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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022176845
(43)【公開日】2022-11-30
(54)【発明の名称】ワイヤレス給電システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/12 20160101AFI20221122BHJP
【FI】
H02J50/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021083510
(22)【出願日】2021-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000116079
【氏名又は名称】ローレルバンクマシン株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】500267170
【氏名又は名称】ローレル機械株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】500265501
【氏名又は名称】ローレル精機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100169960
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 貴光
(72)【発明者】
【氏名】中西 秀行
(72)【発明者】
【氏名】大堀 隼輝
(72)【発明者】
【氏名】土方 亘
(72)【発明者】
【氏名】李 想
(72)【発明者】
【氏名】小澤 茂樹
(57)【要約】
【課題】負荷側回路のインピーダンスが変動しても、送電効率の低下を軽減するワイヤレス給電システムを提供する。
【解決手段】磁界共鳴方式により電力を送電するワイヤレス給電システム1は、送電コイル32を含む送電側共振回路36を備えている送電装置3と、受電コイル41を含む受電側共振回路43を備え、受電コイル41を介して受電した電力を負荷に供給する受電装置4と、受電装置4と負荷8との間に設けられ、負荷8に供給される電圧を制御するDC-DCコンバータ7と、負荷側インピーダンスの変動を緩和するインピーダンス調整装置9と、を備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁界共鳴方式により電力を送電するワイヤレス給電システムであって、
送電コイルを含む送電側共振回路を備えている送電装置と、
受電コイルを含む受電側共振回路を備え、前記受電コイルを介して受電した電力を負荷に供給する受電装置と、
前記受電装置と負荷との間に設けられ、前記負荷に供給される電圧を制御する電圧変換回路と、
前記電圧変換回路から視て負荷側の回路のインピーダンスである負荷側インピーダンスの変動するインピーダンス変動を緩和するインピーダンス調整装置と、
を備えていることを特徴とするワイヤレス給電システム。
【請求項2】
前記インピーダンス調整装置は、前記負荷に対して並列及び/又は直列に設けられた1つ以上の抵抗要素であることを特徴とする請求項1に記載のワイヤレス給電システム。
【請求項3】
前記インピーダンス調整装置は、
前記負荷に対して直列に設けられた第1の抵抗要素と、
前記負荷に対して並列に設けられた第2の抵抗要素と、
前記第1の抵抗要素及び第2の抵抗要素の各抵抗値を可変制御する抵抗制御部と、
を備えていることを特徴とする請求項1に記載のワイヤレス給電システム。
【請求項4】
前記抵抗制御部は、
前記負荷側インピーダンスが前記負荷に定格電力を供給している状態における前記電圧変換回路から視て負荷側の回路である調整対象回路の定格インピーダンス以上のときには、前記第1の抵抗要素の抵抗値を前記第2の抵抗要素の抵抗値よりも小さくし、
前記負荷側インピーダンスが、前記負荷に定格電力を供給している状態における前記調整対象回路の定格インピーダンスより小さいときには、前記第2の抵抗要素の抵抗値を前記第1の抵抗要素の抵抗値よりも大きくすることを特徴とする請求項3に記載のワイヤレス給電システム。
【請求項5】
前記インピーダンス調整装置は、
前記負荷に対して直列又は並列に設けられた抵抗要素と、
