(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022176807
(43)【公開日】2022-11-30
(54)【発明の名称】核燃料貯蔵用ラック
(51)【国際特許分類】
G21C 19/07 20060101AFI20221122BHJP
【FI】
G21C19/07 500
G21C19/07 600
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021083429
(22)【出願日】2021-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 晃久
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 友
(72)【発明者】
【氏名】谷口 勝彦
(72)【発明者】
【氏名】川村 知久
(57)【要約】 (修正有)
【課題】製造コストの低減を図ることができる核燃料貯蔵用ラックを提供する。
【解決手段】核燃料を貯蔵ピットで貯蔵する核燃料貯蔵用ラックにおいて、枠形状をなすラック本体21と、ラック本体の内部に水平方向に間隔を空けて配置されて鉛直方向に沿う核燃料収容部を有する複数のセル22と、複数のセルの間に配置されて中性子吸収材が添加された金属材料により形成された遮蔽板23と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠形状をなすラック本体と、
前記ラック本体の内部に水平方向に間隔を空けて配置されて鉛直方向に沿う核燃料収容部を有する複数のセルと、
前記複数のセルの間に配置されて中性子吸収材が添加された金属材料により形成された遮蔽板と、
を備える核燃料貯蔵用ラック。
【請求項2】
前記遮蔽板は、前記セルの外面との間に隙間を空けて配置される、
請求項1に記載の核燃料貯蔵用ラック。
【請求項3】
前記遮蔽板は、複数の板材が前記複数のセルの間で格子形状に組み合わされて構成される、
請求項1または請求項2に記載の核燃料貯蔵用ラック。
【請求項4】
前記複数の板材は、前記複数の板材同士の間に隙間を空けて配置される、
請求項3に記載の核燃料貯蔵用ラック。
【請求項5】
前記複数の板材は、前記複数の板材同士が接触して位置決め配置される、
請求項3に記載の核燃料貯蔵用ラック。
【請求項6】
前記遮蔽板は、水平方向の長さが異なる複数種類の前記板材が組み合わされて構成される、
請求項3から請求項5のいずれか一項に記載の核燃料貯蔵用ラック。
【請求項7】
前記遮蔽板は、前記ラック本体の内面と前記セルの外面との間に配置される、
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の核燃料貯蔵用ラック。
【請求項8】
前記遮蔽板は、前記ラック本体の外面に配置される、
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の核燃料貯蔵用ラック。
【請求項9】
前記遮蔽板は、隣接する前記ラック本体の間に配置される、
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の核燃料貯蔵用ラック。
【請求項10】
前記ラック本体は、上部支持格子と、中間支持格子と、下部支持格子と、前記上部支持格子と前記中間支持格子と前記下部支持格子を連結する連結部材とを有し、前記中間支持格子は、少なくとも一部が前記遮蔽板により構成される、
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の核燃料貯蔵用ラック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、核燃料を貯蔵ピットで貯蔵する核燃料貯蔵用ラックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
原子力発電プラントは、原子炉格納容器の内部に原子炉が設置され、原子炉格納容器に隣接して燃料取扱建屋が設置され、燃料取扱建屋の内部に燃料貯蔵設備が設けられる。燃料貯蔵設備は、燃料プールを有し、燃料プールは、内部に複数の核燃料貯蔵用ラックが配置される。核燃料貯蔵用ラックは、例えば、四角筒形状をなす複数のセルが水平方向に間隔を空けて格子状に配置されて構成される。複数のセルは、上部が上部支持格子により支持し、下部が下部支持格子により支持される。核燃料貯蔵用ラックは、燃料プールの水中に浸漬され、複数のセルの内部に核燃料が挿入されて貯蔵される。このような核燃料貯蔵用ラックとしては、例えば、下記特許文献に記載されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5039670号公報
