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▶ 瀧川 剛の特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022176863
(43)【公開日】2022-11-30
(54)【発明の名称】油性化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/73 20060101AFI20221122BHJP
   A61K 8/92 20060101ALI20221122BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20221122BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
A61K8/73
A61K8/92
A61Q1/00
A61Q19/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021105222
(22)【出願日】2021-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】521276962
【氏名又は名称】瀧川 剛
(72)【発明者】
【氏名】瀧川 剛
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA122
4C083AD241
4C083AD642
4C083BB12
4C083BB13
4C083BB21
4C083CC02
4C083EE06
(57)【要約】
【課題】 固形油分と液状油分を特定の比率とすることで、使用性及び使用感が良好な油性化粧料を提供する。
【解決手段】
(A)液状油分、(B)固形油分を含み、(A)液状油分と(B)固形油分との質量比(A/B)が1.3~3.0であり、(C)デキストリン脂肪酸エステルを含まないことを特徴とする油性化粧料。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)液状油分(B)固形油分(C)デキストリン脂肪酸エステル
前記(A)及び(B)を含み、(C)を含まないことを特徴とする化粧料。
【請求項2】
(A)液状油分と(B)固形油分との質量比(A/B)が1.3~3.0である請求項1に記載の油性化粧料。
【請求項3】
(D)水溶性粉体あるいは、(E)不溶性粉体を含む請求項2に記載の油性化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油性化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚閉塞性を有する油性基材は、皮膚や毛髪の水分蒸散を抑える目的で幅広く用いられている。しかし、油性基材の配合には、べたつきやなじみの悪さ、伸びの悪さなど、使用感に問題が生じることが多いため工夫が必要である。
【0003】
例えば、特許文献1には、固形油分、有機変性粘土鉱物、ポリグリセリン変性シリコーン、カチオン界面活性剤、分岐飽和脂肪酸を併用した、使用性(柔らかさ、滑らかさ)に優れる油性固形化粧料が提案されている。
例えば、特許文献2には、キャンデリラワックス、ベヘン酸ベヘニルを併用した、使用感及び保存安定性が良好な油性固形化粧料が提案されている。
【0004】
このように、口紅や化粧下地等のメークアップ用油性化粧料の開発において、使用性や使用感等を改良するための様々な試みがされているが、スキンケア用化粧料とした場合、使用性や使用感において不十分である。
【0005】
例えば、特許文献3には、デキストリン脂肪酸エステル、液状油、粉体、ジメチコン/ビニルジメチコンクロスポリマー、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリエーテル変性シリコーンを併用した使用感の良好な、安定性の高い油性化粧料が提案されている。
例えば、特許文献4には、デキストリン脂肪酸エステルと、天然由来の固形脂/又は半固形脂と。特定のイソパラフィンを併用した使用感触、皮膚の保護性、及び経時安定性に優れる油性固形化粧料が提案されている。
【0006】
このように、スキンケア用油性化粧料の開発においても、使用感等の改良が試みられている。しかし、特許文献3、4のようにデキストリン脂肪酸エステルを併用する場合、その溶解の際、分散、なじませ、加熱、冷却等の工程が不十分であるとダマが生じたり、完全に溶解しない可能性がある。目視確認が困難な製造ラインにおいては、相応の設備や工夫が必要となる。
【0007】
例えば、特許文献5には、シアバター、ココアバター、アビシニアンオイル、メドウフォームオイル、抗酸化剤、植物性液状油を併用した、べたつかず、酸化安定性の高い固形化粧料が提案されている。
【0008】
このように、デキストリン脂肪酸エステルを併用しない油性化粧料の提案もあるが、固形油脂を推奨濃度配合すると、ヘラ等で崩して手にとるような硬度の高い固形物であり、スキンケア用化粧料としては使用性が満足でない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第5038538号公報
【特許文献2】WO2018/123824号公報
【特許文献3】特許第5851060号公報
【特許文献4】特開2017-114780号公報
【特許文献5】特開2020-63224号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記の課題を解決した、使用感、使用性に優れた油性化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は鋭意研究の結果、(A)液状油分、(B)固形油分を含み、(C)デキストリン脂肪酸エステルを含まずに、(A)液状油分と(B)固形油分との質量比(A/B)を特定の範囲とすることにより、煩雑な工程なしに製造でき、容易に手に取りやすく、塗布時のべたつきがなく、伸びやなじみが良好な油性化粧料を見出した。
【0012】
すなわち本発明は、(A)液状油分、(B)固形油分を含み、(A)液状油分と(B)固形油分との質量比(A/B)が1.3~3.0であり、(C)デキストリン脂肪酸エステルを含まないことを特徴とする油性化粧料を提供する。
【0013】
