(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022176778
(43)【公開日】2022-11-30
(54)【発明の名称】充放電検査装置
(51)【国際特許分類】
G01R 1/04 20060101AFI20221122BHJP
H01M 50/569 20210101ALI20221122BHJP
G01R 1/073 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
G01R1/04 A
H01M50/569
G01R1/073 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021083376
(22)【出願日】2021-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】598072179
【氏名又は名称】株式会社片岡製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100085338
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 一博
(74)【代理人】
【識別番号】100148910
【弁理士】
【氏名又は名称】宮澤 岳志
(72)【発明者】
【氏名】福田 幹郎
(72)【発明者】
【氏名】井上 憲雄
(72)【発明者】
【氏名】山岸 典弘
【テーマコード(参考)】
2G011
5H043
【Fターム(参考)】
2G011AA14
2G011AC14
2G011AE22
2G011AF01
5H043AA03
5H043BA19
5H043CA08
5H043DA09
5H043DA27
5H043JA01D
5H043JA13D
5H043JA29D
5H043KA01D
(57)【要約】
【課題】充放電検査装置の端子を確実に対象の二次電池の電極に圧着せしめ、両者の間の接触抵抗を低減する。
【解決手段】二次電池5の本体51から突出した電極52を一対の端子部材1、2により挟持しながら当該端子部材1、2を介して二次電池5に通電する充放電検査装置であり、前記端子部材1、2が、前記二次電池5に向かって延び出し、その延出方向Xと交差または直交する方向Yに沿って、前記電極52に対して接近または離間するように変位可能な基部11、21と、前記基部11、21の先端側から基部11、21の延出方向Xと交差または直交する方向Yに屈曲または湾曲しており、前記二次電池5に通電する際にその端縁13、23が電極52に突き当たって圧着する接続部12、22とを備えている充放電検査装置を構成した。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池の本体から突出した電極を一対の端子部材により挟持しながら当該端子部材を介して二次電池に通電する充放電検査装置であり、
前記一対の端子部材のうち少なくとも一方が、
前記二次電池に向かって延び出し、その延出方向と交差または直交する方向に沿って、前記電極に対して接近または離間するように変位可能な基部と、
前記基部の先端側から基部の延出方向と交差または直交する方向に屈曲または湾曲しており、前記二次電池に通電する際にその端縁が電極に突き当たって圧着する接触部と
を備えている充放電検査装置。
【請求項2】
前記端子部材の前記基部と前記接触部とがなす入隅の角度が直角若しくは略直角または直角よりも大きい鈍角である請求項1記載の充放電検査装置。
【請求項3】
前記端子部材の前記基部及び前記接触部が、重ね合わせまたは平行若しくは略平行な複数枚の金属板により形作られている請求項1または2記載の充放電検査装置。
【請求項4】
前記端子部材の前記接触部の端縁に複数の凹凸が形成され、その凸の頂点部分が前記二次電池の前記電極に圧着する請求項1、2または3記載の充放電検査装置。
【請求項5】
前記端子部材の前記接触部が、前記基部の延出方向及び当該基部の変位方向の各々と交差または直交する方向に拡張しており、その接触部にこれを当該拡張方向に沿って複数の部位に分割する切欠が形成されている請求項1、2、3または4記載の充放電検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池を充電または放電し、二次電池の活性化や性能試験を行う充放電検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、リチウムイオン電池等に代表される、充電して繰り返し使用することのできる二次電池が、様々な電気機器や電池機器、ハイブリッド自動車、電気自動車等に採用されている。二次電池の技術開発は急速に進展しており、エネルギ密度の向上、小型化、軽量化、長寿命化が図られている。一方、その製造工程には非常に高い精度が要求されるようになってきており、信頼性の確保が重要になっている。
