(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022176774
(43)【公開日】2022-11-30
(54)【発明の名称】可塑化装置および可塑化装置の繊維材料供給方法
(51)【国際特許分類】
B29C 45/47 20060101AFI20221122BHJP
B29C 45/18 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
B29C45/47
B29C45/18
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021083371
(22)【出願日】2021-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】永田 幹男
【テーマコード(参考)】
4F206
【Fターム(参考)】
4F206AB25
4F206JA07
4F206JF01
4F206JF02
4F206JF12
4F206JF23
4F206JM01
4F206JN03
(57)【要約】
【課題】 可塑化装置の加熱シリンダ内への繊維材料の供給不良を抑制する。
【解決手段】繊維材料Fと樹脂材料Rが別々に加熱シリンダ12内に供給される可塑化装置11は、加熱シリンダ12に設けられた樹脂材料の供給孔16と、スクリュ14のコンプレッションゾーン14dに対向する部分よりも後方の加熱シリンダ12に設けられた繊維材料の供給孔25と、前記繊維材料の供給孔25に接続される繊維材料供給装置27とを備え、繊維材料供給装置27は、スクリュ29と該スクリュを回転させるモータ30を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維材料と樹脂材料が別々に加熱シリンダ内に供給される可塑化装置において、
加熱シリンダに設けられた樹脂材料の供給孔と、
スクリュのコンプレッションゾーンに対向する部分よりも後方の加熱シリンダに設けられた繊維材料の供給孔と、
前記繊維材料の供給孔に接続される繊維材料供給装置と、
を備えた可塑化装置。
【請求項2】
前記繊維材料供給装置は、スクリュと該スクリュを回転させるモータを備えた、請求項1に記載の可塑化装置。
【請求項3】
前記繊維材料供給装置は、加熱手段を備えた、請求項1または請求項2に記載の可塑化装置。
【請求項4】
繊維材料と樹脂材料が別々に加熱シリンダ内に供給される可塑化装置の繊維材料供給方法において、
コンプレッションゾーンよりも後方の加熱シリンダに樹脂材料の供給孔とは別に設けられた繊維材料の供給孔から繊維材料を加熱シリンダの内孔に供給する可塑化装置の繊維材料供給方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維材料と樹脂材料が別々に加熱シリンダ内に供給される供給される可塑化装置および可塑化装置の繊維材料供給方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂材料とは別に準備された繊維材料を可塑化装置に供給する可塑化装置の繊維材料供給装置としては特許文献1や特許文献2に記載されたものが知られている。
【0003】
特許文献1には、加熱シリンダの中間位置の圧力開放ゾーンまたは第2のコンプレッションゾーンの中間位置よりも後方に対向するように繊維材料供給孔が設けられている。また特許文献2は、樹脂材料と繊維材料は同じ材料供給孔から加熱シリンダ内に供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-104597号公報
【特許文献2】特開2019-48435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら特許文献1は、加熱シリンダの中間位置から繊維材料が供給されるので繊維材料を十分に分散させて可塑化することが出来ない場合があった。或いは繊維材料を十分に分散させようとすると加熱シリンダやスクリュの長さがかなり長く必要となったり複雑な構造のスクリュが必要となるという問題があった。更に特許文献2は、樹脂材料と繊維材料を同じ供給孔から供給するが、繊維材料については加熱シリンダ内のスクリュに良好に食い込まずに加熱シリンダの前方に供給できない場合があった。
