(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022176818
(43)【公開日】2022-11-30
(54)【発明の名称】タレット、工具ホルダ取付け方法および工具ホルダ
(51)【国際特許分類】
B23B 29/24 20060101AFI20221122BHJP
B23B 25/06 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
B23B29/24 A
B23B25/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021083453
(22)【出願日】2021-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】591033755
【氏名又は名称】エヌティーツール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003052
【氏名又は名称】特許業務法人勇智国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 均
【テーマコード(参考)】
3C045
3C046
【Fターム(参考)】
3C045HA06
3C046NN07
(57)【要約】
【課題】工具ホルダを精度良く取付けることができるタレットを提供する。
【解決手段】工具ホルダ20が取付けられる工具ホルダ取付け面111bの周方向一方側および周方向他方側の工具ホルダ取付け面111aおよび111cには、第1の部材10および第2の部材30が取付けられている。工具ホルダ20と第1の部材10の間に第1の楔部材(120と130)が配置され、工具ホルダ20と第2の部材30の間に第2の楔部材(140と150)が配置される。第1の楔部材(120と130)の周方向他方側の第2の壁面(121cと131c)の少なくとも1つの個所に、工具ホルダ20を第1の部材10から離す方向に移動させる力(F1、F2)を発生可能であるとともに、第2の楔部材(140と150)の周方向一方側の第1の壁面(141bと151b)の少なくとも1つの個所に、工具ホルダ20を第2の部材30から離す方向に移動させる力(F3、F4)を発生可能である。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転中心線回りに回転可能であり、外周側に、軸方向および周方向に沿って延在する複数の工具ホルダ取付け面が周方向に沿って形成されているタレットであって、
周方向に隣接する3つの工具ホルダ取付け面のうち、周方向一方側に形成されている第1の工具ホルダ取付け面に取付けられている第1の部材と、周方向他方側に形成されている第3の工具ホルダ取付け面に取付けられている第2の部材と、周方向中央に形成されている第2の工具ホルダ取付け面に、取付け手段により取付けられる工具ホルダと、
第1の楔部材と、
第2の楔部材と、
調整手段と、を備え、
前記工具ホルダの周方向一方側の第1の壁面と前記第1の部材の周方向他方側の壁面との間の間隔および前記工具ホルダの周方向他方側の第2の壁面と前記第2の部材の周方向一方側の壁面との間の間隔が、径方向外周側から径方向内周側に向って減少するように構成され、
前記第1の楔部材は、前記工具ホルダと前記第1の部材の間に、周方向一方側の第1の壁面および周方向他方側の第2の壁面が、前記第1の部材の前記壁面および前記工具ホルダの前記第1の壁面に接触した状態で配置され、
前記第2の楔部材は、前記工具ホルダと前記第2の部材の間に、周方向一方側の第1の壁面および周方向他方側の第2の壁面が、前記工具ホルダの前記第2の壁面および前記第2の部材の前記壁面に接触した状態で配置され、
前記調整手段は、前記第1の楔部材の前記第2の壁面の少なくとも1つの箇所に、前記工具ホルダを前記第1の部材から離す方向に移動させる力を発生可能であるとともに、前記第2の楔部材の前記第1の壁面の少なくとも1つの箇所に、前記工具ホルダを前記第2の部材から離す方向に移動させる力を発生可能に構成され、
前記第1の楔部材の前記第2の壁面の前記少なくとも1つの個所に発生させる力および前記第2の楔部材の前記第1の壁面の前記少なくとも1つの個所に発生させる力のうちの少なくとも1つを調整することによって、前記第2の工具ホルダ取付け面に対する前記工具ホルダの取付け状態を調整可能に構成されていることを特徴とするタレット。
【請求項2】
請求項1に記載のタレットであって、
前記調整手段は、前記第1の楔部材の前記第2の壁面の、軸方向に離間する複数の箇所に、前記工具ホルダを前記第1の部材から離す方向に移動させる力を発生可能であるとともに、前記第2の楔部材の前記第1の壁面の、軸方向に離間する複数の個所に、前記工具ホルダを前記第2の部材から離す方向に移動させる力を発生可能に構成されていることを特徴とするタレット。
【請求項3】
請求項1に記載のタレットであって、
前記第1の楔部材は、複数の分割楔部材により構成され、
前記第2の楔部材は、複数の分割楔部材により構成され、
前記第1の楔部材を構成する前記複数の分割楔部材は、前記工具ホルダと前記第1の部材の間に軸方向に離間して、各分割楔部材の周方向一方側の第1の壁面および周方向他方側の第2の壁面が、前記第1の部材の前記壁面および前記工具ホルダの前記第1の壁面に接触した状態で配置され、
前記第2の楔部材を構成する前記複数の分割楔部材は、前記工具ホルダと前記第2の部材の間に軸方向に離間して、各分割楔部材の周方向一方側の第1の壁面および周方向他方側の第2の壁面が、前記工具ホルダの前記第2の壁面および前記第2の部材の前記壁面に接触した状態で配置され、
前記調整手段は、前記第1の楔部材を構成する前記複数の分割楔部材それぞれの前記第2の壁面の少なくとも1つの個所に、前記工具ホルダを前記第1の部材から離す方向に移動させる力を発生可能であるとともに、前記第2の楔部材を構成する前記複数の分割楔部材それぞれの前記第2の壁面の少なくとも1つの個所に、前記工具ホルダを前記第2の部材から離す方向に移動させる力を発生可能に構成されていることを特徴とするタレット。
【請求項4】
請求項1~3のうちのいずれか一項に記載のタレットであって、
前記取付け手段は、雌ネジが形成されている取付け孔と、前記取付け孔に形成されている雌ネジにネジ結合可能な雄ネジが形成されている取付けボルトを有し、
前記調整手段は、雌ネジが形成されている調整孔と、前記調整孔に形成されている雌ネジにネジ結合可能な雄ネジが形成されている調整ボルトを有し、
前記取付けボルトに形成されている前記雄ネジと前記取付け孔に形成されている前記雌ネジおよび前記調整ボルトに形成されている前記雄ネジと前記調整孔に形成されている前記雌ネジは、前記第2の工具ホルダ取付け面に対する前記工具ホルダの取付け状態の調整に対応可能な裕度を有していることを特徴とするタレット。
【請求項5】
請求項1~4のうちのいずれか一項に記載のタレットであって、
前記調整手段は、雌ネジが形成されている調整孔と、前記調整孔に形成されている雌ネジにネジ結合可能な雄ネジが形成されている調整ボルトを有し、
前記調整孔は、前記工具ホルダに形成され、前記工具ホルダの前記第1の壁面に開口している周方向一方側調整孔および前記第2の壁面に開口している周方向他方側調整孔と、前記第1の楔部材に形成され、前記第1の楔部材の前記第2の壁面に開口している調整孔と、前記第2の楔部材に形成され、前記第2の楔部材の前記第1の壁面に開口している調整孔を有し、
前記調整ボルトは、前記第1の楔部材の前記第2の壁面に開口している前記調整孔および前記工具ホルダの前記第1の壁面に開口している前記周方向一方側調整孔に挿入される調整ボルトと、前記第2の楔部材の前記第1の壁面に開口している前記調整孔および前記工具ホルダの前記第2の壁面に開口している前記周方向他方側調整孔に挿入される調整ボルトを有していることを特徴とするタレット。
【請求項6】
請求項1~4のうちのいずれか一項に記載のタレットであって、
前記調整手段は、雌ネジが形成されている調整孔と、前記調整孔に形成されている雌ネジにネジ結合可能な雄ネジが形成されている調整ボルトを有し、
前記調整孔は、前記第1の部材に形成され、前記第1の部材の前記壁面に開口している調整孔と、前記第2の部材に形成され、前記第2の部材の前記壁面に開口している調整孔と、前記第1の楔部材に形成され、前記第1の楔部材の前記第1の壁面に開口している調整孔と、前記第2の楔部材に形成され、前記第2の楔部材の前記第2の壁面に開口している調整孔を有し、
前記調整ボルトは、前記第1の楔部材の前記第1の壁面に開口している前記調整孔および前記第1の部材の前記壁面に開口している前記調整孔に挿入される調整ボルトと、前記第2の楔部材の前記第2の壁面に開口している前記調整孔および前記第2の部材の前記壁面に開口している前記調整孔に挿入される調整ボルトを有していることを特徴とするタレット。
