(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022176777
(43)【公開日】2022-11-30
(54)【発明の名称】塗料組成物、塗膜、およびコンクリート構造物の補修または補強方法および剥落防止方法
(51)【国際特許分類】
C09D 201/10 20060101AFI20221122BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20221122BHJP
C09D 7/48 20180101ALI20221122BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20221122BHJP
【FI】
C09D201/10
C09D7/61
C09D7/48
C09D7/63
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021083374
(22)【出願日】2021-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】390033628
【氏名又は名称】中国塗料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100152423
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 一真
(72)【発明者】
【氏名】青山 知寛
(72)【発明者】
【氏名】高橋 定明
(72)【発明者】
【氏名】小林 泰之
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038DF011
4J038GA15
4J038HA446
4J038JB30
4J038JB35
4J038JC35
4J038KA20
4J038NA01
4J038NA03
4J038PA18
4J038PB05
4J038PC04
(57)【要約】
【課題】低温での硬化性に優れる塗料組成物であって、視認性、難燃性、ひび割れ追従性、剥落防止性、および付着性等の性能に優れる塗膜を形成可能な塗料組成物の提供。
【解決手段】本発明による塗料組成物は、硬化性樹脂(A)と、シランカップリング剤(B)とを含み、前記硬化性樹脂(A)が、下記一般式(1):
-X-CH2-SiR1
Y(OR2)3-Y ・・・(1)
(式(1)中、Xは、加水分解性シリル基に含まれる珪素原子に結合するメチレン基に非共有電子対を有するヘテロ原子が結合している結合官能基を示し、
R1およびR2はそれぞれ独立して、炭素数1~10個の炭化水素基を示し、
Yは、0、1または2を示す。)
で表される加水分解性アルコキシシリル基を有し、
前記シランカップリング剤(B)が、アミノシラン化合物を含むものである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性樹脂(A)と、シランカップリング剤(B)とを含む、塗料組成物であって、
前記硬化性樹脂(A)が、下記一般式(1):
-X-CH2-SiR1
Y(OR2)3-Y ・・・(1)
(式(1)中、Xは、加水分解性シリル基に含まれる珪素原子に結合するメチレン基に非共有電子対を有するヘテロ原子が結合している結合官能基を示し、
R1およびR2はそれぞれ独立して、炭素数1~10個の炭化水素基を示し、
Yは、0、1または2を示す。)
で表される加水分解性アルコキシシリル基を有し、
前記シランカップリング剤(B)が、アミノシラン化合物を含む、塗料組成物。
【請求項2】
前記シランカップリング剤(B)が、前記アミノシラン化合物以外の他のシラン化合物として重合性不飽和シラン化合物をさらに含む、請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項3】
前記重合性不飽和シラン化合物が、ビニルシラン化合物である、請求項2に記載の塗料組成物。
【請求項4】
前記塗料組成物中の前記アミノシラン化合物の前記重合性不飽和シラン化合物に対する質量比が、0.1以上10以下である、請求項2または3に記載の塗料組成物。
【請求項5】
無機粒子(C)をさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の塗料組成物。
【請求項6】
紫外線吸収剤(D)をさらに含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の塗料組成物。
【請求項7】
光安定剤(E)をさらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の塗料組成物。
【請求項8】
コンクリート構造物に用いられる、請求項1~7のいずれか一項に記載の塗料組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の塗料組成物から形成される塗膜。
【請求項10】
コンクリート構造物の補修または補強方法であって、
コンクリート構造物の表面を請求項1~8のいずれか一項に記載の塗料組成物で被覆する工程を含む、方法。
【請求項11】
コンクリート構造物の剥落防止方法であって、
コンクリート構造物の表面を請求項1~8のいずれか一項に記載の塗料組成物で被覆する工程を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料組成物に関する。また、本発明は、該塗料組成物から形成される塗膜にも関する。さらに、本発明は、該塗料組成物を用いたコンクリート構造物の補修または補強方法、および、コンクリート構造物の剥落防止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリート構造物は様々な要因によって劣化が進行し、コンクリート構造物にひび割れやコンクリート片の剥離が発生するといった問題があった。そのため、第三者に対する影響度の高いコンクリート片の剥落を未然に防ぐ簡便な工法が求められている。簡便なコンクリートの剥落防止の手法の一つとして、コンクリート構造物の表面に塗料を塗布する方法が行われている。この剥落防止用の塗料には、コンクリートのひび割れに追従できるような可撓性、コンクリート片の落下を防止可能な強靭さ、コンクリートへの付着性が求められている。さらに、コンクリート素地の劣化状態を視認可能になることで、点検・保守を簡便に行うことが可能となるため、塗膜の透明性が高いことも求められている。また、採用される区画(トンネルといった気密性の高い区画など)によっては安全性の観点から難燃性を有することが求められることもある。