【0006】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に記載の可塑化装置は、繊維材料と樹脂材料が別々に加熱シリンダ内に供給される可塑化装置において、加熱シリンダに設けられた樹脂材料の供給孔と、スクリュのコンプレッションゾーンに対向する部分よりも後方の加熱シリンダに設けられた繊維材料の供給孔と、前記繊維材料の供給孔に接続される繊維材料供給装置と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の可塑化装置は、繊維材料と樹脂材料が別々に加熱シリンダ内に供給される可塑化装置において、加熱シリンダに設けられた樹脂材料の供給孔と、スクリュのコンプレッションゾーンに対向する部分よりも後方の加熱シリンダに設けられた繊維材料の供給孔と、前記繊維材料の供給孔に接続される繊維材料供給装置と、を備えるので、可塑化装置の加熱シリンダ内への繊維材料の供給不良を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施形態の可塑化装置11について
図1ないし
図3を参照して説明する。可塑化装置11は射出装置であって、繊維材料Fと樹脂材料Rが別々に加熱シリンダ12内に供給される。射出装置の加熱シリンダ12は、所定肉厚の円筒部材12aであり、バンドヒータ等のヒータ12bと図示しない熱電対がそれぞれ複数配設され、各ヒータ12bのゾーンごとに温度制御が可能となっている。そして加熱シリンダ12の軸方向Cの中心に軸芯Oを同じくして設けられた内孔13にはスクリュ14が回転可能かつ前後進可能に配設されている。
【0011】
スクリュ14にはフライト14aが設けられ,フライト14a同士の間は溝部14bが形成されている。またスクリュ14は、後方側から前方側に向けて軸径が一定なフィードゾーン14c、軸径が拡径されたコンプレッションゾーン14d、軸径が最も太いメタリングゾーン14eが形成されている。そしてスクリュ14は、計量時には前記フィードゾーン14cに供給されたリサイクル炭素繊維材料等の繊維材料Fを含む樹脂材料Rを混練・可塑化しながらスクリュ14前方の内孔13内に送り溶融材料として貯留し、射出時はスクリュ14の前進により前記貯留した溶融材料を図示しない金型内のキャビティ内へ射出する役割を有する。スクリュ14は、本実施形態ではフライト14aが1本だけのシングルフライトであるが、フライトが複数本あるものやサブフライトが設けられたもの、フライト以外の混合部が設けられたものでもよい。
【0012】
加熱シリンダ12の前方にはノズル15が固着されており、前記射出の際はノズル15先端の射出孔15aを介して金型のキャビティへの射出がなされる。また加熱シリンダ12の後部寄りのスクリュ14においてはフィードゾーン14cの一部に対応する位置の最上部にはペレット状の樹脂材料Rを供給する樹脂材料の供給孔16が設けられている。また加熱シリンダ12の前記樹脂材料の供給孔16が設けられている部分の外側にはハウジングブロック17が設けられている。そしてハウジングブロック17のうちの前記樹脂材料の供給孔16に接続される部分には、樹脂材料の供給孔18が設けれ、樹脂材料の供給孔18には筒部19を介して樹脂材料供給装置である樹脂材料のフィード装置20が接続されている。
【0013】
樹脂材料のフィード装置20は、筒部19の上部に供給筒部21の前部下面が接続され、供給筒部21の内部には図示しないフィードスクリュが回転可能に設けられる。そして前記フィードスクリュはサーボモータ等のモータ22により回転数が制御可能となっている。また供給筒部21の後部上面には樹脂材料Rを貯留するためのホッパ23が接続されている。なお本発明において樹脂材料のフィード装置20は必須のものではない。
【0014】
また筒部19には加熱シリンダ12の内孔13内を吸引するための吸引孔39が設けられている。そして吸引孔39は図示しない管路を介してエア吸引用のポンプに接続されている。また吸引孔39は、ハウジングブロック17や加熱シリンダ12に設けてもよい。ただし加熱シリンダ12内を真空吸引する場合は、フィード装置20の供給筒部21とホッパ23の間に図示しないシャッタを設けるともに後述する繊維材料の供給装置の側にもシャッタを設けて加熱シリンダ12内を外界と隔絶されるようにシールする。そして吸引孔39に接続された管路に取り付けられた真空ポンプにより加熱シリンダ12の内孔13等を真空(減圧)する。なお加熱シリンダ12内の吸引や真空化は必須のものではない。
