(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022176801
(43)【公開日】2022-11-30
(54)【発明の名称】地中レーダ装置
(51)【国際特許分類】
E21D 9/06 20060101AFI20221122BHJP
G01S 13/88 20060101ALI20221122BHJP
G01S 7/03 20060101ALI20221122BHJP
G01V 3/12 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
E21D9/06 301Z
G01S13/88 200
G01S7/03 244
G01S7/03 246
G01V3/12 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021083419
(22)【出願日】2021-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000166432
【氏名又は名称】戸田建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】請川 誠
(72)【発明者】
【氏名】小林 修
(72)【発明者】
【氏名】中山 卓人
(72)【発明者】
【氏名】本合 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】中村 太三
【テーマコード(参考)】
2D054
2G105
5J070
【Fターム(参考)】
2D054AC01
2D054BA07
2D054GA15
2D054GA60
2D054GA74
2D054GA84
2D054GA92
2G105AA01
2G105AA02
2G105BB11
2G105CC01
2G105DD02
2G105EE01
2G105LL06
5J070AC20
5J070AD02
5J070AE11
5J070AF10
5J070AK06
(57)【要約】
【課題】地中掘進機において、送信アンテナ部及び受信アンテナ部を保護する防護板を通過する電磁波及びカッターで切削された部分を通過する電磁波を遮断し、適切な土質情報を含む表面伝播波を受信し、土質の判別精度が高い地中レーダ装置を提供すること。
【解決手段】地中掘進機1の前方に向けて電磁波を送信する送信アンテナ部31と、表面伝播波を受信する受信アンテナ部32と、電磁波を透過する素材よりなり面板2に設けられるとともに送信アンテナ部31を防護する送信アンテナ防護板30aと、受信アンテナ部32を防護する受信アンテナ防護板30bと、送信アンテナ部31の背面側の周囲に設けられた背面側電磁波遮断部33と、送信アンテナ防護板30aと受信アンテナ防護板30bとの間に沿って設けられる電磁波遮断部34と、を有し、電磁波遮断部34は、面板2の表面から突出する突出部34aを備えている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カッターを有して回転する面板を備える地中掘進機の前方の地中に向けて電磁波を送信する送信アンテナ部と、前記電磁波のうち少なくとも前記地中掘進機の前方の地中を伝播する表面伝播波を受信する受信アンテナ部と、電磁波を透過する素材よりなり前記面板に設けられるとともに前記送信アンテナ部を防護する送信アンテナ防護板と、電磁波を透過する素材よりなり前記面板に設けられるとともに前記受信アンテナ部を防護する受信アンテナ防護板と、を備える前方の土質を判別する地中レーダ装置であって、
前記送信アンテナ部の背面側の周囲に設けられた背面側電磁波遮断部と、
前記送信アンテナ防護板と前記受信アンテナ防護板との間に沿って設けられる電磁波遮断部と、を有し、
前記電磁波遮断部は、前記面板の表面から突出する突出部を備えていることを特徴とする地中レーダ装置。
【請求項2】
前記突出部の前記面板の表面から突出する量は、前記カッターで切削される範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の地中レーダ装置。
【請求項3】
前記突出部は、前記電磁波遮断部が設けられている方向の中央部の一部分に設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の地中レーダ装置。
【請求項4】
前記突出部は、前記面板の回転方向に沿って切断した断面において、前側両側部が角取りされていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のうちいずれか1項に記載の地中レーダ装置。