【0003】
このような従来の問題を解決するために、特許文献1では、脂環式エポキシ樹脂(a1)、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(a2)、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(a3)及びノボラック型エポキシ樹脂(a4)からなる群から選択される少なくとも1種のエポキシ樹脂(A)、エポキシ樹脂(A)を除く二官能以上のエポキシ樹脂(B)、末端反応性ブタジエンアクリロニトリル共重合体(C)、ポリアミドアミン(D)、有機系繊維(E)、およびガラスフレーク(F)を含有することを特徴とするクリヤー塗料組成物を用いることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載されるようなエポキシ樹脂を含む塗料組成物は、低温での硬化性が低いため、低温での硬化性の更なる向上が求められている。また、トンネル内のような視界の悪い環境下おいて劣化状態の確認をより簡便に行うために、視認性の更なる向上が求められている。
【0006】
本発明は上記の背景技術および課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、低温での硬化性に優れる塗料組成物であって、視認性、難燃性、ひび割れ追従性、剥落防止性、および付着性等の性能に優れる塗膜を形成可能な塗料組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意検討した結果、塗料組成物において特定の加水分解性アルコキシシリル基を有する硬化性樹脂(A)と、特定のシランカップリング剤(B)とを併用することにより、上記課題を解決できることを知見した。本発明は、かかる知見に基づいて完成されたものである。
【0008】
すなわち、本発明によれば、以下の発明が提供される。
[1] 硬化性樹脂(A)と、シランカップリング剤(B)とを含む、塗料組成物であって、
前記硬化性樹脂(A)が、下記一般式(1):
-X-CH2-SiR1
Y(OR2)3-Y ・・・(1)
(式(1)中、Xは、加水分解性シリル基に含まれる珪素原子に結合するメチレン基に非共有電子対を有するヘテロ原子が結合している結合官能基を示し、
R1およびR2はそれぞれ独立して、炭素数1~10個の炭化水素基を示し、
Yは、0、1または2を示す。)
で表される加水分解性アルコキシシリル基を有し、
前記シランカップリング剤(B)が、アミノシラン化合物を含む、塗料組成物。
[2] 前記シランカップリング剤(B)が、前記アミノシラン化合物以外の他のシラン化合物として重合性不飽和シラン化合物をさらに含む、[1]に記載の塗料組成物。
[3] 前記重合性不飽和シラン化合物が、ビニルシラン化合物である、[2]に記載の塗料組成物。
[4] 前記塗料組成物中の前記アミノシラン化合物の前記重合性不飽和シラン化合物に対する質量比が、0.1以上10以下である、[2]または[3]に記載の塗料組成物。
[5] 無機粒子(C)をさらに含む、[1]~[4]のいずれかに記載の塗料組成物。
[6] 紫外線吸収剤(D)をさらに含む、[1]~[5]のいずれかに記載の塗料組成物。
[7] 光安定剤(E)をさらに含む、[1]~[6]のいずれかに記載の塗料組成物。
[8] コンクリート構造物に用いられる、[1]~[7]のいずれかに記載の塗料組成物。
[9] 請求項1~8のいずれか一項に記載の塗料組成物から形成される塗膜。
[10] コンクリート構造物の補修または補強方法であって、
コンクリート構造物の表面を[1]~[8]のいずれかに記載の塗料組成物で被覆する工程を含む、方法。
[11] コンクリート構造物の剥落防止方法であって、
コンクリート構造物の表面を[1]~[8]のいずれかに記載の塗料組成物で被覆する工程を含む、方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、低温での硬化性に優れる塗料組成物であって、視認性、難燃性、ひび割れ追従性、剥落防止性、および付着性等の性能に優れる塗膜を形成可能な塗料組成物を提供することができる。また、本発明によれば、長期的な保存安定性に優れる塗料組成物を提供することができる。さらに、本発明によれば、このような塗料組成物から形成される塗膜を提供することができる。さらにまた、本発明によれば、このような塗料組成物を用いたコンクリート構造物の補修または補強方法、およびコンクリート構造物の剥落防止方法を提供することもできる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明をより詳細に説明する。
なお、本明細書において、「固形分」とは、塗料組成物から有機溶剤等の揮発成分を除いたものであり、硬化させたときに塗膜を構成する成分を示す。
【0011】
<塗料組成物>
本発明による塗料組成物は、硬化性樹脂(A)と、特定のシランカップリング剤(B)とを含むものである。本発明による塗料組成物は、無機粒子(C)、紫外線吸収剤(D)、光安定剤(E)、および他の成分等をさらに含んでもよい。本発明においては、特定の加水分解性アルコキシシリル基を有する硬化性樹脂(A)と、特定のシランカップリング剤(B)とを併用することで、低温であっても空気中の湿気と反応して硬化が進行する湿気硬化型1液型塗料組成物を得ることができる。なお、「1液型」とは、塗料組成物を使用する際に他の硬化剤等と混合せずに、そのまま所定部位に塗布することにより用いることができる。このような塗料組成物から形成された塗膜は、視認性、難燃性、ひび割れ追従性、剥落防止性、および付着性に優れるものである。以下、塗料組成物を構成する各成分について詳述する。
【0012】
(硬化性樹脂(A))
硬化性樹脂(A)は、下記一般式(1)で表される加水分解性アルコキシシリル基を有するものである。硬化性樹脂は、下記一般式(1)で表される加水分解性アルコキシシリル基を末端に有しており、両末端に有していることが好ましく、側鎖にも有していてもよい。
