IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 関西ペイント株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-見本色票 図1
  • 特開-見本色票 図2
  • 特開-見本色票 図3
  • 特開-見本色票 図4
  • 特開-見本色票 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022176772
(43)【公開日】2022-11-30
(54)【発明の名称】見本色票
(51)【国際特許分類】
   G01J 3/52 20060101AFI20221122BHJP
   G09F 5/04 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
G01J3/52
G09F5/04 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021083366
(22)【出願日】2021-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000001409
【氏名又は名称】関西ペイント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100214363
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】永井 弘樹
【テーマコード(参考)】
2G020
【Fターム(参考)】
2G020AA08
2G020DA05
2G020DA06
2G020DA16
2G020DA45
(57)【要約】
【課題】サンプルの光輝感及び/又は色調を目視評価する際に、測定時のばらつき、測定者間のばらつき及びカメラ付きセンサーを用いて詳細に測定した際の評価からの乖離を低減できる、見本色票を提供すること。
【解決手段】支持体上に、光輝感及び/又は色調を有する塗色見本が配置されるとともに、適正な観察角度である場合に所定の色調を示す補助部が設けられている、見本色票。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に、光輝感及び/又は色調を有する塗色見本が配置されるとともに、適正な観察角度である場合に所定の色調を示す補助部が設けられている、見本色票。
【請求項2】
補助部の正面の色調と補助部のスカシの色調とが、目視で識別可能である、請求項1に記載の見本色票。
【請求項3】
補助部の正面の色調と補助部のスカシの色調とが補色の関係になっている、請求項1又は2に記載の見本色票。
【請求項4】
補助部は、干渉顔料を含有する層を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の見本色票。
【請求項5】
支持体上に、複数水準の光輝感及び/又は色調を有する各塗色見本が並べて配置されている、請求項1~4のいずれか1項に記載の見本色票。
【請求項6】
光輝感及び/又は色調が異なる複数種類の請求項1~5のいずれか1項に記載の見本色票を有する、見本色票セット。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか1項に記載の見本色票と、比色対象の光輝感及び/又は色調を目視にて比較する工程を含む、比色方法。
【請求項8】
比色対象が、車体又は調色塗板である、請求項7に記載の比色方法。
【請求項9】
請求項1~5のいずれか1項に記載の見本色票又は請求項6の見本色票セットと、測色機を含む、比色用キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、見本色票、光輝感及び/又は色調が異なる複数種類の見本色票を有する見本色票セット、見本色票と比色対象の光輝感及び/又は色調を目視にて比較する工程を含む比色方法、見本色票と測色機を含む比色用キットに関する。特に、塗料の調色過程における目視評価において有用な、見本色票、見本色票セット、比色方法及び比色用キットに関する。
【背景技術】
【0002】
塗料の調色作業、例えば、自動車補修用塗料の調色作業では、ターゲットと調色塗板を比色する際に目視での確認を行っている。しかしながら、光輝性顔料を含有する塗膜は、光源、サンプル、調色者の位置や角度により様々な見え方があるため、光輝性顔料の粒子感や色調が一致しているかを目視で定量的に判定することが困難であった。
定量的に判定することが困難であるため、調色者ごとに、また、作業ごとに色一致の判定や調色の終了判定がばらつくことがあった。さらに、コンピューター調色(CCM)作業時に、光輝性顔料を含む塗膜における光輝感を目視で判定する際、調色者によって結果が異なるため、CCMの精度にも影響が生じることがあった。