【請求項5】
前記電磁波遮断部は、前記面板よりも高硬度であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のうちいずれか1項に記載の地中レーダ装置。
【請求項6】
前記電磁波遮断部は、前記面板の前後方向に移動可能であり、前記突出部の前記面板の表面からの突出する量を調節可能であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のうちいずれか1項に記載の地中レーダ装置。
【請求項7】
前記電磁波遮断部は、前記面板の前後方向に移動可能であり、前記突出部が前記面板の表面から突出した状態から前記面板の表面から退避した状態まで移動可能であることを特徴とする請求項1乃至請求項6のうちいずれか1項に記載の地中レーダ装置。
【請求項8】
前記送信アンテナ部と前記受信アンテナ部が前記面板の径方向に並べて配置され、前記電磁波遮断部は前記面板の回転方向に沿って配置されていることを特徴とする請求項1乃至請求項7のうちいずれか1項に記載の地中レーダ装置。
【請求項9】
前記送信アンテナ部と前記受信アンテナ部が前記面板の回転方向に並べて配置され、前記電磁波遮断部は前記面板の径方向に沿って配置されていることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の地中レーダ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中掘進機に設置され、表面伝播波によって地中掘進機の前方の土質を判別する地中レーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地中掘進機によって安全にトンネル等を施工するには、掘削条件を適切に設定しなければならず、このためには、掘進経路の土質を知る必要がある。
掘進経路の土質を探知して判別する技術として、地中掘進機の前端のカッターを有して回転する面板に電磁波を送受信する送信アンテナと受信アンテナを設置したレーダ装置、いわゆる地中レーダ装置が知られている。
【0003】
この地中レーダ装置は、送信アンテナから前方へ電磁波を発信し、前方の反射物に当たって反射した反射波や面板の表面近くの地中を通って伝播される表面伝播波を受信アンテナで受信するようになっている。そして、反射波によって障害物の有無や位置を判別したり、表面伝播波の伝播速度や減衰率によって面板の表面近くの土質を判別することができる。
【0004】
送信アンテナ及び受信アンテナは、地中掘進機の前端に設けられる面板の表面に設置されるので、土圧、水圧、摩耗等から保護するために面板には防護板が送信アンテナ及び受信アンテナの部分にわたって設けられ、防護板の裏面側に送信アンテナ及び受信アンテナが取り付けられている。
【0005】
このような防護板において、電磁波を透過する物質を素材とするので、送信アンテナから防護板を通過して地中を介さないで受信アンテナに達する電磁波が表面伝播波に含まれてしまう。そうすると、本来の表面伝播波に基づくべき土質の判別の精度が低下してしまう。
【0006】
そのため、従来、特許文献1に記載されているように、電磁波を透過する防護板を面板の一部に一体的に取り付け、防護板の裏面側に送信アンテナ及び受信アンテナを設置し、防護板の送信アンテナの部分と受信アンテナの部分との間を電磁波遮蔽部で仕切り、送信アンテナから防護板を通過して地中を介さないで受信アンテナに達する漏れ電磁波を遮断する地中レーダ装置が提案されている。
この地中レーダ装置によれば、送信アンテナから防護板を通過して地中を介さないで受信アンテナに達する電磁波が遮断されるので、表面伝播波に基づく土質の判別の精度が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
面板の前方の表面付近は、地山が地中掘進機の面板に備えたカッターで切削されるので、この付近の地山はカッターにより切削されてみだされている。このようにみだされた地山は、その間隙に泥水や地下水が侵入して水分量が多くなったり密度が低下したりする傾向にあって、この部分を通過させた表面伝播波の伝播速度に影響を与える。例えば、水分量が多くなると電磁波の伝播速度は遅くなる。
【0009】