前記電圧変換回路の作動状態にかかわらず、前記負荷側インピーダンスが略一定になるように前記抵抗要素の抵抗値を可変制御する抵抗制御部と、
を備えていることを特徴とする請求項1に記載のワイヤレス給電システム。
【請求項6】
前記インピーダンス調整装置は、前記電圧変換回路に対して並列に設けられた抵抗要素であることを特徴とする請求項1に記載のワイヤレス給電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤレス給電システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、磁界共振結合(磁界共鳴)を利用したワイヤレス給電システムの研究開発が進められている。磁界共振結合とは、送電装置の共振回路に交流電流が流れることにより発生した磁場の振動が、受電装置の共振回路に伝わって共振することで、各共振回路のコイルで生成された磁界が強固に結合した状態をいう。磁界共振結合を利用したワイヤレス給電は、従来の電磁誘導(磁界結合)を利用したワイヤレス給電と比較して、給電可能距離が長くなるという利点がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このようなワイヤレス給電システムでは、効率良く送電を行うために、送電装置から視て受電装置及び負荷等を含む負荷側回路のインピーダンス(総合インピーダンス)と、送電装置から視て電源側のインピーダンス(入力側インピーダンス)とが等価に設定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-505369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述した負荷側回路には、例えば、バッテリやモータなどの駆動部材が接続され、このバッテリやモータが負荷となる。そのため、バッテリやモータなどの駆動状態によって、負荷側回路に流れる電流に変動が生じることがある。ワイヤレス給電システムでは、負荷側回路に流れる電流の変動に応じて総合インピーダンスが変動するため、総合インピーダンスと入力側インピーダンスとがマッチングしなくなり、システム内に反射波が生じ、送電効率が著しく低下して送電電力が低下し、その結果、システム障害を招く虞があるという問題があった。
【0006】
そこで、負荷側回路のインピーダンスが変動しても、送電効率の低下を軽減するために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係るワイヤレス給電システムは、磁界共鳴方式により電力を送電するワイヤレス給電システムであって、送電コイルを含む送電側共振回路を備えている送電装置と、受電コイルを含む受電側共振回路を備え、前記受電コイルを介して受電した電力を負荷に供給する受電装置と、前記受電装置と負荷との間に設けられ、前記負荷に供給される電圧を制御する電圧変換回路と、前記電圧変換回路から視て負荷側の回路のインピーダンスである負荷側インピーダンスの変動を緩和するインピーダンス調整装置と、を備えている。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、負荷側インピーダンスの変動が緩和されることにより、反射波の発生が抑制され、送電効率の低下やそれに伴うシステム障害の虞を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係るワイヤレス給電システムの構成を示す模式図である。
図2】負荷電圧と負荷電流との関係を示すグラフである。
図3】負荷電流と負荷側インピーダンスとの関係を示すグラフである。
図4】本発明の比較例であって、インピーダンス調整装置を有しない回路を示す図である。
図5図1に示す調整対象回路を示す図である。
図6】本発明の第1変形例に係るワイヤレス給電システムの要部を示す図である。
図7】本発明の第2変形例に係るワイヤレス給電システムの要部を示す図である。
図8】本発明の第3変形例に係るワイヤレス給電システムの要部を示す図である。
図9】本発明の第4変形例に係るワイヤレス給電システムの要部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施形態に係るワイヤレス給電システム1について図面に基づいて説明する。なお、以下では、構成要素の数、数値、量、範囲等に言及する場合、特に明示した場合及び原理的に明らかに特定の数に限定される場合を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも構わない。