特許文献1には、メタリック塗料等の光輝性顔料を含む塗料の調色に際して、メタリック感を容易に判定できる塗料調色用光輝感見本色票が記載されている。
特許文献2には、熟練者でなくても、比較的容易に色の判別ができる、類似の原色の発色特性の違いを際立たせた色見本カード及び複数枚の色見本カードを1つにまとめた色見本帳が記載されている。
特許文献3には、マイカ顔料を含有するパール調塗膜の補修において、被補修塗膜と補修塗膜とのマイカベース塗膜の膜厚差に起因する、パール感や、すかし位置から見た場合の色相差等を、簡単に無くすことができるような比色用カラーカード、及びそれを用いた簡便な塗膜補修方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-93522号公報
【特許文献2】特開2001-290429号公報
【特許文献3】特開2003-29642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1~3に記載されている各見本色票は、特に、観察角度を一定の範囲にすることについてなんら考慮されていない。このため、光源、サンプル、調色者の位置や角度により様々な見え方がある光輝性顔料を含む塗膜について、光輝感及び/又は色調を目視にて評価する際に、測定時のばらつき、測定者間のばらつきが大きいことに加え、カメラ付きセンサーを用いて詳細に測定した際の評価からの乖離が大きく、調色作業等に大きな負担がかかっていた。
本発明が解決しようとする課題は、サンプルの光輝感及び/又は色調を目視評価する際に、測定時のばらつき、測定者間のばらつき及びカメラ付きセンサーを用いて詳細に測定した際の評価からの乖離を低減できる、見本色票を提供することである。また、複数種類の当該見本色票を有する見本色票セット、当該見本色票を用いて比色対象の光輝感及び/又は色調を目視にて比較する工程を含む比色方法、当該見本色票と測色器を含む比色用キットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、複数水準の光輝感及び/又は色調を有する各塗色見本が並べて配置されており、適正な観察角度である場合に所定の色調を示す補助部が各塗色見本の間に設けられている、見本色票によって、上記課題の解決が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、以下の見本色票、見本色票セット、比色方法及び比色用キットを提供するものである。
項1:支持体上に、光輝感及び/又は色調を有する塗色見本が配置されるとともに、適正な観察角度である場合に所定の色調を示す補助部が設けられている、見本色票。
項2:補助部の正面の色調と補助部のスカシの色調とが、目視で識別可能である、項1に記載の見本色票。
項3:補助部の正面の色調と補助部のスカシの色調とが補色の関係になっている、項1又は2に記載の見本色票。
項4:補助部は、干渉顔料を含有する層を有する、項1~3のいずれか1項に記載の見本色票。
項5:支持体上に、複数水準の光輝感及び/又は色調を有する各塗色見本が並べて配置されている、項1~4のいずれか1項に記載の見本色票。
項6:光輝感及び/又は色調が異なる複数種類の項1~5のいずれか1項に記載の見本色票を有する、見本色票セット。
項7:項1~5のいずれか1項に記載の見本色票と、比色対象の光輝感及び/又は色調を目視にて比較する工程を含む、比色方法。
項8:比色対象が、車体又は調色塗板である、項7に記載の比色方法。
項9:項1~5のいずれか1項に記載の見本色票又は項6の見本色票セットと、測色機を含む、比色用キット。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、サンプルの光輝感及び/又は色調を目視評価する際に、測定時のばらつき、測定者間のばらつき及びカメラ付きセンサーを用いて詳細に測定した際の評価からの乖離を低減できる、見本色票を提供することができる。また、複数種類の当該見本色票を有する見本色票セットを提供することができる。さらに、当該見本色票を用いる、比色対象の光輝感及び/又は色調を目視にて比較する工程を含む比色方法、当該見本色票と測色器を含む比色用キットを提供することができる。
【0007】
特に、光源、サンプル、測定者の位置や観察角度により光輝感及び/又は色調が変化するサンプルの目視評価を行う際に、測定時のばらつき、測定者間のばらつき、カメラ付きセンサーを用いて詳細に測定した際の評価からの乖離を低減することができ、調色経験の少ない測定者(調色作業者)であっても、比色時の判断に迷うことがなく、精度のよい調色を行うことが可能となる。