【請求項7】
請求項1~6のうちのいずれか一項に記載のタレットであって、
前記第1の部材と前記第2の部材の少なくとも一方は、工具ホルダのダミーであることを特徴とするタレット。
【請求項8】
回転中心線回りに回転可能であり、外周側に、軸方向および周方向に沿って延在する複数の工具ホルダ取付け面が周方向に沿って設けられているタレットの前記工具ホルダ取付け面に工具ホルダを取り付ける工具ホルダ取付け方法であって、
周方向に隣接する3つの工具ホルダ取付け面のうち、周方向一方側に形成されている第1の工具ホルダ取付け面に第1の部材を取付け、周方向他方側に形成されている第3の工具ホルダ取付け面に第2の部材を取り付け、周方向中央に形成されている第2の工具ホルダ取付け面に、取付け手段により工具ホルダを仮取付け、前記工具ホルダと前記第1の部材の間に、第1の楔部材を、前記第1の楔部材の周方向一方側の第1の壁面および周方向他方側の第2の壁面が、前記第1の部材の周方向他方側の壁面および前記工具ホルダの周方向一方側の第1の壁面に接触した状態で配置し、前記工具ホルダと前記第2の部材の間に、第2の楔部材を、前記第2の楔部材の周方向一方側の第1の壁面および周方向他方側の第2の壁面が、前記工具ホルダの周方向他方側の第2の壁面および前記第2の部材の周方向一方側の壁面に接触した状態で配置する段階と、
前記第1の楔部材の前記第2の壁面の少なくとも1つの個所に、前記工具ホルダを前記第1の部材から離す方向に移動させる力を発生させる操作と、前記第2の楔部材の前記第1の壁面の少なくとも1つの個所に、前記工具ホルダを前記第2の部材から離す方向に移動させる力を発生させる操作の少なくとも一つを行うことにより、前記第2の工具ホルダ取付け面に対する前記工具ホルダの取付け状態を調整する段階と、
前記工具ホルダを、前記取付け手段により前記第2の工具ホルダ取付け面に取付ける段階と、
を備えることを特徴とする工具ホルダ取付け方法。
【請求項9】
回転中心線回りに回転可能なタレットの外周側に周方向に沿って形成されている複数の工具ホルダ取付け面のうちの1つに取付けられる工具ホルダであって、
前記1つの工具ホルダ取付け面に対向配置される被取付け面と、
前記被取付け面に対して周方向一方側に形成され、軸方向および径方向に沿って延在する第1の壁面と、
前記被取付け面に対して周方向他方側に形成され、軸方向および径方向に沿って延在する第2の壁面と、
前記被取付け面に開口している少なくとも1つの取付け孔と、
前記第1の壁面に開口している少なくとも1つの周方向一方側調整孔と、
前記第2の壁面に開口している少なくとも1つの周方向他方側調整孔と、を有し、
前記取付け孔は、前記被取付け面を前記1つの工具ホルダ取付け面に押し付ける取付けボルトがネジ結合可能に形成され、
前記周方向一方側調整孔は、前記1つの工具ホルダ取付け面に対して周方向一方側に形成されている工具ホルダ取付け面に取付けられている第1の部材の周方向他方側の壁面と前記第1の壁面との間に配置される第1の楔部材の位置を調整する調整ボルトがネジ結合可能に形成され、
前記周方向他方側調整孔は、前記1つの工具ホルダ取付け面に対して周方向他方側に形成されている工具ホルダ取付け面に取付けられている第2の部材の周方向一方側の壁面と前記第2の壁面との間に配置される第2の楔部材の位置を調整する調整ボルトがネジ結合可能に形成されていることを特徴とする工具ホルダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タレットの工具ホルダ取付け面に工具ホルダを精度良く取付けることができる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
旋盤等の工作機械では、工具を保持している工具ホルダを取付け可能な刃物台が用いられている。刃物台は、例えば、特許文献1(特開2006-167862号公報)に開示されている。
特許文献1に開示されている刃物台は、タレット、駆動機構および割出し機構を備えている。タレットは、回転中心線回りに回転可能であり、外周側に、複数の工具ホルダ取付け面が周方向に沿って設けられている。タレットの工具ホルダ外周面には、工具ホルダが着脱自在に取付けられている。工具ホルダには、工具が保持されている。割出し機構は、ワークの加工に使用する工具を保持している工具ホルダを順次加工位置に割出す。駆動機構は、加工位置に割出されている工具ホルダに保持されている工具を回転させ、ワークを加工する。
ここで、工具ホルダがタレットの工具ホルダ取付け面に正確に取付けられていないと、加工精度が低下する。このため、特許文献1に開示されているタレットは、工具ホルダをタレットの工具ホルダ取付け面に位置決めする位置決め機構を備えている。位置決め機構は、タレットの工具ホルダ取付け面に形成されているキーと、工具ホルダの被取付け面に形成され、キーが係合可能なキー溝により構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されているタレットは、キーと、キーが係合可能なキー溝により構成され、工具ホルダを工具ホルダ取付け面に位置決めする位置決め機構を備えている。しかしながら、このような位置決め機構を用いても、工具ホルダを工具ホルダ取付け面に正確に取付けることができない場合がある。例えば、工具ホルダに保持されている工具の工具中心線の芯ずれや傾きが発生する場合がある。
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、工具ホルダをタレットの工具ホルダ取付け面に、精度良く取付けることができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1発明は、タレットに関する。タレットは、回転中心線回りに回転可能であり、外周側に、軸方向および周方向に沿って延在する複数の工具ホルダ取付け面が周方向に沿って形成されている。好適には、タレットは、工具ホルダ取付け面を側面とする多角中に形成される。
本発明のタレットは、周方向に隣接する3つの工具ホルダ取付け面のうち、周方向一方側および周方向他方側に形成されている第1の工具ホルダ取付け面および第3の工具ホルダ取付け面に取付けられている第1の部材および第2の部材と、周方向中央に形成されている第2の工具ホルダ取付け面に取付けられる工具ホルダを備えている。すなわち、第1の工具ホルダ取付け面および第3の工具ホルダ取付け面に第1の部材および第2の部材が取付けられている状態で、第2の工具ホルダ取付け面に工具ホルダが取付けられる。工具ホルダは、取付け手段により第2の工具ホルダ取付け面に取付けられる。取付け手段としては、適宜の取付け手段を用いることができる。第1の部材および第2の部材を第1の工具ホルダ取付け面および第3の工具ホルダ取付け面に取付ける取付け手段としては、工具ホルダを第2の工具ホルダ取付け面に取付ける取付け手段と同じ取付け手段を用いてもよいし、異なる取付け手段を用いることもできる。第1の部材および第2の部材としては、工具ホルダ(第2の工具ホルダ取付け面に取付けられる工具ホルダと異なる他の工具ホルダ)あるいは工具ホルダのダミーが用いられる。
また、第1の楔部材、第2の楔部材および調整手段を備えている。
第2の工具ホルダ取付け面に取付けられる工具ホルダと第1の工具ホルダ取付け面および第3の工具ホルダ取付け面に取付けられる第1の部材および第2の部材は、工具ホルダの周方向一方側の第1の壁面と第1の部材の周方向他方側の壁面との間の間隔および工具ホルダの周方向他方側の第2の壁面と第2の部材の周方向一方側の壁面との間の間隔が、径方向外周側から径方向内周側に向って減少するように構成されている。
第1の楔部材は、工具ホルダと第1の部材の間に、第1の楔部材の周方向一方側の第1の壁面および周方向他方側の第2の壁面が、第1の部材の周方向他方側の壁面および工具ホルダの第1の壁面に接触した状態で配置される。好適には、第1の楔部材は、周方向一方側の第1の壁面および周方向他方側の第2の壁面が第1の部材の周方向他方側の壁面および工具ホルダの第1の壁面に接触した状態で、径方向に沿って移動可能であり、第1の楔部材が径方向外周側から径方向内周側に移動するにしたがって、工具ホルダの第1の壁面と第1の部材の周方向他方側の壁面との間の間隔が増大するように配置される。
第2の楔部材は、工具ホルダと第2の部材の間に、第2の楔部材の周方向一方側の第1の壁面および周方向他方側の第2の壁面が、工具ホルダの第2の壁面および第2の部材の周方向一方側の壁面に接触した状態で配置される。好適には、第2の楔部材は、周方向一方側の第1の壁面および周方向他方側の第2の壁面が工具ホルダの第2の壁面および第2の部材の周方向一方側の壁面に接触した状態で、径方向に沿って移動可能であり、第2の楔部材が径方向外周側から径方向内周側に移動するにしたがって、工具ホルダの第2の壁面と第2の部材の周方向一方側の壁面との間の間隔が増大するように配置される。
