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特開2022-176765配線基板、電子装置および電子装置の製造方法
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  • 特開-配線基板、電子装置および電子装置の製造方法 図1
  • 特開-配線基板、電子装置および電子装置の製造方法 図2
  • 特開-配線基板、電子装置および電子装置の製造方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022176765
(43)【公開日】2022-11-30
(54)【発明の名称】配線基板、電子装置および電子装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/18 20060101AFI20221122BHJP
   H01R 12/58 20110101ALI20221122BHJP
   H05K 1/02 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
H05K1/18 A
H01R12/58
H05K1/02 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021083358
(22)【出願日】2021-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】植田 直樹
(72)【発明者】
【氏名】塩見 巧
(72)【発明者】
【氏名】大村 良輔
【テーマコード(参考)】
5E223
5E336
5E338
【Fターム(参考)】
5E223AB18
5E223BA27
5E223BA70
5E223BB01
5E223BB12
5E223CB63
5E223CD01
5E223CD06
5E223CD12
5E223CD15
5E223DB01
5E223DB08
5E336AA01
5E336AA05
5E336AA12
5E336AA14
5E336BB03
5E336BC04
5E336BC34
5E336CC03
5E336EE11
5E336GG16
5E338AA03
5E338BB04
5E338BB13
5E338BB25
5E338BB75
5E338CD02
5E338EE26
(57)【要約】
【課題】スルーホールにプレスフィット端子を圧入するときに、配線基板の反対面側が変形して損傷することを抑制する技術を提供する。
【解決手段】本開示の1つの態様による配線基板12は、基板14と、スルーホール50と、第1のランド32と、第2のランド34と、を備える。スルーホールは、基板を貫通して形成され、プレスフィット端子50が圧入される。第1のランドは、基板の板厚方向の両面のうち、プレスフィット端子が圧入されるスルーホールの入口側の圧入面16においてスルーホールの周囲に形成される。第2のランドは、両面のうち圧入面と反対側の反対面18においてスルーホールの周囲に、基板の剛性を高める厚さに形成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板(14、64)と、
前記基板を貫通して形成され、プレスフィット端子(50)が圧入されるスルーホール(30、70、80)と、
前記基板の板厚方向の両面のうち、前記プレスフィット端子が圧入される前記スルーホールの入口側の圧入面(16)において前記スルーホールの周囲に形成される第1のランド(32、72、82)と、
前記両面のうち前記圧入面と反対側の反対面(18)において前記スルーホールの周囲に、前記基板の剛性を高める厚さに形成されている第2のランド(34、74、84)と、
を備える配線基板。
【請求項2】
請求項1に記載の配線基板であって、
前記第2のランドの厚さは、前記第1のランドを含み、前記基板に回路として形成されている導体のうち最も薄い導体(20、26、28、32)よりも厚い、
配線基板。
【請求項3】
請求項2に記載の配線基板であって、
前記反対面に回路として形成されている前記導体は、前記第2のランドの厚さよりも薄い導体(20)を備える、
配線基板。
【請求項4】
請求項2または3に記載の配線基板であって、
前記基板は多層基板であり、
層と層との間に形成された内層導体(26、28)を備え、
前記第1のランドと、前記内層導体のうち前記スルーホールに電気的に接続する接続導体(28)との少なくともいずれかの厚さは、前記最も薄い導体よりも厚い、
配線基板。
【請求項5】
請求項2から4のいずれか1項に記載の配線基板であって、
前記基板は弾性率の異なる2種類以上の材質で形成された多層基板であり、
前記基板において最も弾性率が高い層よりも弾性率が低い層に形成されている前記スルーホール(70、80)の中間ランド(76、86)の厚さは、前記最も薄い導体よりも厚い、
配線基板。
【請求項6】
配線基板(12、62)と、
前記配線基板に実装される電子部品(40、42)と、
を備え、
前記配線基板は、
基板(14、64)と、