これにより、調色作業時における塗料の作成過多(作りすぎ)を防止することができ、コスト削減に寄与する。さらに、微調色回数の低減や比色作業の負担軽減による作業負担の軽減に寄与する。特に光輝感を有する塗膜の補修塗装において有用である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の見本色票の一実施態様を表す図。
図2】本発明の見本色票を適正な観察角度(正面)で観察した際の図。
図3】本発明の見本色票を適正ではない観察角度(スカシ)で観察した際の図。
図4】本発明の見本色票の適正な観察角度を示す図。
図5】本発明の見本色票セットの一実施態様を表す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る見本色票、見本色票セット、比色方法及び比色用キットの好適な一実施態様について説明するが、本発明は、以下の一実施態様に限定されるものではない。また、本発明の効果を奏する範囲を逸脱しない範囲において適宜変更することが可能である。なお、異なる図面における同じ参照番号の使用は、類似又は同一の項目又は特徴を示す。
【0010】
本発明における「光輝感」は、光輝性顔料を含む塗膜等の被測色表面を観察した際に感じられる質感である。例えば、巨視的な観察で知覚される質感であるマクロ光輝感、微視的な観察で知覚される質感であるミクロ光輝感、奥行感覚(深み感)、鮮明度等が挙げられる。
ミクロ光輝感とは、アルミニウムフレーク、光輝性マイカフレークなどの光輝性顔料を含む塗色に発現する固有の光輝性の質感を意味する。例えばアルミニウム、マイカ等の目の粗さやギラギラ、キラキラした輝き、ザラザラした質感、粒子の大きさなどが該当する。
ミクロ光輝感の測定値には、光学的測定機によって測定されたハイライトの粒子感(HG)、ハイライトのキラキラ感(HB)、シェードのキラキラ感(SB)、低照度条件でのハイライトのキラキラ感(HB)などの測定値があるが、本発明で採用されるミクロ光輝感の測定値は、調色での実用面から、特にハイライトの粒子感(HG)及びハイライトのキラキラ感(HB)の測定値であることが望ましい。HGは、Hi-light Graininessの略称であり、HBは、Hi-light Brillianceの略称である。
上記HG及びHBの測定は、これらを測定可能な装置であれば特に制限ないが、通常、CCDカメラと画像解析装置と(可変)光源とを具備するシステムを用いて行われる。被測定面に対して垂線上に設置したCCDカメラで、光源によってカメラから見て入射角15~45°の光で照明された被測定面が撮影され、得られた画像が、画像解析装置によって画像処理されてHG値及びHB値の数値を得るものである。詳細については、例えば、関西ペイント株式会社報文、塗料の研究、No.138 July 2002年 p.8~24に記載されている。
【0011】
本発明における「色調」とは、塗膜の色として知覚される質感であり、例えば、L表色系、L表色系等を用いて表される。
光輝性顔料を含む塗膜の色調についても、塗膜中に光輝性顔料が存在することに起因して、観察角度により色調が異なる場合がある。
【0012】
本発明における「水準」とは、光輝感及び/又は色調を定量的に表すパラメータ値である。
例えば、光輝感の各水準としては、コンピューター調色システムへの対応の点から、光輝感の指標であるミクロ光輝感の測定値をグループ化し、その分類された各グループ内の中心点を夫々選択することが好適である。その際に、ミクロ光輝感の測定値グループが重ならないようにすることが明確な目視選別の点から望ましい。
【0013】
本発明における「見本色票に対する観察角度が適正である」とは、塗色見本の光輝感又は色調の変化が許容できる一定範囲内である角度である。例えば、照射した光の鏡面反射軸から10~30°の範囲で観察した際に、塗色見本の光輝感及び/又は色調変化が許容し得る範囲(差異がないと判断し得る範囲)となる場合、「適正な観察角度」は、照射した光の鏡面反射軸から10~30°の範囲となる。
【0014】
本発明における「正面」とは、観察面に対して、照射した光の入射軸から鏡面反射軸の間で、観察面と垂直となる軸を含む一定の角範囲であり、「スカシ」とは、「正面」ではない範囲である。
【0015】
[見本色票]
図1は、本発明の見本色票の一実施形態を示す図である。
図1に示す見本色票Aには、支持体10上の少なくとも一方の面に、複数水準の光輝感及び/又は色調を有する各塗色見本21、22、23及び24が段階的に並べられており、塗色見本21から24にかけて光輝感及び/又は色調が段階的に変化するグラデーションが形成されている。適正な観察角度である場合に所定の色調を示す補助部31及び32は、塗色見本21と22の間及び塗色見本23と24の間に設けられている。また、見本色票Aには、光輝感や色調等の情報を記載した表示部40が設けられ、複数の見本色票を纏めるための孔50が設けられている。