【0015】
またハウジングブロック17の後部または加熱シリンダ12の後部には射出装置の駆動部24が設けられている。駆動部24は、その詳細は省略するが、スクリュ14を回転駆動する計量用サーボモータやその駆動力伝達機構、スクリュ14を前後進する射出用サーボモータやその駆動力伝達機構など公知の機構からなっている。またハウジングブロック17自体に駆動部24の機構の一部を設ける場合もある。
【0016】
次に加熱シリンダ12に設けられる繊維材料の供給孔25について
図2および
図3を参照して説明する。繊維材料の供給孔25は、樹脂材料の供給孔16とは別個に加熱シリンダ12に設けられている。繊維材料の供給孔25は、スクリュ14のコンプレッションゾーン14dに対向する部分である材料溶融部分12cよりも後方の材料送り部分12dにおいて加熱シリンダ12の円筒部材12aを貫通して形成されている。より詳しくはスクリュ14が最前進位置にあるときのコンプレッションゾーン14dに対向する加熱シリンダ12の材料溶融部分12cに繊維材料の供給孔を設けることは想定されておらず、スクリュ14が最前進位置にある時のフィードゾーン14cに対向する加熱シリンダ12の材料送り部分12dを含む後方側の部分に繊維材料の供給孔25は設けられる。
【0017】
図2にも示されるように本実施形態では、加熱シリンダ12の軸方向C(前後方向)における繊維材料の供給孔25が設けられる位置は、樹脂材料の供給孔16よりもスクリュ14のフライト14aが1ピッチないし2ピッチ前方に設けられている。しかし加熱シリンダ12の軸方向Cにおける繊維材料の供給孔25が設けられる位置は、スクリュ14のフライト14aの1ピッチないし6ピッチ分前方のフィードゾーン14cに対向する材料送り部分12dでもよい。また更に繊維材料の供給孔25が設けられる位置は、樹脂材料の供給孔16の位置よりも後方側(駆動部24寄り)に設けてもよい。繊維材料の供給孔25を樹脂材料の供給孔16よりも加熱シリンダ12の後方側に設ける場合、樹脂材料Rがまだ供給されていない位置なので樹脂材料Rに邪魔をされずに繊維材料Fを供給することができる。上記の各例からも判るように加熱シリンダ12に設けられる繊維材料の供給孔25は、ハウジングブロック17が固着されていない部分に形成されるものでもよい。
【0018】
また
図3に示されるように、加熱シリンダ12の周方向における繊維材料の供給孔25が設けられる位置は、加熱シリンダ12の内孔13のスクリュ14が下方に向けて回転される側の側端部13aとなっている。より具体的には供給孔25は、加熱シリンダ12の内孔13の側端部13aに供給孔25の中心が位置するように加熱シリンダ12を貫通してハウジングブロック17を貫通する供給孔26と接続されている。
【0019】
なお加熱シリンダ12の周方向における繊維材料の供給孔25が設けられる位置は、内孔13の下端部13bを除く位置が望ましい。何故なら下端部13bを設けると樹脂材料Rが供給孔25から内部に入り込む恐れがあるからである。また更に望ましくは、供給孔25が設けられる位置は、両側の側端部13a、13cよりも上方部分か、加熱シリンダ12の上端部13dから下端部13bまでの間で、スクリュ14が下方に向けて回転される側に設けることが繊維材料を供給する上でより望ましい。
【0020】
加熱シリンダ12およびスクリュ14に対する繊維材料の供給孔25が設けられる周方向の方向については、
図3に示されるように加熱シリンダ12およびスクリュ14の軸芯Oに向けて供給孔25が設けられている。換言すれば加熱シリンダ12およびスクリュ14の軸方向に対して直交方向に供給孔25が設けられている。しかし供給孔25は、加熱シリンダ12およびスクリュ14の軸方向に対して偏芯して設けてもよい。スクリュ14の回転方向に沿って下流側に向けて繊維材料が送られるように供給孔25を設けてもよい。いずれにしても繊維材料の供給孔25および繊維材料のフィード装置27の軸芯は、水平か下方に向けて設けることが望ましい。前記繊維材料の供給孔25等の向きが下方から上方に向けて設けられると樹脂材料Mが入り込むので望ましくない。
【0021】