【0011】
また、構成要素等の形状、位置関係に言及するときは、特に明示した場合及び原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似又は類似するもの等を含む。
【0012】
また、図面は、特徴を分かり易くするために特徴的な部分を拡大する等して誇張する場合があり、構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。また、断面図では、構成要素の断面構造を分かり易くするために、一部の構成要素のハッチングを省略することがある。
【0013】
<ワイヤレス給電システムの構成>
図1は、ワイヤレス給電システム1の構成を示す模式図である。ワイヤレス給電システム1は、磁界共振結合(磁界共鳴)を利用して非接触で給電対象物2に電力を給電する。給電対象物2は、例えば、車両、ロボット飛翔体、水中ロボット、カプセル内視鏡、心臓ペースメーカー等である。ワイヤレス給電システム1は、送電装置3と、受電装置4と、を備えている。
【0014】
<送電装置の構成>
送電装置3は、給電コイル31と、送電コイル32と、コンデンサ33、34と、を備えている。
【0015】
給電コイル31及び送電コイル32は、電気伝導率の高い銅線等を円形に巻回して形成されている。なお、銅線内を流れる電流は、内部抵抗の影響によって銅線の中心部よりも表面付近を多く流れる。したがって、給電コイル31及び送電コイル32の線材に複数の銅線を撚り合わせたリッツ線を用いた場合には、同一径の1本の銅線と比べて、リッツ線の表面積が大きくなり、より多くの電流を流すことができ、電流損失を抑制できる。
【0016】
給電コイル31には、交流電源5から交流電力が供給される。交流電力は、例えば、周波数150kHz、電圧10Vに設定されるが、交流電源5の周波数及び電圧は任意に変更可能である。以下、給電コイル31の交流電源5側の接点を「入力端IE」という。なお、本実施形態では、給電コイル31と交流電源5とは、入力端IEを介して直接的に接続されている場合を例に説明するが、給電コイル31と交流電源5とは、入力端IEを介して直接的に接続されても、交流電源5と入力端IEとの間に設けられた同軸ケーブル等を介して間接的に接続されても構わない。
【0017】
給電コイル31及びコンデンサ33は、直列に接続されて給電側共振回路35を構成している。給電コイル31のインダクタンス及びコンデンサ33のキャパシタンスによって設定される共振周波数に応じた周波数の交流電圧が給電コイル31に流れると、給電コイル31を貫くように振動磁場が生じる。
【0018】
送電コイル32のコイル軸32aは、通常状態において、給電コイル31のコイル軸31aと略平行に配置されている。給電コイル31と送電コイル32とは磁界結合しており、給電コイル31に交流電流が流れると、給電コイル31をコイル軸方向に貫くように生じる磁束を媒介にして、送電コイル32にも起電力が生まれる。
【0019】
送電コイル32及びコンデンサ33は、直列に接続されて送電側共振回路36を構成している。送電コイル32のインダクタンス及びコンデンサ33のキャパシタンスによって設定される共振周波数に応じた周波数の交流電圧が送電コイル32に流れると、送電コイル32をコイル軸方向に貫くように振動磁場が生じる。この送電コイル32で生じた振動磁場が受電装置4の少なくとも一部まで到達する。
【0020】
<受電装置の構成>
受電装置4は、給電対象物2内に設けられている。受電装置4は、受電コイル41と、コンデンサ42と、備えている。
【0021】
受電コイル41は、送電コイル32とコイル軸方向に間隔を空けて設けられている。受電コイル41は、電気伝導率の高い銅線等を円形に巻回して形成されている。なお、受電コイル41も給電コイル31及び送電コイル32と同様に、線材にリッツ線を用いるのが好ましい。
【0022】
受電コイル41とコンデンサ42とは、直列に接続されて受電側共振回路43を構成している。受電コイル41のインダクタンス及びコンデンサ42のキャパシタンスによって設定される共振周波数は、送電コイル32及びコンデンサ33の共振周波数と一致するように設定されている。これにより、送電コイル32をコイル軸方向に貫くように生じた磁場の振動によって、受電コイル41に誘導電流が流れ、受電コイル41をコイル軸方向に貫くように振動磁場が生じる。このようにして、送電コイル32及び受電コイル41の磁場が共鳴して強固に結合する。