【0016】
<支持体>
支持体10は、塗色見本及び補助部を設けることができれば特に限定されない。例えば、プラスチックフィルム、紙、金属板、ガラス板、木板、これらの1種以上を含む積層体等が挙げられる。塗色見本及び/又は補助部との接着性を向上させるために、プライマー処理等の表面処理が行われたものであってもよい。
支持体の色調等については、特に限定されない。比色対象の色調がわかるように、支持体を無色透明とすることができる。また、任意の色調の着色透明、任意の色調の半透明又は任意の色調の不透明であってもよい。
【0017】
<塗色見本>
塗色見本21、22、23、24は、例えば、複数水準の光輝感及び/又は色調を有する塗膜を形成する組成物(例えば、光輝性顔料を含む塗料等の組成物)の層を、それぞれ塗布・乾燥、印刷、転写のいずれか1つ以上の手段を用いて、基材上に作成して得られた色紙や色板から構成できる。また、複数水準の光輝感及び/又は色調を有する塗膜を形成する組成物の層を、塗布・乾燥、印刷、転写のいずれか1つ以上の手段を用いて、支持体10の上に直接配置することもできる。
【0018】
塗色見本の配置形態は、支持体10の少なくとも一方の面に配置されていれば、特に限定されない。図1では、支持体10上に1行4列となるように塗色見本21、22、23、24が並べられているが、2行以上の多行及び2列以上の多列となるように配置してもよい。また、1つの支持体に配置する塗色見本の枚数は、1枚であればよく、2枚以上8枚以下であることが好ましく、2枚以上7枚以下であることがより好ましく、3枚以上6枚以下であることが使いやすさの観点から特に好ましい。
また、塗色見本には、サンプルの色調を把握し易くし、比色を容易にするために、塗色見本の一部に孔や切り欠きが設けられていてもよい。
【0019】
本発明においては、複数水準の光輝感及び/又は色調を有する各塗色見本が段階的に並べられており、各塗色見本の光輝感及び/又は色調が段階的に変化するグラデーション状となっていることが好ましい。
なお、塗色見本における「複数水準」は、人間の目視による光輝感及び/又は色調の識別限界に応じて、素人でも一目で各水準の違いを判断できるように選択されることが望ましい。
【0020】
<補助部>
補助部は、適正な観察角度である場合に所定の色調を示す。このような補助部は、観察角度により色調が変化する層であれば特に限定されない。例えば、パール顔料を含む層が挙げられる。パール顔料としては、特に限定されない。例えば、マイカ、ガラス、金属、金属酸化物等のフレークに、シリカ、アルミナ、チタニア等の金属酸化物を1層以上被覆したものが挙げられる。補助部は、干渉顔料を含有する層を有することが好ましい。干渉顔料としては、特に、マイカをチタニアで被覆し、多重反射光の干渉により発色して有色を呈する干渉顔料が挙げられる。中でも、赤系の干渉顔料が色調の変化が視認しやすく、好適である。
【0021】
補助部を設ける手段は、特に限定されない。例えば、
(1)基材上にパール顔料を含む層を形成し、これを見本色票に貼付する方法、
(2)見本色票の所望の部位に、パール顔料を含む塗液を塗布又は印刷する方法、
(3)見本色票の所望の部位に、パール顔料を含む層を転写する方法、
等が挙げられる。
このうち、(1)の方法は、例えば、(i)粘着シートを基材とし、基材上にパール顔料を含む塗料を塗布して得られた部材、(ii)基材の一方の面にパール顔料を、他方の面に粘着剤又は接着剤を塗布して得られた部材を用いることで、より簡便に補助部を形成することができる。
特に、(1)の方法は、既存の見本色票に対して容易に適用することが可能である。例えば、顧客先の見本色票を容易に改修できることから好ましい。
【0022】
適正な観察角度である場合に所定の色調を示す補助部を設ける位置は、特に限定されない。例えば、塗色見本の観察角度をより適正にするためには、塗色見本と離れていないことが好ましい。このため、補助部は、並べて配置された各塗色見本の間の1か所以上に設けることが好ましい。図1の見本色票では、塗色見本21と22の間、23と24の間の2か所に設けられているが、22と23の間に設けてもよく、塗色見本の間の1か所のみに設けてもよい。
【0023】
図2は、見本色票に対する観察角度が適正である場合、すなわち、正面から観察した場合を、図3は、見本色票に対する観察角度が適正でない場合、例えば、スカシから観察した場合を、それぞれ示す。図2図3とでは、補助部31、32の色調が異なるものとなっている。本発明においては、補助部の正面の色調と補助部のスカシの色調とが、目視で識別可能であることが好ましい。特に、補助部の正面の色調と補助部のスカシの色調とが補色の関係になっていると、目視での識別が容易となり特に好ましい。