-X-CH2-SiR1
Y(OR2)3-Y ・・・(1)
式(1)中、Xは、加水分解性シリル基に含まれる珪素原子に結合するメチレン基に非共有電子対を有するヘテロ原子が結合している結合官能基を示す。R1およびR2はそれぞれ独立して、炭素数1~20個の炭化水素基を示す。Yは、0、1または2を示す。
【0013】
上記の結合官能基は、加水分解性シリル基と主鎖とをつなぐ構造を有している官能基である。そのような結合官能基としては、例えば、(チオ)ウレタン結合、(チオ)尿素結合、(チオ)置換尿素結合、(チオ)エステル結合、(チオ)エーテル結合などのうちの少なくとも1つを有している官能基であることが好ましい。なお、結合官能基は、加水分解性珪素基に含まれる珪素原子に結合するメチレン基に非共有電子対を有するヘテロ原子が結合していればよく、上述したものに制限されない。ヘテロ原子とは、炭素および水素以外の原子をいい、本実施形態においては、例えば、N、O、F、Si、P、S、Cl、Br、Iなどを用いることができる。
【0014】
硬化性樹脂の主鎖骨格としては、特に限定されないが、シリコーン樹脂および変成シリコーン樹脂に一般的に用いられている主鎖骨格を用いることができる。主鎖骨格としては、例えば、ポリオキシアルキレン、ビニル重合体、飽和炭化水素重合体、不飽和炭化水素重合体、ポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリシロキサン等が挙げられる。これらの中でも、ポリオキシアルキレンやポリエーテルであることが好ましい。2種以上の硬化性樹脂を併用する場合、それぞれがこれらの中から選択される同一の主査骨格を有するものでもよいし、異なる主鎖骨格を有するものでもよい。
【0015】
硬化性樹脂は、従来公知の方法で製造することができる。従来公知の方法として、例えば、ポリオール化合物にイソシアネートメチルアルコキシシラン化合物を反応させる方法が挙げられる。また、従来公知の方法として、例えば、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物を反応させてウレタンプレポリマーを合成した後、ウレタンプレポリマーにアミノメチルアルコキシシラン化合物などのα位に活性水素基を有するヘテロ原子が結合している化合物を反応させる方法が挙げられる。
【0016】
上記式(1)で表されるように、珪素原子は、メチレン基との結合以外に加水分解性基としてアルコキシ基(OR2)が1~3個結合するとともに、珪素原子の残りの結合手に炭化水素基(R1)が2~0個結合している。R1およびR2はそれぞれ、炭素数1~10個のアルキル基であることが好ましく、炭素数1~5個のアルキル基であることがより好ましい。例えば、アルコキシ基(OR2)としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等が挙げられ、好ましくはメトキシ基、エトキシ基である。珪素原子の残りの結合手に結合するアルキル基(R1)としては、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、好ましくはメチル基、エチル基である。
【0017】
本発明においては、湿気硬化型1液型塗料組成物の樹脂として、従来のエポキシ樹脂ではなく、上記一般式(1)で表される加水分解性アルコキシシリル基を有する硬化性樹脂を用いることで、低温条件下においても十分な硬化性が得られるため、冬場等の低温条件下でも施工が可能となる。また、エポキシ樹脂と比べて透明度を高めて、視認性を向上することができる。さらに、エポキシ樹脂と比べて、難燃性を向上させることができる。さらにまた、本発明においては、上記一般式(1)のメチレン基を有する加水分解性アルコキシシリル基を有する硬化性樹脂(α型構造)を用いることで、上記一般式(1)においてメチレン基をn-プロピレン基に置き換えた加水分解性アルコキシシリル基を有する硬化性樹脂(γ型構造)に比べて反応性が高いため、低温条件下においても十分な硬化性が得られるため、低温条件下でも施工が可能となる。さらに、α型構造の硬化性樹脂を用いることで、保存安定性をより向上させ、かつ、タック等の問題が生じにくいという様々な特性が得られる。
【0018】
硬化性樹脂の含有量は、常温および低温硬化性ならびに貯蔵安定性等の観点から、塗料組成物の固形分換算100質量%を基準として、好ましくは40質量%以上98質量%以下であり、より好ましくは50質量%以上95質量%以下であり、さらに好ましくは55質量%以上90質量%以下である。
【0019】
(シランカップリング剤(B))
シランカップリング剤(B)としては、少なくとも、アミノシラン化合物を用いる。アミノシラン化合物は、アミノ基と加水分解性シリル基とを有する化合物である。アミノシラン化合物としては、例えば、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(6-アミノヘキシル)アミノメチルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、4-アミノ-3-ジメチルブチルトリメトキシシラン、4-アミノ-3-ジメチルブチルメチルジメトキシシラン、4-アミノ-3-ジメチルブチルトリエトキシシラン、4-アミノ-3-ジメチルブチルメチルジエトキシシラン、ビス(3-トリメトキシプロピル)アミン、ビス(3-メチルジメトキシプロピル)アミン、N-フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニルアミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-エチルアミノイソブチルトリメトキシシラン、N-エチルアミノイソブチルメチルジメトキシシラン、N-ブチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N-ブチルアミノプロピルメチルジメトキシシラン、ジエチレントリアミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-プロペニル)アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(ビニルベンジル)-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩、およびこれらから誘導される縮合反応生成物等が挙げられる。これらは1種のみで用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