前記基板を貫通して形成され、プレスフィット端子(50)が圧入されるスルーホール(30、70、80)と、
前記基板の板厚方向の両面のうち、前記プレスフィット端子が圧入される前記スルーホールの入口側の圧入面(16)において前記スルーホールの周囲に形成される第1のランド(32、72、82)と、
前記両面のうち前記圧入面と反対側の反対面(18)において前記スルーホールの周囲に、前記基板の剛性を高める厚さに形成されている第2のランド(34、74、84)と、
を備える、
電子装置。
【請求項7】
電子装置の製造方法であって、
前記電子装置(10、60)は、
スルーホール(30、70、80)が形成されている配線基板(12、62)と、
前記スルーホールに圧入されて前記スルーホールと電気的に接続するように構成されたプレスフィット端子(50)と、
を備え、
前記配線基板は、
基板(14、64)と、
前記基板を貫通して形成され、前記プレスフィット端子が圧入される前記スルーホールと、
前記基板の板厚方向の両面のうち、前記プレスフィット端子が圧入される前記スルーホールの入口側の圧入面(16)において前記スルーホールの周囲に形成される第1のランド(32、72、82)と、
前記両面のうち前記圧入面と反対側の反対面(18)において前記スルーホールの周囲に、前記基板の剛性を高める厚さに形成されている第2のランド(34、74、84)と、
を備え、
前記配線基板を支持する治具(2)を前記第2のランドに接触させた状態で、前記第1のランド側から前記スルーホールに前記プレスフィット端子を圧入する、
電子装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、スルーホールにプレスフィット端子が圧入される配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
基板を貫通するスルーホールが形成された配線基板において、スルーホールにプレスフィット端子を圧入する技術が知られている。
スルーホールにプレスフィット端子を圧入すると、プレスフィット端子を圧入する力が配線基板に加わるため、スルーホールの周辺の配線基板が損傷することがある。
【0003】
下記の特許文献1には、プレスフィット端子が傾いてスルーホールに圧入されるときに配線基板にひび割れが生じることを防ぐために、プレスフィット端子を圧入する入口側のスルーホールの開口周辺に設けた凹部に充填材を埋設する技術が記載されている。特許文献1に記載された技術では、開口周辺の凹部に埋設された充填材により、スルーホールにプレスフィット端子を圧入するときに配線基板に加わる力を低減しようとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-180079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
通常、スルーホールにプレスフィット端子を圧入する場合、配線基板の板厚方向の両面のうち、スルーホールにプレスフィット端子を圧入する入口側の圧入面と反対側の反対面に形成されたスルーホールランドに、配線基板を支持する治具が設置される。
【0006】
しかしながら、発明者の詳細な検討の結果、プレスフィット端子を圧入するときに、反対面側において、治具で支持されていないスルーホールの開口周辺の配線基板が変形して損傷するという課題が見出された。
【0007】
基板が柔らかい材質で形成されるか、あるいは基板が薄いなどのために基板の剛性が低い場合、配線基板が変形して損傷しやすい。
本開示の1つの局面は、スルーホールにプレスフィット端子を圧入するときに、配線基板の反対面側が変形して損傷することを抑制する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の1つの態様による配線基板(12、62)は、基板(14、64)と、スルーホール(30、70、80)と、第1のランド(32、72、82)と、第2のランド(34、74、84)と、を備える。
【0009】
スルーホールは、基板を貫通して形成され、プレスフィット端子(50)が圧入される。第1のランドは、基板の板厚方向の両面のうち、プレスフィット端子が圧入されるスルーホールの入口側の圧入面(16)においてスルーホールの周囲に形成される。第2のランドは、両面のうち圧入面と反対側の反対面(18)においてスルーホールの周囲に、基板の剛性を高める厚さに形成されている。
【0010】
本開示の他の態様による電子装置では、上記の配線基板の第2のランドに電子部品(42)が電気的に接続されている。
本開示の他の態様による電子装置の製造方法では、上記配線基板を支持する治具(2)を第2のランドに接触させた状態で、第1のランド側からスルーホールにプレスフィット端子を圧入する。
【0011】
このような上記の本開示の各態様の構成によれば、第2のランドは基板の剛性を高める厚さに形成されているので、スルーホールにプレスフィット端子を圧入するときに、配線基板の反対面側において、スルーホールの開口周辺の配線基板の変形を抑制できる。
【0012】