本発明の一実施態様としては、照射した光の鏡面反射軸から15~25°の範囲で赤紫に、約45°で白に、75~105°で黄緑に、段階的に色調が変化する補助部が挙げられる。
【0024】
<表示部>
本発明の見本色票Aは、必要に応じて、L色空間、L色空間等の表色系における各値等の色調に関する情報、光輝感に関する情報、塗料に関する情報、光輝性顔料に関する情報等が記載された表示部40を有していてもよい。
表示部40は、見本色票の任意の場所に設けることができる。例えば、見本色票において塗色見本が設けられていない面(裏面)や余白等に設けることができる。このうち、図1のように、見本色票Aの上部余白に設けた場合、見本色票の下部を綴じて見本色票セットを構成すると、インデックスとしての機能を発揮することができる。
【0025】
[見本色票セット]
本発明の見本色票セットは、光輝感及び/又は色調が異なる複数種類の本発明の見本色票を有している。
図5は、本発明の見本色票セットの一実施形態を示す図である。
図5に示す見本色票セットBは、夫々、明度Lが50、70及び90の3水準の見本色票A1、A2及びA3で構成されており、各色票には、同一明度で、i~ivの4水準の光輝感を有する塗色見本が段階的に並べて配置されている。i~ivの各水準は、人間の正面目視によって識別可能に選択されている。
見本色票セットにおける各見本色票には、それぞれ見本番号や明度L等が表示部40又は裏面等に記載されていてもよい。見本番号や明度L等の表示から、見本塗色の各測定値が抽出可能となる。また、塗色見本を形成する際に用いた光輝性顔料に係る各種データ(粒子の大きさ)や塗色見本におけるキラキラ感等についても、表示部40や裏面等に記載することができる。
【0026】
見本色票セットBを構成する見本色票は、少なくとも、互いに光輝感及び/又は色調が異なる2種以上の見本色票であれば、その種類やセットに含まれる見本色票の数(枚数)は特に限定されない。
例えば、特定の色調(L表色系におけるa値等)X1で粒子感が異なる複数種の塗色見本を有する見本色票Ax1、特定の色調をX2とした見本色票Ax2、特定の色調をX3とした見本色票Ax3、・・・、特定の色調をXnとした見本色票Axnをセットにした見本色票セットBが挙げられる。
例えば、特定の光輝感(ミクロ光輝感等)Y1で粒子感が異なる複数種の塗色見本を有する見本色票Ay1、特定の光輝感をY2とした見本色票Ay2、特定の光輝感をY3とした見本色票Ay3、・・・、特定の色調をYnとした見本色票Aynをセットにした見本色票セットが挙げられる。
【0027】
各明度の見本色票間において、例えば、明度L70の塗色見本と明度L90の塗色見本とでは、同一の光輝性顔料を採用しているが、光学的測定機によって測定されたハイライトにおける粒子感(HG(Hi-light Graininess)値)及びハイライトのキラキラ感(HB(Hi-light Brilliance)値)のレベルは異なり、明度L90の塗色見本の方が大きい。また、高明度域と低明度域では光輝性顔料配合量にも差が生じることとなるため、光輝感の同一水準において、HG値及びHB値は、L10<L30<L50<L70<L90の順で大きくなる。
【0028】
見本色票セットを構成する各見本色票における補助部は、同一の機能を有する補助部であることが好ましい。具体的には、同じ材料で形成される補助部であることが好ましい。これにより、セットに含まれるいずれの見本色票を用いた場合であっても、測定結果のばらつきを抑制できる。
【0029】
各見本色票を結合する結合手段としては、特に限定されない。
例えば、図5に示す見本色票セットBは、各見本色票A1~A3のそれぞれの下部の余白に設けられた孔50に、リング等の結合手段60を用いて1つにまとめたものである。例えば、各見本色票を所定のホルダに収納することで、見本色票セットを構成できる。例えば、各見本色票の一端を重ね合わせ、接着、熱融着、縫合等により一体化することで見本色票セットを構成できる。
【0030】
[比色方法]
本発明の比色方法は、本発明の見本色票と、比色対象の光輝感及び/又は色調を目視にて比較する工程を含む。
比色対象としては、特に限定されない。例えば、車体又は調色塗板が挙げられる。特に、光輝性顔料を含む光輝性塗料による光輝性塗膜が形成された車体又は調色塗膜が挙げられる。
例えば、自動車の塗膜等の比色対象と同程度の明度(L値)を有する見本色票を選択し、該調色対象の光輝感及び/又は色調と各塗色見本とを目視で比較し、近似水準の塗色見本を選択し、これを基準として評価する。目視に際しては、点照射型のライト等の光源を用いて調色対象及び見本色票を照射し、補助部の色調が所定の色となる正面から観察する。
【0031】