また加熱シリンダ12およびスクリュ14に対する繊維材料の供給孔25が設けられる前後方向の方向については、後方側(加熱シリンダ後端側)からノズル側の前方側(ノズル側)に向けて供給孔25を設けてもよい。更に供給孔25は、スクリュ14の軸芯Oに対して偏芯させるとともに加熱シリンダ12の後方側から前方側に向けて形成することによりスクリュ14の溝部14bの方向と一致した向きに形成することもできる。いずれにしても繊維材料の供給孔25が設けられる位置は、樹脂材料の供給孔16とは干渉しない位置が望ましい。何故なら繊維材料の供給孔25が樹脂材料の供給孔16と同じ位置にあると樹脂材料Mや繊維材料Fのスクリュ14への食い込みに悪影響を与える可能性があるからである。
【0022】
繊維材料の供給孔25の断面形状については、円形に限らず長孔形状などでもよい。また供給孔25は、途中で径の太さが拡径や縮径されているものや僅かに曲がっているものでもよい。また加熱シリンダ12の内孔13に繊維材料の供給孔25が臨む部分の周囲の内孔13の部分は、拡張されて内孔13の断面積が大きくなっているものでもよい。取り分け繊維材料の供給孔25の内孔部25aから供給された繊維材料Fが送られていく下流側(前方側)の内孔13の部分はテーパー形状などに拡径されているものでもよい。前記の加熱シリンダ12の内孔13の拡径は必須のものではないが、前記拡径を行うことにより、加熱シリンダ12の内孔13への繊維材料Fの食い込みを良好にすることができる場合が多い。
【0023】
次に繊維材料の供給孔25に接続される繊維材料供給装置について説明する。繊維材料供給装置は、繊維材料のフィード装置27と前記フィード装置27に繊維材料を供給する貯留部を備えた繊維材料の供給装置33とからなっている。
【0024】
図3に示されるように、繊維材料のフィード装置27は、供給筒部28がハウジングブロック17の側面17aに対して直角方向に取り付けられている。従って供給筒部28の向きは水平方向である。そしてハウジングブロック17の供給孔26と供給筒部28の内孔28aは連通している。繊維材料供給装置の供給筒部28については、外周面に複数のバンドヒータ等のヒータ40からなる加熱手段が設けられている。また本実施形態では供給筒部28の上面または側面には、繊維材料が外部に出てこない程度のベント孔41が一つまたは複数形成されている。
【0025】
また供給筒部28にはフィードスクリュ29が回転可能に設けられている。そしてフィードスクリュ29はサーボモータ等のモータ30により回転数が制御可能となっている。また樹脂材料のフィード装置20のモータ22,繊維材料のフィード装置27のモータ30、後述する貯留部を備えた繊維材料の供給装置33のモータ等は図示しない制御装置に接続されている。
【0026】
繊維材料のフィード装置27のフィードスクリュ29の形状については、供給される繊維材料Fの長さや状態に応じて適宜なものが用いられる。本実施形態ではフィードスクリュ29はほぼ先端位置までフライト29aが形成されている。フィードスクリュ29の先端は、供給筒部28の部分で終わっているものでもよく、
図2に示されるように供給孔25の内部までフィードスクリュ29の先端が挿入されているものでもよい。いずれにしてもフィードスクリュ29の先端から供給孔25の内孔部25aまでの距離があり過ぎると、その間の部分に繊維材料Fが詰まりやすくなる。繊維材料Fを供給するスクリュ(フィードスクリュ29)の形状は、フライト29aが等間隔に形成されたスクリュであってもよいが、フライト29aの間隔が前方に向けて狭くなるか、フィードスクリュのスクリュ軸が前方に向けて太くなっており、供給される繊維材料Fが圧縮されるものでもよい。またフィードスクリュ29は中心軸が設けられておらず、フライトのみがねじ状に形成されたスクリュであってもよい。また繊維材料のフィード装置27は、フィードスクリュ29を使用せずに、プランジャ等の押込装置で繊維材料の供給孔25の繊維材料Fを加熱シリンダ12の内孔13内に押し込むものでもよい。
【0027】