上記特許文献1に記載のような地中レーダ装置では、防護板を通過して地中を介さない電磁波を遮断することはできるが、カッターでみだされた地山を通過する表面伝播波は遮断できず、受信した表面伝播波に含まれる土質情報が不適切となる。具体的には、カッターでみだされた部分は、みだされていない部分よりも面板の表面に近いので、電磁波の伝播距離は短いが、水分量が多くなるため電磁波の伝播速度は遅くなり、カッターでみだされた部分を通る電磁波と、みだされていない部分を通る電磁波が同時に受信されやすく、この結果、本来取得したい適切な土質情報を含む表面伝播波の割合が低くなって、土質の判別精度が低下する。すなわち、みだされない地山を通過させた電磁波だけを多く受信することが土質の判別精度の向上につながる。発明者らは、このような知見を得た。
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、地中掘進機において、送信アンテナ部及び受信アンテナ部を保護する防護板を通過する電磁波、及び、地中のカッターで切削された部分を通過する電磁波を遮断し、適切な土質情報を含む表面伝播波を受信して、前方の土質の判別精度が高い地中レーダ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願請求項1に係る発明は、カッターを有して回転する面板を備える地中掘進機の前方の地中に向けて電磁波を送信する送信アンテナ部と、前記電磁波のうち少なくとも前記地中掘進機の前方の地中を伝播する表面伝播波を受信する受信アンテナ部と、電磁波を透過する素材よりなり前記面板に設けられるとともに前記送信アンテナ部を防護する送信アンテナ防護板と、電磁波を透過する素材よりなり前記面板に設けられるとともに前記受信アンテナ部を防護する受信アンテナ防護板と、を備える前方の土質を判別する地中レーダ装置であって、前記送信アンテナ部の背面側の周囲に設けられた背面側電磁波遮断部と、前記送信アンテナ防護板と前記受信アンテナ防護板との間に沿って設けられる電磁波遮断部と、を有し、前記電磁波遮断部は、前記面板の表面から突出する突出部を備えていることを特徴とする地中レーダ装置である。
【0012】
本願請求項2に係る発明は、前記突出部の前記面板の表面から突出する量は、前記カッターで切削される範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の地中レーダ装置である。
【0013】
本願請求項3に係る発明は、前記突出部は、前記電磁波遮断部が設けられている方向の中央部の一部分に設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の地中レーダ装置である。
【0014】
本願請求項4に係る発明は、前記突出部は、前記面板の回転方向に沿って切断した断面において、前側両側部が角取りされていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のうちいずれか1項に記載の地中レーダ装置である。
【0015】
本願請求項5に係る発明は、前記電磁波遮断部は、前記面板よりも高硬度であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のうちいずれか1項に記載の地中レーダ装置である。
【0016】
本願請求項6に係る発明は、前記電磁波遮断部は、前記面板の前後方向に移動可能であり、前記突出部の前記面板の表面からの突出する量を調節可能であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のうちいずれか1項に記載の地中レーダ装置である。
【0017】
本願請求項7に係る発明は、前記電磁波遮断部は、前記面板の前後方向に移動可能であり、前記突出部が前記面板の表面から突出した状態から前記面板の表面から退避した状態まで移動可能であることを特徴とする請求項1乃至請求項6のうちいずれか1項に記載の地中レーダ装置である。
【0018】
本願請求項8に係る発明は、前記送信アンテナ部と前記受信アンテナ部が前記面板の径方向に並べて配置され、前記電磁波遮断部は前記面板の回転方向に沿って配置されていることを特徴とする請求項1乃至請求項7のうちいずれか1項に記載の地中レーダ装置である。
【0019】
本願請求項9に係る発明は、前記送信アンテナ部と前記受信アンテナ部が前記面板の回転方向に並べて配置され、前記電磁波遮断部は前記面板の径方向に沿って配置されていることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の地中レーダ装置である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、送信アンテナ防護板と受信アンテナ防護板との間に設けられる電磁波遮断部が面板の表面から突出する突出部を備えているので、送信アンテナ部から送信アンテナ防護板と受信アンテナ防護板とを通過して地中を介さないで伝播する電磁波、及び、地山のうちのカッターによりみだされた部分を伝播する電磁波が遮断され、受信アンテナ部で受信されないので、適切な土質情報を含む本来取得したい表面伝播波の割合を高くすることができ、土質の判別精度を向上させることができる。