調整手段は、第1の楔部材の第2の壁面の少なくとも1つの箇所に、工具ホルダを第1の部材から離す方向に移動させる力を発生可能であるとともに、第2の楔部材の第1の壁面の少なくとも1つの箇所に、工具ホルダを第2の部材から離す方向に移動させる力を発生可能に構成されている。第1の楔部材の第2の壁面の少なくとも1つの箇所および第2の楔部材の第2の壁面の少なくとも1つの箇所としては、適宜の個所を設定することができる。
そして、第1の楔部材の第2の壁面の少なくとも1つの個所に発生させる力および第2の楔部材の第1の壁面の少なくとも1つの個所に発生する力のうちの少なくとも1つを調整することによって、第2の工具ホルダ取付け面に対する工具ホルダの取付け状態を調整可能に構成されている。例えば、工具ホルダに保持されている工具の工具中心線を、第2の工具ホルダ取付け面の延在方向に沿って平行に移動させることができ、あるいは、工具中心線を、第2の工具ホルダ取付け面上で回転させることができる。
本発明のタレットを用いることにより、工具ホルダをタレットの工具ホルダ取付け面に、精度良く取付けることができる。
第1発明の異なる形態では、調整手段は、第1の楔部材の第2の壁面の、軸方向に離間する複数の箇所に、工具ホルダを第1の部材から離す方向に移動させる力を発生可能であるとともに、第2の楔部材の第1の壁面の、軸方向に離間する複数の個所に、工具ホルダを第2の部材から離す方向に移動させる力を発生可能に構成されている。
第1の楔部材の第2の壁面の、軸方向に離間する複数の個所としては、適宜の個所を設定することができるが、好適には、第1の楔部材の第2の壁面の軸方向中央を挟んで両側に配置されるように設定される。第2の楔部材の第1の壁面の、軸方向に離間する複数の個所も、同様に設定される。
本形態では、工具ホルダ取付け面に対する工具ホルダの取付け状態をより精度良く調整することができる。
第1発明の異なる形態では、第1の楔部材は、複数の分割楔部材により構成されている。第1の楔部材を構成する複数の分割楔部材は、工具ホルダと第1の部材の間に軸方向に離間して(接している状態を含む)、各分割楔部材の周方向一方側の第1の壁面および周方向他方側の第2の壁面が、第1の部材の周方向他方側の壁面および工具ホルダの第1の壁面に接触した状態で配置される。好適には、各分割楔部材は、周方向一方側の第1の壁面および周方向他方側の第2の壁面が第1の部材の周方向他方側の壁面および工具ホルダの第1の壁面に接触した状態で、径方向に沿って移動可能に配置される。
また、第2の楔部材は、複数の分割楔部材により構成されている。第2の楔部材を構成する複数の分割楔部材は、工具ホルダと第2の部材の間に離間して(接している状態を含む)、各分割楔部材の周方向一方側の第1の壁面および周方向他方側の第2の壁面が、工具ホルダの第2の壁面および第2の部材の周方向一方側の壁面に接触した状態で配置される。好適には、各分割楔部材は、周方向一方側の第1の壁面および周方向他方側の第2の壁面が工具ホルダの第2の壁面および第2の部材の周方向一方側の壁面に接触した状態で、径方向に沿って移動可能に配置される。
そして、調整手段は、第1の楔部材を構成する複数の分割楔部材それぞれの第2の壁面の少なくとも1つの個所に、工具ホルダを第1の部材から離す方向に移動させる力を発生可能であるとともに、第2の楔部材を構成する複数の分割楔部材それぞれの第1の壁面の少なくとも1つの個所に、工具ホルダを第2の部材から離す方向に移動させる力を発生可能に構成されている
本形態では、第1の楔部材および第2の楔部材が、軸方向に離間して配置される複数の分割楔部材により構成されているため、工具ホルダ取付け面に対する工具ホルダの取付け状態をより容易に調整することができる。
第1発明の異なる形態では、取付け手段は、雌ネジが形成されている取付け孔と、取付け孔に形成されている雌ネジにネジ結合可能な雄ネジが形成されている取付けボルトを有している。また、調整手段は、雌ネジが形成されている調整孔と、調整孔に形成されている雌ネジにネジ結合可能な雄ネジが形成されている調整ボルトを有している。
そして、取付けボルトに形成されている雄ネジと取付け孔に形成されている雌ネジおよび調整ボルトに形成されている雄ネジと調整孔に形成されている雌ネジは、第2の工具ホルダ取付け面に対する工具ホルダの取付け状態の調整に対応可能な裕度を有している。例えば、取付けボルトによって工具ホルダを工具ホルダ取付け面に仮取付けた状態で、調整ボルトの位置を調整することによって、工具ホルダ取付け面に対する工具ホルダの取付け状態を調整可能に構成されている。
本形態では、取付け手段および調整手段を、簡単に構成することができる。
第1発明の異なる形態では、調整手段は、雌ネジが形成されている調整孔と、調整孔に形成されている雌ネジにネジ結合可能な雄ネジが形成されている調整ボルトを有している。
調整孔の配置位置および調整ボルトの挿入位置は、適宜設定可能である。
例えば、調整孔は、工具ホルダに形成され、工具ホルダの第1の壁面に開口している周方向一方側調整孔、工具ホルダに形成され、工具ホルダの第2の壁面に開口している周方向他方側調整孔、第1の楔部材に形成され、第1の楔部材の第2の壁面に開口している調整孔、第2の楔部材に形成され、第2の楔部材の第1の壁面に開口している調整孔を有している。そして、調整ボルトは、第1の楔部材の第2の壁面に開口している調整孔と工具ホルダの第1の壁面に開口している周方向一方側調整孔に挿入される調整ボルト、第2の楔部材の第1の壁面に開口している調整孔と工具ホルダの第2の壁面に開口している周方向他方側調整孔に挿入される調整ボルトを有している。
あるいは、調整孔は、第1の部材に形成され、第1の部材の周方向他方側の壁面に開口している調整孔、第2の部材に形成され、第2の部材の周方向一方側の壁面に開口している調整孔、第1の楔部材に形成され、第1の楔部材の第1の壁面に開口している調整孔、第2の楔部材に形成され、第2の楔部材の第2の壁面に開口している調整孔を有している。そして、調整ボルトは、第1の楔部材の第1の壁面に開口している調整孔と第1の部材の周方向他方側の壁面に開口している調整孔に挿入される調整ボルト、第2の楔部材の第2の壁面に開口している調整孔と第2の部材の周方向一方側の壁面に開口している調整孔に挿入される調整ボルトを有している。
本形態では、調整手段を簡単に構成することができる。
第1発明の異なる形態では、第1の部材と第3の部材の少なくとも一方は、工具ホルダのダミーが用いられる。
本形態では、安価に、工具ホルダ取付け面に対する工具ホルダの取付け状態を調整することができる。工具ホルダのダミーとしては、例えば、工具を着脱自在に保持する工具保持部を有していない部材や、工具保持部に工具を保持していない部材等が用いられる。
第2発明は、タレットの工具ホルダ取付け面に工具ホルダを取付ける工具ホルダ取付け方法に関する。
本発明は、以下の第1~第3の段階を有している。
(第1の段階)
周方向に隣接する3つの工具ホルダ取付け面のうち、周方向一方側に形成されている第1の工具ホルダ取付け面に第1の部材を取付け、周方向他方側に形成されている第3の工具ホルダ取付け面に第2の部材を取り付け、周方向中央に形成されている第2の工具ホルダ取付け面に、取付け手段により工具ホルダを仮取付け、工具ホルダと第1の部材の間に、第1の楔部材を、第1の楔部材の周方向一方側の第1の壁面および周方向他方側の第2の壁面が、第1の部材の周方向他方側の壁面および工具ホルダの周方向一方側の第1の壁面に接触した状態で配置し、工具ホルダと第2の部材の間に、第2の楔部材を、第2の楔部材の周方向一方側の第1の壁面および周方向他方側の第2の壁面が、工具ホルダの周方向他方側の第2の壁面および第2の部材の周方向一方側の壁面に接触した状態で配置する。
(第2の段階)
第1の楔部材の第2の壁面の少なくとも1つの個所に、工具ホルダを第1の部材から離す方向に移動させる力を発生させる操作と、第2の楔部材の第1の壁面の少なくとも1つの個所に、工具ホルダを第2の部材から離す方向に移動させる力を発生させる操作の少なくとも一つを行うことにより、第2の工具ホルダ取付け面に対する工具ホルダの取付け状態を調整する。
(第3の段階)
工具ホルダを、取付け手段により第2の工具ホルダ取付け面に取付ける(固定する)。
「仮取付け」という記載は、第1の楔部材の第2の壁面の少なくとも1つの個所に力を発生させる操作と第2の楔部材の第2の壁面の少なくとも1つの個所に力を発生させる操作の少なくとも一つを行うことにより、第2の工具ホルダ取付け面に対して工具ホルダの取付け状態を調整することができるように工具ホルダを第2の工具ホルダ取付け面に取付けることを意味する。