繊維材料のフィード装置27の供給筒部28の供給孔31には、貯留部を備えた繊維材料の供給装置33が接続されている。貯留部を備えた繊維材料の供給装置33は、ホッパ32を備えており、前記ホッパ32の上部は、供給された繊維材料Fを溜めておく貯留部34となっている。ホッパ32の中間部には回転供給部のローラ35が設けられている。ローラ35の外周面には多数の針状部材36が設けられている。そしてローラ35は、図示しないモータより回転可能に設けられている。そして前記ローラ35とホッパ32の一方の壁面の間の空間が繊維材料Fの供給路37となっている。また回転供給部のローラ35の下方には、ローラ35の針状部材36に引っかかっている繊維材料Fを除去する除去用のローラ38や櫛歯が設けられている。ホッパ32についてもヒータ等の加熱手段を設けてもよい。
【0028】
次に本発明の可塑化装置11への繊維材料を含む材料供給方法と射出成形方法について説明する。本実施形態では、可塑化装置11である射出装置は、飢餓成形を行うものである。ホッパ23内に貯留されている樹脂材料Rのペレットは樹脂材料のフィード装置20により加熱シリンダ12内に供給される。加熱シリンダ12における樹脂材料の供給孔16は、加熱シリンダ12の内孔13の上端部13dに臨んでおり、樹脂材料のフィード装置20から供給された樹脂材料Rは、自重落下により加熱シリンダ12内に供給される。この際の樹脂材料のフィード装置20による樹脂材料Rの供給量の制御は、加熱シリンダ12内のスクリュ14のフィードゾーン14cの溝部14bと加熱シリンダ12の内孔13の間に樹脂材料Rが完全に充満されないように行われる。より具体的には本実施形態では1回の計量工程ごとに、ほぼ1成形分の樹脂材料が供給される。
【0029】
また本発明において使用される繊維材料Fは、長短の寸法のものが含まれた繊維材料の集合体であり、ロービングからそのままエンドレス状態で加熱シリンダ内に投入される維材料は対象としていない。また特に本発明は、強化繊維樹脂の成形物を再処理して繊維材料のみが取り出されたリサイクル繊維材料の材料供給に適している。リサイクル炭素繊維などのリサイクル繊維材料は、一例としてこれに限定されるものではないが、繊維長さが3mmないし6mm程度の繊維の集合体である。そしてリサイクル繊維材料は、サイジング材などが添加されていないことが一般的であるので、比重が小さく、そのままホッパのみを備えた射出成形機のホッパに投入しても良好に落下せずにホッパの中間部や下部にブリッジ状に堆積してしまうことも多い。
【0030】
一方、ホッパ32の貯留部34に供給され貯留されているリサイクル炭素繊維からなる繊維材料F(以下は単に繊維材料Fと記載する)は、針状部材36が取付けられたローラ35の回転により。繊維材料のフィード装置27の供給筒部28内のフィードスクリュ29の溝部29bの中に供給される。繊維材料のフィード装置27ではサーボモータ等のモータ30の回転によりフィードスクリュ29の溝部29bの中の繊維材料Fが加熱シリンダ12の内孔13に向けて送られる。この際の繊維材料のフィード装置27のモータ30は、回転速度、回転数、回転時間、回転のタイミングの少なくとも一つが制御される。より具体的には繊維材料Fの供給量は、モータ30がサーボモータの場合、回転速度と回転時間により最適に制御される。
【0031】
繊維材料のフィード装置27の供給筒部28に供給された繊維材料Fは、供給筒部28に取り付けられたヒータ40により加熱される。そのことにより繊維材料Fに水分が含まれていても水分は蒸発して、供給筒部28に設けられたベント孔41から水分のみが排出される。または加熱シリンダ12の後部の筒部19などの吸引孔39からエア吸引や真空吸引を行う場合は、ベント孔41は設けなくてもよく、吸引孔39を介して繊維材料Fから蒸発した水分が除去される。加熱シリンダ12内の真空吸引を行う場合は成形品の品質向上に繋がる場合が多い。また真空吸引等の吸引孔39の位置は、繊維材料のフィード装置27とは離れた位置であるので、吸引口に繊維材料Fが入り込んで目詰まりを行うことが無い。
【0032】
繊維材料供給装置である繊維材料のフィード装置27を用いた繊維材料Fの供給の際には、スクリュ14のフィードゾーン14cの溝部14bには既に樹脂材料が飢餓供給されている。しかしスクリュ14の溝部14bに供給されている樹脂材料Rは溝部14bに対する容積比では大きな比率ではなく空間部が存在している。そして前記スクリュ14の溝部14bの空間部に1回の計量工程ごとにほぼ1成形分の繊維材料Fが繊維材料のフィード装置27から供給孔25を介して供給される。なお樹脂材料Rや繊維材料Fの供給は、ぞれぞれの供給される重量を計測したり、計量モータのトルクを検出するなどして微調整するようにしてもよい。