【0003】
一般に、リチウムイオン電池等は、単一の電池では出力電圧値が低くその用途が限られてしまうため、高出力を確保するために単電池を直列に組み合わせた組電池の状態で使用されることが多い。電池製造時の充放電試験では、組電池の中の一個の電池が不良である場合でも組電池全体の性能に影響が及ぶことから、個々の電池について全数検査している。また、こうした二次電池は、その組立て後に内部の電極を活性化する必要があり、そうした目的でも複数回の充放電試験が個々の電池について実施されている。
【0004】
個々のラミネート型二次電池は、その本体から側方に正極及び負極の電極(タブリード)を突出させてなるものである。既存の充放電検査装置は、ちょうどクリップまたは洗濯ばさみの如き構造をなす端子により、対象の二次電池の電極を挟持し、その状態で当該二次電池の試験を行う(例えば、下記特許文献を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
充放電試験に際しては、二次電池の電極と充放電検査装置の端子との間の接触抵抗をできる限り低減することが求められる。接触抵抗が高いほど、通電時に発生するジュール熱が増大するからである。とりわけ、大容量の二次電池に対して充放電試験を行うときには、端子及び電極を流れる電流が大きくなり、発熱量もそれに比例するため、接触抵抗の低減は極めて重要である。また、アルミニウム等の金属材料を用いて作製された電極の表面には、絶縁性を有した酸化皮膜が不可避的に生成される。そのような事情もあり、充放電検査装置の端子を確実に二次電池の電極に圧着せしめ、かつ可能であれば電極表面の酸化皮膜やこれに付着している汚物を削り取りたいという要望がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するべく、本発明では、二次電池の本体から突出した電極を一対の端子部材により挟持しながら当該端子部材を介して二次電池に通電する充放電検査装置であり、前記一対の端子部材のうち少なくとも一方が、前記二次電池に向かって延び出し、その延出方向と交差または直交する方向に沿って、前記電極に対して接近または離間するように変位可能な基部と、前記基部の先端側から基部の延出方向と交差または直交する方向に屈曲または湾曲しており、前記二次電池に通電する際にその端縁が電極に突き当たって圧着する接触部とを備えている充放電検査装置を構成した。
【0008】
本充放電検査装置の端子部材を二次電池の電極に圧着させるとき、その基部及び/または接触部が弾性変形し、電極に接する接触部の端縁が電極の表面を擦過する。これにより、電極表面の酸化皮膜及び/または電極表面に付着している汚物を除去し、電極と端子との間の接触抵抗をさらに低減することが可能となる。
【0009】
前記端子部材の前記基部と前記接触部とがなす入隅の角度は、直角若しくは略直角若しくは略直角または直角よりも大きい鈍角であるようにすることが好ましい。さすれば、端子部材の接触部が電極に当接し圧着する過程で、接触部の端縁が、二次電池の電極の表面に対して相対的に、二次電池の本体により近づく方に変位する。つまり、二次電池の本体から電極を引き抜くような負荷を加えずに済む。
【0010】
前記端子部材の前記基部及び前記接触部が、重ね合わせまたは平行若しくは略平行な複数枚の金属板により形作られていれば、基部及び/または接触部の弾性変形性を確保しつつ、接触部と二次電池の電極との接触面積を拡大できる。
【0011】
前記端子部材の前記接触部の端縁に複数の凹凸が形成され、その凸の頂点部分が前記二次電池の前記電極に圧着するようにすれば、その頂点部分により電極表面の酸化皮膜及び/または電極表面に付着している汚物を効果的に除去できる。
【0012】
前記端子部材の前記接触部が、前記基部の延出方向及び当該基部の変位方向の各々と交差または直交する方向に拡張しており、その接触部にこれを当該拡張方向に沿って複数の部位に分割する切欠が形成されていれば、基部及び/または接触部の弾性変形性を確保しつつ、接触部と二次電池の電極との接触面積を拡大できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、充放電検査装置の端子を確実に対象の二次電池の電極に圧着せしめ、両者の間の接触抵抗を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態の充放電検査装置の端子部材を示す斜視図。
【
図2】同実施形態の充放電検査装置の端子部材が二次電池の電極を挟持していない状態を示す平面図。
【
図3】同実施形態の充放電検査装置の端子部材が二次電池の電極を挟持していない状態を示す正面図。
【
図4】同実施形態の充放電検査装置の端子部材が二次電池の電極を挟持している状態を示す平面図。
【