また本発明は、(D)水溶性粉体あるいは、(E)不溶性粉体を含む、上記油性化粧料を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の油性化粧料は、煩雑な工程を必要とせず製造でき、硬すぎることなく容易に手に取ることができる。さらに、塗布時のべたつきがなく、伸びやなじみが良好である油性化粧料が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明で用いられる成分(A)液状油分は、通常、化粧料に用いられる常温で液状を呈する油分であれば、特に限定されるものではないが、具体的には、アボカドオイル、マカデミアナッツオイル、オリーブオイル、ホホバオイル、アルガンオイル、アーモンドオイル、グレープシードオイル等の天然類、イソパラフィン、スクワラン、パラフィン等の炭化水素類、ミリスチン酸イソプロピル、2-エチルヘキサン酸セチル、N-ラウロイル-L-グルタミン酸-2-オクチルドデシルエステル等のエステル類、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール等の高級アルコール類、リノール酸、イソステアリン酸等の脂肪酸類が挙げられる。
その中でも、なじみの観点から、天然類、脂肪酸類が好適に用いられる。
本発明に係る成分(A)液状油分としては、1種のみであってもよく、2種以上であってもよい。
【0016】
本発明で用いられる成分(B)固形油分は、通常、化粧料に用いられる常温で固体~半固体状を呈する油分であれば、特に限定されるものではないが、具体的には、カルナウバロウ、モクロウ、キャンデリラロウ、コメヌカロウ、ミツロウ、パラフィンワックス、マイクロクラスタリンワックス、モンタンワックス等のワックス類、シアバター、ココナッツバター、カカオバター、マンゴバター等のバター類、ワセリン等の炭化水素類、硬化ヒマシ油脂脂肪酸エステル、コレステロール脂肪酸エステル等のエステル類、パルミチン酸、ステアリン酸等の脂肪酸類、セチルアルコール、ステアリルアルコール等の高級アルコール類が挙げられる。その中でも、なじみの観点から、天然由来のものが好適に用いられる。
本発明に係る成分(B)固形油分としては、1種のみであってもよく、2種以上であってもよい。
【0017】
本発明においては、(A)液状油分と(B)固形油分の質量比(A/B)を1.3~3.0の範囲内とすることによって所望の特性を発揮する。この質量比(A/B)は、より好ましくは1.4~2.5であり、さらに好ましくは1.8~2.3である。
【0018】
本発明で用いられる成分(D)水溶性粉体は、通常、化粧料に用いられる成分であれば、特に限定されるものではないが、具体的には、トレハロース等の糖類及びその誘導体、ヒアルロン酸等のムコ多糖類及びその誘導体、システイン等のアミノ酸類及びその誘導体、ビタミンC等のビタミン類及びその誘導体が挙げられる。その中でも、感触の観点から、即溶性の高いもの、粒径の小さいものが好適に用いられる。
本発明に係る成分(D)水溶性粉体としては、1種のみであってもよく、2種以上であってもよい。
【0019】
本発明で用いられる成分(E)不溶性粉体は、通常、化粧料に用いられる成分であれば、特に限定されるものではないが、具体的には、酸化チタンや酸化亜鉛等の無機粉体、球状シリカや架橋型メタクリル酸メチル球状樹脂等の球状粉体、ジメチコンクロスポリマー等の高分子シリコーン系粉体が挙げられる。その中でも、感触の観点から、粒径の小さいもの、真球に近いものあるいは均一性の高いものが好適に用いられる。
本発明に係る成分(E)不溶性粉体としては、1種のみであってもよく、2種以上であってもよい。
【0020】
本発明の油性化粧料には、上記の成分に加えて、本発明の効果を損なわない限りにおいて、通常化粧品に用いられる他の成分を必要に応じて適宜配合することができる。このような成分としては、水、油剤、界面活性剤、防腐剤、香料、アルコール類、紫外線防止剤、保湿剤、抗酸化剤、抗炎症剤、抗菌剤、美白剤、抗しわ剤、皮膜剤、収斂剤が挙げられる。ただし、これら例示に限定されるものではない。
【0021】
本発明の油性化粧料は、皮膚、毛髪、口唇等に使用することができ、皮膚に使用することが好ましい。
【実施例0022】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、これにより本発明の範囲が限定されるものではない。配合量は特記しない限りすべて質量%である。
【0023】
表1に示す油性化粧料を調製し、その(イ)形状、(ロ)角立ちと、肌に塗布した時の(ハ)べたつき、(ニ)伸び、(ホ)なじみ、(ヘ)皮膜感について、それぞれの評価基準に基づき評価した。
【0024】
(イ)形状
常温においての形状について、下記評価基準に基づき評価した。
(評価基準)
A:力を加えないと削れない固形(指ですくえない)
B:力を加えると流動性がある半固形(指ですくえる)
C:クリーム状(指ですくえる)
D:液状(指ですくうと垂れ落ちる)
【0025】
(ロ)角立ち
ヘラですくった時の角立ちについて、目視により下記評価基準に基づき評価した。
(評価基準)
A:角が立った
B:角が立たなかった
【0026】
(ハ)べたつき
肌に塗布した時のべたつきについて、下記評価基準に基づき評価した。
(評価基準)
A:べたつかない
B:ほとんどべたつかない
C:少しべたつく
D:べたつく
【0027】
(ニ)伸び
肌に塗布した時の伸びについて、下記評価基準に基づき評価した。
(評価基準)
A:非常に良い
B:良い
C:少し悪い
D:悪い
【0028】
(ホ)なじみ
肌に塗布した時のなじみについて、下記評価基準に基づき評価した。
(評価基準)
A:非常に良い
B:良い
C:少し悪い
D:悪い
【0029】
(ヘ)皮膜感
肌に塗布した時の皮膜感について、下記評価基準に基づき評価した。
(評価基準)
A:非常に感じる
B:感じる
C:少し感じる
D:感じない
【0030】
【表1】
【0031】
表1の結果から明らかなように、本発明の質量比から外れた場合、形状においては、硬すぎたり、液状で垂れてしまうことが確認された。また、使用感においては、固形油分が多いと、べたついたりなじみが悪くなり、少ないと皮膜感が感じにくくなることが確認された。
さらには、実施例7に示すように、粉体を添加することにより、油性化粧料の粘性が増大し、製剤としての安定性を高めるだけでなく、皮膜感の向上も確認された。