【特許文献2】特開2014-157072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
核燃料貯蔵用ラックは、ボロンが添加されたステンレス鋼またはアルミニウムによりセルが製造される。セルは、例えば、ボロンが添加されたステンレス鋼の板材を四角筒形状に折り曲げ、端部同士を溶接により接合して管状に製造される。そのため、核燃料から放出される中性子がセルにより吸収されて遮蔽される。ところが、ボロンが添加されたステンレス鋼の板材は、折り曲げたり、端部同士を溶接により接合したりすることが困難であり、加工費が増加してしまうという課題がある。また、ボロンが添加されたステンレス鋼の板材は、溶接部に十分な強度を確保することが困難となる。
【0005】
本開示は、上述した課題を解決するものであり、製造コストの低減を図る核燃料貯蔵用ラックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための本開示の核燃料貯蔵用ラックは、枠形状をなすラック本体と、前記ラック本体の内部に水平方向に間隔を空けて配置されて鉛直方向に沿う核燃料収容部を有する複数のセルと、前記複数のセルの間に配置されて中性子吸収材が添加された金属材料により形成された遮蔽板と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示の核燃料貯蔵用ラックによれば、製造コストの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、核燃料貯蔵設備を表す側面図である。
【
図2】
図2は、核燃料貯蔵設備を表す平面図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態の核燃料貯蔵用ラックを表す側面図である。
【
図4】
図4は、核燃料貯蔵用ラックを表す平面図である。
【
図5】
図5は、遮蔽板の装着状態を表す核燃料貯蔵用ラックの平面図である。
【
図6】
図6は、第2実施形態の核燃料貯蔵用ラックを表す上面図である。
【
図7】
図7は、第3実施形態の核燃料貯蔵用ラックを表す上面図である。
【
図8】
図8は、第3実施形態の核燃料貯蔵用ラックの変形例を表す上面図である。
【
図9】
図9は、第4実施形態の核燃料貯蔵用ラックを表す側面図である。
【
図10】
図10は、第5実施形態の核燃料貯蔵用ラックの要部を表す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に図面を参照して、本開示の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本開示が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。また、実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。
【0010】
[第1実施形態]
<核燃料貯蔵設備>
図1は、核燃料貯蔵設備を表す側面図、
図2は、核燃料貯蔵設備を表す平面図である。
【0011】
第1実施形態において、
図1および
図2に示すように、核燃料貯蔵設備10は、原子力発電プラントにおいて、原子炉で使用された使用済みの燃料集合体や、未使用の燃料集合体を貯蔵する。燃料集合体は、複数の燃料棒が束ねられた集合体であり、以下、核燃料と称する。
【0012】
核燃料貯蔵設備10は、貯蔵ピット11に複数の核燃料貯蔵用ラック12が設置されて構成される。貯蔵ピット11は、上方が開放された矩形状をなす燃料プールである。貯蔵ピット11は、水平方向に沿う平坦な底面11aと、底面11aの周囲に配置されて鉛直方向に沿う複数の側壁面11bとを有する。貯蔵ピット11は、上方まで冷却水Wが貯留される。
【0013】