シランカップリング剤(B)としては、アミノシラン化合物以外の他のシラン化合物を併用することが好ましい。他のシラン化合物としては、ビニル基や(メタ)アクリロイル基等の重合性不飽和基と加水分解性シリル基を有する化合物(重合性不飽和シラン化合物)を用いることができる。重合性不飽和シラン化合物としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリス(エチルメチルケトオキシム)シラン、p-トリメトキシシリルスチレン、p-トリエトキシシリルスチレン、p-トリメトキシシリル-α-メチルスチレン、p-トリエトキシシリル-α-メチルスチレン等のビニルシラン化合物、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルメトキシエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、等の(メタ)アクリロイルシラン化合物等が挙げられる。これらの中でも、ビニルシラン化合物を用いることが好ましい。これらは1種のみで用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
シランカップリング剤(B)の含有量は、常温および低温硬化性ならびに貯蔵安定性等の観点から、塗料組成物の固形分換算100質量%を基準として、好ましくは0.1質量%以上50質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以上20質量%以下であり、さらに好ましくは1質量%以上10質量%以下である。
【0022】
塗料組成物中のアミノシラン化合物の重合性不飽和シラン化合物に対する質量比は、好ましくは0.1以上10以下であり、より好ましくは0.5以上5.0以下であり、さらに好ましくは1.0以上4.5以下であり、さらにより好ましくは1.3以上4.0以下であり、最も好ましくは1.5以上3.5以下である。塗料組成物中のアミノシラン化合物の重合性不飽和シラン化合物に対する質量比が上記数値範囲内であれば、塗料組成物の常温および低温硬化性ならびに貯蔵安定性をより向上させながら、視認性、難燃性、ひび割れ追従性、剥落防止性、および付着性に優れる塗膜を形成可能な塗料組成物を得ることができる。
【0023】
(無機粒子(C))
無機粒子(C)としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、カリ長石、カオリン、クレー、タルク、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、およびガラスフレーク等が挙げられる。これらの中でも、シリカが好ましい。これらは1種のみで用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
無機粒子の含有量は、塗装時のタレ防止の観点から、塗料組成物の固形分換算100質量%を基準として、好ましくは0.1質量%以上20質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以上15質量%以下であり、さらに好ましくは1質量%以上10質量%以下である。
【0025】
(紫外線吸収剤(D))
紫外線吸収剤(D)は、特に限定されず、従来公知の紫外線吸収剤を用いることができる。紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤等が挙げられる。これらの紫外線吸収剤は1種のみで用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、2-[2’-ヒドロキシ-5’-(メタクリロイルオキシメチル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-5’-(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-5’-(メタクリロイルオキシプロピル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-5’-(メタクリロイルオキシヘキシル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-5’-(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-5’-tert-ブチル-3’-(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-5’-(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-5’-(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]-5-メトキシ-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-5’-(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]-5-シアノ-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-5’-(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]-5-tert-ブチル-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-5’-(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]-5-ニトロ-2H-ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、ベンゼンプロパン酸-3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-(1、1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシ-,C7~9-ブランチ直鎖アルキルエステル、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-(1-メチル-1-フェニルエチル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール等が挙げられる。