【0023】
受電コイル41が共振受電した交流電力は、整流回路6及びDC-DCコンバータ7を介して負荷8に供給される。負荷8は、給電対象物2を構成するモータやバッテリ等である。
【0024】
整流回路6は、4つのダイオード61がブリッジ上に配置され、受電コイル41が受電した交流電力に対して全波整流を行い、直流電圧を出力する。なお、符号62は、整流回路6が出力した直流電圧を平滑化させるコンデンサである。
【0025】
DC-DCコンバータ7は、整流された直流電圧を予め設定された定電圧(例えば、12V)に変換する。DC-DCコンバータ7から出力された電圧は、負荷8に印加される。
【0026】
<インピーダンス調整装置の構成>
次に、入力端IEから受電装置4側、即ち送電装置3、受電装置4、整流回路6、DC-DCコンバータ7及び負荷8を含む回路(負荷側回路)のインピーダンス(以下、「総合インピーダンス」という。)が交流電源5の入力インピーダンスに対して所定範囲内に収めるように、DC-DCコンバータ7から視て負荷8側の回路(調整対象回路)のインピーダンス(以下、「負荷側インピーダンス」という)の変動を緩和させるインピーダンス調整装置9について、図面に基づいて説明する。
【0027】
図1に示すように、インピーダンス調整装置9は、負荷8に対して直列に設けられた第1の可変抵抗91と、負荷8に対して並列に設けられた第2の可変抵抗92と、を備えている。
【0028】
インピーダンス調整装置9の動作は、コントローラ93によって制御される。コントローラ93は、例えば、CPU、メモリ等により構成される。なお、コントローラ93の機能は、ソフトウェアを用いて制御することにより実現されても良く、ハードウェアを用いて動作することにより実現されても良い。コントローラ93は、抵抗制御部94と、記憶部95と、に機能分割される。
【0029】
抵抗制御部94は、記憶部95に記憶された後述する各種関数及び測定部96の測定値に基づいて、第1の可変抵抗91の抵抗値及び第2の可変抵抗92の抵抗値をそれぞれ制御可能である。そして、第1の可変抵抗91の抵抗値及び第2の可変抵抗92の抵抗値が増減されることにより、インピーダンス調整装置9は、調整対象回路の合成インピーダンスを任意に調整することができる。
【0030】
記憶部95には、DC-DCコンバータ7から出力されて負荷8に供給される負荷電圧と負荷電流との関係を示す関数、及び負荷電流と負荷側インピーダンスとの関係を示す関数がそれぞれ記憶されている。負荷8に供給される負荷電圧及び負荷電流は、DC-DCコンバータ7と負荷8との間に設けられた測定部96により、リアルタイム且つ連続的に測定される。したがって、コントローラ93は、測定部96による負荷電圧及び負荷電流の値に基づいて、負荷側インピーダンス及びその変動をリアルタイムに検出することができる。なお、測定部96は、負荷電圧を測定するものに限定されず、負荷電流を測定するもの等、もしくはその両方であっても構わない。
【0031】
具体的には、図2に示すように、負荷電圧と負荷電流との関係を示す関数は、DC-DCコンバータ7への入力電圧がDC-DCコンバータ7の作動電圧(例えば12V)以下であって、DC-DCコンバータ7が作動していないアイドリング状態(コンバータOFF)における負荷電圧と負荷電流との関係を示す関数と、DC-DCコンバータ7への入力電圧がDC-DCコンバータ7の作動電力を超えてDC-DCコンバータ7が作動している状態(コンバータON)における負荷電圧と負荷電流との関係を示す関数とを含む。
【0032】
また、図3に示すように、負荷電流と負荷側インピーダンスとの関係を示す関数は、DC-DCコンバータ7がアイドリングしている状態(コンバータOFF)における負荷電流と負荷側インピーダンスとの関係を示す関数と、DC-DCコンバータ7が作動していない状態(コンバータON)における負荷電流と負荷側インピーダンスとの関係を示す関数とを含む。
【0033】
なお、負荷電圧と負荷電流との関係を示す関数及び負荷電流と負荷側インピーダンスとの関係を示す関数は、予め実験等により算出されるものであり、図2、3で例示した一次関数のグラフに限定されるものではない。
【0034】