また、本開示の他の態様による電子装置によれば、基板の剛性を高める厚さに形成されている第2のランドに電子部品が電気的に接続されているので、電子部品に大きな電流を流すことができる。
【0013】
また、本開示の他の態様による電子装置の製造方法によれば、第1のランド側からスルーホールにプレスフィット端子を圧入するときに、第2のランドに加わる力を治具が支える。これにより、配線基板の反対面側において、スルーホールの開口周辺の配線基板の変形を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1実施形態の電子装置を示す断面図。
図2図1において治具を除去したときのII方向矢視図。
図3】第2実施形態の電子装置を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図を参照しながら、本開示の実施形態を説明する。
[1.第1実施形態]
[1-1.構成]
図1に示す電子装置10は、配線基板12と、電子部品40、42と、プレスフィット端子50と、を備える。
【0016】
配線基板12は、基板14と、配線20、22、24、26、28と、スルーホール30と、ランド32、34と、を備える。基板14は、多層基板であり、プレスフィット端子50が圧入されるスルーホール30の入口側の圧入面16と、板厚方向で圧入面16と反対側の反対面18とを有している。基板14は、単層であってもよい。
【0017】
配線20、22、24は、圧入面16と反対面18とに形成されている。配線26、28は、基板14の層と層との間に形成されている。配線22、24の厚さは、他の配線20、26、28よりも厚い。配線28はスルーホール30に電気的に接続している。
【0018】
スルーホール30は、基板14を貫通して形成されている。スルーホール30の内周面30aには、例えば銅めっきが形成されている。スルーホール30の内周面30aに形成された銅メッキは、基板14の板厚方向の両面において、スルーホール30の開口の周囲に形成されたランド32、34、ならびに配線28と電気的に接続している。
【0019】
ランド32は、基板14の圧入面16に形成されている。ランド34は、基板14の反対面18に形成されている。ランド34の厚さは、ランド32、配線20、22、24、26、28等の回路を形成する他の導体のうち、最も薄い導体の厚さよりも厚い。例えば、配線20、26、28とランド32とが最も薄い導体である。
【0020】
電子部品40は、はんだ44により配線20と電気的に接続されている。電子部品42は、はんだ44により配線22およびランド34に電気的に接続するランド34と同じ厚さの配線24と電気的に接続されている。配線22と配線24とは同じ厚さである。電子部品40は、例えば制御回路に使用されて制御信号が流れる電子部品である。電子部品42は、例えば駆動電流が流れる電子部品である。
【0021】
図1および図2に示すように、プレスフィット端子50は、スルーホール30に圧入されている。プレスフィット端子50は、ばね部52と、プレスフィット端子50の圧入方向と反対側でばね部52に続くリード部54とを有している。ばね部52は、長さ方向の両端で結合された二股状に形成されている。リード部54のばね部52と反対側は、例えば、図示しない電子部品と電気的に結合される。
【0022】
図1に示すように、プレスフィット端子50を圧入面16からスルーホール30に圧入する場合、反対面18側のランド34に治具2を接触させ、配線基板12を支持させる。スルーホール30にプレスフィット端子50を圧入すると、ばね部52が弾性変形して生じる弾性力により、プレスフィット端子50はスルーホール30内に保持される。
【0023】
プレスフィット端子50をスルーホール30に圧入するとき、プレスフィット端子50が弾性変形するときの弾性力により摩擦が発生し、スルーホール30に対して治具2に向けて力が加わる。治具2が接触しているランド34の厚さは、回路を形成する導体のうち最も厚さの薄い導体よりも厚いので、ランド34が形成された基板14の剛性は高くなっている。その結果、反対面18において、スルーホール30の開口周辺の配線基板12の変形が抑制される。
【0024】
[1-2.効果]
以上説明した第1実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1a)プレスフィット端子50が圧入されるスルーホール30の入口側の圧入面16と板厚方向で反対側の反対面18のスルーホール30の周囲に、最も厚さの薄い導体よりも厚いランド34が形成されている。これにより、基板14の剛性は高くなっている。
【0025】
その結果、反対面18のランド34に治具2を接触させた状態でスルーホール30にプレスフィット端子50を圧入するときに、反対面18側においてスルーホール30の開口周辺の配線基板12の変形を抑制できる。
【0026】
(1b)駆動電流が流れる電子部品42が厚さの厚い配線22とランド34に電気的に接続するランド34と同じ厚さの配線24とにはんだ付けされて電気的に接続しているので、電子部品42に電子部品40よりも大きな電流を流すことができる。