本発明の比色方法は、見本色票の補助部が所定の色調を示す状態であれば、見本色調の観察角度を所定の観察角度にできる。このため、見本色票の塗色見本が、観察角度により光輝感や色調が変化する光輝性顔料を含む組成物から構成されたものであっても、補助部の色に基づいて、一定の結果が得られる観察角度範囲で観察を行うことが容易にできることから、観察角度のばらつきから生じる光輝感及び/又は色調の評価のばらつきを抑えることができる。
【0032】
[比色用キット]
本発明の比色用キットは、本発明の見本色票又は見本色票セットと、測色機を含む。
測色機としては、特に限定されないが、例えば、多角度分光測色計が挙げられる。
比色用キットには、その他、比色に際して有用な基材等を含めることができる。
比色用キットは、本発明の見本色票又は見本色票セットと、測色機とを、容器に入れて構成することが好ましい。
【実施例0033】
以下、実施例及び比較例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0034】
<サンプル(ターゲット)>
光輝性顔料を含む塗膜を有する6種類のサンプルA~Fを用意した。
各サンプルの塗膜について、多角度分光測色計を用いて明度を測定し、以下のように明度ランクを定めた。
明度の測定値が60未満 : 明度ランク50
明度の測定値が60以上80未満 : 明度ランク70
明度の測定値が80以上 : 明度ランク90
【0035】
また、各サンプルの塗膜面に対して、CCDカメラと画像解析装置と光源とを具備するシステムを用いてハイライトの粒子感(HG)を測定し、得られたHG値から以下のように光輝感ランクを定めた。
HG値が50未満 : 光輝感ランク0.5
HG値が50以上59未満 : 光輝感ランク1.0
HG値が59以上65未満 : 光輝感ランク1.5
HG値が65以上69未満 : 光輝感ランク2.0
HG値が69以上73未満 : 光輝感ランク2.5
HG値が73以上77未満 : 光輝感ランク3.0
HG値が77以上83未満 : 光輝感ランク3.5
HG値が83以上88未満 : 光輝感ランク4.0
HG値が88以上 : 光輝感ランク4.5
サンプルA~Fの明度ランク、HG値及び光輝感ランクを表1及び表2に示す。
【0036】
<見本色票>
実施例で用いる見本色票として、図1に示される構成を有する見本色票を用いた。具体的には、塗色見本を、光輝感ランクが1、2、3、4の4段階の水準を有するものとし、補助部を、正面(例えば、入射角30°で照射した光の鏡面反射軸から15~25°の範囲)から観察した際に赤紫色となるものとし、明度ランク(L)が50、70及び90である3種の見本色票を用いた。
比較例で用いる見本色票としては、実施例で用いた見本色票において、補助部を有しないものを用いた。
【0037】
<実施例>
5人の熟練した調色作業者である測定者a~eにより、サンプルA~Fの光輝感を、適正な観察角度である場合に所定の色調を示す補助部を有する見本色票を用いて「光源に対して正面」(図4において、αが約20°となる位置)から観察して評価した。見本色票の補助部としては、「光源に対して正面」の場合には、赤紫色を示すものとした。
光輝感の評価は、塗色見本に基づいて、0.5刻みで測定者が評価した。結果を表1に示す。
【0038】
<比較例>
実施例と同じ5人の測定者a~eにより、サンプルA~Fの光輝感を、補助部を有しない見本色票を用いて「光源に対して正面」(図4において、αが約20°となる位置)から観察して評価した。
光輝感の評価は、塗色見本に基づいて、0.5刻みで測定者が評価した。結果を表2に示す。
【0039】
【表1】
【0040】
【表2】
【0041】
表1(特に各測定者欄の「差」欄)より、適正な観察角度である場合に所定の色調を示す補助部を有する見本色票を用いた場合、測定者の光輝感評価は、光輝感ランクとの差(光輝感ランクからの乖離)がほとんど発生せず、測定者間でのばらつきもほとんど発生しないことがわかる。
一方、表2(特に各測定者欄の「差」欄)より、補助部を有しない見本色票を用いた場合、測定者の光輝感評価は、サンプルC~Fにおいて、光輝感ランクとの差が多く発生し、測定者間でのばらつきも多く発生することがわかる。
【0042】
以上、本発明を詳細に説明してきたが、上記の構成において、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更を行うことができる。したがって、上記の説明に含まれるか又は添付の図面に示されるすべての事項は、例示的なものとして解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0043】
A、A1、A2、A3:見本色票
B:見本色票セット
10:支持体
21、22、23、24:塗色見本
31、32:補助部
40:表示部
50:孔
60:結合手段
図1
図2
図3
図4
図5