第2の工具ホルダ取付け面に対する工具ホルダの取付け状態を調整する態様には、例えば、工具ホルダに保持されている工具の工具中心線の芯ずれを解消するように、工具ホルダを第2の工具ホルダ取付け面の延在方向に沿って平行移動させる態様、工具中心線の傾きを解消するように、工具ホルダを第2の工具ホルダ取付け面上で回転させる態様等が含まれる。
本発明の工具ホルダ取付け方法を用いることにより、工具ホルダをタレットの工具ホルダ取付け面に、精度良く取付けることができる。
第3発明は、タレットの工具ホルダ取付け面に取付けられる工具ホルダに関する。
タレットは、回転中心線回りに回転可能であり、外周側に周方向に沿って形成されている複数の工具ホルダ取付け面を有している。本発明の工具ホルダは、複数の工具ホルダ取付け面のうちの1つに取付けられる。工具ホルダ取付け面は、好適には、軸方向および周方向に沿って延在するように形成される。
本発明の工具ホルダは、被取付け面、第1の壁面、第2の壁面、取付け孔および調整孔を有している。
被取付け面は、1つの工具ホルダ取付け面に対向配置される。被取付け面は、好適には、軸方向および周方向に沿て延在するように形成される。
第1の壁面および第2の壁面は、被取付け面に対して周方向一方側および周方向他方側に形成され、軸方向および径方向に沿って延在するように形成されている。
取付け孔は、被取付け面に開口し、被取付け面をタレットの1つの工具ホルダ取付け面に押し付ける取付けボルトがネジ結合可能に形成されている。好適には、取付けボルトが、工具ホルダに形成されている取付け孔と、タレットに形成され、1つの工具ホルダ取付け面に開口している取付け孔に挿入可能に構成される。取付け孔は、少なくとも1つ形成される。
調整孔は、周方向一方側調整孔と周方向他方側調整孔を有している。
周方向一方側調整孔は、第1の壁面に開口し、1つの工具ホルダ取付け面に対して周方向一方側に形成されている工具ホルダ取付け面に取付けられている第1の部材の周方向他方側の壁面と工具ホルダの第1の壁面との間に配置される第1の楔部材の位置を調整する調整ボルトがネジ結合可能に形成されている。好適には、調整ボルトが、工具ホルダに形成されている周方向一方側調整孔と、第1の部材に形成されている、第1の部材の周方向他方側の壁面に開口している調整孔に挿入可能に構成される。周方向一方側調整孔は、少なくとも1つ形成される。
周方向他方側調整孔は、第2の壁面に開口し、1つの工具ホルダ取付け面に対して周方向他方側に形成されている工具ホルダ取付け面に取付けられている第2の部材の周方向一方側の壁面と工具ホルダの第2の壁面との間に配置される第2の楔部材の位置を調整する調整ボルトがネジ結合可能に形成されている。好適には、調整ボルトが、工具ホルダに形成されている周方向他方側調整孔と、第2の部材に形成されている、第2の部材の周方向一方側の壁面に開口している調整孔に挿入可能に構成される。周方向他方側調整孔は、少なくとも1つ形成される。
本発明の工具ホルダを用いることにより、工具ホルダをタレットの工具ホルダ取付け面に、精度良く取付けることができる。
【発明の効果】
【0006】
本発明のタレット、工具ホルダ取付け方法および工具ホルダを用いることにより、工具ホルダをタレットの工具ホルダ取付け面に精度良く取付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明のタレットの第1実施形態を示す図である。
【
図3】
図2を矢印III-III方向から見た断面図である。
【
図4】
図2を矢印IV-IV方向から見た断面図である。
【
図5】工具中心線のずれを調整する動作を説明する図である。
【
図6】工具中心線の傾きを調整する動作を説明する図である。
【
図7】本発明のタレットの第2実施形態を示す図である。
【
図8】本発明のタレットの第3実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明の実施形態を説明する。
本明細書では、回転中心線Pの延在方向(
図1において紙面の前後方向、
図2において左右方向)を「軸方向」という。また、回転中心線Pの延在方向一方側から見て(
図2参照)、回転中心線Pを通る線の方向を「径方向」といい、径方向に沿って回転中心線P側を「内周側」あるいは「径方向内周側」といい、径方向に沿って回転中心線Pと反対側を「外周側」あるいは「径方向外周側」という。また、回転中心線Pを中心とする円に沿った方向を「周方向」といい、周方向に沿って一方側および他方側を「周方向一方側」および「周方向他方側」という。以下の実施形態では、
図1において、回転中心線Pを中心とする反時計方向を「周方向一方側」といい、時計方向を「周方向他方側」という。勿論、逆方向であってもよい。
なお、工具ホルダおよび楔部材に対しては、「軸方向」、「周方向」および「径方向」という記載は、工具ホルダおよび楔部材がタレットに取付けられた状態における「軸方向」、「周方向」および「径方向」を示す。
【0009】
本発明のタレットの第1実施形態を、
図1~
図4を参照して説明する。
図1は、第1実施形態のタレット110の正面図であり、
図2は、
図1を矢印II方向から見た図である。また、
図3は、
図2を矢印III-III方向から見た断面図であり、
図4は、
図2を矢印IV-IV方向から見た断面図である。
【0010】
タレット110は、回転中心線Pを中心に回転可能に構成されている。タレット110は、軸方向に直角な断面が多角形を有する多角柱に形成されている。本実施形態では、8角柱に形成されている。なお、タレット110の形状は、多角柱に限定されない。
タレット110の外周側には、工具ホルダが取付けられる工具ホルダ取付け面が形成されている。本実施形態では、軸方向および周方向に延在する複数の工具ホルダ取付け面が、タレット110の外周側に、周方向に沿って形成されている。すなわち、工具ホルダ取付け面は、多角柱の側面に形成されている。なお、
図1には、工具ホルダ取付け面の符号111a~111cのみが図示されている。
【0011】
工具ホルダ取付け面111a~111cには、工具ホルダが着脱自在に取付けられる。なお、
図1、
図2には、工具ホルダ10、20、30のみが図示されている。工具ホルダ10、20、30は、基本的な構成が同じであるため、以下では、工具ホルダ20について説明する。
工具ホルダ20は、工具20Aを着脱自在に保持可能に構成されている。例えば、工具20Aを着脱自在に保持可能な工具保持部を有している。
工具ホルダ20は、タレット110の工具ホルダ取付け面111a~111cに取付けられる被取付け面21aを有している。また、工具ホルダ20は、第1の側面21bと第2の側面21cを有している。第1の側面21bは、工具ホルダ20が工具ホルダ取付け面111a~111cに取付けられた状態において、周方向一方側に配置され、軸方向および径方向に沿って延在する。第2の側面21cは、工具ホルダ20が工具ホルダ取付け面111a~111cに取付けられた状態において、周方向他方側に配置され、軸方向および径方向に沿って延在する。
工具ホルダ20の第1の側面21bおよび第2の側面21cは、周方向一方側および周方向他方側に隣接する工具ホルダ取付け面に取付けられている工具ホルダ(工具ホルダのダミーを含む)との間隔が径方向外周側から径方向内周側に向って順次減少するように形成される。工具ホルダ20の第1の側面21bおよび第2の側面21cは、被取付け面21a(工具ホルダ取付け面111a~111c)の延在方向に対して、直交する方向を含む適宜の方向(角度)に延在するように形成される。
【0012】
取付け対象(取付け状態調整対象)である工具ホルダと、取付け対象である工具ホルダが取付けられる工具ホルダ取付け面に対して周方向一方側に隣接して配置されている工具ホルダ取付け面に取付けられている(固定されている)部材との間および周方向他方側に隣接して配置されている工具ホルダ取付け面に取付けられている(固定されている)部材との間には、楔部材が配置される。
取付け対象である工具ホルダが取付けられる工具ホルダ取付け面に対して周方向一方側および周方向他方側に隣接して配置されている工具ホルダ取付け面に取付けられている部材としては、工具ホルダや、工具ホルダのダミーを用いることができる。
以下の説明では、取付け対象である工具ホルダ20が取付けられる工具ホルダ取付け面111bに対して周方向一方側および周方向他方側に隣接して配置されている工具ホルダ取付け面111aおよび111cに工具ホルダ10および30が取付けられている(固定されている)場合について説明する。
【0013】