【0027】
以上説明した上記第1実施形態では、ランド32が第1のランドに対応し、ランド34が第2のランドに対応し、ランド32、34、配線20、22、24、26、28が基板14に回路として形成された導体に対応し、配線26、28が内層導体に対応し、配線28が接続導体に対応する。また、配線20、26、28とランド32とが最も薄い導体に対応する。
【0028】
[2.第2実施形態]
[2-1.第1実施形態との相違点]
第2実施形態は、基本的な構成は第1実施形態と同様であるため、相違点について以下に説明する。なお、第1実施形態と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0029】
前述した第1実施形態では、スルーホール30に、圧入面16側と反対面18側との2箇所にランド32、34が形成されていた。
これに対し、図3に示す第2実施形態の電子装置60の配線基板62では、スルーホール70、80の圧入面16側と反対面18側とに加え、基板64の層と層との間に中間ランド76、86が形成されている点で、第1実施形態と相違する。反対面18側のランド74、84と中間ランド76、86とが形成されている基板64の層64aの材質は、他の層64bの材質よりも弾性率が低い。
【0030】
スルーホール70では、反対面18側のランド74、中間ランド76、圧入面16側のランド72の順番で厚さが厚くなっている。ランド74および中間ランド76の厚さは、配線基板62において回路を形成する導体のうち最も薄い導体である配線26、28よりも厚くなっている。
【0031】
スルーホール80では、反対面18側のランド84の厚さが一番厚くなっており、中間ランド86および圧入面16側のランド82の厚さは同じであり、ランド84よりも薄くなっている。ランド82、84および中間ランド86の厚さは、配線基板62の導体のうち最も薄い導体である配線26、28よりも厚くなっている。
【0032】
[2-2.効果]
以上説明した第2実施形態によれば、前述した第1実施形態の効果(1a)に加え、さらに、以下の効果を得ることができる。
【0033】
(2a)反対面18側のランド74、84だけでなく、他のランド82と中間ランド76、86との厚さも、配線基板62において回路を形成する導体のうち最も薄い導体である配線26、28よりも厚くなっているので、基板64の剛性がより高くなっている。
【0034】
(2b)基板64の他の層の材質よりも弾性率が低い層64aに形成されているランド74、84と中間ランド76、86との厚さが、配線基板62において回路を形成する導体のうち最も薄い導体である配線26、28よりも厚くなっている。このように、厚さの厚いランド74、84と中間ランド76、86とが形成されていることにより、弾性率が低いために変形しやすい層64aの剛性が高くなる。その結果、スルーホール30にプレスフィット端子50を圧入するときに、反対面18側においてスルーホール70、80の開口周辺の配線基板62の変形を抑制できる。
【0035】
以上説明した上記第2実施形態では、ランド72、82が第1のランドに対応し、ランド74、84が第2のランドに対応する。
[3.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上記の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0036】
(3a)上記実施形態では、スルーホール30、70、80に形成されて最も薄い導体よりも厚いランドの厚さは、1種類または2種類であったが、これに限るものではなく、3種類以上であってもよい。
【0037】
(3b)第2実施形態において、スルーホール80に電気的に接続する配線28の厚さを、スルーホール80の周囲の基板64の剛性を高めるために、最も薄い導体である配線26より厚くしてもよい。この場合、配線28は、接続導体に対応する。
【0038】
(3c)上記実施形態では、制御信号が流れる電子部品40を最も厚さの薄い配線20と電気的に接続させたが、これに限るものではない。例えば、最も薄い導体よりも厚さの厚い配線に電子部品40を電気的に接続させてもよい。
【0039】
(3d)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加または置換してもよい。
【0040】
(3e)上記の配線基板12、62と電子装置10、60の他、当該配線基板12、62または電子装置10、60を構成要素とするシステムなど、種々の形態で本開示を実現することもできる。
【符号の説明】
【0041】
2:治具、10、60:電子装置、12、62:配線基板、14、64:基板、16:圧入面、18:反対面、20、22、24:配線(導体)、26:配線(内層導体)、28:配線(内層導体、接続導体)、30、70、80:スルーホール、32、72、82:ランド(第1のランド、導体)、34、74、84:ランド(第2のランド、導体)、76、86:中間ランド(導体)、40、42:電子部品、50:プレスフィット端子
図1
図2
図3