このようにして、本実施形態に係るワイヤレス給電システム1は、測定部96で測定した負荷側インピーダンスの変動に応じて、インピーダンス調整装置9が負荷側インピーダンスのインピーダンス変動が総合インピーダンスに影響しないように調整対象回路の合成インピーダンスを即座に調整することができ、入力端IEにおける入力側インピーダンスと総合インピーダンスとの差分をリアルタイムに緩和することができる。
【0035】
<インピーダンス調整>
次に、インピーダンス調整装置9が実行するインピーダンス調整について、図面に基づいて説明する。
【0036】
まず、負荷側インピーダンスが、DC-DCコンバータ7のオンオフに応じて変動する理由について説明する。なお、本実施形態では、負荷側インピーダンスが、DC-DCコンバータ7のオンオフに応じて変動する場合を例示して説明するが、負荷側インピーダンスの変動は、DC-DCコンバータ7のオンオフだけではなく、例えば、送電コイル32と受電コイル41との相対位置の変化、負荷8の駆動状況(出力)の変化等によっても生じ得るものであり、これら様々な要因による負荷インピーダンスの変動の抑制に利用できることは言うまでもない。
【0037】
図2に示すように、DC-DCコンバータ7がアイドリングしている状態(コンバータOFF)では、DC-DCコンバータ7の出力電圧はほぼゼロであり、負荷電流も非常に小さくなる。そして、図3から、負荷電流が小さいときには、負荷側インピーダンスは、極めて大きいことが分かる。
【0038】
一方、図2に示すように、DC-DCコンバータ7が作動している状態(コンバータON)場合には、DC-DCコンバータ7への入力電圧に応じた負荷電圧が出力され、負荷電圧に比例して負荷電流が急増する。そして、図3から、負荷電流が大きいときには、負荷側インピーダンスが極めて小さいことが分かる。
【0039】
このようして、DC-DCコンバータ7の作動状態に応じて負荷側インピーダンスが変動することに伴って、負荷側インピーダンスを含む総合インピーダンスが変動するのに対し、入力側インピーダンスは、所定値(例えば50Ω)で固定されているため、総合インピーダンスと入力側インピーダンスとがマッチングせず、入力端IEにおいて反射波が発生して送電効率が低下したり、送電電力が足りずにシステム障害を招く虞がある。
【0040】
そこで、インピーダンス調整装置9は、DC-DCコンバータ7が作動状態(コンバータON)において、負荷側インピーダンスのインピーダンス変動を緩和させる、すなわち負荷側インピーダンスのインピーダンス変動が総合インピーダンスに影響しないように調整対象回路の合成インピーダンスΣRを調整するために、第1の可変抵抗91の抵抗値、第2の可変抵抗92の抵抗値を必要に応じてそれぞれ増減させる。
【0041】
具体的には、まず、抵抗制御部94は、測定部96が測定した負荷電圧及び図2に示す関数に基づいて負荷電流を算出する。また、抵抗制御部94は、算出した負荷電流及び図3に示す関数に基づいて、負荷側インピーダンスを算出する。
【0042】
次に、総合インピーダンスが入力インピーダンスに対して所定範囲(例えば、±10%)内に収まるように、抵抗制御部94は、第1の可変抵抗91の抵抗値、第2の可変抵抗92の抵抗値を調整する。
【0043】
例えば、図4に示すように抵抗要素を有しない回路の場合には、負荷電流が小さく負荷側インピーダンスが大きい状態と、負荷電流が大きく負荷側インピーダンスが小さい状態とを比較すると、負荷側インピーダンスの変動が極めて大きく、図4中の表に例示した各ケース1A、1Bにおける負荷側インピーダンスの比率(インピーダンス比率)は、100倍となる。
【0044】
一方、図5に示すように、負荷電流が小さく負荷側インピーダンスR0が大きい状態では、抵抗制御部94は、第1の可変抵抗91の抵抗値R1を低下させるとともに第2の可変抵抗92の抵抗値R2を増加させて、インピーダンス調整後の負荷側インピーダンス(合成インピーダンス)ΣRを下げる。
【0045】
また、負荷電流が大きく負荷側インピーダンスR0が小さい状態では、抵抗制御部94は、第1の可変抵抗91の抵抗値R1を増加させるとともに第2の可変抵抗92の抵抗値R2を低下させて、調整対象回路の合成インピーダンスΣRを上げる。
【0046】
なお、抵抗制御部94が可変制御する第1の可変抵抗91の抵抗値R1及び第2の可変抵抗92の抵抗値R2は、以下の手順により予め実験等により得られたものである。