工具ホルダ取付け面111bに取付けられる工具ホルダ20と、工具ホルダ取付け面111bに対して周方向一方側に配置されている工具ホルダ取付け面111aに取付けられている工具ホルダ10との間には、第1の楔部材が配置される。
本実施形態では、第1の楔部材は、軸方向に離間して(接している状態を含む)配置される2つの分割楔部材120および130を有している。分割楔部材120および130は、工具ホルダ20の第1の側面21bの軸方向中心より軸方向一方側(回転軸115側)および軸方向他方側(回転軸115と反対側)に配置される。
分割楔部材120(130)は、径方向内周側に内周面121a(131a)を有し、周方向一方側に第1の側面121b(131b)を有し、周方向他方側に第2の側面121c(131c)を有し、径方向外周側に外周面121d(131d)を有している。
分割楔部材120(130)は、分割楔部材120の第1の側面121bおよび第2の側面121c(分割楔部材130の第1の側面131bおよび第2の側面131c)が、工具ホルダ10の第2の側面11cおよび工具ホルダ20の第1の側面21bに接触した状態で径方向に沿って移動可能に配置されている。
すなわち、分割楔部材120(130)が径方向内周側に移動すると、工具ホルダ20と工具ホルダ10との間の間隔が増大し、工具ホルダ20を、工具ホルダ取付け面111aに取付けられている(固定されている)工具ホルダ10から離す方向(周方向他方側)に移動させる力F1(F2)が増加するように構成されている。
【0014】
また、工具ホルダ取付け面111bに取付けられる工具ホルダ20と、工具ホルダ取付け面111bに対して周方向他方側に配置されている工具ホルダ取付け面111cに取付けられている工具ホルダ30との間に、第2の楔部材が配置される。
本実施形態では、第2の楔部材は、軸方向に離間して(接している状態を含む)配置される2つの分割楔部材140および150を有している。分割楔部材140および150は、工具ホルダ20の第2の側面21cの軸方向中心より軸方向一方側(回転軸115側)および軸方向他方側(回転軸115と反対側)に配置される。
分割楔部材140(150)は、分割楔部材140の第1の側面141bおよび第2の側面141c(分割楔部材150の第1の側面151bおよび第2の側面151c)が、工具ホルダ20の第2の側面21cおよび工具ホルダ30の第1の側面31bに接触した状態で径方向に沿って移動可能に形成されている。
すなわち、分割楔部材140(150)が径方向内周側に移動すると、工具ホルダ20と工具ホルダ30との間の間隔が増大し、工具ホルダ20を、工具ホルダ取付け面111cに取付けられている(固定されている)工具ホルダ30から離す方向(周方向一方側)に移動させる力F3(F4)が増加するように構成されている。
【0015】
本実施形態では、3つの工具ホルダ取付け面111a~111cのうちの工具ホルダ取付け面111aが、本発明の「周方向一方側に形成されている第1の工具ホルダ取付け面」に対応し、工具ホルダ取付け面111cが、本発明の「周方向他方側に形成されている第3の工具ホルダ取付け面」に対応し、工具ホルダ取付け面111bが、本発明の「周方向中央に形成されている第2の工具ホルダ取付け面」に対応する。
また、工具ホルダ10が、本発明の「周方向一方側に形成されている第1の工具ホルダ取付け面に取付けられている第1の部材」に対応し、工具ホルダ30が、本発明の「周方向他方側に形成されている第3の工具ホルダ取付け面に取付けられている第2の部材」に対応し、工具ホルダ20が、本発明の「周方向中央に形成されている第2の工具ホルダ取付け面に取付けられる工具ホルダ」に対応する。
また、工具ホルダ20の被取付け面21aが、本発明の「工具ホルダ取付け面に対向配置される被取付け面」に対応し、第1の側面21bが、本発明の「工具ホルダの周方向一方側の第1の壁面」あるいは「被取付け面に対して周方向一方側に形成されている第1の壁面」に対応し、第2の側面21cが、本発明の「工具ホルダの周方向他方側の第2の壁面」あるいは「被取付け面に対して周方向他方側に形成されている第2の壁面」に対応し、工具ホルダ10の第2の側面11cが、本発明の「第1の部材の周方向他方側の壁面」に対応し、工具ホルダ30の第1の側面31bが、本発明の「第2の部材の周方向一方側の壁面」に対応する。
また、分割楔部材120と130により、本発明の「第1の楔部材」が構成され、分割楔部材120の周方向一方側の第1の側面121bと第2の分割楔部材130の周方向一方側の第1の側面131bにより、本発明の「第1の楔部材の周方向一方側の第1の側面」が構成され、分割楔部材120の周方向他方側の第2の側面121cと分割楔部材130の周方向他方側の第2の側面131cにより、本発明の「第1の楔部材の周方向他方側の第2の側面」が構成される。そして、分割楔部材140と150により、本発明の「第2の楔部材」が構成され、分割楔部材140の周方向一方側の第1の側面141bと分割楔部材150の周方向一方側の第1の側面151bにより、本発明の「第2の楔部材の周方向一方側の第1の側面」が構成され、分割楔部材140の周方向他方側の第2の側面141cと分割楔部材150の周方向他方側の第2の側面151cにより、本発明の「第2の楔部材の周方向他方側の第2の側面」が構成される。
また、分割楔部材120、130、140および150が、それぞれ本発明の「第1の分割楔部材」、「第2の分割楔部材」、「第3の分割楔部材」および「第4の分割楔部材」に対応する。
【0016】
工具ホルダ20は、取付け手段によりタレット110の工具ホルダ取付け面111bに取付けられる。本実施形態では、取付け手段は、雌ネジが形成されている取付け孔と、取付け孔に形成されている雌ネジにネジ結合可能な雄ネジが形成されている取付けボルトにより構成されている。
具体的には、工具ホルダ20には、周方向一方側の領域と周方向他方側の領域それぞれの軸方向に離間する箇所に、被取付け面21aに開口している第1~第4の取付け孔22a~22dが形成されている。第1~第4の取付け孔22a~22dの内周面には、雌ネジが形成されている。
また、タレット110には、工具ホルダ取付け面111bの周方向一方側の領域および周方向他方側の領域それぞれの軸方向に離間する箇所に、工具ホルダ取付け面111bに開口している第1~第4の取付け孔112a~112dが形成されている。第1~第4の取付け孔112a~112dの内周面には、雌ネジが形成されている。
また、第1~第4の取付けボルト160a~160dの外周面には、工具ホルダ20の第1~第4の取付け孔22a~22dおよびタレット110の第1~第4の取付け孔112a~112dに形成されている雌ネジとネジ結合可能な雄ネジが形成されている。第1~第4の取付けボルト160a~160dは、工具ホルダ20の第1~第4の取付け孔22a~22dおよびタレット110の第1~第4の取付け孔112a~112dに挿入(螺合)される。
第1~第4の取付けボルト160a~160dを、工具ホルダ20の第1~第4の取付け孔22a~22dおよびタレット110の第1~第4の取付け孔112a~112dに挿入(螺合)し、工具ホルダ20を工具ホルダ取付け面111bに押し付ける方向に締付けることによって、工具ホルダ20が工具ホルダ取付け面111bに取付けられる。
工具ホルダ10、30を工具ホルダ取付け面111a~111cに取付ける取付け手段も同様の構成を有している。
【0017】
また、工具ホルダ20は、調整手段により、工具ホルダ取付け面111bに対する取付け状態を調整するための力が加えられる。
本実施形態では、調整手段は、雌ネジが形成されている調整孔と、調整孔に形成されている雌ネジにネジ結合可能な雄ネジが形成されている調整ボルトにより構成されている。
具体的には、分割楔部材120には、周方向他方側の第2の側面121cに開口している調整孔122が形成され、分割部材130には、周方向他方側の第2の側面131cに開口している調整孔132が形成されている。また、分割楔部材140には、周方向一方側の第1の側面141bに開口している調整孔142が形成され、分割楔部材150には、周方向一方側の第1の側面151bに開口している調整孔152が形成されている。調整孔122~152の内周面には、雌ネジが形成されている。
また、工具ホルダ20には、周方向一方側の領域の軸方向に離間する箇所に、周方向一方側の第1の側面21bに開口している第1の調整孔23aと第2の調整孔23b(図示省略)が形成され、周方向他方側の領域の軸方向に離間する箇所に、周方向他方側の第2の側面21cに開口している第3の調整孔23cと第4の調整孔23d(図示省略)が形成されている。第1~第4の調整孔23a~23dの内周面には、雌ネジが形成されている。