【0027】
ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤としては、例えば、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-ドデシルオキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-(2-ヒドロキシ-3-トリデシルオキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-(2-エチル)ヘキシル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(2-ヒドロキシ-4-ブチルオキシフェニル)-6-(2,4-ビス-ブチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-[1-オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)-4,6-ビス(4-フェニルフェニル)-1,3,5-トリアジン等が挙げられる。
【0028】
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-アセトキシエトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシ-5,5’-ジスルホベンゾフェノン・2ナトリウム塩等が挙げられる。
【0029】
紫外線吸収剤の含有量は、耐候性の観点から、塗料組成物の固形分換算100質量%を基準として、好ましくは0.1質量%以上10質量%以下であり、より好ましくは0.3質量%以上7質量%以下であり、さらに好ましくは0.5質量%以上5質量%以下である。
【0030】
(光安定剤(E))
光安定剤(E)としては、特に限定されず、従来公知の光安定剤を用いることができ、ヒンダードアミン系光安定剤を用いることが好ましい。光安定剤としては、例えば、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、1-[2-[3-(3,5-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]-4-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-ベンゾイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、8-アセチル-3-ドデシル-7,7,9,9-テトラメチル-1,3,8-トリアザスピロ[4,5]デカン-2,4-ジオン、ビス-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)-2-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2-n-ブチルマロネート、テトラキス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、(Mixed1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル/トリデシル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、Mixed{1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル/β,β,β’,β’-テトラメチル-3,9-[2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン]ジエチル}-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、(Mixed 2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル/トリデシル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、Mixed{2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル/β,β,β’,β’-テトラメチル-3,9-[2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン]ジエチル}-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルメタクリレート、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルメタクリレート、ポリ[(6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)イミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル)][(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノール]、コハク酸ジメチルと4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジンエタノールの重合物、N,N’,N’’,N’’’-テトラキス-(4,6-ビス-(ブチル-(N-メチル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)-トリアジン-2-イル)-4,7-ジアザデカン-1,10-ジアミン、ジブチルアミン-1,3,5-トリアジン-N,N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル-1,6-ヘキサメチレンジアミンとN-(2,2,6,6-テトラメチルピペリジル)ブチルアミンの重縮合物、デカン二酸ビス(2,2,6,6-テトラメチル-1-(オクチルオキシ)-4-ピペリジニル)エステル等が挙げられる。