【0047】
まず、交流電源5の入力側インピーダンス(例えば、50Ω)と総合インピーダンスとが略等しい場合、すなわち負荷8に定格電力を供給している定格運転時における負荷側インピーダンスである定格インピーダンス(R0_th)を予め測定しておく。
【0048】
次に、測定部96が測定した負荷8に供給する電圧及び電流の測定結果に基づいて、抵抗制御部94が、インピーダンス処理前の負荷側インピーダンス(R0)を算出する。
【0049】
負荷側インピーダンスR0が定格インピーダンス(R0_th)以上のときには、第1の可変抵抗91の抵抗値R1を0Ωとした上で、1/(R0_th)=(1/R0)+(1/R2)の数式を満たすように、第2の可変抵抗92の抵抗値R2が設定される。
【0050】
例えば、図5中の表に例示したケース2Aのように、インピーダンス調整前の負荷側インピーダンスR0を200Ω、第1の可変抵抗91の抵抗値R1を0Ω、第2の可変抵抗92の抵抗値R2を66.7Ωにそれぞれ設定すると、調整対象回路の合成インピーダンスΣRは50Ωとなる。
【0051】
一方、負荷側インピーダンスR0が定格インピーダンス(R0_th)より小さいときには、第2の可変抵抗92の抵抗値R2を極めて大きく設定した上で、(R0_th)-R0=R1の数式を満たすように、第1の可変抵抗91の抵抗値R1が設定される。
【0052】
例えば、図5中の表に例示したケース2Bのように、インピーダンス調整前の負荷側インピーダンスR0を2Ω、第1の可変抵抗91の抵抗値R1を48Ω、第2の可変抵抗92の抵抗値R2を∞Ωにそれぞれ設定すると、調整対象回路の合成インピーダンスΣRは50Ωとなる。
【0053】
このようにして、抵抗制御部94が、調整対象回路の合成インピーダンスΣRと定格インピーダンス(R0_th)とが略一致するように、第1の可変抵抗91の抵抗値R1及び第2の可変抵抗92の抵抗値R2をそれぞれ制御する。
【0054】
このようにして、本実施形態に係るワイヤレス給電システム1は、磁界共鳴方式により電力を送電するワイヤレス給電システム1であって、送電コイル32を含む送電側共振回路36を備えている送電装置3と、受電コイル41を含む受電側共振回路43を備え、受電コイル41を介して受電した電力を負荷に供給する受電装置4と、受電装置4と負荷8との間に設けられ、負荷8に供給される電圧を制御するDC-DCコンバータ7と、負荷側インピーダンスの変動を緩和するインピーダンス調整装置9と、を備えている構成とした。
【0055】
この構成により、インピーダンス調整装置9が、例えば、DC-DCコンバータ7の作動状態に応じた負荷側インピーダンスの変動が総合インピーダンスに影響しないように調整対象回路の合成インピーダンスΣRを調整することにより、入力端IEから視た入力側インピーダンスと総合インピーダンスとの差分が緩和されるため、入力端IEにおける反射波の発生が抑制され、送電効率の低下や、送電電力の減少に起因するシステム障害を回避することができる。
【0056】
また、本実施形態に係るワイヤレス給電システム1は、インピーダンス調整装置9が、負荷8に対して並列及び直列にそれぞれ設けられた第1の可変抵抗91、第2の可変抵抗92を備えている構成とした。
【0057】
この構成により、第1の可変抵抗91の抵抗値R1及び第2の可変抵抗92の抵抗値R2を調整することにより、負荷側インピーダンスR0のインピーダンス変動が総合インピーダンスに影響しないように調整対象回路の合成インピーダンスΣRを調整することができる。
【0058】
また、本実施形態に係るワイヤレス給電システム1は、インピーダンス調整装置9が、負荷8に対して並列に設けられた第1の可変抵抗91と、負荷8に対して直列に設けられた第2の可変抵抗92と、第1の可変抵抗91及び第2の可変抵抗92の各抵抗値R1、R2を可変制御する抵抗制御部94と、を備えている構成とした。
【0059】
この構成により、抵抗制御部94が、第1の可変抵抗91の抵抗値R1及び第2の可変抵抗92の抵抗値R2を適宜調整可能なため、調整対象回路の合成インピーダンスΣRをスムーズに増減させることができる。
【0060】
また、本実施形態に係るワイヤレス給電システム1は、抵抗制御部94が、負荷側インピーダンスR0が定格インピーダンス(R0_th)以上のときには、第1の可変抵抗91の抵抗値R1を第2の可変抵抗92の抵抗値R2よりも小さくし、負荷側インピーダンスR0が定格インピーダンス(R0_th)よりも小さいときには、第2の可変抵抗92の抵抗値R2を第1の可変抵抗91の抵抗値R1より大きくする構成とした。