また、第1~第4の調整ボルト170a~170dの外周面には、分割楔部材120、130、140、150および工具ホルダ20に形成されている雌ネジとネジ結合可能な雄ネジが形成されている。第1~第4の調整ボルト170a~170dは、それぞれ、分割楔部材120の調整孔122および工具ホルダ20の第1の調整孔23a、分割楔部材130の調整孔132および工具ホルダ20の第2の調整孔23b、分割楔部材140の調整孔142および工具ホルダ20の第3の調整孔23c、分割楔部材150の調整孔152および工具ホルダ20の第4の調整孔23dに挿入(螺号)される。
【0018】
第1の調整ボルト170aを、分割楔部材120の調整孔122および工具ホルダ20の調整孔23aに挿入(螺合)し、分割楔部材120の第2の側面121cを工具ホルダ20の第1の側面21bに押し付ける方向に締付けると、分割楔部材120は、矢印で示されているように、工具ホルダ取付け面111aに取り付けられている工具ホルダ10の周方向他方側の側面11cに沿って径方向内周側に移動する(分割楔部材120の位置が調整される)。これにより、工具ホルダ20の第1の側面21bの、調整孔23aが形成されている個所に対応する箇所に加えられる、工具ホルダ20を工具ホルダ10から離す方向(周方向他方側)に移動させる力F1が増大する。
同様に、第2の調整ボルト170bを、分割楔部材130の調整孔132および工具ホルダ20の調整孔23bに挿入した状態で回転させることにより、分割楔部材130の位置が調整され、工具ホルダ20の第1の側面21bの、調整孔23bが形成されている個所に対応する箇所に加えられる、工具ホルダ20を工具ホルダ10から離す方向(周方向他方側)に移動させる力F2を調整することができる。
また、第3の調整ボルト170cを、分割楔部材140の調整孔142および工具ホルダ20の調整孔23cに挿入し、分割楔部材140の第2の側面141cを工具ホルダ20の第2の側面21cに押し付ける方向に締付けると、分割楔部材140は、矢印で示されているように、工具ホルダ取付け面111cに取付けられている工具ホルダ30の周方向一方側の側面31bに沿って径方向内周側に移動する(分割楔部材140の位置が調整される)。これにより、工具ホルダ20の第2の側面21cの、調整孔23cが形成されている個所に対応する箇所に加えられる、工具ホルダ20を工具ホルダ30から離す方向(周方向一方側)に移動させる力F3が増大する。
同様に、第4の調整ボルト170dを、分割楔部材150の調整孔152および工具ホルダ20の調整孔23dに挿入した状態で回転させることにより、分割楔部材150の位置が調整され、工具ホルダ20の第2の側面21cの、調整孔23dが形成されている個所に対応する箇所に加えられる、工具ホルダ20を工具ホルダ30から離す方向(周方向一方側)に移動させる力F4を調整することができる。
工具ホルダ20の第1の側面21bおよび第2の側面21cに加える力F1~F4の少なくとも1つを調整することによって、工具ホルダ取付け面111bに対する工具ホルダ20の取付け状態を調整することができる。例えば、工具ホルダ20を、工具ホルダ取付け面111bの延在方向に沿って、周方向一方側あるいは周方向他方側に平行移動させることができ、あるいは、工具ホルダ取付け面111b上で回転させることができる。
本実施形態では、調整手段を構成する第1の調整ボルト170aと第2の調整ボルト170bは、第1の楔部材(分割楔部材120と130)と工具ホルダ20を連結し、第3の調整ボルト170cと第4の調整ボルト170dは、第2の楔部材(分割楔部材140と150)と工具ホルダ20を連結する。
【0019】
本実施形態では、分割楔部材120の調整孔122が形成されている個所および分割楔部材130の調整孔132が形成されている箇所が、本発明の「第1の楔部材の第2の壁面の少なくとも1つの個所」に対応し、分割楔部材140の調整孔142が形成されている箇所および分割楔部材150の調整孔152が形成されている箇所が、本発明の「第2の楔部材の第1の壁面の少なくとも1つの個所」に対応する。
また、工具ホルダ20の第1の側面21bに開口している調整孔23a、23bが、本発明の「工具ホルダ20の第1の壁面に開口している少なくとも1つの周方向一方側調整孔」に対応し、工具ホルダ20の第2の側面21cに開口している調整孔23c、23dが、本発明の「工具ホルダ20の第2の壁面に開口している少なくとも1つの周方向他方側調整孔」に対応する。
【0020】
なお、図示は省略しているが、割出し機構、駆動機構が設けられている。
割出し機構は、タレット110を回転させ、工具ホルダ取付け面111a~111cに取付けられている工具ホルダに保持されている工具の中から加工作業に用いる工具を保持している工具ホルダを加工位置に割出す。
駆動機構は、工作機械の主軸により駆動される、タレット110の回転軸115の回転を、加工位置に割出された工具ホルダに保持されている工具に伝達する。
タレット110、割出し機構、駆動機構により、刃物台100が構成される。
刃物台100は、本発明の刃物台の第1実施形態に対応する。
【0021】
次に、本実施形態のタレット110に工具ホルダを取付ける動作を説明する。以下では、タレット110の工具ホルダ取付け面111bに工具ホルダ20を取付ける場合について説明する。
本実施形態では、工具ホルダ20が取付けられる工具ホルダ取付け面111bの周方向一方側および周方向他方側に隣接して配置されている工具ホルダ取付け面111aおよび111cに取付けられている(固定されている)第1の部材および第2の部材を補助部材として用いることにより、工具ホルダ取付け面111bに対する工具ホルダ20の取付け状態を調整する。
(段階1)
このため、先ず、工具ホルダ取付け面111bに対して周方向一方側および周方向他方側に隣接して配置されている工具ホルダ取付け面111aおよび111cに第1の部材および第2の部材を取付ける(固定する)。工具ホルダ取付け面111aと111cの少なくとも一方に部材が取付けられている場合には、工具ホルダ取付け面111aと111cの少なくとも一方に部材を取付けたものとして次の処理に進む。
以下では、工具ホルダ取付け面111aおよび111cに、工具ホルダ10および30を第1の部材および第2の部材として取付ける場合について説明する。
工具ホルダ取付け面111aおよび111cに取付ける第1の部材および第2の部材としては、工具ホルダのダミー等を用いることもできる。
工具ホルダ取付け面111aおよび111cに工具ホルダ10および30を取付ける方法としては、工具ホルダ20を工具ホルダ取付け面111bに取付ける方法と同様に、前述した取付け手段により取付ける方法を用いることができる。工具ホルダのダミーを取付ける場合も同様の取付け方法を用いることができる。
前述した取付け手段を用いて工具ホルダ10および30を工具ホルダ取付け面111aおよび111cに取付けた場合、工具ホルダ10および30は、概略目標とする取付け状態に取付けられる。このため、前述した取付け手段を用いて取付けた工具ホルダ10および30を補助部材として用いることにより、工具ホルダ取付け面111bに対する工具ホルダ20の取付け状態を調整することができる。工具ホルダのダミーを第1の部材あるいは第2の部材として用いた場合も同様である。
なお、工具ホルダ取付け面111aあるいは111cに、工具ホルダを第1の部材あるいは第2の部材として取付けた後、工具ホルダ取付け面111aあるいは111bに対する当該工具ホルダの取付け状態を調整することが必要となった場合には、同様の方法を用いる。
【0022】
(段階2)
次に、取付け手段を用いて、工具ホルダ20を工具ホルダ取付け面111bに仮取付ける。例えば、第1~第4の取付けボルト260a~260dを、工具ホルダ20の第1~第4の取付け孔22a~22dおよびタレット110の第1~第4の取付け孔112a~112dに挿入して締付ける。この時、工具ホルダ取付け面111bに対する工具ホルダ20の取付け状態の調整時に、工具ホルダ20が移動可能となるように仮取付ける(完全に締付けないで、少し緩く締付ける)。
【0023】
(段階3)
次に、調整手段を用いて、工具ホルダ取付け面111bに対する工具ホルダ20の取付け状態を調整する。例えば、分割楔部材120の調整孔122および工具ホルダ20の第1の調整孔23aに挿入した第1の調整ボルト170a、分割楔部材130の調整孔132および工具ホルダ20の第2の調整孔23bに挿入した第2の調整ボルト170b、分割楔部材140の調整孔142および工具ホルダ20の第3の調整孔23cに挿入した第3の調整ボルト170c、分割楔部材150の調整孔152および工具ホルダ20の第4の調整孔23dに挿入した第4の調整ボルト170dの少なくとも1つを回転させる(分割楔部材120~150の少なくとも1つの位置を調整する)。
【0024】
ここで、