複数の核燃料貯蔵用ラック12は、貯蔵ピット11の底面11aに設置される。核燃料貯蔵用ラック12は、水平方向に互いに間隔を空けて貯蔵ピット11に配置される。核燃料貯蔵用ラック12は、周囲の側壁面11bに水平方向に間隔を空けて貯蔵ピット11に配置される。核燃料貯蔵用ラック12は、下部に複数の支持脚12aが装着され、複数の支持脚12aを介して貯蔵ピット11の底面11aに載置される。なお、核燃料貯蔵用ラック12は、複数の支持脚12aが貯蔵ピット11の底面11aに固定されていてもよいし、移動自在としてもよい。また、核燃料貯蔵用ラック12は、貯蔵ピット11の側壁面11bに連結部材を介して連結されていてもよい。
【0014】
核燃料貯蔵用ラック12は、格子形状をなして複数の核燃料収容部が設けられる。核燃料収容部は、鉛直方向に沿う空間部であり、上方から核燃料を出し入れ可能である。核燃料貯蔵用ラック12は、複数の核燃料収容部に核燃料がそれぞれ挿入されて貯蔵される。核燃料貯蔵用ラック12は、貯蔵ピット11に配置されることで、冷却水Wに浸漬される。核燃料貯蔵用ラック12の核燃料収容部に収容された核燃料は、放出される中性子がセルにより吸収されると共に、冷却水Wにより冷却される。
【0015】
<核燃料貯蔵用ラック>
図3は、第1実施形態の核燃料貯蔵用ラックを表す側面図、
図4は、核燃料貯蔵用ラックを表す平面図、
図5は、遮蔽板の装着状態を表す核燃料貯蔵用ラックの平面図である。
【0016】
図3から
図5に示すように、核燃料貯蔵用ラック12は、ラック本体21と、複数のセル22と、遮蔽板23とを備える。
【0017】
ラック本体21は、上部支持格子31と、中間支持格子32と、下部支持格子33と、連結部材34,35とを有する。上部支持格子31と中間支持格子32と下部支持格子33は、ほぼ同様の構成をなす。
【0018】
上部支持格子31は、外枠41と、支持格子42とを有する。外枠41は、4個の外板が四角い枠状をなすように連結されて構成される。支持格子42は、複数の格子板が格子形状をなすように連結されて構成される。上部支持格子31は、外枠41の内側に支持格子42が連結されることで、鉛直方向に沿って開口する複数の支持孔43が設けられる。
【0019】
中間支持格子32と下部支持格子33は、上部支持格子31とほぼ同様の構成であることから、説明は省略する。但し、下部支持格子33は、支持格子の下部に底部(図示略)を有する。上部支持格子31と中間支持格子32と下部支持格子33は、鉛直方向に間隔を空けて配置され、連結部材34,35により連結される。すなわち、上部支持格子31と中間支持格子32は、複数の連結部材34により連結される。中間支持格子32と下部支持格子33は、複数の連結部材35により連結される。
【0020】
複数の連結部材34,35は、交差する一対の板により構成される。複数の連結部材34は、上端部が上部支持格子31に連結され、下端部が中間支持格子32に連結される。複数の連結部材35は、上端部が中間支持格子32に連結され、下端部が下部支持格子33に連結される。但し、連結部材34,35は、交差する一対の板により構成されるものに限定されず、1枚の板または交差しない複数枚の板により構成してもよい。
【0021】
セル22は、四角筒形状をなし、内部に核燃料収容部46が設けられる。セル22は、上部支持格子31と中間支持格子32と下部支持格子33における各支持孔43に挿通され、下端部が下部支持格子33の底部に当接することで、鉛直方向に沿って支持される。複数のセル22は、各支持孔43に挿通されて支持されることで、ラック本体21の内部に水平方向に間隔を空けて配置される。そして、セル22は、内部の核燃料収容部46が上方に開口することで、核燃料を出し入れ可能である。
【0022】
遮蔽板23は、複数のセル22の間に配置される。遮蔽板23は、中性子吸収材が添加された金属材料により形成される。中性子吸収材としては、例えば、ボロンやカドミウムなどが適用され、金属材料としては、ステンレス鋼やアルミニウムが適用される。本実施形態にて、遮蔽板23は、ボロンが添加されたステンレス鋼により形成される。そのため、遮蔽板23は、セル22の核燃料収容部46に収容された核燃料から放出される中性子を吸収可能となる。
【0023】
遮蔽板23は、隣接するセル22の外面の間に隙間を空けて配置される。また、遮蔽板23は、複数の板材が複数のセル22の間で格子形状に組み合わされて構成される。このとき、遮蔽板23を構成する複数の板材は、複数の板材同士の間に隙間を空けて配置される。
【0024】