【0031】
光安定剤の含有量は、耐候性の観点から、塗料組成物の固形分換算100質量%を基準として、好ましくは0.1質量%以上10質量%以下であり、より好ましくは0.2質量%以上7質量%以下であり、さらに好ましくは0.3質量%以上5質量%以下である。
【0032】
(その他の成分)
本発明による塗料組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、上記成分(A)~(E)以外の他の成分を含んでもよい。他の成分としては、レベリング剤、帯電防止剤、酸化防止剤、非反応性希釈剤、消泡剤、たれ止め剤、分散剤、熱安定剤、密着性向上剤、可塑剤等を必要に応じて配合することができる。
【0033】
<塗料組成物の調製方法>
本発明による塗料組成物は、上記の各成分を、従来公知の混合機、分散機、撹拌機等の装置を用いて、混合・撹拌することにより得られる。このような装置としては、たとえば混合・分散ミル、ホモディスパー、モルタルミキサー、ロール、ペイントシェーカー、ホモジナイザー等が挙げられる。
【0034】
本発明においては、塗料組成物を塗料組成物として適した粘度に調整する等、必要に応じて溶剤で希釈することができる。溶剤としては、樹脂組成物中の樹脂分を溶解するものであれば特に限定されない。具体的には、芳香族炭化水素(例えば、トルエン、キシレンおよびエチルベンゼン)、エステルまたはエーテルエステル(例えば、酢酸エチル、酢酸ブチルおよびメトキシブチルアセテート)、エーテル(例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールのモノメチルエーテルおよびジエチレングリコールのモノエチルエーテル)、ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジ-n-ブチルケトンおよびシクロヘキサノン)、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、n-またはi-プロパノール、n-、i-、sec-またはt-ブタノール、2-エチルヘキシルアルコールおよびベンジルアルコール)、アミド(例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等)、スルホキシド(例えば、ジメチルスルホキシド)、およびこれらの2種以上の混合溶剤等が挙げられる。
【0035】
<塗膜>
本発明による塗膜は、上記の塗料組成物から形成される。塗膜の膜厚は特に限定されないが、通常100~3000μm、好ましくは300~2000μm、さらに好ましく500~1000μmが望ましい。本発明における膜厚とは、塗膜の断面を光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡(SEM)等にて観察した際の、塗膜の厚さを指す。このような膜厚の被膜を形成する際は、1回の塗布で、所望の厚みの被膜を形成してもよいし、複数回の塗布で、所望の厚みの被膜を形成してもよい。
【0036】
<塗膜付き基材>
本発明による塗膜付き基材は、前記塗膜が基材に被覆されてなる。基材としては、コンクリート、セメント、モルタル、繊維強化セメント(ケイ酸カルシウム、スレート)、石膏、石材等を素材とするもの等が挙げられる。
【0037】
本発明による塗膜付き基材の製造方法は特に限定されないが、例えば、下記工程[1]および[2]を含む製造方法によって製造することができる。
[1]上記塗料組成物を基材に塗布して、塗膜を形成する工程
[2]得られた塗膜を乾燥させて乾燥塗膜を形成する工程
【0038】
本発明の塗料組成物を塗布する方法としては、特に制限されず、従来公知の方法を制限なく使用できる。例えば、エアレススプレー塗布、エアースプレー塗布、ローラー塗布、ハケ塗布などが挙げられる。塗料組成物の粘度は、塗布方法に合わせて上記の溶剤を添加することで、適宜調整することができる。例えば、ローラー塗布する場合、塗料組成物の粘度を100dPa・sに調整することが好ましい。なお、前記塗料組成物より形成される塗膜と基材との良好な密着性を確保するため、錆、油脂、塵埃、塩分などの表面付着物を清掃、除去することが好ましい。
【0039】
塗布された塗料組成物(塗膜)を乾燥させる方法としては特に制限されず、乾燥時間、硬化時間を短縮させるために5~60℃程度に加熱して乾燥させることもできるが、通常は、常温、大気下で1~14日程度放置することで乾燥させる。
【0040】
<塗料組成物の用途>
本発明による塗料組成物は、基材表面にローラーやハケといった簡易な手段で塗布することで、基材に対する視認性を有する塗膜を形成することができる。また、該塗膜は、密着性に優れ、また、基材のひび割れに追従可能な可とう性を有し、且つ、基材の剥落を防止する強靭性を有する。さらに、該塗膜は透明性が高いため、点検・保守を簡便に行うことが可能となる。
【0041】
上記性能を有する塗料組成物の施工対象としては、コンクリートを用いて建造されたコンクリート構造物であることが好ましい。このようなコンクリート構造物としては、高架橋、トンネル、港湾施設、ダムなどの大型構造物が挙げられる。本発明による塗膜は、密着性、ひび割れ追従性、剥落防止性に優れる点から、高架橋やトンネルへの施工に好適である。
さらに、その他の施工対象としては、鉄を用いて建造された構造物が挙げられる。このような構造物としては橋梁、プラント、船舶などの構造物が挙げられる。本発明による塗膜は密着性、視認性に優れる点から、素地の状態が確認可能な防食塗料としての使用もできる。
【0042】
前述の効果を有する塗料組成物は、コンクリート構造物等の補強・補修用途に使用でき、特に、コンクリート片の剥落防止用の塗料組成物として有用である。すなわち、本発明は、上記塗膜でコンクリート構造物の表面を被覆することにより、コンクリート構造物の補修または補強方法を提供することができる。また、上記塗膜でコンクリート構造物の表面を被覆することによりコンクリート構造物の剥落防止方法を提供することができる。
【0043】
また、上記塗膜を用いてコンクリート構造物の表面を被覆したとき、該塗膜は、塗膜下のコンクリート構造物の劣化状態を塗膜の上から目視で検査することができる性質、すなわち基材に対する高い視認性を有する。このため、本発明は、塗膜でコンクリート構造物の表面を被覆し、該塗膜の上から該コンクリート構造物の劣化状態を目視で確認するコンクリート構造物の検査方法を提供することができる。