図5】同実施形態の充放電検査装置の端子部材が二次電池の電極を挟持している状態を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。本実施形態の充放電検査装置は、リチウムイオン電池5に代表される二次電池5の充電及び放電を伴う検査を行うために用いられるものである。充放電試験では、充放電検査装置が具備する端子0を対象の二次電池5の電極(タブリード)52に接続し、当該二次電池5に電荷を充電する処理、また当該二次電池5が蓄えた電荷を放電させる処理を実行する。そして、その間の二次電池5の正極-負極間の電圧を計測する。
【0016】
図1ないし
図5に、本実施形態の充放電検査装置が具備する端子0を示す。二次電池5の電極52は、平板状をなし、当該二次電池5の本体51の側部からX軸方向に沿って突出するとともに、X軸と直交するZ軸方向に沿って拡張している。これと接続する充放電検査装置の端子0は、一対の端子部材1、2を有し、それらにより対象の二次電池5の電極52を挟持する。
【0017】
各端子部材1、2はそれぞれ、二次電池5の本体51に向かってX軸方向に沿って延出する基部11、21と、その基部11、21の先端側から電極52に向かってX軸及びZ軸と直交するY軸方向に沿って屈曲または湾曲した接続部12、22とを備えており、その接続部12、22の端縁13、23が二次電池5の電極52に当接する。
図2に示すように、基部11、21と接続部12、22とがなす入隅の角度θ、換言すれば基部11、21の延出方向と接続部12、22の延出方向とがなす角度θは、直角若しくは略直角、または直角よりも幾分大きい鈍角に設定する。
【0018】
各端子部材1、2は何れも、重ね合わせた複数枚の金属板10a、10b、10c、20a、20b、20cにより形作られている。それら金属板10a、10b、10c、20a、20b、20cは、互いに独立して弾性変形することが可能である。
図2に示すように、端子部材1、2が二次電池5の電極52を挟持していないとき、端子部材1、2の基部11、21を構成する複数枚の金属板10a、10b、10c、20a、20b、20cは、Y軸方向に沿って互いに当接している。
【0019】
これに対し、接続部12、22を構成する複数枚の金属板10a、10b、10c、20a、20b、20cは、僅かながらX軸方向に沿って互いに離間している。接続部12、22を構成する各金属板10a、10b、10c、20a、20b、20cの端縁13、23には、三角波状またはのこぎり波状の凹凸が形成されている。その凸の頂点部分が、二次電池5の電極52に強く接触することになる。
【0020】
端子部材1、2の基部11、21及び接続部12、22を構成する金属板10a、10b、10c、20a、20b、20cは、Z軸方向に沿って拡張している。加えて、金属板10a、10b、10c、20a、20b、20cをZ軸方向に沿って複数の部位に分割するように、スリット状の切欠14、24が形成されている。切欠14、24は、接続部12、22の全域に亘りY軸方向に沿って延伸し、かつこれに連なる基部11、21の先方の部位に至り、X軸方向に沿って連続して伸びている。
【0021】
既知の充放電検査装置と同様、端子部材1、2の基部11、22には、充放電試験の際に二次電池5の電圧を計測するための電圧線41や、充放電試験の際に二次電池5に充電する電流を印加しまたは二次電池5から放電される電流を流すための電流線42が接続される。四端子測定のため、一方の端子部材1と他方の端子部材2との間には若干の間隙が存在し、両者は接触していない。
【0022】
各端子部材1、2の基部11、21の基端側は、樹脂等の絶縁体を器材とする支持体31、32により支持される。その上で、これら一対の端子部材1、2及び支持体31、32は、図示しない任意の駆動機構を介して、その一方1、31が他方2、32に対して相対的にY軸方向に変位することが可能となっている。
【0023】
図2及び
図3に示すように、端子部材1、2がY軸方向に平行移動し、両者が互いに離反すると、それらの接続部12、22の端縁13、23が二次電池5の電極52の表面に接しない。この状態で、接続部12、22を構成する、X軸方向に沿って並ぶ複数枚の金属板10a、10b、10c、20a、20b、20cの各々の端縁13、23は、
図2上に鎖線で表しているように、二次電池5の本体51からより遠いものほど電極52から離れた外側に位置し、二次電池5の本体51により近いものほど電極52に近づく内側に位置している。
【0024】
図4及び
図5に示すように、端子部材1、2が二次電池5の電極52に向かうようにY軸方向に平行移動し、両者が互いに接近する結果、それらの接続部12、22の端縁13、23が電極52の両表面に各々圧接して、両端子部材1、2により電極52が挟持される。より詳しくは、最も外側の(二次電池5の本体51に最も近い)金属板10a、20aの端縁13、23がまず電極52に当接し、次いで中間の金属板10b、20bの端縁13、23が電極52に当接し、その後に最も内側の(二次電池5の本体51から最も遠い)金属板10c、20cの端縁13、23が電極52に当接する。