具体的に説明すると、遮蔽板23は、水平方向の長さが異なる複数種類(本実施形態では、4種類)の板材51,52,53,54が組み合わされて構成される。第1板材51は、8個のセル22の外面に対向できるような水平方向の長さを有する。第2板材52は、3個のセル22の外面に対向できるような水平方向の長さを有する。第3板材53は、2個のセル22の外面に対向できるような水平方向の長さを有する。第4板材54は、1個のセル22の外面に対向できるような水平方向の長さを有する。
【0025】
本実施形態では、ラック本体21の内部にセル22が48個配置されることから、第1板材51は1枚、第2板材52は10枚、第3板材53は8枚、第4板材54は28枚だけ必要になる。板材51,52,53,54は、上部支持格子31と中間支持格子32との間と、中間支持格子32と下部支持格子33との間に配置される。そのため、上部支持格子31と中間支持格子32との間に配置される板材51,52,53,54は、鉛直方向の長さが、上部支持格子31と中間支持格子32との鉛直方向の隙間の長さより若干短い長さになる。また、中間支持格子32と下部支持格子33との間に配置される板材51,52,53,54は、鉛直方向の長さが、中間支持格子32と下部支持格子33との鉛直方向の隙間の長さより若干短い長さになる。
【0026】
なお、板材51,52,53,54の種類や枚数などは、本実施形態に限定されるものではなく、ラック本体21の内部に配置されるセル22の個数や配置される位置などに応じて適宜設定されるものである。
【0027】
例えば、第1板材51は、
図5にて上下方向の中間位置に隣接するセル22同士の隙間に、
図5にて左右方向に沿って配置される。第2板材52は、第1板材51より、
図5にて上方側および下方側におけるセル22同士の隙間に、
図5にて上下方向および左右方向に沿って配置される。第3板材53は、第1板材51より、
図5にて上方側および下方側におけるセル22同士の隙間に、
図5にて上下方向に沿って配置される。第4板材54は、板材51,52,53が配置されていないセル22同士の隙間に、
図5にて上下方向および左右方向に沿って配置される。そのため、遮蔽板23は、複数の板材51,52,53,54により、複数のセル22間で格子形状をなす。
【0028】
このとき、複数の板材51,52,53,54は、厚さが隣接するセル22間の隙間の長さより薄いことで、セル22の外面との間に隙間が確保される。また、複数の板材51,52,53,54は、板材51,52,53,54の面内方向の端面と板材51,52,53,54の平面と間に隙間が確保される。すなわち、遮蔽板23を構成する複数の板材51,52,53,54は、下端部が中間支持格子32または下部支持格子33に載置されているだけである。そのため、板材51,52,53,54は、複数のセル22に接近する板厚方向および板材51,52,53,54同士が接近する面内方向に移動自在に支持される。
【0029】
第1実施形態の核燃料貯蔵用ラック12は、遮蔽板23を構成する複数の板材51,52,53,54が複数のセル22の外面の間に配置される。そのため、遮蔽板23を折り曲げたり、溶接などにより接合したりする必要がなく、加工コストを低減することができる。また、セル22や遮蔽板23に溶接部がないことから、強度が低下することがない。そして、板材51,52,53,54をラック本体21に対して側方または上方からセル22間に挿入すればよく、施工性を向上することができる。
【0030】
また、核燃料貯蔵用ラック12は、遮蔽板23を構成する複数の板材51,52,53,54が複数のセル22の外面の間に隙間を空けて配置されると共に、板材51,52,53,54同士の間に隙間を空けて配置される。そのため、地震の発生時に、板材51,52,53,54が振動してラック本体21やセル22に衝突したり、板材51,52,53,54同士が衝突したりすることで、振動エネルギーを衝突エネルギーに変換し、振動を減衰させることができる。そして、板材51,52,53,54とセル22との間の隙間に冷却水が流入することで、セル22の内部に収容された核燃料を適正に冷却することができる。
【0031】
また、遮蔽板23は、複数の大きさの異なる複数の板材51,52,53,54により構成されることで、複数のセル22間に複数の板材51,52,53,54を適正に配置することができる。
【0032】
[第2実施形態]