【0061】
この構成により、抵抗制御部94は、調整対象回路の合成インピーダンスΣRと定格インピーダンス(R0_th)とが略一致する好ましい状態を維持することができる。
【0062】
なお、インピーダンス調整装置9は、第1の可変抵抗91及び第2の可変抵抗92を備えている構成に限定されず、第1の可変抵抗91及び第2の可変抵抗92の何れか一方のみを備えている構成であっても構わない。
【0063】
例えば、図6に示すように調整対象回路に第1の可変抵抗91のみを設けた場合、負荷側インピーダンスR0が定格インピーダンス(R0_th)以上のときには、抵抗制御部94が、第1の可変抵抗91の抵抗値R1を低下させる。例えば、図6中の表に例示したケース3Aでは、インピーダンス調整前の負荷側インピーダンスR0を200Ω、第1の可変抵抗91の抵抗値R1を2Ωに設定すると、調整対象回路の合成インピーダンスΣRは202Ωとなる。
【0064】
一方、負荷側インピーダンスR0が定格インピーダンス(Ro_th)より小さいときには、抵抗制御部94が、第1の可変抵抗91の抵抗値を増加させる。例えば、図6中の表に例示したケース3Bでは、インピーダンス調整前の負荷側インピーダンスR0を2Ω、第1の可変抵抗91の抵抗値R1を200Ωに設定すると、調整対象回路の合成インピーダンスΣRは202Ωとなる。
【0065】
このようにして、抵抗制御部94が、第1の可変抵抗91の抵抗値R1を制御することにより、DC-DCコンバータ7の作動状態に起因して負荷側インピーダンスR0に変動が生じても、負荷側インピーダンスR0のインピーダンス変動が総合インピーダンスに影響しないように調整対象回路の合成インピーダンスΣRが略一定に維持される。
【0066】
また、例えば、図7に示すように第2の可変抵抗92のみを設けた場合、負荷側インピーダンスR0が定格インピーダンス(Ro_th)以上のときには、抵抗制御部94が、第2の可変抵抗92の抵抗値R2を低下させる。例えば、図7中の表に例示したケース4Aでは、インピーダンス調整前の負荷側インピーダンスR0を200Ω、第2の可変抵抗92の抵抗値R2を2Ωに設定すると、調整対象回路の合成インピーダンスΣRは1.98Ωとなる。
【0067】
一方、負荷側インピーダンスR0が定格インピーダンス(Ro_th)より小さいときには、抵抗制御部94が、第2の可変抵抗92の抵抗値R2を増加させる。例えば、図7中の表に例示したケース4Bでは、インピーダンス調整前の負荷側インピーダンスR0を2Ω、第2の可変抵抗92の抵抗値R2を200Ωに設定すると、調整対象回路の合成インピーダンスΣRは1.98Ωとなる。
【0068】
このようにして、抵抗制御部94が、第2の可変抵抗92の抵抗値R2を制御することにより、DC-DCコンバータ7の作動状態に起因して負荷側インピーダンスR0に変動が生じても、負荷側インピーダンスR0のインピーダンス変動が総合インピーダンスに影響しないように調整対象回路の合成インピーダンスΣRが略一定に維持される。
【0069】
また、インピーダンス調整装置9の抵抗要素は、上述した可変抵抗に限定されず、抵抗値が固定された固定抵抗であっても構わない。
【0070】
例えば、図8に示すように負荷8と並列に固定抵抗97を設けた場合、固定抵抗97の抵抗値R3は、実験等により予め算出されたインピーダンス調整前の負荷側インピーダンスR0の最大値及び最小値の略中央値に設定されるのが好ましい。
【0071】
図8中の表に例示したケース5A(負荷側インピーダンスが定格インピーダンス以上のとき)では、インピーダンス調整前の負荷側インピーダンスR0を200Ω、固定抵抗97の抵抗値R3を100Ωに設定すると、調整対象回路の合成インピーダンスΣRは66.6Ωとなる。
【0072】
一方、図8中の表に例示したケース5B(負荷側インピーダンスが定格インピーダンスより小さいとき)では、インピーダンス調整前の負荷側インピーダンスR0を2Ω、固定抵抗97の抵抗値R3を100Ωに設定すると、調整対象回路の合成インピーダンスΣRは1.96Ωとなる。
【0073】