【0021】
加えて、電磁波遮断部の突出部の面板の表面から突出する量を、カッターで切削される範囲内とすることで、地山のカッターでみだされていない部分を伝播する電磁波が遮断されず、適切な土質情報を含む表面伝播波を確実に受信することができる。
【0022】
加えて、電磁波遮断部の突出部が前記電磁波遮断部が設けられている方向の中央部の一部分に設けられている。表面伝播波の電磁波は送信アンテナ部及び受信アンテナ部との間の中央部を多く通過する傾向にあるので、このように一部分の突出部であっても防護板及び地山のカッターでみだされた部分を通過する電磁波を十分に遮断することができる。さらに、突出部の受ける抵抗が小さくなり耐久性が向上し、面板の回転トルクも抑えることができる。
【0023】
加えて、電磁波遮断部の突出部が、面板の回転方向に沿って切断した断面において、前側両側部が角取りされているので、面板が回転する際の抵抗を低減させるとともに、面板が回転しながら掘進する際に、電磁波遮断部の突出部に加わる抵抗が低減され、電磁波遮断部の耐久性も向上させることができる。
【0024】
加えて、電磁波遮断部が面板よりも高硬度であるので、電磁波遮断部の摩耗に対する強度を向上させることができる。
【0025】
加えて、電磁波遮断部は、面板の前後方向に移動可能であり、突出部の面板の表面からの突出する量を調節可能であるので、地中掘進機の掘進状態に応じた突出量とすることができる。
【0026】
加えて、電磁波遮断部は、前記面板の前後方向に移動可能であり、前記突出部が前記面板の表面から突出した状態から前記面板の表面から退避した状態まで移動可能であるので、地中レーダ装置を使用しないときに突出部を退避させることで摩耗や損傷を防止することができる。また、突出部を対比させることによって、防護板間で電磁波遮断部がない状態で電磁波を受信することができ、防護板を通過して地中を介さない状態に近い状態の電磁波を受信させることができ、土質判別におけるイニシャライズの際のデータに役立てることができる。
【0027】
加えて、送信アンテナ部と受信アンテナ部を面板の径方向に並べて配置し、電磁波遮断部を面板の回転方向に沿って配置すれば、電磁波遮断部の突出部の面板の回転方向に面する側面の面積が小さくなるので、突出部の受ける抵抗が小さくなり、面板の回転トルクも少なくて済み、しかも、送信アンテナ部と受信アンテナ部を径方向に並べても表面伝播波の送受信による土質の判別には支障がない。
【0028】
加えて、送信アンテナ部と受信アンテナ部を面板の回転方向、すなわち周方向に並べて配置し、電磁波遮断部を、面板の径方向に沿って配置すれば、表面伝播波の送受信による土質の判別が適切にできるとともに、送信アンテナ部と受信アンテナ部の周方向の配置により反射波の受信による障害物の有無やその位置の探知性能も確保することができる。
また、その際に突出部を径方向の中央部の一部分に設けるようにした場合、電磁波遮断部の突出部が小さくて済むため、突出部に加わる抵抗が低減するととともに面板の回転トルクも抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る地中掘進機の正面図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態を示す地中レーダ装置の径方向に沿う断面図である。
【
図3】本発明の第2の実施形態に係る電磁波遮断部の周方向に沿う断面図である。
【
図4】本発明の第3の実施形態に係る電磁波遮断部の周方向に沿う断面図である。
【
図5】本発明の第4の実施形態を示す地中レーダ装置の径方向に沿う要部断面図である。
【
図6】本発明の第5の実施形態に係る地中掘進機の正面図である。
【
図7】本発明の第6の実施形態に係る地中掘進機の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態につき図面を参照する等して説明する。なお、本発明は、実施形態に限定されないことはいうまでもない。
【0031】
〔第1の実施形態〕
以下、本発明の第1の実施形態を
図1及び
図2と共に説明する。
図1は第1の実施形態に係る地中掘進機の正面図であり、
図2は第1の実施形態を示す地中レーダ装置の断面図である。