図6は、第2実施形態の核燃料貯蔵用ラックを表す上面図である。なお、上述した第1実施形態と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0033】
第2実施形態において、
図6に示すように、核燃料貯蔵用ラック12Aは、ラック本体21と、複数のセル22と、遮蔽板23Aとを備える。ラック本体21と複数のセル22は、第1実施形態と同様である。
【0034】
遮蔽板23Aは、複数のセル22の間に配置される。遮蔽板23Aは、ボロンが添加されたステンレス鋼により形成される。遮蔽板23Aは、複数のセル22の外面との間に隙間を空けて配置される。また、遮蔽板23Aは、複数の板材が複数のセル22の間で格子形状に組み合わされて構成される。このとき、遮蔽板23Aを構成する複数の板材は、複数の板材同士が接触して位置決め配置される。
【0035】
具体的に説明すると、遮蔽板23Aは、第1実施形態と同様に、水平方向の長さが異なる複数種類の板材51,52,53,54が組み合わされて構成される。複数の板材51,52,53,54は、複数のセル22同士の隙間に配置される。このとき、複数の板材51,52,53,54は、厚さが隣接するセル22間の隙間の長さより薄いことで、セル22の外面との間に隙間が確保される。一方で、複数の板材51,52,53,54は、板材51,52,53,54の面内方向の端面と板材51,52,53,54の平面とが当接する。すなわち、遮蔽板23Aを構成する複数の板材51,52,53,54は、下端部が中間支持格子32または下部支持格子33に載置され、隣接する端面と平面が当接している。そのため、板材51,52,53,54は、隣接するセル22同士の隙間の中間位置に位置決めされ、セル22の外面側に冷却水の流路が適正に確保される。
【0036】
なお、板材51,52,53,54の一方または両方の平面に凸部を設け、板材51,52,53,54の凸部をセル22の外面に接触することで、板材51,52,53,54を隣接するセル22同士の隙間の中間位置に位置決めしてもよい。もしくは、板材51,52,53,54とセル22の間にシム等を挟むことで、板材51,52,53,54を隣接するセル22同士の隙間の中央位置に位置決めしてもよい。
【0037】
第2実施形態の核燃料貯蔵用ラック12Aは、遮蔽板23Aを構成する複数の板材51,52,53,54が複数のセル22の外面の間に配置される。そして、複数の板材51,52,53,54は、隣接する端面と平面が当接する。そのため、遮蔽板23Aを構成する板材51,52,53,54は、隣接するセル22同士の隙間の中間位置に位置決めされ、セル22の外面側に冷却水の流路が確保され、セル22の内部に収容された核燃料を適正に冷却することができる。
【0038】
[第3実施形態]
図7は、第3実施形態の核燃料貯蔵用ラックを表す上面図である。なお、上述した第1実施形態と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0039】
第3実施形態において、
図7に示すように、核燃料貯蔵用ラック12Bは、ラック本体21と、複数のセル22と、遮蔽板23,61とを備える。ラック本体21と複数のセル22と遮蔽板23は、第1実施形態と同様である。
【0040】
遮蔽板61は、ラック本体21の内面とセル22の外面との間に配置される。遮蔽板61は、遮蔽板23と同様に、ボロンが添加されたステンレス鋼により形成される。遮蔽板61は、ラック本体21の内面、つまり、連結部材34,35とセル22の外面との間に圧入、または、隙間を空けて配置される。この場合、遮蔽板61は、上部支持格子31と中間支持格子32との間と、中間支持格子32と下部支持格子33との間に独立したものを配置してもよいし、上部支持格子31と下部支持格子33との間に一体にしたものを配置してもよい。なお、ラック本体21に連結部材34,35がない場合、複数のセル22の外側を囲むように、複数のセル22の外面に遮蔽板61を固定してもよい。
【0041】
なお、複数のセル22の周囲に配置する遮蔽板61の位置は、上述したものに限定されない。
図8は、第3実施形態の核燃料貯蔵用ラックの変形例を表す上面図である。
【0042】
第3実施形態の変形例において、
図8に示すように、核燃料貯蔵用ラック12Cは、ラック本体21と、複数のセル22と、遮蔽板23,62とを備える。
【0043】