【0033】
またこの繊維材料Fが供給される際、加熱シリンダ12の軸方向Cにおける繊維材料の供給孔25が設けられる位置は、樹脂材料の供給孔16よりもスクリュ14のフライト14aの1ピッチ程度前方に設けられているので、加熱シリンダ12の内孔13内に供給された繊維材料Fは前方に向けて送られ、樹脂材料の供給孔16から出てくることは無い。また繊維材料Fは加熱シリンダ12の内孔13のスクリュ14が下方に向けて回転する側の側端部13aに設けられた供給孔25から供給されるので、スクリュ14の溝部14bに沿って送り込まれ供給孔25近傍に滞留することなく良好な供給が行われる。そして繊維材料Fが加熱されて加熱シリンダ12の内孔13に供給された際には、樹脂材料Rに熱を付与し樹脂材料の溶融を促進する。
【0034】
加熱シリンダ12の内孔13内のスクリュ14のフィードゾーン14cの溝部14bに供給された樹脂材料Rと繊維材料Fは、スクリュ14の回転(計量工程における正回転)とともにコンプレッションゾーン14dに送られて加熱とせん断発熱により、樹脂材料の溶融が開始される。そして更にスクリュ14の回転とともにコンプレッションゾーン14dからメタリングゾーン14eに送られると完全に溶融される。そして更に開放された逆流防止弁14fの部分を経てスクリュ14の前方に送られる。そして繊維材料を含む溶融した樹脂材料が所定量、加熱シリンダ12の内孔13のスクリュ14の前方に貯留されると計量工程は終了し、次の射出工程により、図示しない金型内のキャビティに向けて射出される。そして更に前記キャビティ内で冷却固化された繊維材料を含む樹脂成形品は、金型が型開されると図示しないエジェクタ装置により突き出され外部に取り出される。
【0035】
なお上記の実施形態では、可塑化装置は、計量と射出を同じ加熱シリンダ内で行うインライン式の射出装置である場合について説明した。しかしながら本発明において、可塑化装置は、スクリュを内蔵した加熱シリンダを備えた可塑化装置とプランジャを内蔵した加熱シリンダを備えた射出装置を連結したプリプラ(登録商標)式の射出成形機であってもよい。更に可塑化装置は、スクリュを備えた加熱シリンダ内で繊維材料と樹脂材料を可塑化し、加熱シリンダの先端のダイからプレス装置の下型に供給するスタンピング成形用の供給装置でもよい。更にまた可塑化装置は、繊維材料と樹脂材料を加熱シリンダ内で可塑化して先端のダイから押出す押出機の可塑化装置であってもよい。押出機の場合は、押し出された板状の強化繊維樹脂成形品を所定寸法に切断するなどして最終成形品とするものでもよく、細かく切断して強化繊維含有樹脂ペレットを造粒するものでもよい。
【0036】
可塑化装置11に供給される繊維材料Fは、まだ成形品にされたことのないバージン繊維材料であってもよい。またはバージン繊維材料とリサイクル繊維材料の混合物であってもよい。更に繊維材料は、炭素繊維以外にガラス繊維やアラミド繊維等の他の繊維材料であってもよい。またはガラス繊維と炭素繊維といった複数種の繊維材料の混合物であってもよい。樹脂材料Rについては繊維材料の含侵を良好に行うためポリアミドなど流動性が高い材料が好ましいが熱可塑性樹脂でも熱硬化性樹脂でもよく、その種類は限定されない。また樹脂材料Rについても成形品にされたことのないバージン樹脂材料であっても再生樹脂材料であってもよい。
【0037】
樹脂材料Rと繊維材料Fの加熱シリンダ12内への供給は、完全にスクリュ14の溝部14b内に材料を満たさない飢餓供給を行うものを中心に記載した。しかしながら本発明は、飢餓供給または飢餓成形に限定されるものではなく、材料の供給量は種々変更が可能である。
【0038】
本発明については、一々列挙はしないが、上記した本実施形態のものに限定されず、上記の各記載を組み合わせたものや当業者が本発明の趣旨を踏まえて変更を加えたものについても、適用されることは言うまでもないことである。
【符号の説明】
【0039】
11 可塑化装置
12 加熱シリンダ
12c 材料溶融部分(コンプレッションゾーンに対向する部分)
13 内孔
14 スクリュ
14d コンプレッションゾーン
25 繊維材料の供給孔
27 繊維材料のフィード装置(繊維材料供給装置)
29 フィードスクリュ(スクリュ)
33 貯留部を備えた繊維材料の供給装置
40 ヒータ(加熱手段)
C 軸方向
F 繊維材料
R 樹脂材料