図5(a)に示されているように、一点鎖線で示されている、工具ホルダ20に保持されている工具20Aの工具中心線20Tが、二点鎖線で示されている基準線20Tsに対してずれている(芯ずれ)場合には、工具ホルダ20を、工具中心線20Tが基準線20Tsに一致するように調整する必要がある。すなわち、
図5(b)に示されているように、工具ホルダ20を、工具ホルダ取付け面111bの延在方向に沿って、周方向他方側(
図5(a)において上方)に移動させる必要がある。
工具ホルダ20は、第1の側面21bの、分割楔部材120の調整孔122に対応する箇所と分割楔部材130の調整孔132に対応する箇所に、工具ホルダ20を周方向他方側に移動させる力F1とF2が加えられ、また、第2の側面21cの、分割楔部材140の調整孔142に対応する箇所と分割楔部材150の調整孔152に対応する箇所に、工具ホルダ20を周方向一方側に移動させる力F3とF4が加えられている。このため、工具ホルダ20を移動させる方法として、力F1~F4の少なくとも1つを調整する方法を用いることができる。
具体的には、
図5(a)に示されている、工具ホルダ20に加えられる力F1とF2を、力F3とF4より相対的に大きくする。例えば、力F1とF3を大きくする方法、力F3とF4を小さくする方法、力F1とF2を大きくするとともに力F3とF4を小さくする方法を用いることができる。
なお、工具ホルダ20の第1~第4の取付け孔22a~22dおよびタレット110の第1~第4の取付け孔112a~112dに形成されている雌ネジと第1~第4の取付けボルト160a~160dに形成されている雄ネジ、分割楔部材120~150の調整孔122~152および工具ホルダ20の調整孔23a~23dに形成されている雌ネジと第1~第4の調整ボルト170a~170dに形成されている雄ネジは、工具ホルダ20のこのような移動を許容する裕度を有するように形成されている。
【0025】
また、
図6(a)に示されているように、一点鎖線で示されている、工具ホルダ20に保持されている工具20Aの工具中心線20Tが、二点鎖線で示されている基準線20Tsに対して傾いている場合には、工具ホルダ20を、工具中心線20Tが基準線20Tsに一致するように調整する必要がある。すなわち、
図6(b)に示されているように、工具ホルダ20を、工具中心線20T上の、軸方向に沿った工具ホルダ中心点Sを中心に回転させる(
図6(a)において反時計方向)必要がある。
具体的には、
図6(a)に示されている、工具ホルダ20に加えられる力F2とF3を、力F1とF4より相対的に大きくする。例えば、力F2とF3を大きくする方法、力F1とF4を小さくする方法、力F2とF3を大きくするとともに力F1とF4を小さくする方法を用いることができる。
なお、工具ホルダ20の第1~第4の取付け孔22a~22dおよびタレット110の第1~第4の取付け孔112a~112dに形成されている雌ネジと第1~第4の取付けボルト160a~160dに形成されている雄ネジ、分割楔部材120~150の調整孔122~152および工具ホルダ20の調整孔23a~23dに形成されている雌ネジと第1~第4の調整ボルト270a~270dに形成されている雄ネジは、工具ホルダ20のこのような回転を許容する裕度を有するように形成されている。
【0026】
第1実施形態では、複数の分割楔部材により構成される楔部材を配置したが、一体の楔部材を配置することもできる。
本発明のタレットの第2実施形態を、
図7を参照して説明する。
第2実施形態のタレット210は、第1実施形態のタレット110と同様に、工具ホルダ、楔部材および調整手段を備えている。
第2実施形態のタレット210は、楔部材の構成が相違しているだけであるため、以下では、楔部材の構成を説明する。
なお、刃物台200は、本発明の刃物台の第2実施形態に対応する。
【0027】
本実施形態では、工具ホルダ取付け面211bに取付けられる工具ホルダ20と、工具ホルダ取付け面211bに対して周方向一方側に配置されている工具ホルダ取付け面211aに取付けられている工具ホルダ10との間に、第1の楔部材220が配置される。
第1の楔部材220には、軸方向に離間する箇所に第1の調整孔222aと第2の調整孔222bが形成されている。第1の調整孔222aと第2の調整孔222bの内周面には、雌ネジが形成されている。第1の調整孔222aおよび第2の調整孔222bは、工具ホルダ20の第1の側面21bの軸方向中心より軸方向一方側(回転軸115側)および軸方向他方側(回転軸115と反対側)に位置するように形成される。
第1の楔部材220は、径方向内周側に内周面221a(図示省略)を有し、周方向一方側に第1の側面221bを有し、周方向他方側に第2の側面221cを有し、径方向外周側に外周面221dを有している。
第1の楔部材220は、第1の楔部材220の第1の側面221bおよび第2の側面221cが、工具ホルダ10の周方向他方側の第2の側面11cおよび工具ホルダ20の第1の側面21bに接触した状態で径方向に沿って移動可能(径方向に沿った位置が調整可能)に配置されている。
すなわち、第1の楔部材220が径方向内周側に移動すると、工具ホルダ20と工具ホルダ10との間の間隔が増大し、工具ホルダ20を、工具ホルダ取付け面211aに取付けられている工具ホルダ10から離す方向(周方向他方側)に移動させる力F1とF2が増加するように構成されている。
【0028】
また、工具ホルダ取付け面211bに取付けられる工具ホルダ20と、工具ホルダ取付け面211bに対して周方向他方側に配置されている工具ホルダ取付け面211cに取付けられている工具ホルダ10との間に、第2の楔部材240が配置される。
第2の楔部材240には、軸方向に離間する箇所に第3の調整孔242aと第4の調整孔242bが形成されている。第3の調整孔242aと第4の調整孔242bの内周面には、雌ネジが形成されている。第3の調整孔242aおよび第4の調整孔242bは、工具ホルダ20の第2の側面21cの軸方向中心より軸方向一方側(回転軸115側)および軸方向他方側(回転軸115と反対側)に位置するように形成される。
第2の楔部材240は、径方向内周側に内周面241a(図示省略)を有し、周方向一方側に第1の側面241bを有し、周方向他方側に第2の側面241cを有し、径方向外周側に外周面241dを有している。
第2の楔部材240は、第2の楔部材240の第1の側面241bおよび第2の側面241cが、工具ホルダ20の第2の側面21cおよび工具ホルダ30の周方向一方側の第1の側面31bに接触した状態で径方向に沿って移動可能(径方向に沿った位置が調整可能)に配置される。
すなわち、第2の楔部材240が径方向内周側に移動すると、工具ホルダ20と工具ホルダ30との間の間隔が増大し、工具ホルダ20を、工具ホルダ取付け面111cに取付けられている工具ホルダ30から離す方向(周方向一方側)に移動させる力F3とF4が増大するように構成されている。
本実施形態では、調整手段を構成する第1の調整ボルト270aと第2の調整ボルト270bは、第1の楔部材220と工具ホルダ20を連結し、第3の調整ボルト270cと第4の調整ボルト270dは、第2の楔部材240と工具ホルダ20を連結する。
【0029】
本実施形態では、第1実施形態と同様に、取付け手段を構成する第1~第4の取付けボルト260a~260dは、工具ホルダ20の第1~第4の取付け孔22a~22dおよびタレット210の第1~第4の取付け孔212a~212d(図示省略)に挿入される。
また、調整部材を構成する第1の調整ボルト270a(図示省略)は、第1の楔部材220の第1の調整孔222aおよび工具ホルダ20の第1の調整孔23aに挿入され、第2の調整ボルト270b(図示省略)は、第1の楔部材220の第2の調整孔222bおよび工具ホルダ20の第2の調整孔23bに挿入され、第3の調整ボルト270c(図示省略)は、第2の楔部材240の第3の調整孔242aおよび工具ホルダ20の第3の調整孔23cに挿入され、第4の調整ボルト270d(図示省略)は、第2の楔部材240の第4の調整孔242bおよび工具ホルダ20の第4の調整孔23dに挿入される。
工具ホルダ20をタレット210の工具ホルダ取付け面211b(図示省略)に取付ける動作は第1実施形態と同様である。
【0030】
第1実施形態および第2実施形態では、調整手段を構成する調整ボルトは、第1の楔部材と工具ホルダおよび第2の楔部材と工具ホルダを連結するように配置したが、これに限定されない。
本発明のタレットの第3実施形態を、
図8を参照して説明する。
第3実施形態のタレット310は、第1実施形態のタレット110と同様に、工具ホルダ、楔部材および調整部材を備えている。