遮蔽板62は、ラック本体21の外面に配置される。遮蔽板62は、遮蔽板61と同様に、ボロンが添加されたステンレス鋼により形成される。遮蔽板62は、ラック本体21の外面、つまり、連結部材34,35の外面に固定される。この場合、遮蔽板62は、上部支持格子31と中間支持格子32との間と、中間支持格子32と下部支持格子33との間に独立したものを配置してもよいし、上部支持格子31と下部支持格子33との間に一体にしたものを配置してもよい。また、遮蔽板62を連結部材34,35(いずれも
図3参照)がない位置に外側から固定してもよい。遮蔽板62の固定方法としては、ボルト結合が好ましい。
【0044】
第3実施形態の核燃料貯蔵用ラック12B,12Cは、複数のセル22の外側に、複数のセル22を取り囲むように遮蔽板61,62を配置する。そのため、遮蔽板61,62により遮蔽性能を向上することができる。
【0045】
[第4実施形態]
図9は、第4実施形態の核燃料貯蔵用ラックを表す側面図である。なお、上述した第1実施形態と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0046】
第4実施形態において、
図9に示すように、核燃料貯蔵用ラック12は、ラック本体21と、複数のセル22と、遮蔽板23,63とを備える。ラック本体21と複数のセル22と遮蔽板23は、第1実施形態と同様である。
【0047】
遮蔽板63は、隣接するラック本体21の間に配置される。核燃料貯蔵用ラック12は、貯蔵ピット11(
図1参照)の底面11aに間隔を空けて並んで設置される。遮蔽板63は、隣接する核燃料貯蔵用ラック12の間に配置される。遮蔽板63は、遮蔽板23と同様に、ボロンが添加されたステンレス鋼により形成される。遮蔽板63は、隣接するラック本体21の外面に対して隙間を空けて配置される。なお、遮蔽板63を隣接するラック本体21の一方の外面にボルト締結してもよい。この場合、貯蔵ピット11における冷却水の円滑な流れを遮蔽板63が阻害しないように、遮蔽板63の下端部と底面11aとの間に隙間を設けたり、遮蔽板63の要部に貫通孔を設けたりしてもよい。
【0048】
第4実施形態の核燃料貯蔵用ラック12は、隣接するラック本体21の間に遮蔽板63が配置される。そのため、遮蔽板63により遮蔽性能を向上することができる。
【0049】
[第5実施形態]
図10は、第5実施形態の核燃料貯蔵用ラックの要部を表す上面図、
図11は、
図10のXI-XI断面図である。なお、上述した第1実施形態と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0050】
第5実施形態において、
図10および
図11に示すように、中間支持格子32は、外枠(図示略)の内側に支持格子を構成する複数の格子部材32aが格子形状をなすように配置される。そして、複数の格子部材32aにより形成された支持孔にセル22が配置される。中間支持格子32は、少なくとも一部が遮蔽板64により構成される。
【0051】
格子部材32aは、隣接するセル22の間に水平方向(
図10の上下方向)に沿って配置される。一方、遮蔽板64は、隣接するセル22の間に水平方向(
図10の左右方向)に沿って配置される。遮蔽板64は、水平方向に間隔を空けて切欠部64aが形成される。複数の切欠部64aの間隔は、セル22の幅である。切欠部64aは、鉛直方向の下方に開口する。遮蔽板64は、切欠部64aが格子部材32aに嵌合する。すなわち、格子部材32aと遮蔽板64は、水平方向に交差するように配置され、互いに嵌合される。また、セル22と遮蔽板64との間に押え部材65が配置される。押え部材65は、遮蔽板64の幅方向の移動を阻止する。
【0052】
第5実施形態の核燃料貯蔵用ラック12は、遮蔽板64が中間支持格子32における格子部材42aとセル22の外面との間に配置される。そのため、中間支持格子32の位置であっても、遮蔽板64により中性子を吸収することができ、遮蔽性能を向上することができる。
【0053】
なお、第5実施形態では、水平方向に交差する一方の格子部材を遮蔽板64により構成したが、格子部材の一部を遮蔽板64としてもよい。また、水平方向に交差する両方の格子部材を遮蔽板64により構成してもよい。
【0054】
[本実施形態の作用効果]
