパリティーミラーがある。
【0020】
結像部材31は、乗車者側から見て吹出口120の手前に、吹出口120の下面121の一部として設置されている。
【0021】
上記のように表示デバイス10と結像部材31とが設置されていることで、表示デバイス10の表示部12から発し、結像部材31に至った光は、結像部材31に対して対称な位置に至る。そして、
図2(b)のように、乗車者側から見て、吹出口120の手前に空中像22が形成される。この結果、
図2(a)の空中像22を乗車者は視認する。
【0022】
空中像22は実体がないので、吹出口120から出る空気の流れには、空中像22は影響を及ぼさない。
【0023】
空中像22は、表示デバイス10の表示部12から発し、結像部材31に至った光のうち、結像部材31に対して対称な位置に至った光で形成される。このため、空中像22は、表示デバイス10の表示部12より輝度が低くなる。しかし、空中像22の輝度が高くなくても、空中像22の視認性を良好に保つことができる。
【0024】
すなわち、インパネ110を背景に、乗車者は空中像22を視認する。この場合、フロントガラス103を背景にするときのように、車両100の外部からの直接光の影響を受けることはない。さらに、インパネ110によって遮光される吹出口120の内部を背景に、乗車者は空中像22を視認するので、車両100の外部からの間接光の影響も小さい。
【0025】
(第1の実施の形態の第1の変形例)
図3(a)は、第1の実施の形態の第1の変形例の表示装置1である。第1の変形例の表示装置1は、インパネ110に表示デバイス10の挿入口125が設けられ、表示デバイス10が着脱可能とされている。
【0026】
表示デバイス10は、スマートフォンである。スマートフォンは横向きで、インパネ110内に挿入される。スマートフォンが挿入されて、所定位置に置かれたスマートフォンの画像は、乗車者側から見て吹出口120の手前に、空中像22として形成される。そして、乗車者はスマートフォンの画像を空中像22として視認する。
【0027】
なお、表示装置1は、スマートフォンを取り出す、取り出し機構を備えていてもよい。取り出し機構は、スマートフォンを押し出す機構や、スマートフォンのホルダーを備え、このホルダーがスライドする機構などを用いることができる。また、スマートフォンは縦向きにインパネ110内に挿入されるものであっても構わない。
【0028】
また、表示装置1は、挿入されて所定位置に置かれたスマートフォンへ電力供給ができるものとしてもよい。これにより、表示装置1は、充電機能を持ったものにできるとともに、長時間の連続表示を可能にできる。
【0029】
(第1の実施の形態の第2の変形例)
図3(b)は、第1の実施の形態の第2の変形例の表示装置1である。第2の変形例の表示装置1は、表示装置1の設置位置が、吹出口120の奥の下部とされている。そして、表示デバイス10の表示部12の空中像22は、乗車者側から見て、吹出口120の奥に形成される。
【0030】
吹出口120の奥の空中像22は、インパネ110によって遮光された暗い空間に形成される画像であるため、より周囲の光に影響されず、視認性を高めることができる。一方で、乗車者側から見て、吹出口120の奥に空中像22が形成されるため、ルーバー123による遮光によって、表示デバイス10の表示部12の一部が欠けた画像を乗車者は視認することになる。しかし、吹出口120の奥に空中像22は、詳細ではない図柄、あるいは、温風を表す赤色や冷風を表す青色など色識別を主とした画像の場合に適する。
【0031】
なお、表示装置1の設置位置が、第1の実施の形態と第1の実施の形態の第2の変形例との中間位置などとしてもよい。この場合、空中像22は、乗車者側から見て、吹出口120のすぐ手前や、横に配列されたルーバー123のある位置に形成される。あるいは、空中像22は、縦に配列されたルーバー123の奥の位置に形成されるものとしてもよい。
【0032】
[第2の実施の形態]
図4は、本発明の第2の実施の形態に係る表示装置の説明図であり、
図4(a)は正面からの視認図、
図4(b)は
図1のA-A断面の概略構造図である。以下の説明において、第1の実施の形態と同一の構成及び機能を有する部分については同一の引用数字を付している。
【0033】
第2の実施の形態の表示装置2は、主に、光学系が結像部材32とビームスプリッター33とで構成されていることと、距離センサ40を備えることとにおいて第1の実施の形態と相違している。以下、この相違点について重点的に説明する。
【0034】
図4(b)のように、表示装置2は、表示実体である表示デバイス10と光学系としての結像部材32とビームスプリッター33とを備えている。
【0035】
結像部材32は、空中像を形成するシート状の光学材料である。結像部材32は、所定位置から発した光を結像部材31に対して同じ位置に至らせることによって結像し、空中像を形成する。ビームスプリッター33は、入射光の一部を透過して、入射光の一部を反射するハーフミラーなどである。なお、結像部材32は、平面状に限らず、曲面状としてもよい。そして、所定位置から発した光を結像部材31に対して同じ位置ではない位置に至らせて結像し、倍率などが異なる空中像を形成するものであってもよい。