以下の説明において、地中掘進機の掘進する方向を前、その逆方向を後とする。
【0032】
図1に示すように、地中掘進機1は、シールド工法に用いられるシールド掘進機であって、前端に円形の面板2が設けられる。面板2の表面には、多数のビット20aを並べた複数条のカッター20が放射状に取り付けられ、カッター20に隣接してスリット21が形成されている。
そして、地中掘進機1は、面板2を回転させてカッター20で地盤を掘削し、スリット21から土を取り込みながら前進していく。
【0033】
面板2には、地中レーダ装置3が設置されている。地中レーダ装置3は、送信アンテナから前方へ電磁波を発信し、前方の反射物に当たって反射した反射波や面板の前方の表面近くの地中を通って伝播される表面伝播波を受信アンテナで受信するようになっている。反射波によって障害物の有無や位置を判別したり、表面伝播波の伝播速度や減衰率などによって面板の表面近くの土質を判別する。
【0034】
図2に示すように、地中レーダ装置3は、2枚の防護板である送信アンテナ防護板30a,受信アンテナ防護板30bと、送信アンテナ部31及び受信アンテナ部32と、背面側電磁波遮断部33と、電磁波遮断部34とを備える。
【0035】
面板2は、通常、電磁波を透過しにくい鉄等の強靭な材質で形成されているので、送信アンテナ部31及び受信アンテナ部32を設置する位置には開口部35が形成されている。開口部35は、カッター20やスリット21が設けられている部分を避けて形成される。
【0036】
送信アンテナ防護板30a及び受信アンテナ防護板30bは、強靭で、電磁波を透過するFRP等を素材とし、面板2の径方向に並べて、且つ、間隙300をあけて隣接するよう開口部35に嵌め込まれ、面板2の一部となるように設けられている。
本実施形態では、送信アンテナ防護板30a及び受信アンテナ防護板30bは、面板2の表面と面一となるように設けられているがこれに限らず、例えば、摩耗対策として少し後退して設けられていても良い。
【0037】
送信アンテナ部31は、地中探知用の電磁波を送信するものであって、送信アンテナ防護板30aの裏面側に密着して取り付けられて、土圧や水圧、土砂から保護されている。
受信アンテナ部32は、送信アンテナ部31が送信した電磁波を受信するものであって、受信アンテナ防護板30bの裏面側に密着して取り付けられて、土圧や水圧、土砂から保護されている。
【0038】
送信アンテナ部31は、面板2の回転中または停止時に適宜電磁波を送信し、受信アンテナ部32が電磁波を受信する。例えば、面板2が1度回転する毎に電磁波を送信すると、面板2が1回転する間に360回の送受信が行われる。
【0039】
背面側電磁波遮断部33は、鉄等の電磁波が透過しにくい素材より成り、前面が開口し、面板2の開口部35を背面側からカバーするように面板2の裏面に設けられている。
背面側電磁波遮断部33は、内部に送信アンテナ部31及び受信アンテナ部32を収納するハウジングとしても機能し、箱形に形成され、送信アンテナ部31と受信アンテナ部32との間を仕切る隔壁330が設けられる。従って、背面側電磁波遮断部33は、送信アンテナ部31の背面側の周囲を囲んで設けられ、送信アンテナ部31の面板2の背面側における電磁波の漏れを防ぐ。
【0040】
また、背面側電磁波遮断部33について、箱型の送信アンテナ部31及び受信アンテナ部32が収納される空間に、さらに、比誘電率が大きい材料で充填して電磁波の乱反射を防ぐように構成するようにしても良い。
【0041】
背面側電磁波遮断部33の隔壁330は、送信アンテナ防護板30a,受信アンテナ防護板30bの間の間隙300と一致する位置であって面板2の背面側に設けられる。
また、隔壁330には、送信アンテナ部31と受信アンテナ部32を連結するケーブルを通すための貫通孔331が形成されているが、ケーブル連結が終了してから、電磁波を遮断する物質で貫通孔331を塞ぎ、貫通孔331からの電磁波の漏れを防ぐ。なお、貫通孔331は、隔壁330に設けなくても良く他の壁の部分に設けて送信アンテナ部31及び受信アンテナ部32へそれぞれケーブルを連結させるようにしても良い。
【0042】
電磁波遮断部34は、鉄等の電磁波を透過しにくく、面板2よりも高硬度の材質より成り、隔壁330の前端面に設けられて送信アンテナ防護板30aと受信アンテナ防護板30bの間の間隙300に配置される。
【0043】
電磁波遮断部34は、送信アンテナ防護板30aと受信アンテナ防護板30bとを仕切り、送信アンテナ部31から送信された電磁波が送信アンテナ防護板30aから受信アンテナ防護板30bを通って受信アンテナ部32に伝播することを遮断する。