【実施例0044】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0045】
塗料組成物の調製ために以下の材料を用いた。
・α型シラン変性ポリプロピレングリコール(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製、商品名:GENIOSIL XT50)
・γ型シラン変性ポリプロピレングリコール(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製、商品名:GENIOSIL STP-E35)
・ポリプロピレングリコール(可塑剤、三洋化成工業株式会社製、商品名:サンニックスPP -400)
・エポキシ樹脂(株式会社ADEKA製、商品名:アデカレジン EP-4080E)
・グリシジルエーテル(Huntsman社製、商品名:Erisys GE-35)
・ポリアミドアミン1(エボニック ジャパン株式会社製、商品名:ANCAMIDE910)
・ゴム変性アミン(Huntsman社製、商品名:Hypro ATBN 1300X16)
・アミノシラン化合物(3-アミノプロピルトリメトキシシラン、旭化成ワッカーシリコーン株式会社製、商品名:GENIOSIL GF96)
・ビニルシラン化合物(ビニルトリメトキシシラン、旭化成ワッカーシリコーン株式会社製、商品名:GENIOSIL XL10)
・γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、商品名:KBM-403
・ヒュームドシリカ(日本アエロジル株式会社製、商品名:AEROSIL RY 300)
・ガラスフレーク(日本板硝子株式会社製、商品名:Glass Flake RCF-015)
・UVA(紫外線吸収剤、BASFジャパン株式会社製、商品名:TINUVIN 1130)
・HALS(光安定剤、BASFジャパン株式会社製、商品名:TINUVIN 292)
・消泡剤(ビックケミー・ジャパン株式会社製、商品名:BYK-1790)
・たれ止め剤(ビックケミー・ジャパン株式会社製、商品名:BYK-410)
・ビニロン繊維(株式会社クラレ製、商品名:VF1203-2)
【0046】
[実施例1~9、比較例1~4]
[塗料組成物の調製]
表1に記載の配合に従って、各成分を撹拌し、混合することにより、塗料組成物を調製した。
【0047】
[塗料組成物の評価]
上記で調製した塗料組成物について、下記の各性能について評価を行い、評価結果を表2に示した。
【0048】
(1-1)硬化性(常温)
上記で調製した塗料組成物を、常温(23℃)で、基材(ガラス板)上に塗布して、厚さ650μmの塗膜を形成した。12時間後および24時間後の塗膜の状態を下記の評価基準で評価した。
[評価基準]
◎:12時間後には塗膜は硬化していた。
○:24時間後には塗膜は硬化していた。
×:24時間後には塗膜は硬化していなかった。
【0049】
(1-2)硬化性(低温)
上記で調製した塗料組成物を、低温(0℃)で、基材(ガラス板)上に塗布して、厚さ650μmの塗膜を形成した。12時間後および24時間後の塗膜の状態を下記の評価基準で評価した。
[評価基準]
◎:12時間後には塗膜は硬化していた。
○:24時間後には塗膜は硬化していた。
×:24時間後には硬化していなかった。
【0050】
(2)視認性
JIS A5371に規定される300mm×300mm×60mmのコンクリート舗道板(基材)の中央に太さ1mmの油性黒マジックを使用して直線を引いた。上記で調製した塗料組成物を基材上にコテで乾燥塗膜厚が600~700μmとなるように塗布した後、温度23℃、相対湿度50%の条件下で7日間乾燥させた。乾燥後の塗膜上から、直線を目視で視認可能かを下記の評価基準で評価した。
[評価基準]
○:鮮明な直線を目視で視認できた。
△:直線を目視で視認できたが、直線が不鮮明であった。
×:直線を目視で視認できなかった。
【0051】
(3)難燃性
上記で調製した塗料組成物を基材(B5サイズのスレート板)に塗布した後、(23℃)の条件下で(7)日間乾燥させた。乾燥後の塗膜付き基材の難燃性を「鉄道車両用材料燃焼性試験」に準拠して測定し、下記の評価基準で評価した。
具体的には、試験板を45°傾斜に保持し、燃料容器の底の中心が、供試材の下面(燃焼面)中心の垂直下方25.4mm(1インチ)のところにくるように、コルクのような熱伝導率の低い材質の台にのせ、純エチルアルコール0.5ccを入れて着火し、燃料が燃え尽きるまで放置し、試験後の塗膜の状況により評価した。
[評価基準]
○:塗膜の炭化が全く見られない。
△:少々塗膜に炭化が見られる。
×:塗膜が炭化している。
【0052】
(4)ひび割れ追従性
上記で調製した塗料組成物のひび割れ追従性について、「鋼道路橋便覧」のコンクリート塗料材料の品質試験方法の6ひび割れ追従性試験法に準拠して評価した。
具体的には、ひび割れ追従性試験は、「鋼道路橋防食便覧」のコンクリート塗布材料の品質試験方法の6)ひびわれ追従性試験方法に準拠した。上記で調製した塗料組成物をポリプロピレン樹脂板にコテで乾燥塗膜厚が600~700μmとなるように塗布し、23℃で120時間養生した後、80℃で60分加熱し放冷した。次に、形成した塗膜をポリプロピレン樹脂板から剥離し、遊離塗膜を得た。続いて、該遊離塗膜に変形、ピンホールがないことを確認し、打ち抜き機を使用して試験片を得た。クロスヘッド分離速度を一定に保つことができる材料試験機((株)島津製作所、島津小型卓上試験機、型式「EZ-L」)を使用し、上記試験片をクロスヘッド分離速度5mm/min、標線間距離40mm、試験温度23℃で引っ張った。引っ張り試験の過程で、引っ張り荷重を縦軸、変位を横軸とする引っ張り荷重-変位曲線を記録した。該試験で得られた引っ張り荷重-変位曲線より、該試験片の降伏時における伸びまたは破断の瞬間の伸び(変位の長さ)を標線間距離(40mm)で割り、100倍することで算出された伸び率(%)によりひび割れ追従性を評価した。伸び率が高い方が、ひび割れ追従性に優れることを示す。
【0053】
(5)剥落防止性1(押し抜き試験1)