【0036】
結像部材32は、保持具16によって、表示デバイス10とともに固定保持されている。結像部材32は、表示デバイス10に対し、一例として、直交する角度関係で設置されている。なお、結像部材32と表示デバイス10の角度は、90°に限定されない。
【0037】
ビームスプリッター33は、乗車者側から見て、吹出口120の手前から吹出口120の下部に、吹出口120の下面121の一部として設置されている。
【0038】
上記のように表示デバイス10と結像部材32とビームスプリッター33とが設置されていることで、表示デバイス10の表示部12から発し、ビームスプリッター33で反射して、結像部材32に至った光は、結像部材32で反射する。そして、結像部材32で反射した光のうち、ビームスプリッター33を透過した光は、ビームスプリッター33に対して、表示デバイス10の表示部12と対称な位置に至る。そして、
図4(b)のように、乗車者側から見て、吹出口120の手前に空中像23が形成される。この結果、
図4(a)の空中像23を乗車者は視認する。
【0039】
乗車者が視認する空中像23は、
図4(a)のように、中央部の上部に温度を表す意匠の表示23aとそのときの温度の表示23bとが表示される。また、その中央部の表示の両端に、温度操作を行う上方向の表示23cと下方向の表示23dとが表示される。
【0040】
また、表示装置2は、2つの距離センサ40を備える。2つの距離センサ40は、
図4(b)のように、上方向の表示23cと下方向の表示23dとに対応した、吹出口120の上部の位置に設置される。
【0041】
距離センサ40は、乗車者が視認する空中像23である上方向の表示23cあるいは下方向の表示23dの位置に、乗車者が指を移動させてきた際に、乗車者の指を検出する。そして、車内室温の制御部は、距離センサ40の検出信号の判定を行い、温度の設定値の上げ下げを行う。
【0042】
以上のように、光学系が1枚の結像部材である構成に代えて、光学系が結像部材とビームスプリッターとで構成とした本実施の形態によっても、第1の実施の形態について説明した作用及び効果を得ることができる。
【0043】
さらに、空中像の位置にある対象物を検出するセンサを備えることで、空中像を用いたスイッチ機能をもった表示装置とすることができる。
【0044】
(本発明の実施の形態の効果)
上記した本発明の実施の形態によると、以下の効果が得られる。
(1)乗車者から見て、吹出口の周辺に形成された空中像は実体がない。このため、吹出口から出る空気の流れには、空中像は影響を及ぼさない。このように、車両の内装部材に設けられている既存の機器の機能を妨げることなく、新たな表示を加えることができる。
(2)車両の内装部材である吹出口を背景に、乗車者は空中像を視認する。このため、車両の外部からの光の影響は小さい。そして、空中像の輝度が高くなくても、空中像の視認性を良好に保つことができる。
【0045】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、これらの実施の形態は、一例に過ぎず、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。これら新規な実施の形態及びその変形例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更等を行うことができる。
【0046】
以上説明した実施の形態では、表示装置の設置場所を空調気流の吹出口付近として、空中像が吹出口付近に表示される構成を示したが、これに限るものではない。例えば、空中像はインパネの操作スイッチや表示部材の前面に表示されるものでもよい。また、空中像はグローブボックスの前や、蓋を開けたグローブボックスの内部に表示されるものでもよい。あるいは、インパネに限らず、空中像はコンソールボックスやドリンクホルダの上や内部などに表示されるものとしても構わない。
【0047】
これらでも、空中像は実体がないため、既存の機器の機能を妨げることなく、機能機器に新たな表示を加えることができる。また、空中像は車両の内装部材を背景にするため、空中像の輝度が高くなくても、空中像の視認性を良好に保つことができる。また、空中像は車両の内装部材によって遮光される場所を背景にすると、空中像の視認性をさらに良好にすることができる。
【0048】
なお、これら実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない。さらに、これら実施の形態及びその変形例は、発明の範囲及び要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0049】
1、2…表示装置、10…表示デバイス、11…本体、11…軸、12…表示部、16…保持具、22、23…空中像、31、32…結像部材、33…ビームスプリッター、40…距離センサ、100…車両、101…トーボード、102…フロントピラー、103…フロントガラス、110…インストルメントパネル(インパネ)、120…吹出口、121…下面、130…表示部材、140…メータパネル