第1の態様に係る核燃料貯蔵用ラックは、枠形状をなすラック本体21と、ラック本体21の内部に水平方向に間隔を空けて配置されて鉛直方向に沿う核燃料収容部46を有する複数のセル22と、複数のセル22の間に配置されて中性子吸収材が添加された金属材料により形成された遮蔽板23,23Aとを備える。
【0055】
第1の態様に係る核燃料貯蔵用ラックによれば、遮蔽板23,23Aを折り曲げたり、溶接などにより接合したりする必要がなく、加工コストを低減することができる。また、セル22や遮蔽板23に溶接部がないことから、強度が低下することがない。また、板材51,52,53,54をラック本体21に対して側方または上方からセル22間に挿入すればよく、施工性を向上することができる。その結果、製造コストの低減を図ることができる。
【0056】
第2の態様に係る核燃料貯蔵用ラックは、遮蔽板23,23Aがセル22の外面との間に隙間を空けて配置される。これにより、遮蔽板23,23Aとセル22との間の隙間に冷却水が流入することで、セル22の内部に収容された核燃料を適正に冷却することができる。また、地震の発生時に、遮蔽板23,23Aが振動してラック本体21やセル22に衝突することで、振動エネルギーを衝突エネルギーに変換し、振動を減衰させることができる。
【0057】
第3の態様に係る核燃料貯蔵用ラックは、遮蔽板23,23Aを構成する複数の板材51,52,53,54が複数のセル22の間で格子形状に組み合わされて構成される。これにより、複数の板材51,52,53,54を複数のセル22の間で適正に配置することができる。
【0058】
第4の態様に係る核燃料貯蔵用ラックは、複数の板材51,52,53,54が、複数の板材51,52,53,54同士の間に隙間を空けて配置される。これにより、板材51,52,53,54同士の間の隙間に冷却水が流入することで、セル22の内部に収容された核燃料を適正に冷却することができる。また、地震の発生時に、板材51,52,53,54同士が衝突することで、振動エネルギーを衝突エネルギーに変換し、振動を減衰させることができる。
【0059】
第5の態様に係る核燃料貯蔵用ラックは、複数の板材51,52,53,54同士が接触して位置決め配置される。これにより、板材51,52,53,54が隣接するセル22同士の隙間の中間位置に位置決めされることとなり、セル22の外面側に冷却水の流路を確保し、セル22の内部に収容された核燃料を適正に冷却することができる。
【0060】
第6の態様に係る核燃料貯蔵用ラックは、遮蔽板23,23Aが、水平方向の長さが異なる複数種類の板材51,52,53,54が組み合わされて構成される。これにより、複数のセル22間に複数の板材51,52,53,54を適正に配置することができる。
【0061】
第7の態様に係る核燃料貯蔵用ラックは、遮蔽板61がラック本体21の内面とセル22の外面との間に配置される。これにより、遮蔽性能を向上することができる。
【0062】
第8の態様に係る核燃料貯蔵用ラックは、遮蔽板62がラック本体21の外面に配置される。これにより、遮蔽性能を向上することができる。
【0063】
第9の態様に係る核燃料貯蔵用ラックは、遮蔽板63が隣接するラック本体21の間に配置される。これにより、遮蔽性能を向上することができる。
【0064】
第10の態様に係る核燃料貯蔵用ラックは、ラック本体21として、上部支持格子31と、中間支持格子32と、下部支持格子33と、上部支持格子31と中間支持格子32と下部支持格子33を連結する連結部材34,35とを有し、中間支持格子32は、少なくとも一部が遮蔽板64により構成される。これにより、遮蔽性能を向上することができる。
【0065】
なお、上述した実施形態では、遮蔽板23,23A,61,62,63を平板形状としたが、この形状に限定されるものではなく、例えば、L字形状やU字形状などに成形して適用してもよい。
【0066】
また、本開示の遮蔽板は、新設の核燃料貯蔵用ラックに配置することはもちろんであるが、既設の核燃料貯蔵用ラックを改修して配置することもできる。
【符号の説明】
【0067】
10 核燃料貯蔵設備
11 貯蔵ピット
12,12A,12B,12C 核燃料貯蔵用ラック
21 ラック本体
22 セル
23,23A 遮蔽板
31 上部支持格子
32 中間支持格子
33 下部支持格子
34,35 連結部材
41 外枠
42 支持格子
43 支持孔
46 核燃料収容部
51 第1板材
52 第2板材
53 第3板材
54 第4板材
61,62,63,64 遮蔽板