上記で調製した塗料組成物の剥落防止性について、土木学会基準JSCE-K533-2010「コンクリート片の剥落防止に適用する表面被覆材の押し抜き試験方法」に準拠して評価した。
具体的には、JIS A5372に規定される上ぶた式U字側溝のふた(以下、「ふた」という)の1種である呼び名300(400mm×600mm×60mm)を使用して試験を行った。上記ふたの中央部を、コンクリート用コアドリルを使用して直径100mmの円形状にコア抜きした。該コア抜きは、裏面(クリヤー塗料組成物を塗布する面(以下、「施工面」という)の反対側の面)より施工面に向かう方向であり、裏面より55mmの深さまで行った。
続いて、ダイヤモンドカップを使用して前記施工面の表面処理を行った後、前記ふたを施工面が上になるように、23℃に保たれた水中に24時間水浸した。次に、前記ふたの上部を水中より引き上げ、ふたの下部30mmを水浸した状態で、施工面の水滴をウエスで除去した。ふたの上部を水中から引き上げてから5分以内に、上記で調製した塗料組成物を施工面の中心部400mm×400mmにコテで乾燥塗膜厚が600~700μmとなるように塗布した。なお、前記施工は、ふたの下部30mmが水浸している状態で行った。その後、ふたの下部30mmを水浸している状態で、温度23℃で28日間養生を行い、供試体を得た。
【0054】
上記で得られた供試体材料試験機((株)エーアンドディー社製、型式「RTC-1350A」)を用い、次の試験方法にて試験を行った。
前記供試体の塗膜が塗布された面を下側にして、スパン450mmにて支点上にセットし、塗膜に支点が接していないことを確認した。コア中央部に鉛直、均等に荷重がかかるよう球座を挟んで載荷した。載荷の過程で、荷重を縦軸、変位を横軸とする荷重-変位曲線を記録した。載荷は、まず、1mm/minの速度でコア部のコンクリートが破壊されるまで載荷した。その後、初期荷重ピークが確認されたら5mm/minで載荷を続け、その後に現れる最大荷重を測定した。最大荷重測定後、最大荷重に対して50%程度まで荷重が低下した時点で載荷を終了した。なお、同一条件下で作製した前記供試体3個を1組として試験した。
上記試験において、10mm、20mm、30mmの各変位において載荷を一時中止し、剥離範囲を供試体にマーキングするとともに写真記録を行った。最終的な耐荷力が確認された段階で試験を終了した。試験で得られた荷重と変位ストロークのデータより、荷重-変位曲線を作図し、変位が10mm以上における最大荷重を求めた。供試体3個につき前記最大荷重を求め、その平均値Pを算出し、その値を押抜き強度とした。平均値Pは小数点2桁目を四捨五入した。評価基準を以下に示す。
[評価基準]
○:押し抜き強度が0.5kN以上であった。
×:押し抜き強度が0.5kN未満であった。
【0055】
(6)剥落防止性2(押し抜き試験2)
剥落防止性が特に必要な場所に適用するために、上記で調製した塗料組成物を2回塗布やビニロンメッシュまたはガラスクロスなどのメッシュを併用した以外は、上記の剥落防止性1と同様にして、押抜き強度を測定した。評価基準を以下に示す。
[評価基準]
○:押し抜き強度が1.5kN以上であった。
×:押し抜き強度が1.5kN未満であった。
【0056】
(7)付着性
上記で調製した塗料組成物の剥落防止性について、土木学会基準JSCE-K531-2010「表面被覆材の付着強さ試験方法」に準拠して評価した。
具体的には、水セメント比50%、砂セメント比3のモルタルを、内のり寸法70mm×70mm×20mmの金属製型枠を用いて成形し、温度20℃、相対湿度80%の状態で24時間養生したのち脱型し、試験用基板を得た。次に、該試験用基板を6日間温度20℃で水中養生した。水中養生終了後、さらに、該試験用基板を温度23℃、相対湿度50%で7日養生した後、JIS R 6252で規定する150番研磨紙を用いて、成型時の下面を十分に研磨した。
得られた試験用基板に、上記で調製した塗料組成物をコテで乾燥塗膜厚が600~700μmとなるように塗布し、温度23℃、相対湿度50%で28日間養生した。得られた塗膜付き試験用基板を試験体として以下の試験を行った。
【0057】
上記試験体を温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下に水平に静置し、塗膜側の一部に接着剤を塗り、40mm角の上部引張用鋼製ジグを静かに載せ、軽くすりつけるように接着し、その上に質量1kgのおもりを載せ、周辺にはみ出した接着剤をふき取り、24時間静置した。その後、おもりを取り除き、試験体に接着した上部引張用鋼製ジグの周囲に沿って、試験体に基板表面から深さ1mmに達するまで正方形状切り込みを入れた。
前記切り込みを入れた試験体の上部引張用鋼製ジグに、下部引張用鋼製ジグおよび鋼製当て板を取り付け、材料試験機((株)エーアンドディー社製、型式「RTC-1350A」)を使用して、試験体表面の塗膜に対して垂直方向に、破断するまで荷重速度1500N/minの引張力を加え、最大引張荷重T(N)を求めた。上記試験を2回行ない、その付着強さの平均値により下記基準で付着性を評価した。なお、付着強さは下記数式によって算出した。評価結果を表2に示した。
付着強さ(N/mm2)=T/1600
[評価基準]
○:付着強度が1.5N/mm2以上
×:付着強度が1.5N/mm2未満
【0058】
(8)貯蔵安定性
上記で調製した塗料組成物をポリ容器中で温度60℃相対湿度90%の条件で30日間保存し、塗料組成物の状態を確認し、下記の評価基準で評価した。
[評価基準]
◎:異常がない。
〇:塗料表面に薄い膜が形成されるが塗料内部は液状のままである。
×:塗料内部まで硬化が進み固化している。
【0059】
(9)クラック検知性
付着性試験の際と同様に寸試験用基板の作成を行い、70mm×70mm×20mm、水セメント比50%、砂セメント比3のモルタルを得た。
得られた試験用基板に、上記で調製した塗料組成物をコテで乾燥塗膜厚が600~700μmとなるように塗布し、温度23℃、相対湿度50%で28日間養生した。
続いて得られた試験体の裏側から木槌などで叩くことで試験体にクラックを生じさせ、その際に目視によりクラックが検知できるかにより評価を行った。
[評価基準]
〇:クラックがはっきりと検知できる。
△:クラックがごくわずかに検知できる。
×:クラックが検知できない。
【0060】
【0061】