なお、電磁波遮断部34は隔壁330と一体成形されていてもよいし、別体の電磁波遮断部34溶接等により隔壁330に固定してもよい。
【0044】
電磁波遮断部34は、面板2の表面から突出する突出部34aを備えている。
【0045】
送信アンテナ部31は、送信アンテナ防護板30aを通して前方の地中へ電磁波を送信する。送信アンテナ部31から送信された電磁波は受信アンテナ部32で受信される。受信アンテナ部32が受信する電磁波には、面板2の前方で表面の近くを伝播する表面伝播波がある。表面伝播波の電圧値や到達時間などを評価することで、通過した地中の土質を判別することができる。
【0046】
地山の面板2の表面に近い部分Aはカッター20で切削されてみだされ、水分量が多くなったり密度が低下したりする。よって、この部分Aは自然な状態の地山とはいえない。すなわち、この部分Aを通過する表面伝播波は、不適切な土質情報を含むことになる。
電磁波遮断部34が面板2の表面から突出する突出部34aを備えることにより、地山のカッター20でみだされる部分Aを通過する電磁波を遮断することができる。
【0047】
突出部34aが地山のカッター20で切削されみだされる部分Aを超えて突出すると、本来取得したい表面伝播波が遮断されてしまうことになるので、電磁波遮断部34の突出部34aは地中のこの部分Aにとどまっていた方が好ましい。すなわち、突出部34aの面板2の表面から突出する量を、カッター20で切削される範囲内とすることが好ましい。また、突出部34aを地山のカッター20で切削されみだされる部分Aの範囲内とすれば、突出部34aの摩耗や損傷も少なくすることができる。
【0048】
なお、確実に本来取得したい表面伝播波の割合を増やすために、地山の突出部34aを地山のカッター20で切削されみだされる部分Aを超えて設けるようにしても良い。
また、突出部34aは、地山のカッター20で切削されみだされる部分Aに一部が存在していれば、その分だけ適切な土質上方を含む本来取得した表面伝播波の割合を高くすることができ、かならずしも、切削されみだされる部分Aをすべてにわたって存在させる必要はない。
【0049】
突出部34aの面板2の表面からの突出量dの設定の一例としては、
カッター20の面板2の表面からの高さ(ビット20aの高さ)をhv、新たにビット切削するまでのアンテナ設置部の前進量をL、地中掘進機1の掘進速度をv、面板2の単位時間当たりの回転数をR、面板2が1回転する間に同じ条のビット20aが通過する数(いわゆるパス数)をn、余裕量をS(通常は10~30mm程度)とすると、
(式1)d=hv-L-S=hv-v/(R×n)-S
となる。
例えば、hv=80mm、v=50mm/min、R=1回転/min、n=2、S=20mmであれば、
d=80mm-50/(1×2)-20=20mmである。
【0050】
送信アンテナ部31と受信アンテナ部32は面板2の径方向に並べて隣接して設置され、送信アンテナ防護板30aと受信アンテナ防護板30bの間の間隙300は比較的狭いので、送信アンテナ防護板30aと受信アンテナ防護板30bを仕切る電磁波遮断部34の面板2の径方向の寸法は、周方向の寸法よりも短く、この結果、面板2が回転した時に電磁波遮断部34の突出部34aが受ける抵抗は小さくて済む。
【0051】
また、送信アンテナ部31と受信アンテナ部32を面板2の径方向に並べて配置したことにより、送信アンテナ部31と受信アンテナ部32を面板2の回転方向である周方向に並べた場合に比べて、前方からの反射波の送受信によって反射物の位置や距離の判別の精度は比較的低下することになるが、表面伝播波の送受信には支障がない。すななち、本実施形態では、障害物探知性能を落として土質判別性能を向上させるように配置されている。
【0052】
〔第2の実施形態〕
以下、本発明に係る第2の実施形態について図面の
図3と共に説明する。なお、第1の実施形態と同様の部分については説明を省略し、主に異なる部分について説明する。
【0053】
第2の実施形態は、突出部34aの形状が第1の実施形態と異なる。第2の実施形態では、電磁波遮断部34の面板2の表面から突出する突出部34aは、面板2の回転方向に沿って切断した断面において、前側両側部が角取りされている。角取りの具体的な形状としては、弧状に湾曲した形状となっている。
これにより、面板2が回転する際の抵抗を低減させるとともに、面板2が回転しながら掘進する際に、電磁波遮断部34の突出部34aに加わる抵抗が低減され、電磁波遮断部34の耐久性も向上させることができる。
【0054】
〔第3の実施形態〕
以下、本発明に係る第3の実施形態について図面の