このようにして、図4に示すような抵抗要素を有しない調整対象回路のインピーダンス比率が100倍であるのに対して、固定抵抗97を設けた調整対象回路のインピーダンス比率が34倍に抑制されていることが分かる。したがって、固定抵抗97を設けた場合であっても、DC-DCコンバータ7の作動状態に起因する負荷側インピーダンスR0のインピーダンス変動が及ぼす総合インピーダンスへの影響を軽減することができる。
【0074】
さらに、上述した実施形態及び変形例では、インピーダンス調整装置9が、DC-DCコンバータ7の作動状態(コンバータON)において、調整対象回路の合成インピーダンスΣRを定格インピーダンス(R0_th)に略一致させる場合を例に説明したが、インピーダンス調整装置9は、DC-DCコンバータ7がアイドリングしている状態(コンバータOFF)において、負荷側インピーダンスR0を下げるように構成しても構わない。
【0075】
このようなインピーダンス調整装置9としては、例えば、DC-DCコンバータ7に対して並行に第3の可変抵抗98が設けられ、抵抗制御部94が、第3の可変抵抗98の抵抗値R4を可変制御する構成が考えられる。DC-DCコンバータ7がアイドリングしている状態では、負荷8には十分な電力が供給されていないものの、第3の可変抵抗98の抵抗値R4を上げることにより、負荷側インピーダンスR0を低減することができる。
【0076】
また、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り、上記以外にも種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【0077】
また、上述した実施形態及び変形例では、負荷側インピーダンスが変動する要因として、DC-DCコンバータ7のオンオフに伴う負荷電流の変動を例に説明したが、負荷側インピーダンスが変動する要因はこれに限定されるものではない。例えば、給電対象物2の移動に伴って負荷側インピーダンスが変動することも考えられる。
【0078】
また、上述した実施形態及び変形例では、調整対象回路の合成インピーダンスΣRを調整する手段として、負荷8に対して直列に設けられた1つの第1の可変抵抗91、負荷8に対して並列に設けられた1つの第2の可変抵抗92、負荷8に対して直列に設けられた1つの固定抵抗97、及びDC-DCコンバータ7に対して並行に設けられた1つの第3の可変抵抗98を例示したが、各種抵抗要素はそれぞれ2つ以上であっても構わない。
【0079】
また、インピーダンス調整装置9が備えている抵抗要素は、上述した実施形態及び変形例で説明した各種可変抵抗や固定抵抗の組み合わせに限定されず、これらを適宜組み合わせても構わない。
【0080】
また、負荷8に対して直列に及び/又は並列に接続する要素として、第1の可変抵抗91及び第2の可変抵抗92の他に、コイルやコンデンサを配置しても構わない。
【0081】
また、上述した実施形態及び変形例では、インピーダンスの虚部をゼロにして無効電力の発生を抑制するために、給電コイル31、送電コイル32及び受電コイル41を全て共振状態とした場合を例に説明した。しかしながら、例えば、給電コイル31にコンデンサ33を接続させない場合であっても、入力インピーダンスに無効電力が生じるものの、送電自体は可能であるから、送電コイル32及び受電コイル41のみを共振状態としても構わない。
【0082】
また、上述した実施形態及び変形例では、ワイヤレス給電システム1を、給電コイル31、送電コイル32及び受電コイル41を備えている3コイルシステムの構成を例に説明したが、給電コイル31を設けず、送電コイル32及び受電コイル41のみを有する2コイルシステムのワイヤレス給電システムとしてもよい。
【符号の説明】
【0083】
1 :ワイヤレス給電システム
2 :給電対象物
3 :送電装置
31:給電コイル
32:送電コイル
33、34:コンデンサ
35:給電側共振回路
36:送電側共振回路
4 :受電装置
41:受電コイル
42:コンデンサ
43:受電側共振回路
5 :交流電源
6 :整流回路
61:ダイオード
62:コンデンサ
7 :DC-DCコンバータ(電圧変換回路)
8 :負荷
9 :インピーダンス調整装置
91:第1の可変抵抗
92:第2の可変抵抗
93:コントローラ
94:抵抗制御部
95:記憶部
96:測定部
97:固定抵抗
98:第3の可変抵抗
IE:入力端
図1
図2
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図8
図9