第3実施形態のタレット310は、調整手段を構成する調整ボルトの配置態様が第1の実施形態と異なっているだけである。以下では、調整手段を構成する調整ボルトの配置態様を説明する。
なお、刃物台300は、本発明の刃物台の第3実施形態に対応する。
【0031】
第1実施形態では、調整ボルトが挿入される調整孔を、工具ホルダ、工具ホルダと第1の部材との間に配置される第1の楔部材および工具ホルダと第2の部材との間に配置される第2の楔部材に形成したが、本実施形態では、工具ホルダと第1の部材との間に配置される第1の楔部材、工具ホルダと第2の部材との間に配置される第2の楔部材、第1の部材および第2の部材に形成している。
なお、本実施形態では、第1実施形態と同様に、第1の楔部材および第2の楔部材は、複数の分割楔部材により構成されている。
【0032】
本実施形態では、第1の楔部材を構成する分割楔部材320には、周方向一方側の第1の側面321bに開口している調整孔323が形成され、分割楔部材330(図示省略)には、周方向一方側の第1の側面331bに開口している調整孔333が形成されている。また、第2の楔部材を構成する分割楔部材340には、周方向他方側の第2の側面341cに開口している調整孔343が形成され、分割楔部材350(図示省略)には、周方向他方側の第2の側面351cに開口している調整孔353が形成されている。
また、工具ホルダ取付け面311bに対して周方向一方側に配置されている工具ホルダ取付け面311aに取付けられている工具ホルダ10には、軸方向に離間する箇所に、周方向他方側の第2の側面11cに開口している第3の調整孔14cと第4の調整孔14d(図示省略)が形成されている。また、工具ホルダ取付け面311bに対して周方向他方側に配置されている工具ホルダ取付け面311cに取付けられている工具ホルダ30には、軸方向に離間する箇所に、周方向一方側の第1の側面31bに開口している第1の調整孔34aと第2の調整孔34b(図示省略)が形成されている。
分割楔部材320~350の調整孔323~353、第1の工具ホルダ10の第3の調整孔14cと第4の調整孔14dおよび工具ホルダ30の第1の調整孔34aと第2の調整孔34bの内周面には、雌ネジが形成されている。
【0033】
そして、調整手段を構成する第1の調整ボルト370aは、第1の楔部材を構成する分割楔部材320の調整孔323および工具ホルダ10の第3の調整孔14cに挿入され、第2の調整ボルト370b(図示省略)は、第1の楔部材を構成する分割楔部材330(図示省略)の調整孔333および工具ホルダ10の第4の調整孔14d(図示省略)に挿入され、第3の調整ボルト370cは、第2の楔部材を構成する分割楔部材340の調整孔343および工具ホルダ30の第1の調整孔34aに挿入され、第4の調整ボルト370d(図示省略)は、第2の楔部材を構成する分割楔部材350(図示省略)の調整孔353および工具ホルダ30の第2の調整孔34b(図示省略)に挿入される。
工具ホルダ20をタレット310の工具ホルダ取付け面311bに取付ける動作は第1実施形態と同様である。なお、本実施形態では、分割楔部材320と330は、工具ホルダ20の第1の側面21bに沿って移動し、分割楔部材340と350は、工具ホルダ20の第2の側面21cに沿って移動する。
本実施形態では、工具ホルダ10の第3の調整孔14cと第4の調整孔14dが、本発明の「第1の部材の周方向他方側の壁面に開口している調整孔」に対応し、工具ホルダ30の第1の調整孔34aと第2の調整孔34bが、本発明の「第2の部材の周方向一方側の壁面に開口している調整孔」に対応し、分割楔部材320の第1の側面321bに開口している調整孔323と分割楔部材330の第1の側面331bに開口している調整孔333が、本発明の「第1の楔部材の第1の側面に開口している調整孔」に対応し、分割楔部材340の第2の側面341cに開口している調整孔343と分割楔部材350の第2の側面351cに開口している調整孔353が、本発明の「第2の楔部材の第2の側面に開口している調整孔」に対応する。
【0034】
以上の実施形態では、タレットあるいはタレットの工具ホルダ取付け面に工具ホルダを取付ける工具ホルダ取付け方法について説明したが、本発明は、タレットの工具ホルダ取付け面のうちの1つに取付けられる工具ホルダとして構成することもできる。
例えば、
「1つの工具ホルダ取付け面に対向配置される被取付け面と、被取付け面に対して周方向一方側および周方向他方側に形成され、軸方向および径方向に沿って延在する第1の壁面および第2の壁面と、被取付け面に開口している少なくとも1つの取付け孔と、第1の壁面に開口している少なくとも1つの周方向一方側調整孔と、第2の壁面に開口している少なくとも1つの周方向他方側調整孔と、を有し、
取付け孔は、被取付け面を1つの工具ホルダ取付け面に押し付ける取付けボルトがネジ結合可能に形成され、
周方向一方側調整孔は、1つの工具ホルダ取付け面に対して周方向一方側に形成されている工具ホルダ取付け面に取付けられている第1の部材の周方向他方側の壁面と第1の壁面との間に配置される第1の楔部材の位置を調整する調整ボルトがネジ結合可能に形成され、
周方向他方側調整孔は、1つの工具ホルダ取付け面に対して周方向他方側に形成されている工具ホルダ取付け面に取付けられている第2の部材の周方向一方側の壁面と第2の壁面との間に配置される第2の楔部材の位置を調整する調整ボルトがネジ結合可能に形成されていることを特徴とする工具ホルダ。」
として構成することができる。
取付け孔の数および形成位置は、適宜変更可能である。好適には、被取付け面の周方向一方側および周方向他方側それぞれに、2つの取付け孔が軸方向に離間する位置に形成される。また、好適には、取付けボルトが、工具ホルダに形成されている取付け孔と、タレットに形成され、1つの工具ホルダ取付け面に開口している取付け孔に挿入可能に構成される。
周方向一方側調整孔および周方向他方側調整孔の数および形成位置は、適宜変更可能である。好適には、2つの軸方向一方側調整孔および周方向他方側調整孔は、軸方向に離間する位置に形成される。また、好適には、調整ボルトが、周方向一方側調整孔と、第1の楔部材に形成されている、第1の楔部材の周方向他方側の壁面に開口している調整孔に挿入可能に構成される。
【0035】
本発明は、実施形態で説明した構成に限定されず、種々の変更、追加、削除が可能である。
取付け対象(取付け状態調整対象)の工具ホルダが取付けられる工具ホルダ取付け面に対して周方向一方側および周方向他方側に配置されている工具ホルダ取付け面に取付けられる第1の部材および第2の部材としては、工具ホルダに限定されず、工具ホルダのダミー等を用いることができる。
工具ホルダを工具ホルダ取付け面に取付ける取付け手段は、実施形態で説明した構成の取付け手段に限定されない。例えば、取付け手段を構成する取付け孔の数や配置位置等は、適宜変更可能である。さらに、取付け孔と取付けボルトにより構成される取付け手段に限定されない。
工具ホルダと第1の部材との間および工具ホルダと第2の部材との間に配置する楔部材は、実施形態で説明した楔部材に限定されない。例えば、楔部材の形状や配置位置、楔部材を構成する分割楔部材の形状、数や配置位置等は、適宜変更可能である。
タレットの工具ホルダ取付け面に対する工具ホルダの取付け状態を調整する調整手段は、実施形態で説明した調整手段に限定されない。例えば、調整手段を構成する調整孔の数や配置位置等は、適宜変更可能である。さらに、調整孔と調整ボルトにより構成される調整手段に限定されない。
タレットの工具ホルダ取付け面の形状、数、配置位置等は、適宜変更可能である。
タレットの工具ホルダ取付け面に取付ける工具ホルダの形状等は、適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0036】
10、20、30 工具ホルダ
10A、20A、20A 工具
11a、21a、31a 被取付け面
11b、21b、31b 第1側面(第1壁面)
11c、21c、31c 第2側面(第2壁面)
22a~22d 取付け孔
100、200、300 刃物台
110、210、310 タレット
111a~111c、311a~311c 工具ホルダ取付け面
112a~112d 取付け孔
115、215 回転軸
120~150、320~350 分割楔部材
121a~151a 内周面
121b~151b、221b、241b、321b~351b 第1側面(第1壁面)
121c~151c、221c、241c、321c~351c 第2側面(第2壁面)
121d~151d、221d、241d、321d~351d 外周面
122~152、222a、222b、242a、242b、323~353 調整孔
160a~160d、260a~260d 取付けボルト(取付け部材)
170a~170d 調整ボルト(調整部材)
220、240 楔部材