図4と共に説明する。なお、第1及び第2の実施形態と同様の部分については説明を省略し、主に異なる部分について説明する。
【0055】
第3の実施形態は、突出部34aが第2の実施形態と異なる。第3の実施形態では、突出部34aが、電磁波遮断部34が設けられている方向における中央部の一部分に設けられている。
【0056】
地山のカッター20で切削されみだされた部分Aを通過する表面伝播波の多くは、送信アンテナ部31と受信アンテナ部32との対向辺の中央部分を通過するので、この中央部に突出部34aを設けて遮断することで、この表面伝播波の割合を低下させて適切な地山情報を多く含む本来取得すべき表面伝播波を取得することができる。
なお、面板2の径方向の中央部の一部分に設けられる突出部34aの寸法は、一例として送信アンテナ部31の径方向の辺長に対して、3/4~1/2程度を確保するようにする。
【0057】
電磁波遮断部34の突出部34aが送信アンテナ部31と受信アンテナ部32との間の中央部のみに設けられているので、面板2の回転に対する抵抗も比較的小さくでき、電磁波遮断部34の突出部34aに加わる抵抗も小さくて済み耐久性が向上する。
【0058】
〔第4の実施形態〕
以下、本発明に係る第4の実施形態について図面の
図5と共に説明する。なお、第1乃至第3の実施形態と同様の部分については説明を省略し、主に異なる部分について説明する。
【0059】
第4の実施形態は、電磁波遮断部34を面板2に対して前後方向に移動可能とした点が従前の実施形態と異なる。第4の実施形態では、隔壁330を2枚の隔壁330a,330bとして形成し、その間にジャッキ36が配置されている。ジャッキ36の前端に電磁波遮断部34が設けられている。ジャッキ36は前後方向(
図5における紙面上下方向)に伸縮して、電磁波遮断部34を面板の前後方向に移動させることができる。
【0060】
ジャッキ36の伸縮範囲は、電磁波遮断部34の突出部34aが面板2の表面から突出した状態から面板2の表面から退避(後退)した状態までの範囲となっている。
図4では、突出部34aがもっとも退避した状態で、送信アンテナ防護板30aと受信アンテナ防護板30bの裏面と面一の状態を示している。
【0061】
このように退避させた状態で電磁波の送受信を行うと、送信アンテナ防護板30aと受信アンテナ防護板30bの間を電磁波遮断部34で仕切らない状態の送受信ができるので、例えば、地中レーダ装置3のイニシャライズなどの設定を行うことに用いることができる。特に間隙300が狭く、電磁波が送信アンテナ防護板30aと受信アンテナ防護板30bとの間を十分伝播するような場合では、近似的に送信アンテナ防護板30aと受信アンテナ防護板30bの間が遮断されていない状態とすることができてイニシャライズなどの設定を行うことに用いることができる。
【0062】
また、地山中でジャッキ36を伸縮させることで電磁波遮断部34に付着した土砂を除去することができる。
【0063】
ジャッキ36の伸縮量を制御することで、電磁波遮断部34の突出部34aの面板2の表面からの突出させる量も調整することができる。従って、地中掘進機1の面板2の回転数Rや掘進速度vなどの掘進状況に応じて、突出量を適切に設定することができる。
【0064】
〔第5の実施形態〕
以下、本発明に係る第5の実施形態について図面の
図6と共に説明する。なお、第1乃至第4の実施形態と同様の部分については説明を省略し、主に異なる部分について説明する。
【0065】
第5の実施形態は、送信アンテナ部31と受信アンテナ部32の面板2における配置が第1の実施形態と異なる。第5の実施形態では、送信アンテナ部31と受信アンテナ部32は面板2の回転方向である周方向に並べて配置されている。
送信アンテナ防護板30aと受信アンテナ防護板30bの間隙300は、面板2の径方向に沿って配置され、送信アンテナ防護板30aと受信アンテナ防護板30bを仕切る電磁波遮断部34及び突出部34aも同様に面板2の径方向に沿って配置されている。
【0066】
送信アンテナ部31と受信アンテナ部32が面板2の回転方向に並べて配置されているので、表面伝播波の送受信だけでなく、反射波の送受信による反射物の位置や距離の判別の精度が向上し、障害物探知性能も確保することができる。
【0067】
〔第6の実施形態〕
以下、本発明に係る第6の実施形態について図面の
図7と共に説明する。なお、第1乃至第5の実施形態と同様の部分については説明を省略し、主に異なる部分について説明する。
【0068】
第6の実施形態は、送信アンテナ部31と受信アンテナ部32の面板2における配置が第3の実施形態と異なる。第6の実施形態では、送信アンテナ部31と受信アンテナ部32は面板2の回転方向である周方向に並べて配置されている。