【0025】
さらに、このとき、端子部材1、2が弾性変形することで、
図4に示しているように、基部11、21を構成する複数枚の金属板10a、10b、10c、20a、20b、20cがそれぞれY軸方向に離間し、それら基部11、21の先端側が基端側に比してY軸方向に沿った外側に偏倚する。同時に、接続部12、22を構成する金属板10a、10b、10c、20a、20b、20cの端縁13、23が、X軸方向に沿って二次電池5の本体51に近づく方(図中下方)に変位する。
【0026】
上記の過程で、板ばねの如く作用する各金属板10a、10b、10c、20a、20b、20cの端縁13、23(特に、凹凸の頂点部分)により、二次電池5の電極を確実に捉え、かつ電極52の表面を擦過して、電極52表面の酸化皮膜やこれに付着している汚物を削り取ることができる。
【0027】
本実施形態では、二次電池5の本体51から突出した電極52を一対の端子部材1、2により挟持しながら当該端子部材1、2を介して二次電池5に通電する充放電検査装置であり、前記端子部材1、2のうち一方または両方が、前記二次電池5に向かって延び出し、その延出方向Xと交差または直交する方向Yに沿って、前記電極52に対して接近または離間するように変位可能な基部11、21と、前記基部11、21の先端側から、前記電極52に接する前より電極52に向かって基部11、21の延出方向Xと交差または直交する方向Yに屈曲または湾曲しており、基部11、21とともに前記電極52に対して接近または離間するように変位可能であり、前記二次電池5に通電する際にその端縁13、23が電極52に突き当たって圧着する接続部12、22とを備えている充放電検査装置を構成した。
【0028】
本実施形態によれば、充放電検査装置の端子0を強い圧力で確実に対象の二次電池5の電極52に圧着せしめ、両者の間の接触抵抗を低減することができる。しかも、端子部材1、2を二次電池5の電極52に圧着させるときに、その基部11、21及び/または接続部12、22が弾性変形し、電極52に接する接続部12、22の端縁13、23が電極52の表面を擦過して、電極52表面の酸化皮膜及び/または電極52表面に付着している汚物を除去する。従って、電極52と端子0との間の接触抵抗をさらに低減することが可能になる。
【0029】
前記端子部材1、2の前記基部11、21と前記接続部12、22とがなす入隅の角度θは、直角若しくは略直角若しくは略直角または直角よりも大きい鈍角であり、端子部材1、2の接続部12、22が電極52に当接し圧着する過程で、接続部12、22の端縁13、23が、二次電池5の電極52の表面に対して相対的に、二次電池5の本体51により近づく方に変位する。つまり、二次電池5の本体51から電極52を引き抜くような負荷を加えずに済む。
【0030】
前記端子部材1、2の前記基部11、21及び前記接続部12、22が、重ね合わせまたは平行若しくは略平行な複数枚の金属板10a、10b、10c、20a、20b、20cにより形作られているため、基部11、21及び/または接続部12、22の弾性変形性を確保しつつ、接続部12、22と二次電池5の電極52との接触面積を拡大できる。
【0031】
前記端子部材1、2の前記接続部12、22の端縁13、23に複数の凹凸が形成され、その凸の頂点部分が前記二次電池5の前記電極52に圧着するので、その頂点部分により電極52表面の酸化皮膜及び/または電極52表面に付着している汚物を効果的に除去できる。
【0032】
前記端子部材1、2の前記接続部12、22が、前記基部11、21の延出方向X及び当該基部11、21の変位方向Yの各々と交差または直交する方向Zに拡張しており、その接続部12、22にこれを当該拡張方向Zに沿って複数の部位に分割する切欠14、24が形成されている。このため、基部11、21及び/または接続部12、22の弾性変形性を確保しつつ、接続部12、22と二次電池5の電極52との接触面積を拡大できる。
【0033】
なお、本発明は以上に詳述した実施形態に限られるものではない。各部の具体的構成は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、二次電池を充電または放電して二次電池の活性化や性能試験を行う充放電検査装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0035】
0…充放電検査装置の端子
1、2…端子部材
10a、10b、10c、20a、20b、20c…金属板
11、21…基部
12、22…接続部
13、23…端縁
14、24…切欠
5…電池
51…本体
52…電極
X…基部の延出方向
Y…基部の変位方向
Z…接続部の拡張方向
θ…入隅の角度