【0069】
送信アンテナ防護板30aと受信アンテナ防護板30bの間隙300は、面板2の径方向に沿って配置され、送信アンテナ防護板30aと受信アンテナ防護板30bを仕切る電磁波遮断部34も同様に面板2の径方向に沿って配置されるが、突出部34aは送信アンテナ部31と受信アンテナ部32との間において、面板2の径方向の中央部の一部分のみに設けられている。
【0070】
具体的には、突出部34aとその後方の送信アンテナ防護板30aと受信アンテナ防護板30bを仕切る部分の電磁波遮断部34は、面板2とは異なる部材(例えば、面板2よりも高硬度の材料)で形成されており、それ以外の当該突出部34aの後方の電磁波遮断部34を挟んだ径方向の両側(
図7において紙面上下側)の間隙300の部分では、面板2の部分が延ばされて送信アンテナ防護板30aと受信アンテナ防護板30bとの間隙300を閉鎖して電磁波遮断部34を構成している。
【0071】
なお、面板2の部分を延ばさないで、第3の実施形態のように、間隙300に沿ってすべて面板2と異なる部材で送信アンテナ防護板30aと受信アンテナ防護板30bを仕切る部分の電磁波遮断部34を形成して、突出部34aを面板2の径方向の中央部の一部分に設けるようにしても良い。
【0072】
面板2の回転により、送信アンテナ部31と受信アンテナ部32が連続して周方向に移動することになるが、電磁波遮断部34の突出部34aが送信アンテナ部31と受信アンテナ部32との間の中央部のみに設けられているので、面板2の回転に対する抵抗も比較的小さくでき、電磁波遮断部34の突出部34aに加わる抵抗も小さくて済み耐久性が向上する。
しかも、送信アンテナ部31と受信アンテナ部32が面板2の回転方向に並べて配置されているので、表面伝播波の送受信だけでなく、反射波の送受信による反射物の位置や距離の判別にも適しており、障害物探知性能も確保することができる。
【0073】
〔その他の変形例〕
本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。例えば以下のようなものも含まれる。
【0074】
本実施形態では、背面側電磁波遮断部33の隔壁330に、送信アンテナ部31と受信アンテナ部32を連結するケーブルを通すための貫通孔331を形成し、ケーブル連結が終了してから、電磁波を遮断する物質で貫通孔331を塞いでいるが、隔壁に貫通孔331を形成せず、電磁波遮断措置をしてケーブル接続用端子をあらかじめ隔壁330に埋設しておくこともできる。
【0075】
第2の実施形態では、送信アンテナ部31と受信アンテナ部32が面板2の径方向に並べて配置されており、電磁波遮断部34が面板2の回転方向に長く、電磁波遮断部34の突出部34aは、面板2の回転方向に沿って切断した断面において、前側両側部が角取りされている。第5及び第6の実施形態のように、送信アンテナ部31と受信アンテナ部32が面板2の周方向に並べて配置され、電磁波遮断部34が面板2の径方向に沿った配置とする場合には、電磁波遮断部34の突出部34aを、面板2の径方向に直交して切断した断面において、前側両側部が角取りされた形状とすれば、面板2が回転する際の抵抗を低減させるとともに、面板2が回転しながら掘進する際に、電磁波遮断部34の突出部34aに加わる抵抗が低減され、電磁波遮断部34の耐久性も向上させることができる。
【0076】
本実施形態では、地中掘進機としてシールド工法に用いられるシールド掘進機であったが、これに限られず、カッターを有して回転する面板を備える地中掘進機であれば推進工法やTBM工法で用いられる地中掘進機であっても良い。
【0077】
本実施形態では、面板2の表面と、送信アンテナ防護板30a及び受信アンテナ防護板30bの表面が面一となっていたがこれに限られない。例えば、摩耗対策などとして、送信アンテナ防護板及び受信アンテナ防護板の表面を面板の表面よりも後退させて構成しても良い。このような構成においても、突出部は面板の表面から突出するようにする。
【0078】
いずれの実施形態における各技術的事項を他の実施形態に適用して実施例としても良い。
【符号の説明】
【0079】
1 地中掘進機
2 面板
20 カッター
20a ビット
21 スリット
3 地中レーダ装置
30a 送信アンテナ防護板
30b 受信アンテナ防護板
300 間隙
31 送信アンテナ部
32 受信アンテナ部
33 背面側電磁波遮断部
330 隔壁
331 貫通孔
34 電磁波遮断部
34a 突出部
35 開口部
36 ジャッキ